椛2



うpろだ660


 白狼天狗と言えば、妖怪の山における自警団的な役割を果たしている種族である。
 しかし、妖怪の山などという物々しい名前の割に、白狼天狗の仕事量は大して多くは無い。
 なぜか、と問われれば彼らはこう答えるだろう。

 ここが妖怪の山だから。

 天狗と河童が共存し、閉じたコミュニティを脈々と育み続けてきたこの山は、幻想郷のパワーバランスの一角を担う箇所でもある。
 ただでさえ排他的な環境である上に、そんな力が示されていれば、例え強大な力を持つ妖怪でもそうおいそれと手を出すことは出来ない。

 だから、白狼天狗達はよほどのことが無い限り、侵入者よりは暇と戦うことの方が多い。
 もちろん――犬走椛にしたって、その例から漏れることは無い。

「あ、○○、大将棋やってかない? 丁度相手がいなくて困ってたんだ」

 白狼天狗は暇つぶしに大将棋と呼ばれるゲームに興じる。そして、対局の相手として周囲の河童に声をかけることが多い。
 わざわざ河童なんぞ捕まえなくても天狗同士で対局すればいい、と思う天狗はとりあえずぶっとばされても文句は言えまい、と椛は思っている。
 同属同士だと熱くなって喧嘩になったら後の始末に困る。なまじ力がある種族の喧嘩は周囲にとって害にしかならない。
 同僚が一度、そういった事態を引き起こし、事態収拾に苦労したことはそう忘れることが出来ない。

 その点天狗と河童の組み合わせにはそんな懸念は少ない。
 元々天狗と河童なら、天狗の方が立場的にも実力的にも優位にある。
 そんな関係ならば、河童は天狗を刺激しようとは思わないし、天狗の方も悪質なちょっかいをかけようと思うことも無い。
 探せば河童でも椛では手の届かないようなレベルの打ち手もいる。盤上の優劣程度で傷付く矜持などありはしない。
 つまり、単純に良き対戦相手としての関係でいられるのだ。

 多少相手が遠くにいても、河童がいればそいつを対局相手に選ぶべきだ――それは、椛だけでなく、ほとんどの天狗たちが共通して持っている考えである。

「いきなりですね椛様。仕事の方は大丈夫なんですか?」

 声をかけられた河童――○○は若干呆れたようにぼやくが、拒否することも無く椛の方へと歩いていく。

「いいんだって。侵入者が来たってボクならすぐ分かるし。そもそも侵入者が来ることの方が珍しいんだもん。
 何時来るか分からない存在にやきもきするよりも、今ここに存在する暇を潰す方が大切だと思わない?」
「でも、この間人間が来たって話じゃないですか。俺はにとりから聞いただけだからその人間見なかったけど、椛様は戦ったんじゃないんですか?」
「え、あ、うーん……戦ったよ。あっさり負けちゃったけど」
「って大丈夫なんですか……まあ、今ここで喋ってれば大丈夫なんでしょうけど」

 滝の裏に設けられた対局のためのスペースには、何組かの天狗と河童が向き合っている。
 その中から適当に開いている場所を選び、席に着く。
 盤を間に挟み、互いに向き合い、初期配置を始める。
 配置をしながらも会話は続く。

「いや、でも凄いですね、その人間。天狗様に勝っちゃうなんて」
「んー……ボクの場合はただ単に実力不足だし……」

 そこで椛は周囲を見回し、聞き耳を立てている奴がいないかを確認する。
 盤の向こうにいる○○に顔を寄せ、彼にだけ聞こえるような小さな声で、そっと、

「文様……鴉天狗の、知ってる?」
「え、ああ。『文文。新聞』でしたっけ。あれを発行している天狗様ですか?」
「そう。その方が人間の交渉にあたったみたいなんだけど、どうもワザと通したみたいなの」
「へえ。そりゃまたどうしてですか?」
「その人間の目的が最近来た新しい神様だったからだよ。ボクその後大天狗様に言われてその人間と神様の様子見に行ったんだもん」
「あー、それがその神様を信仰する決め手になったんですか?」
「うん、そういうこと」

 盤上には互いの駒が整然と揃う。
 椛と○○。二人の実力はほぼ同じ。戦績は五分と五分程度。
 だから、椛は大将棋の対局相手を考える時には真っ先に○○を探す。
 ○○がこの辺りに来る機会はそれ程多くは無いが、彼にしても椛との対局は望むところであり、対局相手としての二人の関係は良好と言えるだろう。
 互いに相手と目線を合わせ、「お願いします」と一礼。
 先手は○○。最近ようやく理解した戦術を頭に描き、駒に手を伸ばして――

「あ、ちょっと待って」

 手が空滑りして、ずっこけるようなポーズ。
 これは幻想郷でももう古いのでは、と椛は思う。

「……なんですか?」
「さっきの話、他言無用だよ? あんまり他の天狗に文様の悪い印象与えたくないしさ」
「ああ、その話ですか。分かりました、誰にも言いませんよ」
「ありがと。じゃ、始めようか」

