神奈子2



東方喜恋譚 ~You are my オンバシラ編~ 第2話『カミカゼ! テングマン♀参上!』(12スレ目>>255)



○○が幻想郷に来てから、数日後――――


「○○君」

「あ、早苗お姉ちゃん……」


早苗は、神社の境内の掃除をしている巫女服姿の○○に話しかけた。
すると、○○は恥ずかしそうに早苗の方を向く。


「どう、ここの生活には慣れたかしら?」

「は、はい……」


今では○○の体調も元に戻り、彼はよく神社の手伝いをしている。
病み上がりの身体で手伝いをしなくてもいいと3人は言ったが、
世話になっているのに 何もしないのは気が咎めるという○○の意思により
簡単な手伝いを行ってもらっていたのだった。

……なお、巫女服は諏訪子の趣味では無い。
ましてや早苗の趣味でもない。
○○の身体に合うサイズの着替えが、早苗のお古しかなかっただけだった。
だが、そんな○○の姿は、彼が持ち合わせている可愛らしさも相まって
誰がどう見ても見目麗しい少女にしか見えない。


「そう、よかったわ。諏訪子様や神奈子様とも仲良くしている?」

「……は、はい……す、諏訪子様は……優しいですし……」


諏訪子は、例によって○○をベタ可愛がりだ。
しかも、完全にからかっている節がある。

朝、○○が諏訪子を起こしに行ったら 布団に引きずり込まれてしまっていたり、
昼、食事のときに○○にあーんさせて食べさせたり、
夜、○○の入浴中にアクシデントを装って入りこんだり――――

どちらかといえば、からかって楽しんでいるのと、愛でているのが半分半分といったところだろうか。
そんな諏訪子の行動は、○○をこの上ないほどに恥ずかしがらせている。

それでも、諏訪子は ○○が早く自分たちに馴染むために あえて積極的に行動している節がある。
早苗も、それが わかっているので敢えて強く止めることはしない。


「神奈子……様は……」


それに対し、神奈子はオドオドとしている○○にしょっちゅう手を上げていた。
手を上げているといっても小突く程度で、神奈子は神奈子で○○が嫌いというわけではない。
けれど、言いたいことをはっきり言わない○○の態度は、ハッキリしている性格の神奈子にとってはもどかしいのだろう。


「神奈子様は?」


けれども、そんな神奈子の態度が○○を怯えさせているのではないかと、早苗は危惧していた。
そして、もし○○が神奈子のことをあまりよく思っていなければ――――
自分が間に立って二人を仲良くさせればいい……そう早苗は考えていた。


「えっと……その……」


○○が神奈子をどう思っているのかを告げようとした、その時――――


バサァッ――――!!


「記事のネタ、はっけ――――ん!!!」


突如として鳴り響く羽音。
続いて、神社の境内に若い少女の声が響き渡った。


「な! まずいわ、この声は!!」

「え?」


スタンッ!!


「わぁっ!!」


突如として、天空から○○の目の前に黒い影が降り立った。
○○は驚き、その場に尻餅をついてしまう。


「どーも、こんにちはー!」


○○が、黒い影の姿を見ると――――
黒い髪と翼をもった少女が、右手にペンを、左手にメモ帳を携えて○○を覗きこんでいる。


「び、びっくりしたぁ……あ、あなたは?」

「よくぞ聞いてくれました! 私は文々。新聞の記者……射命丸 文と申します!!
 どーぞよろしく! まずはお近づきのしるしに写真をパシャ! っと。」


パシャ!パシャ!パシャ!


○○の都合など関係ねぇ! とばかりに、文は彼の姿をカメラに数枚収める。


「では、早速インタビューにご協力ください お願いします!」

「え、え? はい……」

「うーん、この初々しさ……実にイイ! 今までにないタイプですね!!
 というわけでインタビューを――――」


戸惑いと困惑に頭を悩ませながら、○○は文から一歩後ずさる。
対し、文は大人しく内気な○○に何やら感銘を受けていた。


「はい、そこまで! いい加減にしなさい!!」


それまで黙っていた早苗が文と○○の間に割って入る。


「あなた、またあること無いこと適当に書き散らすつもりでしょう!?
 あの時のように!! そうはいきませんよ!」

「ぇぇー」

「ぇぇー、じゃありません!」


過去に文と守矢神社の間に何かがあったのだろう、早苗は苦虫を噛み潰すような表情で叫ぶ。
おそらくは、彼女たちが幻想郷に来た時も同じようにインタビューされたのだろう。
そして、記事にとんでもないデタラメを書かれたのだろう。

今度はそうはさせないとばかりに、早苗はダンコとした態度で文を追い返そうとしていた。
早苗という保護者の登場に、文はがっくりと膝をつく。


「ああ……私の記事を待っているたくさんの人が悲しむ姿が見えます……
 そして、私は新聞の記事が書けずに 路頭に迷い、飢え死にしてしまうんですね……ぐすん」


そして、そのまま両手で顔を覆い、オイオイ泣きはじめる。
ちなみに、どこからどう見ても嘘泣きにしか見えない。
……だが、○○には本当に泣いているように見えたようだった。


