川沿いに作られし魔法国エルベスト、二千年近い歴史を持つ。たぐいまれなる建築技術により作られた、美しく荘厳な古城を抱えた国家として名をはせる国だ。
 しかし他国へ侵略を続けるオーク種族を中心としたゲルト王国の侵攻をひと月前に受けてしまった。オークは見た目醜悪で、心の奥底に邪悪を抱える民族だ。
 豚のような鼻、脂ぎった肌、飛び出た牙、性格は粗野で文化的とは言い難く、また男しか生まれぬ種族ゆえに他種族の女を好んで襲う。
 特に一番に目をつけられるのは人間の女だ。見た目はまるで違っても、体の相性が良く子供が二月もせずに産まれるということから度々狙われてきた。
 ゲルト王国に目と鼻の先にあり、また人間だけで構成されたエルベストは狙われて当然だった。戦力としては圧倒していたエルベストも、ゲルト王自らが出陣し数倍の兵力で襲われてはどうしようもない。
 エルベスト王国は一部の脱出した人間を除き、十万の住民と王族が囚われのままとなっている牢と化していた。
 襲われた後のエルベスト内部の様子は確認できず、通れるのは城門のみ。その城門に馬車がゆっくりと近づいてくる。門番のオークは馬車を操るオークに機嫌よく話しかけた。
「おう、ゲフゲフ!物資の補給後苦労、後苦労。中身は……おお、人間の女じゃねえか。どこで捕まえてきたんだい」
「いや、森の中だ。おびえて逃げてやがったのさ。簡単なもんだぜ。とりあえず、ゲルト王に報告しねえとな」
 荷台を確認すると両手を縛られたうら若き乙女たちが十人余り控えている。皆、口にさるぐつわをかけられ、両手を縛られていた。どの女も顔をそむけ、おびえている。
「よっしゃ、とおんな。楽しむといいぜ。色々とよ」
 門の扉が開き、馬車はまた動き始めた。門と町の間で後ろの女が話しかけてくる。
「うまく行きましたね。マリエール騎士団長」
「シッ、静かに。不用意に話しかけるな。少しでも気づかれたら終わりなんだぞ」
 従者のオークの中からは先ほどの野太い声と違い、実に女らしいすきとおった声がした。オークの中身にいたのは、女騎士団の団長を務めるマリエール・アルファだったのだ。
 きらめく銀の髪、二十五の若さでエルベスト一の剣の腕前を持ったマリエールはエルベストで長年騎士として働いていたが、襲撃の際に負傷を帯び十数名の団員とともに脱出、再起を図っていたのだ。
 今日のこの日に魔法で声を変え、自分の美しい肌の上にオークの生皮をかぶり危険を冒してまでもエルベストに赴いたのは女王アルフィンを救い出すためである。
 また運が良ければオーク王ゲルトを殺害し、死んでいった仲間や民たちの復讐を行うためでもあった。荷台の下には魔法を施された剣や弓が置かれ、団員たちも決死の覚悟でここに赴いてきた。
「よし、入るぞ。……な、こ、これは!」
 町に入ってすぐにその異変に気づかされることになる。目の前では槍が幾重も上に向けて付きたてられているが、人間の男たちが串刺しにされているのだ。串刺し死体は道に並べられて醜い彩りを作り上げている。
 数百にも及ぶ死体は串刺しにされてから十数日も立っており異臭が漂い腐敗が進んでいた。どの顔も苦痛にゆがんでおり、非道が行われた時の恐ろしさを物語る。
「ひどすぎる……。オークどもめ。ここまでやるのか、これならば奥にはもっと酷いものがあるに違いない」
 荷台にいる団員たちもあまりの惨状に言葉も出ない。しかしマリエールの心配が的中するのはすぐのことだった。
「どうだい!どうだい!新種のアクセサリーはいらんかね。今日新しく作ったアクセサリーはなんと女魔法使い、出しちまって疲れてもすぐに回復してくれるぜ」
(なんだ……、こいつらは人間をなんだと思っているのだ)
 町の中では恐ろしい商売が誕生していた。人間を加工してアクセサリーとする仕事、簡単な木の竿に人間をつりさげて売っているのだ。
 アクセサリーとなるために人間の女はまず両手、両足を切られる。女に抵抗されたり、逃げられるのを防止するとともに、刃向かおうとする気さえなくさせるのだ。
 その上で止血と縫合を行い、だるま人間とする。そうして女たちは特別に両手足に鎖をつけられオークの筋骨隆々とした体に結び付けられる。女たちの体を支えるのは、他に逞しくも汚らしい肉竿だ。
 これで女たちの腹にふたをするとともにいつでも性欲処理可能なアクセサリーとなるのだ。オークは女で作られたアクセサリーを気に入っているのか、行きかうオークたちの都度に女たちが結び付けられている。
 もちろんオークの目的の半分が人間の女である以上、慰みものになったり性奴となるのは重々承知していた。しかし目の前にはまるで人間を牛や豚のように肉の一部として扱うオークの姿しかないのだ。
(こいつら、殺してやるからな!)
