にとり4
新ろだ87
長月の終わりごろのこと―――
『八雲紫プレゼンツ!! あなたも恋人と一緒に外界を旅行してみませんか? 希望者は―――』
今、幻想郷はこの話題で持ちきりだ。
「―――なあ、にとり。」
作業場での仕事が終わってすぐのこと。
俺は休憩スペースでジョージア片手にテレビを見ながら我が恋人、――にとりに問いかける。
「んぁー?」
にとりは俺のズーマー(名をアーデルハイト、という)をバラしている最中なためか、生返事だった。
……たった今、シートフレームまで外され、一見大き目のキックボードのような外見になった。そのままでも走れそうだ。
「俺たちは外界へ行ったりしないのか?」
「あー…やめといたほうがいいよ? 私たちはいつでもいけるし……」
作業を続けたまま答える。
あまり気乗りしないようである。
「確かに行こうと思えば俺たちは行けるけど……」
妖怪の山の内部は要塞になっているわけだが、内部には外に通じる穴、というものもあり外界の各地へ出ることができる。
元・外来人の俺は引率者としてにとりや、他の河童さんたちを連れてよく外の世界に行く。
目的は技術を学んだり普通に観光したり、と様々だ。
河童さんや天狗さんたちからもらえるチップ、おいしいです(^q^)
俺の密かな収入源だったりする。
「いやあ……だって……この前紫が私たち河童にある『モノ』を作って欲しい、って来たんだけどなんだと思う?」
「そういえば最近技術開発部のやつらがなんか作ってたが……わかんねえな……なんだ?」
「……『追跡機能とステレス機能を持ったビデオカメラ』……」
「へ?」
それは……またあからさまな……
「目的は明らかに盗撮だよ?」
作業をしながら俺に言う。
あ、プーリー交換もしてくれるんですか。ありがたいです。ウェイトの調整ってシビアだけどがんばってね?
「……かもな……」
「まあ、ぶっちゃけ目的は聞いてるんだけどね?」
にとりの話によると、何でも霜月の初めの宴会で余興として放映するんだと。
なんとまあ……たちの悪い話だ。
「……○○は……行きたいの……?」
正直、すごく行きたい。
確かに、外界はいつでも行ける俺らは、今回の企画にホイホイついていく必要はない。
企画の全貌を知っているだけになおさら、だ。
だが、普段の場合は、実は一日以上外界に居てはいけない、という制限つきだ。
今回の企画はそれに対して一月。魅力的な長さではないだろうか。
それに、普段は引率という身分からにとりと存分にイチャつけない。
ああ!存分にイチャつきてえんだ!!!!
「と、いうわけでお前と、2人っきりで外に行きたいんだ。」
その旨を伝えると、にとりの手がぴたり、と止まった。
「………うーん……」
やっぱり企画内容を知ってるだけに、躊躇われるか。
まあ、ダメならダメでいいか。にとりの嫌がることは基本的にしないのが俺の流儀だ。
「やっぱり嫌だよな。うん。ならいい。もともとだめもとだったから。だから……「いんや、いいよ。」
俺の言葉を遮るようににとりは言った。
そして、作業をやめ、俺の方に来て同じベンチに座るのだった。
「……え?……それは……一緒に行こう、ってこと?」
「うん。よく考えたら断る理由ないしね。確かに一月の旅は魅力的だもんね。」
「……見られるの、嫌じゃなかったのか?」
「いつ嫌って言った? むしろさあ……見せ付けちゃおうよ、ねえ。」
そう言って、俺に抱きつき、軽く口付ける。
「私だって外界でやりたいこと、あるしね。」
「やりたいこと?」
「まあ、それはあとでのお楽しみ。 ねえ、行こうよ、○○。イチャイチャしようよw」
「ああ。おkだ。みんなの中で一番イチャつこうなw」
「ふふ、 みんなに引かれない程度にねw」
お返しに今度はこちらから口付ける。今度は濃厚なキス。そして、2人の影は重なり――
『そこまでよ!』に引っかかりました。この先を見るにはワッフルが云々。
そんなこんなで、俺らも外界に行くことにした。
―――――
キング・クリムゾン!!
