このページは、黒木玄さんによる論考をたどりやすくするための目次です


難解な箇所については別ページに註釈をつけました(作成中)



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2011年08月21日
「現在の学習指導要領解説算数編の57-59頁にある式への過剰な役割分担には問題があります]

式の扱い方に関する事例集
事例1
「2×8ならタコ2本足」の授業が何のお咎めもなしに行われてしまうことについて、文科省には責任がある。
事例2
金魚が増加する場面の事例
事例3
ドラゴン氏の迷言、「考えに対応した式は1つで、式に表した段階では解説は不要」に対するコメント
事例4 【ゆっくり理解】なぜ3×5で正答で、5×3が小2のテストでは誤答なのか
(引用)「通常、文脈や言葉や図やグラフなどもろもろの付随情報が無ければ、式を見ても具体的場面や思考過程の詳細を知ることはできません。だから、式だけではなく、他のあらゆる道具を用いて考え方を伝えようと努力することが重要なのです。」

●1.はじめに
●2. 「1あたりの数」×「いくつ分」の順に書かないと誤りとするのは誤り
●3. 掛け算の式の順序にこだわったダメな教え方の例
●4. 補遺1. 掛け算の式の順序だけを見て理解度を確認しようとすることは間違い
●5. 補遺2:掛け算の可換性と解釈の多様性
●6. 補遺3:「1あたりの数」「いくつ分」による掛け算の解釈だけが正しいわけではない
●7. 補遺4:仮想Q&A
Q1.さら5枚にりんごが3個ずつ
Q2.教師用の指導書で指導されているやり方?
Q3.皿を書かずに図を書くとバツになるのか?
Q4.特別な方法で回答して欲しい場合はそのような制限つきで出題すべき
Q5.「1あたりの数」「いくつ分」の考え方自体は重要なのでは?
(要約)その考え方は重要だが、式の中に書く位置を固定するようルールづける指導には問題がある。
算数のおもしろさは、同じ問題であっても複数の解き方があること。
掛け算の表記順ルールは普遍的には通用しない特殊ルールに過ぎない。
表記順を見ることで、「1あたり」「いくつ分」の概念を理解したかを判定するのは無理がある。
その概念の理解度の判定は、式の表記順とは別の手段によるべき。
Q6.この問題が生じた原因は学習指導要領にあるのでは?
Q7.「授業のねらいから外れている解き方にはバツをつけなければいけない」という考え方が潜んでいる
(要約)「授業のねらいから外れている解き方にはバツをつけなければいけない」という考えで、「教科書では誤答と扱っているから」という理由で「順序を固定しなければならない」とする主張する者がいる。教育以前に倫理面で問題ありの、デタラメな主張と言える。
Q8.「学校に限らず、世界は不条理な規則で成立している」という意見について
(引用)率直に言って、そういうことを言う人は恥ずかしいと思うし、
無責任で迷惑な人だと思います。
Q9.行列の積は非可換なので、という主張について
(引用)馬鹿げています。行列の積の非可換性は行列について教えるときに重要性を
強調すれば良いだけのことです
Q10.ネットでは掛け算順序固定に賛成する意見が多くて閉口します
(引用)掛け算を正しく理解していない大人が結構いるということなのでしょうかね?
もしもそうなら本当に困ったことだと思います。
Q11.「先生には先生の教え方の都合があってバツをつけているのだから・・・」
(要約)現実に自分の子どもが教わっている先生に対して「先生は間違った教え方を
している」というような意見を述べることは色々な意味で難しい。
けれど、順序固定の教え方は有害であり、多方面から文句を付けられて当然。
複数の意味で有害かつ間違った教え方なので擁護し切ることは不可能。
Q12.成績ではなく理解度を測るためのテストでバツを付けたのだから問題ないのでは?
(要約)子どもが掛け算の順序をどのように書いたかで理解度を測るのはそもそも不可能。まさにそれこそが、この手法の批判されている点。
(引用)どのような順序で掛け算の式を書いたかで理解度を判定しようとすることは
複数の理由でよろしくないやり方なので改めた方が良い。
この論点を無視して結論を出してしまっている人は
議論の流れをよく理解していないとみなして構わないと思います。

