ナズーリン2
新ろだ2-057
ここは最近出来たお寺、命蓮寺。
なんでも人のいい僧侶(美人)が妖怪と人間の平等を説いているとか。
が、妖怪の味方かもしれない、という事でいまいち人が寄りつかない。
自分はこの僧侶(美人)にいたく興味があるので、入ってみたい、と父に相談したところ
「うわさではあそこ妖怪がいるんだとよ…お前、下手したら死ぬぞ…?」
と真顔で言われた。この際妖怪でも美人なら構わない。と返すと、
「お前はその助平直せばもう少しモテるよ…ハァ…もう勝手にしろ…」
許可がでたので、僧侶(美人)がいるのであろう命蓮寺の門をくぐってみた。
何故こうなったのだろう…
自分は僧侶(美人)を見にきただけなのだが…
ナズーリン「言い残すことはあるかな?」
○○「言い残してない事の方が少ない」
目の前のネズミの耳をつけた女の子(美人)は、こちらにやたら鋭そうな杖を突きつけている。
ナズーリン「へぇ…言い訳でもするのかい?聞いてあげるから言ってみなよ。」
○○「自分は僧侶に会いに来ただけだ。怪しいものではない。」
ナズーリン「最近の参拝者は丑三つ時に来るものなのかい?賊の類にしか見えないね。」
○○「どうすれば信じてもらえる?」
ナズーリン「一般的な時間に参拝に来ればいいじゃないか。今は信用できないね。」
○○「早朝から夜中まで仕事で忙しい。家があまり裕福ではないんだ。」
ナズーリン「…その薄汚れた服から見て真実のようだね…悪い事を聞いた。すまない。…だが、ここは通せない。」
○○「そうか…こちらこそすまなかった。こんな夜遅くに来て、君のような美人に迷惑をかけてしまった。」
ナズーリン「何を言ってるんだ君は。こんな妖怪ネズミを捕まえて。捕って食うぞ。」
○○「捕って食う…か…性的な意味なら歓迎する。」
ナズーリン「性的…って…真面目な顔して何を言ってるんだ君は。頭が沸いてるんじゃないのかい?」
○○「真っ赤な顔も可愛いな。そういえば名前を聞いてなかった。
その美しい顔に妖怪ネズミではあまりに釣り合わない。名前を聞いても?」
ナズーリン「………ナズーリン……ナズーリンだ。」
○○「ナズーリン…よし、もう忘れない。」
ナズーリン「そういう君はなんて名前なんだい?変人。」
○○「…○○だ。ところでナズーリン。この寺の僧侶は本当に美人なのか?」
ナズーリン「僧侶…?ああ、聖か。まあ、体つきもいいし…綺麗だね。」
○○「博麗の巫女と比べるとどうだ?」
ナズーリン「まあ、聖の方が綺麗だよ。」
○○「ナズーリン。事情が変わった。なんとしてでも入る。」
ナズーリン「…なぁ、○○。知り合ったばかりの君にこんな事聞くのは失礼だが…君は助平か?」
○○「自分としてはそのつもりはないのだが、周りからはそう呼ばれている。」
ナズーリン「…教えてあげよう。君のような奴を助平というんだ。」
○○「しかし、助平とは女性に軽薄な態度で接する輩のことでは無いのか?」
ナズーリン「ひょっとして君は自分が軽薄な態度をとってないとでも思ってるのかい?」
ナズーリンは顔に青筋を浮かばせながら聞いてくる。
○○「落ち着けナズーリン。折角の綺麗な顔がもったいない。
女性に対して軽薄な態度を取った事は一度も無いと自負している。
女性に冷たく接した事は無い。特に美人は全身全霊をかけて愛するつもりだ。」
ナズーリン「…真面目な顔をしてそれを言うんだね…それが助平だというんだが。どのみち今日は絶対にここを通さない。
大人しく帰るんだね。力の差が分からない訳ではないだろう?」
ナズーリンはそう言って杖を構えた。
○○「では、ナズーリンが通してくれるまで毎日通う。なにか土産に欲しい物はあるか?大したものはやれんが。」
ナズーリン「買収する気満々だね。まぁ、そうだな、○○は牛を飼っているかい?」
○○「飼っている。一匹だけならな。」
ナズーリン「では、牛乳も?」
○○「牛乳なら腐るほど余っている。里では牛乳は不人気だからな。」
ナズーリン「なら、その牛乳を袋に入れて日に晒しておくんだ。チーズが出来る。」
○○「血異頭?なんだ、その物騒なものは。」
ナズーリン「まぁ端的にいうなら牛乳を日光を浴びせて腐らせたものだよ。私の好物だ。」
○○「ナズーリンは腐った牛乳が好きなのか…変ってるんだな…」
ナズーリン「君にだけは言われたく無いな。とにかく、次からチーズを持ってくるんだ。わかったね?」
○○「ああ。ナズーリンがそれでいいのなら、持ってくる。では。」
言うと同時に○○は走って帰っていった。
