「う、ウィル? 私……」
「なあに?」
「わ、私…… あ、あっ…… あっ、あん、あんっ、あんっ、アン……アン……」
「触る前から喘がれても萎えるんだけど」
「ちょっ! 私はっ、アンタのことがっ…… す、すッ…… す……」
「す?」
「……す、好きだってわけじゃないんだかねっ! そこの所をよーく弁えておきなさいよっ!
 これはあくまでもご祝儀なんだからっ!!」
「くどいなあ。一回言えば僕は判るよ」
「……判らないわよ、ウィルには」

何といういわれの無い侮辱だろう。
一を聞いて千を知るという、このグランドマスター・バルタヴィールに向かって。
でも、まあいいや。
リシィと口喧嘩をするために寝室に来たわけじゃないし。
反論する代わりに、僕はそっとリシィに顔を寄せる。
その意図するところを悟って、彼女も瞼を閉じた。
おずおずと差し出された唇に、僕は自分のそれを重ねた。

「ん……」

柔らかい唇だった。
女性の唇というものは、年齢に関わらず皆柔らかいものなのだろうか?
それとも僕がこれまでキスしてきた相手全員が、偶然にもそうだったのか。
なかなか興味深くはある。
機会があったら、また地上で誰かとキスして調べてみよう。
ただし、野郎の唇が柔らかいかどうかを実地で試すのは断固ご免被るが。
そんな事を考えながら、僕はリシィの口を舐る。

「ん…… んん……」

ついでに舌も入れてみる。

「んんん? ……んんんんん!? んんんんんんんンんーーっ!!?」

唾液の交換とかもやってみようかな?

「ちゅるっ、じゅる?、じゅるるんんんんーーっ!?!?」

ではまた基本に戻って、唇を吸うように…… と思った矢先、
リシィが僕の胸板をドンドンと叩いてきた。
何事かと思い、僕は顔を離す。

「ぷひゃぅ…… て、いつまで続けんのよぉっ!」

口から伝った唾の跡を拭いながら、リシィは抗議してくる。

「私はキスも初めてだったんだからねっ!」
「あっ、そうだったの」
「なのに、ウィルったらあんな…… あんな変な真似して……」
「何言ってるのさ、コレ位普通だよ」
「……ホント?」
「本当だよ。僕が地上でした時なんて、もっと凄い事もしたよ」
「う…… でも、そんなの本に書いてなかったわよ」
「『文字に出来る事は、真理の欠片に過ぎない』、魔法使いの基本だろ?」

彼女が何の本で知識を得たのか知らないが、所詮は紙の上のこと。
魔道書を読んだだけで魔法が使えるのならば、世界は魔道士で溢れてる。
必要なのは、文献に書かれた真実を体感し、体得することなのだ。

「うっ……」
「これ以上するのは怖くなった?」
「まさかっ…… でも、ちょっとだけ手加減して欲しいかも」
「一応努力はしてみるけどね」
「努力じゃなくって、確約してよ! 天才でしょ!?」

それを言われると弱いなあ。
期待に沿えるように、なるべく優しくやってみるか。
もう一度、彼女と唇を重ねる。
今度はそっと弱めに。
ねぶったり、舌を入れたりは控える。
している時間も、上手く息継ぎの出来ない彼女の為に早めに切り上げた。
口を離すと、今回はリシィから文句は出なかった。
それどころか、潤んだ瞳がどこか嬉しそうで、うっとりとした顔になってる。
キスぐらいで幸せになれるなんて、処女って不思議だ。
しかし、同時にひどく面倒くさいな。
キスだけでこんなに手間取るんだもの。

次のステップに進むために、僕は陶然としている彼女をベッドの上に押し倒した。
緊張した面持ちになるリシィ。
彼女の上に圧し掛かり、その頬にまたキスをする。
唇が触れた瞬間、熱い吐息が彼女の口から漏れて僕の耳に掛かった。
僕も負けずに、リシィの耳元に息を吹きかける。

「ひゃん!」

いい反応が返ってきた。
もう一度吹きかけようとしたら、身をよじってリシィは逃げた。
なかなか面白い。
じゃあ、耳以外の所に息を吹きかけたらどうなるだろうか?
僕は心に浮かんだ素朴な疑問に答えるためにも、彼女の服のベルトに手を伸ばした。
だがリシィの手が、僕の手を遮った。

