ナレーション | 昔々、自由の翼を持つ娘がおりました。 娘を愛する男は思いました。 あの翼を縛ってしまえたらそうすれば片時も離れずにすむのに、と。 けれども、男が娘の翼を魔法のショールでくるむと、たちまち翼は落ち、娘は死んでしまいました。 男は知らなかったのです。 娘の翼は命の源だったことを。 |
ドロッセルマイヤー | さてさて、ようやくお話に必要な役者はそろった。 愛する心のない王子に、死を恐れる騎士。 覚悟のない悪役に、愛を告げられないプリンセス。 へへへへへへへ。 まだ、何かが足りないねえ。 さあ、お行き。 今度こそ人の心などに興味を持つんじゃないよ。 |
アナグマ | あのう、これを引き取ってもらえないでしょうか。 |
エデル | なかなかきれいね。 |
アナグマ | この宝石の名前は、愛。 |
エデル | 愛……。 手放すのはおやめなさい。 あなたによくお似合い。 |
アナグマ | いいえ、私にはこれを持つ資格はなかったんです。 私なんかには、初めから……。 |
エデル | そう。 |
アナグマ | ありがとう。 |
ふぁきあ | プリンセスチュチュ。 あいつが? |
チュチュ | 戦いたくないの。 あなたとは……。 |
ふぁきあ | ふっ。 プリンセスチュチュが誰であろうと関係ない。 俺は俺で、みゅうとを守る! 大ガラスの手から守ってみせる! 恐れず! |
あひる | やっぱりばれちゃったかなあ。 はあ。 |
あひる | はあ。 |
ぴけ | 朝からため息ばっか! |
りりえ | かわいそうに。 失恋の傷は相当深いみたいね。 |
ぴけ | 楽しそうよ、あんた。 |
りりえ | うそぉん! |
あひる | 心配してくれてありがとう。 でも、失恋とかそういうんじゃないの。 |
りりえ | いいのよ、何も言わなくても! わかってるから。 |
ぴけ | とにかくリベンジ、リベンジ! やるしかないわね。 |
りりえ | そうね、やるわよね、あひる! とにかく相手に振り向いてもらわないと。 |
ぴけ | なら、やっぱりプレゼントね! |
りりえ | あ、いいかも。 相手の気持ちもわかるかもね! |
みゅうと | ほんと? |
りりえ | まあ! |
ぴけ | ふぁきあ様も? |
あひる | ふぁきあ……。 |
みゅうと | プレゼントすると、相手の気持ちがわかるって、本当? |
りりえ | おほほほほほほほ! |
ぴけ | やだ! 聞いてたんですか!? |
りりえ | 聞かれたわ! |
ぴけ | これでプレゼントあげたら、下心丸見えじゃん! |
みゅうと | プレゼントって、たとえばどんなもの? |
ぴけ&りりえ | おほほほほほほほ! |
りりえ | 探りいれてきたわ! |
ぴけ | どうしよう。 なんて答えたらいいの!? |
みゅうと | あひるだったら、何がいい? |
ぴけ | あひるなら、もう、何でも! |
りりえ | そうです! もらえるものなら、何でもかんでも! |
ぴけ | 愛さえこもっていれば! |
りりえ | 宝石でも金の延べ棒でも! |
みゅうと | 愛……。 愛が必要なの? |
猫先生 | みゅうとさん。 あなたには昨日恋の特別授業をしましたが、愛の特別授業も必要なようですね。 |
みゅうと | 愛と恋は、違うんですか? |
猫先生 | もちろんです。 そんなこともわからないようでは、ケッ、結婚できませんよ! ふんにゃ~!! ふぁきあさんも授業を受けますか? |
ふぁきあ | 結構です。 |
猫先生 | ではみゅうとさん、まいりましょう。 贈り物は大変結構ですが、ノミ取り首輪などは失礼に当たりますので、注意が必要です。 |
あひる | あー、うー。 やっぱり、ばれてる? |
あひる | うっ、ふぁきあ。 |
ふぁきあ | 聞きたいことがある。 来い。 |
あひる | 聞きたいことって? |
ふぁきあ | プリンセスチュチュ。 |
あひる | ぐ! |