ナズーリン「…○○か…中々面白い人間もいたものだ。妖怪に物怖じしないとは。ああ、助平だからか。
まぁ、明日の夜が少しだけ楽しみになった。精々チーズに期待しよう。」
ナズーリンは誰もいない門の前で微笑した。
新ろだ2-076(新ろだ2-057続き)
ここは妖怪の集まる寺、命蓮寺。
丑三つ時、その門の前にたたずむ一匹の妖怪ネズミがいた
ナズーリン「○○、おそいなぁ…」
そこに駆けてくる影がひとつ
はや賊の類か、と彼女は愛用のダウジングロットを構える
が、その影からかすかにする匂いに、彼女は警戒を解いた
○○「すまない、ナズーリン。血異頭を入手するのに手間がかかった。」
ナズーリン「気にしていないよ。それより、早くチーズを見せてくれないか。」
○○は少々ばつが悪そうに手に持った袋からチーズを取り出した
黄金色に所々青い線がついたそれに、ナズーリンはほぅ、と感嘆の声を漏らした
ナズーリン「○○、誰にこんなレアものを貰ったんだい?」
ナズーリン「女性へのプレゼントに人から貰ったものをあげるのは感心しないな。」
その言葉を聞いて○○は少し安心したような表情になった
○○「正真正銘自分の手作りだ。そうか、レアものか。それはよかった。」
ナズーリン「なぜ一介の人間の○○がブルーチーズを作れるんだよ。」
○○「ブルー血異頭?」
ナズーリン「その血異頭の部分はこだわりかなにかか?」
ナズーリン「まあいい、ブルーチーズというのはね、間に青カビの入ったチーズの事だよ。」
○○「うまいのか?」
ナズーリン「匂いこそキツイが、レアものだけあってなかなか美味しいよ。」
ナズーリン「酒も寺から良い日本酒をこっそり持ってきたし、肴として楽しませてもらおう。」
○○「そうか…では自分も同伴させてもらおう。いいか?」
ナズーリンは不思議そうな顔をした
ナズーリン「別に構わないが…」
ナズーリン「○○は聖に会いに来たんじゃなかったのかい?」
ナズーリン「賊ではないんだし、好きなだけ通っていいんだよ?」
○○「こんな綺麗な女性が丑三つ時に手酌とほあまりにも縁起が悪い。同伴する。」
ナズーリンはがっくりと肩を落とした
ナズーリン「そういえば○○は助平だったな…イメージがあわないから忘れてた…」
ナズーリン「それじゃあ、別の場所で飲もう。ここは都合が悪い。」
ナズーリン「あんなことを言ったんだ。勿論お酌してくれるんだろう?」
~~助平&少女移動中~~
○○「ここは…」
ナズーリン「ここは私の隠し部屋だよ。倉庫の屋根裏だ。」
○○「ネズミらしい所に住んでるんだな…そんなところも可愛い。」
ナズーリン「なんでもかんでも可愛いというのは感心しないね。あまり嬉しくないよ。」
○○「そうか…すまない。あまりにもナズーリンが可愛いからつい言ってしまった。」
ナズーリン「今のは23点かな。助平なのに口説くのは下手なんだね。可哀想に。」
ナズーリンは○○に憐れみの目を向けた
○○「よく…言われる…」
○○は今にも世界が終りそうな様子で体操座りした
ナズーリン「それはそうと、早くお酌してくれたまえ。こっちはヨダレがとまらないんだ。」
○○「了解した。」
ちょろちょろと、ナズーリンの盃に酒が注がれていく
ナズーリンはそれをくいっと傾け、盃の半分を飲んだ
ピリッとした辛さが喉を通って行く感覚が心地よい
一通り酒の味を堪能した後、ナズーリンは○○の持ってきたブルーチーズをつまみ、口に入れた
ジワリとした甘みとミルクの匂いに、ナズーリンは思わず蕩けた顔になった
ナズーリン「これは…美味い。」
○○「そうか、それはよかった。こちらも、ナズーリンの蕩けた顔を見れて幸運だ。」
ナズーリン「ム、私はさっきそんな顔をしていたかな。少々恥ずかしい。」
○○「では自分もいただこう。」
そう言ってブルーチーズに手を伸ばした○○の手を、ピタッとナズーリンが制止した。
ナズーリン「まぁ待て、○○。そのチーズを食べる前に聞きたい事がある。」
○○「なんだ、何を聞きたいんだ。」
○○はおあずけを食らってとても不機嫌そうな顔をした
ナズーリン「どうどう。それで、聞きたい事なんだが…○○、私に隠し事をしているね?」
○○の全身から滝のような汗が噴き出した
○○「nnななにをいってててるんだだ。ナズーリン程の美人に自分が隠し事があるはずが…
ナズーリン「○○は嘘を吐くのも下手だね…さぁ、正直に言うんだ。」
ナズーリン「チーズを渡す時のばつの悪そうな顔はなんだったのか。」
○○「そこまで調べがついているのか…わかった、話す。」
