映姫8



12スレ目>>941 うpろだ910


───四季映姫の日記───
2月11日
 先週頭から、忙しい日々が続いている。
 何があったかは知らないけれども、以前の3倍は死者が渡って来る。
 小町も、ようやく真面目に仕事してくれるようになったようで何より。

2月12日
 今日になり、死者の数が落ち着いた。
 行列になっていた川向こうの死者がついに途切れたのだそう。
 小町はやれば出来る子です。

2月13日
 今日は午後の休憩前に仕事が終わった。
 こんなことは今まで一度も無かったのですが、何とも気持ちのいいものです。
 さらに是非曲直庁から、待機死者が殆ど居ない為、明日は特別休暇との連絡が来た。
 しばらくは忙しかったですが、これは小町に感謝ですね。
 明日は、○○のところにでも…あ、いや、急に押しかけては迷惑ですね…
 片付けが終わった頃、小町が「買い物にでも行きませんか?」というので、ちょっと出かけることにした。




───人里の市場───
「なにやら町の雰囲気が違いますね、小町」
「そりゃ、バレンタインデー前日ですからねぇ」
「バレンタイン…!」
 すっかり失念していました、明日はバレンタイン…
「小町、チョコは香霖堂でしたか?」
「え?あ、はい、わかりました。(にや)」
 私は慌ててチョコとラッピング用の包装紙を買いました。

 ここで難題が一つ。
 私はチョコの作り方なんで知りません。
 小町は是非曲直庁に用があると言って帰ってしまいましたし…
 …当てがあるとすれば、ただ一人。


「はぁ…まさか、閻魔様にチョコの作り方を教えるとは思わなかったわ」
「すいません、アリスさん。あなたぐらいしか教えて貰えそうな方が居なかったので」

 以前、夜雀の屋台で知り合った、人形遣いのアリス・マーガトロイド
 彼女の作る洋菓子は美味しい、と霧雨魔理沙等から聞いていたので、訪ねてみたのです。

「ああ、いいのよ、それは。ちょっと驚いただけだから。
 それで、どんなチョコレートにするんですか?」
「…どんなのが良いのでしょう…私は、あまり洋菓子は知らないもので…」
「そうね…それじゃ、ウイスキーボンボンにしましょうか。
 ○○、お酒好きだし。」
「それはいいですnってええええええええええええええええええええええ!?」
「ど、どうしたんです!?」
「え、あ、いいぇ、その、あの、何故○○だと…」
「映姫様、酔っ払うと○○の話しかしないじゃないですか(にやにや)」
「あ、いや、あの、そr」
「はいはいごちそうさま。さ、もう作り始めないと明日に間に合いませんよ?
 結構時間かかるんですよ、ウィスキーボンボンは。」
「あ、はい、わかりました」

「砂糖と水飴と水を入れて火にかけて…」
「これをゆっくりウイスキーに注ぐんですね?」
「そうそう、ゆっくり、ゆっくりね」
 拙いながらも、確実に手順をこなしていく。

「バットにコーンスターチを敷き詰めて型を作って…」
「あ、あの、ハート型ですか?」
「あら、愛を伝えるならハートが一番よ?」
「あ、愛だなんて…」
「(ああもう、閻魔なのに可愛いわね!)」
 真っ赤な顔で、ハート型をコーンスターチに形作っていく。

「さてと、明日の朝までこのまま放置ね」
「それでは、明日の朝にまた伺います。今日は本当にありがとうございました」
「ああ、それじゃあ面倒でしょ?上海と蓬莱にベッドは用意させてるから、今日は泊まっていくといいわ」
「良いのですか?」
「ええ、ここまで来たら、最後まで面倒みさせてもらうわ」



───アリスの日記───
2月13日
 いつものように自律人形の研究だけで終わるはずの一日だった。
 夕飯を済ませ、片づけが終わった頃、閻魔様が来た。
 二週間ほど前にも夜雀の屋台で会っているが、それ以降何か悪行でもしたかと一瞬悩んだ。
 その口から発せられた言葉は…

「チョコレートの作り方を教えてもらえませんか?」

 その顔は、閻魔ではなく、ただの可愛い女の子だった。
 チョコは、○○が好きそうなウィスキーボンボンを作ることになった。
 夜8時から作り始めて、完成は朝10時ぐらいね。
 作っている間のその顔は、完璧に恋する乙女だった。
 今日は恋する閻魔様がお泊りという、なんだか奇妙で面白い日になった。



───そのころ、是非曲直庁───
「小町、首尾は?」
「ふふっ、大慌てでチョコを買い込んで、そのまま人形遣いの家に直行。
 今ごろチョコを作ってるはずさ。」
 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 庁内に歓声、上がる。
 なんと、庁がらみで四季映姫の恋の応援をしていたわけだ。
「いやぁ、死に物狂いで働いた甲斐があったってもんさね。
 あの二人、ほんとどっちも素直じゃないからねぇ。
 背中押してやんなきゃ、死ぬまでお友達だよ、ありゃ」
 小町は普段の数倍の仕事をこなし、なおかつ、こっそり別区域担当の閻魔にも仕事を振り分けていたのだ。
 もちろん、皆が納得の上で引き受けてくれていた。
「ま、後はもう見てるしかないねぇ。がんばってくださいよ、映姫様」
 一仕事終えたような、さわやかな笑顔がそこにあった。



