ナレーション | 昔々、一人の子供がおりました。 子供にとって世の中は不思議なことばかり。 どうして? なぜ? どうやって? 一つの謎が解ければ二つの謎が生まれます。 二つの謎が解ければ四つの謎が生まれます。 四つの謎が解ければ数え切れない謎が。 いつしか子供は謎に飲み込まれてしまいました。 |
みゅうと | 嫌だ! やめて! お願いだから来ないで! チュチュ……。 ぐわああああっ! |
あひる | 違うの、苦しめるつもりじゃないの! 嬉しいとか好きとか、いろいろな気持ちがわからないって、かわいそうだって思ったから、だから……。 |
アヒル | くわわわわわわ! |
みゅうと | ぐわああああっ! |
アヒル | ぐわわわわわわ! |
あひる | うっ、そんなつもりじゃないの……。 ううっ、ううっ! |
ぴけ | あひる、先行くよ! |
りりえ | 急がないとまた見習いあひるに逆戻りよ! |
あひる | わかった~。 はあ。 みゅうとはあの日からずっと休んでる。 |
チュチュ | さあ、戻りなさい、みゅうとのところへ。 |
ふぁきあ | 何が怖い? |
みゅうと | プリンセスチュチュが怖いんだ。 |
あひる | ううっ。 あたしのせいだ……。 ううっ、うううっ。 |
女生徒 | みゅうと様大丈夫かしら? |
チワワ | みゅうとの奴もう休んで一週間になるぜ。 |
男生徒 | ふぁきあもだよ。 |
男生徒 | 何考えてるんだ、あいつら。 |
チワワ | ま、みゅうとはいつも何考えてるかわかんない奴だけどな! |
男生徒 | わはははは! |
チワワ | キャッキャッキャッ! |
猫先生 | 先日のエレキ座の『眠りの森の美女』についてのレポートは、みなさん、よい成績でしたよ。 とりわけ、るぅさん、素晴らしい洞察力です。 さすがですね。 |
るぅ | ありがとうございます。 |
猫先生 | それからこれはあひるさんのレポートですね。 |
ぴけ、りりえ | おお! |
猫先生 | 「よかったです」おわり。 |
ぴけ、りりえ | ぎゃ! |
猫先生 | 素晴らしい簡潔さです。 さすがですね。 |
あひる | ありがとうございます。 |
猫先生 | ほめてません。 |
あひる | そーですか。 |
ぴけ、りりえ | うわあああ。 |
猫先生 | こんな事だと、また見習いクラスに落ちてもらうか、私とけっこ……。 |
あひる | いいです。 |
猫先生 | ひゃ! ? |
ぴけ、りりえ | うそ! |
猫先生 | いいって、見習いクラスに落ちることがですか? そ、それとも、け、け、け……。 |
ぴけ | 大変! すごい熱だ! |
りりえ | それにすごい鳥肌! |
ぴけ | 医務室行かなきゃ! |
りりえ | 失礼します! |
猫先生 | おまちなさい! もし、私と結婚したいのなら、放課後に会いましょう。 ピザ屋で待って……。 ああ。 |
ぴけ | どうしたの? ここんとこ元気ないけど。 |
りりえ | あひるがそんなだと、切なくなっちゃうわ。 どんな事があってもすぐに忘れて元気になれるのが、あひるのいいとこよ。 |
ぴけ | そうそう、鳥並みにね。 |
あひる | うっ! |
りりえ | まあ! どうしたの? しっかりして~! |
ぴけ | あんたのせいでしょ! |
りりえ | うそ! |
あひる | なんていうか、わからなくなっちゃって。 |
ぴけ | え、なにが? |
りりえ | 心配ないわ。 お勉強なら前から何もわかってなかったでしょ。 |
あひる | そうじゃなくて、あたしが何をしたいのかとか。 とにかく何もかも。 |
ぴけ | はあ? 何だか重症だわ。 |
りりえ | もしかして。 |
ぴけ | みゅうと様がずっとお休みのせい? |
あひる | う、うううううっ! |
ぴけ、りりえ | やっぱり。 |
ぴけ | そんな時はさ、なぜなぜ橋に行ってみたら? |
あひる | なぞなぞ橋? |
りりえ | なぜなぜ橋。 知らない? 北の小川にかかってる古い橋よ。 |
ぴけ | その橋の上で自分の心の迷いを話すと、どこからともなく、どうして? なんで? って声がするんだって。 |
あひる | こ、怖い話? |