○○は正座して事の顛末を語りだした
○○「今回の血異頭なんだが、家にある腐って固まってる牛乳の一番古いのを持って来たんだ。」
○○「で、直前に中身を確認して…」
ナズーリン「カビが生えてるのを見て、まずい、もう腐りきってしまった、と思ったと。」
○○は無言で頷いた
ナズーリン「なんだ、そんな事か。期待して損したよ。」
ナズーリン「私はてっきり媚薬でも仕込んでるのかと思ったんだが。」
○○「クスリなど使わない。可愛いナズーリンにそんな事しない。」
ナズーリン「その姿勢はそこそこ好きだよ、○○。」
○○「そう…か。」
ナズーリン「○○、責められると弱いタイプだろう?」
○○「そ、そんな事は…」
ナズーリン「さ、止めて悪かったね。ねんがんのチーズだ。ほら」
○○「…むぅ」
○○は赤面しつつチーズを受け取ると、口に入れた。
噛むたびに、口の中をトロトロとしたほんのり甘いものが駆け巡る。
なるほど、ナズーリンが蕩けてしまうのも分かる。
○○「これは…美味いな…」
ナズーリン「だろう?さぁ、どんどん飲もう。夜は永いんだ。」
そう言ってナズーリンは○○の盃に酒を注いだ。
助平と少女の宴会は、まだまだ続く…
注…チーズの作り方はこんなに単純じゃありません。ましてやブルーとか…
新ろだ2-255
「…………」
「…………」
居間にて、ちゃぶ台を挟んでネズミの少女と向き合っている。
チーズなどという物は無く、茶しか出せずに申し訳ないとは思っているが、彼女自身は特に気にした様子も無い。
彼女自身が家に訪ねてくるのは最早珍しい事でもなくないのだが。
「今日は、少し用があって来たんだ」
「ふむ」
どうやら、今回はちゃんとした用があるらしい。
茶を飲みながら、目で催促する。
「いや、その……」
すると、途端に目の前の少女の様子がおかしくなる。
どんな状態でも平静を装うとする彼女にしてみれば、余程言いにくい用事に違いなかった。
しかし、ここまで来てもらって"言わなくても良い"と言えるはずもなく、俺は黙って次の言葉を待つしかなかった。
「手伝って欲しい」
だが、出てきた次の言葉はアバウトすぎた。
「……何を」
「手伝って欲しいんだ」
「だから何を」
「一緒に探して欲しいんだ」
もう少し詳細を知りたいのだが、どうも要領を得ない。
本当に彼女にしてみれば珍しい落ち着かなさぶりである。
まともに話を聞くには落ち着かせる必要がありそうだ。
「とりあえず落ち着くんだナズーリン」
「わ、私は落ち着いているよ」
「とりあえず落ち着くんだナズナズ」
「な、なずなずなずなず」
落ち着かせるつもりがどうやら逆効果だったようだ。
いかん、このナズーリンは可愛い。
しかし、これ以上やると正気に戻った彼女から、ペンデュラムで殴られそうなので抑えておく。
とりあえず、茶を飲ませる事で落ち着きを取り戻させる。
「ふぅ……」
「落ち着いたか、ナズナズ」
「その呼び方はやめてもらっていいかい?」
どうやら完全に冷静さを取り戻したようだ。
少し程度しか、残念なんて思ってない。
「それで、何を一緒に探して欲しいんだ?」
「それ、なんだけどね。言葉では説明しにくいんだ」
いやぁ、ナズーリンさん。それじゃちょっと厳しくないですかね。
「まず、それを説明する言葉を探して来た方が良いと思うんだが」
「君はそれで巧い事を言ったつもりなんだね」
「いや、結構本気で言ってるんだが」
説明してもらわなくちゃ何を探せばいいのか分からない。
雲を掴めと言っているようなものだ。
「うぅ……」
ナズーリンがしょげた。犬ではなくネズミなのだが、何故か耳が垂れている気がする。
そんなに難しいのだろうか。何となく手伝ってやりたい気持ちはあるのだが。
「まさか感覚的な物だったりしないよな?」
「!! そう! それだよ!」
俺が答えるとナズーリンが飛び上がらんばかりの勢いで、こちらに身を乗り出してきた。
ドンピシャですか。
しかし、喜んでいるところ悪いのだが。
「じゃあ無理だよ」
再びナズーリンはしょげた。先ほどよりもしょげ具合が五割り増しくらいである。
何だかとてつもない罪悪感だった。俺間違った事は言っていないはずなんだけどな。
「というか、また難しいものを探してるな……」
「だ、だから……私は君と一緒に探したいんだ」
なんでまた俺なんだろうか。
むしろその感覚的なものなら、ぬえ辺りが適任じゃないか?
そんな事を考えていると、彼女は突然立ち上がり。
「~~~~!」
真っ赤な顔で涙目になりながらペンデュラムを振り被っている――ってちょ!