Q13.今まで順序固定で教えてしまっていましたが反省しています
(引用)教科書の指導書に問題の原因があるということに気付いている人はまだ少ないと
思います。そのことに気付いた教師が、そのような指導書の存在をインターネット
などを使っておおやけにするのが良いと思います。

Q14.アレイ図を書いて全部数えて答を出しても正解ですか?
(引用)正しい考え方で正しい答を出しただから、当然正解だということになります。
(要約)問題文で特定の考え方を指定しているのでなければ、正しい考え方で正しい答が出ていればそれがどんな考え方であっても当然正解になります。

Q15.掛け算の理解度を測るために実施したテストだったのに、掛け算を使っていない解答にもマルを付けてしまわなければいけないようだと、掛け算をうまく教えることができなくなってしまうというような意見について
(引用)教師の側が、生徒の理解度の測定などの目的のために、
ある特定の方法を使った解答を書かせたい場合はよくあります。
そのような場合にはその特定の方法で解答を書いてもらえるように
問題文を工夫する必要があります。

Q16.このような混乱は教師の負担を増やしてしまいます。ただでさえ大変な小学校の先生の負担を増やすのは好ましいことではないと思うのですが
(要約)確かに先生の負担を増やすのは好ましいことではないが、有害な教え方を放置しておくべきではありません。有害な教え方そのものが混乱の原因である以上、根絶した方が教師の負担は減るのではないでしょうか。

Q17.足し算についても5+3が正解でも3+5は不正解になる場合があるという主張について
(引用)不正解にするのは誤りです。それは間違った教え方でしょう。
実際にそのような教え方をするべきだとはっきり書いていないようですが、
上の引用文を書いた人が正しい考え方をしていないのは確かなことです

Q18.面積の公式の「縦×横」の掛け算の順序にこだわる教師への擁護論について
(引用)どちらが「縦」でどちらが「横」なのかという「立体の名称」(??)を定着させる
ために、掛け算の式の順番に拘るというのはあまりにもひどい教え方です。
本当にどちらが「縦」でどちらが「横」なのかを定着させることに拘りたいならば、
もっとまともな方法を使うべきでしょう。

Q19.掛け算の順序問題について詳しくていねいに説明したのに、「やはり掛け算を教えるときには被乗数を乗数を書く順序を決めておかないと混乱することになる」と言われてしまいました
(要約)きっとその人は掛け算の導入には被乗数・乗数の概念が必須だと
誤解しているのでしょう。実際には、たとえばアレイ図の考え方を使えば、乗数と被乗数をどちらかに決めること自体が無意味です。

Q20.kikulogのあるコメントについて
(引用)普遍的には通用しない無駄なローカルルールを導入しなくても
理解を把握する方法があるのに、無駄なローカルルールを導入して、
それにしたがっているかどうかを見て理解度を把握したことにし、
ローカルルールにしたがっていないだけで本当は正しい解答にバツをつける
のは明確に悪いやり方です。

Q21.自分の子どもに「5×3でも3×5でもどちらでも正解なんだよ」と教えたら、「違う。5×3は間違い!」と言われてしまいました。
(引用)親として子どもに真剣さを何とかして伝えるしか手はないと思います。
そのためには算数に限らず、倫理面も含めて多くの話をしなければいけません。
しかし具体的に何をどのように話すのが良いかと問われると、
正直言って私もわかりません。


Q23.教師を責めるのは好ましくないというタイプの意見も強いようです
(要約)現場の教師は誤りを修正する努力をしてくれればそれで十分。
しかし、妙な教科書、指導書を執筆している算数教育の専門家の責任は非常に重い。

Q24.京大の森毅の著書「数の現象学」での記述について
(引用)森毅さんの上の発言は森毅さん自身が信じている間違っている考え方を
大学入試の採点を人質にして広める行為に他なりません。
これを最低と言わずに何を最低と言えば良いのでしょうか。

本当にひどい話だと思います。

Q25.これは小数のダメ教師の問題なのでは?
(要約)広く使われている算数教科書の指導書でおかしな教え方がすすめられています。ダメ教師の問題ではなく、教科書を作っている側の人たちに問題があるように思えます。重大な問題です。


