1-40

あかいもり

(プクリン虐待)
作者:マリルリ虐待の人


世間一般に言う「かわいい」ポケモンほど、ストレスが溜まりやすいものだ。
少なくとも私はそう思う。まあ、アイツが居るからかも知れないが…
そんな事を考えていると、今日もその「アイツ」がやって来た。体をぽよんぽよん、と弾ませながら。
「ラッキーちゃん、元気してた~?」
気味の悪い声で、アイツが私に話してかけてきた。
皮肉なことに私と同じ肌の色をしているコイツの名は、プクリンと言うらしい。
しかしそんな事は私には関係ないし、コイツのことを指す時は代名詞で事足りる。
何よりも腹立たしいのは、コイツが♂である事だ。
こんな奴に私の貞操を奪われるわけにはいかないし、そうで無くともコイツが近くにいるだけで
私は不快だ。しかしコイツにはそれが分からないようで、相も変わらず私にすり寄ってくる。
「ね~ね~、聞こえてるのぉ?」
「五月蝿いわね、私は今忙しいの。貴方なんか相手にしてる暇はないわ。」
「そんなぁ~、じゃあ僕ココで待ってるね」



「いい加減にしてよ!私がまたここを通るとでも思ってるの!」
アイツは答えない。
私はずんずんと去って行きながら、今言った言葉は何の意味も持たないな、と考えていた。
帰りのルートを変えた所で、どうせアイツは先回りをして、私のことを待ち伏せしているのだ。
そう、アイツはまさに、「ストーカー」だったのだ。
鬱陶しい表現が続いた。話題を変えよう。
私が今向かっている、女友達のことについて。
彼女はカイリュー。
ついこの間、この牧場――説明しそびれたが、ここでは人間に捨てられたポケモンや、親が殺された孤児ポケモンなどを、
野生に近い環境で保護しているそうだ――にやってきた、言わば新顔だ。
愛嬌のあるその姿からは想像出来ないが、彼女は人間達から迫害を受けていたと言う。
そして可哀想に思った牧場の管理人が、彼女をここに連れて来た、というわけだ。
ただ、彼女には失礼だが、私は彼女が迫害を受けたのも分かる気がするのだ。
まず、彼女はとても力が強い。腕を振れば大樹も折れる。
次に、彼女はいたずら好きだ。今も隙あらば人間を困らせてやろう、と考えているようだ。
しかし、そんな彼女の性格は、「温厚」の一言に尽きる。


ポケモン達がけんかをしているとすぐ飛んできて、仲裁役として話を聞いてあげたりする子だ。
アイツを殺してくれ、とは頼めない。
だから、カイリューには違う方面の協力を依頼するつもりだ。
彼女は、牧場のはずれにあるひっそりとした洞窟を住処としている。
尋ねてみると、やっぱりカイリューはいた。相変わらず狭そうな所だ。
とりとめのない会話を二、三言交わして、本題に入った。
「ねぇカイリュー、わざマシンって何だか分かる?」
「ええ、知ってますよ」
「それでね、貴女に頼みたいことがあるの。ズバリ言うけど…
貴女って、わざマシンを手に入れてくること、出来る?
あっ、無理ならいいのよ。他の手を考えるから」
「いいですよ」
間髪をいれずに、彼女は承諾してくれた。但し、と前置きして彼女は
「あたしがどうやって手に入れるのか、というのは秘密です。その代わり、
ラッキーさんがわざマシンを必要としている理由も詮索しないであげます。」と言った。
ありがとう、と私は礼を言って、更に一言付け加えた。
「攻撃系のでお願いね」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


それでは次のニュースです。
昨夜11時頃、**シティ郊外の山道にて、わざマシンを載せたトラックの荷台が
持ち去られるという事件が発生しました。トラックの運転手が
「駐車スペースに車を止めて休憩していたら、羽の生えた大きな
生き物が荷台を持っていった」と証言していることから、警察は
ポケモン「カイリュー」の仕業と見て、周辺住民に聞き込み調査などを行っています。



遂に、アイツとの初デートの日がやってきた。前々から約束していたので、
今更断る訳にもいかない。と言うより、今の私には断る気など一切ない。
何故なら、「準備」を前もってしっかりとしておいたからだ。
待ち合わせ場所にいたアイツを見ても、以前のように不快感を抱いたりはしなかった。
「お待たせ。さ、行きましょ」
「うん。行こ行こ。」
歩きながら、アイツは私に問いかけた。
「でも何処へ連れてってくれるの?」
「うーん、森の方なんかどう?」
「オッケー。いいよ。」
だってそこらの崖から突き落としたんじゃつまんないデートコースでしょ?
と私は心の中で呟いた。当然アイツが気付くはずもない。
歯の浮くような会話を交わし、ようやく目的地に着いた。と言っても
私にとっての目的地であり、アイツはただの通過点としか思っていないだろう。
そこは小川が流れる森の中。私が
「ここで休憩しましょう。」と言うとアイツは
よく分からないな、とでも言いたげな顔をして頷き、
「きれいな川だね」
と言った。私は茂みに用意していたものがあることを確認すると、
小川を背にして、アイツと向き合った。

