にとり6
Megalith 2010/10/22
にとり「ねえねえ、これはなんなの?」
○○「これは携帯電話。ここには基地局も電波もないから使えないけど、外ではこれでどんな人とも会話できるんだ」
にとり「へえ~。やっぱり外の盟友はすごいねぇ。かなわないよ」
○○「そんなことはないさ。現ににとりのステルス迷彩なんて俺たちじゃ作れないぞ」
にとり「……それじゃあ、引き分けかな?」
○○「ま、そんなとこだろ。しかし、型落ちの機械がこんなに幻想郷に流れ着いてるなんてな」
にとり「うん。幻想入りしても、機械なんて私しか手をつけないからどうしても溜まっちゃうんだ」
○○「………なあ、ハンダコテ、ハンダ、発電機ってにとりのとこにないか?」
にとり「えっ? そのくらいならあるけど……なにするの?」
○○「商売だ」
幻想郷に飛ばされて早一ヶ月
このちっこい盟友と、型遅れの機械のおかげで俺は今日も元気に過ごしている
もともと実家が小さな電気屋だったんで、ちょっとした機械いじりや修理ならお手の物だった
それがこんなところで役に立つとはねえ。世の中分からないもんだよ、ほんと
○○「さあさあよってらっしゃい見てらっしゃい! 毎日のかまどでの米炊きは大変だ! そんなあなたのつよ~い味方!
そいつがこの[炊飯器]! こいつは米と水を中に入れて、あとはボタン押すだけでご飯が炊けるって寸法だ!」
にとり「ええ~っ! でも、お高いんでしょう?」
○○「それが奥さん聞いてちょうだい! こいつは幻想入りの機械のため元手は無し。そのため大変お安くなってます!
金五枚 と言いたいとこだがもってけドロボー! 三台限定、一台金三枚でどうだ!」
にとり「それはすごいね! お買い上げの方はこちらに並んで うわわわわぁっ!!?」
またにとりがお客の波に流される。まあほら、これもいつもの恒例行事だ
見ての通り、俺たちの仕事は村での修理機器の叩き売り
村人は江戸時代~明治初期程度の暮らしのため、電気機器が珍しくてしょうがないみたいだ
ついでに言うといくつかあった発電機は、俺たち専用の一台を残して近隣の村に寄贈してあるため、電源の心配はない
寄贈はちょっと痛いが、それを上回る売り上げはもうとっくにとっているため、むしろプラスに働いている
○○「よ~し、金九枚の売り上げだ。次は何を直そっかなぁ~」
にとり「……ひどいよ○○、助けてくれてもいいじゃない」
○○「河童なんだから、人の波も泳ぎきろうぜ」
にとり「無理だよぉ~~~~」
儲けが出た日は、二人でちょっと贅沢をすることにしている
にとり「ねえねえ、きゅうり買っていってもいい?」
○○「おー。きゅうりだったら5kgくらいの詰め合わせを買ってこうぜ。すぐ食べちゃうだろ?」
にとり「ええっ!!? そ、そんな王様みたいなこと………!」
○○「ずいぶんとしょぼいな、王様」
にとり「それで、○○は何にするの?」
○○「俺は焼肉にしようかな。一度でいいからあの幻想入りしたマンガ肉にかぶりついてみたかったんだ」
にとり「それじゃ、今日は焼肉と焼ききゅうりだね」
○○「お前も焼くんかい!?」
あなた達の掛け合いはまるで夫婦漫才ですね、そんなことを新聞記者に言われたことがある
それを聞いたときはちょっぴり嬉しかったさ
……おい、ちょっぴりだぞ。本当にちょっぴりだからな
まあほら、にとりは酷く抜けてるとこあるけど優しいし、可愛いしさ
恋人にでもなれたら嬉しいなぁ~なんて……思ったことは一度や二度や三度や四度くらいはあるけど
にとり「○○、どうしたの?」
○○「うびゃあ! ……まったく、人が悩んでる時に顔を近づけて覗き込むのは止めろ。思春期の俺には毒だ」
にとり「思春期? それってもう10年くらい前の話でしょ? ……うわぁぁぁぁ~~痛いよぉ~~~」
○○「ぐりぐりぐりぐり………ここかぁ~~? ここがいいのんかぁ~~? いやしんぼめぇ~~」
慧音「村のど真ん中でイチャつくのはやめてくれないか。子供の教育に悪い」
慧音さんが、すげえ呆れ顔でこっちを見ていた。ここは逆らわずにおとなしく帰ろう
以前逆らって食らったあのダイナマイト頭突きの痛みは今もまだ鮮明に覚えてるから
にとりも震えているのが、こめかみに置いた拳を伝って分かる
つか子供ならトラウマになるレベルだぞ。今までに絶対死人出てるだろ あれ
にとり「おいしいね、○○!」
○○「うまい……のか? 焼いたきゅうりにきゅうりの絞り汁って」
にとり「うん、最高だよ!」
○○「……そ、そうか。ならいいんだが、俺の肉にも絞り汁かけるのはやめろ」
にとり「○○、きゅうり嫌い?」
○○「嫌いじゃないがそういう問題じゃない。今のはから揚げにレモンかけるくらいの重罪だぞ」
にとり「えっ……やだよ! ○○、私まだ死にたくないよ!」
○○「そうだ、悔いろ、悔いるがよいわあっ!」
ツッコミ不在のボケとボケ。これはいつもの食事風景なんでよろしく
食後はいつものように、機械の山から次の修理の品定めだ
にとり「○○~。これって直りそうかな?」
○○「パス。パソコンみたいな精密機器はちょっと俺じゃ無理だ。にとりこそ、これどうだ?」
にとり「無理無理無理。汎用性巨大人型兵器なんて直せないよ」
○○「むぅ。起動戦士はまだ大地に立てそうもないか」
何でそんなもんがあるのかは聞かないでくれ。俺だって知らん
にとり「じゃあ、これはどうかな?」
○○「ウオークマンか。これならなんとか直せそうだが……
しかしこれだけじゃどうにもならんぞ。テープがなきゃ無用の長物だ」
にとり「てーぷ?」
○○「あ~。まあこんくらいの大きさで、こことここに穴が開いてて
中に磁気を帯びた薄細長い紐みたいなのがはいったやつ」
