11話

La Sylphide

ナレーション 昔々、自由の翼を持つ娘がおりました。
娘を愛する男は思いました。
あの翼を縛ってしまえたらそうすれば片時も離れずにすむのに、と。
けれども、男が娘の翼を魔法のショールでくるむと、たちまち翼は落ち、娘は死んでしまいました。
男は知らなかったのです。
娘の翼は命の源だったことを。

BGM:行進曲/くるみ割り人形

ドロッセルマイヤー さてさて、ようやくお話に必要な役者はそろった。
愛する心のない王子に、死を恐れる騎士。
覚悟のない悪役に、愛を告げられないプリンセス。
へへへへへへへ。
まだ、何かが足りないねえ。
さあ、お行き。
今度こそ人の心などに興味を持つんじゃないよ。
(操られるエデル)
(雨の日に、橋の上で)

BGM:自動人形の踊り/コッペリア

アナグマ あのう、これを引き取ってもらえないでしょうか。
エデル なかなかきれいね。
アナグマ この宝石の名前は、愛。
エデル 愛……。
手放すのはおやめなさい。
あなたによくお似合い。
アナグマ いいえ、私にはこれを持つ資格はなかったんです。
私なんかには、初めから……。
エデル そう。
アナグマ ありがとう。
(レッスン室で)

BGM:序曲「コリオラン」

ふぁきあ プリンセスチュチュ。
あいつが?
チュチュ 戦いたくないの。
あなたとは……。
ふぁきあ ふっ。
プリンセスチュチュが誰であろうと関係ない。
俺は俺で、みゅうとを守る!
大ガラスの手から守ってみせる!
恐れず!
(女子寮)
あひる やっぱりばれちゃったかなあ。
はあ。
(校庭)

BGM:小さな序曲/くるみ割り人形

あひる はあ。
ぴけ 朝からため息ばっか!
りりえ かわいそうに。
失恋の傷は相当深いみたいね。
ぴけ 楽しそうよ、あんた。
りりえ うそぉん!
あひる 心配してくれてありがとう。
でも、失恋とかそういうんじゃないの。
りりえ いいのよ、何も言わなくても!
わかってるから。
ぴけ とにかくリベンジ、リベンジ!
やるしかないわね。
りりえ そうね、やるわよね、あひる!
とにかく相手に振り向いてもらわないと。
ぴけ なら、やっぱりプレゼントね!
りりえ あ、いいかも。
相手の気持ちもわかるかもね!
みゅうと ほんと?
りりえ まあ!
ぴけ ふぁきあ様も?
あひる ふぁきあ……。
みゅうと プレゼントすると、相手の気持ちがわかるって、本当?
りりえ おほほほほほほほ!
ぴけ やだ!
聞いてたんですか!?
りりえ 聞かれたわ!
ぴけ これでプレゼントあげたら、下心丸見えじゃん!
みゅうと プレゼントって、たとえばどんなもの?
ぴけ&りりえ おほほほほほほほ!
りりえ 探りいれてきたわ!
ぴけ どうしよう。
なんて答えたらいいの!?
みゅうと あひるだったら、何がいい?
ぴけ あひるなら、もう、何でも!
りりえ そうです!
もらえるものなら、何でもかんでも!
ぴけ 愛さえこもっていれば!
りりえ 宝石でも金の延べ棒でも!
みゅうと 愛……。
愛が必要なの?

BGM:結婚行進曲/真夏の夜の夢

猫先生 みゅうとさん。
あなたには昨日恋の特別授業をしましたが、愛の特別授業も必要なようですね。
みゅうと 愛と恋は、違うんですか?
猫先生 もちろんです。
そんなこともわからないようでは、ケッ、結婚できませんよ!
ふんにゃ~!!
ふぁきあさんも授業を受けますか?
ふぁきあ 結構です。
猫先生 ではみゅうとさん、まいりましょう。
贈り物は大変結構ですが、ノミ取り首輪などは失礼に当たりますので、注意が必要です。
あひる あー、うー。
やっぱり、ばれてる?
(渡り廊下→レッスン室)