「あ、あの……インタビューくらい、いいですよ?」

「○○君、あの記者に甘い顔をすると痛い目を見るわよ」

「だって……テングさんが可哀想じゃないですか……」

「しくしく……○○先生……インタビューがしたいです……」

「な、泣きやんでくださいよぉ……インタビューしてもいいですから……」


そう言いながら、○○は文にハンカチを差し出す。


「○○君……」


この子には少し人を疑うということを教えたほうがいいかも知れない。
早苗はそう考えたが、その前に嘘泣きをやめた天狗が○○に喰いつくほうが速かった。


「ぃ良しッ!! ありがとうございます! では、まずあなたのお名前は!?」

「え? ええ? あの……」


ハンカチを受け取ることもなく、文は○○に詰め寄る。
○○は、文のその豹変に驚き、慌ててしまう。


「What is your name? あなたのお名前は!?」

「○○……です」

「ふむふむ、年は?」

「×歳です……」

「一桁ですか……○○さん、若いですねぇ。
 ん? そう言えばさっき緑巫女が○○君って……クン?
 えーと、あなた性別は?」

「え? 男……です、けど……」


○○がそう答えると、文は信じられないと言わんばかりに○○の姿を見つめた。
続いて、文は何とも言えぬ微妙な視線を早苗の方に投げかける。
それは、困惑と憐れみが入り混じった複雑な顔。


「貴方……男の子にこの恰好は……」

「し、しかたないじゃない! ○○君の身体に合うサイズはそれしかなかったんだから!!」

「ふむ、そう言うことにしておきましょうか。では、次の質問ですが――――」

「ち、ちょっと――――」


ああ、また妙なことを新聞に書かれてしまうのかと、早苗は頭を抱える。
そんな早苗の苦悩など全く無視して、文はサクサクとインタビューを終わらせていった。


「ふむ、基本的なインタビューはこんなところですかね。じゃあ――――」


ここからが本番と言わんばかりに文は続ける。


「じゃあ、ここからが本番ですよ。ふふふ……ぶっちゃけ、早苗さんのことはどう思いますか?」

「え……」

「こ、こら、何聞いてるんですか!」

「さあ! 早苗さんのことをどう思われますか? 答えてください!!」

「え、あの……その……」

「さあ!」


結局、文に押し切られる形で○○は早苗をどう思っているかを告げた。


「さ、早苗さんは……優しくて、温かくて、奇麗な人です」


照れながら、恥ずかしそうに○○は言った。
そんな彼の姿に、早苗はドキッとさせられてしまう。


「ふむむ……では、諏訪子さんは?」

「す、諏訪子様は……明るくて、楽しくて、かわいい人です……ち、ちょっと強引で恥ずかしいですけど」


○○は嘘がつけるタイプの人間では無い。
だから、本心からそう思っているはずだ……と早苗は考えた。
それが、早苗にとって何よりも嬉しく、彼女の頬も緩んでくる。


「うーん、なんだか記事にするにはパンチが足りないなぁ……ではでは、神奈子さんは?」

「神奈子……様は……」

「神奈子様は?」

「え……と、その……神奈子様は……」

「神奈子様は?」

「え、さ、早苗さん……どうしたん――――」

『神奈子様は?』


そして、早苗が聞こうとしていたことも、天狗は尋ねようとしている。
かたや、家族の絆をより強くするために――――
かたや、いい記事を書くために――――早苗と文の声は見事にハモった。
結局、二人に押し切られる形で、○○は神奈子をどう思っているかを告げた。


「……あ、あの人は……すごく素敵だと思います……」


つづく
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東方喜恋譚 ~You are my オンバシラ編~ 第3話『神罰と憧憬』(12スレ目>>449 うpろだ831 )



「……あ、あの人は……すごく素敵だと思います……」


○○は、はにかみながら、頬を朱に染めて 箒を胸に抱える。
もともと顔立ちが可愛らしいこともあり、さらに巫女服装備中。
そのため、見た目が女の子のようにしか見えない。


『う……』


その姿に、早苗も文も言葉を詰まらせてしまう。
二人はほんのちょっぴりジェラシーを感じてしまった。
この子、女の私よりも可愛いんじゃないか、と。


「ほうほう、理由はわかりませんが ○○さんは年増の色気にメロメロ……と!!」

「え、ええっ!? そ、そんなこと言ってないですよぉ!」

「大丈夫です、秘密は洩らしませんよ……新聞をバラ撒くまではね」

「結局、皆にバラすんじゃないの……」

「だ、ダメですよぉ! そんな嘘、皆に言わないでくださいぃっ!」


涙目になって焦りながら、○○は文に泣きつくが、鬼の皮をかぶった天狗は一顧だにしない。
対し、いい記事のネタが見つかったとばかりに、文ははしゃぎまくる。

けれど、彼女は気付いていなかった。
その背に迫る黒く獰猛な影に――――


「ノンノンノン! ノープロブレムです! 年増趣味なんて普通じゃないですか!!
 世の中にはロリ閻魔や、加齢臭漂うスキマや、毛玉がラブな人だっているんですよ!?
 それに比べたら、オバサン臭い人が好みなことなんて――――」

「ほーう……誰がオバサン臭いですって?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


文の背後から恐るべき殺気が迫る。
その殺気が誰のものかは、賢明な読者諸君には語るまでもないだろう。


「……あややややや」

(まずい……まずいです……これは振り返ったら殺される)


ガシッ!