「ちょ、ちょちょい、ちょいちょい!」
「君は、君って奴は!! どうしてここまで言っても気付いてくれないんだ! まるで私がばっかみたいじゃないか!」
「おい、落ち着け、落ち着くんだナズナズ!」
「なずなずなずなず!」
そんな事を口走りながらペンデュラムが飛んできた俺目掛けて飛んできたのだった。
「つまりはデートしたいって事か。そう言ってくれれば喜んでオッケーだしたんだが」
ナズーリンと、人間の里を見て回る。
探し物ではなく、純粋にこの時間を楽しむ目的だ。
「君は実にバカだな。私にだって恥ずかしい事くらいあるんだ」
そう言いながらも、繋いだ手はぎゅっと力が込められる。
「そ、それに私はデートしたいんじゃないんだ。私は君と長く一緒にいられる時間を探したいんだ」
まだ見栄を張るか、この可愛い可愛い賢将は。
つまりは一緒にいたいって事じゃないか。
それとも恥ずかしいだけか。
ならば――
「そんなの」
繋いだ手を離すと、あっ、と心底残念そうな声が聞こえる。
気にせず、すぐさま小柄な身体を横にして抱き上げる。
「長く一緒にいるのが難しいなら、短くても濃厚な時間を過ごせば良いだろ?」
世間一般的で言う、お姫様だっこという奴である。
ある意味、濃厚である。
「わ、わわ、わーわー!」
恥ずかしいならば、いっそ最大限に恥ずかしがらせてやれば良い。
予想通り叫ぶナズーリン。それでも俺の為なのか、はたまた極限にまで緊張してしまっているせいか、身体は大人しい。
叫んだせいで里の人から視線を浴び、更に羞恥心が極限値を突破した彼女は、俺の胸に顔を埋める。
俺自身、かなり恥ずかしかったのだが、そんな彼女を見ると恥ずかしさは吹き飛んでしまっていた。
そうして、胸に顔を埋めたナズーリンを抱えて、俺は里を見て回ったのだった。
新ろだ2-257
魔理沙とこいこいに興じている○○がふと悪寒を感じ振り返る。
いや、そんな! あれは何だ! ああ! 窓に! 窓に!
ふんぐるい むぐるなふ なずぅりん いあ! いあ!
「と、まぁクト○ルーごっこはこれくらいにして何の用だい? ナズーリン?」
「ふむ、外世界のコズミックホラーの神のように○○を呪っていたんだ」
「え、ほんとにそんなことしてたのか! 俺何か恨まれることしたか!?」
「ほぉ? 身に覚えが何もないと言うのかい? まぁいいや、こんなところで立ち話もなんだから入らせてもらうよ。よっこいしょ」
某魚介神のように窓に張り付いていたナズーリンは縁に手をかけて○○の部屋の中に入ってきた。
「うぉ!? 何だ!? ナズーリンが窓から入ってきたぞ!」
「ああ、気にしないでくれ。玄関まで回り込むのが面倒だったからここからお邪魔させてもらうだけだ」
そうして部屋に入ってきたナズーリンは険しい顔で○○に新聞を突き付けた。
「これ、あの鴉天狗が発行した文々。新聞だ。そこの一面を読んでくれ」
「ん、なになに……恋人にしたい男性ランキングだ……と……」
「そうだ、それで問題はな……」
その横で魔理沙が勢いよく手を挙げる。
「あー、私それ○○に一票入れたぜ」
「という婦女子が大勢いると言うことだ。いったいどんな魔法を使ったんだね? 聖にでも教えてもらったか? それともそこの白黒か?
