雛(レス)1


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「違うよ。 例え厄神だったとしても、厄神という名の天使だよ」

まとめるとちょっと樹海で雛とウフフウフフ笑いながら手を取り合ってくるくるしてくる

17スレ目 >>63
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「記憶、喪失?」
「はい、なんでここにいるのかも思い出せないんです」
「そう……じゃあ、なんで厄神である私のところに来たのかしら?」
「とりあえず、厄を吸い取ってもらえば、何か思い出すかと思って……」
「……そう。わかったわ」

~少女回転中~

「う、くっ……」
「や、厄神さまッ! 大丈夫ですか?!」
「大丈夫よ、このくらいの厄……くぅっ……」
「無茶はやめてください!」
「やめないわ、これも人のため……あなたのため……」
「僕の、ため?」
「そう……うぅっ!」

~少女回転力低下中~

「厄神様、やめてください!」
「(『厄神様』……まだ、駄目なのね)このくらい……」
「やめてください、僕なんかのために、命をかけないで!」
「あなただから、命をかけるのよ……」
(僕だから……あれ、何かが……見える……)

~少年接近中~

「やめなさい! 今の私に近づかないで!」
「すみません、何か、思い出しそうなんです」
「やめて、厄がつくわ!」
「でも、大事なことが……思い出せるなら!」

ぎゅー

「……雛……」
「まさか……思い、出したの?」
「ごめん、一番大事な人を忘れてたよ……」
「私にそんな資格なんてない、あなたが記憶を失ったのは、私のせい」
「いいんだよ。起こってしまったことを気にしないで。それに、全部思い出したよ。ここにいる理由も、こうしている理由も」

~少女接吻中~

「……馬鹿、厄がつくわよ……」
「いいんだよ。もう君にさびしい思いはさせない。君自身の厄を、僕が背負うんだ」


19スレ目 >>45
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雛、おれお前だけのお内裏様になるから一生隣にいさせてくれ

20スレ目 >>29
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「雛、他の神様は別れを惜しんで宴会をしてるけど参加しなくていいのか?」
「私は厄神だからあんまりみんなから歓迎されないし、それに…」
ギュ
「今はあなたの隣にいるだけで十分幸せだから♪」

20スレ目 >>529
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144 :名前が無い程度の能力:2008/12/24(水) 20:54:34 ID:.i6etxksO
    「クリスマスイブだけど誰かと過ごす予定はないの?」
    「ねぇよんなもん」
    「――そう、私とは過ごしてくれないの」
    「……え?」

145 :名前が無い程度の能力:2008/12/24(水) 20:56:59 ID:2UHDOFTk0
    「っていうのはどうかしら」
    「ねーよ」
    「よくない? 厄くない?」
    「悪いのかいいのかよく分からん」
    「でも今日は残念ねー」
    「どうしてだ?」
    「あなたに厄が全くないわ」
    「ああ、そだな」


    「まー厄の塊と密着してりゃ厄いも何もないけどな」
    「ううう、それ言っちゃだめぇー」

22スレ目 >>145
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雛さん雛さんどこ行くの くるくる回ってどこ行くの?
人を厄から護るため 今日もお勤め厄集め

雛さん雛さん何してる 博麗神社で何してる?
巫女の居ないお社が 心配だからお留守番

雛さん雛さんどうしたの そんなに急いでどこ行くの?
ごめんね今は話せない 兎に角早く帰らなきゃ

雛さん雛さん…おや?