神の腕が文の首を掴む。


「折角来たんだから、楽しんで行ってちょうだい」

「えー、と……その……神奈子さん落ち着いてください! 今のは、言葉のアヤというものがですね!! 」

「ふふふ、すぐに終わるわよ。縛り付けて、たっぷりとオンバシラを喰らってもらうだけだから」

「あややややややや……!!」

「雪舟の如く、涙で己の走馬灯を描くがいいわ……」

「ひ……ひいいいいいいっ!!」

(雪舟が描いたのはネズミの絵なんですけど……)


首根っこを掴まれて引きずられる文を眺めながら、早苗は冷静に心の中でツッコミを入れていた。
ただ、流石の早苗も、今の神奈子に突っ込みを入れるほど間抜けでは無かった。
下手に口を挟めば、巻き添えを食うのは目に見えているからだ。

もはや、神の怒りの渦中にある文の命は風前の灯と言えるだろう。
神の逆鱗に触れた少女を助けることは絶対に不可能だった。


「あ、あの……」

「ん?」

「……暴力は……その……」


オドオドとした態度で、○○は言葉を紡ぐ。
神奈子に『暴力はいけない』と言うつもりなのだろう。
けれど、そんな姿が神奈子を苛立たせる。


「言いたいことがあるなら、はっきり言うようにと 言ったはずだけれど?」

「………」

「何もないのなら、私はもう行くわよ」


神奈子は、文を引っ掴んだまま○○に背を向けて歩き出そうとした。
その時――――


「……ぼ…暴力はダメで――――わぁぁっ!!」

「え?」


突如として、○○が叫んで神奈子を止めようと走り出した。
しかし、その脚に何かが引っ掛かり、途中で転んでしまう。

なお、○○の足を引っかけたのは空間の裂け目から伸びていた傘だったことには、誰も気づかない。


ふにっ


「…………え」

「なっ…………」


神奈子は、胸に違和感を覚えた。
○○は、掌に柔らかい感触を覚えた。

何が起こったのかを要約すると、○○は神奈子の胸を背後から引っ掴んでいた。


「………あ、あれ?」

「……あ……う」

「Oh my God!!」

「おお、ナイス○○さん♪」


四者四様の反応を示す。
なお、どの反応が誰かは、やはり言うまでも無いかもしれない。

○○と神奈子は状況を認識していくごとに顔が赤くなっていっている。
早苗はアッチョンブリケとばかりにムンクの叫びを披露し、文は○○の命がけの行動に敬意を表していた。
ちなみに、元凶のスキマはもういない。


「わ、わわわわわわ………」

「~~~~~ッ!!」


声にならない叫びをあげて神奈子は頬を朱に染めて、○○を引きはがそうと身をよじる。
けれども、○○は神奈子以上に抜き差しならぬ状態に追い込まれてしまった。


「あわわわわ!! ご、ごごごごごめんなさい~~っ!!」

「ちょ、やっ、揉む、なぁ…っ!!」

「わ、わぁぁっ!! 動かないでぇ! 落ち着いてくださいぃ!!」


なお、○○は神奈子の胸を揉んでいるわけでは無い。

ただ、神奈子にしがみ付いていないと、身をよじる神奈子によって吹っ飛ばされてしまうのだ。
必然的に、○○は転んでしまうことを恐れてより強くしがみ付いてしまう。
なんという悪循環だろうか。

そして、そんな光景を敏腕新聞記者が逃すはずもない。


「おお! これはいいシーンです! ってことで、パシャっと撮りましょう」


パシャパシャパシャパシャ!!!


「と、撮るなバカぁぁ!!」


羞恥に顔を朱に染めながら、神奈子は絶叫する。
けれど、いっぱいいっぱいなのはむしろ○○のほうだった。
文が写真を撮っていることすら気付く余裕がなく、既に耳まで真っ赤になって――――


ボンッ!!


「●×△■○×▽◆……」


意味のない呻き声を上げながら、頭から煙を吹いてしまった。
その時、神奈子の身体から振りもぎられて倒れてしまう。


「ちょ、ちょっと○○君 大丈夫!?」

「…………さすがに、怒る気すら失せるわね」


○○に神の怒りを下そうとした神奈子も、○○のあまりの純な性格に毒気を抜かれてしまう。


「やれやれ……」


しかし、それで神奈子の腹の虫がおさまるはずがない。
その怒りの矛先がどこに向かうかは――――


「いい写真も撮れましたし、いい記事が書けそうです! それではみなさん、また来しゅ――――はぐわ!」


――――語るだけ無駄というものであろう。


「さて、貴方には○○の分もあわせて神の裁きを受けてもらいましょうか」


逃走を図ろうとした文を、オンバシラで撃墜。
そして、再び文の首根っこを引っ掴む。
……文の命が風前の灯だったのは変わらないようだ。


「な、なんで私が!? ○○さんも暴力反対って言っていたじゃないですか!!」

「その○○の敵討ちよ……おとなしく、そこに直りなさい」

「ちょ、勝手に殺さないでください! ○○さん死んでないですよ!?
 や、ちょっとやめいやですそんな所にオンバシラはやめて許して――――
 アッ――――AAAAAAYYYYYAAAAAAAA――――!!」