───朝、アリス宅───
「うん、上手く結晶化してるわね。あとはこれをチョコでコーティングして完成よ」
「なるほど、こうやってお酒を中に閉じ込めていたんですね…知りませんでした」
 チョコレートでのコーティングも無事に終わり、ラッピングも完了。
「さ、後は勇気を出して渡すだけよ」
「はい、本当にありがとうございます、アリスさん」
「アリス、でいいわ。ほら、○○が誰かに取られちゃう前に渡さなきゃ、映姫様」
「映姫でいいですよ、アリス」
「ふふ、それじゃあ頑張って、映姫!」
「はい!」

「ふふ、これが今の私にできる善行、かしらね」
 アリスは一人、微笑みながらつぶやいた。
「さぁ~て、私もチョコ渡しにいきましょうか」



───人里、○○の家───
 はぁ…
 やっぱ期待したって無理だよな。
 だってあいつって日曜しか休みないし。
 最近は忙しくて、みすちーの屋台にも来てなかったしな…
 あーせめて映姫の顔が見てぇ…
 できればチョコもらいてぇ~!
「それは本当ですか?」
 あたりまえだろ、おい。
 惚れた女からチョコ貰えるってのがどんだけ幸せなことか!
「え、ほ、惚れた…?」
 あーそうだよ俺は映姫が大好きで大好きで仕方なくてもう抱きしめてかっさらいたいぐらいだ!
 そのまま教会で結婚式を挙げてしまいたいぐら…い…
「ってええええええええええええええええええええええええええええええええ映姫!?
 いっ、いつからそこにいたんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「『やっぱ期待したって無理だよな。』のあたりからです」
「…そこから全部?」
「はい…全部。それに、途中からはほとんど会話でしたよ…」
 映姫の顔は真っ赤だ。
 そして、多分、俺の顔も。
「あー、その…」
 すっ、と映姫は小さな箱を差し出した。
「これが私の気持ちです」
 箱の中には、ハート型の小さなチョコレートが詰まっていた。
「ハートが沢山詰まってるね…」
 一つ、口に運んだ。
「初めて作ったので、味は保証できません。
 でも、気持ちは保証します。
 …好きです、○○…」
「俺もだ、映姫…好きだよ」
 俺たちは、どちらからともなく唇を重ねた。



───映姫の日記───
2月14日
 今日は私にとって最高の一日でした。
 最高の友人と最高の部下に支えられ、最愛の人と両思いになれた日。
 私がこれから為すべき善行、それはきっと、○○と幸せになることなのでしょう。
 しかし、まさか是非曲直庁全体で休日を作る為に動いていたなんて…
 知ったときは顔から火が出るかと思いました。
 小町の行動力、まさかそこまでとは…
 それと、急に押しかけてチョコ作りを教えてもらったアリス。
 本当に感謝してもしきれません。
 皆にも幸せが訪れますように…




日記を閉じ、私は眠りに就いた。
唇の感触と、お酒の匂いを思い出しながら…

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12スレ目>>994


世間話でも説教でも何でもいい。
ただ君と共に在ることができるならば。
映姫、好きだ。

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12スレ目>>998


「…離しなさい。」
 気が付くと、俺は映姫の頭と背中を乱暴に抱き寄せていた。
「離しなさい。」
 映姫の小さな声が届く。
「映姫、好きだ。たまらなく君が好きだ。
 人と閻魔が結ばれることなど有り得ないことぐらい分かってる。
 でも俺は映姫が好きだ。誰よりも好きだ。」
 毎日のように説教に来る閻魔。
 最初はうっとうしいだけだった。
 だが、その一言一言が理解できるようになった頃、俺はもう映姫のことしか頭に無かった。
「離しなさい。」
 映姫の声は冷静な物だった。
 気持ちは伝えた。もういい。俺の気持ちが届くことは有り得ないのだから。
 手を離し、俺は目を伏せた。
「○○。あなたは今、3つの罪を犯しました。
 一つ目、相手の気持ちを考えず、縛りつけようとしたこと。
 二つ目、自分の心だけを一方的に押し付けたこと。」
 もうどうだっていい。
 俺は叶わぬ思いを吐き出し、思い残すことも無い。
「三つ目、…私に告白する時間を与えなかったことです。」
 映姫の唇が、俺の唇を塞いだ。
 すぐにその唇は離れた。
「○○、私はあなたのことが大好きです。」
 そこから、堰を切ったように言葉が溢れ出した。
「…好きでもない人の所に足繁く通う女性がいると思うのですか!?
 閻魔と人間が結ばれない!?誰が決めたのですか!?
 誰が誰を愛そうと、誰がそれを阻めるというのですか!?
 私は○○が好きです!
 私から告白するつもりで来たのに、何故諦めるようなことを言うのですか!」
 その目には、涙。
「○○、今、あなたに出来る善行は…」
 俺は、今度は優しく映姫を抱きしめた。
「…分かっているならいいのです。」
「…きっと、毎日の説教のおかげさ…」