 もう一度居住まいを正し、互いがきりりと睨み合う。
 ○○の手が、改めて駒に伸びる。


―――


 基本的に白狼天狗は昼型の生物である。
 それはつまり、犬走椛は夜行性でないことを仄めかす情報であり、事実、月に何度か訪れる夜勤業務を椛が嫌がっていることは、その事実を証明している。

「眠いなぁ……」

 くぁ、と大きくあくびを一つして、直後誰かに見られていないかを慌てて確認する。
 同僚はいないし侵入者が堂々と姿を現すことなど無いのだから実際はそんな事をしなくても良いのだが、本人の生真面目さがそれを許さない。
 しかし、たとえ本人が生真面目だろうが不真面目だろうが、夜の静けさと暇はそんな事で天狗を差別しない。
 椛は今、日中は大将棋をする天狗や河童で賑わう滝の裏の空間にいる。
 自前の盾と剣は盤の脇にぞんざいに転がっており、本来それを振るう両の手は盤上で駒がジャラジャラと音を発する手伝いをしている。
 この場所で待機している理由は単純で、滝の裏側の寒い空気を吸っていた方が眠くならないからであり、駒を弄んでいるのは滝の音だけだと単調すぎて眠くなるからだ。
 寿命が長いと暇を潰すのも一苦労。

「せめて、誰かいればなぁ……」

 この場に誰かいればいい。椛は夜勤の度にそう思う。
 二人ならば、喋るなり何なり時間を潰すための手段が増える。
 月の光を受けながら大将棋を打つ、というのも中々に雅やかではないか。

 そんな事を考えているうちに、ふと月の明かりが恋しくなった。
 滝の裏側という事もあり、椛が座っている空間は外の闇よりも暗い。
 駒を元の場所に戻し、剣と盾を拾い上げて表に出る。

 ―――そこで、普段とは異なる気配を感じた。

 瞬間的に意識が覚醒する。
 異常を真っ先に感じたのは聴覚。魚が跳ねるような音ではない、もっと質量を伴う物体が水しぶきを立てる音が滝の音に混じって聞こえた。
 くん、と嗅覚を動かす。水辺の索敵には余り期待できないが、無いよりはマシだ。少なくとも、何かが能動的に動いているのだけは感じ取れる。

 「滝の下流、か……」

 崖口から下を見下ろせば、確かに何者かが滝つぼの辺りでうろついているのを見て取れる。
 それが何であるかまでは特定しきれないが、要するに侵入者だ。

 なら、勤めを果たすだけである。

 助走をつけることもなく大地を蹴り、椛は一直線に落下していく。
 この瞬間の爽快感を、椛は好んでいた。
 頬を切るような空気が頭の中をクリアにしていく。落ちていく水よりも自分の方が余計に重力が働いているような錯覚。
 今日はいい日だ。
 負けたとはいえ○○との大将棋は充実したものだったし、面倒な夜勤の最中、この感覚を味わえるなら、そこには間違いなく価値がある。

 フォールオブフォール。

 弾丸のような勢いで、一人の白狼天狗が落ちていく。


―――


 妖怪の山には、天狗と河童が共生している。
 これは幻想郷にいる存在ならほぼ全てが知っていることであるが、たまにこんな疑問を漏らす者がいる。

 ―――何故、共生なのか。

 この疑問を浮かべる者は天狗の力を身を持って思い知った者だったり、河童との戦闘で勝利を収めた者だったりするが、どちらにしても疑問の元は同じだ。
 つまり、天狗と河童の戦闘力の差が疑問の端となっているのだ。
 事実、天狗という種族は幻想郷でもかなり強い部類の種族と見られており、逆に河童は人間でも多少の修練を積めば何とかできる程度の種族と見られている。
 それほどまでにはっきりとした戦力差を持つ天狗と河童。その二つの種族が対等の立場でいることはおかしくないか――疑問を持つものは、そう考える。

 河童だ。
 動き続ける視界の中、水辺にいる存在をそう認識した椛は「まずいなぁ」と思う。
 こちらは天狗で相手は河童、喧嘩に発展する事は無いだろうが、万が一自分の事を敵と認識されたら勝てないかもしれない。

 疑問の答えは、単純だ。
 水が近くにある環境こそが、河童が真に力を発揮できる環境だから。
 河童と戦って勝ったことがある人物が果たして本当に河童に勝ったのか。陸の上の河童と水辺の河童を同じ物として取り扱ってはいけない。
 地空水。天狗が地と空を支配しているとすれば、河童は水を支配している。
 たかが三分の一、されど三分の一。
 だから、天狗と河童は共生しているのだ。

 椛は姿勢制御に移る。
 こうなってしまえば仕方が無い。やるべきことをやって早々にこの場を離れてしまおう。
 まとわりつく空気と共に、水面すれすれを叩くように相手と対峙する。
 降下する空気が高い水しぶきを巻き上げ、格の低い存在ならそれだけでも竦みあがってしまうような轟音が辺りを揺るがす。
 けれど、相手に動じたような気配は無い。
 焦る。

