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サーナイト虐

作者:早苗の愛

彼女はサーナイトの早苗。性別はメス、性格は冷静。ご主人様にはラルトスのときに拾われて以来ずっと大切に育てられてきた。それが彼女にとっては唯一の誇りだ。
ある日ご主人様は突然早苗を呼び出しこう言った。
「早苗は今まで私のためによく働いてくれた。そして今やお前は私の所有するポケモンの中で一番頭がよい。そして最も美しい。お前は私の宝だ。私にとって最高のポケモンだ」
突然呼び出して何を言うのかと思えば…普段は冷静な早苗も、このときばかりはうれしくて胸が熱くなった。
「とんでもありません。今までご主人様が早苗をかわいがってくれたおかげです」
言った後早苗の目から涙があふれた。こんなに温かい涙は初めてだった。ご主人様もうんうんとうなずいて、優しい目で早苗を見ていた。そしてさっきと変わらぬ口調でこう続けた。
「早苗もわかっていると思うが、私も年をとった。最近は痴呆も出始めてるようだ。早苗が成長している間も、私は…私は退化していっとるのだよ。私は…私はお前がうらやましい…。う、ら…」
ご主人様はがたがた震えていた。早苗はたまらなくなってご主人様を包み込んだ。早苗からご主人様に触れたのは初めてだった。


「早苗…」
「もういいんです。ご主人様は十分頑張られました。早苗にはわかります。だって…だって早苗は…早苗はご主人様が…!……大好き……だから……」
早苗は衝動的に今まで胸に抱いていた想いを口走ってしまった。早苗はすぐに後悔した。ポケモンがヒトに恋愛感情を抱くなんてあってはならないことだ。しかもご主人様がこんなにも悩んでるときに!
「どうしよう…」
心臓が今までにないくらいにドキドキしている。早苗がパニックになっていると、ご主人様が静かに口を開いた。
「私も…私も早苗を…」
ご主人様の鼓動が伝わる。早苗の頭に直接伝わってくる。
「ご主人様も…私のこと…?」
「…私も……お前が………お前…?……お前は……だ…れだ?」
「!?」
「…お前……お前なんだ…!何をくっついておる!離れんか!!」
「!!」
ご主人様はさっきまでの姿からは想像できないような力で早苗をふりほどいた。
「誰だ…貴様…!」
「私です!早苗です!ご主人様!」
「…気持ちの悪い奴だな…」
早苗は耳を疑った。さっきまで優しかったご主人様の口からそんな言葉が…。なにより頭に直接伝わってくるのだ。悪意に満ちた意識が。早苗は耐えられずに気を失った。



早苗が目を覚ましたのは地下の特訓部屋だった。ご主人様がポケモンを鍛えるために作ったといわれる部屋だ。しかし早苗はいつも一緒に旅をしていたためここに来るのは初めてだ。特訓部屋という割には意外と殺風景で、部屋の隅っこにいくつか強制ギプスが転がっている。
とにかくこの部屋を出るために扉を開けようとしたが…開かない。どうやら監禁されたらしい。
早苗はひととおり状況を確認できたせいか、少し冷静になることができた。
「ご主人様…なぜあんなことを…」
「痴呆」…もはやそれしか思い当たる節はない。しかし認めたくはなかった。こうも簡単に私のことを忘れるなんて。
実はご主人様の痴呆に関する話は前々から聞いていた。いきなり凶暴になり怒鳴り散らすだとか、ポケモンを蹴り飛ばすだとか。ひどいのでは虐待死させたという話も聞いた。そんな噂を聞くたび、早苗は「そんなバカな噂をしてはダメよ」と注意していたが、まさか…そんな…。
「目が覚めたかな」
突然背後で声がした。振り向くと鬼のような形相をしたご主人様の顔があった。
「さっきはよくもやってくれたな」
いつもとは違う、低い声が響いた。
「あ…あぁ」
早苗は恐怖で声が出ない。