「お、お願いっ、ウィル」
「何?」
「灯り、消して……」
「どうして?」
「恥ずかしいんだもの」
「うーん……」

僕としては、折角処女を抱かせてくれるというのだから、灯りを最大限に強くして、
じっくりと非処女との違いを検証するつもりだったのに。
だが、彼女の涙に潤んだ瞳にほだされて、僕は指を鳴らす。
パチリという音と同時に、燭台に点してあった魔法の光が翳り、寝室は微かな薄明かりを残すのみとなった。

「これでいい? これ以上弱くすると何にも見えないから」
「うん、」
「それじゃあ……」

僕は改めて彼女の衣服に手を伸ばすが……

「言っておくけど、暗視の魔法を使ったりしちゃ駄目だからね!」
「……」

マズイ、釘を刺されてしまった。
せめて未通娘特有の身体的特徴とやらを、こっそり拝見しようと思ってたのだが。
しょうがない、処女と非処女の差異を明らかにするのは、またいつか機会を探すとしよう。
諦めて、手探りでベルトを外し、スカートを脱がせた。
続いて上着も。
これで彼女は下着だけになった。
脱がせる時に身体に触ったので判ったが、彼女は震えていた。
僕に裸にされるのが、そんなに怖いのだろうか?
一緒に風呂に入った事もあるし、野原で連れ小便もした仲なのに。

ともかく、彼女は震える以外の抵抗はしなかったので、そこから先もスムーズに進んだ。
こちらも身に纏っている服を手早く脱ぐ。
向こうの下着も脱がす。
久しぶりの、裸と裸のお付き合いだ。
僕はまず、目の前にある(といっても薄暗くてよく見えないが)女性特有の身体的特徴へと手を伸ばす。

ぺたり。

「やんっ?」

声の反応は良い。
しかし、予想以上にささやかなおっぱいだ。
少しは脂肪がついているにしても、これまで揉んできた女性の胸と同じ部分だとは信じがたい。
暗くしておいて良かった。
もし明るかったら、ガッカリした顔をリシィに見られて、また一悶着あっただろうから。
それにしても、僕と同い年とはいえ成人の胸とはここまで違うものだろうか。
ある種の哀しさを覚えた僕は、思わず両手でさわさわとその小さな乳房を撫で回してしまう。

「ぅ、ウィルの手つき、やらしい……」
「そう? 」
「他の女の人に……する時も、こんなにやらしい触り方したの?」
「いや、他の人にしたのは、こんなものじゃなかったよ」
「!…… べっ別にいいのよっ? 私にもそういう事しても」
「ご祝儀だから?」
「そうよっ、ご祝儀だからっ!」
「いいの?」
「え、遠慮はしないで」

持主許可を得たので、僕はこれまで体験してきた行為を実行してみようと思う。
まずは、寄せて上げて……

「……」

あれ、寄らない。上がらない。
なんて事だ。
胸部の隆起が、ここまで可動性の無いものだとは。
これじゃあおっぱいの谷間に顔を埋める事さえ出来はしない。

(はあ……)

こっそりため息を吐きつつ、僕はリシィの乳房に顔を寄せ、その控えめな乳首を口に含んだ。

「んっ……!」

唇で啄ばみ、舌で転がす。
膨らんではいたものの、小さな突起だった。
赤ん坊が母親の乳を吸うように、乳首に吸い付いてみる。
その瞬間、びくりとリシィの体が震えた。

「あっ、ウィル……」
「痛かった?」
「……ううん、呼んでみただけ」

この期に及んで、なぜ僕の名前を呼んでみたくなるのかは謎だ。
いきなり声を出したので、強く吸い過ぎたかと思ったじゃないか。
仕返しの意味も込めて、ちょっとだけ乳首に歯を立ててみる。
さすがに彼女も押し殺した悲鳴を洩らしたが、なんとか我慢したようだ。
無論、口でおっぱいを弄る最中、僕の手は只遊んでいたわけではない。
空いている方の乳房も揉み、指で乳首を摘み、彼女の若い滑らかな肌の上を僕の五指は這う。

「リシィの肌は、すべすべだね」
「そ、そう?」
「僕が知っている女の人の中でも、一番肌理が細かくて滑らかな肌触りだよ」
「ミグリファーさんよりも?」
「彼女よりも」
「……嬉しい」