旅行中俺がにとりとイチャついたという時間は吹き飛んだ……
―――――
霜月の初めごろのこと―――
俺とにとりの旅の様子が放映されたのだが……
「『そこまでよ!』ばっかりじゃねえか!!」
みんながぽかん、としてる中、空を裂くように黒白の魔女はそう、不満を述べた。
魔理沙の言うとおり、『そこまでよ!』が他の追随を許さず多かった。
他の幻想郷住人は一月のうち、多い組でもせいぜい4、5回程度だったのだが、俺らは一週間に4、5回程度だった。
「ふむ……さすがに多かったか。」
「…………うぅ………」
出発前の威勢はどこへやら、さすがに恥ずかしかったのかにとりはうつむいている。
「……○○ぅ~……ちょーはずい~」
涙目で抱きついてくるにとり。ああ、かわいすぎだろ、jk。
「いや……でも……ほら、見せつけるんじゃなかったのか?」
「確かにそう言ったけど!」
「肝心のシーンはカットされてたけどな……」
「放映されてたまるか!!……うぅ……」
涙を拭くように、顔を俺になすりつけてくる。
そして、少々落ち着いてから言う。
「……でも、」
「でも?」
「行ってよかったとは思ってるよ? ○○とは、夫婦になれたし……w」
そう、俺たちは夫婦となった。
にとりのやりたかったこと、それは俺の両親に挨拶、そして小さいながらも結婚式だった。
そして、俺はその望みを叶えてやったのだ。……俺もそう望んでたし。
しかし……改めて意識すると……
「…………」
顔からマスタースパークDA!くらい恥ずかしい。
「○○顔あかーい!!ww」
「うるせぇ!酒だ酒!!酒の所為だ!ww畜生!!……不束者ですが、よろしくお願いします。」
「あはは、こっちこそ、よろしくww」
こうして、また『そこまでよ!』的に夜が更けていくのであった。
めでたしに限りなく近い何か。
――――約十ヶ月後のこと、俺たちに対抗意識を燃やしたためか幻想郷にベビーブームが到来するのはまた別のお話。
―設定、と言う名の後付―
○○:人間。外来人。多分主人公。
山でエンジニアとして働いてる。
ある日、みょんなことから幻想郷に迷い込む。しかも妖怪の山に。
そこでにとりに助けられて、それで(省略されました。希望があったら表示されます。甘いです。表示するにはメル欄ににっとりにっとりしてください。)で、現在に至る。
にとり:妖怪。河童。多分ヒロイン。
○○の嫁。『そこまでよ!』が多かったのは「河童だからえろいんだろうな……エロガッパって言う言葉あるし。」という安直な考えによるもの。俺の妄想は大半が『そこまでよ!』に引っかかる。
それにしても『そこまでよ!』って便利だな。
ちなみに、恋人になる段階では告白は○○からだが、結婚しよう、はにとりから。
まあ、両親に挨拶に行く話があるのだが……(省略されました。希望があったら表示されます。甘いです。表示するにはメル欄ににっとりにっとりしてください。)
新ろだ91
目を閉じても、真っ暗な闇。
視覚という最も機能する感覚器官を閉じれば、次に活動し始めるのは触覚と聴覚といったところか。
そうして俺は何よりも旨い美酒を飲み干し、喉を通る熱さを堪能する。
幸福なときに呑む酒ほど旨いものは無い。
耳に届く音はそう多くない。
河の幽かなせせらぎ。
活発になるには少し早い虫の音。
水を切る泡音。
そして――愛する人の声。
「気持ち良いねぇ」
目を開けると、爽やかな音を立ててにとりが俺の座る川岸へ上がった。
「そうだな、すごく気持ち良い」
俺の傍にあった盆から自分の御猪口を取り、ちびりと口を付ける。
そして熱い息を吐き出す。
――山の中の河の畔。
外界ツアーの流行も一段落して、俺たちの生活に幻想郷の日常が戻ってきた。
彼女もそれを受け入れて、久しぶりにこうして河での遊泳を楽しんでいる。
「ねー、ほんとに○○は泳がないの? こんなに気持ち良いのに」
「さすがに寒いって。人間はこんな時期に水遊びしないんだぜ?」
「そーだけどさぁ。あたしと一緒に泳ぎたくないわけ?」
「夏にあれだけ泳いでおいてよく言うぜ。風邪引くのは勘弁なんだって」
苦笑しつつそう返すと、にとりは唇を尖らせる。
「ちぇっ。もう一泳ぎしよっと」
「おう、いってら」
「見てなよー、このあたしの水捌き!」
見ろ、ときみがそう言うなら仕方ない。
――仕方ないよな。
そう自分に言い聞かせて目を少し開け、見えた光景はあまりにやばい。
まったく……参っちゃうよな。
雲間からうっすらと覗く月光が照らすのは、健康的な彼女の肢体。
女性らしい丸みもふくらみも余すところ無く描きだす銀盤の光を、今ほど美しいと思ったことは無い。
劣情なんて粉微塵に吹き飛ばすくらいに綺麗で、他の何も見えないほどに見蕩れる。
こんなに暗い夜中だから――誰も見てないよね――
そんな理由で始めた水中遊泳が、もうかれこれ一刻。
くらくらするのは酒精のせいだ。
時間を忘れたのも酒精のせいだ。
陸では油の匂いに見たされている彼女の、女性としての色香。
それは俺にとっての何よりの美酒だった。
まぁ、油臭い彼女も同じくらい魅力的ではあるんだが。
つまるところ、要するに、ギャップ萌えだ。
前に前に水を蹴る白い影はぐんぐんと進み、 遠く対岸でくるっ、クイックターン。
普段は厚いブーツに包まれている白い足がイルカのように水を叩く。
その速さとは対照的に、河に立つ波紋は驚くほどに繊細。幾重にも広がって、シャイに川面を揺らす。
「俺も河童だったら良かったのかな……」
この寒さの中で彼女の横を並んで泳ぐ誰かを想像をしてみる。
誰か? それは、誰だ?
