ナレーション | 昔々、大層踊りの好きな女の子がおりました。 女の子は、一度履いたら永遠に踊り続けなくてはならないという赤い靴を履いてしまいました。 女の子は夜も昼もずと踊り続けて……。 おっと、これは違う話でした。 でも、全く違うわけではないのかもしれません。 |
みゅうと | 君が僕をどう思っているのか、知りたい。 |
チュチュ | あたしは……、あたしは……。 |
あひる | あたしはアヒル。 本当はただの鳥。 でも、王子様の瞳に映っていたのは、きれいなドレスをまとったプリンセスチュチュ。 あたしじゃない。 |
るぅ | 私……、今、何を? |
あひる | うわっ! |
あひる | 一晩眠っても変わらない事だってある。 るぅちゃんとみゅうとはお似合いだし。 ふぁきあはやな奴だし、あたしは鳥だし。 窓の外にはいつだって空が開けているし。 問題ないじゃん。 |
るぅ | あたしはるぅ。 それ以外の誰でもない。 ずっと、これまでだって。 これからだって、ずっと。 |
みゅうと | るぅ。 |
るぅ | 何よ? |
みゅうと | 知りたい。 僕は、るぅのことが好きなの? |
るぅ | 私のこと好きって言って。 |
みゅうと | るぅのことが好き。 |
るぅ | みゅうとは私のことが好きなのよ。 |
みゅうと | 僕は……。 るぅのことが好き。 |
みゅうと | ホントにそうなの? |
るぅ | そうよ。 |
みゅうと | じゃあ、チュチュのことを考えてるときのこの気持ちは何? |
るぅ | あ……。 チュチュ。 |
みゅうと | ねえ、るう……。 ホントは、僕は……。 |
るぅ | 知らなくていいのよ、そんなことは。 |
ぴけ | やばくない? |
りりえ | やばげー! |
ぴけ | 二人はどうなってしまうの? |
りりえ | 破局? 破局なの!? |
ぴけ | おお! |
りりえ | 破局なのね! |
ふぁきあ | 俺はこの手でみゅうとの心臓を貫こうとした。 みゅうとのためにそれが一番いいと信じていたからだ。 だが……。 みゅうと自身が心を取り戻すことを望んでいる今、みゅうとを止めることすらできない俺に何ができる。 今の俺にできることといえば、共に運命をうけいれることだけか。 恐れず……。 あ、恐れ? 恐れているのは、俺か。 |
ぴけ | ピザ屋なんてどう? |
あひる | え? |
りりえ | 知らないの? 教会通りの赤い建物よ。 |
あひる | 知らないけど。 ……って、そのピザ屋さんがなんなの? |
ぴけ | 何言ってんの! |
あひる | は、はい? |
りりえ | 決まってるでしょ? |
あひる | 何? |
ぴけ&りりえ | リベーンジ! ! |
あひる | ええっ! リベンジって!? |
ぴけ | もちろん、告白のよ! |
あひる | え? |
りりえ | みゅうと様とるぅちゃんが破局の今こそ、チャーンス! |
あひる | え、どいうこと? |
りりえ | だからあ、この間の告白いまいちだったでしょう? |
あひる | いや……。 |
ぴけ | だから告白しなおしし! |
あひる | あの……。 |
りりえ | てゆうか、ふられなおし? |
あひる | そうじゃなくて、破局ってどういうことなの? え? え? |
ぴけ | 要するに、チャンスってことよ! |
りりえ | 告白、告白! |
あひる | できないってばー! |
りりえ | いくじなし! |
あひる | うへええ! |
りりえ | あひるったら、廊下を転がっちゃだめよ! |
ぴけ | あんたのせいだって。 |
りりえ | そう? |
猫先生 | またあひるさんですか。 廊下を転がるとはそんなことだと、私と結婚してもらうしかありませんね! |
あひる | はっ、すみません~! な、なんかすごい勢いで廊下を転がってきますけど……。 |
ぴけ&りりえ | 何? ……はっ! |
ぴけ | ヤギ子先生! |
りりえ | 廊下を転がると、猫先生に結婚させられてしまいますよ! |
図書の者 | また来たのかね、あの本を読みに。 |
BGM:練習曲(M14A pf)(和田薫) |
ぴけ | んじゃ、家にご招待ってのはどう? |
あひる | 家? |