 後ろの団員も同じ気持ちだった。両手足を切られ絶望の淵にいる女たちは、アクセサリーとなった今、自由に死ぬこともできない。
 苦悩を顔に浮かべたまま、大半の女たちの腹は膨れ明らかにオークの子を孕んでいた。人間の女にとってオークの子をはらむことは一番の恥辱である。
 子を産んだあとは産道が奇妙に変形し、オークを産んだとわかってしまうのだ。それゆえに人間の男はよりつかず、命が助かっても一人で社会から途絶された生活を送るほかない。人間の社会にはオークの子を産んだ女たちで作られた村さえある。
 国の女たちもほとんどが出産間近の今となっては、助けだしても子を堕胎することはできない。同じ国の人間、また女であるマリエールには、悲しみとつらさが痛いほどに分かる。
 若き頃、オークの手から救助した女たちは例外なく腹に子を宿し、自分を殺してくれと叫んだものだ。しかしそれはできず、助けられた女たちは死を選んだか、また死ぬことを避けてもすぐに国から姿を消した。
 もしも誇り高い女騎士たちがこんな目に会おうものならば、大抵は自殺を選ぼうとするに違いない。もちろん醜悪かつ狡猾なオークは自害さえ許さず性奴隷として使い続けていくのがわかっていてもだ。
「どうも!五千ギルギル、お客さんお買い上げ!」
 視線を向けると先ほど大きな声で宣伝をしていたアクセサリー屋の女魔法使いが売れていた。買ったのはオークの中でも貴族階級で、悪趣味な指輪や人間の貴族から収奪した宝石を身につけている。
「うむうむ。よし、おまえはこれからわしの装飾品として生きる。喜ぶがよいぞ」
 オーク貴族は下卑た顔をして魔法使い女を抱えあげた。そして鎖で体を支えると膣肉を狙い、一気に根元まで肉竿を貫いた。
 オークの肉竿は人間と比べ物にならない。子供の腕ほどある巨大さは言うにつけ、カリ首は肉壁をこすりあげ、また竿の部分も膨れ上がったイボががついている。
 そのようなものをいきなり濡れもせず差し込まれるに至り、女魔法使いは悲鳴を上げるしかない。
「グウアッ!アアアアアァァッ!」
 不思議なことに貫かれた際の悲鳴でオーク貴族の体が光る。そして先ほどよりも元気になっていた。血色がよくなり、緑の肌に潤いが増す。
 女魔法使いは他の呪文が唱えられないように舌を切られてはいるが悲鳴はそのまま出てくる。その悲鳴を特別に他の魔法へと変換する首輪をつけられているのだ。
 アクセサリーの店主が魔法使いが回復してくれるとの言葉はこれによるものだったのだ。しかし悲鳴を上げ続けさせ、自分は体がどんどんと癒えてくるというのはオーク特有の考えから来るものでマリエールは吐き気を催すばかりだった。
 地獄のような街並みを抜けて城内へとはいる。馬車が止められたために武器を最小限だけ体にしまい、マリエールと団員たちは城の中を上がり、王の眼前へと足を向かわせる。
「貴様が女たちを献上しようという奴か。しかし見ての通り、女たちは腐るほどいるのだがな」
 王宮のもっとも奥の玉座に構えるのは憎きゲルト王、他のオークと同じで容姿は醜いがそれでも戦いの中で勝ち上がってきた誇りと雄大さを兼ね備えている。
 椅子に座ったまま、身動きせずに絨毯の上で膝をつくマリエールたちを眺めている。まったく怪しむ様子がない。
「いえ、後ろにいる女たちはエルベストが誇る女騎士団の団員たちの生き残りでございます。ほら、ごらんくださいませ。他の女とは違う体のたくましさがございます」