雛さん雛さん大好きです 幻想郷一大好きです
嬉しい嬉しい嬉しいわ 私も貴方を愛してる

どうやらお邪魔のようですね ここはおいとまいたしましょう
彼の前では雛さんも 一人の恋する女の子

22スレ目 >>711
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天狗の知り合いからの頼み事の帰り道、山で迷った。
何度も通っている道だから、と油断していたのが不味かったのか。
最早どこをどう通ったのか、今は山のどの辺りに居るのか、全く解らなくなってしまった。
更に悪いことに、もう直ぐ日が暮れる。
博麗神社の巫女から拝借した護符があるとは言え、夜の闇が来れば身の安全は保証出来ない。


――などと、半泣きになってガクガク震えながら山の中を走り回っていたら、ふと言いようも無く良い匂いがした。
何なんだろうと恐怖も忘れて足を止めたて辺りを見渡したら、誰が渡したのかは分からないが、大層豪華な造りの橋が。
更に良く目を凝らしてみれば、橋の向こうで綺麗な恰好をした男女数名が宴をしている。
……今、この時思えば、自分は怪しいと思って引き返すべきだったのだろうが、そんなことも考えられない程に感覚が麻痺していたのだから仕方ない。

じぃっと宴の様子を眺めていたらあちら側もこっちに気付いたのか、おいでおいでと言わんばかりに手招きをしてくる。
一人ぼっちの寂しさと心細さから解放され、安心感から自然と頬が緩む。
そして向こう側に渡ろうと足を踏み出した瞬間、橋が消えた。
まるで手品の様に、そこにあった筈の橋が消えてしまったのである。
――しまった、物の怪の類であったか。と気付いた時には遅すぎた。
踏み出した足と体は戻せず。自分は巫女や魔法使いではない、しがない外来人Aなので空など飛べる筈もなく。
地球の大いなる重力に従って、底の見えない奈落へと引きずり込まれて行った。


「いいけど、必ず帰ってきなさいよ。亡霊になって帰って来たらタダじゃおかないわ」


意識が消える寸前、護符を拝借する時の巫女の声が聞こえた気がした。


瞼を開いた時、最初に目に入ったのは緑色。
寝ぼけていた、というか意識が定かではなかった自分には、それが誰かの瞳の色だった、という事には気付かず。
そのまま顔を上げてしまったら、額と額がごっつんこ。
倒れていた自分を看病してくれた恩人に初っ端からヘッドバッドをかますという大変無礼かつ非常識な真似をしてしまった。

痛む額を押さえ、唸っていれば痛むが引くに連れて段々と意識が覚醒して来た。
そして、妖怪の罠に引っかかって奈落の底へ転落したことを思い出し、漸く自身の有り様に気が付いた。
体中包帯が巻かれ、足も折れているのか動かないように固定されていた。

呆然としていると、先程ヘッドバッドをかましてしまった恩人の女性が自身の現状について説明してくれた。

ここが彼女の家であること。
自分がズタボロになって倒れていたこと。
彼女が介抱してくれたこと。
自分が完治するまでは面倒を見てくれるということ。
ここが厄神の通り道であること。

有難う、先程はすまなかったと告げると彼女は許してくれた。
名前を聞けば、鍵山雛。八百万の一柱、厄神らしい。
この時、これが嫁の名前になるなんて、考えもしなかったわけだが。


彼女は甲斐甲斐しく自分の世話をしてくれた。
包帯の取り替え、話し相手、リハビリ等々。
時折、過剰と言えなくもないスキンシップを取ってきたが。

そしてある日、雛が料理を作ってくれた時のこと。
シチューをスプーンで掬い、「あーん」と差し出して来る。
この時既に両腕は不自由無く使えていたので自力で食べようとしていたのだが、雛も諦めが悪い。
押し付けるように匙を差し出す雛と拒む自分、段々二人ともヒートアップ、そしてお約束の如く零れるシチュー。
自分の口から胸元にかけてシチューで真っ白に染まった。
あまり温度はなかったので、大事には至らなかったのだが。
雛は、大変、火傷しちゃうと濡れた布巾でシチューを拭き取った後、何故か顔を近付けて来る。
そして徐に俺の口回りを舐めまわし始めたのだ。
ピチャピチャと音を立てる彼女の舌使い、間近に感じる吐息、甘い匂い。
きっとこれらの要素で自分はアグレッシヴになっていたのだろうが、勢いに任せて彼女の舌を啄み、舌を絡め取った。
雛も面食らっていたが、直ぐに目を閉じて身を委ねた。
自然と雰囲気は急変し、熱にやられた思考は――