あと二十五メートル。
遠く感じるその距離はしかしみるみる縮まって、俺のいる飛び込み台へとタッチ。
しかしにとりは上がってこない。
青い髪だけを水面に揺らして、ぶくぶくと何かを唱えている。
「どうした? もう一回行ってくる?」
無言。
それも、気まずい類の無言。
何かを考えているのだろうか。もしかして、さっき俺が考えていたのと同じようなことを?
だとして、ならばどんな《続き》を?
不安に思うのと同時に、俺は身を乗り出していた。
にとりはそれに瞬時に気付いたのだろうか、にっかりと満面の笑みを浮かべて俺を水の中に誘い込んだ。
強く強く、愛おしい――抱きしめたい――離したくない――とばかりに。
「ざっぶーんとね」
「河童の本分……か」
「まーね。いっひっひ」
にとりは俺を見下ろして、してやったりと言った風に笑う。
浅瀬とはいえ、下着までびしょ濡れになってしまった。
「……俺が風邪引いたらどうするつもりよ?」
「そんときゃーそんとき。分かりきったことじゃないの。このあたしが、心を込めて看病してあげるよ」
「そりゃありがたいことでござんすね。ま、こうなっちまった以上は仕方ないな」
たっぷりと水を吸った服を脱ぎ捨てる。
愛を孕んだ夜の水温は思っていたより温く温かく、まるで俺を待ち受けていたかのようだった。
「それじゃ、泳ぐか」
「やたー!」
「……あ、その前に一つ。んー」
「――ん」
ついばむようなキス。
自分からこんなことをねだるのは、恐らく初めてだろう。でもこういうのも悪くないよな。
俺が済んだら今度はにとり。ねだる彼女にも愛を贈る。
交歓が終わって、にとりは今更ながらにはにかむ。その表情は、俺の不安を完全に消し去った。
好きな人と、好きな人を、再度、確認する。
水のなかで交し合う愛は、いつも以上に深く穏やかだった。
後日俺が風邪を引いて寝込んだのは言うまでもない。
しかも運悪くこじらせたとかいう、そんなオチ。
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新ろだ93
神無月のこと―――
「―――注意点は以上。何か要望があればあとでこちらへ、可能な限り三つまで、叶えてあげるわ。それじゃあ、解散。神無月の終わりに会いましょう。」
今回の企画者にして妖怪の大賢者――八雲紫がそういうと、今回の外界旅行企画が始まった。みんな各々目的地へ向かった。
さて、俺たちも行くか、と、その前に、ある要望をしに、まずは紫のところへ行くのだった。
「こんにちは、紫。」
「お今日は。要望、かしら?」
「ああ、2つほど、いいかね?」
俺の望み、
まず。せめて九州の北の端でもかまわないからこっそりスキマで送って欲しい、ということ。
みんなは鉄道を主に利用するが、俺たちはバイクで、と思っていたが……
だがいかんせん、東京~鹿児島間は流石に遠すぎる、と言うわけだ。
紫は、関門海峡(山口側)まで送ってくれた。
九州縦断がノルマとして課せられた。
次に。愛車、ZOOMER、アーデルハイトを公道で走れるようにして欲しい、と言うこと。
と言うのも、俺が幻想入りしてきたときはZOOMERは原付一種登録。ナンバーもそのままだ。現在、こいつはエンジンをシグナスのエンジン(E3B1E型、FI仕様、なぜか工場に出回ってきてた。)しかも199ccにボアアップされたものを搭載している。(にとりと俺が仕事後の遊びで改造したんだが……まさかこんなとこで出番が来るとは……)
また、俺の免許も原付一種免許。199ccZOOMERは運転できない。