 ――コイツ、多分ボクより格上だ。

 心の中の焦りを何とか外に出さないように捻じ伏せて、声高々に口上を上げる。

「我は白狼天狗の犬走椛! 貴公はそこで何を――」

 剣の切っ先を向けて相手を睨み、そこで初めて相手の顔を見て。

「……○○?」
「……どうも、こんばんは」

 予想外の顔見知りの登場に、剣を向けたまま体が硬直する。
 巻き上げられた水が周囲に降り注ぐ。大地に叩きつけられる水音は場面が場面なら緊迫した空気の演出に一役買うのだろうが、互いの気が抜けたこの状況では間の抜けた音にしか聞こえない。
 そこにいたのは、河童で、つい半日ほど前に大将棋を打った○○だった。


―――


「……で、俺のことを侵入者だと思って降りてきたわけですか」
「うん。その……驚かせてごめん。随分前にも人間が魚を取りに忍び込んだことがあって、そんな類なのかなーって」
「いや、まあ――水辺とはいえ、迂闊に天狗様のテリトリーに入り込んだ俺の方にも非はありますし。そんなに謝ることでもないですよ」
「ありがとう。本当に、ゴメンね?」

 ぱん、と両手を合わせて頭を下げる椛。
 その頭に、○○の手がのる。

「な、何をするかな」
「いや、何となく」

 憮然とした表情で○○を見れば、相手は苦笑と共に手を頭から離した。
 月を背に苦笑しながら肩を竦める○○は何だか普段見る姿とは違う存在に見え、椛は少しの間、その顔を見詰めてしまう。
 そして、自ら我に返り、自分でも不自然に思えてしまうような咳払いを一つ。

「そういえば、○○は結局何しにこんな所まで来たの?」
「ああ、月を見に来たんですよ」
「月?」

 空を見上げると、椛の両の目に映るのは見事なまでの満月。そういえば今日は珍しく月に青みがかかっている。
 けれど、それだけではここに来た理由にはならない。
 ○○にしても椛の追及が目に見えていたのか、すぐに補足を入れる。

「今日は月が綺麗だなって思って。それで月を見ようと思ったんです。水の中で」
「水の中?」
「ええ。この辺りまで来ないと月が良く見える水場って無いんですよ。俺の家、森の中にあるんで」
「ふーん……」

 物好きな、とは思う。
 月を肴に酒を飲んだことは椛にもあるが、わざわざリスクを犯してまで生活圏と別の環境で見ようとは思わない。
 けれど天狗である自分の感想を、そのまま河童に適用してもいいのだろうか。
 天狗と河童とではやはり感性の違いはある。それ位は椛にだって分かっている。
 もしかしたら水の中で月を見上げるという行為は河童にとって、とても尊いものなのかもしれない。
 だから、椛は当たり障りの無い答えを選ぶ。
 天狗と河童の――ひいては、自分と○○との関係に、余計な波紋を広げない為に。

「ま、いいや。じゃあボクはそろそろ戻るよ。あんまり変なことしないでね」

 けれど、目の前の河童は当たり障りの無い答えから逸脱した返事を、椛に投げて寄越した。

「あ、もし良かったら、見てみませんか。水の中で月」
「え?」
「いや。仕事の邪魔になるっていうなら強制は出来ませんけど……だけど、本当に綺麗なんですよ?」

 そういえば、こんな風に○○の方から何かを誘ってくるなんて初めてのことだ。
 そんな事実に気が付いたことも手伝って、椛は少しだけ考えてから、じゃあ、ちょっとだけだよ、と返事をした。
 ちょっとがどれだけになるは分からないが、多少なら休憩と称しても誰も文句は言うまい。
 岸に盾と剣を置き、水に浸すと重くなる上着をその上にかぶせ、椛と○○は水に足を浸す。
 秋が深まる妖怪の山。夜にもなれば気温はかなり落ちている。足を水に浸して毛が逆立つ。
 これで何も無かったら怒るぞ――そんな事を思いながら、椛は既に腰の辺りまで水につかっている○○の所へと向かう。

 一本歯の下駄を脱ぎ捨てて並んでみると○○は椛よりも背が高い。それなりに長い付き合いではあったが、椛が身長差を意識したのは今日が初めてだった。

「○○って、背、高いよね」
「ま、一応男の子ですから。椛様よりもちょっとばかし歳、食ってますしね」
「それなのに大将棋の強さがボクと同じくらいって、ちょっと恥ずかしくない?」
「……ほっといてください」

 憮然としたその表情が、少しだけ嬉しそうだったのは椛の気のせいだったのだろうか。

「時に椛様、水の中でどれだけ息止めてられます?」
「んー……十分くらいかな。大丈夫?」
「ええ、それだけ止めてられれば問題ないです。じゃ、行きましょう」

 一息吸って○○は水の中に潜る。
 椛も、○○よりは多少大きな動作で肺に空気を送り込み、水の中に潜った。
 椛が潜ったのを確認すると、○○は椛を先導するように深くまで進み、それに椛も習う。
 三十秒ほど潜ったところで○○は足を動かすのを止め、遅れて来る椛を止める。
 そして、○○の指と目線を追うように、椛は上を見上げた。