……この後、どうなったのか、詳細は各々の想像力に任せる。

とにかく、色々端折ったが自分は雛と恋人同士の様な関係になった。
何でも一目惚れだったとのこと。
そういうことがあり、俺は妖怪の山で雛と同棲している。
何故彼女の回りの厄で不幸にならないのかと聞かれれば、愛の力だとしか答えようがない。
今では交際を始めて3ヶ月。妖怪の山で一、二を争うバカップルと呼ばれている。
何か忘れているような気がしなくもないが、雛が幸せそうに笑っているのでよしとしよう。


25スレ目 >>338,>>342-343
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「雛、そっち行っていいか?」
「ダメよ、私に近づくとあなたに厄が・・」
ピタッ
「ゼロ距離なら大丈夫だろ?」
「そ・・そうだけど・・」
くるくる~
「うわ、くっついたまま回るなって、」
「恥ずかしくて回らずにはいられない~!」

25スレ目 >>589
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暇だから雛さん弄ってみた。

「雛さん実はお願いがあるんですが」
「なぁに?」コクッ(小首をかしげる音)
ヴォッッ
「ど、どうしたの?急に鼻血出して仰け反ったりして…」
「ズビバゼン、モウイチドオネガイデキマスカ」
「も、もう一度って…」コクッ(小首をかしげる音)
ブボォォー
「あぁっ!!雛ざんざいごぉぉー!!我が生涯に一片の悔いなしッ!!」
「な、何なのぉー?!ねぇっ、そんな一片の悔いもないような顔して
鼻血噴き出して倒れないでー!」

25スレ目 >>762
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「あぁ、厄い、厄いわ」
「どうしたんだ、雛」
「あら、○○。それがね、」
「あぁ、言わなくても分かる。最近いろんな場所でいろんな奴らがイチャイチャして砂糖にまみれた死体が大量に発見されてるんだろう?」
「いつの間に死体が出来るまで事態が発展していたの……」
「加害者は結構無意識のうちに砂糖を生産しているらしいな」
「厄いわね」
「ところで」
「?」
「なんでさり気なく手を組んできてるんだ?」
「……知りたい?」
「ああ」
「……ふふ、教えてあげない」
「え、なんだよそれー。じゃあ仕方ないな、雛に直接聞く」

 チュッ

「んぅ!? い、いいい今っ! 今っ!」
「んー? どうしたんだ?(ニヤニヤ」
「……も、もうっ」

 ギュッ


26スレ目 >>213
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さっきから厄神様の雛さんが僕の背中にしがみついて離れません。

「お仕事はいいんですか?」
「今日はお休み」
「鴉天狗の子がシャッターチャンスとばかりに狙ってますけど」
「だったら見せつけてあげればいいのよ。それに」
「それに、何でしょう?」
「あなたと一分一秒でも一緒にいたいの。迷惑かしら」
「そんなことはありませんよ。ただ、ちょっと恥ずかしいなって…」
「私だって恥ずかしいわ。でも、それを理由に離れるのも嫌だもの。うん…」
「う、雛さ、ん…」


26スレ目 >>704
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「今日は雛祭りでしたが、雛さんとは厄集めのお勤めの時以外はいつも
一緒にいるので、毎日が雛祭り気分です」
「も、もぅ…恥ずかしいことを平気で言っちゃうんだから」

28スレ目 >>222
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〔どんどんどん どどんがどん あそーれ! どんどんどん どどんがどん
春はあけぼの 踊らにゃ損損 お祭り騒ぎだ! 諸行無常!〕


ふもとにある村が、夜だというのに明るい
そうか、今日はお祭りか
妙に明るい、というかすっとぼけた祭囃子が聞こえてくる
あと、どんどんどんまで口で言うなよ

「○○、お祭りに行きたいの?」
「いや、今日は雛と一緒にいるよ」
「私は気にしないで、行ってきてもいいのよ」
「…………」

彼女は厄の塊
それが人が集まる祭り会場に入っては、何が起こるかわからない
雛がそれを懸念してることくらい、俺だってわかる
でも、祭り大好きな俺は、どうしても雛と祭りの空気を感じたいんだが……