にとり「う~ん、わかった。探してみるね」
○○「おー」
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ
○○「あ?」
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ
○○「笑い袋………こりゃまた、すさまじく懐かしいもんが出てきたな」
踏んで中のボタンが押されたみたいだ。よく壊れてなかったと感心するよ、マジで
まったく壊れてないのに幻想入りとは、すっかりあっちでは不要になっちまったみたいだな
じゃあ実用性のある使い方は? と聞かれてもぜんぜん出てこないが
にとり「○○。てーぷって、これのこと?」
○○「おお、そうそうこれこれ。これで売りに出せるってもんだ」
にとり「それで、これってどう使うの?」
○○「喋ったことをこのテープに移す。つまり、言葉を記憶させることができるんだ」
にとり「へぇ~~、すっごいね。それならすぐに売れるよ」
○○「う~ん、実用品じゃないからどうだろうな」
にとり「それで、こっちは?」
○○「笑い袋。押すと笑う」
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ
にとり「へぇ~~、すごくないね。なんの役に立つの?」
○○「その問いに答えるのはさっきの汎用性巨大人型兵器を直すのと同じくらいの難しさだな」
俺たちの家には修理用のラボがある
いや、俺たちの家っつっても本当はにとりの家だが。平たく言えば、俺は居候だ
だからと言っても飯は人一倍食うがな。はっはっは
……まあ熱中してしまえば、ラボで夜を明かすことも珍しくない
機械いじりマジ楽しいです
○○「ウオークマン直ったー」
にとり「えっ、もう?」
○○「ああ。配線がちょこっとイカレてただけみたいだったから、すぐに直っちまったぞ。しかしこれは売れんな」
にとり「どうして?」
○○「見てみ。充電式じゃなくて電池式だ。ここじゃ電池を手に入れるのも一苦労だしな。まあ俺たち専用にしようぜ」
にとり「うん……。あっ、それならさっきの笑い袋とウオークマン貸してくれない?」
○○「何に使うのよ」
にとり「さっきの笑い声の変わりに声を録音できないか、ウオークマンの仕組みを解析して試してみるの」
○○「ふうん、面白そうだな。それじゃやってみ。俺はその間にもっかい直せそうなもの探してくるわ」
にとり「いってらっしゃい」
○○「帰りは遅くなるぞ」
にとり「じゃあ帰ったらご飯にする? お風呂にする? それとも、きゅ・う・り?」
○○「酢味噌とマヨネーズ用意して待ってろ」
飯はもう食っただろうが
しかし言葉の途中で、そこまでよ!な展開を期待しちまった俺はむしろ正常だと思う。異論は認めない
でもあそこできゅうりはねーだろ、きゅうりは
結局、俺は機械の山から小型の冷蔵庫を二つ引っ張り出し、その日のうちに直してしまった
廃棄物の山、けれど俺たちにとってはまさに宝の山だぜ
外の世界の技術革新に乾杯 と明け方の空にグラスを掲げる
……まずい
ペ○シキューカンバー。やっぱまずいわ、これ
しかしにとりがこれを人生最良の一本とか言うほどハマってしまい、家にもラボにも山積みになっている
よっぽど売れなかったのか、箱がダース単位で幻想入りして来るもんだから俺としては笑えない
頼むからまともなコーラが飲みてえ
次はしそ味とかあずき味とか来たりして……いや、ありえないか。いくらなんでもそんな狂ったチョイスはないよな
にとり「○○ー、できたよー!」
○○「んー?」
にとり「ほら、笑い袋の改良だよ。私の声を吹き込んだんだ」
○○「ほー。あれを改造したのか、頑張ったな」
にとり「うん! それで、この袋なんだけど………」
○○「どした? 言いよどんだりして、なんか言いづらいことでもあんのか」
にとり「う、ううん! そうじゃないんだけど……お願いがあるの」
○○「言ってみ」
にとり「これ、一人のときに聞いてみてくれないかな。私の声が入ってるなんて、恥ずかしいし……」
照れ屋のにとりらしい提案だ、となんだかほほえましくなってくる
そこで、ちょっとしたことを思いついた
○○「そんならさっきのウオークマンを貸してくれ。明日はそこの冷蔵庫を二台売るんだが
俺とにとりがそれぞれ一台づつ持って二つの村を回るってどうだ?」
にとり「いいけど、それとウオークマンが何の関係があるの?」
○○「だから、俺もちょっとしたことをテープに吹き込むから、お互い一人になったら聞くって企画だ」
にとり「おもしろそうだね。いいよ。それじゃあ私はちょっと寝てくるから、○○も吹き込んだら寝るんだよ」
○○「もち。正直言って今もちょっと眠い」
にとり「うん、おやすみー」
さて、にとりも行ったことだし、吹き込み作業といくか
しかし何と入れればいいものか悩む。この眠い頭じゃ渾身の一発ギャグなんか出てきそうもないしな
だからと言って歌うってのも嫌だ。一言二言でインパクトのある言葉がほしい
無難に感謝の言葉を入れておくってのでいいかね。考えてみればにとりにお礼なんてあんまり言ったこともないしな
今までありがとう、とか。いや違うな、永久の別れを悲しむんじゃないんだから
「にとり、いろいろとありがとうな」
うん、シンプルでいいじゃない
んじゃこのウオークマンをにとりにの部屋に置いて―――
「………………大好きだぞ」
お礼の後に、そう言い加えたテープを置いてきた
○○「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 夏場は食べ物がすぐ腐って大変、そんなお悩みはありませんか?