りりえ | あら? あひるの家ってどこかしら? |
あひる | あ、湖。 |
ぴけ&りりえ | 湖? |
あひる | あっ、いや、湖の方。 |
ぴけ | ってことは、この町の中じゃないんだ。 |
りりえ | この町にあるのは、せいぜい古池ですものね。 |
猫先生 | では初級クラスのレッスンはこれで終わりです。 続いて……。 |
ヤギ子先生 | ……。 |
猫先生 | ふにゃ! こ、この後上級クラスの個人レッスンが始まるので、速やかに退出してください! もたもたしていたら私と結婚してもらいますよ! |
ぴけ | ヤギ子先生がもたもたしてますけど……。 |
りりえ | これは結婚するしか……。 |
猫先生 | ギャーっ! |
ヤギ子先生 | メエエエ! |
あひる | みゅうと……。 |
ぴけ&りりえ | チャンス! |
ぴけ | いつもどおり素敵ね。 |
りりえ | あひるのはいりこむ余地はないみたいね。 |
ぴけ | がっかりしないで、あひる。 |
りりえ | そうよ、はじめからわかってたことなんだし! |
あひる | わかってる。 みゅうとはるぅちゃんにお似合い。 わかってる。 あたしはただのアヒル。 |
みゅうと | 君が僕をどう思っているのか、知りたい……。 |
あひる | わかってる。 あたしがみゅうとをどう思っているのか。 でも言えない……。 |
ドロッセルマイヤー | プリンセスチュチュになれば、王子様を助けることができる。 しかし愛を告げれば、光の粒になって消えてしまうよ。 ひひひひ。 |
あひる | わかってる。 でも、何か胸が、苦しい。 |
るぅ | 何も変わらなくていい。 今のままでいいのに。 なぜ変わろうとするの? 私は変わりたくないのに。 ずっとこのままでいたいのに。 |
るぅ | ……あっ! プリンセスチュチュ。 |
ふぁきあ | 俺が一体何を恐れる必要がある。 くだらん。 王子とカラス。 ここに書かれているのは、みゅうとの物語。 すべての弱いものを守ろうとして自分を傷つけ、心臓まで失う王子の運命。 それだけだ。 |
エデル | 運命を受け入れる者に幸いあれ。 運命に逆らう者に、栄光あれ。 |
ふぁきあ | お前は……。 |
エデル | お話は続いている。 お話は生きている。 |
ふぁきあ | ……う。 これが、俺の運命だというのか。 |
エデル | あ……。 かわいそうなのはるぅ? みゅうと? あひる? それとも? |
ふぁきあ | ……あ。 |
エデル | (人形の糸が……) |
あひる | るぅちゃんのポワントさあ、すっごいきれいだね! るぅちゃんとみゅうと、いつも素敵に踊るんだもの。 まねしたいけど……、まだあたしには無理。 |
るぅ | なにか用なわけ? |
あひる | あ、と、えと。 ……さっきるぅちゃん、プリンセスチュチュって。 |
るぅ | 何勝手にくだらないこと言ってるの。 そんなおとぎばなしなんて、どうでもいいのよ。 |
あひる | あ……。 いつものるぅちゃんだ。 |
るぅ | 当たり前じゃない。 私は変わらないわ。 用があるなら、さっさと言って。 |
あひる | 別に用ってわけじゃないの。 あのさ、最初にポワントで踊った人ってすごいと思うなあ。 思わない? |
るぅ | その、最初にポワントで踊った人のトゥシューズ、どうなったか知ってる? |
あひる | え? さあ。 |
るぅ | 食べられちゃったの。 |
あひる | え? |
るぅ | そのバレリーナを崇拝していた人にね。 |
あひる | ふーん、なんかすごいね。 |
るぅ | くだらないわ、そんな話。 |
あひる | はあ? |
るぅ | 変。 |
あひる | え、うそ、どこが? 何が? はうはうはうはう! |
るぅ | こんな話、他の女の子としたことなかった。 |
あひる | あ、ああ、もしかして、こういうのきらい? |
るぅ | きらいじゃないかも。 |
あひる | はあ、よかった。 あたしたち、もっともっと仲良しの友達になれるよね! |
るぅ | そう? |
あひる | ねえねえ、るぅちゃん、ポワントのコツ、教えて。 |
るぅ | どうして私が教えるのよ! |
あひる | 友達だから! |
