ナレーション | 昔々、決して叶わぬ悲しい恋がありました。 でも、それだけで物語は生まれません。 恋の物語を紡ぐべき男は、もう世界には いなくなってしまいました。 恋はいつまでも悲しいままで 物語は生きています。 紡ぎ手のいなくなった物語は、その結末を求めて彷徨っています。 |
あひる・ぴけ・りりえ | はぁ…。 |
あひる・ぴけ・りりえ | わぁ…。 |
ぴけ | さすがねー。 |
りりえ | やっぱり天才ね~。 |
あひる | あたしもあんな風に踊れる日が来るのかなー…。 |
あひる | ん!? | (※誰が言ったのか…あひるかぴけだと) |
ぴけ | ついにその気になったのねー! |
あひる | え。 |
りりえ | 何て途方も無い夢なの~? |
あひる | は。 |
りりえ | わぁ~! |
ぴけ | その意気だよあひる~!(※) |
りりえ | 無茶はあひるの取り柄よ~! |
ぴけ | 夢はおっきい方がいいよ~! |
りりえ | その方が失敗も大きいわ~! |
ぴけ | 頑張れば出来ないことは無ーい! |
りりえ | 普通の人はね~!(この間あひる呻きっ放し) |
ぴけ | まぁ! |
ぴけ・りりえ | とりあえずは、見習いクラスを脱出しないと! |
あひる | う…。 |
あひる | (そうなんだよね…。 プリンセスチュチュになればどんな踊りだって踊れるけど、でもそれってあたし…? 別な誰か…? あたしは只の見習いクラスの女の子で、…っていうか、そもそも只の鳥のアヒルだし…。 練習なんかしても意味ないのかな…) |
あひる | あ! |
るう | …っ。 |
あひる | 危ない! |
モブ | …ん? |
るう | ぁっ…! |
モブ | ああ…! |
あひる・ぴけ・りりえ | あ…! |
みゅうと | 誰…?僕を呼んでいるの? |
…ふぁきあ。 |
ふぁきあ | 何だよ、その顔。 |
みゅうと | え…? どんな顔なの? (※) |
ふぁきあ | …何を考えていた。 |
みゅうと | え? |
ふぁきあ | 今だ。何を思っていた。 |
みゅうと | 誰かが…誰かが呼ぶんだ。 誰だか分からないけど、僕はその人の気持ちが、分かるような気がするんだ。 胸の奥が苦しくて、誰かに会いたい、会って話をしたい、…そんな気持ち、僕にもある。 これって、寂しいっていう気持ちなのかなって。 |
ふぁきあ | …っ! (寂しい気持ちだと?みゅうとが心を取り戻してる) |
みゅうと | あ…! |
ふぁきあ | 見ろ!この顔!嫌いだ、この顔! 下らない感情、寂しさなんて取り戻したこんな嫌な顔! そんな気持ちを思い出して楽しいか?気分が良いか?みゅうと。 |
みゅうと | ううん。 |
ふぁきあ | そう、心などお前には必要ない。必要ないんだ! そんなもの、取り戻したら…。 |
みゅうと | 取り戻したら…? |
ふぁきあ | …とにかく、心など欲しがるな! いいな? |
みゅうと | うん。 |
ふぁきあ | 聞こえない! |
みゅうと | 分かったよ、ふぁきあ。言う通りにする。 |
ふぁきあ | そうだ。それでいい。 |
猫先生 | あひるさん。上級クラスのレッスンを邪魔した罰として、デヴェロッペの練習を一人でやること。いいですね。 |
あひる | はい。 |
猫先生 | しっかり練習すれば初級クラスに戻してあげましょう。 |
あひる | は、はいっ! |
猫先生 | ちゃんと練習しないと…。 |
猫先生 | 私と結婚してもらいますよ! | (同時にあひる「ひぃいいいい!」) |
あひる | 鳥だし見習いだしおまけに居残りだし…はぁ。 るうちゃんみたいになんて一生なれないかも。 あ… みゅうとだぁ。 |
ふぁきあ | 『プリンセスチュチュ?』 |
るう | 『あんなのお話じゃない。 王子様とは結ばれない運命を背負ったお姫様。 告白した途端、光の粒になって消えちゃうのよ』 |
あひる | そんなの…お話の中だけのことだもん。 お話は本当じゃないもん。 でもみゅうとがお話の中の王子様っていうのは、本当だけど…。 っていうか!関係ないじゃん! お話でも本当でも、あたしはみゅうとの心を取り戻してあげたいだけなんだから! |