その悩みを一刀両断するこいつの名前は[冷蔵庫]! 中は万年冬のような寒さを保ち、腐敗を抑える優れもの!
限定一台、金十枚とちょっとお高くなってしまいます
ところがどっこい、こんなに集まってもらって十枚とは言いづらい!
にとりに怒られるのも承知で俺の一存で値引きしようじゃないの! 金六枚と銀八枚に勉強させてもらいます!
さあいらはいいらはい! さあいら………ひでぶっ!!」
なるほど、この人の波は泳ぎきれない
やっとにとりの気持ちを理解した俺でした。いてえ
慧音「災難だったな。みんなも熱中してしまっただけで悪気はないんだ。勘弁してやってくれ」
○○「いやいや、別に怒ってはいませんよ。それだけ俺の持ってくる商品に興味を示してくれたってことですから」
慧音「そういってくれると助かる」
○○「いえいえ………ん?」
子供「………………」
慧音先生の生徒の子供たちだろうか
俺の腰に下げたにとり袋(元笑い袋)が気になるのか、しきりに引っ張ってきた
慧音「こら、持っていこうとするな」
○○「まあまあ。そういや、まだこれ聞いてなかったな」
子供1「……聞く?」
子供2「中には何が入ってるの?」
子供3「お団子?」
○○「そんならさしずめお前達は犬・猿・雉だな。そうじゃなくて、この中には[声]が入ってるんだ」
慧音「声?」
○○「ええ。中のボタンを押すとにとりが録音した声が出る、って言ってたんですけどね、まだ聞いてないんすわ」
子供2「聞きたい聞きたい!」
子供1「……僕も、聞きたい」
子供3「ねえ、押してもいい?」
○○「おう、そんじゃ一番押しの栄誉はお前にあげよう」
腰から袋を外し、子供3に渡してやる
ボタンを使うのがはじめてみたいに――実際そうなのだろうが――嬉しそうに笑い袋を押した
にとり袋「○○、好き! 大好き! 愛してるよー!(大音量)」
○○「…………」
慧音「…………」
子供1・2・3「…………」
周りにいた人達「…………」
偶然遊びに来ていた妹紅「…………」
何事かと驚いて出てきた村人「…………」
ネタの匂いをかぎつけた新聞記者「…………」
これが………「世界(ザ・ワールド)」だ………花京院
子供1「……もっかい」
にとり袋「○○、好き! 大好き! 愛してるよー!(大音量)」
○○「らめえええ! もう押しちゃらめなのおおおおおっ!」
子供2「リテイクだ!」
にとり袋「○○、好き! 大好き! 愛してるよー!(大音量)」
○○「ひぎいいいいいいいいっ!」
そのまま、こいつら袋持って逃げ出しやがった
しかもところかまわず鳴らしまくりながら
このガキどもめ、風見さんのところでしつければ将来有望なドSに育つことは間違いないな
そして必死で村を追いかけ、ようやくにとり袋を取り戻したろにはすでに夜になっていた
妹紅「災難だったな、河城○○」
○○「傷口に塩を塗りこむような慰めの言葉をありがとう」
慧音「まあ……ほら……若いっていいよな」
○○「……なんともコメントに窮しますね」
子供1・2・3「「「おしあわせにー!」」」
○○「お前らちっとは反省せい!」
文「それで、結婚はいつごろを予定していますか?」
○○「星辰が正しい位置に整って旧支配者の都が完全浮上するころかな」
文「数万年後じゃないですか」
ひ、ひでえ目にあった………しばらく俺はあの村には行けないな
次顔を見せようもんなら、たぶんからかわれ死んでしまう
いや、内容に不満があるわけじゃないぞ
嬉しいって言うか、すげー嬉しいって言うか、最高に「ハイ!」ってやつって言うか………
ちょっとラボでもう一度聞いてみよう。そうだ、こういうものは一人で聞くべきなのだ
自宅のほうにまだ明かりがついてないところを見ると、にとりはまだ帰っていないらしい
好都合だ
まだ面と向かって話ができるほど落ち着いてないしな
どれ、ただい…………
テープ「にとり、いろいろとありがとうな………………大好きだぞ」
にとり「きゃあっ! も、もう一回!」
テープ「にとり、いろいろとありがとうな………………大好きだぞ」
にとり「は、はうううううううっ~~~!」
○○「…………」
にとり「…………あ」
○○「…………ただいま」
にとり「……………お、おかえり」
気まずいってレベルじゃねーぞ!
何でにとりが自宅に戻らずラボにいるんだよ!
アレか!? 俺と同じこと考えてたのか!? そうなんだな!?