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13スレ目>>80


映姫「今日はバレンタインですね」
○○「ああ…(地獄にもあるのか…)」
映姫「という事で、忙しい日々の合間を縫ってチョコレートを作りました。はい、どうぞ」

○○「…受け取らなかったら?」
映姫「有罪です」
○○「やっぱり…」
映姫「美味しくないって言っても有罪ですから」
○○「無罪判決を受けるには?」
映姫「キミを、食べたい…とか、チョコよりもキミの方が甘いよ…とか…じゃなくて!
か、考えなさい!自ら行動を起こす事により、物事はいい方向へと…」

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13スレ目>>224 うpろだ964


「これは…いやしかし…でも○○は何と言うでしょうか…」
 人里でもモダンな洋風の建物の並ぶ地域。
 そこでショーウィンドゥの服を眺める…閻魔様。
 今日は執務服ではなく、スーツ姿だ。
「しかし、うーん…」
「映姫様?」
「えっ?ま、○○!?い、いつからそこにいたのです!?」
「いや、今しがた通りかかったとこですけど…」
 ショーウィンドゥを覗き込むと、マネキンが一体飾ってあった。
「ふむ、映姫様、とりあえず試着しません?」
「な、何を言ってるんですか、私にはこんな服…」
「とりあえず、映姫様が着ている所を見てみたいので入りましょうか?」
「え、ちょっと○○、押さないで下さい!」

 カランカラン

「いらっしゃいませ~」
「すいません、ショーウィンドゥのと同じのを一式、彼女に試着させたいんですけど」
「ま、○○!?」
「はい、かしこまりました。では、そちらの試着室へどうぞ」
「ほらほら、折角だから着てみましょうよ」
「し、仕方ないですね…」

 数分ほどして…

「ま、○○…どうですか?」
「………」
「や、やっぱりおかしいでしょう!?すぐに着替えます!」
「店員さん、これ買います」
「ありがとうございます。そのままお持ちになりますか?」
「ええ、タグだけ切っといてください」
「えっ、○○?」
「いきましょうか、映姫様」
「は、はい…」

「私の格好、変ではありませんか?」
「………」
「○○?さっきから、変ですよ?」
 やばい、ツボにハマリすぎて映姫様をまともに見られない…
 黒のミニスカに白のロングセーター、白のオーバーニー。
 首にはシルバー製の羽のワンポイントの入った黒のチョーカー。
 白黒はっきりつける程度の能力、恐るべし。いや違うだろ。
「あ、いや、その、なんていうか…」
「○○、似合ってないなら、はっきり言って下さい。
 私は、曖昧な態度は嫌いですから」
 少し俯きながら、映姫様はそう言った。
「いや、そうじゃなくて、その、あんまり可愛いから照れくさくてまともに見られないというか…」
「えっ?」
「その、ごめんなさい。
 完全に俺の趣味の服装だったから、嫌でしたか?」
「…いえ、嬉しかったですよ。
 ○○の前で、女の子らしい服を着たかったから…」
 少し小さな声だった。
「え、今何て…」
「さあ、行きましょうか。
 まだ食事してないんですよ、私」
「それじゃあ、この先のレストランでも行きましょうか。」
 映姫様が腕を絡めてくる。
「え、映姫様?」
「今はこのままで。それが、貴方に出来る善行です…」
「…喜んで」
 そのまま、ゆっくりと町並みを歩いていく。
 どこまでも続いていればいいのに、と思いながら。

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13スレ目>>194


映姫さまにこのスレを見せてみた話

「うがー!どいつもこいつもグレイズグレイズグレイズグレイズって!私はね!日本人特有のグレーゾーンという奴が大嫌いなんですよ!」
と、息継ぎも無しに絶叫したので、
「じゃあどこまでが白でどこからが黒なんです?」
と聞いてみた。
すると映姫は椅子から下りてすっと駆け寄り、
ズキューン
レロレロレロレロレロレロレロry
「ここまでは白です!」
「ちょ・・・いきなり・・・」
ヌギヌギ
「うわ!映姫さま何脱いでるんですか!」
「これからが黒です!」
「あ、ちょっと何で押し倒してるn

---

「わ・・・私は何と言う物を書いてるんでしょう・・・
 こ、こここんなグググレイズな・・・///」
「えーきさま何書いてるのん?」
「っあぁっ!見ちゃ駄目です死刑です!」
「あ・・・」
(み・・・られた・・・)
「・・・」
「・・・」
「えーきさま」
「はい・・・」
「じゃあこれは白なの?黒なの?」