これでは公道も走れないし、にとりとタンデムもできねえ。
紫は、ナンバーの境界をいじり普通二輪登録に、免許の境界をいじり普通二輪免許に換えた。おまけと言ってはなんだが材質の境界をいじってフレームの剛性まで強くしてもらった。ありがたい限りだ。
「他には?あと一つ、残ってるけど……」
「いや、それはもしも、のときのために一応とっておく。」
「それはそれは、賢明な判断ね。では、さようなら。もしものことがないよう、祈っておきますわ。」
そう言うと、伴侶とともにスキマへ消えていった。
また東京駅だろうか、それとも目的地だろうか……行方は分からないが多分東京駅だろ。旅行はむしろ目的地より旅路のほうが楽しいしな。
「さて……にとり。」
恋人――にとりに話しかける。緑色のパーカーに紺のオーバーオール、いつもの帽子。早苗さん、もとい、どこかの配管工弟を思わせる格好だ。それも、にとりが着ればすごくかわええ。ああ、もう、かわええ。
ちなみに、髪の色は外界人が見て違和感のない色になっている。紫が色の境界を弄ったのだ。にとりはきれいな黒髪。もともとのくせっ毛はそのままだがさわり心地はいいもんだ。
「本当に鹿児島――俺の故郷でいいのか?」
「うん。」
「秋葉とかでなくっていいの?」
「いいの、私には目的があるんだから。」
「結局目的ってなに?」
「まだ秘密。秘密も河童のたしなみよ?」
こんな感じで最近はぐらかされてばっかだ。
まあ、そのときが来れば分かるのだろう、いっか。
そして快適とは言えない旅が始まった。
普通二輪登録のためタンデムで高速に普通に乗れる。
エンジンも約200ccとパワフル、他の車の流れを止めるようなこともなかったし、元が50cc原付のボディのためすり抜けもスイスイ。渋滞知らずだった。
ただ、その車両が小さく、シートもノーマルのままなため、にとりとぴったりと密着する形で走り続けた。
ああ、背中にやわらかき、大きくはないがとてもやわらかい双丘が……と、景色を見る余裕があまりなかったのは内緒だ。
――――
観光しながら、だったため鹿児島に来るまでに三日かかってしまった。
空港を過ぎ、桜島が見えると、ああ、鹿児島に帰ってきたんだな、と実感した。
――――
俺の家は田舎の鹿児島の中でも島を除いて最も、と言えるほどド田舎にある。
四方を八つの山に囲まれて集落の分類的には日なた集落に分類される、陸の孤島のような場所だ。
コンビニなんかない。約10km先にはあるが。と言うかまず店がない。
いまだにワンセグは映らないし光も通ってない。
だが微妙に文明的なとこもある。ネットも繋がるしオール電化している家もちらほら。上空からは多くのソーラーパネルも数多く見える。
その雰囲気は、なんというか、ちょっと発展した幻想郷、って感じだ。
「うーん、空気がおいしい! 外界にもこんなとこあったんだね!」
「ああ、ここが、俺の故郷だ。」
そして、家に着く。昼過ぎだったため、母屋には誰も居ない。
「○○ー、ご両親居るー?」
「いや、居ないみたいだ。」
「仕事?」
「たぶんな。」
仕事場に向かうことにした。
それにしても、俺が幻想郷に行って1年。ここはちっともかわんねえな……
そうそう、こっちに、俺が幻想郷に居る、って事は両親も了解済みだ。
以前、山の妖怪の案内者としてこっちに戻ってきたとき、手紙を出しておいた。
『俺は幻想郷に住むことにした』という旨を書いて。
すると一月もしないうちに返事がきた。文が何所からともなく持って来てくれた。どういうシステムなんだろう?