ですよねー
○○「その……なんだ………聞いてのとうりって言うか………」
にとり「わ、わたしも、聞いてもらったとうりって言うか………」
○○「………………………」
にとり「………………………」
○○「~~~~~~~~~~~ッ」
にとり「~~~~~~~~~~~ッ」
ああもどかしい
いつもはペラペラと無駄なことが湧いて出るのに、なんでこういう大事なときに言葉が出てこないんだ、この口は
ほれ、言え、言っちまえ! そう心でせっついても、どうも俺の口に愛の言葉は入荷していないようだ。ガッテム
にとり「あのね、えっとね……」
にとりも顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりしながら、懸命になってる
ここで俺までまごまごしてたらそのまま朝になっちまうな。いや、わりとガチで
○○「………」
にとり「ひゃうっ!?」
昔の人は言いました。言葉が出ないなら、体で示せばいいじゃない
その教えに従い、にとりのちっこい体を思いっきり抱きしめ、少し無理矢理に唇を奪った
なせばなる 洗えば食える なにものも
やらんで後悔するより、やって後悔しようってことだ
さて吉と出るか凶と出るか、今夜のご注文はどっち!?
にとり「………」
ガチガチに固まってたにとりの初めの動きは、俺の背に手を回すことだった
よっしゃ、今夜のご注文は吉と出たらしい
そして少し離れて見つめあい、言葉もなくもう一度口付けを交わそうとしたとき
(小声で)「ちょっと、押さないでくださいよ」
「見えないんだからしかたないでしょ」
「もうすこし頭を下げてくれ」
「大ちゃん、あれって何してるの?」
「えっ? ええ~っと……」
「仲良きことは美しきかな、だね」
「妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい………」
窓の辺りからそんな声が聞こえてくる
○○「くぉらっ!! お前ら何してんだ!!」
にとり「覗きなんていけないんだよ!!」
大勢「あ、あははは…………」
大声を上げて窓を開ける
そこには、宴会なんかで集まるメンバーが所狭しとひしめいて覗いていた
おそらく村で俺を見送った後、あの天狗がものすごい勢いで新聞を書いてばら撒いたんだろう
ほんの1時間ちょっとでなんて冗談みたいだが、ネタを見つけたときのあいつはそのくらいしてのけるから恐ろしい
にとり「まったく、台無しだね」
○○「まあな。けど甘ったるいロマンスよりも、こんなドタバタコメディのほうが俺たちには合ってるさ」
にとり「でも」
○○「それにいいじゃないの。どうせ俺たちは、これから長い長い付き合いになるんだからさ」
にとり「う~ん、なんだか釈然としないよ」
空気を読まず外ですでに宴会の準備を始めてるやつらに背を向け、俺はもう一度、にとりにそっと口付けた
○○「今日は、ここまで」
にとり「………うん。明日も、期待してるからね」
雑談スレ>>353のアイディアをお借りしました
あと、タグには嫁の名前入れたほうがいいとの意見があったので、入れておきます
ぐるぐるにとり!(Megalith 2011/03/18)
芝生の青臭い匂いがする。チクチクとした感触が肌に騒がしい。
のどかというには肌寒いが、落ち着いた春の日である。
…………今居るのが幻想郷の外でなければ。
昨日の夜はなぜか気合の入った霊夢が宴会を企画し、非常な盛り上がりを見せた。
博麗神社は参加者ですし詰めになって、足の踏み場もないくらいだった。
本当のところ、霊夢は
『この寒いのに食料がない!!そうだ宴会をすればご飯にありつけるわ!!
私は場所を提供するだけだしフンフフーン!!』
と、思っていたに違いない。宴会は持ち寄り制だった。まあ、それはどうでもいい。
唯一霊夢が計算外だったのは、持ち寄る品物のほとんどが酒だったことであろう。
酒の量とつまみの量のアンバランスさが、参加者の心を逆に刺激したのか、テンション自体は非常に高かった。
俺はというと、近くににとりが居たのでガンプラの話で盛り上がっていた。
にとりはやっぱり普通の女の子ではない。でもかわいいからいいかっ。
で、にとりがかわいくて……気が付いたら芝生の上でにとりとのびていた。
幻想郷ではない。外界のどこかの公園らしい。
気分は悪くなかったが、外に放り出されてたので背中があちこち痛い。寒さはそれほど感じなかった。
よく分からないが、にとりが上から覆いかぶさっていたせいでそこそこ保温されたのかも知れない。
他にも、いや、その、なんだ、若干嬉しかった。
ゆすったらすぐ起きてしまった。なんとなく残念な気がした。
『やー、お酒しかなくて悪酔いしたのかなー、一晩中飲んでたけど、朝方になって紫が突然暴れ出してさ、
ほら、昨日紫の周りに居た人って咲夜とか早苗とか人間の若い女の子ばっかだったじゃん?』
さすがは河童である。かなり盛況であったにとりだが、二日酔いはしていなかった。
昨日のことを聞くと、大体の事情を教えてくれた。
飲みすぎたスキマの人が発狂して、どうやら外に放り出されたようだ。
きっと若さに対するアレルギーだろう。
『で、〇〇、私お腹すいたよ。昨日食べ物全然なかったからさー。案内してよ。お金はあるから』
『待て、なぜ外界の金をお前が持っている』
『え?大量に幻想入りしてるよ。このお札のおじさん妙にぬぼーんとした顔してるね。』
そこには、確かにアルカイックスマイルですらない何かを浮かべた聖徳太子がいた。