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うpろだ1048


「私は一つあなたに聞いておきたいことがあるんです」
 唐突に映姫から切り出された言葉は、普段と変わらぬ口調で、しかしいくらか強い物を感じさせた。
「あなたが私のことをどう思っているのかです」
 鏡と棒を手に持ち、映姫が靴音を響かせながら寄ってくる。
「私の気持ちはもうはっきりとしているのに、あなたの返事はまだ曖昧なまま」
 映姫はそう言いながら近づいてくる。
「いえ、決して責めている訳ではありません」
 なおも近づきながら言ってくるその口調には、確かに責めるような調子はない。
 しかしそれとは明確に異なった、皮膚の粟立つ異様さが感じられた。
「ただあなたの口から、私のことをどう思っているのかを聞きたいだけなんです」
 そして映姫は俺の横に―動けない俺の横に腰を下ろす。
 薬を飲まされたわけではない、恐らくそんなことはしないだろう。
 それなのに動けない。首を縦に振るか横に振るか程度しか出来ない。
「ねえ、あなたは私のこと、好きですか?」
 鏡が変わる。鏡に映った景色が変わる。
 それは小町と川原で寝ている光景だった。また里で文の取材を受けている光景だった。
 或いは花屋の娘と話している光景だった。他にも色々な光景が浮かんできた。
 すべては見られていたのだ。
「どうなんです?」
 映姫が聞いてくる。俺は頷く。
 別に何も疚しい事をしていたわけではないし、気持ちが変わったわけではないのだから。
「一番に?」
 また聞く。また頷く。
「なら、ずっと私のことを好きでいてくれますか?」
 意味が分からない。ずっと? 今のままではいけないとでも言うのか。
 眉間に皺を寄せて、その旨を伝える。
「曖昧さを残すことは罪です」
 映姫がはっきりとした口調で言う。
「ですから白黒をつけてしまいましょう」
 やはり分からない。どういうことだ。
「あなたはずっと私と一緒にいてくれますか?」
 そういうことか。そういうことか? そいつは少し違いやしないか?
 成る程一緒にいるのに異論はない。しかしこれには違和感がある。
「あなたはずっと私の傍に付き添っていてくれますか?」
 そう言って映姫はだんだんと顔を近づけてくる。
 やがて目の中に居る自分の顔が近眼の眼鏡ごしにもはっきりと分かるようになり―俺は考えるのをやめた。
 あの目には抗いようがないのだ。俺が最も忌みで、しかしそれすら好いてしまったのだ。仕方がない。
 俺は頷いた。いいだろう。いつまでも一緒にいてやる。嫌といわれてもだ。
「本当に? いつまでも……」
 映姫は頬擦りをし、俺の肩口に腕を回してくる。
「これでずうっと一緒です」
 映姫に抱きつかれながら、俺は自分の中の何かが少しずつ変わっていくのを感じていた。

 季節は巡り、桜が咲き向日葵が咲き曼珠沙華が咲き牡丹が咲いても、俺の心が動くことは無くなった。
 今はただ、映姫の顔を見るたびに無性に愛しくなるだけである。

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うpろだ1115


ZZZ~ZZZ~

「おはようございます」

ZZZ~~~~

「って起きなさい!」

ZZZ、ZZZ

「……いいですか、これから私は裁判があるので行ってきますからお昼ご飯ちゃんと食べてくださいね?」

ZZZZZZZ

「まったくもう……この人ったら……チュッ」

…………

「こ、こんなこと起きてたらや、やらないんですからね?」

ZUNZUNZUNZUN~

「では行ってきます、私が帰ってくるまでには起きておいてくださいね」

バタン ガチャリ















「むぅ、別に寝ているときにキスしなくてもいいじゃないか~ さてご飯食べて、掃除に洗濯、炊事をやりますかな」

バタン

「おっ」

「あ、あれ?まだ寝ていたはずじゃ……」

「いや今起きたところだが?それより裁判は?」

「あ……その明日……だったみたいです……」

「そうか……まぁドンマイ!」

「というか○○!起きているのならさっさと起きてきてください!おかげでその……は、恥ずかしいことをしてしまったじゃないですか!」

「別におれは恥ずかしくないんだが……? キスくらい言えば何回だってするぞ?」

「ではしてください!」

「は!?」

「言えばしてくれるのでしょう!?だったらさぁ!」

「ちょっ待て映姫!」

「さぁさぁさあ!!」

「くっ!覚悟を決めるしかないのか……って映姫?」

「はぁはぁ……きゅ~」

どてん!