『了解、体に気をつけて、たまには帰ってくること』と書かれていた。
おおらかな両親を持ってよかったと思う。
仕事場へ着く。
「うわぁ……」
「ふぇ~……」
俺とにとりはあっけにとられていた。
前言撤回。ちっとも変わってないなんて嘘だ。
俺の記憶ではただの粗放な荒地だった我が家の土地が大規模に、無秩序に農園化していた。
定年後、大量の土地と金を持て余した父と母は俺というすねかじりが居なくなったことで大農園、ともいえるほどの農地を作っていた。季節の野菜、果物、物珍しさで始めたのか、南国のフルーツまで栽培していた。下手すると幻想郷よりも取れる野菜や果物は種類も量も多いかもしれない。
その巨大ともいえる畑の中に、大柄の、少々年老いた農夫が立っていた。
こちらに気づいたのか、近づいて来た。
「はは、ただいま……」
「おめぇ!○○!!帰ってきたか!!がっはっは!彼女まで連れておい!おーい!かーさーんかーさーん!○○が――――
(あまりにも暑苦しいので省略されました。何をしたって表示されません。)
side:Nitori
――――――
「おめぇ、幻想郷とかいう異世界で働くってか?すげぇな!おい!」
「ああ、ほんに。工学系の需要があって助かったってとこよ。」
「しかしおい、○○ちゃんよぉ、こげなよかおなごつれて、おいも連れて行ってくれんか?w」
「やいや、あっちは妖怪がおっでね。わなんか喰われっちまうよ。」
「んだもしたんっ、おいがそんなか弱く見えっか!?」
今、私は○○の家でご馳走になってる。……近所の人もなぜか加わって。
○○の幼馴染たちだとか、他の村の人だとか、村長だとか。
うう、何言ってるか分からない……翻訳はあとがきに任せよう……
いつだったか「鹿児島は事あるごとに宴会を開きたがる」って○○が言ってたけど、まさにその通りだ。
メニューは……とんこつにさつま揚げ、きびなごの刺身に鶏肉の刺身、それから焼酎。
うん、どれもおいしい。
「おかわりはいかが?にとりさん?まだまだごはんはありますよ?w」
「あ、ええ、お構いなく。お料理おいしいです。あ、なにかお手伝いしましょうか!?」
「あらあら、ありがとうw いいの、座ってて、あなたはお客さんなんだから。」
○○のお母さんが言う。
うう、申し訳ないな……他の女の人、みんな働いてるじゃん……
……それにしても、これだけの料理、私が来て半日もしないうちに用意されたけど……すごいな……
うーん……それにしても……このままじゃ、私の計画が果たされないままなんだよな……
「おぅい!にとりちゃん!!ちょっ、こけけ!」
「こけ……?」
鶏?
「ああ、「こっちこい」って意味だ。と言うわけで、来て。」
そのあと、いろいろ質問された。馴れ初めだとか。言葉の壁があったからかなり時間かかったけどね。
――――
「ふぅ……疲れたな……w」
「ああ、すまんかったな、うちの衆が。」
「いやいやw みんな愉快な人だねw」
今は騒ぎの中心から離れて○○と二人きりでいる。
そこへ……
「お疲れ、大変そうだったねw」
○○と同世代位の若い女の人が来た。
「隣、いい? 私、幼って言うの。○○の幼馴染。よろしくw」
「え?ああ、よ、よろしく。」
「なんだよ、冷やかしに着たのか?w」
「いんや、焼きもち焼きに来ただけ。いいなー。私もこんな彼女欲しいな~w」
そして、抱きついてきた!
「え?え?」
「あ、気をつけろ、こいつバイだから。……しかも酔ってんな。」
私から幼さんを引き剥がす。
「うぅー!○○の鬼ー悪魔ー独裁者ー。独占禁止法でかわいい子は私が所有することになってるんだぞー!」
「言ってることがめちゃくちゃだな……にとり、気にすんな。こいつはいつも訳分からん。酔ってるとなおさらだ。」
「え?ああ、うん。」
それより、○○にべたべたしすぎだよ、この人……
幼馴染とはいえ、仲良すぎじゃない?そういうもんなの?