Q27.「掛け算の解釈」と「掛け算の意味」という表現の区別について
(引用)「掛け算の解釈」を「掛け算の意味」に言い直しても良いかもしれません。
しかし、以下のようなこだわりがあることは述べておきたいと思います。

「○○の意味」の説明は「○○」自身が何かについての説明になることが多いと
思います。それに対して「○○の解釈」は決して「○○」そのものであることは
ありません。私はこの区別が非常に重要だと考えています。

Q28.多数あるうちの特定の解釈によって掛け算を導入することまで否定する必要はないのでは?
(要約)正しい解釈がひととおりであるかのような教育をしないこと、その他いくつかの要求が満たされていれば否定する必要はない
(管理人注:実際にはこの要求を満たしている例が少なそうです)

Q29.難しい数学の話をしないように注意していますか?
(引用)はい、意識して難しい数学の話をしないように注意しています。
そもそもこの議論の本質は難しい数学の話とは無関係です。
少し難しいことを述べても構わないなら、以下のようなことを説明したかったです。
(管理人注:以下、「おはじきを並べる」考え方をそのまま応用して、面積、つまり連続量に発展させられること、分数、実数への展開などの話題が続く)

Q30.3×5に多様な解釈があるのは理解できます。しかし、3×5の数学的解釈をひとつ固定しないと3×5が何であるかが確定しないと思うのですが
(引用)これは算数教育に関する議論なので「3×5 を明確に定義しなければ 3×5 が何であるかが確定しない」のように考えるのは無意味だと思います。

Q31.抽象的な数の掛け算では交換法則は成立しても、「1あたり量×いくつ分」の意味での掛け算では成立しないのではないですか?
(要約)「1あたり量×いくつ分」の意味での掛け算でも可換性(交換法則)
は成立しています。
おそらく、銀林さんたちは、キャラメルが2個はいっている箱が3つある状況とキャラメルが3個はいっている箱が2つある状況は互いに異なることと、掛け算の交換法則の話を混同してしまっているのでしょう。


Q33.ある小学校教員経験者の回答について
(引用)あと単位あたり量(掛けられる数)を前に持ってくる習慣をつけておかない
と速さあたりで苦労することになるというのも単純に誤りでしょう。

「自動車で時速50キロで3時間走ったらどれだけ進むか」のような問題に
は3×50=150キロと答えても50×3=150キロと答えてもどちらも正しい。
掛け算の式の順序にこだわることと「時速50キロ」が意味するところを
正確に理解することはまったく別の問題です。


Q35.算数を正しく教えるためには数学について深い教養があった方が良いですよね
(要約)その通りではあるけれど、ただ、掛け算順序固定が無意味だという判断は数学というより健全な常識があれば済むこと。





Q37.指導法では順序にこだわってもよい、というドラゴン氏の意見について
(要約)無意味です。
「考えに対応した式は1つで、式に表した段階では解説は不要ということです」
と考えているドラゴンさんは根本的なところでひどく誤解していると思います。

(管理人注:この項極めて長文の豊富な論考です。ぜひ原文を参照してください)

Q38.「2×8ならタコ2本足」授業について
(引用)
朝日新聞社がこのよう授業を「花まる先生」の「公開授業」として紹介すること
によって、このような教え方であっても「まともな教え方である」という印象を
広めてしまわないかと心配です。へたをすると「素晴らしい教え方である」とい
う印象を読者が持ってしまう可能性さえあります。困ったことです。

(引用)
補足:上のリンク先にはどろんこさんのように妙な人たちが複数いてなかなか興
味深いです。特に面白いのは「理系」もしくは「理数系」の人たちへの強い偏見
です。まさにその偏見そのものにそれらの人たちの知性がどれほどであるかがよ
く表われていると思います。個人的にその手の人たちを理性的に説得することは
不可能だと思います。そのように考えると本当に暗澹たる気持ちになります。
この議論では「理数系」「文系」の区別では無意味です。分けるとすれば「まと
も」と「まともでない」かです。掛け算の式の順序に妙なこだわりを維持し続け
ている方々は「理数系」であろうと「文系」であろうとすでにまともではない状
態に陥っているとみなせます。