BGM:古城/展覧会の絵

あひる うっ、ふぁきあ。
ふぁきあ 聞きたいことがある。
来い。
あひる 聞きたいことって?
ふぁきあ プリンセスチュチュ。
あひる ぐ!
ふぁきあ そうなんだな?
ふっ、正直、驚いたぜ。
まさかよりによってお前だったとはな。
あひる あたしも聞きたいことがある。
あなたもみゅうとを守るために戦ってるんでしょう?
なのにどうして、心臓を砕こうとしたの?
どうして?
ふぁきあ そんなことは、今となってはどうでもいいことだ。
物語はもう止められない。
あひる 物語?
ふぁきあ 心のかけらを戻すなら戻せばいい。
それがどんな結末に結びつこうと、俺がみゅうとを守る。
あひる じゃあ、あたしたち一緒に力を合わせて……。
ふぁきあ 断る。
あひる どうして?
ふぁきあ 俺はお前を信用していない。
るぅ みゅうと、これ以上心が戻ったらあなたはきっと私から離れていく。
私はカラス、あなたの敵なんだから。
こんなに愛しているのに。
るぅ クレールの記憶を消してずっとるぅのままでいたかった。それなのに…。

BGM:自動人形の踊り/コッペリア

エデル 宝石はいかが?
愛する人への贈り物に宝石はいかが?
いらっしゃい。
るぅ あなたは?
エデル おひさしぶりね、るぅ。
みゅうと 贈り物に?
エデル これがお気に召しましたか?
みゅうと はぁ…。
エデル この宝石の名前は「愛」。
みゅうと 愛…。
るぅ あら、素敵じゃない。
エデル そんなにお気に入りならあなたに差し上げましょう。
みゅうと え、いいの?
エデル どうぞ、私には必要ないものですから。
るぅ いただいておいたら? みゅうと。
みゅうと うん。

BGM:ジークフリートの葬送行進曲/神々のたそがれ

エデル ただし、この宝石は強いけれど傷つきやすく、
美しいけれどたやすく汚れ、
奪い合えば死に繋がる事もあります。
充分扱いにはご注意ください。

るぅ そんなに気に入ったの?
みゅうと うん。
るぅ ねえ、それ、私にくれるんでしょう?
みゅうと ん…。
るぅ、ごめん、これは…。
るぅ 冗談よ。
そう、幸運な人は一体誰なのかしらね?
みゅうと それは…。
るぅ ねぇ、ちょっと見せてくれない?
みゅうと うん。
るぅ 美しいわ。でも何か大事な物がかけている。なにかしら。
みゅうと え? 本当?
あっ…。
るぅ ごめんなさい、大切な物なのに。
ねえ、これ一晩貸してちょうだい。
もっと綺麗にして直してあげるわ。
愛する人の心を繋ぎ止めておけるように。
みゅうと うん。
るぅ 楽しみに待ってて。
んふふ…。

プリンセスクレール みゅうと、誰にもあなたを渡さない。絶対に渡さない。

ドロッセルマイヤー よろしい、よろしい。またひとつ物語に必要な物が加わった。
「憎しみのこもった愛」へへへへ。
これは面白い仕掛けだね。ふっふっふ、へっへっへ。

BGM:マズルカ第1番

あひる ふぁきあにバレちゃったけどでもなんか不思議。
今はかえってほっとしてる。
ふぁきあ (俺はお前を信用していない)
あひる ふぁきあはいつも一人で考えて、一人で決めて、一人で戦って、一人で…。
一人で泣いて…。本当の顔を見せてくれない。
あひる ふぁきあの腕の中、あたたかかった。
きっとあれが本当のふぁきあなんだよね。

みゅうと ふぁきあ…。
ふぁきな なんだ?
みゅうと 僕、チュチュに贈り物をしようと思う。
ふぁきあ そうか。
みゅうと 怒らないの?
ふぁきあ 好きにしろ。
みゅうと チュチュに剣を向けないで。お願い、ふぁきあ。約束して。
ふぁきあ そんな約束はできない。

猫先生 はい、猫背にならないでください。
あひる はい!