「そうだ」
「どうしたの?」
「雛、ちょっと待っててくれ。すぐ戻るから」
「いいのよ、楽しんでらっしゃい」

少しだけさみしそうな笑顔に後ろ髪を引かれる思いながらも、俺は村に走った


〔きみを追って何年さかのぼったかな きみを追って何人失ったかな
 あの日の月はまるで花火大会 ぼくはきみに降り注ぐ弾幕の華に魅せられてたのに……〕

どんな祭囃子だ
祭りだってのになんでこんな重い歌詞なんだ
しかも声だけは相変わらずハイパー能天気そうなのがミスマッチ過ぎて逆にマッチしてる気がする
って、そんなことはどうでもいい
用意を整えてさっさと帰らなくちゃ


「ただいま」
「おかえ……り。何なの? その荷物」
「ああ、わたあめ りんごあめ たこ焼き お好み焼き 食い物その他もろもろ……ああ、やっぱカキ氷は溶けたか
 それと金魚と桶ともらったポイで即席の金魚すくい 射的屋のおっちゃんからもらった空気銃と景品いろいろ
 せめて、祭りの雰囲気だけでも雛と一緒に味わいたくてさ」
「……ありがとう」

控えめに笑う
あまり喜んでないようで、これが雛にとって最上級の笑顔だと知るのはたぶん俺くらいだろう

「でも、その前にいいかしら」
「?」
「盆踊り。一緒に踊りましょう」

踊る俺たちにもあいも変わらず聞こえてくる、能天気そうな祭囃子
何か知らないが大復活したと大喜びする内容のようだ

「踊りなんて初めてだけど、うまくできてるかしら?」
「知らん。何せ俺も初めてなもんでな」

祭りって言うからには、何かの神様を祭ってるんだろう
その中で、厄神を祭る変わり者がいたっていいよな?

そんなことを考えながら、祭囃子は何度目かの終わりをむかえる

〔活殺自在よ 散るがよい!〕

………締めまでわけの分からない祭囃子だった


30スレ目 >>287
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 今日の務めが終わった彼女に御苦労様と声をかけると、こちらを振り向く事も無く
 また来たのねと返事が返ってきた。君に会いたいからさと冗談半分に言ってみたが、
 何割通じているのやら。嬉しそうに笑みを浮かべ、有難うと言われるあたり、
 まだ脈はあるのかも知れない。さて、今日はどんな話をしようかと考えていると、
 いつの間にか彼女も私と話す時の定位置に座っていた。こちらを穏やかに見つめている。
 少し待っていてくれ、と手を振り合図を送る。それを頷くことで受けとめる彼女。
 小さな沢を挟んで向かい合う私達。神と人が触れ合うにもルールがいるらしいのだ。
 そんなルールは道端に捨ててしまえと思うのだが、彼女は悲しそうに微笑むだけ。
 出来ればいつでも笑っていて欲しい。そう思って、ここへ話をしにくるようになって
 もう何年経っただろうか。私の傍にいると危ないわと、付き合い始めた頃に
 言われた事を未だに覚えている。出会った頃の事を覚えているかと尋ねたら、
 貴方との日々は一日たりとて忘れ得ないと返された。予想だにしていなかった
 答えではあったが、私は満足などという言葉では足りない幸福感を得られた。
 にやにやして気持ち悪いと直後に叩き落とされてしまったが、良しとする。
 さて話を戻すが、私の心根からの願いとしては、"沢を越えて"しまいたい。
 彼女が私の事をどう思ってくれているか聞いた事はないので不安がないとは言えないが、
 それらを前にしても尚、私は彼女を抱き締めてやりたいと思うのだ。
 梢で囀る鳥達と戯れたくても、それは出来ない、してはならないと寂しく微笑む君を、
 私は大丈夫、私ならば大丈夫だと、共にいることが出来ると、抱き締めてやりたいのだ。
 引き替えに人の身ではなくなってしまうとしても、それは然程問題ではない。
 その辺りの手法を話の終わりにでも尋ねるとしようか。それでは、と軽く咳払いをし、
 話を始める合図を送る。今日の噺は遠い街で起きた、ある青年の悲劇的な喜劇の話だ。
 題目を告げると、彼女は矛盾しているわと言い、くすくす笑いだした。
 確かに矛盾した内容なのだが、これは事実で史実なのだからしょうがあるまい。
 何せ、舞台の主役は私なのだ。内容はここへ至るまでの半生を、面白可笑しく。
 黙って聞きなさいなと軽く嗜めた後、私は物語を語ることにしたのだった。