合掌。






一刻後――――

神奈子はすべてを終わらせて、神社の廊下を歩いていた。


「あー、もう……あの子ったら……」


神奈子の手の中にはフィルムが握られていた。
その元の持ち主がどうなったかは、推して知るべし。


「あら?」


ふと、視線を感じ振り返ると――――幼い少年が、柱に半分身を隠しながら チラチラと神奈子を見つめていた。

それと同時に、神奈子は○○から不思議な感情を受け取っていた。
これまでに、○○から幾度となく受け取ってきた感情。
そして、その想いはとても強い。

けれども、神奈子にはその感情がわからない。
悪意でも恐怖でも無い。
信仰心とも少し違っていた。


「○○、どうかしたの?」

「あ……あの……その………」


相も変わらず言いたいことが言いだせない○○に、流石の神奈子もイライラが限界に達してしまった。


「だから何度も言ってるで――――」

「ご、ごめんなさい!!」


○○が叫んだ。
それも、今までにないくらい大きな声で。
その激しい剣幕に、神奈子も押し黙ってしまう。


「ご、ごめんなさいって?」

「さっき、その……神奈子様の……おっぱ……ぁぅぅ……」


どうやら、律儀にも神奈子に謝りに来たらしい。
呆れてしまうほどに礼儀正しい性格に、神奈子は呆れながら苦笑するしかなかった。


「安心なさい、怒っていないから」

「よ、よかった……それじゃ、し、失礼します……」

「待ちなさい」


神奈子が○○の肩を掴む。
彼の身体は、緊張で硬直してしまっていた。


「……私は、貴方を怖がらせているだけなのかしらね……」

「え?」

「正直に言ってくれてかまわないわ。私は恐い?」


真剣な表情で、神奈子は尋ねる。
○○は少し沈黙した後、何故か頬を赤く染めて神奈子に言う。


「そ、そんなこと…ないです……神奈子様は…か、かっこいいです……すごく」

「かっこいい?」

「は、はい……いつも落ち着いていて、大人っぽくて……」


○○のその言葉で、ようやく神奈子は理解した。


(なるほど、憧憬……ね)


○○が神奈子に向けていた感情は、自分もこうなりたいという強い想いだったのだ。
○○自身、内気であまり喋れない自分自身が、もどかしくてならなかったのだろう。


「○○、私のようになりたいのなら もっと自分を出してみなさい」

「……自分を……出す?」

「そう、言いたいことや伝えたいことは 勇気を持ってはっきり言うこと。
 大丈夫よ、貴方を頭ごなしに否定する者は此処にはいないわ。
 まずは、それから頑張ってみなさい」

「……は、はい!」

「……ふふ、いい返事ね」


けれども、神奈子はまだ気付かない。
また、○○自身も 幼すぎて気付いてはいなかった。

○○が神奈子に対して抱いていた感情の名は、確かに憧憬だった。
けれど、○○の目に、憧憬とは別の……温かい感情がこもりつつあったのだ。
そして、○○が神奈子の側にいる時に、身体を緊張させていたのは――――


つづく
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11スレ目>>901


神奈子様に告白された、どうしよう。


「いよっしゃあ!早苗に告白するぞ!」
「まあまあ待て待て」
「おやどうしたんですか神奈子様」
「早苗に告白なんてしちゃいかん」
「え、何故ですか恋愛は自由じゃないですか?」
「お前は私のオンバシラだ」


顔真っ赤にする訳でもなくえらく真剣な顔で言われたから硬直するしかなかった・・・orz
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11スレ目>>905


  か、神奈子様・・・
  今日こそ打ち明け様、僕の思いを・・・
  諏訪子様と早苗さんが外出したせいで境内を退屈そうにうろついてる神奈子様・・・
  もう僕が、そんな思いはさせません!

  神奈子様に向かって走っていったけど、
  眼が合った瞬間に恥ずかしくて僕は眼を閉じてしまった。
  そのまま、神奈子様に抱き着く。
  「○○・・・!?これはどういう事だ?」
  「ずっと前から貴女が好きでした!
   僕と・・・ずっと一緒に居て下さい!」
  「な・・・
   いや、分かった。他人の趣味に干渉するつもりは無い。
   毎日新しい奴を君の家まで送ってやろう」
  え・・・何か変だぞ?
  異変を感じた僕は抱き着いたまま目を開いた。
  「それは私のオンバシラだ」
  あるぇー?