 そこに浮かぶのは、蒼い朧月。

 青い月が儚く揺れ動きながら二人の前に姿を晒す。
 降り注ぐ光は屈折しスペクトルを変え、陸の上では見ることの出来ない色彩を二人の空間に与える。

 その玲瓏さに思わず息を呑み、○○の方を見やる。
 同じように月を見上げていた○○はその視線に気がついたのか、椛と視線を合わせる。
 そして、宝物を自慢する子供のように、少しだけ誇らしげに微笑んだ。

 知らなかった。
 月がこんなに美しいなんて。光がこんなに優しいなんて。
 ほんの少しだけ物の見方を変えるだけで、こんなに世界は変わるものだったのか。

 水の中は天狗ではなく河童のテリトリー。
 椛にとって、この瞬間は非日常。
 切り取られた非日常に浮かぶ月が、光が――そして、何よりも目の前で微笑む○○が。
 掛け替えの無いほどに愛しく、綺麗に見えたから。
 その思いを、椛は素直に口にした。

 ――ここが、水の中である事を忘れて。

「ゴボッ……――」
「―――!?」

 喋ろうとすれば息を吸う。
 水の中で息を吸おうとすれば自然と水が浸入してくる。
 しまった――そう思った時は既に手遅れで、椛の意識は急速に遠のいていった。
 薄れる意識の中に見えた、慌てた○○の表情が妙に滑稽だった。


―――


 意識が戻ると同時に、肺が自分の意志とは関係無しに膨らむのを感じる。
 それを不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。

 目の前に○○がいた。
 椛の口を、自身の口で塞いでいた。
 彼の吐息が、椛の中に流れ込んでくる。

「――――!!」

 飛び起きる。○○を跳ね飛ばして大きく距離をとる。
 意味が分からない。顔が熱い。心臓の音が相手に聞こえてやいないか不安になるほど大きな鐘を打っている。

「な、ななななななな――――」

 意味が分からない。何で、自分は気を失っていて、何で、○○と口付けをしていたのか。
 そこまで考えたところで、胃の中から何かが逆流してきた。

「っ――! げほっ、げほっ……」

 咳き込む声と共に、口から胃液混じりの水が出る。
 それを見て、思い出した。自分は溺れたのだった、と。
 それを認識すると同時に、赤い顔に冷静さが戻ってくる。
 何のことは無い、○○は自分を助けてくれたのだ。
 溺れた自分を引き上げて、水を吐かせてくれたのかもしれない。そして、息の止まっていた自分に。

 人口呼吸を。
 初めて、だったのに。

 ――ぼんっ!!

 そんな効果音が聞こえそうなほどに、椛の顔はまた赤くなる。
 ええい落ち着け犬走椛、○○がしたのは人命救助であって決してやましい事でなく、つまりは初めてだったけどそれはノーカウントで――

「あ、あああああ………」

 やっぱり駄目だ。恥ずかしくて○○の顔を直視できない。
 頭から湯気が出そうだった。目の前にいるはずの○○に何を言えばいいのか分からない。

 気まずい。

 しばしの沈黙に耐え切れずに、何とか話を切り出そうとした。すると○○が先に「あの、」と声を出した。

「その……すみません。俺が変なこと言い出した所為で……」

 その言葉でようやく○○を見ることが出来た。

「でも、やましい気持ちがあった訳じゃないんです。椛様の息止まってましたし焦りましたよ」
「そ、そうだよね。あれはボクを助ける為にやってくれたんだよね」
「そうですよ」

 心の底からの安堵の息を吐く。事実は変わらないが、これならノーカウントと主張しても問題無さそうだ。
 気まずかった空気が和らぐ。苦笑いのような表情で○○の顔を見る。
 しばらくの、あたたかな雰囲気。

 そして、ふと真顔になって。

「……本心は?」

 途端、○○の顔がだらしないくらいに緩む。

「すげー柔らかかったです、ご馳走様でした」
「うわぁああああ!! 汚されたー!!」
「ちょ、椛様!! 人聞きの悪い事言わないでください! 役得ってことで納得してくださいよ!」
「うるさいエロガッパー! 嫁の貰い手が無くなったらどうするつもりだー!!」
「そんなので離れる男がいたら見てみたいですよ! ……痛い痛い痛い! 爪立てないで! 刺さって痛い!!」
「うるさいバカ! もう知らない!!」

 自分でも乱暴だと思える足音を立てて○○から離れ、転がっていた装備を回収し、ふわりと宙に浮かぶ。
 しかし、浮き上がったその体は、右腕をつかまれることで大地に繋がれた。
 振り向けば、○○が椛の腕をつかんでいた。

「……何?」
「いや、本当にすいません。ちょっと調子に乗りすぎてたみたいです」

 そんな事は知っている。芝居がかかった口調を見抜けないほど浅い付き合いではない。
 バタバタと暴れることで落ち着くことは出来た。さっきよりはまともに思考することが出来る。
 けれど、椛は怒っているフリを続ける。