「映姫!これはすごい熱……すぐ医者を呼んでくるからな!」

「ま、待ってください……はぁはぁ……もぅ少しだけここにいて……ください……」

「でも……」

「お、お願いです……」

「わかったから、でもベットに運ぶからな」





「大丈夫か映姫」

「う~ん……」

「こりゃ早く医者を呼ばないとまずいぞ」

「ちわーす映姫様いますかー?」

「おっ小町か!?ちょうど良かった、頼む!医者を呼んできてくれ!」

「おっと○○かい、って、どうしたんですか映姫様!」

「高い熱があるんだ、だから早く医者を!」

「う、うんわかった!」





「う~ん、う~ん」

「しっかりしろ映姫、もう少しで医者が来るからな」

「手を……手を握ってください……」
ギュッ
「安心しろ映姫、俺はずっとここにいるからな」







「単なる疲労ね、2,3日安静にしておけば直るわ」

「ありがとうございます永琳さん」

「いいわ、でもここまでなるのに気づかなかったあなたにも責任はあるのよ?」

「……はい、以後気をつけるようにします」

「すーすー……」

「映姫……」

「じゃあ私たちはこれで」

「ありがとうございました、永琳さん、小町」







「……あ、あれ?私……?」

「ぐーぐー……」

「そう……倒れちゃったんだっけ……」
ギュッ
「……映姫……ずっと……一緒……」

「ふふふ、わかってますよ、これからもずっと一緒ですから」







ZZZ~ZZZ~

「ほら!起きてください!」

「むぅ……はっ!え、映姫!?もう大丈夫なのか!?」

「ええ、おかげさまで」

「ほっ……良かった~」

「あなたのおかげですよ」

「いいや、小町や永琳さんが手伝ってくれたからだよ」

「そうですか……御礼をしないといけませんね……」

「どした映姫?」

「い、いえ、なんでもないです!決しておはようのキスが欲しいわけではありません!」

「……」

「……あ」

「ほほう?そーなのかー?」

「むぅ~、いいですよもう!早く起きてください!布団を干しますから!」

「キスしても良いぞ映姫」

「え!?」

「ほれほれ」

「し、仕方がありませんね!め、目をつぶってください!」

「ん~」

チュッ

「はうう~……」

「……普通キスって唇じゃないか?今のはホッペだったぞ?」

「も、もう知りません!」

「逃げるなよ~」

「きゃっ!んむぅ!?」

「ぷは、これでいいんだろ?」

「は、はひぃ~」

ぼてん

「ちょっ映姫!映姫!」

「むきゅう~」


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うpろだ1128



「○○ー!」

「何ですか映姫様?」

頭二個分ほど小さい映姫様が俺にむかってピョンピョンと跳ねている。
正確には、俺が取り上げた映姫様の笏に向かってなんだけどな。

「早くわたしの笏を返しなさいー」

少女、いや幼女のような甘ったるい間延びした声。
普段の威厳さ等微塵にも感じさせない。
どうやらこの笏でスイッチが切り替わるようになってるっぽい。

「はいどうぞ」

「あっ、ありがとうございます。
 ところで○○。人の持ち物を無理矢理奪うことは――」

「そいやっ!」

「あー! なにをするんですかー」

うん、どうやら当たりのようだな。
しかし、何だ……これはなかなか。

笏を返す。

「○○、貴方はいつもどうしてこう―」

笏を取り上げる。

「こらー!」

笏を返す。

「一体何を考えているんですか貴方は!
 いいですか。まず人として―」

笏を取り上げる。

「もうー。○○やめなさいー!」

腰に手を当てて、頬を膨らませて、私怒ってますみたいなポーズをする映姫様。
やべっ、萌……おっと危ない。もう少しで未知なる世界に旅立つところだった。
しかし、普段が普段なだけにこのギャップはいろんな意味でやばいな。

「ところでえーき様」

「いま呼びかたが変じゃありませんでしたー?」

「いえいえ、そんなことは。
 ところで給湯室の冷蔵庫にプリンが余ってたはずなのですが食べません?」

「今はそんなものを食べてる場合じゃありませんー」

むっ、思考まで幼児化とはいかないか。
しかし、映姫様の扱いは心得ている。

「けどアレ確か今日で期限切れなんですよね」

「えっ、そうなんですかー」

「じゃあ捨てるしかないなぁ。勿体無いな」

「うっ……しかしですねー」

段々と迷い始めているえーき様。
この人は実に態度に出やすくて分かりやすい。
視線も彷徨わせ体全体でソワソワという擬音を発している。
よし、もう一息か。

「ココアもつけますよ?」

「……仕方ありませんー。食べ物に罪はありませんからねー。
 限りあるものを無駄にしないことが今の私に出来る―「善行なんですよね」―むー!」

はっはっは、台詞を取ってやったぞ。
普段の映姫様じゃあ怖くて出来んからな。

「それでは○○ー。私の笏を―」

「さあ行きましょうえーき様。善は急げと言いますからねっ!」

皆まで言わせずえーき様を担ぐように抱き上げて休憩室へと脚を運ぶ。
背中のほうで「やめなさいー」とか叫んでたり、
ぽかぽかと殴られてる気がしないでもないが特に問題はない。
しかし、いつまでも暴れられてると危ないのでちょっと静かにして貰おう。