りりえ | こわくないわ~。 色々ときかれて答えているうちに気持ちの整理がつくのよ。 |
あひる | なんでそんな怖く言うの! |
ぴけ | でもね、それだけじゃないの。 |
りりえ | そうよ、質問に答えられないとね。 |
ぴけ・りりえ | 川に取り込まれてしまうのよ~。 なんちゃってね! |
ぴけ | そんな言い伝えがあるの。 |
りりえ | 大昔の話よ。 |
あひる | え、じゃあ今は……。 |
ぴけ、りりえ | そうね、今はそんなことはないんじゃないの? |
あひる | ないんだったら普通に言ってよ! |
ぴけ | でも本当に声を聞いたって言う人も結構いるのよ。 |
あひる | ふうん。 |
りりえ | ものはためしって言うから、行ってみたら? |
あひる | うん、そうだね。 |
りりえ | それでこそあひる! |
ぴけ | それじゃあ! |
ぴけ、りりえ | 気をつけてね……! |
あひる | ひゃあああ! |
あひる | ♪こわくなーい、こわくなーい! あたしがどうすればいいのか、確かめるだけ! たーしかめて、……どうするの? ……あ! |
るぅ | あ……。 |
あひる | うわああ、えっと、なぞなぞ橋に用? |
るぅ | なぜなぜ橋よ。 |
あひる | ああ~、そうそう。 るぅちゃんでも迷ったりすることもあるの? |
るぅ | あ……。 |
あひる | みゅうとの、こと? |
るぅ | そのつもりだったけど、やめたわ。 |
あひる | そう。 あ、きっともうすぐ学校に出てくるよ! |
るぅ | どうしてそう思うの? |
あひる | あ、うん……、なんとなく。 ごめんね、適当なこと言って。 |
るぅ | じゃあね。 |
あひる | あ、うん。 ……あの、るぅちゃん! るぅちゃんは、みゅうとに心がないってこと、知ってるんでしょ? |
るぅ | あ……。 もちろん。 |
あひる | それでその、やっぱり心はあったほうがいい? |
るぅ | 関係ないわ。 |
あひる | え? |
るぅ | 私はずっと、みゅうとだけを見つめてきたの。 心があろうとなかろうと、みゅうとを愛していることに変わりはないわ。 |
あひる | はあ……。 |
るぅ | これからもずっとね。 まだまだ愛したりないわ。 |
あひる | るぅちゃん、愛してるって言った。 みゅうとのこと。 あたしは! あたしはただの鳥だからそんなこと。 |
みゅうと | わ、わあああ、わ、わ! わあああああああああ! |
ふぁきあ | みゅうと! しっかりしろみゅうと! みゅうと! どうした? |
みゅうと | ふぁきあ、夢を見たんだ。 黒くて、大きい誰かが、僕を……! |
ふぁきあ | 心配ない。 |
みゅうと | あれは、誰? |
ふぁきあ | 気にするな、何も知らなくていいんだ。 いいな。 |
みゅうと | チュチュはどこ? |
ふぁきあ | 安心しろ、俺たちがここにいることは、誰も知らない。 |
みゅうと | チュチュに会えないの? |
ふぁきあ | そうだ。 ここから出なければ、そのうちすべて忘れる。 くだらん感情に惑わされることもないさ。 それがお前のためなんだ。 |
あひる | 確かめるって言っても、るぅちゃんもふぁきあも心なんかいらないって。 みゅうとも苦しんでる。 だったら何も確かめること。 あ……。 心のかけらが……! プリンセスチュチュなんて、意味ない! やめちゃっても……。 |
ドロッセルマイヤー | まさか!? |
あひる | これ返して……、ってそれじゃ鳥に戻っちゃうから。 このまま女の子のままでってのは何かずるいかなあ。 ずるいよね、やっぱり。 もう、おしまいにしよう。 |
ドロッセルマイヤー | なんてこった! これじゃあお話は宙ぶらりんだ! やだやだやだやだ~! こんなところで終わらせはせんぞ! お話の登場人物なら決してこんなところで、終わりにするなんて台詞は言わないもんだ! 全く現実って奴は! かくなるうえは! またしてもこの時の抜け穴を使うしかない。 古いものだから、あと何回使えることやら。 |
あひる | あたしがやれることなんて、最初からなかったんだ。 勝手に好きになって、勝手に思い込んで。 うっ……。 え? ……あ。 |