森の人形遣いと紅魔館のひきこもりも考えに入れるべきか……」
ぶつぶつとつぶやき始めるナズーリンに対し、やれやれという感じで○○は口を開く。
「おいおい、俺にはそんな才能ないぞ。なぁ、魔理沙」
「ああ、こいつ物分かりはいいんだが、いかんせん魔法を使う力が足りないんだ。結局知識を得ても何一つ現象は起こすことはできないってことになってしまうな」
それでもナズーリンは疑わしい目を向け続ける。
「ほぉ? では薬の類かな? 惚れ薬か? 催淫剤か? あの竹林の薬師にどれだけ強力なものを作ってもらったんだ?」
「んなことするかっ! 俺にはナズーリンっていう彼女がいるんだっ!!」
「――っ!!」
「ふぇー、相変わらずお熱い奴らだぜ」
○○の大声にナズーリンはびくっと身体を震わせて驚き、魔理沙はおどけるようにして手で顔をぱたぱたと仰ぐ。
「……う、すまない。少し頭に血が昇ってしまっていたようだ。しかし、なぜこのような結果に……」
「でも気にすることないと思うぜ? だってナズーリンめちゃくちゃ愛されてるじゃないか」
「そ、それでも○○が人気なのはいただけない。彼氏がモテるということは彼女として鼻が高いが、一位となると危険すぎる」
「つまり、私だけの○○じゃなきゃ嫌ということか?」
「有り体に言えばそういうことだ」
ズパッと切り込むナズーリン。
その姿を見て魔理沙は頬をポリポリとかく。少し呆れているようだ。
「あー、たぶんそれ普段のお前らの行動の結果だと思うぜ?」
魔理沙の発言に意味が理解できない二人は顔を見合わせ、首をかしげる。
「ん、そうだな。つまりだ、普段のナズーリンに対する○○の行動が理想の彼氏過ぎてるんだよ。だからこそみんな○○に票を入れているわけだ。うらやましいからな。
それにお前らのイチャつきっぷりを見て横取りしてやろうなんて思ってるやつなんていないぞ」
「そ、そうか……○○はやさしい、頼もしいと常々思っていたがそれは私の惚れた弱みだと思っていたのだが、皆そう感じ取っていたのか。
しかしそれでも納得出来かねるものがあるのも確かで……」
「……じゃあこれからナズーリンとイチャつくの少し控えようか」
「何を言っているんだ! 君はバカか!? そんなこと許されるわけないだろう!」
「じゃあ、どうするんだよ。何か方法でもあるっていうのかい?」
「簡単なことだ。もっとイチャつきまくって『やべぇ、こいつら付け入るスキがねぇ』と皆に思わせればいいのだ」
「そううまくいくものかねぇ……」
そんな中、魔理沙は文々。新聞を広げ、その箇所の記事を読む。
「あー、あいつらしい記事の書き方だなー。いつものノリの二割、いや三割増しで書きなぐってるな。こりゃナズーリンがトサカにくるのもうなずけるぜ」
そして新聞をたたむとナズーリンにチッチッチッと指を振った。
「いかん。いかんなぁ。ここは正妻としての余裕を見せつけるべきだぜ。そうすれば万事うまくいくはずだぜ」
「そうか。アドバイスありがとう魔理沙」
「いやいや、お安い御用だぜ。そのお礼として……」
魔理沙は視線を下に向ける。
「○○、この五光なかったことにしてくれ」
「ナメんな」
◆ ◆ ◆
「……で、やることが俺んちに泊まり込んでイチャつくことなのか」
「ん、最近は一緒に居る機会が取れなくてな。○○分を補給するのにもいいかなと思っていたわけだ」
その日二人はもう嫌というほどにイチャついていた。○○が出かけている間にナズーリンは家事、帰ってきたら一緒に食事の支度。
お風呂も一緒に入り、今は布団の上で○○の足の間に座り、胸板に寄りかかっているところだ。
「しかし、ただ普段通りにしているだけでいいのか? 何か対策でも考えていると思っていたんだが」
「いや、あのブン屋のことだから記事をほぼ八割位捏造で作り上げるだろうからこっちからある程度のエサをまいておけばそれに食いついて好き勝手やってくれるはずさ。
それよりも○○、今は私だけのことを考えてくれないか? ちょっと嫉妬してしまうぞ」
首を振り向かせてちょっと不機嫌そうな顔を見せるナズーリン。そんな彼女に○○はお詫びのキスをする。
「これで許してくれるかい?」
「うん、許そう。だがこれで終わらせる気かい?」
「まさか」
○○は小さな身体を抱き上げると体の位置を変えて布団の上に仰向けでナズーリンを寝かせる。
おしめを替える赤ん坊のような格好にされて少し顔が赤くなるナズーリン。淡い水色の寝間着が彼女にはよく似合っている。
「ふふ、やっぱりこういうことになってしまうな。期待してなかったとは言わないが」
「嫌ならやめるが?」
「ここでやめてもらっては私が困る。それにこのあとじゃないと私だけが知っている○○が見れないじゃないか」
ナズーリンの言っていることが分からず頭に疑問符を浮かべる○○。
その姿に彼女は苦笑する。
「ふふ、誰だって情事のときの顔なぞ繋がっている相手にしか分からぬものだろう? 普段おとなしいわりにこういうとき意外に独占欲が強いところとか。
そのくせ、激しくした後はちゃんと私を気遣ってくれる。しかしちょっと位乱暴にされる方が私は好きだぞ。……まぁこんなとこかな。あげればきりがなくなってしまう」
「…………」
「ん、顔つきが変わったね。雄の顔だ。その顔も私は好きだ」
「あー、じゃあナズーリン。俺の言いたいこと分かる?」
「もちろんだとも」
枕元の灯りを消して、寝間着の紐を解く。ぼんやりと輪郭しか分からぬ闇の中ナズーリンは○○の身体に四肢を絡める。
腰に足を絡める時、少し粘ついた水音がした。
だんだんと暗闇に目が慣れると、○○の目を潤んだ赤い瞳が見つめ、上気した顔でナズーリンは甘く囁く……
「さぁ、きて……」
わっふるわっふる