『くっ!!旧札という発想はなかった!!帰り次第全て回収して……』
『水を差すようで悪いけど、閻魔様が空気を読まず焼却したり紫が悪巧みにつかったりしてるから手を出さないほうがいいよ。
ていうかお腹すいたよ。早くどこか食べ物屋さんにいこうよ』
『はぁ……なんか食べたいものあるか?』
『きゅうり!』
『外界に来てまできゅうりか。もっと珍しいものをだな……、大体きゅうりを食べ物として出してる店が……いや、ある。』
『マジで!じゃあそこ!』
そんなわけで、幸運にもすぐ見つかった店に入ることが出来た。
『かがくの ちからって すげー!!』
にとりが回転寿司屋に入って最初に発した言葉がこれだった。
そもそもまずセルフサービスのアガリがありがたい。胃にやさしい。いきなり三杯も飲んでしまった。
個人的には温かいものが食べたかったのだが、最近の回転寿司屋はうどんなどの麺類も用意しているらしい。
『すげー、ベルトコンベアすげー 外の盟友すげー』
『これ人が注文したものなの!?食べちゃダメなの!?』
『なにこれ たっちぱねる? 人がいなくても注文できるの!? すげー 本当にすげー!!』
にとりは嬉しそうに注文用タッチパネルをいじったり寿司を食べたりしている。非常に幸せそうでいいのだが、
どうしてこいつはちっこいくせにやたらと体がムチムチしているのだろう。
『それでね、こないだやっと″表裏を入れ替える機械″が完成したんだ。このお札はそのために持ってたんだよ。
どう?ばっちり入れ替わってるでしょ?……〇〇? おーい?』
……皿に手を伸ばすところとか、モーションがいちいちでかいところとか、体勢的にやたら服があーだこーだなって………
『〇〇、なにぼーっとしてるの?』
『え゛、いや、なんでも……』
『あ、これ? そんなにこのネギトロが食べたいの?はい、あーん』
『いや、その……ぱく。もぐもぐ……』
『うわー。あーん、だって!!あーん!! デートみたいだよね!!いや、デートなんだけど。
〇〇とたべさせっこ!!うわー!うわー!!次〇〇が私にやってね!』
『あ、あーん、ってなんだそれは。いつの間にそういうことになってるんだ!!』
『もぐもぐもぐもぐ、んぐ、んぐぐぐぐ』
『……すまん俺が悪かった。早くお茶を飲め』
『んぐ、ごっくん。んん、最初からだよ。昨日の宴会の時に付き合うことになったじゃん。
それでさっそく明日デートね、とか言ってたらいきなりスキマ妖怪が暴れ出したんだよ。
なんだよー、〇〇おぼえてないのー?昨日盛り上がったのだってそういうことだったからだよー』
……なんてことだ、いきなりの急展開についていけねー
『うふ、〇〇ー♪ 後もうちょっと食べてデザートも終わったら、ほおむせんたあ?に行こうね。機械とかいろいろあるんでしょ?
外の機械!!生で見るのちょー楽しみだよ!!』
すこし認識がずれているようだ。
とりあえず食べ終わったので会計を終えて出ることにした。店員は旧札に訝っているようだったが、お金はお金なので勝手に納得したようだった。
駅から電車に乗って郊外の店に行くといったら、さらにヒートアップしていた。やはり外の乗り物が珍しいのだろう。自動車が走っているのすら物珍しいといった様子だ。
なんだかにとりはまんざらでもない、むしろ大いに楽しんでいるようだ。いや、俺もにとりと付き合うことになっていて嬉しい。嬉しいのだが、なんだかキングクリムゾンされた気分だ。本当についていけねー。
しかもこの調子だとスキマ妖怪が迎えに来るまでにだいぶかかるかもしれん。
むしろ戻れないかも。
でも、まぁ………にとりがかわいいからいいかっ。
俺はスシロー派。かっぱ寿司ではない。でもにとりは好き。でもかっぱ寿司ではない。
妖怪の山革命記(Megalith 2012/04/09)
気がつくと森の中にいた。
さっきまで人で一杯だった街を一人で歩いていた筈なのだが・・・
いや、一人だからといって
決して友達がいないわけじゃ無いぞ、いや本当に。
まぁとりあえず落ち着こう。
変な所に飛ばされたらまず落ち着け、て婆ちゃんも言ってたし。
さて・・・ここは何処だ?
辺りを見渡しても樹と草しかない。
携帯をみても圏外になっている。
うーむ、全く分からん、少し歩いてみるか
俺は膝まである草を踏みながら歩き出した。
「なっ!!!!」
しかし直ぐにその行動を後悔した。
化け物がいる・・・
化け物としか言いようの無い生き物がそこにいた。
「な、なんだよ・・・あの怪物みたいなの」
思わず後ずさった。が、それがいけなかった
パキッ!!
足元から音がした
それに気づき化け物がこちらを振り向く
化け物に気づかれた!
「・・・・・・!!!!」
驚きすぎて声も出なかったが走った
とにかく走る、後ろを見なくても化け物が追いかけて来ているのが分かる。
追い付かれたら喰われる。つまり死ぬ。それは嫌だ
俺は絶対嫌だこんな死に方。
こんな、こんな、
「こんなマンガにでてくるヘタレキャラみたいな死に方は
絶対に嫌だぁぁぁぁぁ!!!!」
化け物に怯えて後ずさって小枝踏んで場所バレて殺されるなんて
完全にヘタレキャラの死に方じゃねーか!
俺はそんな死に方絶対に御免だね!
まだ体力も残ってるし以外に追い付かれない!よし、逃げ切れる!
そんな事を考えている内に
お、川がある。あそこまで逃げれば・・・ん?女の子?
川の所に女の子がいる。
緑の帽子をかぶってる青い髪した女の子。
……可愛いなぁ、じゃなくてこのまま川にいったら
女の子まで化け物に襲われる!