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11スレ目>>913,942,952 12スレ目>>14


「だから・・・ねえちょっと、諏訪子、聞いてるの?」
いや聞いてない、
聞こえるが耳から入ったのを全部聞き流す。
「ちゃんと聞いてるよー・・・それで?」
最近神奈子は里から来た少年にご執心だった。
何でも今年は里で気象が酷く荒れたらしく、
…いや、まあ荒れた理由は知ってるよ?
山に住む厄神が回収を怠ったんだよね・・・今の神奈子と同じ様な理由で。
神奈子の怠惰により、現在守矢神社は深刻な信仰心不足に陥っている。
直接的な理由は神奈子にあるのだが、
とりあえずは件の少年について説明しておこう。

少年は里から生贄として捧げられた。
外からの来訪者らしく、神学に興味があるとやらで快く生贄を引き受けた様だ。
というか生贄って普通畜生を殺して捧げるんだけどね、
どっちかっていうと彼は人柱だね。
ともかく、彼から里の有様を聞いた私達は大急ぎで里へ行き、
奇跡を起こしたり土地開拓したりでなんとか里を元通りに戻した。
信仰心も大幅にアップ・・・する所だったんだけど、問題が一つできた。
生贄の少年、○○だ。
神に捧げられた身である以上神社から引き離す訳にはいけないし、
生贄を里に返すと色々と問題がある。
…供物のルール的な意味で誤解されて信仰が下がりかねないのよね。

そこで仕方がなく、彼を此処に置く事になった。
外から来た彼は早苗の良い話し相手になり、
神学を学ぶ彼は神奈子や私の話し相手にもなる。
家事は上手くこなせなかったが、猫の手程度にはなる。

…そう、彼を迎え入れるまでは良かった。
そして彼自身も変わる事は無い。
全ての元凶は彼にあるけど、
全ての原因は神奈子にあるのだ。



さて、神奈子が話す○○の良さだが、
まず神奈子は優しい事を挙げたがる。
ガンダム(って私には分からないが)の話を真剣に聞いてくれるし、
早苗に虐められた(原因が神奈子なのは置いといて)時に慰めてくれるし、
私や早苗と違って(御役目なので)ずっと神社に居てくれる所、らしい。
なんだか神奈子が不憫になってきたわ・・・

ところで私は何度か「もう告白したら?」と聞いてみた事がある。
すると体をくねらせながら頬を染めて。
「でも~、断られたら嫌だし~、プライドが許さないし~」
とか言ってきたのを覚えている。
外の世界の早苗と同年代の子があんな感じだったなぁ。
もう少し歳を弁えて欲しかった。
と言ったら帽子を盗んで投げられた、あーうー。

「神奈子様ー、ただいま帰りましたー」
「あらお帰り○○、図書館は楽しかった?」
「はい、それとあそこの庭で取れた人参を貰いましたよ」
「それは良かったわね、早苗に頼んで今夜の煮物に入れてもらいましょう?」
「はい!そーですね!」
バスケット一杯の人参を持って○○は台所へ駆けて行った。
同時に、神奈子の頬が緩む。
「くは~っ、あの反応堪らないわね、眼福眼福」
…その切り替わりの速さは同じ神として尊敬するよ全く。
こないだなんか○○に膝枕してね、
○○がそのまま寝付いたら凄い嬉しそうな顔でずっと○○の頭を撫でてたのよ・・・

なんか私、この神社が本気で心配になってきた・・・




「・・・成る程、最近はこんなのが流行ってるのね」
神奈子は、早苗が外から持ってきた雑誌を読んでいた。
今日は○○が居ない。
つまりあれなのだ、神奈子が変貌するのだ。
正直あのデレデレっぷりを見ていると神社が心配になってくる。
ちなみに頼みの綱だった早苗は、
…コタツに引きこもって凄まじい勢いで携帯電話を使ってたので諦めた。
○○はというとまた図書館に行っている。
従順な子だからあそこの魔女や小悪魔に唾付けられないか心配ね・・・
いやいや、私は別に良いんだけど・・・あらゆる意味で暴走した神奈子に巻き込まれたくない。

「ただいま帰りましたー」
「お帰りー」
私が挨拶する瞬間に神奈子は雑誌をコタツの中に放り込み、
早苗も手品の様な一瞬の動きで携帯電話を隠す。
「おやつの時間に頂いたお菓子なんですけど、
皆の分もってお土産に包んでくれたんですよー」
今日バスケットに入っていたのは外で食べたバウンドケーキとかいう物だった。
「おぉー、凄いスイーツですね」
え、何語。
それは何語なんだ早苗。
それはさておき、
「いつもありがとね○○、
 こっちは材料揃えるのが大変だからね」
「和スイーツなら作れますけどねー」
だからスイーツって何語。
「ほら、神奈子様もいかがですか?」
さっきから立ち上がらない神奈子の側に○○が近づき、
目の前にケーキを差し出した。

「ふざけるなよ」
あろう事か、
神奈子はそのケーキを手で払いのけた。
「なんで私がお前如きの施しを受けなきゃならいんだ」
その場の全員が、驚愕した。
神奈子の顔は、侮蔑と憎悪に溢れていた。

「・・・ごめんなさい」
○○は頭を下げ、
部屋から去って行った。


そしてあろう事か一瞬の内に豹変した神奈子は、
「どうだったかしら!私のツンデレは!」
…駄目だこの神、早くなんとかしないと・・・っ!
「神奈子様、それデレが無いです」
「あぁっ!」
何普通にツッコミ入れてんだうちの巫女は。
「はぁ・・・そんな事より、
 ○○、きっと悲しんでると思うよ。
 神奈子に嫌われたと思ってるんじゃない?」
「う・・・」
「それに原因は神奈子様ですから慰めには行けませんねー」
またカタカタと携帯電話を打ち続ける早苗。
「素直に謝ってきなさいよ、
 ○○は優しいんだから、ね?」
「う・・・ぅぇぇぇん!諏訪子~!」
はいはい、悪かったって自覚はあるのね。
「怖いよ~!○○に嫌われたら嫌だよ~!」
一瞬カシャと言う音がしたのだがブン屋は見つからなかった。
早苗がニヨニヨ笑ってたがいい加減神奈子に毒されたのだろうか。