雨戸のスキマから朝日が差し込む。眩しさに目が覚めた○○は雨戸を閉めようと布団の中から出ようとするとぐいっと腕を引っ張られる。
「や」
「あの、『や』じゃなくて……。雨戸が閉められないんですが」
「や。だめ、行っちゃ。布団かぶれば問題ないよ。何なら私が抱きしめて眩しくないようするから」
そこまで言われては諦めるしかない。しかたなく布団に戻る○○。そんな彼にスリスリと甘えてくるナズーリン。もし彼女が猫だったなら喉を鳴らしているところだろう。
「……やっぱりさ、ナズーリンって結構甘えん坊だよね」
「おや、知らなかったのかい? 私は甘えるの大好きなのだが? ご主人があんな調子だからしっかりせざるを得なかっただけで」
「ああ、そうか……」
「私としては頼れる恋人ができてうれしい限りだよ、○○」
柔らかく微笑むナズーリンの頭を優しく撫でる○○。
「なぁ、○○。私が嫁に行くのと、○○が婿に来るの、どちらがいい?」
「ぶっ!?」
「おや、○○は考えていてくれなかったのか。悲しいな……することだけして捨てられてしまうのか私は……」
「い、いや! 急にそんなこと言われてびっくりしただけだ!」
「ふふっ、まぁ私も急な話だとは思うが、いやはや、うまくいったな。でもしっかりけじめはつけてほしいぞ。ちゃんと考えてくれよ。旦那様♪
それにしても○○の驚きようと言ったら、ふぁっ!?」
お返しとばかりに○○はナズーリンの身体の敏感なところをくにくにといじる。
「ふっふっふ。さっきのお返しだー」
「んっ、やっ……あ、こんなことしてもらえるなら、もっと驚かせる……あんっ」
ぴくぴくと身体を震わせるナズーリンに感極まったか、○○の布団の中に潜り込む。
もぞもぞと布団がうごめくたびナズーリンは可愛らしい声をあげた。
またしてもわっふるわっふる
抜けるような青空の下洗いたてのシーツと布団を干す二人の姿があった。
「……ちょっと張り切り過ぎたかな? シミになったらどうしよう」
「う、す、すまない。あまりにご無沙汰だったために歯止めが掛からなくて……」
「あー、気にするな。俺も悪いんだがら」
「よぉ、ご両人。どうだ愛の巣での一夜は?」
ぐふふと卑下た笑みを浮かべた魔理沙がやってきた。
「御覧のあり様だよ。笑いたければ笑え」
「ぐ、開き直られるとこれ以上ツッコミようがないぜ……」
「あ、そうだ。○○、これをあげよう」
○○は『白くべたつくなにか』を一個手に入れました。
「なんだこれ?」
「さっき家の中を覗くのにちょうどいい場所を見つけてな。そこに大量の血痕とそれが落ちていたのだ。
ふふふ、これはいいものを手に入れたな。これであのふざけた記事を書いたブン屋にひと泡ふかせられるぞ。さてどうしてくれようか……」
「……ほどほどにな、ナズーリン」
のちのある鴉天狗の手記にはこう書かれている。
――聞いてください! 私は踏み込んではいけない領域に足を踏み入れてしまったのです!
あれは萌神! 鼠の皮を被った甘ったるい何かだ!
ああ、もう駄目だ。また甘い囁きが聞こえる。おかしくなりそう。まるで砂糖漬けのようだ。でもこのカメラで撮ってやる! 神よ!
手記はここで終わる――
29スレ目>>897 + イチャ絵板 2010/07/17(それぞれ別人による)
897 :名前が無い程度の能力:2010/07/13(火) 23:17:30 ID:E206ITPI0
目が覚めたら俺の上にナズーリンがいた
何を言ってるかわからねーと思うが俺にも(ry
とにかく仰向けに寝てた俺の上半身と腰辺りに猫のように丸まってすっぽり収まるようにいた
混乱してたけどまず熱っ!と思うくらいの体の熱さに驚いてこれが子供体温なのかと本人に言ったらぶっ飛ばされそうな事を思いながら
次に凄く甘くていい匂いにおもわず目の前の髪の毛に顔を突っ込みくなったが起きてしまって
この至上の体験が無終わってしまいそうで必死に我慢して生殺しに耐えていたけど
ついに目を覚ましたみたいで
「ん……っ…んー……む?(俺の顔を見て寝ぼけた顔から真顔に戻る)………んむ」
真顔に戻ったときに何を言われるかとハラハラしたが
『まあいいか』といった感じに俺の胸板に顔を一度擦り付けて二度寝に入ったナズにもう辛抱たまらなくて抱きしめたら
「…もっと優しくしてくれ」
と顔を伏せたまま低めの声で窘められたので
手の力抜いてゆっくり頭を撫でていたら、「…っ♪」と少し喉を鳴らしたような声を出して耳がひくひく動いて幸せそうだった
もうこのまま死んでもいいな俺ってくらいの幸せ味わいながら頭をずっと撫でていたら
目が覚めた今朝の事
おかげで一日中ナズの事が頭を離れなくて幸せすぎてヤバい
元々好きだったけど、ちょっともうクラクラするくらいに好きになってしまった
本スレ>>897でナズが胸に縋り付いて「…もっと優しくしてくれ」と言ってくれると聞いて。
Megalith 2011/10/15
「まったく君は実にバカだな!」
はぁ。
「なんだその反応は。まるで何故自分がバカだと言われているかわからないような顔をしているな」
ずばりその通りです。いやぁナズーリンさすが賢い。
「褒めても手心を加える気は無いし、そんな心無い言葉ではむしろ相手の神経を逆撫ですることになるぞ? ……まぁいい、馬鹿でうつけで朴念仁で甲斐性なしな君に、特別に! ああ特別に! その理由を教えてやろうじゃないか!」
いや別に結構なんですが。
「何か言ったか?」
いえなんでも。
「さて、外を見てみろ」
晴れてますね。
「ああ晴れている、とても晴れている、イヤになるほど晴れている。そしてとても暖かい」
暖かいですね。
「で、君はそんな中一体何をしていたのかね」
……?