るぅ | どこまでずうずうしいっ……。 |
あひる | ん? るぅちゃん? |
るぅ | 何? |
あひる | ね、あの子もお友達? |
るぅ | え。 どの子よ? |
あひる | いなくなっちゃった。 あはははは! |
るぅ | うう。 |
猫先生 | では本日の講義はここまで。 |
ヤギ子先生 | めぇぇぇ。 |
猫先生 | わき、わきゃ、にゃにゃにゃ…。 |
女子生徒1 | るぅさんさようなら。 |
女子生徒2 | さようなら。 |
るぅ | ごきげんよう。 あっ…。 |
ぴけ | 今日も居残り頑張ってね。 |
あひる | うぅ~。 |
りりえ | まぁ、失敗してこそのあひるなんだから気にしないで。 |
るぅ | あひる、まだ帰れないの? |
ぴけ・りりえ | ええ!! |
あひる | うん、罰の居残りの窓ふきだから。 |
るぅ | そう…。 |
るぅ | 友達…。 あ、はっ! くっ、うっ! |
あひる | はぁぁぁ。 あの子さっきの。 |
あひる | 美術家の建物にいった。絵の勉強してるんだぁ。 |
(あひる) | るぅちゃん。 るぅぅぅさまはー。 |
(るぅ) | なんでそんなに間をあけるのよ! |
(あひる) | それにこんなに一杯お話しして一緒に歩いたんだから、もう友達だもん。 だからるぅちゃん。 |
(あひる) | るぅちゃんは本物のお姫様みたいだし、二人はお似合いだから、きっと金のリンゴ貰えるよ。 (二人はお似合いだから) |
るぅ | お似合い? |
猫先生 | それはあなたの勝手な思い込みにすぎません。 |
ヤギ子先生 | めぇぇぇ。 |
猫先生 | あなたにとって私が必要でも、私にとってあなたは必要ないんです。 |
ヤギ子先生 | めぇぇ。 |
るぅ | 私にとって必要なのはみゅうと。でもみゅうとにとって必要なのは…。 プリンセス、チュチュ。 |
(みゅうと) | 僕はふぁきあの事をどう思っているんだろう? るぅの事を考える時、ふぁきあの事を考える時、それとチュチュの事を考える時、どれも違う気持ちになる。 僕、行くよ。ふぁきあ。 |
(ふぁきあ) | 冗談だろ。 |
(みゅうと) | 本気だよ。 |
(ふぁきあ) | 会ってどうする? |
(みゅうと) | チュチュの事を知っているかもしれないんだ。 |
ふぁきあ | みゅうとは変わっていく、俺の知らないみゅうとに。 |
猫先生 | それは仕方のない事なのです。お互いに考え方も違うのですから。 |
猫先生 | にゃっ。 |
ヤギ子先生 | ワシッ。 |
猫先生 | このように食べ物の趣味も全く違います。だから、私はあなたと結婚したくないのです。 私は自分の意志を変えるつもりはありません。 |
ふぁきあ | うっ! 俺の意志。 |
猫先生 | わかっていただけましたか? ヤギ子先生。 |
ヤギ子先生 | めぇぇぇ。 |
あひる | こんにちは。 |
まれん | あなた、バレエ科の。 |
あひる | えーと、あたし、絵描くのヘタッピなんですよ。 |
まれん | それはバレエ科だから。 |
あひる | バレエもヘタッピなんですけどね。 |
まれん | あっ、そうなの? ごめんなさい。 |
あひる | あ、いいのいいの。へへ、ちょっと見せて。 |
まれん | ぇぇ。 |
あひる | わあ、すてき。るぅちゃんの絵だ。 いいなぁ、絵が上手で。 あっ、こっちのも描いたの? |
まれん | うん。 |
あひる | あれ? 全部るぅちゃんの絵? |
あひる | あ、でもるうちゃん綺麗だもんね。わかるわかる。 あ、名前が書いてある。 まれんちゃんていうの可愛い名前だね。あたしはあひる。 |
まれん | わからないの…。 |
あひる | え…? |
まれん | あたし、自分でもよくわからないの。 前からるぅさんをモデルにして絵を描くのは好きだったけど、でも前はもっと果物や景色やいろんなものも描きたかった。 |
あひる | はぁ…。 |
まれん | でも今は、るぅさんしか描けない。 |
るぅ | プリンセスチュチュ。 |
るぅ | プリンセスチュチュがすべてを変えてしまう。 みゅうとを変えてしまう。 このままではみゅうとは私から離れていく。 ゆるさない、そんな事。 |