あひる | (そうだもん…一緒にとか、告白とか、そんなこと考えてないもん!) 考えてないんだからぁ~!! |
あひる | あ…、わぁ…。 |
みゅうと | 僕にはよく分からない。 |
るう | いいのよ。みゅうとはお馬鹿さんでいいの。 これからもずっと。 |
るう | みゅうとは私のことが好きなのよ? |
みゅうと | …僕は…るうのことが好き。 |
るう | そうよ。それだけで充分。何も分からなくてもいいの。心だって必要ないわ。 …何? |
みゅうと | …誰かに会って、話をしたいっていう気持ち、るうに会っても、消えないんだ。 |
るう | っ! |
みゅうと | ねえこれって、寂しい気持ちじゃ… 分からない…、僕が感じている気持ち…。 |
ふぁきあ | るう! |
るう | っ! |
ふぁきあ | 下らないことを、思い出させないでくれないか。 みゅうと、部屋に戻るぞ。 |
みゅうと | うん。 |
ふぁきあ | 君がみゅうとに変なことを思い出させているんじゃないだろうな? |
るう | まさか…! |
ふぁきあ | じゃあ他に誰がやったというんだ。 |
るう | 御伽噺に出てくるプリンセスチュチュなんじゃないの?それが現実に現れて。 |
ふぁきあ | 下らん。 |
ふぁきあ | 今後、あまりみゅうとに近付かないでくれ。 |
るう | 私にいちいち指図しないで。 |
りりえ | あれ? ピアノ? |
ぴけ | あひるは? |
あひる | わぁ…! |
ぴけ・りりえ | …あひる! |
あひる | あれ?二人とも、どうしたのー? |
ぴけ | それはこっちの台詞よー! |
りりえ | そーよ!一人で居残りして、すごぉーく落ち込んでると思って来たのにぃ。 |
ぴけ | 何ハツラツとしてんの! |
あひる | ありがとう!でもあたしとっても今楽しんでるの。 だって踊りって、練習すればする程、楽しくなってくるんだもん! |
りりえ | あひるぅー! |
あひる | あ…ぁあああ…。 |
りりえ | 無理しないで!悲しい時は悲しそうに、辛い時は辛そうにしていいのよ~!? …やっぱり苦しかったのね! |
ぴけ | アンタのせいだって。 |
りりえ | うそぉ。 |
ぴけ | 大丈夫? |
あひる | うん…だ…いじょう…ぶ。はぁ…。 |
りりえ | ね~ぇ?私たちも付き合わない? |
あひる | え? |
ぴけ | ああ!いいねぇ! |
あひる | え?あ、ありがとう! |
りりえ | いいのよ~!あひるの為だもの! よぉ~し!あひると一緒に見習いクラスに転落よぉ~! |
りりえ | ふふふっまだまだ未熟ね、あ・ひ・るっ? |
あひる | う。 |
猫先生 | あひるさん! |
あひる・ぴけ・りりえ | ん? |
あひる | 猫先生! |
猫先生 | 残念なお知らせです。にゃ! |
あひる | 残念なお知らせって…? |
猫先生 | あひるさん、貴方は頑張りすぎましたね。 ですから残念ながら…、 私との結婚はおあずけです!! |
あひる | え…ああ…そうですか…。 |
猫先生 | あと、初級クラスに戻ることを許可します。 |
あひる | え…!わあ…! ありがとうございまーす!! |
ぴけ・りりえ | (わあ~!) |
ぴけ | やったじゃん!良かったね~!! |
りりえ | あひるは素敵よ~!(※)可愛いわ~! |
あひる | ははっははははっえへへっ。 |
あひる | 風出てきたな~… あ、あっみゅうと! |
みゅうと | 僕に、何をして欲しいの? |
あひる | 誰と喋ってるの…? |
あひる | うわああああっ。 な、何?みゅうと…?え?どこ!? みゅうとー!! |
あひる | いない…。 みゅうと…、ぐっ う…。 |
るう | 何してるの? |
あひる | ごめんなさい…、う…、 あれ? え…、こっちにもいない…。 |
るう | みゅうとを呼んでいたみたいだけど。 |
あひる | ああ…そう…。 |
るう | 何か御用? |
あひる | いや用っていうか…今ここから出て行ったんだけど…。 |
るう | え?誰も出て来なかったわよ? |
あひる | え?そんな確かにみゅうとが…。 |