うう……
「訳わかんないってなにさー!馬鹿か!?私は馬鹿なのか!?」
「いやいや、馬鹿だろwいかんともしがたく。お前は無知すぎるもん。昔、俺の生まれた場所を横浜県って言ってたもん。」
「いいや!馬鹿じゃないね!!無知でもない!!その証拠に私は○○のことで知らないことは何にもない!!何にもないもんね!!にとりさんより知ってるもんね!!………っと」
「嘘付けwほら、もうふらふらしてるじゃないか……よっと。」
「私は……馬鹿じゃ……ないもん………」
寝てしまった。……○○の膝枕で。
うう、うらやましい。妬ましい。パルパルしい。
「ふう、昔っからこの調子だもんな。こいつ、酔うと寝ちまう癖があるんだよw」
「……ねえ、○○。」
「ん?」
「この…幼さんのこと、どう思う?」
私は……ちょっと○○の恋人であることに自信なくしたかもしれない。
よく考えたら、私は○○のこと、知らないことばっかりじゃないか!!
それで、務まるのかな?恋人が………
それで、務まるのかな?………
もしかしたら……○○は幼さんのことがすきなんじゃ……
「どう思う?って……好きか嫌いか?ってこと?そりゃ、好きだよ。」
やっぱり。
「……でも、」
つけたす○○。
「多分、お前の懸念している「好き」とは違うと思うぞ?」
「………え?」
「あいつを好きなのはアレだな。家族愛的なやつだ。今、恋人として好きなのはにとりだ。」
「でも……わたし、○○のこと幼さんと比べたらまだ知らないこといっぱいあるし!」
「あー……さっきのあいつの言葉気にしてるのか?」
「……うん……」
「さらに言うと気兼ねなくべたべたしてくるのに焼きもちを焼いてるんじゃないか?」
「う………うん………」
「さっきも言ったけど、こいつは家族みたいなもんだ。気にすんな。……それに、こいつはもう夫居るからな?あの騒いでる中心にいる愉快な男だ。」
「あ…そうなんだ……w」
「それから、こいつの言葉も気にすんな。知らないことはない分けないだろ?確かに、お前は俺を、過去の俺を知ってるわけじゃねえ。」
そう、そうだよ。それで恋人が務まるのか……
「でも、それでいいんだ。」
「………え?」
「よく考えろ。俺も同じだ。俺もにとりの過去を知ってるわけじゃねえ。」
あ……ほんとだ……
「過去は今から知っていけばいいんだよ。いいんだ、てげてげで。終わったことなんだから。」
「……てげてげ?」
聞きなれない単語だ。方言かな?
「ああ、適当とか、肩の力を抜いてとか、そんな感じのニュアンスで使う鹿児島弁だ。……いいか、よく聞けよ、」
○○は一呼吸おいた。
「いいんだよ、全てはてげてげで。こいつは両親の受け売りだ。てげてげでいいんだよ。過ぎたるは猶及ばざるが如し、って言うだろ。今回だってそう。深く考えすぎるからいけねえんだ。肩肘突っ張るからいけないんだ。これからもてげてげでいいんだよ。肩の力抜いていけばいいんだよ。おk?」
「………うん!」
「あと……一応言っとくが……その……俺は……過去よりも……お前と一緒に居る現在と未来のほうがよっぽど好きだからな!」
よかった。過去はこれから知っていけばいいのか。
私たちは未来を作っていけばいいのか!
よし!その未来を、輝かしい未来を作るためにも……
「ところで○○、今のはプロポーズ、ってとっていいのかな?」
「え?えー……えーと……」
「わかった!結婚しよう!○○!」
「………へ?」
「だから結婚しよう!一緒に未来を作ろう!」
side:○○
――――
そして宴は終わり、片付けもすんだ後……
○○のご両親、俺とにとりはちゃぶ台をはさんで、向かい合ってる。
「……えーと、と言うわけで、俺たち、結婚することになりました。」
「ふつつかものですが、よろしくお願いします。」
畜生によによすんな。
……俺とにとりは結婚することになった。
両親は快く承諾。放任主義杉じゃね?
翌日、村の小さな神社で小さな結婚式をした。
ドレスもケーキもない。ぶっちゃけ、いつもの宴会と変わらない。
でも、俺たちは結婚した。
………急展開過ぎる気もするがな。まあ、いいや、俺は今幸せなんだ。そんな考えは野暮だね。
―――結婚初夜。寝室、布団の上にて。
「……なあ、にとり、本当に俺でよかったのか?」
「何言ってんの。」
俺に詰め寄るにとり。
「○○だから、良かったのよ。」
「………」
「○○顔あっか~い!!ww」
「う、うるせぇ!!w」
「………○○、てげてげにがんばって行こうねw」
「早速使いこなしてるなwああ、てげてげに、な。」
そう言って、にとりにキスをする。
ああ、一緒に思い出を作っていこう。てげてげに、な。
(『そこまでよ!』に云々。)
――――
翌日。
両親がによによしている。畜生。こっぱずかしいぜ。
――――
「ところで……お前の目的ってなんだったの?」
「……○○のご両親に会って「息子さんを私にください!」って言って○○とご両親いっぺんに脅かそうと思ったけど……ちょっと計画違いで○○だけになっちゃったね。」
「………最初から結婚しに来てたのか!!?」
「うん。ご両親に挨拶、が私の目的。まあ、成功でいいよね?」
「え……?まあ、いいんじゃないか?」
「てげてげでいいじゃないの。」
「………気に入ったのか、それ。」
――――
おしまい。
―あとがきと言う名の大蛇足。―
おはこんばんちは。「にっとりにっとり」が予想以上に多すぎて構想が固まってないまま書き進めた結果がこれだよ!!