「無事つけたらプリンにはホイップクリーム乗せましょうか」

「……今回だけですよー」

大人しくなって、どこか嬉しそうなえーき様その声を聞いて。
俺は笑いを噛み殺しながら、道行く足をちょっと速めることにした。










「○○こちらを向いてくださいー」

「何です?」

「あーん」

「……へっ?」


それはまた別のお話……

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うpろだ1209


夜摩天・・・・閻魔とは、死者を裁く神だ。生者の畏怖の象徴であり、決して人と交わる事の無い存在。
厳格な面持ちと圧倒的な威圧感。相手の全てを見透かす摩訶不思議な鏡。
幻想郷でさえ幻の存在となり、妖怪の最強種とされる「鬼」を多数従え、幻想郷の実力者達も閻魔の裁きには逆らえない。
妖怪からも人間からも恐れられ、避けられる、まさに恐怖の象徴である。

四季映姫・ヤマザナドゥ。この幻想郷の最高裁判長。閻魔様であり、説教癖が激しい事で有名なお方だ。
長く生きた妖怪なら誰でも一度はお世話になっている。見た事は無くとも、その名を知らない人間はいない。



「へぇ・・・閻魔様に ねぇ 」

鈴仙・優曇華院・イナバが、変人を見る目で俺を見る。
彼女には少しだけ質問をさせてもらった。今は話がそれて、世間話の最中だった。で、この目つきである。
狂っていると定評のある月の住人にこんな目をされる程、俺はおかしい人間なのだろうか。

「ええ、大概狂ってるわ。あの閻魔様に惚れて、尚且つ告白しようと思っているだなんて。うん、狂ってるわ」

俺は「花の異変」に関わったらしい者達で、閻魔様の事を知っている物を手当たり次第に当たっていた。会えたのは数人であるが。
幻想郷の英雄、白黒魔法使い、瀟洒で従者なメイドさん、人里に降りてきた妖怪神社の巫女。
そして最後に尋ねたのが、この兎さん。
会いたい、話を持ちかけた時には、決まって ブッ という音と共に大量の唾液を勢いよく顔に吹き付けられた。
みんなして酷い反応である。
しかしこの兎さんもまた、閻魔様から弾幕の裁きを受けたらしい。さぞ恐ろしかったろうて。




少し前の事になる。幻想郷のあらゆる場所に、あらゆる四季の花が咲き乱れた異変があった。その異変が終わる数日前。
人里を訪れた死神がいた。曲がりくねった妙な大鎌、人間では無い者が醸し出す独特の雰囲気。
怯える村人から饅頭を買い、それを頬張って満足気な表情を浮かべる死神。一体誰のお迎えが来たのかと恐る恐る見ていると

「何サボってるの小町!!」

という叫びと共に、上空から見るもおぞましい凶悪な弾幕を放ち、首根っこを掴み上げ、スミマセンスミマセンと呪文のようにつぶやき、
蹲ってしまった死神を、首吊りのように空中に持ち上げ、さらに説教を大声で浴びせながら彼方に飛び去っていった光景を見た事がある。
それが、俺が初めて閻魔様を見たシーンである。・・・・正直恐ろしかった。
しかし死神を叱るそのおっかない姿は、恐怖が混じってはいたが、自分がかつて母親から何度も感じた事のある 「優しさ」が感じられた。
そして何より閻魔様は、話に聞いて想像していた姿とは違い  とても美しかったのだ。

俺は閻魔様のことが気になりだした。そもそも俺の閻魔のイメージは、恐ろしい物ばかりだった。
死者を地獄へ落とし、舌を抜いて・・・
閻魔には情けも仏もありゃしない、そんな非道でおっかない神様なのだと思っていた。
では何故? 母性にも似た優しさを感じさせた彼女はそんな事を仕事にしているのか。そして彼女は、
なぜ人々に、地獄に落ちぬ為の道を説教して回るのか?
少しずつ、俺は閻魔という存在に、畏怖だけでは理解できない何かに気づき始めていた。
そして、最近更新されたという幻想郷縁起の最新版を見た俺は・・・




「ちょっと、唐突にボーッとしないでよ。尻に弾ブチ込むわよ」

 すまん、冗談抜きでやめて。

・・・・そう、閻魔とは、人間の恐怖の象徴であると同時に、輪廻の輪を担う、人を清める存在なのだ。
人の犯した罪を洗い流し、新たな生へと送り出す。地獄の罰とはその為に存在する。
人を裁く行為も、結局は人の為。
あのお方が行う説教とは・・・受ければ受ける程、地獄の刑罰が軽くなるのだ。
四季映姫・ヤマザナドゥは常に、人の為に働いていた。

そして、人を裁く行為は、それ そのものが閻魔達にとって罪である。閻魔達は、人を裁いた自分の罪を裁く為、
地獄で罪人が受けるより厳しく、恐ろしい罰を、日に三度は味わうという。地獄に落ちるような身勝手な外道達なんかの為に。
自分を裁ける神であるが故、閻魔は人や妖怪も平等に裁く。閻魔とは、誰よりも人の為を想う、とても優しい神だったのだ。

幻想郷縁起を読み進める内、閻魔とは何か?をここまで知った。  俺は、閻魔が畏れる対象だとは思えなくなってきていた。
なんて慈悲深い神なのだろう。 
だってそうだろう? 人を裁いて綺麗にして、自分はそれ以上に罰を受けて・・・そんな辛い慈善事業は無い。
あの方は、そんな仕事をしながら、人々や妖怪に避けられ、それでも尚人の為に働いて・・・・尚、優しさを放っている。
あの方から溢れる、人の為を想う強い意志と、閻魔である事への誇り。俺はそれを知った。

そんな彼女の姿に俺は・・・・



「いくわよー 3 2 1 ・・・」

 うおお!待て 待ってくれ。ケツの穴に向かってその銃を撃つポージングはやめてくれ。

「私が知ってる限り、閻魔様は休憩中に神社に酒飲みに来たり、プライベートだと案外フランクなとこもあるみたい。ただ・・・・」

 ただ?