「……悪乗りが過ぎるよ」

 それがポーズであることを、多分相手も気付いているだろう。
 椛と○○。二人は友人。付き合いは長いし馬もそれなりに合う。親友と言い表しても問題は無い。
 だから、このやり取りは二人の予定調和。今までの関係に波風を立てないために必要なお芝居。

「本当にすみません。この埋め合わせは何でもしますから」

 じゃあ、こんど何か奢って。そんな感じのことを言えば、全ては丸く収まったのだろう。
 けれどその言葉を聞いた時、自然と別の言葉が口から出ていた。
 丁度○○が、椛に月を見ようと持ちかけたような、今までの関係からほんの少しだけ前に踏み出すための言葉。

「じゃあ――また、満月の夜に」
「へ?」

 間抜けな声と共に手に込められていた力が緩んだ。
 その隙にするりと相手の拘束から逃れ、椛は空中から見下ろす目線で○○と目を合わせる。
 そこでようやく笑って、告げる。

「綺麗だったね、水の中って。だからまた、満月の夜に一緒に月を見よう。それでチャラにしてあげる」

 そのまま振り返り、相手の返事も聞かずに高度を上げていく。
 背後で○○が呼び止める声を発したが、聞こえないふりをする。どんどんと滝を遡って行く。

 逃げているようだな、と思う。
 椛の脳裏で思い返されるのは、水の中での○○の表情。
 とくん――胸が一つ高鳴るのを、頭を振るうことで抑える。
 それ以上のことを考えるのが、怖い。
 だけれど、あの時の○○の表情を脳裏から消すことは出来ない。

 一人の白狼天狗が滝を登る。
 胸の高まりを、鎮める事が出来ないままに。

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11スレ目>>479


 今日は12月25日。外の世界では今日のことを『くりすます』と言うらしい。

 この『くりすます』は幻想郷内においては割と新しい文化の一つである。

 というのもここ数年の間に外の世界からやって来た何人かの人間がこの文化を伝えたからだ。

 私が聞くところによると、とにかくお祭り騒ぎをする日なのだとか。

 いつも行われているような宴会とどこが違うのだろうか?