今日模試で疲弊しきった脳を休めるにはイチャスレが一番だなあ………ww
明日も模試だけど。
とりあえず、神無月ツアーが終わってしまったのに投稿しても良かったものか、と。
これがツアーはほんとに最期です。にっとりにっとりしても後は俺とにとりの出会いくらいしかありません。
今回の文章、何を書きたかったこと。
・幼馴染に嫉妬するにとり。 俺の文章能力低すぎて全然表現できなかったけど。嫉妬されるってことはそれだけ愛される、ってことなんだよね。ああ、にとりかわええ。
・鹿児島の気質。 豪快で大らか、そんな感じを読み取ってもらえれば幸いです。方言を出したのもそれを表現したかったから。他見の人から見るともはや別の言語らしいけど、今回は分かりやすそうなのをチョイスしてみた。
一度でもいいんで訪れてみてください。マジで田舎です。
・「てげてげ」 てげてげ、いい言葉です。文脈で結構意味が変化する。実際は原住民くらいしか使いこなせないと思う。文中の意味は飽くまで一例。俺の人生観でもあります。俺はなすがままに生きている。うん、どうでもいいね。みんなも使ってみてください、てげてげ。アクセントは平坦に。(→→→→)。実は「てげ」と、単品で使ったりもする。単品だと地域によっては形容詞の強意の意味も含まれてくる。単品の場合、アクセントは「げ」に。(→↑)。
今回限りの人物設定。
幼:人間。幼馴染。
○○の幼馴染。⑨。
名前は「幼」馴染から。
馴:人間。幼馴染。
○○の幼馴染。愉快。
名前すら本文には出なかったという……
一応名前は考えた。今。5秒で。
名前は幼「馴」染から。
おまけの日本語訳。
「おめぇ、幻想郷とかいう異世界で働くってか?すげぇな!おい!」
『お前、幻想郷とか言う世界で働くって?すごいな、そりゃ。』
「ああ、ほんに。工学系の需要があって助かったってとこよ。」
『ああ、ほんとだ。工学系の需要があって助かったよ。』
「しかしおい、○○ちゃんよぉ、こげなよかおなごつれて……おいも連れて行ってくれんか?w」
『しかしさあ、○○ちゃんよ、こんなにかわいい女の子彼女にして……俺も連れて行ってくれないか?w』
「やいや、あっちは妖怪がおっでね。わなんか喰われっちまうよ。」
『いやいや、あっちには妖怪が居るからね。お前さんなんか食われてしまうよ。』
「んだもしたんっ、おいがそんなか弱く見えっか!?」
『いやいや、俺がそんなに弱く見えるかい!?』
こんな感じ。
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新ろだ422
俺があの娘に出会ったのはあの世界、幻想郷に迷い込んですぐの事だ。
山道を走ってる時、居眠りしてたみたいでな。車が川に落ちたんだ。何とか車から外に這い出たんだが、水のなかは真っ暗で上も下も分からなかった。もうだめだと思ったとき、急に手がひっぱられて川から引き上げてもらったんだ。
「それが例の?」
そう、そいつがにとりだ。
彼女は幻想郷の事を教えてくれたんだが、俺は混乱しててな、その時はよくわからなかったんだ。
妖怪だの河童だのと言われてもピンと来なかった。にとりだって見た目は人間の女の子とぜんぜん変わらないんだ。
まぁ、妙なレーザーやら光弾やらをばらまいて戦ってる様を見せられたら信じざるをえなかったけどね。
「それは面妖だね。怖くなかった?」
怖くはなかったよ、彼女は人間に友好的らしいし何より・・・可愛かったからな。ひょっとしたらそのときにはもう彼女に惹かれていたのかもしれない。それに、まだ本当の意味では妖怪の事が分かってなかったんだよ・・・
「そうか。それできみはどうしたんだい?」
ああ、それから博麗神社って所につれていってもらったんだ。元の世界に帰るにはそこしかないそうだ。
だけど結界が不調だとかでしばらく俺は幻想郷にとどまる事になった。
それでしばらくは人間の里ってとこで暮らしたんだ。