 マリエールは後ろの団員たちの一人を前に出すと服を引きちぎった。胸と肩があらわになり、美しい白肌が光り輝く。本当ならこのようなまねはしたくないが、相手を騙すためならばと団員は耐える。
「確かに普通の女とは違うな。俺が攻める時も奴らには手こずったものだ。女だてらに王族や貴族など守りおって。最後には尻尾を巻いて逃げたやつらもいたようだが」
 歯を食いしばり嘲笑に耐えながら、巧みに王女の居場所を聞き出そうとする。
「このたびは麗しき姫君のアルフィンをゲルト王自ら捕えられたそうで。アルフィン様はいずこに」
「そんなことを聞いてどうする気だ?」
「いえ、ほんの戯れでございます。エルベスト王族の血を持つアルフィン様を手に入れられたゲルト国王様の処置にどのような高貴な扱いをしているのか、知りたく思いますれば」
 ゲルトはいぶかしげに思ったが、自分が褒められていることに対して素直に喜んでいたようで快く相手の申し出を受ける。
「よし、持ってこい。あいつは俺の芸術品でな。今度、兵士や民に見せる前に特別に見せてやろう」
(連れてこいではなく、持ってこいとは?)

 ゲルトの言葉の意味はすぐに理解できた。扉の向こうから滑車の音が聞こえ、勢いよく扉が開かれる。オーク三人がかりで運んできた滑車の上には巨大な肉塊が置かれていた。
 まるで動物の腸のような外見をしたソレの先には赤い布が巻かれている。オークが布をとると下からは王女アルフィンの姿があらわになった。その姿は異様というほかない。上半身から腰にかけては普通の姿だが、腿から先が幼虫のようになっている。
「……ばかな。こんなことって」
 あいた口がふさがらない。団員のだれもがまるで芋虫と体をつなげられたようなアルフィンの姿に困惑を感じていた。
「ファ……フフファァァ?」
 しかし当のアルフィンに理性はほとんどなく、目の前にいる団員たちの顔もわからない様子だ。大きく口を開いてよだれをこぼし、阿呆のように笑っている。
「どうだ。俺の丹精こめて作った芸術品は。きれいだろう」
「どういうことなのです。この姿は一体何ですか」
 震える声と体を強い理性で何とかしまいこむ。しかし団員の殆どは目に涙を浮かべている。いつも優しく笑い民たちに愛を分け与えた王女アルフィンがこのような化け物になり果てていたのだ。
「簡単なことよ。他の生物と合体させてみた。エルベスト王家の人間は魔法や体の変化に対する耐久力が高い。それに目をつけてな。まるで女王蟻のようだろう。
 こやつに精を吹き込めば、この長い虫のような胴体の中で何十も子を孕めるのよ。人間の雌では一度に一人しか産めん。しかしこれで大量の仲間が増える」
 ゲルトの目的はアルフィンを自分たちの民を増やす生産所とすることだったのだ。そうして改造を施し、ゆくゆくは他の女にもこうした奇妙な生物への返還を図る。
 勢力拡大には兵は必須であり、ある種、当たり前とも思えた行動だが、信愛する王女がこのような目にあえば怒りしか沸かない。
(もうこれでは救っても無駄ではないか。……哀れな、何とひどい。……ゲルトめ)
 目的の一つが封じられた今となっては、もはややることは一つしかない。団員たちはスカートの下から剣を取り出す。短刀だが十二分に切れ味と魔法力を高めた逸品だ。
 マリエールも体を覆っていたオークの生皮を振り払い、下から美しい裸体をさらけ出した。生皮からしみ出た体液が独特の臭気を出した。
 ふっくらとした小さくも可愛らしい胸と柔らかだが引き締まった尻のラインにゲルトの目が注がれる。