え、神奈子?
仲直りしたよ、もう。
え、何?
仲直りに当たって神奈子がうっかり告白して仲が進展したんじゃないのか?
嫌だなーw
神奈子にそんな度胸ある訳無いじゃないw

謝って、元気付けて、それでおしまい。
まあでも、あれだけ泣いてたのに○○の前では平常でいれたってだけでも・・・
いや、それじゃ駄目だったな・・・素直に告白しないと。


ともあれ、神奈子はあの一件以来素直になっていた。
○○がお土産を持って帰ったら喜んで頭を撫でる。
…まあそれは○○が恥ずしがる顔を見たいだけなんだろうけど。


ん、最近あった出来事?そうだねー・・・
この間、図書館が休みでね。
○○が珍しく日中神社に居たのよ。
ずっとコタツに入ってたんだけど、
んー・・・やっぱり暖かいから?座ったまま寝てた訳。
それでその隣でみかん食べてたんだけど。
「諏訪子ー、はさ・・・」
絶句だったね。
視線は○○に注がれみるみる内に表情が変わっていったよ。
「はさみなら台所に」「黙れ蛙」
いや、別に怒られても何とも無いよ、うん。
決して悲しい訳なんかなくてあくびしたから涙が出てるだけなんだよ?
神奈子は口の端を痙攣させながらゆっくりと○○に近づいていった。
そんなに嬉しいか、その顔怖いんだけど。
そしてそのまま・・・眠ってる○○を後ろから抱きしめた。

あ、待って。
恋愛ドラマみたいなシーンを想像した?
あのね、残念だけどこのスレ読み返した後鏡見てみなよ。
ニヨニヨした顔ってなんか変でしょ?
あの顔のまま○○に抱き着いて背中にほお擦りしてるんだよ、神奈子。
それも半角カタカナでハァハァ言いながら。
カリスマが0ってていうかもうカリスマの概念ぶっ飛ばしたって程に・・・
あれ、なんか説明したら涙が出て来たよ?
いやいや、眠いからあくびだよね・・・?

いいもん・・・早苗が居るからいいもん・・・
寂しいなあ・・・

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11スレ目>>984


「お前が神なら俺は関白だ」

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12スレ目>>61


「・・・寒っ!」
吐く息が白い。
先日の白黒の参拝・・・じゃなくて襲撃により、
唯一の暖房器具であったコタツが破損。
さらに弾幕ついで神奈子様が発射したオンバシラがとどめを刺し、
結果、何とかして寒い冬を暖房無しで越さないといけないようになった。
そして、奇跡的に修理出来る人を見つけた早苗さんがコタツの残骸を持って行ってる間、
境内の掃除等雑務を僕がこなす事になったのだ。
「よう少年、頑張って掃除してるかい?」
ニヨニヨしながら神奈子様が出て来た。
全く・・・コタツ壊した本人なんだからもう少し反省して欲しいんだが。
「どうしたんですか神奈子様、外は寒いでしょうに」
「いやまあ、○○が寒い思いをしてるんじゃないかと思ってね」
「はぁ、まあそりゃあ現代っ子の自分にゃあ堪えますね」
「だから暖めてあげようと思って」
「お~、是非お願いしますよ」
「うんうん、素直で宜しい。
 んじゃ、目を閉じて手を上げて・・・」
…こう、かな?

「うわ・・・!神奈子様何やってるんですか!」
「後ろから抱き着いてるんだけど?」
「なんでいきなり!」
「暖めてあげてるんじゃない?」
「で、でもこんな」「ん~?」
「ひ・・・顎で肩をぐりぐりしないで下さい!」
「ほれほれ、此処が弱いのか~?」
「うあ・・・力が・・・」
「顔が真っ赤じゃないか。
 暖まってきたんだろう?」
相変わらずニヨニヨと・・・
「あら?何かしらその顔は~」ぐりぐり
「んあ・・・止めて下さい・・・」
無理ぽ・・・腰が・・・


その後、背丈的に危ないポジションから諏訪子様が抱き着いてきて、
さらに帰って来た早苗さんにも抱き着かれたのは別の話・・・

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12スレ目>>509


早苗のいわく、
外界では自分の胸で型取りをしたチョコレートをバレンタインにプレゼントする輩がいるらしい。
いやまあ漫画やドラマと言う事は分かっているがあんな熱い物を体に垂らしてまで早苗や諏訪子は恋人にプレゼントをした訳だ。
…まあ、渡された側が一瞬引いていたのには目をつむろう。
とにかく、私も真似して体の一部を使ってチョコを型取りしてみたんだ。
だ、だって男はあんなのも好きなんだろう?
君は不衛生と言うかもしれんが、
私の愛情が詰まってるんだ、是非食べて欲しい。
私の・・・オンバシラチョコレート。


