ナレーション | 昔々、美しい白鳥に恋をした王子がおりました。 ところが、王子は黒鳥の卑怯な罠に落ち、愛する白鳥を裏切ってしまいました。 黒鳥に愛を誓ってしまった王子……。 それでも、白鳥はわが身を捨てて愛する王子を守ろうとします。 今こそ、その愛の深さが試されるのです。 |
アヒル | 女の子の姿になって、みゅうと先輩のそばにいられたら、そしたらいつか……、いつか笑顔を取り戻してあげられるかもしれないし、そんなことがあたしにできるなら、それ以上望むことはありません。 |
ドロッセルマイヤー | 愛を告げれば光の粒となって消えてしまう、それがプリンセスチュチュの運命。 しかし、王子を助けるには愛を語るしかない。 さあ、選ぶ道は一つ。 飛び切りの言葉で愛を語るがいい。 そうして、飛び切りの悲劇でこの章の幕を引いておくれ、アヒルちゃん! はっはっは、はーはっはははは! |
プリンセスクレール | 思いのたけをささやいて、どちらの言葉にひかれるか、かけらがチュチュを選ぶなら、王子も心のかけらも返してあげる。 でも、返してあげたくても、もうそのときあなたは光の粒ね。 |
プリンセスチュチュ | 消えちゃう、あたしが消えちゃうの?ほんとに?そんなの、こわい。 でも……。 |
プリンセスクレール | んふふふ……。 本当に王子を愛しているなら、迷うことはないでしょう? |
プリンセスチュチュ | ねえ、どうしてこんなふうに争わないといけないの?だって、私たち……。 |
プリンセスクレール | それはあなたのせいよ。 あなたが王子に、心を戻したから。 |
プリンセスチュチュ | ……え……。 |
プリンセスクレール | 王子が心を取り戻すと言うことは、物語が再び動き出すと言うこと。 王子とカラスの物語がね。 すべては物語の定めに従って動き出した。 騎士はいずれ二つに引き裂かれて死に、プリンセスチュチュは光の粒となって消え、 王子には再び苦しい戦いの日々が訪れる。 それが定められた筋書き。 決められた運命。 物語を動かしたのは、あなたなのよ! 誰も望んでいなかったのに。 そうよね、ふぁきあ。 |
プリンセスチュチュ | ……あ。 あの時、みゅうとの心臓を取り出そうとしたのは……。 |
ふぁきあ | もう大丈夫だ、苦しまなくていいんだ。 俺がもう一度お前の心臓を……。 |
プリンセスチュチュ | みゅうとのために……。 私のしていたことって、やっぱり……。 |
ふぁきあ | 確かに以前はな。 だが、今はみゅうと自信が心を取り戻すことを望んでいる。 俺も同じ思いだ。 それを望んでいないのは、もうお前だけだ。 残念だったな、クレール。 クレール |
あら、確かに残念だわ。 ね、王子。 せっかく元のおばかさんに戻ったと言うのに。 無理矢理心を引き抜いてあげたおかげで、心が全部眠ってしまったみたい。 |
プリンセスチュチュ | うそ! みゅうと! |
プリンセスクレール | 無駄よ、チュチュ。 もう話すことはないわ。 王子、剣を。 |
プリンセスチュチュ | 何するの!? |
プリンセスクレール | ねえ、王子……、愛する心のかけらは、プリンセスチュチュにとって守るほどの価値もないものみたいよ。 それなら今すぐ砕いてしまいましょう。 もうもとに戻せないほど、粉々にね。 |
プリンセスクレール | やめなさい! |
プリンセスチュチュ | やめて! |
プリンセスクレール | あなたには他に選ぶ道はないのよ。 さあ、さっさと消えてなくなるところを見せて! |
プリンセスチュチュ | みゅうと……。 私には、もうこうする以外ないよね……。 わかった。 そのかわり、私が消えたら、もうみゅうとにひどいことしないでね。 |
プリンセスクレール | うふふふふ……。 何を言い出すかと思えば。 |
ふぁきあ | お前……。 |
プリンセスチュチュ | お願い、クレール。 |
プリンセスクレール | いいわよ、これまで以上に愛してあげるわ。 あなたのことなど、忘れてしまうほどにね。 |
プリンセスチュチュ | うん。 みゅうと、さよなら……。 |
プリンセスクレール | はっ。 |
ふぁきあ | まて! 何意味ねえことやってる。 お前バカか! |
プリンセスチュチュ | え、バカって……。 |
ふぁきあ | カラスの言葉など真に受けるな。 お前が消えたら誰がみゅうとに心を取り戻すんだ。 心をすべて取り戻したみゅうとの笑顔が見たいんじゃなかったのか。 プリンセスチュチュの運命を笑って受け入れることができるようなやつは、お前だけだ。 お前以外にいない。 だから、お前は消えちゃだめだ。 |
ふぁきあ | 運命など、俺が変えてやる! |