 ゲルトの目には驚きはなく、ただ鎮座して突然の出来事に静観するばかりであった
「わたしはエルベスト王国騎士団長マリエール!オークの長ゲルトッ!貴様は国を奪い、民を奪い、王女のすべてを奪った。その命で償ってもらう!」
 裸のマリエールは絨毯を蹴り駈け出す。他の団員たちも皆いっしょについていき、先ほどのおびえた様子が嘘のような獰猛さを見せた。
「覚悟!!」
 マリエールは高く飛んだかと思うと、一気呵成にゲルトの頭めがけて切りかかる。魔法の力をを施した長剣だ。触れでもすれば体が一瞬にして切り裂かれる。
 ゲルトは動かない。相手が迫ってきて自分に剣で切り裂こうと思っているとしても、立ち上がりもしなかった。ただ相手の剣が触れる刹那、あるものを胸から取り出して剣を受け止める。
 瞬時にマリエールの体は弾き飛ばされ円を描き固い石の地面にたたき落ちた。
「く、なぜ……。それはアルフィンさまの足?」
 ゲルトが胸から取り出したのは対になっているアルフィンの美しい足だった。用済みとなった下半身、特に不必要な腿から切り取られた足を剣のように使い、マリエールの刃を受け止めたのだ。
「そうよ。エルベスト王族には魔法の耐性がある。アルフィンの子にも魔法に守られていたという。魔法の国の騎士なら、普通に魔法で攻撃してくると思ってな。用心しておいたのよ」
 王族による魔法耐性があるからこそ、逆に怪物のような移植手術や変化にも耐えることができる。ゲルトはすべてを熟知していたのだ。
 特別な薬草で腐敗を防いでいるため、薬の臭いを漂わせている足にゲルトは舌を這わせた。まるで愛おしい恋人でも愛でるかのような仕草だ。
 マリエールが倒れても次々と女の団員たちは向かってくる。ゲルトはようやく立ち上がると、一斉に群れて襲い掛かってくる団員たちを蟻の子でも蹴散らすように叩き返したのだ。
 一振りした巨大な腕部は見事に女たちを叩き落とし、大きなダメージを与える。
 皆、地面に反吐を吐くほど強くたたきつけられ腹を押さえて身動きできない。ゲルトは呆れていた。
「まったく、所詮人間の力というのはこの程度よ。われわれが劣るのは、子を自由に作れないこと、魔法を作り出し使えぬことぐらい。それ以外に貴様らに劣るものなどないというのに」
「くそっ、まだまだ」
「人間ごときがいつもエルフのように見下し、我らをなめ腐ってくれたな。ゴミどもが。ほら、そこだ!」
 王国一の剣がまるでゲルトには通用しない。空を切りかすかにそよかぜを起こす程度でしかなく、二度三度と切りつけた後、あっさりとゲルトの盛り上がった筋肉による鉄拳を腹にねじ込まれる。
 魔法の力による補正がほとんど意味を持たない以上、ただ剣に頼るほかない。しかし剣の攻撃さえ意味をもたぬほどの力があった。ゲルトはただの汚らしい王ではなく、力でのし上がってきた本物の豪傑であった。
「ゴホッ、ウゥ。オエエッ」
 あまりにも自分のふがいなさに泣けてくる。他の団員と同じくゲロを吐いてのたうちまわるばかりだ。腹の奥には焼きつけるような痛みが残り、体全体をしびれさせる。
 団員たちは次々とオーガ兵士につかまっていた。もうゲルトの命を奪うことさえできない。視線の先には滑車の上であいもかわらず、笑い顔を絶やさないアルフィンの姿があった。
「そいつらを捕えておけ。これでようやくエルベストは俺ゲルトのものになったということを知らせてやるための道具に使える」