BGM:行進曲/くるみ割り人形

るぅ うふふ。おまちどうさま。
どう?
みゅうと わあぁ、素敵だ。
るぅ でしょう?
これを送れば愛する人の心を繋ぎ止めておけるわ。いつまでも。
んふふふ。
みゅうと ありがとう、るぅ。
(アイキャッチ)

BGM:行進曲/くるみ割り人形

(街角で)
あひる あーあ、たまには居残りなしで帰ってみたいなあ。
あ、みゅうと。
うがっ!
ふぁきあ みゅうと!
あひる うわあああ!
うがっ!
なんだろ?
何があったかわからないけど、おいかけなきゃ。
王子を守るのもプリンセスチュチュの……。
雷?
みゅうと傘持ってなかったよね。
どこ行ったのかなあ。
(チュチュと出会った場所をさまようみゅうと)
みゅうと プリンセスチュチュ……。
どこにいるんだろう?
(街角で)

BGM:自動人形の踊り/コッペリア

あひる どこにいったのかなあ。
エデル 宝石はいかが?
あひる エデルさん、こんにちは。
エデル お久しぶりね、あひる。
あひる そういえばしばらく会わなかったですね。
エデル うふふふふ……。
あひる それよりエデルさん、みゅうと見ませんでした?
あひる みゅうとなら贈り物を渡す相手を探しているわ。
あひる え、贈り物?
みゅうと プレゼントをすると相手の気持ちがわかるって本当?
君が、僕をどう思っているのか、……知りたい……。
チュチュ あたし、あたしは……。

BGM:弦楽四重奏曲第2番 第3楽章 Notturno(夜想曲)(ボロディン)

あひる 贈り物の相手って……、そ、そうか、るぅちゃんだね!
きっと心が戻ったからるぅちゃんの気持ちとか知りたくなって……。
うんうん、そうだよね。
でも、もしチュチュにだったら……。
って、だとしてもあひるのあたしにじゃなくて、チュチュになんだから関係ないわけで!
……関係ないわけで……。
ありがとう、エデルさん!
(あひるもチュチュとみゅうとの出会った場所を探す)
あひる もしかしたら、チュチュと会った場所にいるのかも!
みゅうと。
みゅうと、どこ?
みゅうと チュチュ……、君に会えないの?
プリンセスチュチュ。
チュチュ……。
(ようやく出会う二人)
あひる みゅうと!
みゅうと あひる……。
あひる みゅうと。
みゅうと どうしてここに?
あひる あ、雨降りそうだったから、みゅうと傘もってないだろうなあ、って。
……誰かを待ってるの?
みゅうと うん、プリンセスチュチュを。
あひる あ……。
みゅうと あひるはチュチュのこと知っているの?
あひる え?
あ、ううん、知らないけど……。
みゅうと そう……。
あひる あの。
みゅうと ん?
あひる これ使って!
みゅうと ありがとう。
あひる 会えるといいね!
みゅうと うん。
あひる じゃあ!
みゅうとが会いたいのはあたしじゃなくて、プリンセスチュチュ。
でも……。
(ドロッセルマイヤーの歯車が回る)
ドロッセルマイヤー おやおや、危険だ。
その考えは実に危険だよ?
いいのかな、プリンセスチュチュ……。