プリンセスクレール | おろかな騎士。 あなたは、私に近づくことさえできないのよ。 そして無駄死にするの。 運命は変えられないわ。 |
ふぁきあ | 試してみるか? |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ! あっ! |
プリンセスクレール | おとなしく見てなさい! |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ……。 |
プリンセスクレール | ふふふ。 |
ふぁきあ | 俺はもう、おそれない! みゅうとを返してもらおう! |
プリンセスクレール | いやよ。 ふふふ。 |
ふぁきあ | う、ぬ、うわああ! |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ! ふぁきあ! |
プリンセスクレール | やはり運命には逆らえなかったみたいね。 さあ、今度はあなたの番よ、プリンセスチュチュ。 |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ……。 ぐゎっ……。 ふぁきあ! ふぁきあああああ! ううう。 ふぁきあ! はっ! |
ふぁきあ | はあ……。 はあ……。 どうだ、まだこの体はひとつにつながっているぞ。 |
プリンセスクレール | でも、そんな状態では、私にかすり傷ひとつおわせられないわ。 |
ふぁきあ | みゅうと、許せ! |
プリンセスクレール | 何を!? |
ふぁきあ | これで、心のかけらを砕くことはできなくなったな。 プリンセスチュチュ……。 お前は……、みゅうとの未来を……。 |
プリンセスチュチュ | ふぁきああああっ! |
プリンセスクレール | バカな騎士。 |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ……。 私、あきらめないから。 絶対に。 絶対に、みゅうとを守る! |
プリンセスクレール | ……。 |
プリンセスクレール | 出ていらっしゃい。私の愛しいみゅうとの心の欠片よ。 |
プリンセスクレール | いい子ね。 さあプリンセスチュチュ、存分に愛を語るといいわ。 |
プリンセスチュチュ | んん…。 |
プリンセスクレール | やっと消えて無くなる決心がついたようね。 |
プリンセスチュチュ | いいえ、私は消えない。 |
プリンセスクレール | ん? |
プリンセスクレール | んぁ…。 |
心の欠片 | あ…。 |
プリンセスクレール | なに? |
プリンセスチュチュ | あなたに愛の言葉を語る事はできないけど、私には踊る事ができる。 この気持ちもきっと伝える事ができるはず。 |
プリンセスクレール | んふ。言葉をこえて踊りで愛を伝えれば、あなた自身は消える事はないという訳ね。 面白いわ。どちらの踊りが心の欠片を惹きつけるかしら。 |
プリンセスチュチュ | はっ…。 |
プリンセスクレール | ふっ。 |
プリンセスクレール | あなたは私には勝てないわ。 |
プリンセスチュチュ | えっ! |
プリンセスクレール | しょせんあなたはプリンセスチュチュの力を借りているだけの、 見せかけだけのプリンセスなのよ、あひる。 |
プリンセスチュチュ | はっ…。 私はただのアヒルなの…? 女の子になってもいつも居残りの劣等生だし。 |
(ぴけ) | (あひるってばそんな事じゃまた見習いクラスに落ちちゃうよ。) |
(りりえ) | (きっと一生あがったり落ちたりを繰り返すのよぉ。かわいいわー。) |
(猫先生) | (あひるさん、どうしてそんな簡単な事もできないんですか。 まさか、わざとしくじっているんじゃないでしょうね。 私と結婚したいからってわざと失敗するのは許しませんよぉぉぉ。) |
プリンセスチュチュ | ふぅ…。私は…。 |
プリンセスクレール | ふふふふ。本当の姿に気がついたようね。学園の中での惨めな自分の姿に。 |
プリンセスチュチュ | 今踊っているのはチュチュ? あひる? それともただの鳥? あっ…。 |
プリンセスチュチュ | はっ! |
プリンセスクレール | そう、私こそがあなたのプリンセス。 |
心の欠片 | 君が、僕のプリンセス? |
プリンセスチュチュ | まって! |
プリンセスクレール | あきらめなさい。もう終わったのよ、プリンセスチュチュ。 あなたは永遠の闇の底に眠らせてあげる。 どんなに邪魔者が現れても二度と目覚めないようにね。 |
心の欠片 | うん…。 |
プリンセスチュチュ | そんな…。 |
(みゅうと) | (僕に心を取り戻してチュチュ……。 君が僕をどう思っているのか知りたい……。) |