るう | 嘘だわ。だって私見なかったもの。 |
あひる | じゃああっちかなぁ? |
るう | …あなたよね? |
あひる | え? はい? |
るう | 私が踊ってる時に、変な声出して邪魔したの。 |
あひる | ああ、あれは…。 |
るう | 踊りがどれ程集中力を要するものか、あなた全然分かってないみたいだけど…。 |
あひる | あああそのことならごめんなさい! それより今私どうしてもみゅうとが変だったから、っていうかおかしかったから、…って同じかぁ。 とにかく探しに行かないと!それじゃ! |
るう | あっちょっと!話は未だ終わってないのよ!待ちなさいよ! |
ふぁきあ | みゅうと! るぅなんかに近づくんじゃない! |
ふぁきあ | みゅうと…? |
あひる | おかしい、絶対におかしい。見えない誰かとしゃべった後、まるで時間が飛んだようにみゅうとは…。 どっちに行ったんだろう…? るぅちゃん。 |
るぅ | はぁはぁ。あなた、あひるって言ったわね。結構、はぁ、走るの速いじゃない、はぁ。 |
あひる | そぉぉなぁぁん、ですぅぅぅぅ。 |
るぅ | まねしないで、はぁ…。私、はぁ、息切れてる、はぁ、だけ…、はぁ、なんだからぁ、はぁ。 |
あひる | ごめん…なぁ、さぁ、あ、うぅん。 |
あひる | あのぉ。 |
るぅ | なにかしら? |
あひる | せっかく二人いるんだから手分けして探した方が早いかなぁなんて思ったんだけどぉ。 |
るぅ | そ、そうね、そうだわね。私があなたなどと一緒に歩いているなんてそもそも変だわ。 |
あひる | 変…。そうだよね…。あっ、じゃあ、あたしこっち探してみるね。 あ、時間とか決めてどっかで落ち合うことに…。 |
るぅ | やっぱりやめた。 |
あひる | え、ど、どうして? |
るぅ | 四つの目で探した方が確実だから。 |
あひる | うーん、そうなの? |
あひる | あのぉ。 |
るぅ | 今度は何? |
あひる | るぅちゃんはみゅうととずっと前からお友達だったの? |
るぅ | みゅうと、みゅうとって気安すぎると思わない? |
あひる | でも、みゅうとがそう呼んでいいって。 |
るぅ | それになぁに? 私のことお友達でもないのに『るぅちゃん』なんて呼ばないで。 |
あひる | じゃあ、なんて呼べばいいの? |
るぅ | るぅ様。 |
あひる | あ、う、るーーうぅぅ、ぅぅさまぁー…。 |
るぅ | なんでそんなに間を開けるのよ! |
あひる | やっぱり変だもん。るぅちゃんて呼ぶね。その方がかわいいもの。 |
るぅ | かわいい…? |
あひる | それに、こんなにいっぱいお話しして、一緒に歩いたんだから、 もう友達だもん。だから、るぅちゃん。みゅうといないね、るぅちゃん。 |
あひる | あ! なに? みんな、泣いているの? |
るぅ | お葬式だから、当たり前でしょ。 |
あひる | あっ! |
あひる&るぅ | みゅうと! |
あひる | はっはっ、へっ。 |
るぅ | な、なにこれ。 行き止まり…。 |
るぅ | 今度は何? |
あひる | エデルさん。 |
エデル | こんばんは、あひる。こんばんは、るぅ。 |
るぅ | なんで私の名前を? |
あひる | エデルさんはなんでも知っているの。あたしが鳥だっうっ。 |
るぅ | なによ? |
あひる | とにかく怪しい人じゃないって事。 |
るぅ | 怪しいわよ! |
あひる | エデルさん、あたし達みゅうとを探してるの。 で、いまとても変なことがおこって、お葬式の列と一緒にその行き止まりの奥に消えちゃったの。 |
エデル | お話のお話。 |
あひる | え? お話? |
エデル | 昔、とっても心と姿が美しい乙女がいた。乙女は恋をするの。 |
るぅ | ちょっと、全然関係ない話じゃない。 |
エデル | けれど、その乙女の愛した相手は、身分の違う高貴なお方。けっして叶わぬ恋。 |
るぅ | 聞いてるの? |
あひる | まってるぅちゃん。ねぇ、その女の人はどうしたの? |
エデル | みずから命を絶ちました。 |
あひる | えぇっ。 |
るぅ | はぁっ。 |