避難所 作品投稿・練習スレ >>132
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 勝敗のつかない水の掛け合いを繰り返した。びしょ濡れになった服のまま、川で泳いだ。
 お互いの手を掴んで水の中に引きこんだり、引かれたり。子供のようにはしゃいでいた。
 でも俺は子供じゃなかった、元気でいられるのにも限界が来たんだ。
 
 「疲れたな………」
 「そうね………」
 
 手当たりのいい大きな石を椅子代わりにして、そこに腰を下ろして休んでいる。
 同じように雛も俺の隣に座り込んでいて、その横から見えた表情は、今の俺と同じだった。
 何もかも忘れて、こうやってはしゃげる機会はそうそうなかった。だから自分の体力の限界さえも見えなかった。
 立ち上がる気力さえも使いきってしまった今、動こうとは思わない。
 
 「でも、楽しかったよ」
 「……………うん、そうね」

 帰ろうと思わないのは、それだけじゃない。
 今という時間が終わってしまうのが嫌だったんだ。楽しい時間をいつまでも続けていたかったからだ。
 子供みたいな我儘かもしれないけれど、それでもそうなって欲しいって願ってやまなかった。
 でも、上を見上げてみればもう無理なんだって分かる。
  
 「赤いなぁ……………」

 見上げた空から見える赤い光は、白い雲を赤く染めている。
 青空はもうすでに無くなっていて、今も刻々と夕焼けという景色を変えていた。
 もう終わりなのだと暗にそう告げているようで、それが少し寂しくもあり、悔しくもある。
 でも仕方ないか、そんな感傷に浸っている頃、左肩に当たる何かを受け止めたことに気がつく。

 「雛?」
 「――――――」
 
 目を瞑ってこちらに思いっきりもたれかかる雛、呼びかけた声にも反応する気配はない。
 かすかに聞こえる呼吸音、その反応から考えるに、今どんな状態かを把握した。

 「――――うぅん――――――」

 僅かに身じろぐその姿、無防備な顔を晒しながら、一番近い場所でそれを見ている。
 普段とは違う今。中々見ることのできないこの状況。安心しきっているのか、その寝顔は安らかだ。

 寝ている子を起こすのは趣味じゃない、と起こさないことに対する言い訳を考える。
 でもそう考えてしまったのは、少しだけ鼓動が速くなったからだということは、もうとっくに知っていた。
 ………これはいつになっても変わらないな、と変わらないでいてくれたことを嬉しく思う。
 
 「………おやすみ、雛」
 
 そう呟いて雛から目線を切った先、流れる川の向こうに飛ぶ何か。
 行く宛ても無くフラフラと漂うそれは、四枚羽の赤いフォルム。
 秋の代名詞とも呼ばれ、広く歌のタイトルとしても知れ渡った昆虫達が、かつて俺達がいた場所で舞っている。 

 「夏も終わりかな」

 春が来て夏が来たように、秋がやってくる。ただそれだけのこと。
 過ぎ去っていくことは悲しいけれど、でもまた明日はやってくる。
 そして、それをずっと雛と見ていくということ。今のように。
 