(ふぁきあ) | (プリンセスチュチュ……。) |
プリンセスチュチュ | はっ…。 |
(ふぁきあ) | (お前は、みゅうとの未来を…。) |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ…。 |
プリンセスチュチュ | あきらめない。 |
プリンセスクレール | ん? |
プリンセスチュチュ | 私の想いは私のものだから。今、私はプリンセスチュチュ。 あきらめたらただのアヒルに戻るだけ。 |
プリンセスクレール | ふん、いまさら…。 あっ! |
プリンセスクレール | 一人でパドドゥを踊っている。まさかそんな事が…。 |
プリンセスチュチュ | あなたにここにいてほしい。 あなたの笑顔を見せてほしい。 私といっしょに踊ってほしい。 強く優しく支えてほしい。 |
プリンセスクレール | んっ! 一人で踊るパドドゥ? 惨めな今のあなたにはお似合いね。 でも、一人ではできない動きはどうするのかしら。 |
プリンセスチュチュ | 本当の私はなんの力もないただのアヒル。 でも、あなたがいれば私は、変わる。 |
プリンセスクレール | なんてジャンプ力! |
プリンセスクレール | うそ、リフト!? |
プリンセスクレール | 無様ね。あんな踊り見る必要ないわ。 |
プリンセスチュチュ | あなたを思う気持ちが私をプリンセスチュチュにする。 あなたを守りたい。 本当は心を無くしたくなんてなかったはず。 たくさん笑ったり、泣いたり、誰かを愛したり。 人の幸せを守る為にあなたはそれを捨てた。 そんな優しい心を持ったあなたが本当のあなた。 そんなあなたが好きです。 |
プリンセスクレール | あ…。 |
みゅうと | 僕はここにいるよ。プリンセスチュチュ。 |
プリンセスチュチュ | あ…。 |
プリンセスチュチュ | みゅうと! |
プリンセスクレール | あなたの勝ちよ。私の想いはどうしても届かない。 |
プリンセスチュチュ | クレール…。 |
みゅうと | チュチュ、心を。 |
みゅうと | ぁぁ…。 |
みゅうと | この気持ち、わき上がる不思議な気持ち。 これって…。 |
プリンセスチュチュ みゅうと |
あっ…。 |
プリンセスチュチュ | 湖が…。 |
みゅうと | 幻覚だったんだ。 とにかく脱出しよう。 |
プリンセスチュチュ | はい。 |
プリンセスチュチュ | まっくら…。 |
??? | こちらへ。 |
プリンセスチュチュ | 灯り? |
みゅうと | 行ってみよう。 |
プリンセスチュチュ | はい。 |
みゅうと | ぁ…。チュチュ! |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ! |
プリンセスチュチュ | ふぁきあ…。 |
ふぁきあ | あ…。 |
プリンセスチュチュ | よかった。 |
ふぁきあ | みゅうと…。そうか。 チュチュ、お前がみゅうとを…。 ありがとう。 |
プリンセスチュチュ | ふぁきあがいたから、ふぁきあのおかげで強くなれた。 |
ふぁきあ | 俺は、どうして…。 ぁぁ…。 |
プリンセスチュチュ | エデルさん…。 |
ふぁきあ | 俺を助けてくれたのは…。 |
みゅうと | 僕たちを導いてくれたのも君だったのか。 |
プリンセスチュチュ | どうして! |
エデル | ただの人形が心を持つ人間のまねごとをしてみただけ。 |
プリンセスチュチュ | エデルさん…。 |
エデル | 本気で泣いたり怒ったり笑ったり。 そんなあなたがうらやましかったのかもしれない。 でも、後悔はしてないわ。だから泣かないで。 |
プリンセスチュチュ | う、ぅぅ。無理です。だって涙が止まらない。 ぇっうっ。 |
エデル | 私、最後に王子とチュチュの踊りが見たいわ。 |
プリンセスチュチュ | 最後だなんて! |
エデル | お願いよ。踊って。王子様とパドドゥを。 |
プリンセスチュチュ | ああ…。 |
みゅうと | プリンセスチュチュ。 踊ろう。 |
ナレーション | こうしてお姫様の深い愛が悪い魔法に打ち勝ったのです。 王子は愛する心を取り戻し、二人はお互いの想いを込めて、 いつまでもいつまでも踊り続けるのでした。 この幸せが永遠に続く事を願って。 |
ドロッセルマイヤー | うむ、なんて素晴らしい愛だ。 与えられた役割を越え運命に逆らうには痛み苦しみが伴う。 誰もそうしたがらない。 身の程知らずにもそれを乗り越えてよぉく頑張ったよ、あひるちゃん。 だが、それもまた決められた運命だったのかも知れないよ。 だってお話は、まだまだ終わっていないんだからねぇ。 あっはっはー。はぁ、はぁ、はぁ。はっはっはー。 |