 マリエールは両腕をしっかりと掴まれたまま玉座を退室させられていく。虚しさ苦しさが胸を支配する中で哀れな女の背中を見つめるゲルトの姿があった。

「さあ!永き歴史をもつエルベストも我らがゲルト王の前にはむなしく滅び去る。しかし最後の希望、女騎士団が立ち上がったぁ!」
 エルベスト領内に作られたコロシアム、本来なら訓練や決闘に使う神聖な場所だが今は数万のオークたちを前にして哀れな催しを行うだけとなり果てた。
 ゲルトが催したイベントにはオーク兵士のほとんどが集結する。自然と囚われペットや家畜のように扱われた女たちや、兵士たちのアクセサリーとなった者たちも集められた。
 中央では進行役のオークが高い声を張り上げて客を盛り上げる。オークたちも腰を震わせて、雄たけびをあげまるで地震が起きたかのような振動がコロシアム全体に巻き起こる。
「ゲルト様の慈悲か、もしもゲルト様と兵士に女騎士団が勝利すれば、このエルベルトはすぐに自由になる。女騎士団は、我らがゲルト様を倒すことができるのかーッ!」
 司会のオークが手を上げると、片側からマリエール率いる女騎士団が、もう片側からはゲルトがマリエールが連れる団員と同じ数の兵を引き継れてあらわれた。
 聴衆の目がたちまちに二つの集団に注がれる。しかし視線を強く感じたのは女騎士団側で、皆両手で胸や秘所を隠して前かがみになって歩いている。マリエールだけは全裸のまま視線をゲルトに向けて胸を張っていたが、体には汗がにじんでいた。
 不思議なことにとらわれてよりの数日、危害は加えられることがなかった。それも全てこの日のためだったと思えば当然である。
 牢の中にいたときに自害を考えた時もあったが、武器もなく監視の目があり、さらに勝手に死ねば市民たちを虐殺すると聞いては死に逃げることもできなかった。
 手荒く太鼓と鐘の音が叩かれた。裸同士で模擬戦争をやろうというのがゲルトの趣旨らしいが、象と蟻の対決と同じだ。もちろん民衆たちもそれを期待し、エルベルト国民も騎士団の登場に喜びと同じぐらいの重さを持つ苦しみを感じていた。
「さぁ!開始だ!我らがゲルト様にエルベルトの誇る女騎士はどう立ち向かうのか」
 戦いが始まる。しかしゲルト側は悠然と立っているだけで仕掛けようとはしない。十人ものオークたちは勇壮に立ち尽くすだけで相手の攻撃を待っている様子だった。
 しょうがない話だ。わざわざ全力で相手をいたぶる気などないのだ。良くも悪くも楽しめればいいということなのだ。
「みんな、命をかけるんだ。どうせ勝ちはないかもしれないが、我々はせめて少しでも戦うんだ。それでせめてもの意地を見せよう」
 マリエールの言葉に団員たちは頷いた。そして各々がみな胸や秘所を隠すことをやめる。オークの間からは下世話な野次が飛ぶが耳に入ることはない。
 ゆっくり歩き出したマリエールたちは一心に狙うゲルトの首先や体に向けて群がっていく。十人もの女たちは次々にゲルトに飛びかかる。唯一残された歯という武器を使い、彼女たちは牙を付きたてて戦った。
「か、固い!?こんなに固いのか」
 しかし少しでも相手に致命傷を負わせようとする願いは打ち消された。エルベスト国民たちも憎きゲルトに血の一滴でも流れ出てくれれば溜飲が下がったはずだ。
 ただ願いを裏切り人間の、しかも女の歯程度ではオークの頑丈で皮鎧にまで使われる皮膚を裂くことはできない現実が立ちふさがる。
「おーっと、女騎士団はゲルト様を殺そうとしているのか?それとも寵愛を受けようと口づけをしているのか」