感想:でけえ

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13スレ目>>126 うpろだ949


「で、どうだい、早苗は?」
「またその話か。その気は無いと言っているだろう」
「あんたが早苗と一緒になってくれると、こっちは先の心配しなくて済むんだけどねぇ」
 俺は今、守矢神社に来ている。
 ここで売っている絵馬や破魔矢は、俺が作って納めているのだ。
 もちろん、その後しっかり祈祷を行ってから売っているが。
「さすがに歳が違いすぎて、妹にしか思えないんでな」
「いいじゃないか、成長する様も楽しめばお得だよ?」
「あんた本当に神様か?」
 ここに来るたびに、ここの神様…八坂神奈子は俺と早苗ちゃんをくっつけたがる。
「俺にこだわる必要はないだろう。
 里には、歳も近くて早苗ちゃんに気のある男が腐るほどいるぞ」
「そのへんは見てみたさ。
 でもね、男として一番見込みがあるのはあんただったからね」
「それ自体は光栄だけどな、こっちにはその気が無いんだ。
 他を当たってくれ。」
「つれないねぇ。
 まあ、仕方ない、とりあえず一杯やろうか」
「おう」

 納品の度に、ここで酒を飲んでは早苗ちゃんと結婚しろ、としつこく迫る。
 軽く一回りも下の、まだ幼さの残る子と一緒になれと。
「ほら早苗、○○にお酌しなよ」
「おい、風祝は召使じゃないだろ」
「おやおや、嫁が旦那に酌をするのは当然じゃないか?」
「そ、そんな、嫁だなんて…」
「神奈子~あんまり早苗困らしちゃ駄目だよ?」
「そうそう、一回り以上上のおじさんとくっつけられて喜ぶ女なんかいないぞ?」
「自分でおじさんとか言うんじゃないよ…」

「ふぅ、ちょっと酔い覚ましに散歩してきますね」
「私もいってくるね~」
 早苗ちゃんと諏訪子は、夜風で目を覚ましに出て行った。
 酒に弱い早苗ちゃんと、それを見守る諏訪子、毎度の光景だ。
「ああ、気をつけろよ」

「なあ、前から聞きたかったんだが」
「なんだい、改まって」
「俺のどこに見所がある?
 少なくとも、気に入られるようなことをした覚えがないんだが」
「あんたの持ってくる絵馬やらなにやら見れば、すぐに分かるさ。
 木目にも気をつけて、丁寧に磨かれた絵馬。
 白くて綺麗で、乱れの無い破魔矢の羽。
 これだけ気を遣っても、誰もあんたを誉めやしない。
 でも、あんたは手にする者を思って作りつづけてくれている。
 そんな生真面目で優しいところが、あんたの魅力さ」
「下手な物を納めたら、あんたの名前に傷が付くだろうに」
「はは、違いないね」
「惚れた女の名を汚すほど、俺は馬鹿じゃないからな」
「今…何て」
「あ…」
 酒の魔力を甘く見てはいけない。
 酒は、心の扉をいともたやすく開く。
 それと同時に、何が飛び出すかは人それぞれだが。
「普段のカリスマにあふれたお前が好きだ。
 時折見せる、物憂げな顔をしたお前が好きだ。
 こうして飲んでいるときの、大人の色気のあるお前が好きだ。
 俺はお前のことを思いながら、毎日縁起物を作っているんだ」
 俺の場合は、信じられないほどの度胸と愛の告白が飛び出した。
「あ、あんたねぇ、神様に向かってよくもまぁ…」
「好きだ、神奈子。俺と一緒になってくれ」
「なっ何言い出すんだい!神様と人間が一緒になるなんて出来るわけ…ないわけじゃないけど!」
「俺じゃ嫌か?」
「…その言い方は卑怯じゃないか…嫌なはずが無いさ…でも…」
「早苗ちゃんには俺から話す。さんざん引っかき回した詫びをしなきゃな」
「本気、なんだね?」
「ああ、本気だ。俺の嫁になってくれ、神奈子」
「…はい」
「照れると可愛いな、神奈子は」
「ば、馬鹿…」

 すぱぁぁぁぁぁぁぁぁん!
 ものすごい勢いで襖が開いた。
「「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁばんざぁぁぁぁぁぁぁぁい!」」
「な、何だおまえら!いつからそこにいた!」
「最初からですよ」「ね~」
「え、あ、あんたたちはぁ~!」
「照れると可愛いな、神奈子は~」
「ちょ、ちょっとやめておくれよ!」
「お二人の気持ちは分かってたんですけど、なかなか進展しなくて困ってたんですよ?
 毎回毎回、気を回して二人にしても、ちっとも進まないんですから!」
「毎回だと!?っていうかいつからバレてた!?」
「ずいぶん前。そりゃ~毎度毎度神奈子ばっかり見てれば、チルノでも分かるよ?」
「神奈子様は神奈子様で、○○さんのことを話すときは『乙女』の顔になってるし…」
「そ、そんな顔してたのかい!?」
「ま、仲良くしなさいお二人さん♪」
「参ったね、これは…」
「でも、嫌な気分じゃないよ、私は…
 ありがとう、二人とも」




