「……マイク、この酒を飲み干したらどうなると思う」
「……今度は樽ごと持ってこられるんじゃないか?」
「ああ……、私もそう思う」
「…………飲まなきゃいいじゃないか」
「……お前が杯を置いたらな」
「ばっ。……できると思うか?」
2人は揃って深々とため息を吐くと、お互いをちらりと見やり一気に自らの杯を仰ぎ飲んだ。
軍の問題児として、戦後復興の名の下に僻地へと追いやられたモニカとマイクの2人は、
その働きから徐々に地元住民に受け入れられていた。
一目で余所者とわかる肌や髪、服装も、日に焼け、現地の装束を身につけることで緩和した。
一番大きかったのは、モニカが積極的に行った『御用聞き』であろう。
現地の若い男性を簡単な通訳とし、村長(むらおさ)から子どもまで、
あらゆる年代の男女に不便なところや欲しいものを聞いていった。
もちろん全てができた訳ではない。何しろたった2人で遠征してきて、定期的な補給も間遠になりがち。
しかし、その姿勢は確実に実を結んだ。
尻を叩かれながら――むしろ蹴られながら――手伝っていたマイクも、
地元の女性たちの人気が得、かつ酒の強さで男たちからも認められるようになると、
積極的に働きはじめるようになった。
というわけで。
月を信仰するこの村の祭りに招かれた2人は、今宵新月に主賓として上座に座っていた。
普段はタブーの酒も、新月で神が眠っている間は無礼講。飲み放題である。
酒に滅法強いため、誰一人つぶれない。しかも、飲み干すとすぐさま酒を注がれる。
そして、注がれた酒を一向に飲まないのは相手に失礼だときている。
東洋のそば文化もびっくりのハイペースである。
酒に強いモニカとマイクも、さすがに酔いが回り始めている。
新しい酒樽が運ばれ、つやつやの頬に素晴らしい笑顔の女性が豪快に蓋を叩き割った。
「……後でまた飲む気はないみたいだな」
「ああ。これからあれを飲み干すようだ」
武者震いするモニカとマイクはそれでも、意外にもそのすぐ後に酒宴から解放された。
しかも1日の休み付きである。
全て理解することはできなかったが、どうやら今回は彼らの歓迎の意もあったらしい。
伝えてくれた青年に感謝と精一杯の笑顔で応えると、2人はふらふらと仮住まいに戻った。
「……体だけでも拭く」
万年床に倒れ込んだ後、だらだらと起き上がったのはモニカであった。
簡易洗面所で汲み置きの水にタオルを数枚浸し、上半身裸になる。
脇や首筋など中心に簡単に拭っていく。
ふらつきながら新しい下着を手に取ったところで後ろから衝撃がきた。
「うわぁああ」
「おっとっと、とぉ」
バランスを崩してへたり込むと、ますます背中のマイクはモニカに体重をかけていった。
「あ、危ないだろぅ!」
「いーや、モニカ。お前こそ今襲撃があったら一発で死んでたぞー」
呂律が回らないなりにしっかりしているモニカとは対照的に、マイクの口調はいつもより少し幼い。
いや、幼さを装っているだけの気がするが。
最初もこれにやられたのだ、と苦々しく思うも、相手は自重の全てを預けてきている。動けない。
「っつ、うわ、お前どこ触って……、んぁ、やめろっ」
「馬鹿ヤロー。目の前に至福の乳があったら揉む、これが常識」
やけにきっぱり宣言すると、マイクは両脇から強引にモニカの乳房を攻め始めた。
屈んで下を向いても失わない張りと、手に余る量感を楽しむように。
音にすればほよほよと震えそうなそれには、中心で小さくも固く主張するものがある。
手のひらの中心でころころと転がしながら全体をも揉み込む様にすると、
モニカは背筋を震わすような甘い呻きをあげた。
「……ぁ、ああっ、……ふ、ぅんんんっ」
逃れようと動いていた手はいつの間にか崩れ落ちそうな自分を支える為になっていて、
今ではそれすらも出来ずに辛うじて頭を地面に着けないようにしているだけだ。
比例して持ち上げられた尻に高ぶりを食い込ませると、更に潰れ落ちた。
「あー……。ははっ、かなり酒が回ってんなぁ」
その様子に無性に愛しさを感じてしまい、マイクは小さく苦笑を漏らした。
首筋を甘噛みしべろりと舐め上げると、くぅんと鼻にかかった声が聞こえた。
くたくたのモニカを抱え込んで胡座をかいた己の上に載せる。
しなだれかかってくる体重に緩む口元をそのままにして、ゆっくりと背中を撫でてやった。
すべすべとした肌触りを楽しんでいると、モニカも腕を回してインナー一枚のマイクの背を撫で回し始めた。