即座に方向転換
少し後ろをみてみると以外と後ろに化け物もついて来ている
「よし、後はこのまm《ガッ》・・・!!」
急に足が止まった。上半身は全力疾走した勢いのまま地面にダイブ
「痛って~、えと、まさか、転んだ?」
いや、転んだ?じゃなくて、ヤバイ!早く逃げないと化け物が!
後ろを見てみる。・・・いない
もしかしてもう諦めてくれたのか、良かった。
そう思い安心して前を向くと・・・化け物は目の前にいた。
化け物が爪を振り上げる。
もう・・・逃げれないな。そう思い俺は目を閉じた
……ドズン!!
「うわっビックリした!!」
いきなり聞こえた何かが倒れた様な音にビックリして目を開けると
そこには縦に真っ二つになった怪物と
剣と盾を持った銀髪の女の子がいた
え・・と・・え?は?なにこれ?
○○は混乱している!○○は行動出来ない!
そんなこんなしていると銀髪の女の子がこっちを向いて言った
「あなたは何故此処にいるんですか?」
「え?」
「あなたは何故此処にいるんですかと聞いているんです。
此処は妖怪の山。人間が来ても良い所ではありません」
「いや、それが俺もわかんなくてさ、気付いたら此処にいたんだよ」
つかこの場所妖怪の山って言うのか
じゃあさっきのも妖怪か?
「気付いたら此処にいたと言う事はあなた外来人ですか、
早く山を降りてください。此処は人間がいたらいけないんです」
「無理、道わかん無いし、さっきみたいのたら今度こそ
死んじゃうよ」
俺がそう言うと銀髪ちゃんはお札みたいなのをポッケから取り出し
「はい、これが妖怪避けの護符で、
こっちが地図みたいな物です。これに従って歩けば人里に着きます」
「あ、ありがと」
えっとこれが護符とやらで
地図みたいなのは、うわっ浮いてやがる浮いてる方向に歩けって事か
「それでは私はこれで」
「あっちょっと」
行ってしまった。いつかお礼言わなきゃな
あっ川に居た女の子、あの子は大丈夫だろうか。
川の方向は憶えてるしちょっと行ってみよう
と言う事で川に来てみたがあの子は・・・いた
きゅうり食べてる。
余程きゅうりに気が向いてるのか近づいても全く気づかない
声をかけてみる
「ねえ、君」
「ひゅいっ!?」
青い弾みたいなのに吹き飛ばされた。
一気に薄れていく意識の中で女の子が俺に近づいてきてるのが見えた
これが俺とにとりの始めて出会った瞬間だった
はい、完全にイチャついてません。すみません
この話は本編前のプロローグみたいな物です
次回からはしっかりいちゃつくつける様にします
○○の幻想入りとキャラとの出会い方を考えたらこうなりました
SSて難しい
妖怪の山革命記2(Megalith 2012/04/10)
「う、う~ん」
むくり
あれ、ここはどこだ?
「あ、起きた。おはよう」
「え・・お、おはよう」
目の前には青い髪の女の子がいた
川にいたのは憶えてるんだが何故こんな所に俺はいるんだ?
そんな考えが顔に出てたのか女の子が答えた
「ここは私の家だよ。あなたが気絶しちゃったから運んできたんだよ」
「そうなのか、あ、俺は○○、君は?」
「私は河城にとり、呼ぶ時はにとりでいいよ。以後お見知りおきを~」
にとりっていうのか。明るい子だなあ
「そういやにとりよ」
「なに?」
「俺が気絶したのはにとりがだした青い弾みたいなののせいだと思うんだがどうだろう」
「あ~ごめんね、いきなり話しかけてくるもんだからついね
でもあれくらいで気絶しちゃうんだもん、ビックリしたよ」
いやビックリされても困るんだけど・・・
「でもあの青い弾ってどうやって出してるの?」
「○○ってば弾幕の撃ち方知らないって人間じゃあるまいし・・・人間?」
「俺はその人間なんだが・・・」
ピキーン
「・・・・・・」
にとりが固まってしまった。
「おーい、どうしたー?」
目の前で手を振ってみる、すると
「げげっ!人間!?」
そう叫び家の奥に走って行った
「いったいなんなんだ?」
しばらくにとりが走って行った方を見ていると
にとりも柱に隠れてこちらを見ていた。
目が合うと柱に引っ込むので小動物みたいでとても可愛い。
そんな事をしている内にある事を思い出した
「あ、人里行くの忘れてた」
窓から外を見てみるともう赤く染まっている
今何時くらいだろうか、そうだ携帯なら圏外でも時間を見れるかもしれない
そう思いポケットから携帯を取り出す。
「なにそれ!!!」
「うわっ!!」
にとりが凄い勢いで走って来た
「ねえねえ、なにこの機械初めて見たよ。ちょっとかして!」
携帯が俺の手から奪われた
「ちょっ!?まだ時間見てな「分解開始!!」俺の携帯がー!!」
にとりの手によってものすごい勢いで分解される俺の携帯。
そこにかつて俺の手にあった時の姿はなく、見るも無残にバラバラにされていた
「あぁ、俺の相棒が・・・」
「大丈夫!ちゃんと直して返すから!・・・3ヶ月後くらいに(ボソ」
「おい、聞こえてるぞ。最後のかっこボソまで発音するなよ」
なんて事をするんだこの子は・・・
とりあえずゲンコツを一発・・いや本気ではやらんよ?
ゴンッ!
