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フシギバナ虐



ずっとかわいがって育ててきた、わたしのフシギソウ。
ううん、フシギバナ。
今日やっとフシギバナにまで進化してくれました。
開いた花からは甘くてやさしいにおいがします。

頭をなでてやるとうれしそうに体を摺り寄せてくる、
わたしによく懐いた、可愛い可愛いフシギバナ。
「だいすきよ、フシギバナ。
わたしのお願いをかなえてね」

かるく花びらを引っ張ってみましたが、すごく頑丈にくっついてるみたい。
つんつん、と、硬い手ごたえが伝わってきます。
フシギバナもわかっていないのか気にも留めていないのか、
抵抗する様子を見せません。

「フシギバナ、あの人はわたしのこと好きなのかしら?」
わたしは両手で花びらをつかむと、力任せに引っ張りました。
音もなく花びらは縦に裂け、切れ端がわたしの手に残りました。


フシギバナは大きく吼え、こうごうせいをしようとしたのか、
花びらをもっと大きく開きました。
でもわたしに抵抗する様子は見せません。

ずっとずっと大切に育ててきたものね。
わたしがこんなことしてるなんてわからないのかしら?

「さけちゃった。ごめんね、フシギバナ」
わたしは花びらの根元をつかみなおしました。
「もう一回ね。
あの人は私のことを、好き」
渾身の力をこめてひっぱると、ぶち、と大きくもない音を立てて、
あっけなく花びらはとれました。

「ぎぁあぁぉおっ!」
フシギバナは叫びました。
花びらからは水が滴っています。
血のように赤くはないけど、花びらにも神経は通っているのかしら?
「ごめんね、フシギバナ。ちょっとだけ我慢してね」
そういうとわたしは次の花びらに手をかけました。
「あの人は私のことが、きらい」


コツのわかったわたしは、
しっかりと踏ん張ると腰からぐい、と大きく引きました。
「っ・・・・・・ぎぁあああああああああっ!」
フシギバナの叫び声は森に響きます。

フシギバナの花びらは五枚。
あの人は私のことが、すき。

「ありがとね、フシギバナ。
ゆっくり光合成してね。わたしも隣にいるからね」
そういってわたしはフシギバナに、もっていたペットボトルから
水をかけてやりました。
目から涙をあふれさせながら、
それでもフシギバナはわたしに擦り寄ってきました。
わたしがしたことをわかってないのかもしれない。

可愛いわたしのフシギバナ。
可愛い可愛い、わたしのフシギバナ。
また花びらが生えそろったら、一緒に占いをしましょう。
最終更新:2011年03月24日 20:17
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