腰の辺りを何回か探るとごそごそと裾から手を差し込み、素肌に触れたところでモニカはほっとため息を吐いた。
「――ふーん。そんなに脱いでほしいのか?」
さすがに睨みの一つは投げられるだろうと思ったのに、素直に頷かれてマイクは目を白黒させた。
「寂しい」
「は、はぁっ?」
「せっかくならちゃんとくっつきたい。……わ、私だけか?」
「…………………………」
「…………なんか言え、このバカ」
混乱の極地にいるマイクをじっと見つめるモニカの頬が僅かに赤い。
酒の力がいつもより彼女を素直にさせているものの、それでも恥ずかしいようだ。
その顔をじっと見つめたあと、マイクは大きく長く息を吐いた。
反射的にその身を離そうとしたモニカを、背を撫でていた手に力を込めてなだめ、もう片方で頭を支えて深く唇を合わせた。
しかしすぐに余裕はなくなり、技巧も何もない勢いだけのキスになる。
モニカも懸命にそれに応えようと積極的に舌と唇を動かす。
お互いの顔がべとべとになり、向きを変える度につながる銀糸は粘度を増していった。
いつの間にかインナーは胸まで捲れ上がっていて、気づいてそのまま脱ぎ捨てた。
ずれた顔を追いかけて腰が上がったのをいいことに、モニカのズボンを脱がしてしまう。
悲鳴を無視して最後の一枚に手をかけようとしたところで、本気の抵抗が来たので身を離した。
性差があるとはいえ、一定量の訓練とテストをくぐり抜けてきた軍人だ。一歩間違えれば大怪我になる。
「なんだよ。場所が不満か? それとももうびしょびしょで恥ずかしいっつうなら、気に――」
「違うっ! 黙れ変態!」
「…………」
その変態に気持ち良くされているのはどこの誰だと問い詰めたいが、
とりあえず目の前で揺れる双丘をすくうように揉みあげ、その先端を口に含んでモニカの反応を伺ってみる。
「んっ……、あ、あのな。まだ上しか綺麗にしてないから、だからもうちょっと後で……っつひゃああっ!」
ごちゃごちゃとうるさいままでは進むものも進まなくなる。
なにやら抗議する口を塞ぐ意味で、マイクは手を伸ばして水に沈むタオルを掴む。
色気もへったくれもない灰色の綿のショーツを勢いよく引きずり下ろすと、
片手でいい加減に絞ったタオルで強引にモニカの股間を拭った。
本格的にあがった悲鳴をそのままに身を屈めて繁みに顔を埋めると、
自分で言っておきながらその濡れ具合に一瞬舌が止まった。
また揶揄したくなるのをぐっと堪え舌をねじ込む。
柔らかくきつい締め付けに腰の強ばりがうずいた。
「や…っ、もうやめ、あっ、あ、やぁああっ!」
もはや酒に酔っているのかこの空気に酔っているのかわからない。
そのまま全体を吸い込むように愛撫し、肉芽を舌先でちろちろと嬲る。
触覚だけにも関わらず、ぷっくりと腫れ上がった様子がわかる。
「んんっ……、そこは、っ、だめ、て……」
「……ああ。ここは噛むのがいいんだっけな」
「ぇ、あっ、あぁっ――――――」
声にならない悲鳴が、モニカが絶頂に達したことを示した。
最後にひと啜りすると、マイクはひとつ息を吐いて上体を起こした。
「んぅっ……、はぁ、ああ……っ」
弛緩し体を震わせるモニカのそばににじりよりその頬をべろんと舐める。
「っ、ひゃうぅ……」
「――赤くなりすぎ」
片膝の裏を掴んで脚の間に腰をねじ込む。取り出しておいた屹立は十分すぎる硬さと角度で、
手で調整しながらマイクはゆっくりと中に押し込んだ。
「は――っ、ふっ、んんん――――…」
「ほれ、こっちに腕回しな」
「…ん。――んんっ」
ふにゃふにゃとマイクの首に手を回したモニカをしっかり抱き、そのまま座位の形に持っていく。
もう一度深く中を穿つと、耐えられないようにマイクに抱きついたモニカは、
膣内の存在に声を漏らしながらもそれでもさらに密着をはかる。
「……背中痛くないか?」
「ああ…、だいじょうぶ」
念のため背中に軽く触れる。傷はついてないようだった。
「ふぁ……っ」
しばらく互いに相手の体温に身を委ねていたのだが、
ふと身じろいだ拍子に互いの胸の突起が触れ合った。
マイクがそのままゆらゆらと軽く揺すって刺激を与え、頃合いをみて動きを止めると、
モニカは不満そうに顔をしかめ、すぐにそんな自分に気づいて顔を赤らめた。
マイクがにやにやと見つめながら催促するようにもう一度体を揺らす。
「うぅ……っ、このっ、変態っ……ん!」
一度得た快感を恐る恐る再現すれば、あっという間に籠絡されてしまう。
一生懸命体を揺らすモニカのことなどお構いなしに