「いったーー!!なにすんだよぅ」
睨んで来たが涙目のため全く怖くない。むしろ可愛い
「お前こそ俺の携帯になにしてんだよ」
「河童の一エンジニアとして初めて見た機械は分解しないとね」
そう言って発展途中の胸を張るにとり
つかこいつ河童だったのか。だがいいやつみたいだし気にはしない
「はぁ、まあいいや、そんな事より早く人里にいかなきゃ」
外を見ると真っ暗である
「○○よ、それはいけない夜は妖怪の時間。
こんな時間に外出るとソッコーで食われちゃうよ」
「このお札があるし大丈夫じゃないのか?」
「夜は妖怪の力も強くなるし、そんなん全く効かないと思うな」
まじかよ、夜どうしよう
「私の家にでも泊まってく?」
なん・・だと・・
まじで?こんな可愛い子と?一つ屋根の下で寝るんですか?
「魅力的過ぎる提案だ、是非そうさせてくれ」
「りょうかーい。あ、お布団一つしかないから一緒でいい?
この子は俺を萌え殺す気でしょうか。
「いや、流石に同じ布団はいいや、毛布でもあれば床で寝るよ」
流石に俺の精神が耐えられません
「客人が家主に意見する気?」
どうやら俺に決定権は無かったようです。何故質問したんだ
「じゃあ今日は色々あったしもう寝ちゃおっか」
いきなりですか!さっき泊まる事を決めたばっかじゃん!
そんな俺を気にせずにとりは布団を敷いていく
「あ、枕もひとつしk「お断りします!!」了解」
その後も色々あって横になるまで時間がかかったが
横になってもドキドキして眠れなかった
そんなこんなで夜は過ぎて行った
「○○!朝だよ!」
「・・・・!」
にとりに大声で起こされた
ビックリしすぎて声が出なかったぞ
「にとりよ、朝から大声はやめてくれ、お前は俺の母親か」
「そんな事より朝ごはんだよ、今日は○○がいるから頑張ったんだよ」
言われて見るといい匂いがする
そう思い机を見て見ると焼き魚や白いご飯などの他にきゅうりが丸々一本置いてあった
うん、気にしたら負けだな、せっかく作ってくれたんだし
布団からでて顔を洗い食卓につく
「「いただきます」」
そう言った瞬間
「にとり、居ますか?」
玄関から昨日の銀髪ちゃんが入ってきた
「あ、椛、いらっしゃい」
にとりを見ると銀髪ちゃんはこちらにきて話し始めた
「さっき決まったらしいのですが、妖怪の山への人間の出入りが完全に禁止されました。
今までは守矢神社への行き来は良かったのですが、
最近知能を持たない妖怪の力が強くなってきてしまって
軽い護符や結界なら破ってしまいかねないので、被害者が出ない様に、との事です」
すげえ、銀髪ちゃん(椛というらしい)よく噛まずに喋れるな
とそこで椛ちゃん、と目が合った
「なぜ貴方がここにいるのですか」
「いや、色々あってな」
そう言うと椛ちゃんはため息をつきながら、
「貴方、もう人里へは行けませんよ」
「さっき行ってたな、出入り禁止だとか」
おれが言うとにとりが続いた
「なんで入るだけじゃなくて出る事も禁止されるの?」
にとりの質問に椛ちゃんが答える
「強くなった妖怪の中に人間に寄生するタイプの物がいたらしく
寄生された人間が人里へ行くと危険なので
それをふせぐためだそうです」
「と言う事は俺はどうするんだ?」
「一人では危険ですし、私の家にでも来ます?」
おおう、二日連続で魅力的な提案ですね
「悪いけど○○は私の家で泊まる事になってるんだよ」
なっ!?にとり、それは昨日の話!
「そうですか、では私はこれで
何かあったら呼んで下さいね、すぐ行きますから」
行っちゃったよ、少し残念だがまたにとりと一緒に寝れるんだから問題無い
「じゃあ○○、これからよろしくね!」
「ああ、よろしくな、にとり」
こうして俺は妖怪の山とやらでにとりと暮らし始めた
あ、まだご飯食べてない
やっといちゃつきだしたよ
いちゃついてますよね?
まだまだ続けますんで読んでくれたら嬉しいです
Megalith 2012/08/09
「……いやー、幻想郷の夜ってこんなに綺麗だったんだな」
「もう半年ぐらい幻想郷にいるくせに今更何言ってるのさ」
そう唐突に呟いた俺に、にとりは怪訝そうな表情を向けた。
意図せずして口から漏れた言葉は、どうやらリュックをぱんぱんに膨らませたこの同行者の耳にも意図せず届いていたらしい。
「しょうがないだろ。今までこんな時間に外出したことなんてなかったんだから」
「へえ、それは意外だな。○○のことだから昼も夜も関係なく無縁塚に通ってると思ってたよ」
「あのなぁ……俺は外の人間なんだぞ?