僕としては、彼女のおっぱいの唯一の美点を褒めてあげたのだが、
やっぱり褒められれば嬉しいらしい。
まさか、ここで『でも一番小さいよね』と言えば喧嘩になる事確実なので口に出しては言わない。
そうして褒めている間に、僕の手はそのすべすべの肌を愉しみつつ、
胸から腹へ、そして臍の下へと撫で進んで行った。
しゃりしゃりと、かすかな繊毛の手触りを感じた。

「やっ!?」

脚を閉じて、彼女は手の侵入を妨害する。
指が太腿の間に挟まれてしまった。

「リシィ、そうされると手が動かせないんだけど?」

今更あがく彼女に対して、あえて呆れたような口調で僕が諭すと、
おずおずと両脚に込められていた力が抜けて、手は再び自由を取り戻す。
震える彼女の股間を掴むように、僕はそこに触れた。
裂け目を手の平が覆う。
暗くて互いの顔はよく見えないのにも関わらず、恥ずかしさからか彼女は両手で自分の顔を隠した。

「……ぁ、……ゃ」

弱い力を込めてそこを摩る。
陰裂の周りを、指が縦になぞっていく。
しばらくの間はリシィも耐えていたようだが、顔を隠す指の隙間から次第に熱い吐息が漏れ始めた。
僕と同い年の少女とはいえ、成年女性と同じような反応をみせることが、これで実証できたわけだ。
それを確認し、僕は指で外側の花弁を押し開くと、泌尿孔の上にある場所を触れた。

「はうっ!!」

先ほどの押し殺した悲鳴とは比べ物にならない大きな声を上げ、リシィの体が強張った。

「そんな所、触っちゃ……」
「触っちゃ駄目?」
「ううん…… 駄目じゃないけど、ウィルの手にそこを触られたりしたら、私どうにかなっちゃうかも」
「?、こんな風に?」
「ひゃわぅっ!!」

皮の上からだが、軽く指で刺激を与えると、それだけでまた悲鳴が上がった。

「処女でもここは感じるんだ?」
「そんなこと聞かないでよ……」
「いや、折角リシィに処女の身体を教えてもらえるんだし、はっきりさせておこうと思って」
「ウィルの馬鹿……」
「謂れの無い誹謗はさておき、初めてでもここは感じるものなの?」
「……アンタだって、手すさび位するでしょ」
「それって、普段から自分でここを弄ってるって事?」
「女の子の口から、そんなこと言えるわけないじゃな…… ゃぁっ!」

なるほど、一つ勉強になった。
お礼といっては何だが、ちょっと強めに突起を嬲ってあげた。
複雑な呪印を結ばなければならない魔道士は、総じて指先が器用だ。
いうまでもなく、十代で大導師位に登りつめたこの僕が不器用なはずが無い。
これまで関係を持った女性たちにも、『末恐ろしい子』だとそちらの才能を褒められたものだ。
相手の悶え方を計りながら、少しずつやり方に変化も加え、僕はリシィの陰核を責める。

「や、ウィル! そんなにされたらアタシ、本当におかしくなっちゃうっ」
「大丈夫でしょ、コレくらいなら」
「あんっ、ウィルの指がっ、本物のウィルの指が私のを触ってる……」
「僕は偽腕や幽手の術を使った事が無いんだから、本物も贋物もないと思うけど」
「違うの、いつも自分でする時には……」
「する時には?」
「……こっちの話だから、それ以上は聞いちゃ駄目」

思わせぶりなことを言っておいて、勝手だなあ。
まあ、そうして彼女の秘所に刺激を与えているうちに、ささやかながら湿り気が溢れだしていた。
ではそろそろ本命の、生娘の身体というものを体験させてもらうとしよう。
僕は彼女の細い脚を開かせて、その間に坐りなおす。

「じゃあリシィ、最後にもう一度聞くけど、覚悟はいい?」
「ぅ……、うん! ウィル、来て……」

彼女の声は震えていたが、決意は揺らいでいないようだ。
僕は幼馴染が呉れる餞を受け取るべく、勃起した男根を彼女の陰裂に押し当てる。
初めて触れる男性器の熱さに、一瞬リシィは驚いた様子だったが、
まだその時は僅かに唇を噛み締めるだけで堪えた。
しかし、行く手を阻む処女膜に男根が突き当たり、それを破こうとすると、
流石のリシィも痛みに悲鳴を上げた。