「そこで首を傾げるな、頭が痛くなる。数分前自分が何をしていたかも思い出せないのか君は」
そういえば寝てました。
「そうだな、寝てたな。どこで?」
ここで。
「そうだ。この命蓮寺に来て、わざわざ、自宅いうものがありながら、何もせず寝てたな」
だって家はこんなに広くないし、木の板張りじゃないからヒンヤリしてないんです。
「君はもし自宅が広くて木の板張りだったらここに来ないつもりなのか」
あー、うーん……どうだろう。
「……素直は美徳だが、せめてそこは『ナズーリンに会うためという価値がある』くらい言ってほしい」
ナズーリンに会うために――
「言われてから言っても逆効果だからな」
ところで、何の話でしたっけ。
「ん? ああ、話が脱線していたな。こういうところにだけは無駄に気がつくよね君も」
てへへ。
「褒めてない。……わけじゃないが、もっと大事なことを養ってほしいよ。大体君は――」
ナズーリン、また脱線してる。
「私としてはもう少しこういう会話を大事にしたいんだが……、いやなんでもない。で、なんの話だったかな」
お昼寝をしようって話。
「違うわ! こんな天気のいい日に外にも行かないのはおかしいって話だ! 期待した私が馬鹿みたいじゃないか!」
えっ。
「あっ」
…………。
「…………」
期待、してたんだ。
「……まぁなんというか、私だって女だ。晴れた日に惚れた男が来てくれたら期待くらいはするさ」
……ごめん。
「いや、いい。勝手に期待した私が馬鹿だっただけなんだからな」
怒ってる?
「べつに」
……えっと、今からでも出かけるとか。
「いい。寝ていたいんだろう? 存分に寝ればいいさ」
あう。
…………。
「…………」
…………。
「はぁ、まったく……」
ナ、ナズーリン?
「いい、そのまま寝ていろ。なんかドッと疲れたからな、私も寝る」
あ、うん。
「……君は馬鹿だ」
うん。
「甲斐性もないし、そのうえ朴念仁でもある」
うん。
「だから、君に期待するのは止めだ」
えっ。
「次からは私から誘うことにする。……なんだ? もしかして見限られたとでも思ったか?」
まぁ、嫌われてもおかしくないことをしたし……。
「ふふ、まったく君はバカだなぁ」
うん。
「今日は君に付き合おう。だから次は私に付き合いたまえよ?」
うん。
「ならよし、この話はこれで終わりだ」
ナズーリン。
「うん?」
今日はいい天気だね。
「ああ、まったくだ……」
情景描写は投げ捨てるもの
Megalith 2011/10/26
「まったく、君は本当にしょうがないな」
額にひんやりした感触が気持ちよく、うっすら目を開けると呆れた顔のナズーリンがそばにいた。
頭の中が少しぼんやりとしていて今がどういう状況なのか理解しにくい。ただ、どうやら俺は布団に寝かされていて額には濡れたタオルを置かれている、ということだけわかる。……このシチュエーション、もしかして、
思わず飛び起きようとするとタオルの上から額を優しく叩かれた。
「病人の癖に調子に乗った罰だよ。今日は大人しく私に看病されなさい」
「病人って、ええと何の事かな? ……ほら、この通り元気だぜ?」
「はいはい」
病人ではないことを示そうとして、布団から腕だけを出して力こぶを作って見せるとこぶをぺしぺしと叩かれた。特に鍛えているわけでもないからお世辞にも筋肉があるとは言えないけど、そもそも俺のような人間の腕力でもナズーリンに敵わない。見た目は小柄な少女そのものなだけに、その軽くあしらうような態度はちょっと男としてのプライドが……。
「それにしても君はちゃんと食べてるのか? その細腕、私とあまり変わらないじゃないか。……人間と妖怪では必要な栄養が違うのかもしれないね。後で聖と相談して食事の量と栄養を見直さないとダメか」
「え、あ、……はぁ」
「とにかく、筋力は別にしても不摂生が祟ったからこういう些細な病気で倒れてしまうんだ。ちゃんと自覚はしてるかい?」
「いやだからほら、俺は風邪なんて」
「はぁ……いいかい? 君は今朝いつも通り起きてきたけど風邪を引いていて熱があったから休めと聖に言われた。にも関わらず寺の掃除をしようとしたり、ご主人様や聖の仕事まで奪っていこうとした。君が風邪なんてひいてないとアピールした結果がこれなんだよ? みんながどれだけ心配したか、君はわかってるのかい?」