プリンセスチュチュ 王子様。誰かをおさがしですか?
みゅうと チュチュ。
プリンセスチュチュ 王子。

BGM:第2幕 フィナーレ/ラ・シルフィード

みゅうと やっと会えた。渡したい物があるんだ。
プリンセスチュチュ 素敵…。
みゅうと これを貰ってほしいんだ。
プリンセスチュチュ 王子がそう望むのなら。
みゅうと つけてあげる。
プリンセスチュチュ はい。
プリンセスチュチュ ありがとう。
みゅうと 変だ。
プリンセスチュチュ 何が?
みゅうと 贈り物をすると相手の気持ちがわかるって言われたけど、まだチュチュの気持ちがわからない。僕の事をどう思っているのか。
プリンセスチュチュ それは…。
みゅうと でも、チュチュが喜んでくれたからそれでもいい。
プリンセスチュチュ 王子…。
プリンセスチュチュ え、これは心の欠片。出てきて。
あなたはなんていう心?
心の欠片 僕は「愛する心」。
プリンセスチュチュ 愛する心…。
みゅうと 君が?
プリンセスチュチュ もうさまよわなくていいの。あなたが帰る所はここ。
心の欠片 よかった。その飾りの中は暗くて恐ろしい。カラスが…。
みゅうと あっ…。
プリンセスチュチュ はっ!
みゅうと あっ…。
プリンセスチュチュ はぁぁぁぁぁっ。
みゅうと はぁっ! くはぁぁぁ。
プリンセスチュチュ はぁっ! はっ。
プリンセスチュチュ クレール!
プリンセスクレール 愛する心ですって?
プリンセスチュチュを始末するつもりがいい物を見つけたわ。
それと、あなたの正体もね。
プリンセスチュチュ えっ…。
プリンセスチュチュ 何をするの? クレール。
プリンセスクレール なに…!?
プリンセスチュチュ ふぁきあ。
ふぁきあ 下がれ、大烏。
ドロッセルマイヤー おやおや、危険だ。その行動は実に危険だ。
お前は騎士の生まれ変わりとはいえ、ただの人間だ。いいのかな?
しかし、プリンセスもただの鳥の家鴨だ。
そして、王子様はただのお話だ。
ふっふっふ。身の程というのを知らないと危険だよ。
おや? プリンセスクレール、お前は何者だい?
本当に悪役なのかい? 本当に大烏なのかい?
危険だ。実に危険だよ、身の程を知らない事は危険だよ。

BGM:第2幕 フィナーレ/ラ・シルフィード

ふぁきあ みゅうとに近付くな! 立ち去れ、カラス!
ええい!
プリンセスクレール ふんっ。
ふぁきあ えいっ
プリンセスクレール ん!
プリンセスクレール うぅ、あっ…。
ふぁきあ クレール!
はぁぁぁぁ!
ふぁきあ うわぁぁぁぁぁ!
うっうっ。
プリンセスチュチュ ふぁきあ!
ドロッセルマイヤー ふふふふ…。ほらほら言わんこっちゃない。
騎士ならば恐れに打ち勝って悪を倒さなくっちゃ。
悪役ならば容赦なくプリンセスを亡き者にしなくっちゃ。
プリンセスならば愛の力で王子を助けなきゃ。
王子ならば知恵と勇気で…。おっとそれは無理だ。
あはははは。
プリンセスクレール 私はプリンセスクレール。欲しい物は力ずくで手に入れるわ。
プリンセスチュチュ クレール、何をするの?
ふぁきあ くっ。クレール!
ふぁきあ う、うぅ…。
くっ、う…。
プリンセスクレール どうかしら、プリンセスチュチュ。王子の想いに縛られた気分は。
苦しいでしょう? それほどまでに強くあなたの事を思っているのよ。
許せないわ。
みゅうと うう、ああっ…。
プリンセスチュチュ やめて、クレール! 王子を愛しているんでしょ!
みゅうと は、あ…。
プリンセスチュチュ ああ…。
どうして…、どうしてそんなひどい事。
ドロッセルマイヤー おやおや、敵に正体もバレ、王子も奪われてしまったねぇ。
なんて愉快…、いや、大変だ。
へっへっへっへ。
(次回予告)

BGM:カランダール王子の物語/シェエラザード(リムスキー・コルサコフ)

あひる 前にこの首飾りなくした時、ふぁきあが持っててくれた事あったよね。
もう一回持っていてくれる?
ふぁきあ まさか、あのアヒル?
アヒル くわっ!
るぅ 元のお人形さんに戻ってしまったの?
無理矢理心を引き抜いたから。
みゅうと でも、その騎士はカラスに一太刀も浴びせる事もできずに、カラスの爪で二つに引き裂かれてしまったのさ。
王子を守るなんて口先だけの役立たず。
あひる お願い、もうこんな事はやめて!
ドロッセルマイヤー お話の好きな子供は寄っといで。
うふふふふ、へへ。
最終更新:2011年11月08日 01:14
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