 と、まぁそんな感じで幻想郷のあらゆる場所でお祝いをしているらしい。

 ここ妖怪の山でも神社で酒盛りが行われている。






 しかしこの行事も私にとってはあまり縁のないものだ。

 なぜなら『くりすます』だからといって私の仕事は休みにはならないから。

 だからこうしていつものように侵入者がいないか見張っているのである。





















 そんなことを考えていると、ふとこちらへやって来る人間の姿が見えた。

「メリークリスマス! 椛!」

 そんな声とともに能天気な顔をした男があらわれた。

 なぜか真赤な服に身を包み、おまけに口ひげまで付けていた。

 見れば見るほど怪しい格好である。

 とりあえず持っていた剣を突きつけておいた。

「うわっ! じょ、冗談だよな、椛……?」

「さぁ、どうだろう?」

「おいおい……、俺だ俺。別に怪しい奴じゃないから」

 口ひげをはがしながらそう言ってきた。

「ふふ、冗談だ」

 薄く笑いながら剣を下ろす。

「おいおい、笑えないぞ……。つうか椛がこんなことするなんてお兄さん驚きだ」

「私の方が年上なのだが」

 いつものような軽い牽制、もとい挨拶をした私たちはお互いに笑い合った。






 この男の名は○○。一応私の恋人だ。

 彼もまた外から来た人間であり、しかも第一発見者はこの私である。

 その後、紆余曲折あってこのような関係となった。

 ちなみに彼は今、人里の方に住んでいる。

 まぁ暇さえあればこちらに顔を出すので寂しいといったことはないが。 

「それで今日はどうしたんだ? お前もここの宴会に参加するのか?」

「いや。今日はこんな日でも働いているまじめな子にプレゼントをあげに来たんだ」

「は?」

 彼はおもむろに布きれを手渡してきた。

 確かこれは……、そう『まふらー』というものだ。

「何だその……、これを私に?」

「そう、見張りって寒そうだしな。あとついでに酒も持ってきたから一緒に飲もうぜ」

 腰を下ろし、どこからか盃を取り出した。

「ありがとう。贈り物は嬉しいのだが、なぜ急に?」

 私も腰を下ろしながら、思いついた疑問を口にした。















「なるほど、くりすますだから、か」

「そう。クリスマスは親しい人にプレゼントを贈ったり、パーティをしたりするもんなんだ」

「うーむ、私はただの宴会だとばかり……」

「はは、ここの連中を見てればそう思うかもな」

 酒をあおりながら『くりすます』について聞いた。

 どうやら私の認識とは少しばかりずれがあったようだ。

 ただそのずれは幻想郷の住人の多くが持っている気がするが。





 しかし困ったことになった。

 彼は私のために贈り物をしてくれたというのに、私には贈るものがない。

 知らなかったから準備ができなかったと言えばそれまでだが、それでは私の気がおさまらない。

 私とて彼のことは大切に思っている。

 出来ればこの親愛を表現できるような贈り物を……。

 いや、一つ思いついたぞ。

「○○、少し目をつぶっていてくれ」

「え? どうしたんだいきなり?」

「少しの間でいいから頼む」

「まぁ、別にいいけど」

 私の願いを聞いた○○は素直に目を閉じてくれた。

 さて、始めるとするか。

 私は彼と向かい合う形で座った。

 彼の顔は酒のせいかいつもより少し赤くなっている。

 数瞬見つめた後、私は彼の唇に自分の唇を重ねた。

 どうやら彼は相当驚いたようで、いつのまにかその目は開かれていた。

 そして顔は先ほどよりもさらに赤くなっていた。

 まるでゆでだこみたいだ。

 それを見てつい心の中で苦笑してしまった。















 どれぐらいの時間が経っただろうか。

 満足いくまでそうした後、唇を離した私は少しいたずらな目を向けてみた。

 案の定、彼は真赤な顔で視線をそらした。

「えっと……、椛……」

「私からの贈り物だ。気にいってくれたか?」

「……ずるいぞ」

「自分に素直なだけだ」

 彼は赤い顔をしたまま私の目を見つめてきた。

 と、唐突に彼は私の体を抱いた。

 それと同時に私の唇に彼の唇が触れている感触があった。

 その後すぐに口を離した彼はにやりとした顔でこう言ってきた。

「さっきのお返しだ」

「……まったく、してやられたな」

 気がつけば私も彼も笑顔で見つめ合っていた。

 そして私たちは再び口づけを交わす。






 こうして幻想郷の聖夜は更けていくのだった。

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10スレ目>>537


「くりすます、ねぇ」

大将棋をさしながら、他愛もない人里の話題で盛り上がっていた。

何でも、外界では有名な祭りなのだとか。 逆に有名すぎて――そして子供に熱心な信者がいることから――サンタクロースという聖人は幻想郷に招かれないらしい。
知名度の低いブラックなんとかは、人里で大暴れしたことがあるとか。
文々。新聞によると、モツ鍋が有効利用法らしい。

「あれ?犬走様はあまり興味ありませんか?」

「興味はあるわ。モツ肉は嫌いじゃないし」

「そ、そっちじゃなくって……外界では恋人同士がイチャつく祭りらしいです。人間観察の第一人者、河城にとりのリサーチですから間違いありません」

「更に訳が分からないわ。何で外界のよく分からない祭りが気になるの。大体恋人がいる奴しか意味がないじゃない?」

「へぇ!?犬走様は〇〇と婚姻目前なのでは?」

「おぃおぃ、あれはただ拾った人間に身の回りの世話をさせているだけよ。同棲しているからって、それは短絡的ね。そもそも誰に聞いたの?」

「はい。この文々。新聞の一面記事に」

文様の新聞か。そういえば今日はまだ読んでいなかった。
とはいえ、私に疾しいところは一つもない。

「えーっとなになに……」
〇〇の頬に付いた米粒を食べた?
ああ、〇〇が気付かないのがもどかしかったからな
〇〇の寝床に潜り込んだ?
ああ、あの時は〇〇が寒そうだったからな。私の方が体温高いし、効率的だと思ったんだ。
何故か私も寝心地がよかったので、今でも一緒に寝てる。
〇〇と、他の女性天狗が話していると邪魔をした?
私の頼んだ仕事の途中で、へらへらしているから叱っただけだ。
普段からは想像できないほど、弛み切った表情の写真?
これは、アレだ。〇〇の作る食事は美味いんだ。

「……何の不自然もないわね。確かに記事どおり同じ布団だったりするけど、別に〇〇の香りが好きだとか、ちょっと厚い胸板にドキドキするとか、寝返りでキスされそうになったときは、頭が真っ白になって指一本動かせなかったとかそんなことは、たまにしかないし」