「ええと、その……すんません」
まったくもってその通りで言い返せない。みんなに心配をかけたくなかったから無理をしてみたわけだけど、やっぱり怒られてしまった。
叱られた子犬のように布団で顔を隠すとすぐさま剥がされて、聞いているのかと詰められた。
おかしなことを言われれば反論もできるのだけど、今回は完全に俺が悪いから何も言い返せない……。
ただひたすらしょんぼりしていると、優しい手つきで頭を撫でられた。
「君がここへ転がり込んできてしばらく経つけど、君がいてくれてみんな助かってる。もちろん、私も。最初は不真面目そうな奴だと思ったけど、やれやれ、第一印象はあてにならないね」
はは。何かを思い出しながら小さく笑っているナズーリンが何だかものすごく可愛く見えて、ふと目が合うと恥ずかしくなってそのままあさっての方へ逸らしてしまった。そういえば今二人っきりじゃないか、何だか意識するとドキドキしてきた。
俺は緊張を隠すように顔を背けたままぶっきらぼうに言葉を返した。
「どうしたんだよ、急に。今更褒めたって病んでる俺からは何も出ないぜ? ……でもまあ、居候だし、これくらいは当然だよ。衣食住の世話をしてもらっているのにそれ以上は甘えられない……あでっ!」
今度はわざわざタオルを剥がされて直接額を叩かれた。ちょっと痛い。
恥ずかしさを隠すために言ったつもりだったけど、思わず言ってはいけない事を口にしてしまったみたいだった。様子を窺うようにナズーリンを見ると、笑ってはいるけど確実に怒ってもいる。怒ったような笑顔……かな。
「居候という単語は禁句だと、約束しなかったかな?」
「え? いや、はは……まあ、その、拾ってもらった恩返しといいますか……ねえ?」
「ふうん、居候ということは、アレかい? もしかして君はひとつ屋根の下に住んでいる私たち、いや私に大なり小なりの壁を作っていると。そう言いたいのかい?」
「ああ、いや、そういうことじゃなくて……」
命蓮寺に、果てはナズーリンの気まぐれに拾ってもらわなければ、もしかしたら俺は妖怪に食われるか野たれ死にかの二択だったかもしれない。そういう意味では命の恩人という意味で言ったつもりだったのだけど……一旦出てしまった言葉は訂正しようがない。
どう謝ればいいのか。小さな小さな彼女は一度機嫌を損ねると直ってくれるまでが本当に骨が折れるからなぁ。
ちょっとだけ考えてやっぱり素直に謝るしかないと思った俺が口を開こうとすると、少しだけ顔を赤くしていたナズーリンが「ぽすっ」と胸の上に顔を落とした。
ここからだと表情や何を考えているのかがわからない。そういう不貞腐れた所も可愛いのだけど、今は機嫌を直してもらう方が先だ。
「ごめん。俺は家族、いやそれ以上と思ってるよ。みんなのこと好きだし、ナズーリンはその、それ以上というか……何というか」
「……熱に浮かれて大胆な事を言うね、君は。でも、私もおんなじだよ」
赤らんだ顔をこちらに向けて小さく笑うナズーリン。いろいろなものが重なって、その笑顔を見ていると頭がくらくらしてくる。こういう恥ずかしい台詞はこういう時くらいじゃないと言えそうにないな……。
無意識の内に彼女の頬を撫でようと手が伸び……違和感を覚えて額に触れる。
「ば……お前、お前も熱があるじゃないか!」
「ぇえ? 私は別に」
「何が別にだよ……もしかして、俺のがうつったんじゃないか? 妖怪は病気なんてしないってのは俺の勝手な思い込みだったか……」
「ふうん、そうなのか。じゃあ、」
ごそごそと隣に潜り込んでぴったりひっつくナズーリン。えっ、なにこの状況……どうなってるの。
「あー、どうやら私も風邪をこじらせてしまったみたいだぁ。君がみんなに心配かけた事は許してあげるから、今日一日私を看病すること。いいね?」
結構熱が出ているのか、いつもと違ってずいぶん間延びした声でそう言い放つと返事も待たずに小さく寝息を立てるナズーリン。
もちろん俺の体温は急上昇し、思いの外熱の下がりが早かったのは言うまでもない……。
命蓮寺は今日も平和でした。
最終更新:2011年12月04日 09:30