儂は曹操、字は孟徳。今は治世の能臣、乱世の奸雄と称されている。
今日、政治をさぼり平原をうろついていたところ奇妙な生物を発見した。
この奇妙な生物、何かの書で見たような気がするのだ。それは確か―
そうだ、思い出した。これは「歩毛門(ぽけもん)」なる生物だ。
その書によると歩毛門とは今より遥か昔から人間と共存してきたらしい。
この歩毛門なる生物を取り入れた軍は滅法強く、戦に関しては無敗の成績を誇ったそうだ。
…が、最近は滅多に見られなくなったらしい。
過去の乱獲や戦の際の虐殺、また武将達のすとれす解消の為の道具にされた事がその原因だ。
歩毛門とやらにも沢山の種類があるらしいな。この歩毛門は…
黒い頭魔と足のみで体が構成されている。頭には雑草のような草は生えている。
…不思議だ。謎の多い見た目、だ。こやつのことは謎の草、と呼ぶ事にしよう。
儂は謎の草を持ち帰る為こやつを持ち上げた。その瞬間こやつの葉から粉が…
あぁあ…意識が…遠のく…
…今のは何だったのだろう。あの粉を浴びた途端睡魔が襲い意識が遠のいていって…
どうやらあの葉から出る粉には睡眠作用はあるらしい。
戦で使えそうなので儂は謎の草の葉を
「変身!」と掛け声を出しつつ
全て斬り捨ててみた。謎の草の頭部から血が飛び散った。
葉を取っただけなのに血が飛ぶとは…面白い!ますます興味が沸いたぞ謎の草!
儂はもう謎の草の体のことはどうでも良くなってきた。
あの奇妙な粉の出るこやつの体内は一体どうなってるのであろうか。
※実際とはいめーじが異なるぞ
と気になった儂はやってみた。
謎の草とやらは途轍もない叫び声をあげた。こやつ、喋れたのか!
真っ二つにした謎の草からは粉袋のような物は出てこなかった。こやつの臓器が見えているのみだ。
うぅむ…こやつの粉の秘密は何処に隠されておるのだろう?
因みにこやつ、生命力だけは強靭らしい。真っ二つにされてもまだ事切れておらん。
どうやら主要な器官は外して斬っていたらしい…その器官のおかげでまだ生きておる、という訳だ。
どっち道こやつは長くないのだろうか。
ふと、痙攣している謎の草の足元を見た。何か書かれておる。
「小さい」と書かれて…いる…?
字まで書けるとは素晴しい、と言いたいところだったがその驚き以上に怒りが込み上げてきた。
小さいと言うのは儂のこんぷれっくすなのだ。
先程の事に対する罪悪感はあったので謎の草を名医華佗の元へ連れて行こうと思ったが止める。
どの道こやつは後先長くないであろうしな。儂は早々にその場を立ち去った。
…さて、もうこんな時間か。夏侯惇に見つかったら面倒な事になるであろう…
全ては謎の草、こやつのせいだ。儂は探される前に帰るつもりだったのでな。
草原を駆け出す。一歩踏み出す度謎の草の鳴き声が聞こえる。…小さいと言ったお主が悪いのだ。
こやつめハハハ!いくら喚こうが無駄だぞ!さらば!
…やがてその声も聞こえなくなった。
事切れたのだろうか?…ならばよし!だ。
……さて。帰ったら説教が待っているのであろうなぁー。
最終更新:2021年05月25日 12:13