「怯えてるのか。安心しろ。すぐに殺してやるから」
「ご主人様!やめて!」
「だぁれがご主人様だコラ!」
ご主人様の平手が早苗の頬をペシペシ叩く。
「早苗を…思い出して…」
「だ、れ、を、お!も!い!だ!せ!っ!て!?」
序々に叩く力が強くなっていく。
「う、ぅ、さ、な、え、ぇ」
「あぁん!?」
「さ、な…」
「うるせぇやぁらぁぁ!!」
最後にご主人様の手は拳に変わった。
「ばきぃ!!」
早苗の頬はそんな音を立てもろくも破れてしまった。身体はもともとそんなに丈夫にできてはいない。頬からは折れた歯がむき出しになった。
「いやぁぁぁ!痛いぃぃ!!」
今まで体験したことのない痛みに目をしどろもどろさせた。ご主人様は間髪入れずに、
「お前、その長い髪はなんだ。うらやましい奴だな。それ俺にくれよ」
ご主人様は早苗の髪を掴んですごい力で引っ張った。
「ひゃ!」
頭皮がぶちぶちとすごい音を立てる。
「きゅぅぅぅ!きゅうぅぁぁぁ!ぎゅぅぅぅぃぃぃ!!」
早苗は本能のままの声をあげた。まだラルトスだったときの鳴き声に似ていた。人の言葉をしゃべる早苗からは考えられないような声だ。

「ぎゅぅぅぅ!!きぃぃぁぁぁ!!びぃぃぃぃあぁぁ!!」
「ばりばりばり!」
ご主人様に一掴みにされた髪の束は一気に引き抜かれた。手に握られた髪の束は雑草を引き抜いたときのそれに似ていた。根っこには土ならぬ皮膚の塊がついていた。同時に早苗の頭からは血がぴゅーぴゅー吹き出ている。頭の一部からは頭蓋がのぞいている。
「あぁぁぁこの髪はぁぁきれいだなぁぁ。お前はぃぃひひひきれいだよ、早苗」
どうやら記憶が交錯しているらしい。早苗のことを思い出しても人格は戻らない。
「きりぃぃぃぃ!びぃぃぃぃ!」
早苗は正気でなくなったのか、頬を破壊されたせいか、うまく発音できない。
「早苗、さなえエえエえェぇェぇ…。アイしテルよおオおォぉォぉ」
ご主人様は早苗の頭から吹き出る血をすくっては自分の顔に塗りたくる。
「きぇ、きぃぇぇぇ、げえぇぇぇ…」
早苗はわけのわからない鳴き声で鳴いている。しかし幸せそうな響きにも聞こえる。突然ご主人様は立ち上がった。
「もっと気持ちよくなりたいか?ん?そうだろう?待ってろよ」
ご主人様のしゃべり方は以前の優しかったころと同じだ。



ご主人様はいったん部屋を出ると柄の長いきづちを持って戻ってきた。ご主人様が早苗に目をやると、不思議なことに早苗は笑っていた。それも微笑んでいるなんて感じではなく、にんまり笑っている。時々目元を痙攣させながら、時々、
「ぃぃぃいぃぃ、ぃいいぃぁぁぁ」
と叫びながら。こんなにうれしそうな早苗は初めて見た。
「そうか、そんなにいいか、早苗」
この言葉を最後にご主人様の笑顔は消えた。
「笑ってんじゃねぇよぉぉぉオ!!」
ご主人様はきずちを振りかざした。が、そのときご主人様の膝がカクンと折れた。
「??……がは!」
ご主人様は血の塊を吐いた。
「さ…なえ…お前がやったのか…」
早苗はあいかわらず不気味な笑顔を浮かべている。まるでどこを見ているかわからない。だが早苗なら念力で攻撃することは可能だ。ご主人様の目鼻口耳から血がだらだら流れる。
「さな…やめて……私は……さなえが」
その瞬間ご主人様の頭がはじけた。ご主人様の赤やピンクや灰色は、傍らで座っている早苗をキレイに染めあげた。ご主人様の首から下は地面に崩れ落ち…崩れ落ちるどころか、操り人形のように踊り始めた!身体全体を使って、滑稽に踊り始めた。
早苗はその様子をいつまでも満足げに見つめていた。
最終更新:2011年03月24日 20:13
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