エデル | この世で、恋が叶わないのなら、生まれ変わってその恋を成し遂げようと。 |
エデル | しかし、許嫁は現れず、乙女は身代わりの男を死の世界へと連れ去った。 |
エデル | それは、お話の中の乙女の悲しいお話。この街には、そのお話と同じ運命をたどった乙女がいた。 |
エデル | お話と同じように恋をして、お話と同じように絶望して、お話と同じように命を絶った。そして…。 |
あひる | お話が本当になるの? |
エデル | お話は本当になるわ。本当とお話が混じり合うこの街では。 |
あひる | みゅうとはお話と同じように身代わりとして…。 |
るぅ | そんな事させない。 |
エデル | はじまるわ…。 |
るぅ | えっ…。 |
あひる | 行き止まりが! |
るぅ | お屋敷? |
エデル | 乙女の魂は、あの屋敷の中庭にとどまり、ずっと待っていた。 |
あひる | 行こう! るぅちゃん! |
るぅ | えぇ。 |
あひる | はっ、はっ。 |
みゅうと | うん。 |
あひる | みゅうと! |
みゅうと | 僕がそうだというの? 君がそう言うのなら僕はそうなのかもしれない。 |
るぅ | みゅうと! 誰と話しているの? |
死霊 | うふ、ふふふふ…。ふふふふ…。ふふふふ…。ふふふふ…。 |
るぅ | なによあれ? |
あひる | あれが死んだ少女? |
あひる | ペンダントは…。 |
みゅうと | 僕は呼んでいたのは君だったんだ。 |
るぅ | ジゼルのローズマリー!? 受け取っちゃダメ! |
あひる | るぅちゃん! |
るぅ | 死の世界に連れ去られるわ。 こっちへ来なさい。 |
みゅうと | あっ。 |
あひる | るぅちゃん…。 |
るぅ | くっ、うっ…、はぁ…、はぁ、はぁ。 はぁっ…、ジゼルを踊り切るには体力が足りない。もっと基礎練習をやっておけばっ…。 |
るぅ | ああっ。うっ…。 |
あひる | るぅちゃーん! |
あひる&るぅ | あっ! |
死霊 | うふふふ、うふふふ。 |
るぅ | ダメよっ! きゃぁぁぁっ。 |
あひる | るぅちゃん! |
ドロッセルマイヤー | おやおや、このままでは王子様は永遠の眠りについてしまうよ。いいのかねプリンセスチュチュ! |
チュチュ | 王子様、ダメ、それを受け取っては。 |
るぅ | ああっ! |
死霊 | どうして邪魔するの? あなたは誰? |
チュチュ | 私はプリンセスチュチュ。あなたと同じ、愛する人とは結ばれない運命なの。私と踊りましょ。 |
るぅ | すごい、対等に踊り続けている。 |
死霊 | 私と同じ運命なら、どうしてあなたの踊りは悲しみに満ちていないの? |
チュチュ | それは、私の心に悲しみに負けないたくさんの思いがあるから。 |
チュチュ | みゅうとを連れて行っても、あなたの悲しみは晴れないでしょ、だって、その悲しみは本当の心ではないんだから。 |
チュチュ | あなたがどれだけ辛かったか私にはわからない。 でも、もう十分に悲しんだということはわかる。 だから今は静かに眠っていいの。もう、悲しまなくていいから。 |
死霊 | はあぁ。 ああっ。 |
チュチュ | これは悲しみという心の欠片。これが人を苦しめる。でも、これも人の大事な心。 |
みゅうと | ううはぁ…。 |
るぅ | プリンセスチュチュ? |
ドロッセルマイヤー | 王子に戻っていく心は、寂しさ、悲しみ、人の望まない心ばかりだね。プリンセスチュチュ。 それが王子に幸せをもたらす事なのかい。はっはっはっはっはっは。 |
あひる | みゅうと、王子様だ。これが本当のみゅうと? |
みゅうと | あひるは火祭りに行くの? |
るぅ | あひるなんかを信じた私が馬鹿だったわ。 |
ふぁきあ | 記憶を無くしてさまよってたおまえに『みゅうと』という名前を付けてやったのは俺なんだ。 |
ランプの精 | 私はただ誰かのために輝いていたいだけ。なにも欲しくないの。それなのに、いつしか私は忘れられた。 |
チュチュ | あなたを必要じゃなくなった事は悲しいけど、でも、しかたのないこと。 |
ドロッセルマイヤー | お話の好きな子どもはよっといで。ふふふふっ、へっへ…。 |