にとりがたまに様子を見に来てくれてな。そのとき二人で遊んだりしたんだよ。
それからしばらくたって神社の巫女さんが結界が直ったって言いにきてな。
元の世界に帰るか幻想郷にとどまるか決めろと言われたんだ。
「それで君は帰ってきたのかい?」
いや、そのときは帰る気なんか無くなってた。にとりと離れたくなかったんだ。
そのときには彼女の存在は俺の中でとてつもなく大きなものになっていて、にとりと離れ離れになるなんて考えられなかった。
俺はすぐににとりに会いに行って自分の正直な気持ちをぶつけた、そして彼女はそれを受け入れてくれた。
俺たちは恋人同士になったんだ。
「でも君は彼女を置いてここにいる。どうしてなんだい?」
怖くなったんだ、妖怪が。
ある日、俺は傷だらけの男を見つけた。そいつは死にかけていてもう一歩も歩けそうになかった。
そこへ誰かが近づいてそいつの近くで屈んだんだ。そしてやつは、やつは・・・
「何があったんだい?」
やつは人間を喰っていたんだ。倒れていた男の体がガクガクと痙攣してから動かなくなって一面に血が・・・
「人が殺されたのか!?」
そうだ、あのときのことはあまり思い出したくない
俺はその場から逃げ出し、博麗神社へ逃げ込んだんだ。
その場で巫女に頼み込み外に出してもらった。
妖怪そのものが恐ろしくなったんだ。
「そうか・・・でも君は以前その幻想郷という所に帰りたいと言っているね。
それはどうしてなんだい。」
俺は逃げる時、にとりと会ったんだ。そのときは半狂乱で自分がなにを言ったのか分からなかった、でも今なら分かる。
俺はにとりに
「俺に近づくな!!このバケモノめ!!」
と叫んで石を投げつけた。にとりは信じられないものを見たように震えていた。
そんなにとりを突き飛ばして俺は逃げたんだ。
そんなつもりじゃなかったんだ。ただ怖かったんだ。
にとりにはひどい事をしてしまった。謝っても許してもらえないかもしえない。
それでも、俺は帰らないといけない、帰ってにとりに謝るんだ、そうしなくてはいけないんだっ!!
「落ち着くんだ、
落ち付けだ!?こんな所に閉じ込めていつもいつも同じ質問ばかり繰り返して!?
いいかげんにしろ!!俺はお前らが力になるというからついて来たんだ!!
(椅子を蹴倒す音)
さぁ!!俺が知っている事は全部話した!!お前の番だ!!約束どおり幻想郷への行き方を教えろ!!
早く!!早く!!
(ドアが開き数人の足音)
クソッ!!放せ!!畜生っ!!畜生っ!!
(数人がもみ合う音)
にとりに謝らなくちゃ、謝らなきゃ・・・会いたい、会いたいよ・・・
☆☆精神病院
58492号患者○○
8月29日 カウンセリングの記録テープより抜粋
58492号患者のカルテより
名前 ○○
症状 一時的錯乱
××山中にて発見、極度の錯乱状態が見受けられ地元の病院で治療の後、当施設へ搬送される。
自動車事故によるショックか、事故より数日間は幻覚症状および記憶の混濁が認められる
現在は幻覚などの症状は現れていないが、一時的に現実からの遊離症状が見受けられる。
日常生活に支障はないと思われるが、一時的に錯乱症状が現れる事があるため
今しばらくは隔離施設での集中治療が必要である
事件報告書
9月1日の停電時58492号患者が失踪。停電時から予備電源に切り替える数秒、つまり監視カメラが再起動する短時間で失踪したと思われる。
隔離施設の扉は内側からは開けられない構造のため協力者がいたと思われる。
だが不可解なのは失踪後どの監視カメラにも姿がまったく映っていない事、そして何よりも隔離施設のドアに開閉した痕跡がまったくない点である。そう、まるでその場で消失したような
現在隠し通路やカメラへの細工が疑われている。
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最終更新:2010年05月09日 22:46