「・・・・閻魔様の波長は、「位相」がズレているのよ。普段は人間や妖怪と変わらないように話してるけど、
 あの人の波長は、決して地上の生き物と交わる事の無い波なの。だから閻魔は人を裁ける。
 私のあらゆる波を操る能力で閻魔様の波長をイジろうとしても、全く動かす事ができなかったわ」

 つまり?

「酷いこと言うようだけど、愛の告白なんてしても無駄だって事よ。絶対に人と交わらない波長なんだから。
 あの方は私達 「生き物」 とは全く違う存在。断られるならまだしも、絶対説教食らうわよ?」

閻魔の揺るぐ事の無い波長。生き物とは違う。
果たしてそうなのだろうか。彼女から感じる優しさ。それは本当に生物とは別の物なのか?
どちらにしても俺の考えは変わらなかった。想いを伝えたい。それだけは変わらなかった。

 話、ありがとう兎さん。世話になったね。


「ま、貴方が玉砕しようが私はどうでもいいわ。精々がんばっ・・・・・ いっ!?」

途端に彼女は、永遠亭の中に隠れてしまった。いきなり何だ。


「あらあら。私を見るなり逃げ出すとは・・・臭う物には蓋の理論。過去の罪は過去の事、今しっかりやれば良い とは なんとも甘い・・・
 あの様子ではどうやら、まだ過去の罪を見る事が出来ていないようね。それとも私の話が理解できなかったのかしら」


いつか人里で聞いた、とても芯のある、それであってとても綺麗な声。
四季映姫・ヤマザナドゥがそこにいた。

「先程まで彼女と話をしていたのは知っています。「彼女はここにはいないー」などと嘘をつくのはやめておきなさい。庇っても無駄ですよ」

俺を一瞥し、全てを見透かしたような、黒い瞳が俺を捉える。やはり改めて近くで見ると、すごい威圧感だ。
いや、別に庇う気なんて無かったけど。

「ん・・・・よく見ると貴方も何か、厄介な罪を背負っているようですね。」

どれ、と つぶやき手鏡を取り出すと、片手だけの手馴れた手つきで開いてみせた。話に聞いていた、過去を映す鏡なのだろう。
しばらく黙って鏡を見つめていた閻魔様が、少しずつ難しそうな顔に変わっていった。

「・・・・・・・・」

 あ、あの。

とりあえず声をかける。今から俺が言う言葉、既に知られてしまったか。
今までの話が本当ならば、この方に嘘や隠し事なんざ出来やしない。言うならもう今しかない。

 え 閻魔様。

「映姫 でかまいません」
鏡から すっ と顔をこちらに向け、真っ直ぐと言い放つ。

 え、映姫様!あの、その、私は・・・・貴方の事が・・・s

「なりません」

断られた。一瞬の躊躇も無い、ハッキリとした声だった。まさに断罪。バッサリと断ち斬られた。



「うわぁ・・・・」
様子をコソコソと伺っていた鈴仙も、予想していた通りとはいえ、想像以上の砕け散りっぷりに思わず同情してしまう。



映姫様は厳格な顔と気迫で、続けた。しかし彼女に対して、今の俺は恐怖を感じられない。
「そう、貴方は少し、私に対して畏れが無さすぎる。 閻魔とは人間の恐怖の象徴、人を裁く神なのですよ 」

うーむ。閻魔とは 裁くだけの存在じゃないんでしょうに。

映姫様は淡々と続ける。
「そのまま私を畏れずにいるのは貴方にとって喜ばしくない状態です。貴方が私を想い続けても、
 きっと報われぬまま一生を終えるでしょう。それでは貴方の徳に支障が出る。貴方自身もきっと幸せにはなれない。
 私を畏れ、他の者を想う事。 それが貴方に出来る善行です 」

 できません。

自己評価でちょっと見栄を張っていいならば、映姫様に負けず劣らずキッパリと言い切った。
畏れろ?だから無理だ。そんなもん。

「貴方の罪は、今の所は説教で十分洗い流す事の出来る罪です。・・・私が原因で地獄に落としたくはありません」

 それでも無理です。映姫様を畏れる事なんて俺にはもう出来ません。しかし、俺の我侭なんかで、
 映姫様に地獄の罰を受けてもらいたくはありません。・・・俺は地獄に落ちないように一生懸命善行に励みます。
 ですが・・・その説法を聞き入れる事だけは 俺には出来ません。