「プクリン、目を閉じてくれる?」
私が言うと、アイツは素直に従った。プレゼントとでも勘違い
しているのか?まあ、一種のプレゼントではあるのだが。
そして私は一本の木に狙いを定め、
(どすっ!)
思い切り尻尾を振った!
アイツの体が、放物線を描いて見事に木へと命中する。
私の「アイアンテール」が決まった瞬間だった。
「流石カイリュー。いいものを見つくろってくれたわ」
アイツは独り言をいう私を見つめていた。驚きのあまり、声も出ないようだ。
「いい気味ね。あんたは実に無様だわ」
アイツはなんとか言葉を発しようとする。そしてこう言った。
「うぅ…ラッキーちゃん、どうして…」
「はぁ?まだ分からないの?じゃあ教えてあげる。私にとってあんたの存在は
目障りなの。いつもいつも私にまとわりつきやがって。
この生きる価値も無いど阿呆が。ウザいんだよ」
「うぅ…」
アイツは涙ぐんだ。私に助けを乞うつもりなのか。
「うふふっ、まあっ、可愛いわね」これは正直な感想だ。
ふと私は、いいアイデアを思いついた。アイツにも教えよう。
「あんたの体がこのまま風にさらされて朽ちるまで放置されてるのも可哀想ね。
そうだ、私があなたの体を食べてあげる。まずは腕からでいいでしょ?」


アイツは必死に首を横に振っている。私はその姿に憐れみを感じつつも、
「言うことを聞きなさいよぉ!」
と叫び、腕をアイツの頭に振り落とした。
「かわらわり」だ。
(どがばきぃっ)
「ぐうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!」
アイツは絶叫した。
その叫び声は、普段の歌うような声とは違う、とても醜く苦いものだった。
あ…腕が血で汚れてしまった。
私は大急ぎで小川に向かい、腕を洗った。
アイツに目をやると、まだアイツはその場から動いていなかった。
私はホッと胸をなで下ろすと、さっき見た茂みに隠したおいたものを
取り出した。それは肉切包丁だった。
アイツの様子を見ると、まだ意識はあるらしい。
頭からは脳髄が見え目も焦点が定まっていないというのに、しぶといヤツだ。
私はアイツの右腕を引っ張ると、根元からスパッと包丁で切り落とした。
「ひぃぃぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
情けない声をあげるアイツを尻目に、私は右腕の味を堪能することにした。
ぐじゅる…ぐちゅるる、と音を立てて私は咀嚼した。骨は一応吐き出し、肉は飲み込んだ。


ふと、手に残った骨が砂糖菓子に見えたので、口に含み舐めてみた。
すると驚いたことに、骨はどんどん溶けて、ほのかな甘みを残して消えてしまったのだ。
右腕のあった所から血をドクドクと流すアイツを見ながら、これは好都合だと思った。
「じゃあ次は左腕ね。だってアンバランスなんだもん」
アイツは気力を振り絞って、なんとか私に抵抗しようとした。
しかしそれは無駄足と言うものだ。結局私はアイツの悲鳴をBGMにして、左腕も食べることが出来た。
と、アイツが何か喋ろうとしている事に気付く。
私は耳を近づけてみた。
「……ぃ…ゃん」
「何?聞こえない」
「らっ……ちゃ…」
「だから何?」
「ら、ラッキーちゃん…」
「ラッキー、ちゃん?」敢えてかわいく言ってみる。
そんな私を見て、何故かアイツは微笑んだ。
…私の中で、何かが弾け飛んだ。私は思いっきり叫んだ。
「気持ち悪いんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ずがっ!
私はアイツに殴りかかっていた。


「ウジ虫が!」(ばきっ)「愚民が!」(ぼこっ)「豚がぁ!」(ぐちゃっ)「死んじゃえ!」(ぐちゃっ)「死んじゃえぇっ!」(ぐちゃっ)
殴るたびにアイツの血しぶきが、私の顔に降りかかった。
しかし私は無我夢中で、アイツの体を叩き続けていた。

「はぁっ…はぁっ…はぁ…」
しばらくして私が正気に戻ったころには、
アイツの体は原型を留めていなかった。
頭蓋骨は砕け、脳味噌が飛び散っていた。桃色の体は、血に染まった
只の肉のカタマリと化していた。
そういえば、運動し過ぎてお腹が空いてしまった。
ちょうど美味しそうな肉があるじゃないか。
私は約束通り、それを――アイツだったものを食べることにした。
ちゃんと解体したかったが、体がぐちゃぐちゃになっているため、
とりあえず腹を切開することから始めた。
包丁で腹のあたりを引き裂き、中の臓器を取り出す。
私は我慢出来なくなって、臓器を一気に啜った。
…意外とおいしい。私の食欲に火が点いた。
あっという間に、私はアイツの脳髄から骨に至るまで全てを食べ尽くしてしまった。


その後、小川で自分の体を洗いながら、私は誰にともなく呟いていた。
「感謝してよね、これでようやく私とひとつになれたんだから。」

気が付くと、もう日が傾き始めている。
早く帰らないと。包丁は忘れずに元あった道路の近くに戻しておこう。
アイツの事を聞かれたら、「途中ではぐれた」とでも言えばいい。
私は幸せな足取りで、帰りの道を歩き出した。
ふと振り向いて、今までいた森に視線を向けた。
夕陽が、森を赫く染めていた。
最終更新:2011年03月24日 20:19
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。