ふぁきあ | そうなんだな? ふっ、正直、驚いたぜ。 まさかよりによってお前だったとはな。 |
あひる | あたしも聞きたいことがある。 あなたもみゅうとを守るために戦ってるんでしょう? なのにどうして、心臓を砕こうとしたの? どうして? |
ふぁきあ | そんなことは、今となってはどうでもいいことだ。 物語はもう止められない。 |
あひる | 物語? |
ふぁきあ | 心のかけらを戻すなら戻せばいい。 それがどんな結末に結びつこうと、俺がみゅうとを守る。 |
あひる | じゃあ、あたしたち一緒に力を合わせて……。 |
ふぁきあ | 断る。 |
あひる | どうして? |
ふぁきあ | 俺はお前を信用していない。 |
るぅ | みゅうと、これ以上心が戻ったらあなたはきっと私から離れていく。 私はカラス、あなたの敵なんだから。 こんなに愛しているのに。 |
るぅ | クレールの記憶を消してずっとるぅのままでいたかった。それなのに…。 |
エデル | 宝石はいかが? 愛する人への贈り物に宝石はいかが? いらっしゃい。 |
るぅ | あなたは? |
エデル | おひさしぶりね、るぅ。 |
みゅうと | 贈り物に? |
エデル | これがお気に召しましたか? |
みゅうと | はぁ…。 |
エデル | この宝石の名前は「愛」。 |
みゅうと | 愛…。 |
るぅ | あら、素敵じゃない。 |
エデル | そんなにお気に入りならあなたに差し上げましょう。 |
みゅうと | え、いいの? |
エデル | どうぞ、私には必要ないものですから。 |
るぅ | いただいておいたら? みゅうと。 |
みゅうと | うん。 |
エデル | ただし、この宝石は強いけれど傷つきやすく、 美しいけれどたやすく汚れ、 奪い合えば死に繋がる事もあります。 充分扱いにはご注意ください。 |
るぅ | そんなに気に入ったの? |
みゅうと | うん。 |
るぅ | ねえ、それ、私にくれるんでしょう? |
みゅうと | ん…。 るぅ、ごめん、これは…。 |
るぅ | 冗談よ。 そう、幸運な人は一体誰なのかしらね? |
みゅうと | それは…。 |
るぅ | ねぇ、ちょっと見せてくれない? |
みゅうと | うん。 |
るぅ | 美しいわ。でも何か大事な物がかけている。なにかしら。 |
みゅうと | え? 本当? あっ…。 |
るぅ | ごめんなさい、大切な物なのに。 ねえ、これ一晩貸してちょうだい。 もっと綺麗にして直してあげるわ。 愛する人の心を繋ぎ止めておけるように。 |
みゅうと | うん。 |
るぅ | 楽しみに待ってて。 んふふ…。 |
プリンセスクレール | みゅうと、誰にもあなたを渡さない。絶対に渡さない。 |
ドロッセルマイヤー | よろしい、よろしい。またひとつ物語に必要な物が加わった。 「憎しみのこもった愛」へへへへ。 これは面白い仕掛けだね。ふっふっふ、へっへっへ。 |
あひる | ふぁきあにバレちゃったけどでもなんか不思議。 今はかえってほっとしてる。 |
ふぁきあ | (俺はお前を信用していない) |
あひる | ふぁきあはいつも一人で考えて、一人で決めて、一人で戦って、一人で…。 一人で泣いて…。本当の顔を見せてくれない。 |
あひる | ふぁきあの腕の中、あたたかかった。 きっとあれが本当のふぁきあなんだよね。 |
みゅうと | ふぁきあ…。 |
ふぁきな | なんだ? |
みゅうと | 僕、チュチュに贈り物をしようと思う。 |
ふぁきあ | そうか。 |
みゅうと | 怒らないの? |
ふぁきあ | 好きにしろ。 |
みゅうと | チュチュに剣を向けないで。お願い、ふぁきあ。約束して。 |
ふぁきあ | そんな約束はできない。 |
猫先生 | はい、猫背にならないでください。 |
あひる | はい! |
るぅ | うふふ。おまちどうさま。 どう? |
みゅうと | わあぁ、素敵だ。 |