 歯が折れるほどの噛みつきも何の効果もなく、ただ時間だけが過ぎていく。何度も何度も噛みつきを繰り返して、必死にどこか柔らかい個所はないかと探し続ける。
 だが無駄なことだった。すべてにおいて体は強靭に作られており、細胞一つ一つが密接に絡みついて体を構成していた。ゲルトは喉元に噛みついているマリエールを見つめて一言つぶやく。
「呆れたぞ」

 それが儚い見世物戦争の終結だった。体を一振りすると、以前襲った時のように女たちはそれぞれ砂と砂利の大地に飛ばされていく。
 女たちがあっけなく倒れるのを見て両側で構えて何もしなかった兵士たちが次々と団員たちに覆いかぶさっていく。
「さすがはゲルト様、我らの指導者よ。さて女ども、覚悟しろ。俺たちがお前たちの腹に贈り物をくれてやるぞ」
「いっ、いやあああああっ。やめて、やめてーっ」
「……た、助けてくださ、やだぁー」
「おおーっと、女騎士団も一皮むけばただの女だ。エルベルトの誇る騎士団は哀れゲルト様一人の手で消えてしまった。ただの女となったものたちにゲルト王国の子種を授け、その行いを罰せよ!」
 進行オークに促されるように団員たちは次々と犯されていった。貴族で構成された団員たちの全員が処女である。その処女たちがよりによってオークの巨大な肉竿を叩き込まれているのだ。
「は、放しなさい!放して、そんなもの入らないわ、やめっ……きゃあー!」
 下半身を血まみれにして激痛と苦痛にさいなまれてのたうちまわり、逃げようとしても狭いコロシウムの中でたちまち追いつかれてしまい餌食となった。オークによってとらえられた女たちは手足を動かすが、蜘蛛の糸にとらわれた虫と同じで何もできない。
 いつか最愛の婚約者のために守ってきたそこをただ差し出して蹂躙されるがままだ。抱えられ、突き抜かれ、また後ろから覆いかぶさられとそれぞれが自由に犯される。
 オーク兵の中には興奮のあまりに腕を強く締め相手に噛みつき失神を負わせるものまで出る始末だった。口から血が混じったあぶくを吹き、また下半身からは小水をまき散らす。騎士団の誇りは無残に散っていく。
「ああ、私たちの希望が……。神はいないのでしょうか」
 聴衆の女たちは自分たちが犯され凌辱された時を思い出しすすり泣くばかりだ。また犯される団員たちに興奮し、オークたちも次々と自分の愛用の女奴隷たちをかわいがり始めた。
「や、やめて!つかないで、おなかが壊れちゃう!!あひぃ~」
「やだあ、マリエール様!頑張ってよ、負けないでよ!そうじゃないと私たちが……ぎゃあああああっ」
 コロシウムは一転して戦いの場から淫欲が渦巻く場へと変貌を遂げていた。オークたちは自分の子を妊娠している女たちに対しても容赦のない突き上げを行う。
 母体への衝撃や、またあまりの状況に産気づくものも出始めた。出産を迎えた女たちは必死に産道を締めつけているが、オークの赤子たちはそれを許さない。
「産みたくない!産みたく……出ないでぇ、出ないでよお」
「オギャ、オギャアアッ!」
 噴き出す羊水と共に女たちの泣き叫ぶ声と赤ん坊のか細くも確かな声が入り混じる。赤子たちは血まみれになりつつも、生まればかりだというのに足取り手取りしっかりと女たちの乳を探してはいずりまわる。
 緑色の赤子を産んだ女たちは、愛すこともできぬ醜い我が子たちに乳を吸われただ泣くばかりであった。目の前の化け物を産んだという恐怖や絶望と、子に乳をやり母となることへの困惑に迷っており、それが涙を呼んでいた。