「犬走様……心情はともかく新聞どおりの行動を本当にやっているだけで驚きです。冗談半分だったのに……」

「…………」

「いや、今更照れないでください。そこで照れたら新聞の信憑性が鰻登りです」
「……いけない。〇〇を思い浮かべるだけで胸が苦しくなってきたわ」

「どうみても恋煩いです本当にありがとうございました」

「と、ともかくクリスマスの日程は……ぁ、仕事……」

「「……………………………………………」」

「(どうしよう……犬走様の手、動揺しすぎて王手掛け放題なんだけど……)」
「ううっ……」

「(……マジ泣き?マジ泣きかっ?!)」

「あの、犬走様。告白に最適なイベントがクリスマスの後にございます。バレンタインデーというものをご存じですか?」

「ば、ばんあれん帯?」

「バレンタインデーです。告白と同時にチョコを贈るイベントなんですよ。」

「猪口とは、また酒好きなイベントね……間接キスでもしろっていうの?」

「猪口じゃなくってチョコレート。西洋のお菓子です。甘い恋心を甘いお菓子に例えてるみたいですね」

「日付は……よし、その日なら空いてるっ!」

「ざ、材料ならなぜかちょうどここにっ!」

「(あっ……チョコバナナを参考に作った新メニュー‘チョコ胡瓜’の材料が……)」

「じゃあ、約束の日までに作らないといけないわね」
えーっと、これが作り方で……あ、しっかり味もみておかなければ……




※※特報!※※
人間と天狗の心中未遂?
〇〇氏との熱愛を報じられた犬走氏(白狼天狗)が、〇〇氏と心中を図ったことが判明した
犬や狼にとって猛毒であるチョコレートを大量摂取し、自ら毒性を確かめた上で〇〇氏に大量のチョコレートを食べるように強要した疑い。
だが、〇〇は人間のため鼻血を出す程度の被害で済んだ。
なお、犬走氏は永遠亭で治療を受けている。
人と妖怪の恋愛は、悲恋であるという格言を地で行く事件である。
やはり、人と妖怪は襲い、退治される関係でありたい。

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12スレ目>>231


いつも二人の食事には会話がない。
決して仲が悪いというわけではなく、むしろ仲がいいのを通り越して恋仲になっているぐらいだ。
それでも会話がないというのは単に食事に集中しているだけである。
「…ふぅ、ごちそうさま」
「はい、お粗末様」
箸を置き、手を合わせる。
○○の恋人である犬走椛は満腹感と思い人と一緒にいる幸福感でやわらかく微笑んだ。
「ごちそうさま。じゃあ、食器を下げて、お茶を持ってくるからちょっと待ってて」
「……あっ」
椛の食器も一緒に下げようとしたときなにやら声を上げた。
「ん?どうかした?」
「御飯粒、ついてるよ」
「む、どこだ?」
口元をさわるが御飯粒の感触がない。
「―ここ」
「っ!?」
不意に椛の顔が○○に近づいたかと思うと頬に柔らかい感触。
そして濡れた頬がひんやりとする。
瞬間的に思考が停止し、頬をなめられたと理解する。
顔が赤くなるのを意識し椛の顔を見ると己の名をしのぐほど赤くした顔があった。
「あ、あの。もみ…じ?」
「そ、その。したかった…から」
恥ずかしそうにうつむき潤んだ目でこちらを見つめてくる。
「い、いやその……」
「えっと、もう一度…する?」
「えぁ!?っと、ええっと」
「……」
うろたえる様子を見ていて我慢できなくなったのか○○を押し倒す。
そして馬乗りになり互いの息がかかるぐらい近づける。
「…ぎゅってして?」
「う、うん」
○○は言われるがまま馬乗りになっている椛をやさしく、しかし離さぬとばかり抱きしめる。
その状況に恥ずかしがりつつも笑みを浮かべ○○の頬をそっと舐める。
「……椛」
「……ん」
そのまま唇を舐めあい舌を―――


(続きを見るには永琳特性実験薬を数百種類混合したものを投与してください)

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流れをぶった切って投下をお許しください。


冬の早朝、山の麓にある泉の近くにある小屋の戸をそっとあける天狗、犬走椛がいた。
椛は開けた戸より顔を覗かせ中を窺う。
「・・・」
小屋の主である○○は布団に包まり未だ夢の世界にいる。
中に入り手に持っている剣と盾を置きいそいそと○○の元へと近づく。
「・・・・・・」
安らかな寝顔を見て思わず顔が緩む。
ゆっくりと、まるで生まれたての子犬を触るかのように顔に手を近づける。
「ん~」
「っ!?」
○○がもぞもぞと動き寝返りを打つ。
それに過剰反応し手を引っ込める。
しばらく様子を見ていたが起きる気配はないとわかると安堵の息を漏らす。
再び目をむけ寝顔を見る。
寒さで体が冷えたからか○○が寝ている布団が余計に暖かく見えてきた。
「・・・・・・・♪」
何を思ったか布団の横を軽く持ち上げ頭を突っ込む。
そして、そのまま体を中へともぐりこませていく。
「・・・フゥ」
顔を出すとすぐそばに○○の顔。
顔に熱が持つのがわかる。
その状況にあてたれてか、胸に顔をうずめ、スリスリとマーキングするかのように顔をこする。
「ん~~」
「っ!!」
○○は無意識的に胸元でもぞもぞする物を引き寄せ抱きしめる。
耳まで真っ赤にし硬直する椛。
自分でも心音が早くなっているのがわかる。
もうどうしていいかわからず○○と同じように抱き返しさらに顔を胸にうずめた。
寝るにも寝れず結局○○がおきるまでそうしていた。


なお、これ以降、椛が早朝来て○○の布団の中にもぐりこむようになったそうだ。


12スレ目>>204


207 :名前が無い程度の能力:2008/01/17(木) 20:32:22 ID:E0YCmIwk0(12スレ目)
  >>204
  あなたの犬ッコSSにリスペクト。感化された俺が少しだけSSをお借りします。