昼ですら森近さんに同行を頼むことが多いってのに、夜なんかに無縁塚に行ったらすぐに妖怪に食べられちまうよ」
俺の解答を聞いて、にとりは背中のリュックを揺らしながらケラケラと笑った。
普段ならばそのリュックに入っているのは大量の工具なのだが、今入っているのは大量のガラクタだ。
特記事項を付け加えるならば、外の世界のガラクタである。
幻想郷には無縁塚という外の世界の物が流れ着く場所がある。
その無縁塚に通って修理できそうなものを持ち帰るのが俺の日課だった。
しかし修理できそうだからといっても全てが上手くいくわけでもなく、修理に失敗したガラクタが部屋の隅に積み上がっていった。
そんなガラクタの山に目をつけたのが今隣にいる河城にとりだった。
河童にとっても外の世界の物は貴重らしく、にとりはそれらを引き取ると言い出したのだ。
俺としてもガラクタを引き取ってくれるのはありがたかったので、その申し出を了承した。
それからというもの、にとりはちょくちょく家にやって来てはガラクタを回収していったのだが――今日はいつもと様子が違った。
「○○、今から無縁塚に行こう!」
いつもより遅い時間にやってきたにとりは、開口一番にそう言ったのだ。
そんなわけで、俺はにとりの無縁塚行きに同行し、思う存分外の世界の物を回収したにとりと共に夜道を歩いているのである。
「なるほどね。それで○○、初めての幻想郷の夜はどうだい?」
「そうだな……正直感動したよ。
都会暮らしだったから、こんな夜は初めてだ」
頬を優しく撫でる夜風。
足元を明るく照らす月明かり。
どこからか聞こえる虫達のさざめき。
遠方に見える夜霧に包まれた湖畔。
それら全てが、幻想の郷の名に恥じぬ幻のような美しさを纏っていた。
「外の世界は空気とか汚れてるって聞くからねぇ。こんな綺麗な月も、そうそう見られないんじゃないかな」
にとりの声に導かれるように天を仰ぐ。
そこにあったのは、目を見張るような満月だった。
その輝きは怪しくて、妖しくて。
思わず目を奪われてしまう。
だからだろうか。
「ところでさ、○○」
隣にいたはずのにとりが、いつの間にか目の前に立っているのに気付かなかったのは。
その雰囲気は、俺が知るにとりとはどこか違っていて。
「さっき、夜に出歩いたら妖怪に食べられちゃうって言ってたよね。
……○○、忘れてない? 私も河童っていう妖怪だってこと」
「お、おい……嘘だろ……」
一歩。にとりがこちらに足を踏み出す。
「きっと、私なら大丈夫だって思ってくれてたんだよね。
……知ってる? 月の満ち欠けって、結構妖怪の精神に影響を及ぼすんだよ。
こんな綺麗な満月、どんな妖怪でも気分が高揚するってもんだね」
「もしかして、今日俺を連れ出したのって……」
二歩。俺の足は動き方を忘れてしまったらしい。
「そうだね。私は臆病だから……今までもチャンスはあったのに、勇気が持てなかったんだ」
三歩。ようやく中途半端に動いた足は、俺に尻餅をつかせた。
「でも今は、もう耐えられない。我慢できない。
だから――」
目前にまで迫ったにとりの肩越しに、狂おしいまでに美しい月が見えた。
最期に目に焼き付ける景色としては、中々に上等じゃないだろうか。
惜しくらむは、にとりの表情がよく見えないことか。
そんな、馬鹿みたいに冷静な考えが、脳裏をよぎった。
にとりが俺に馬乗りになる。
そっと目を閉じた俺の両頬に、ひんやりとした手が添えられる。
そして――――唇に、柔らかい何かが、触れた。
恐る恐る、目を開く。
そこには、息がかかるような距離ににとりがいて。
はにかんだ笑みを浮かべるその頬は、ほんのりと紅く染まっていて。
「えへへ。味見……しちゃった」
恥ずかしさを隠しきれていないそんな声が、耳に届いた。
「えっ……は……え……?」
状況が飲み込めない。
今触れたのは……唇?
俺はにとりとキスした、のか?
「○○。こんなことした後に言うのはズルいかもしれないけど……私は、○○が好き。大好きなんだ。
……○○の気持ちも、教えてくれないかな」
続けてにとりが紡いだ言葉は、混乱する俺の頭にもすんなりと溶け込んだ。
それは、にとりの言葉が、想いが。
あまりにも真摯で、真剣なものであることが伝わったからなのか。
それとも、自分が同じ想いを持ち、同じように臆病故に伝えなかったからなのか。
どちらにしても、俺はこれに答えなければいけない。
そう、強く感じた。
「なあ、にとり」
「……うん」
「さっき、味見したって言ってたよな。……どうだった、味は」
「緊張しすぎてよくわからなかったんだ。もう一回、させてもらえると嬉しいな」
「……駄目だな」
「っ……そっか。そうだよね。私なんかじゃ駄目、だよね……」
「もう一回だけじゃ許さないぞ。それに次は――――」
――――俺の番だから。
二つのシルエットが、一つになる。
そんなありふれた、でもここにしかない光景を、月はただただ、優しく、妖しく、見守っていた。
なお、宴会帰りに偶然この光景を目撃した鴉天狗は月のように優しく見守るということはせず、
いつものように激写して記事にしたのだが、それはまた別のお話。
勢いだけで書いた。
幻想郷の夜はロマンティックだからね、仕方ないね。
35スレ目 >>354>>355>>356
354: 名前が無い程度の能力 :2015/01/22(木) 23:41:27 ID:CNFx63Qw0
にとりとお相撲とりたい
どすこーい!ってにとりが突進してきて抱き合うようなかたちになって
にとりがぐいぐい体押しつけてくる
あっええ匂い…おっぱいあたってる…
にとりもにとりで途中で「これ盟友と抱き合ってない?」ってわかって赤面しちゃう
355: 名前が無い程度の能力 :2015/01/23(金) 08:24:33 ID:8arqg6R60
後日、反省して柔道を持ちかけるにとり。
あんまり変わってなくて、2倍赤面。
まで妄想した。
356: 名前が無い程度の能力 :2015/01/23(金) 21:07:57 ID:o6dvwbc.0
更に後日レスリングに発展ですね、わかります
最終更新:2021年04月25日 14:51