マイクが下から持ち上げたりはみ出た部分を撫でさすったりと好き勝手に楽しむ。
このはみ出た乳房のつるつるとしてハリのある感じがマイクは一番好きなのだが、
しかし、下半身から伝わる直接的な刺激にはやはり勝てない。
モニカの太腿から腰をなで上げ膝を立てさせる。肩に手をついたモニカが顔を赤くした。
「マ、マイク……?」
「そのまま、気持ちいいように動いて」
「動くって、そんな……」
戸惑うモニカは可愛い。
いつもは怒鳴ったり呆れたり、肩に力を入れて任務遂行を至上にしているのに、
この時だけは、頬を淡く染めてマイクの腕の中に収まってしまうのだ。
「ほら、腰を動かして」
「ううぅ……」
一度二度、前後に軽く腰を揺すった後、モニカはゆっくりと上下に動き始めた。
もう一段階踏んでから、と思っていた動きをされてマイクも下から突き上げたくなるが、
このまま乱れていくモニカも見てみたい。
苦渋の決断だった。
「はんっ、ふ、う……、んあ、はぁ…、あ、ああっ」
すぐに腰砕けになるかと思いきや、モニカは徐々にコツを掴みリズミカルに動き始めた。
目線を下にやると、てらてらと光りながら出入りする自分自身が見える。
気づいたモニカがその視線を辿りその光景を見た瞬間、悲鳴を上げてマイクに抱きついた。
「ば、かぁ……」
気持ちいいくせに。
抱きついてきたモニカの胸に埋もれそうになりながら心の中で呟くに留める。
きゅん、と膣内が締まったのはモニカにもわかっているはずだ。
ただ、マイク自身もまた、一層力がこもったのもモニカにはわかっているだろうが。
「あ、あ、ああっ……、ひゃあんっ、や、だ、めぇ……、もぉ、んんっ」
そろそろ主導権を取り戻そうと、マイクもモニカの動きに合わせて腰を動かし始める。
タイミングを合わせたりわざとずらしたり。
そのたびに悩ましげに漏れる吐息は熱さを増し、絶頂が近いのか狭く柔らかい肉壁が、
我慢できないとざわざわうごめく。
「もっと」
「ぇ、え……?」
「ほら。言えよ」
酒のせいだろう。今日はマイク自身いつもより感覚が鈍く、まだ達することはできそうになかった。
「言わないならこのまま……」
「ひっ!」
がっちりと両手でモニカの腰を掴み強引に動きを止める。
自身は思わせぶりに軽く揺するのみ。
「だめっ……」
「んー?」
何回も息を吸い込み、戸惑いながら耳元で小さく小さく囁かれた言葉にニヤリと笑みが零れた。
「やっ、すごっ、……っき、い……」
もう一度モニカを仰向けに寝かせ、相手を気持ち良くさせるために動く。
マイクに全てを委ね、ひたすら己の快楽を貪る姿は見ていてなんとも言えずいい気分である。
処女を抱くのはもちろん、ひとりの女を抱き続けるのも自分には無理だと思っていたのに
なぜか続いているのは、この姿があるからかもしれないと頭のどこか冷静な部分で考える。
どこか達観したように淡々と受け入れたり、自分の魅力を最大限に生かして誘惑したりすることなく、
いつでも精一杯マイクを受け止めようとする。
自分好みに教え込むのはもちろんだが、このごろは最中になると甘えてくるようになってきた。
事後に少し照れて乱暴な口調になるのもまたいい。
「……イっていいぞ」
「んっ、ふぅ……っん、イっちゃうぅ……っ!」
「……っ、くぅ――――」
全身が大きく震えてモニカの中が搾り取るように絡みついた。
流されないように堪え、モニカの全身が弛緩してからもマイクはしっかり抱え直し、
その場でしばし余韻を味わっていた。
そのあと場所を簡易ベッドに移し、マイクもようやく欲望を解放した。
モニカは2度達していた。
一人で寝るのに精一杯なスペースに二人並ぶことは叶わず、事が終わったあとは
ベッドを背に、巻きつけた毛布に二人くるまる。
「――そんな心配しなくても、訓練でもうとっくにボロボロだって」
マイクに俯せるようにもたれかかったモニカは声に笑みを滲ませた。
「いやー……、そういう訳じゃないけど」
口ではそう言いつつ労るように背中を撫でる手は止まらない。
でも、とモニカは呟いて小さくふふふとはにかんだ。
「……なに考えてんだか」
と、間髪入れずに鼻で笑いつつマイクも腕に込める力を増やす。
しこたま酒を煽ったあとではあるが、お互いかなり正気が残った上での出来事だった。
明日からもまた任務の日々。
酒は明日に残さなくても、この日の感情はたぶんこの先また顔を覗かせ、
思わぬ甘いひと時をもたらしてくれるに違いない。
了
最終更新:2010年04月24日 20:34