3-38

「ふう。やっと涼しくなってきたな。」
夏の暑さもどこえやら。俺は窓辺から真っ赤な夕焼けを眺めていた。
別に何がしたい訳でもなかった。
俺は家の近くにある森へと足を運んでいった。

森の奥で俺の足が止まった。自分の目の前には大きな木が一本。
そこにはまだ過ぎ去りきれてない夏がしがみ付いていた。
蝉の抜け殻だ。

不思議だ。夏にあの五月蝿い鳴き声を聞くとイライラしていたのに、
いざ鳴き声が止むと何だか名残惜しくなる。

俺はその抜け殻を手に取ろうと手を伸ばした。
その瞬間、俺の腕は綺麗に落ちていた。

「!!!???」
俺は何が起こったか全く解ってなかった。
ついさっき延ばした右腕が今は地面に落ちている。
体と腕の『あった』境目には血が滴っている。

とっさに顔を上げるとそこには抜け殻の大群が。
「ヌケニン…」
迂闊だった。
野生のヌケニンを見たことが無かった。
手の平に収まるサイズだった抜け殻が俺の体の4/2ぐらいか、
それに近いサイズになっている。
顔は相変わらず仏面だ。

これだけで終わるならまだマシなんだけど。。。
嫌な悪寒がする…

俺は小さい頃に読んでいた図鑑を思い出した。
「虫ポケモン━森に住むポケモン━」
で、確かこんな風に書いてあったなあ・・・・・
ツチニンがテッカニン進化した時にいつの間にかいるポケモン。
ヌケニンの殻の中を見た人はいない。
※間違っても殻の中を覗いたりしてはいけない。

・・・・兎に角「殻の中」さえ見なけりゃいいんだな。

俺は落ちた腕を残して一目散に逃げ出した。
ヌケニンを巻いて無事に家に帰る事ができた。
俺は家族にこの事を話した。
そして病院へ行った。

病院に行くとまずハピナスの産んだ卵を食べさせられた。
今まで食べたことは無かったけど、案外美味いな、と
こんな時に思った。
その後俺はナースに変な部屋に連れて行かれた。
いきなりナースは手に持っている包丁で俺を切り裂き始めた。
「ぐふっ!」
俺は地面に突っ伏した。・・・・・?おかしいぞ?
何で地面なんだ?ここは病院じゃあ・・・


今までの矛盾が段々頭をよぎっていく。
(どうやってヌケニンから逃げたんだ?)
(俺は今家族と一緒に暮らしてはいないぞ?)
(まず何であんな状態で家に帰る?普通病院じゃないか?)
(何でナースが包丁を持ってる?)
俺はやっと気づいた。これが《妖しい光》の効果だと。
しかしもう遅かった。俺の体はもう原型を留めていなかった。
頭もズタズタに切り裂かれて、もはや考え・・る・・事・はで・・きなか・・・った・・。


END*

最終更新:2021年05月25日 15:38
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。