3-39

僕は今広大な砂漠の真ん中に立っている。
手持ちのポケモン、食料、水分、どれもバッチリの状態だ。
しかし、1つだけ問題がある。
それは赤いノクタスに捕まってしまった事。
この時僕は幼いころ読んだことの有る
「砂漠のサボテン」と言う詩を思い出した。

…砂漠のサボテン…

月光に照らされたサボテン

荒れ狂う砂の地の中で

赤く染まったサボテン

何故赤くなってしまった?

私は誰だ?

私は誰だ?



今思い返してみても意味が全く分からない。
─おっと。今はこんな事を考えている時間は無かった。
早くノクタスから逃げなくては。

僕は腰のボールから1つ選んでポケモンを出した。
「プテラ、空を飛ぶ!」
『ギャア!』
バサッバサッバサッと大きな音を立ててプテラと僕は空高く飛び上がった
・・・筈だったがノクタスは逃がしてはくれなかった。
『・・・・』
《ボワッ!》
ノクタスは綿胞子を撒き散らした。
プテラはたちまち動きが鈍くなってしまった。
『・・・・』
《ズガッ!》
鈍い音が耳に入る。
『グギャアアア!』
僕の視界に赤い液体が入ってきた。
プテラと僕は真っ逆さまに落ちてしまった。
《ドスッ》
「プテラ!大丈夫か?」
『グガァ・・・』
弱々しく鳴き声を上げてプテラはもう何も言わなかった。
ノクタスのニードルアームが急所に当ったと思われる。
僕はプテラをボールに戻した。

「頼むよっ!ハガネール!」
『ゴガアアア!』
「ハガネール!捨て身タックル!」
『ゴアアア!』
<バゴオオオン!>
凄まじい音が耳と劈く。
砂煙で息ができなくなった。
『・・・・』
「くっ!外したかっ!」
ノクタスの特性の所為で思うように当らない。
『・・・・』
<キュウウウウウウ・・・・>
「ん?この音・・・」
『・・・・』
<ベキャッ!>
『グゴアアアアア!!!!』
僕は目を疑った。
ハガネールはバラバラに砕け散っていた。

「ノクタスの気合パンチ・・・」
その技は通常技マシンでしか覚える事のできない技だった。
『通常は』。もしかしたら環境にも寄るのかもしれない。
ハガネールはボールには戻ってくれなかった。
「くそっ・・・。」
僕はザングースを出した。
「ザングース、燕返し!」
『ザンッ!』
<スパッ!>
ザングースはノクタスの胴体目掛けて爪を下ろした。
技の相性は抜群だ。これなら勝てる!そう思ったのが間違いだった。
ザングースは血を流しながら息絶えていた。
内臓が抉れて見るも無残の状況だ。
ノクタスには効いていなかったのか?
・・・いや、ザングースはカウンターを喰らったんだ。
ノクタスの胴にはくっきりと切り裂かれた後があった。
『・・・・・』
<ゴクッゴクッゴクッ>
何をやっているんだ?
その時僕にはノクタスが何をやっているのかまだ分からなかった。

さっきから何度も逃げようと試みるもの、
ノクタスが地面から出していた根っこに捕まって足が動かない。
その根っこは地面から出ていているので切らせる指示が出来ない。
もうこいつが最後のポケモンだ。
ボールを持つ手は震えていた。
「頼む!メガニウム」
『メガー!』
「メガニウム!甘い香r・・・」
『・・・』
<バシュウウウ>
『メガアアアアア!!!!』
ノクタスの破壊光線・・・メガニウムはもはや原型を留めていなかった。
しかしノクタスはこれで終わらせなかった。
僕の方に無言で歩み寄ってきた。

「・・・・何をする気なんだ。」
『・・・・』
<シュルシュウシュルッ>
根っこが僕の体を締め付けてきた。
「くっ・・・や・・め・・ろ・・・」
<ギリギリギリ・・・・>
『・・・・』
<ズシャアアアアアアッ!>
「ぐああああ!!」
僕の顔から血が噴出している。
ノクタスはそこに根っこを這わせた。

<ゴクッゴクッゴクッ>
「ああああ・・・」
どんどん血の気が引いて行く。

月光に照らされたサボテン

荒れ狂う砂の地の中で

赤く染まったサボテン

何故赤くなってしまった?

私は誰だ?

私は誰だ?

今夜もサボテン

血を求めて


「赤いサボテン」終わり
最終更新:2021年05月25日 15:44
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