ちょっとした後日談
「ああ、早苗の旦那の話はどうしようかねぇ…」
「神奈子様、それなんですけど…」
「なんだい?好きな男が出来たとか?」
「いえ!そこまではいってませんけど…出来れば、年下の男の子がいいなー、と」
「と、年下!?」
「はい、やっぱり、年上よりも年下の可愛い男の子の方がいいですもの!
 できれば半ズボンが似合う、目のくりっとした子がいいなー。
 神奈子様、誰か知りません?」
 神奈子は幻想郷に来て、本当に正解だと思った。
(外だったら犯罪だよ、早苗…)

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13スレ目>>266


住み込みで働いている守矢神社の庭を掃き終え、縁側でひなたぼっこしていたはずが、
いつのまにかそのまま眠ってしまったらしい。

まだまぶたも開かないぼんやりした意識でそう思い出す。

少しぞくりとした外気を感じ、如何これは日が暮れてしまったかと考えた所で
嗅ぎなれた煙の香りと、何か温かいものが頭の下にあるのを感じ取る。


「…おや、ようやくお目覚めかい?」

見上げるとそこには夕焼けに照らされながら、
音も無く煙を吐いている神奈子様が居た。
っていうか、膝枕されていた。
キセルを持っていない右手は俺の頬に置かれている。

「…すみません、今退きます。よっ」
身を捻り腹筋の要領で起き上がる。

「待ちなよ」

ぐきり。
動く瞬間を抑え込まれおかしくなる俺の首。

「――っ!!うぐがが……」

「何やってんだい………ふぅ」
悶える俺を膝元に、一服キセルをふかす。

「動かないで、そっと足元をみてみな?」

言われて自分の足先を見ると、
「おわ……早苗さんに、諏訪子様」
丸めた座布団を枕に、二人が俺同様寝転がっていた。
なるほどこれは動けない。
迂闊に勢いよく起き上がればケロちゃ・・・もとい諏訪子様を踏みかねなかった。
いくら蛙キャラとはいえそれは無いだろう。


「できればあんたにも座布団をやりたかったんだよ?でもさ、ほら」
しょうがないよなぁ、という笑顔で神奈子様が視線を向ける。

二人がそれぞれ二枚ずつ座布団を枕にしている。
そしてここには、家族用の座布団は4枚しかなかった。


「ははは、なるほど」
「ったく、〇〇に一枚持ってくるとかしないで自分らも一緒に寝ちまうってんだから」
「かえって二人らしいですよ」
「はん、そいつはまったく同意だね」


そいじゃそろそろ二人を起こすか、そう言うと神奈子様は俺の頬から手を離した。


「ですね、っと。…膝枕、温かかったです。ありがとう神奈子様」
「いやいや、婆様の古枕で悪かったねぇ、
 安心しな、次こそはちゃあんと座布団置いてやるよ」
「そんな、これ以上無いってくらい素敵な枕でしたよ。
 よければまたお願いしたいくらいです」
「勘弁しとくれ、足が痺れてたまんないったら。
 どうしてもあたしにして欲しいってんなら、そうさね次はオンバシラでも」
「縁側壊す気ですか」
「だったらオンバシラ五本で」
「壊す気まんまんですね」
「しょうがないなぁ、特別サービスオンバシラ100本だ!持ってけ泥棒!」
「ジェンガみたいになっちゃうでしょうが!!!駄目です!!!」

あああ、やっぱりボケとツッコミに。
少しくらい神奈子様に意識してほしくて頑張るも、だいたいこんな感じになるのが常だ。
偶然にも夕暮れとかシチュエーションばっちりだってーのに、俺のへたれ!


「あーもうっ。いいからもう起こしましょう、二人を」
「っはっは、いい加減日も暮れちゃったし、そうするかね」
中身を受け皿に出してキセルを置くと、よっこいせと立ち上がる。
掛け声はアレだが、スラリと立ち上がる動作の優雅さについ見惚れてしまった。

「ふふふ、どうやって起こしてやろうかね」
顎に手をあてにやにやする神奈子様、すげぇ悪そう。でもその笑顔も素敵です。

「せっかくですから、俺はむき出しの脇に落ち葉を乗せてみます」
「そいじゃああたしは諏訪子の帽子の目に乗せようか」
「むー、起きませんね」
「早苗の髪を紫色にして、額に『W』って書いてみるとか?」
「真っ白い服来てダイブしたら諏訪子様中に入るんじゃないでしょうか」
「それだと洗濯のたびにあーうーうるさそうだから却下」
「早苗さんを塗ると博麗も黄色にしないといけないのでやめましょう」
「ここはひとつ、オーソドックスに鼻でもつまんでやれ」
「王道ですね。じゃあいきますよ、せーのっ!」



その日の夕飯、ぷんすか不機嫌なケロちゃんは
俺や神奈子様の箸につままれたおかずに食らいつくという暴挙に出ました。

文句を言おうにも帽子の目はすっげぇ睨んでるしケロちゃんは可愛いしでどうにもなりませんでした。
神奈子様もまんざらでもなさそうだたので、おっけーね。まる。
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最終更新:2011年02月26日 22:03