「い、痛いっ!!」

リシィの入り口は、これまで味わった事のない位に硬く、きつかった。
そこに何とか自分の性器を押し込もうと、僕は苦闘する。

「もうちょっと我慢してね」
「『ちょっと』ってどれ位よ!?」
「知らないよ、僕だって処女膜破くの初めてだし」

もちろん破かれた経験もないので、聞かれても困るのである。
そもそも気休めで言っただけなのだから、一々突っ込まないで欲しい。

「いぎっ、痛いっ! 痛いぃっ!」

苦悶の声を聞きつつも、僕は彼女の中へ進んでゆく。
理論的には、一度裂けてしまえば問題ないはずなのだが、
処女を失うのがこんなにも痛みを伴うものだとは、正直ビックリだ。
やはり聞くと見るのでは大違い。
いい体験をリシィにはさせて貰った。

そんなこんなで男根を膣へ捻り込んでいくと、侵入者を防いでいた抵抗が不意に弱まる。

「あぅーっ……!!」

同時に、一番強い苦痛の叫びが発せられた。
でも、それを最後にもう彼女の口から悲鳴が漏れることは無かった。
彼女の純潔を守っていた膜は破かれ、その役目を終えたのだ。

「入れたよ、リシィ」
「ウィル、アタ…、…れし……」
「ん? 何か言った」
「ううん、いいの」

小声だったので、彼女が言った後半部分はよく聞き取れなかった。
おまけに、ちょっと涙ぐんでいるようだ。
そこまで痛かったのかと思うと、苦痛に耐えつつ処女の身体を教えてくれた幼馴染に対し、
僕は改めて感謝の念を抱く。

「じゃあ、奥まで挿れるから」
「うん……」

きつくて狭い粘膜に包み込まれて動かしにくいのだが、何とかペニスを進めていく。
ゆっくりととはいえ、リシィも裂かれたばかりの傷口を抉られるのは辛いだろう。
痛み止めのポーションなり、事前に用意しておくべきだった。
今度処女の娘を抱く機会があったらそうしよう。

「んっ、」
「……一番奥まで入ったね」
「うん、ウィルのが、私の一番深い場所を突き上げるのが判った。……ねえウィル」
「?」
「これで、私の初めての人はウィルなのよね」
「そう云う事になるね」
「……ありがと」
「お礼を言うべきなのは、僕の方だと思うけど」
「ううん、いいのよ…… ウィル……、キスしてくれる?」

その求めに応じて、僕はまた彼女に唇を重ねる。
驚いた事に、今度はあちらの方から吸いついてきた。
なんとも飲み込みが早いな。
女は男を受け入れると、途端に化けるのだろうか?
彼女の腕は僕の頸部をしがみ付くように抱きかかえ、離すまいとする。
それからどれくらい口付けを続けていたか定かではない。
そろそろ良いかなと思って顔を離そうとすると、リシィが何度も引き戻して離さなかったのだ。
考えてみれば、今回の件で彼女が主導的に動くのは初めてだ。
しかたなく僕は、彼女の長い長いキスに付き合った。

でも、キスだけではこちらが詰まらない。
僕は両手でリシィの身体をまさぐる事にした。
破瓜を済ませたばかりの膣で性感を得るのは難しいだろうが、さっきの反応を見るに
他の部分ならリシィも気持ちを高められそうだ。
右手は平らな胸から、わき腹へ、腰からお尻、太腿へ。
左手は彼女の二の腕から腋の下、首筋、耳たぶ、そして背中へ。
五本の指と掌で、なぞり、揉みしだき、撫で回して行く。

「ひゃっ……」

特定の場所に触れると、そこが弱点なのかびくりびくりと震えて面白い。
僕の指はもっと面白い場所はないかと、愛撫を続けて行く。
その度に身悶えするリシィだが、女陰を貫かれたままの上、僕の首をなかなか離さないので逃げようが無い。
否、そもそも逃げるつもりが有るかどうか。
彼女がもらす嗚咽に、苦痛以上の快楽が混じっていることを、僕は承知していた。