るぅ | でしょう? これを送れば愛する人の心を繋ぎ止めておけるわ。いつまでも。 んふふふ。 |
みゅうと | ありがとう、るぅ。 |
(街角で) |
あひる | あーあ、たまには居残りなしで帰ってみたいなあ。 あ、みゅうと。 うがっ! |
ふぁきあ | みゅうと! |
あひる | うわあああ! うがっ! なんだろ? 何があったかわからないけど、おいかけなきゃ。 王子を守るのもプリンセスチュチュの……。 雷? みゅうと傘持ってなかったよね。 どこ行ったのかなあ。 |
(チュチュと出会った場所をさまようみゅうと) |
みゅうと | プリンセスチュチュ……。 どこにいるんだろう? |
あひる | どこにいったのかなあ。 |
エデル | 宝石はいかが? |
あひる | エデルさん、こんにちは。 |
エデル | お久しぶりね、あひる。 |
あひる | そういえばしばらく会わなかったですね。 |
エデル | うふふふふ……。 |
あひる | それよりエデルさん、みゅうと見ませんでした? |
あひる | みゅうとなら贈り物を渡す相手を探しているわ。 |
あひる | え、贈り物? |
みゅうと | プレゼントをすると相手の気持ちがわかるって本当? 君が、僕をどう思っているのか、……知りたい……。 |
チュチュ | あたし、あたしは……。 |
あひる | 贈り物の相手って……、そ、そうか、るぅちゃんだね! きっと心が戻ったからるぅちゃんの気持ちとか知りたくなって……。 うんうん、そうだよね。 でも、もしチュチュにだったら……。 って、だとしてもあひるのあたしにじゃなくて、チュチュになんだから関係ないわけで! ……関係ないわけで……。 ありがとう、エデルさん! |
あひる | もしかしたら、チュチュと会った場所にいるのかも! みゅうと。 みゅうと、どこ? |
みゅうと | チュチュ……、君に会えないの? プリンセスチュチュ。 チュチュ……。 |
あひる | みゅうと! |
みゅうと | あひる……。 |
あひる | みゅうと。 |
みゅうと | どうしてここに? |
あひる | あ、雨降りそうだったから、みゅうと傘もってないだろうなあ、って。 ……誰かを待ってるの? |
みゅうと | うん、プリンセスチュチュを。 |
あひる | あ……。 |
みゅうと | あひるはチュチュのこと知っているの? |
あひる | え? あ、ううん、知らないけど……。 |
みゅうと | そう……。 |
あひる | あの。 |
みゅうと | ん? |
あひる | これ使って! |
みゅうと | ありがとう。 |
あひる | 会えるといいね! |
みゅうと | うん。 |
あひる | じゃあ! みゅうとが会いたいのはあたしじゃなくて、プリンセスチュチュ。 でも……。 |
(ドロッセルマイヤーの歯車が回る) |
ドロッセルマイヤー | おやおや、危険だ。 その考えは実に危険だよ? いいのかな、プリンセスチュチュ……。 |
プリンセスチュチュ | 王子様。誰かをおさがしですか? |
みゅうと | チュチュ。 |
プリンセスチュチュ | 王子。 |
みゅうと | やっと会えた。渡したい物があるんだ。 |
プリンセスチュチュ | 素敵…。 |
みゅうと | これを貰ってほしいんだ。 |
プリンセスチュチュ | 王子がそう望むのなら。 |
みゅうと | つけてあげる。 |
プリンセスチュチュ | はい。 |
プリンセスチュチュ | ありがとう。 |
みゅうと | 変だ。 |
プリンセスチュチュ | 何が? |
みゅうと | 贈り物をすると相手の気持ちがわかるって言われたけど、まだチュチュの気持ちがわからない。僕の事をどう思っているのか。 |
プリンセスチュチュ | それは…。 |
みゅうと | でも、チュチュが喜んでくれたからそれでもいい。 |
プリンセスチュチュ | 王子…。 |
プリンセスチュチュ | え、これは心の欠片。出てきて。 あなたはなんていう心? |