ドロッセルマイヤー | お久しぶり、あひるちゃん。 |
あひる | うぇええ! |
ドロッセルマイヤー | おやおや? 忘れてしまったのかい? ドロッセルマイヤーだよ。 |
あひる | でも、ドロッセルマイヤーさんは、もう死んだ人だって。 |
ドロッセルマイヤー | 死んでるとも。 完全に死んでる。 だから、こんなふうにしかあひるちゃんに会えないんだよ。 プリンセスチュチュをやめるなんてばかげてるってことを教えるために、わざわざやってきたのさ。 さあ、王子様に心を取り戻してあげなくちゃ。 |
あひる | あたしが取り戻したのは、恐怖とか、涙とか。 |
ドロッセルマイヤー | そうそう、愉快、ゆか……。 あっ! アヒルに戻ればもう二度と王子様には会えなくなるよ。 |
あひる | ドロッセルマイヤーさん! |
ドロッセルマイヤー | なにかね? |
あひる | どうしてあたしをプリンセスチュチュにしてくれたの? |
ドロッセルマイヤー | そんなことは決まってる。 |
あひる | へ? |
ドロッセルマイヤー | 面白いから! |
あひる | おもしろ……。 |
ドロッセルマイヤー | あ、いや、それはあひるちゃんしかいないからだよ! |
あひる | あたししか? |
ドロッセルマイヤー | そうとも! 王子のためにすべてをかけながら、王子とは結ばれない、それがプリンセスチュチュの運命。 なんて残酷。 なんて損な役回り。 だれもなりたがらない。 うへへへへ。 |
あひる | そのうえ王子にも嫌われちゃうし。 |
ドロッセルマイヤー | そうそう、実に愉快! もうわかったろう? あひるがやらねば、誰が……。 あああ、だめっ! |
あひる | もういいの! |
ドロッセルマイヤー | おう! なんということを! |
アヒル | クワッ! クワッ!クワクワクワ! ! |
ドロッセルマイヤー | あ、あひるちゃん! ま、まずい! あとはたのむぞ! |
みゅうと | プリンセス、チュチュ… プリンセスチュチュを想う時のこの気持ちは何だろう… 夢で感じたのが恐怖なら、それとは違う…。 …誰? ふぁきあ?チュチュなの? …チュチュ。 |
??? | チュチュ?チュチュってだれ?どんな人? |
みゅうと | 恐い人。 |
??? | 恐いのに探しているの? 不思議…どうして? |
みゅうと | どうしてだろう。 |
??? | どうしてこわいの? |
みゅうと | 僕に心を取り戻すから。 |
??? | あなた心が無いの? |
みゅうと | うん…。 |
??? | 無い方がいいの? |
みゅうと | うん。 |
??? | どうして? |
みゅうと | 分からない。 |
あひる | ぐわ…もういつ見習いクラスに落ちるんだろうとか、そんな心配もしなくていいんだ。 |
あひる | エデルさん。 |
エデル | 宝石はいかが? 鳥の世界、女の子の世界、物語の世界、ほんとの世界。二つの世界を繋ぐ宝石。閉ざしてしまうの? 折角繋がったのに… |
あひる | …くわっもういいの! |
??? | 不思議な人…。ねえ、一緒に行かない?誰も来ない所へ。 |
みゅうと | 誰も来ない所。 |
??? | そう…不思議なあなたの事がもっと知りたいから。 知りたい。もっと知りたい。 |
みゅうと | うん。 |
あひる | くわあぁ…みゅうと!ぐわあ~!大変!ぐわ~っ!ぐわっ! |
あひる | …え…何なのこれ!追いつけない…どうしよう…! |
??? | いつから心が無いの? |
みゅうと | さあ。 |
??? | どうして無くしたの? |
みゅうと | …どうして。 何か…しなくてはならない事があったような気がする。 |
??? | それは何? |
みゅうと | 分からない。 |
??? | 僕は知りたい…。あなたは知りたくないの? |
みゅうと | うん。 |
??? | 本当に? |
みゅうと | …多分。 |
??? | どうして知りたくないの? |
みゅうと | 知ろうとすると、苦しいんだ…。 |
??? | 不思議…僕とあなたはよく似てる。 僕も自分が何なのか知らない。 でも僕とあなたは反対… 僕は、知りたくて知りたくて、苦しいんだ。 |