性の悦びに咽ぶ彼女の耳元で、僕はそっと囁いた。

「リシィ、僕も動いて良いかな?」
「……、……」

気持ち良すぎて言葉が出せないのか、リシィは無言で頷いた。
もともとリシィが身体を弄られて身悶えするたびに、僕の下半身も擦られていい感じになっていたのだ。
僕はゆっくりと腰を前後に揺すり始める。
その動きに合わせて、僕のベッドはギシギシと軋んだ。

「ぃ……」
「痛い?」
「大丈夫、気にしないでいいから……」

抱きつかれているので、灯りを暗くしても相手の凡その表情は判る。
それが強がりなのは承知の上だったが、時折漏れる苦しそうな吐息は無視し、
リシィの狭い膣内で抽送を続ける。
今までの女の人よりも細くて未成熟な身体にせよ、締め付けられる圧迫感がとても強い。
動きがスムーズなのは、傷口から流れる血が潤滑を良くしているからだろう。
首っ玉を押さえられている所為で激しく腰は動かせないが、今の僕らには十分だった。

「んっ……、リシィっ……」

そうしてどれほど彼女の胎内を往復しただろうか。
僕は、こみ上げる衝動のままにリシィの子宮めがけて精液を放った。
どくどくと肉棒から走り抜ける法悦は、何時味わっても良いものだ。
大きく息を吐いて、僕は打ちつける動きを止めた。

「おっ、終わった?」
「うん」
「ど……、どうだった?」

リシィが恐る恐る聞いてきた。
不安そうな彼女に、僕は正直に答える。

「気持ち良かったよ、リシィ」

感謝の気持ちを込めて、そう囁いた。
暗くてよく判らなかったが、リシィは何故か嬉しそうな顔をしていた。

「私も、良かった……」
「そう? 男と違って、女性は性行為で快感を感じるのに回数が必要だと仄聞したけど」
「本当よ。ウィルに触って貰えて、抱き締めて貰って…… 嬉しかった」
「ふーん……」

いまいち釈然としない。
でも、喜んでもらえたならそれで良しとしよう。
こっちも気持ちよかったし、いい勉強になった。
処女を抱くのもそう悪くはない── 入れるまでの準備が煩雑なのを何とかできるなら。
そう思って、萎んだまま彼女の中に入っていたモノを、僕は引き抜いた。

「痛っ……」
「ああっ、ゴメンね」

そういえば、彼女の秘所は破けたばかりだった。
慌てて僕はそこに手をかざすと、呪文を呟くと同時に大気中のエーテルを集める。
淡い光が掌に生まれ、彼女の陰部を照らす。

「じっとしてて」
「ウィル……」

癒しの光が痛みを和らげ、傷口を癒して行く。
グランドマスターともなれば、高度な治療魔法を身に着けていて当然だ。
地上の僧侶の回復術如き、我々にとっては藪医者のインチキ療法に等しい。
彼女の傷口は見る見るうちに塞がり、元通りになった。
痛みが取れた彼女は、照れたようにお礼を言う。

「あ、ありがとね」
「さっきも言ったけど、お礼を言うべきなのは僕の方だよ」
「……」
「リシィ、ありがとう」

素晴らしい贈り物を僕に捧げてくれた幼馴染に、今度は僕の方からありがとうを言った。
そういえば、彼女に対して真剣に感謝の気持ちを抱いたのは何時以来だろう。
七つのときからずっと一緒だったから、思い出が多すぎて思い出せない。
でも、彼女の処女を貰った今日のことは、ずっと忘れないようにしよ……

「あれ?」
「どうしたの、ウィル?」
「いや、なんでもないよ」

何とか誤魔化す僕を、たぶんリシィは不審の目で見ていることだろう。
しまった。
魔法を使って治したら、処女膜まで治っちゃうじゃないか。
おそらく次回も、リシィはあそこが裂ける痛みに耐えるって事になる。
……気付いてないみたいだから、黙っておこう。

「ねえ、ウィル」
「なっ、何かな」
「今夜は、一緒に寝て良いでしょ?」
「あっ、……いいよ。二人で一緒に寝るのって、何年ぶりかな」
「うふふ、十歳ぐらいまでは、同じベッドで寝ることもあったんじゃない?」
「そうなると、そんなに昔の事じゃないよね」
「……ウィル」
「?」
「何でもない、お休み……」

リシィはそのままシーツに潜り込んでしまった。
僕も彼女の横で寝具を被る。
寝場所を定めると、そっと彼女の手が僕の方へ伸びてきた。
それを優しく握って、二人はまるで子供時代の様に、一緒に眠った。