 ―――――――さようなら、暑い夏よ。


34スレ目 >>527
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夜の風が風鈴を鳴らした。晩夏の湿気を含んだ夜空に月が輝いていた。庭木の陰が青く輝き、縁側を照らしていた。
そろそろ風鈴も片づけなければ。縁側に座っていた○○はそう考えながら空を仰いでいた。コオロギがささやいている中、場をわきまえぬ蝉がじっと一声鳴いた。
庭のサルスベリの花も月光の下で散りかけている。秋も近い。

「考え事かしら?」

軽い足音が○○の方に近寄ってくると、かちゃり、と盆が置かれた。
○○が振り返ると、雛がスイカの乗った皿を差し出してくれている。
○○は三角形のスイカを素手で掴んだ。フォークと皿が雛のたおやかな手に残る。

「夏も終わるんだなあ。」
「さみしい?」
「……さあね。」
「隣、いいかしら。」
「うん。」

雛もスカートを整えて○○の隣に座る。リボンを大きくゆらして身をよじると、スイカの乗った皿を手に取った。
フォークで先端の甘い部分をわずかにはぎ取ると、音も立てずに口に運んだ。

「ねえ、○○。私のと代えてあげるわ。」
「何で?」
「スカスカで美味しくなさそうじゃない、あなたの。」
「いいよ、もう慣れてるから。」
「私のはきっとおいしいわ。ほら、代えてあげるから。」
「雛の食べたところだけでしょ。俺が食べるとどこもまずいんじゃないかな。」
「そんなことないわ。いくら私の厄でもスイカくらいは見逃すわよ。ほら。」
「じゃあ…。」

スイカを交換すると、○○は大きく一口かぶりつく。

「どう?」
「…まずくない。」
「ね。言ったでしょ。」
「…うまくもない。甘くもないし、酸っぱくもない。ウリだ、これ。とてもスイカじゃない。」
「……私のとこだけはおいしかったのにな。」
「厄のせいだよ。雛のせいじゃない。」
「あーあ。」

雛が大きく溜息をついた。

「秋が来るわね。」
「秋が来るね。」
「また人里に降りられなくなるわね。」
「別に来てもいいじゃない。」
「里の人に悪いわ。私が行くと、稲に厄を伝染すんじゃないかって睨まれるし。」
「言いがかりなんでしょ。」
「言いがかりよ。そんなことしないわ。でもいっぺん不作を私のせいにされたわね。」
「……言いがかりだね。」
「ええ、だから里には行きたくないの。忙しい中、私みたいのが邪魔しちゃいけないわ。あ、でも、収穫祭って行ってみたい。楽しそう。」
「来なよ。」
「行きたいわ、私が厄神じゃなかったら。もしそうだったら○○もおいしいスイカが食べられたのにね。」

あはは、と雛が明るい笑顔を作った。○○はこれまで雛の引き寄せた厄の影響を一身に受けてきた。○○の生まれつきの悪運で中和されているものの、
貧乏くじを引く羽目になるのは毎度のことであった。今回のスイカのようなことならば○○の身にほぼ毎日降りかかっていた。

「どこ行くの、○○。」
「ごはん。」

急に○○が立ち上がった。夕食はもう済ませたはずなのに、と雛が不思議に思っていると、○○が戻ってきた。
左手に白米でいっぱいのドンブリを持ち、右手に持った塩をその上にかけていた。白米の上に乗せられたスイカの上にも塩がかかる。
雛があっけに取られていると、○○はドンブリに差した箸を手に持つと、飯を食べはじめた。

「うん、うまい。」
「……」
「雛のくれたスイカすごくうまい。塩がよく合う。厄なんて関係ないな。おいしい。」
「…もう。」

かなわないな、と雛は思う。どれだけ厄が集まってもこの男はまったく動じないのだ。
○○の分だったスイカを置くと、雛は○○の側に身をかたむけた。そのまま○○に身をゆだねる。

「貴方のそういうところ好きよ。」
「何?袖でスイカの汁ふかないでよ。」
「好きって言ったの。」
「…秋祭り、来なよ。席、作っとくから。」
「考えとくわね。」

――秋が来る。


34スレ目 >>528
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最終更新:2014年12月06日 21:47