みゅうと | 君は…もしかして… |
あひる | ダメだこのままじゃ…もう一度… もう一度だけプリンセスチュチュになれたら…! |
ドロッセルマイヤー | そうこなくっちゃ!一度と言わず何度でも!ふふふあはははは! |
みゅうと | プリンセスチュチュ! |
??? | プリンセスチュチュ?恐い人? |
チュチュ | 恐がらないで。一緒に戻りましょう。 |
??? | あなたがプリンセスチュチュ。 どうして彼に心を戻すの? |
チュチュ | それは…。 それは…それがみゅうとの為だと思ったから…。 |
チュチュ | 悲しみとか淋しさとか辛い気持ちもあるけど、嬉しさや好きっていう暖かい気持ちも沢山ある。 それを取り戻してあげたいと思ったから。 |
チュチュ | その方が幸せだと思っていたから。 そんなに苦しむなんて思っていなかったから。 |
みゅうと | チュチュ。 …泣かないで、チュチュ。一緒に戻るから。 |
??? | どうして?恐いのに一緒に行くの?不思議…。 |
ふぁきあ | みゅうと! …どこへ行った…! |
チュチュ | あ…あの、ごめんなさい。でもこれで最後だから…。 |
みゅうと | え…。 |
チュチュ | もうあなたの前には現れないから、安心して。 …さようなら。 |
みゅうと | 待っ…て。 |
みゅうと | 自分の今の気持ち、少しだけ分かるよ。 これは淋しい気持ちと…悲しい気持ち…。 いやだ、もう会えないなんて…。 |
チュチュ | でも、あたしはあなたに苦しみを…。 |
みゅうと | それでもいい。 |
みゅうと | 苦しくても…チュチュの事を想っている時は胸の中に小さな灯りが生まれてくるのが分かるんだ。 |
チュチュ | あっ…あたしも…。 |
みゅうと | チュチュがいなくなると、それが消えて…無くなってしまうような気がする。 それが、こわいんだ。 |
みゅうと | …僕の心を取り戻して、チュチュ。 |
みゅうと | この川に憑いているのは、きっと僕の知りたいと願う心。 僕の胸に戻して。 |
チュチュ | でも… |
心のかけら | そう!僕は、あなただったんだね。 |
チュチュ | ほんとに、いいの? |
みゅうと | うん。 |
プリンセスチュチュ | あ、ああー。心が…。 |
チュチュ | 誰? |
クレール | プリンセスクレール。 |
チュチュ | プリンセスクレール? |
クレール | なにこれ? |
チュチュ | 返して! |
クレール | だめ! |
クレール | あなたには何もあげない。 あなたには何もさせない。 |
チュチュ | え!? |
クレール | うふふふふ。 |
チュチュ | はぁ! |
クレール | うふふふ。ははははは。 |
チュチュ | はぁ!! |
クレール | 王子に近付くな! |
チュチュ | はぁっ!! |
クレール | うふふふふ。 |
クレール | はぁ、あっ。だれ? 私は、だれ? |
チュチュ | はぁぁ、うぅ…。 |
チュチュ | みゅうと…? はぁっ! みゅうと!? みゅうと!? みゅうとぉ!! |
ふぁきあ | はぁっ! みゅうと、おいみゅうと、しっかりしろ! みゅうと…。 う…。 |
ふぁきあ | そうか…、とうとう現れた、という事か。 |
ドロッセルマイヤー | よろしい、よろしい、新しい災いの種の出現、深まる謎、そして苦難と悲劇のまちうける道を選んだあひるに惜しみない拍手を贈ろう。へっへっへっへ。 |
猫先生 | ふっふっふっふ。うにゃにゃにゃにゃ。 |
ぴけ | 窓辺で愛の告白なんてあひるったら大胆! |
りりえ | 逆ロミオとジュリエットって感じだったわぁ! |
あひる | なんか、いつものふぁきあじゃなかったみたい。 |
クレール | ほら王子、あれがあなたを苦しめるものプリンセスチュチュよ。 |
みゅうと | プリンセスチュチュ…。君が僕をどう思っているか知りたい。 |
チュチュ | あたし、あたしは…。 |
ふぁきあ | 俺がもう一度お前の心臓を砕いてやるからな。 |
ドロッセルマイヤー | お話の好きな子はよっといで。うふふふふ、はは。 |