緊張して舌が回っていなかったと思う。 それでも早口にはならないように、しっかり言う事を心がけたつもりだ。
俺は役者じゃないのだ。カッコつける余裕なんざどこにも無い。

厳格の顔のまま威圧感を放っていた映姫様の顔は一瞬、ちょっと困ったような顔に変わった。
「・・・・・・」




「うわぁ・・・」
鈴仙はセリフがこっ恥ずかしくて、若干顔を紅くしながら成り行きを見守っていた。
狂ってやがる と思った。しかし、それでも閻魔の波長は揺るがない。




「貴方の想いは、絶対に届きません」

 わかっています。

「地獄に落ちるかもしれないのですよ」

 そうならないようにして見せます。確か幻想郷縁起にありましたけど、説教くらいなら閻魔は自分を裁かなくていいんですよね。

「・・・・・・」

映姫様は、しばらく目を瞑ると、軽く、本当に軽くため息をついた。

「これ以上話を続けても無駄なようですね。・・・地獄に落ちる事の無いよう、しっかりと善行に励みなさい」

鏡を閉じ、背中を向ける。
俺は深く、ただ深く頭を下げた。






「うわぁ。」
閻魔様が諦めた。相当である。狂ってる。

「馬鹿な人・・・だから私、最初から教えてあげたのに。叶わないってわかってんだから最初から ・・・・あ? 」

鈴仙は、奇妙な違和感を感じた。
「閻魔様の波長が・・・変わった・・・? え? 」
それは気が付かないほど小さな、本当に微弱な変化。鈴仙でさえ干渉できなかったあの波が 僅かに揺れたのだ。


「さて。」
閻魔様が、突然鈴仙のほうにグルリと首を向けた。首だけを120度ほど回して睨んでいる。
目の会った鈴仙は、驚いて胃が飛び出そうになった。永遠亭の奥へと逃げた鈴仙だったが・・・




閻魔の弾幕が轟く永遠亭を後にして、帰り道を歩く。

まぁ、こうなる事は解っていたさ。 ただ、俺の想いを伝えられてよかった。
映姫様を、彼女を殆どの者は畏れ、嫌う。だけど俺は、心の底に慈愛の溢れた閻魔。映姫様を愛してしまった。
彼女は鏡で全てを知る。けど俺の想いは、俺の口で伝えておきたかった。
メチャクチャ勝手な話だが、映姫様が何を言ってもこの想いが変わらないという事だけは伝えたかったのだ。







映姫は鈴仙を締め上げ、次の目的地、霧雨 魔理沙の元へ向かっていた。
途中、映姫は何度も頭を振った。

「・・・・・・いけませんね、私ともあろう者が。
 人間に想いを告げられ、心を乱すなどと・・・・」

閻魔として生まれ、閻魔として生きてきた映姫にとって初めての事だった。
人や妖怪からは畏れられて当然。それが閻魔の正しい在り方だ。
それを理解した上で閻魔の仕事をこなしてきた。 輪廻とは、人や妖怪の為に 最も大切な仕事の一つ。
ただ、転生の為に地獄に落ちる者を出来る限り減らしたい。
説法を説いて回る。それが映姫の、閻魔としての目的だった。
自分は神。裁きの対象は妖怪と人間。 位も種族も、何もかもが違う存在。
彼女にとって人間や妖怪は愛すべき存在であったが、その者達に好かれる事は決してないと思っていた。
彼女もそれで良いと考えていた。むしろ、閻魔は好かれてはいけないのだ。

「・・・っ」
彼女は自分の頬を両手で一叩きした。上空から見下ろした先には白黒の魔法使い。
さて、言いつけは守っているか? 確認の時間だ。
映姫の顔には厳格な顔が戻っていたが・・・・・ 変化した波長までは、戻ってはいなかった。




家で惰眠を貪り終えた俺が、ぼーっとした頭で竹林での映姫様との会話を思い出す。

 閻魔と人間・・・か。やっぱり、交わる事は出来ないのかねぇ

まぁ当然だろう。人間と神様なのだ。思い上がりも甚だしい。頭ではわかっていたが、俺のこの想いだけはいつまでも消えずにいた。
無論、消すつもりなんざ一生無いんだが。 まっこと、馬鹿な話である。
でもまぁ、頭じゃ理解しててもどうにもできんのが恋ってもんなんじゃあないだろうか?

では、唯の人間に生まれちまった俺が、遥か遠くの存在である映姫様に出来る事は もう何も無いのだろうか。

否。
閻魔様に対する苦労をできる限り減らす様、努力する事。
それが何の力も無い、普通の人間として 映姫様の為に出来る唯一の事だと考えた。のだ。


 さて、そろそろ善行を積みに出かけるとしようかな。
 死後の生活を、より良い物にする為に・・・・





その後、四季映姫ヤマザナドゥと、この男には もう少し色々話がある訳だが、それはまた別の機会にでも。

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最終更新:2010年05月11日 15:11