  「ん~~」
  「っ!!」
  ○○は無意識的に胸元でもぞもぞする物を引き寄せ抱きしめる。
  耳まで真っ赤にし硬直する椛。
  自分でも心音が早くなっているのがわかる。

  ――――――その時、

  「くさっ!ケモノくさっ!!」
  「!」
  突然の○○の寝言に抱きしめられていた椛は硬直する。
  心臓は一瞬止まったかと思うほどの空白の後、狂ったかのような動きで再開する。
  体と共に頭も熱くなり、思考は定まらず、震える手足のまま椛はとにかく布団から抜け出した。
  「う・・・うう・・・う゛う・・・」
  暖かい○○の腕の中から一変した寒い室内で椛は自分を腕でかき抱く。
  まるで何かから必死で身を守るかのように。
  しばらくして、混乱する頭が落ち着き始めると椛は理解する。
  原因が自分であることに。
  そして今後、自分がどうしなければならないかを。
  「ボ、ボクそんなに匂いするかなぁ・・・。臭いのかなぁ・・・」
  寝言とはいえショックな○○の言葉。
  いや、飾りを落とした寝言だからこそ残酷な言葉。
  「○○・・・もう一緒に寝れないね。ごめんね。
   今まで・・グスッ・ずっと我慢させちゃって・・グスッ・本当にごめ・・・」
  言葉は最後まで続かず、嗚咽にかき消される。
  その夜、ついに椛は○○と共に寝ることはなかった

  ―――後日

  自宅で夕食を作りながら○○はふと思う。
  「なんか最近寂しいな」
  数日前から椛が一緒に寝てくれなくなったのだ。
  ○○が告白した時以来、椛は恥ずかしがりつつも一緒に寝てくれたのに。
  それどころか、外出する時も部屋にいる時も○○と少し離れる始末。
  「なんか俺、嫌われることしたかなー」
  疑問を口に出し言葉にしても疑問ははれず、心も晴れることはない。
  「あ゛~~っ、いいかげんモフらせてくれよ~椛ぃ!
   あいつの犬っぽいっつーか、ほのかなケモノ臭さは最高なんだけどなー」

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12スレ目>>671


 本日は節分。
 ここに来る前はほとんどやらなかったがたまにはやるのも悪くないかと思い、
椛と一緒にやることになった。
 思い立ったが吉日ということで椛が出かけている間、里で豆とついでに恵方
巻も買ってきた。
 椛に話したときは豆よりも恵方巻の方に目が行ってるのに思わず苦笑いを浮
かべてしまったが…。
 そして現在、買ってきた、豆を炒っているところだ。
「お~い、椛~。豆できたぞ~!」
 大きな声で呼んだが返事がない。
 いつもならすぐに来るのだが寝ているのだろうか。
「椛~。寝てるのか?」
「わふっ!?」
 椛が自分の声に驚きこちらを振り向く。
 恵方巻をくわえたまま。
 しかも骨のようにくわえているからいつも以上に犬っぽく見える。
 それはそれでぐっとくるところがあるのだが。
「椛…」
「ご、ごめん。我慢できなくて……」
 二本買ってきたのだが一本はすでに食べられており残る一本も半分ほど食べ
られている。
 椛は気まずそうに目を泳がせ、頭をたれしょげた。
 その様子が怒られた子犬に見えたのはきっと幻覚ではないはずだ。
 心の中でガッツポーズをとりつつ椛に視線を合わせる。
「食べてしまったのはしょうがないな……」
「うぅ、ごめんなさい」
「っよ」
「ひゃっ」
 椛を抱え上げあぐらをかいている自分の上に乗せ抱きしめる。
 お互いに向かい合わせになっており、椛は顔を自分の胸に埋めているため表
情はわからない。
「もう、豆以外食べるものがなくなったな」
「……ぅ」
「しょうがないな――」
 そのまま、押し倒す。
「いたずらな子犬にお仕置きをしなきゃな……」
「……ぁ」

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13スレ目>>241


じー
椛「ど、どうしたの?」

くしゃ
椛「ふえ?」

かいぐりかいぐり
椛「……わふ」

かいぐりかいぐりかいぐり
椛「………わふぅ♪」

ピタ
椛「…クゥン?」

かいぐりかいぐりかいg(以下略

椛可愛いよ椛

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13スレ目>>567


「○○さんは、私の物ですよね?」
あぁ、そりゃまあ椛が望むならそれで良いよ。
(ていうかそんな潤んだ瞳で上目使いされて断られる訳無いだろう)
「じゃ、じゃあ私の物って目印を付けても良いんですよね!?」
      • ああ、良いよ。
(なんだ、入れ墨でも彫るのか・・・?)
ぺろ
!?
ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ
も、椛?
ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ
「あ、まりゅまりゅひゃん。
こりぇはまーひんひゅといいまひへ」
ああ・・・有ったねそんなの。
ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ
      • えい
「むぅっ!」
      • マーキング仕返した。
「むぅ・・・○○さんはエッチです・・・」
君も人の事言えないだろうに。

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最終更新:2010年05月09日 23:05