「貴様は逃げないのか……」
「……もうかなわないということがわかったからな。犯せ」
 騎士団長に近寄るゲルトにマリエールは愛想なく答えた。ゲルトは己の肉竿をいきりたたせたまま、マリエールを抱えあげた。
「ふん、お前は以外と見る目があるな。よし、これから一言も悲鳴を上げなかったら俺の妻にしてやろう」
 マリエールはゲルトに濡れないままの秘所をゆっくりとこじ開けられていく。しかしその間、声を立てず激痛と苦痛にまみれつつも必死に耐えた。
 いつの日か、自分が恋い焦がれるような男性に向けて残した処女、それがいとも簡単に最も憎い怪物によって突き破られる。誇りが許すなら舌を噛み切り自害したかった。
 マリエールには願いがあったのだ。ゲルト王国を内側から壊す、自分の子供たちにせめてゲルトを討たせるとの使命を負わせたかったのだ。
 それゆえに憎きオークの子を孕み産む決心を決めた。長いストロークの間も血が濁流のように流れて肉竿を汚す。また砂の地面に血が飛び散っていく。
 この痛みは男でも耐えることができないほどのものだ。だがマリエールは確固たる意志をみせることで、せめて阿鼻叫喚の地獄の中でもエルベストの誇りを見せてやろうとしたのだ。
 最初拒んで固かった肉壁も血により滑りが良くなる。しかしそれは苦痛をさらに激しくさせる。人形のように上半身をスイングさせて腰を震わせる間に、全身を突き刺される苦しみは続く。
「ふ、ふう。お前はアルフィンよりも根性があるな。アルフィンも最初犯してやった時は我慢したものだが、最後には泣き叫んでいた。お前の名も呼んでいたぞ」
 ゲルトはわざとおこらせようといったが、その言葉は届いていなかった。心は復讐の念で満たされており、もう揺らぐことはないのだ。怒りが増えることも減ることもない。それが今のマリエールだった。
 やがて太い肉竿が一段と収縮と膨張を交互に繰り返していく。きつい締め上げのせいでいよいよ耐えることができなくなってきた。
「ぐっ、い、いくぞぉっ!はらめ、はらめ!」
 腐った魚のような臭いを発した息をマリエールに浴びせかけると、肉竿の先端からは大量の精液が子宮に浴びせかけられる。オークの精液は酒飲みの器を並々満たすほどの量にもなるが、そのすべてが処女子宮の卵子に向けて襲い掛かった。
 ゼリーのような精液は内部を通り子宮の奥深くまで侵入する。途中で止められることはほとんどない。たちまちに卵子は支配され受胎した。
 ただしだからといって逃げられるわけではない。獣のように長く、また大量の精液を体に受け止め続けるほかない。ゲルトも仁王立ちのまま、マリエールを離さずに抱きしめ続けている。
 他の団員たちも皆一人残らず中に出され妊娠は確実だ。どの女たちも気高い表情は消え、目を虚ろにしていた。中にはまだ叫び声をあげるものもいたが、オークにより殴られ白き肌を真っ赤にして痣を作った後は何もできずされるがままである。
 観客も女騎士団のすべても今後は苦悩の谷間をさまようばかり。この長い享楽はまだまだ終わらない。しかし終わったものはある。
 この日、完全にエルベストは滅んだ。そしてゲルト王国の領土がエルベスト支配を行ったと歴史書に刻まれたのだ。

       END

 

 

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最終更新:2008年12月28日 07:31