・・・・・・・・・


それから、僕は全ての荷物を師匠の塔から運び出し、名実共に魔道士として一本立ちした。
ただし僕の塔は、場所は確保してあるとはいえ、まだ地上第一階層の構築が始まったばかりである。
岩山から削りだされてくる石材を運ぶのは、僕が創ったゴーレムたちだが、
実際の建築作業はドワーフや巨人族などを雇っている。
時々起きる彼ら口論や喧嘩を鎮め、鎚や掛矢を振り回しての乱闘を押さえ込まなければ、
何時までたっても作業が進むもんじゃない。
だが、地上に引かれたただの縄張りが、次第に石積みで形を整えられて行くのをみていると、
なんだか楽しい気分になってくる。
今は無き大導師、『建築者』グラニコスは、その生涯で自分の塔だけでも八つは建てたという。
何となく、その気持ちが僕にも判る気がした。

さて、そんなある日の事だった。
バルディナ師の塔に住む魔道士が移動に使う、ワイバーンが僕の塔の予定地にやってきたのは。

「久しぶりね、ウィル」
「……半月前に別れたばっかりじゃないか」

飛竜の背中に大量の荷物を括り付け、やって来たのはリシィだった。
何やら変な成り行きになりそうな予感が、ぷんぷんと漂っている。
ひらりと鞍から飛び降りて、開口一番こう言った。

「お師匠様から許可を貰ったわ。私もここで暮らすから」
「へ?」
「導師試験の学術論文は、魔法建築学で書くことにしたの。
 その参考に、アンタの塔の作業工程を見せてもらうから」
「……」

勿論だが、彼女が許可を取ったのは師匠の塔を出ることについてであり、
自分の作業を見せることを僕が許した憶えは一度も無い。
しかし、あの大量の荷物を見れば判る。
彼女は僕が断るという事を、全く想定していないようだ。

「いいでしょ? 六十階層もあるんだから、私に二三階呉れたって」
「あのね、それは完成してからのことであって、今は木造の仮設塔で寝起きしてるんだよ?」
「そうなの? じゃあ、あの天蓋付きの素敵なダブルベッドは?」
「まだ家具職人に発注したばかりだよ。完成するのは二年後さ」

いやその前に、彼女は僕のベッドを横取りする心算だったのか?

「なーんだ、じゃあ待つしかないのね。いいわよ、仮設塔でも」
「……まあ部屋にはベッドの他にソファーもあるし、一緒に寝起きするのに不便はないけどね」
「決まりねっ。今後ともよろしくっ」

にっこりと微笑んだリシィの顔は、今も昔も変わらない。
新しい生活を始めようかと思っていたけれど、一つぐらい変わらない物があってもいいか。

「じゃあ飛竜もヘタってるし、荷物を部屋に運んじゃおうか。
 仮住まいだから、本棚やベッドも狭くて参ってるけどね」
「そ、そうなの? べっ、別にアタシは良いのよ? 狭くっても、同じベッドで我慢してあげ……」
「何言ってるのさ。リシィはソファー、僕がベッドだ」
「えっ?」
「当然だろ、ここは僕の塔だ」
「なっ何よそれっ! 年頃の女の子を差し置いて、自分一人でベッドに寝る気!?
 酷いと思わないの! この人でなしっ! ……ウィルの馬鹿っ!」

リシィはあらゆる言葉で僕を罵るが、人の作業現場に押しかけて来るのが悪い。
一日の疲れを癒す最後の砦だけは、僕は断じて譲らないぞ……


とまあ、そんなこんなで僕の塔建築は始まったのだ。
押しかけ同門生がやって来た所為で、時々修行の進み具合も見て上げなきゃならなくなったが、
これもグランドマスターとしての責務の一つ、『後進を育てる』だと思って辛抱した。
タダ飯を食べるは気が引けるのか、リシィも塔の内外に棲まわせるクリーチャーの世話などをしてくれる。
少しずつだが塔は大きくなってゆく。
また、成長期にある僕らの身体も、塔が成長するのと同じように、大人のそれになっていくのだった。

ただ、僕たち二人の仲がこの後どうなっていったかは、
僕の塔作りとはまた別の話になるため、ここでは語らずにおこう。

(終わり)

 

 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年12月28日 08:14