Q40.「掛け算の式の順序にこだわる派」の発言が異様なほどワンパターンです
(要約)確かにワンパターンです。数学は本来「正しい解き方は複数ある」世界なのに、それをワンパターンにハメ込もうとしていては、健全な算数への理解を妨げてしまうでしょう。

Q41.掛け算順序固定型の教え方がどれだけ広まっているかに興味が湧きました。まとまった資料はあるでしょうか?
(引用)まとまった調査はまだないと思います。かなりパターン化されている感じ
なので誰かが積極的にそのような困った教え方を広めているのだとは思います。
問題は誰が広めているのかということ。私もまとまった調査があれば教えて欲し
いと思います。
(管理人注:以下、参考ページへのリンク多数)

Q42.そもそも教えている側が「ひとつあたりの数」の概念を理解していないようです
(管理人注:この質問は質問自体が良い論考になっています)

(要約)その通りで、実際には、「タコの足の数」「ウサギの耳の数」を掛け算では左側に書くという「俺様ルール」を徹底しているだけだと思います。

この「俺様ルール」は掛け算の式を「ひとつあたりの数×いくつ分」の順序に
書くというルールでさえありません。その劣化版になってしまっています。

Q43.掛け算をいつも数字が出てきた順番に書く中学生の事例
(引用)質問に登場した先生のようなやり方では、本当は非常によく理解している子ども
をがっかりさせてしまう可能性があるだけではなく、本当は理解していない子ど
もを見逃してしまう可能性も高いのです。

これじゃあ掛け算の式の順序に関する特殊なルール(普遍的には通用しないルール)
に子どもたちを一時的にしたがわせるという犠牲を払った意味がありません。

Q44.図を書いて考えるようなごく少数の優れた子供を前提にするのはまずいのでは?
(要約)子供が図を描いて考えるような行動を取るかどうかは、
先生の教え方に大きく左右されます。図を描いて考えるのは
特に優秀な子供しかできないことではなく、普段そういう
指導ができる先生のもとでは誰でも普通にやれるようになります。

算数では答はひとつでも、考え方は複数あります。
ある考え方ではピンと来なかった子でも、別な考え方
ではよく理解できることがあります。子供が試行錯誤
を通して自分が理解できる解き方を見つけられるように、
教師は複数の考え方を知っていてサポートできるよう
でなければなりません。

「図を描く」というのは中でも有力な方法のひとつであり、
それを指導しない先生には算数を教える資格がないに近い
と言えます。

Q45.数学教育もしくは算数教育の専門家と数学研究の専門家の世界はまったく別なのですか?
(引用)はい、まったく別世界だと考えて構わないと思います。
例外的に両方に属する人もいるかもしれませんが、例外に過ぎません。
だからほとんどの数学研究専門家(数学者)は数学教育もしくは
算数教育の専門家たちがどのように考えているかをまったく知らないと思います。



(引用)
補足:言葉は便利でかつ強力な道具ですが、算数的な事柄について考えるときに
はむしろ言葉を使わずに直観的な思考を用いることが多いことはもっと強調され
てしかるべきことだと思います。文章題をスムーズに解くためには文章を算数的
な直観に翻訳する能力が必要になります。

Q48.和大の(理系)教員の村川猛彦さんの意見について
(引用)この手の話でよくあるくだらない馬鹿げたひどい誤解は、掛け算の式の順序の話と
「ひとつあたりの数」「いくつ分」の概念の理解の話を混同してしまうことです。
おそらく村川猛彦さんもその手の誤解をしているのだと思います。

(引用)
掛け算の順序にこだわっている教師や教科書指導書執筆者たちは
こだわった方が「ひとつあたりの数(量)」のような概念を教えやすいと
思っているのかもしれませんが、現実にはそうなっていないし、
掛け算の順序にこだわる教え方は「ひとつあたりの数(量)」のような概念
(より正しくは文章や状況を算数の文脈で正しく想像・解釈する方法)
を教えるときに害になりそうです。

むしろ、日本の算数教育が文章題に関して弱いのは
掛け算の順序を含めたくだらないこだわりを子どもたちに押し付けていること
が原因である可能性さえあるのではないでしょうか。





Q53.A49へのドラゴン氏のコメントについて
(管理人注:きわめて長文の回答、事例多数)






最終更新:2014年07月20日 23:06