ドロッセルマイヤー | ならばどうするというのかな? |
るぅ | あっ! はっ! なに? |
ドロッセルマイヤー | 黒く美しい白鳥。 |
るぅ | ああっ。 |
ドロッセルマイヤー | このお話の主人公はどっちなんだい? プリンセスチュチュかい? それとも、プリンセスクレールかい? |
るぅ | プリンセスクレール? |
まれん | 他のものを描こうとすると苦しいの…。 |
あひる | あっ…。 |
ドロッセルマイヤー | お話に主人公は二人もいらない。 王子にプリンセスは二人もいらない。 さあ、続きを聞かせておくれ。 |
まれん | ああ…。 |
プリンセスチュチュ | 私と一緒に踊りましょう。まれんちゃん。 |
まれん | 誰? 私は踊りなんて。 |
プリンセスチュチュ | 大丈夫。自由に踊ればいいの。 |
まれん | はぁ…。 |
プリンセスチュチュ | 苦しみの元はあなたの心の中の偽りの心。 私が取り出してあげる。 そうすればまた大好きな絵が描ける。 |
まれん | 本当? |
プリンセスチュチュ | そう、もとのまれんちゃんに戻れるの。 |
まれん | ああ、ありがとう…。 |
るぅ | 私は、ずっと何も変わらずにいたいのに。 |
るぅ | そう、またプリンセスチュチュがみゅうとを変える。 |
るぅ | はぁぁぁ、あああ…! あああ、あああー! |
ふぁきあ | なんだ? |
みゅうと | チュチュ、どこにいるの? うっ? |
プリンセスチュチュ | あなたは何という心? |
心の欠片 | 僕は、一途に想う心。 |
プリンセスチュチュ | あなたは王子の失われた心の欠片。 |
プリンセスクレール | 一途に想う心ですって? |
プリンセスチュチュ | クレール。 |
プリンセスクレール | こんなものをみゅうとに戻すなんて許さない。 |
プリンセスチュチュ | どうするの!? |
プリンセスクレール | さあ、どうしようかしら。 |
プリンセスチュチュ | あぁ…。 |
プリンセスチュチュ | あぁ、だめっ! |
プリンセスチュチュ | あっ。うっ。 |
プリンセスクレール | ふふ。これ以上王子に心を戻そうなんて考えない事ね。 |
プリンセスチュチュ | でも王子は、王子は心を取り戻したいって言っている。 |
プリンセスクレール | うぅっ! |
みゅうと | プリンセスチュチュ! ああ、よかった、やっと会えた。 あ、クレール。 |
プリンセスクレール | はぁ、なぜ、なぜそんな目で見るの? 私は…。 |
プリンセスチュチュ | え? |
プリンセスクレール | 私は…。うぅっ…。ああっ。 |
プリンセスチュチュ | クレール? |
プリンセスチュチュ | どうしたの? |
プリンセスクレール | こないでっ! ああ、うぅ…。 |
プリンセスクレール | (私は、必要じゃない?) |
プリンセスチュチュ | クレール、何をそんなに苦しんでるの? |
プリンセスクレール | ええ…。 |
プリンセスチュチュ | 私で力になれる事? |
プリンセスクレール | (クレールって誰?) |
プリンセスクレール | ああっ! |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ! |
ふぁきあ | 消え去れ! 醜いカラスめっ! |
プリンセスクレール | からす? |
プリンセスクレール | んふ。思いだしたわ。私はカラス。 そして、私こそが本当のプリマドンナ、プリンセスクレール! 欲しい物は力ずくでも奪い取ればいい! |
あひる | みゅうととクレールの結婚式? 立会人はふぁきあ…。 |
ふぁきあ | あんたから聞かされていた言い伝えは全て現実になっている。 |
カロン | この忌まわしい物語にこれ以上かかわらない方がいい。 |
幼ふぁきあ | 王子って名前も変だからみゅうとって名前にしたら? |
プリンセスチュチュ | クレールの元に行くの? |
みゅうと | 逃げてはいけない気がするから。 |
プリンセスクレール | どう? プリンセスチュチュ。私達はとてもお似合いでしょう? |
ドロッセルマイヤー | お話の好きな子供はよっておいで。 |