心の欠片 | 僕は「愛する心」。 |
プリンセスチュチュ | 愛する心…。 |
みゅうと | 君が? |
プリンセスチュチュ | もうさまよわなくていいの。あなたが帰る所はここ。 |
心の欠片 | よかった。その飾りの中は暗くて恐ろしい。カラスが…。 |
みゅうと | あっ…。 |
プリンセスチュチュ | はっ! |
みゅうと | あっ…。 |
プリンセスチュチュ | はぁぁぁぁぁっ。 |
みゅうと | はぁっ! くはぁぁぁ。 |
プリンセスチュチュ | はぁっ! はっ。 |
プリンセスチュチュ | クレール! |
プリンセスクレール | 愛する心ですって? プリンセスチュチュを始末するつもりがいい物を見つけたわ。 それと、あなたの正体もね。 |
プリンセスチュチュ | えっ…。 |
プリンセスチュチュ | 何をするの? クレール。 |
プリンセスクレール | なに…!? |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ。 |
ふぁきあ | 下がれ、大烏。 |
ドロッセルマイヤー | おやおや、危険だ。その行動は実に危険だ。 お前は騎士の生まれ変わりとはいえ、ただの人間だ。いいのかな? しかし、プリンセスもただの鳥の家鴨だ。 そして、王子様はただのお話だ。 ふっふっふ。身の程というのを知らないと危険だよ。 おや? プリンセスクレール、お前は何者だい? 本当に悪役なのかい? 本当に大烏なのかい? 危険だ。実に危険だよ、身の程を知らない事は危険だよ。 |
ふぁきあ | みゅうとに近付くな! 立ち去れ、カラス! ええい! |
プリンセスクレール | ふんっ。 |
ふぁきあ | えいっ |
プリンセスクレール | ん! |
プリンセスクレール | うぅ、あっ…。 |
ふぁきあ | クレール! はぁぁぁぁ! |
ふぁきあ | うわぁぁぁぁぁ! うっうっ。 |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ! |
ドロッセルマイヤー | ふふふふ…。ほらほら言わんこっちゃない。 騎士ならば恐れに打ち勝って悪を倒さなくっちゃ。 悪役ならば容赦なくプリンセスを亡き者にしなくっちゃ。 プリンセスならば愛の力で王子を助けなきゃ。 王子ならば知恵と勇気で…。おっとそれは無理だ。 あはははは。 |
プリンセスクレール | 私はプリンセスクレール。欲しい物は力ずくで手に入れるわ。 |
プリンセスチュチュ | クレール、何をするの? |
ふぁきあ | くっ。クレール! |
ふぁきあ | う、うぅ…。 くっ、う…。 |
プリンセスクレール | どうかしら、プリンセスチュチュ。王子の想いに縛られた気分は。 苦しいでしょう? それほどまでに強くあなたの事を思っているのよ。 許せないわ。 |
みゅうと | うう、ああっ…。 |
プリンセスチュチュ | やめて、クレール! 王子を愛しているんでしょ! |
みゅうと | は、あ…。 |
プリンセスチュチュ | ああ…。 どうして…、どうしてそんなひどい事。 |
ドロッセルマイヤー | おやおや、敵に正体もバレ、王子も奪われてしまったねぇ。 なんて愉快…、いや、大変だ。 へっへっへっへ。 |
あひる | 前にこの首飾りなくした時、ふぁきあが持っててくれた事あったよね。 もう一回持っていてくれる? |
ふぁきあ | まさか、あのアヒル? |
アヒル | くわっ! |
るぅ | 元のお人形さんに戻ってしまったの? 無理矢理心を引き抜いたから。 |
みゅうと | でも、その騎士はカラスに一太刀も浴びせる事もできずに、カラスの爪で二つに引き裂かれてしまったのさ。 王子を守るなんて口先だけの役立たず。 |
あひる | お願い、もうこんな事はやめて! |
ドロッセルマイヤー | お話の好きな子供は寄っといで。 うふふふふ、へへ。 |