朱鷺子1



>>84


 真昼の森。
 森の中とはいえ、まさかこんな時間に妖怪に出くわすとは思ってなかった。
 目の前には赤やら白やら青やら派手な色をした妖怪。
 蛇に睨まれた蛙とはこのことだろう。
 どこぞの巫女ならともかく、一般人に過ぎない僕じゃあ、妖怪というだけで絶対的な恐怖だ。
 その妖怪がここにいる。そして明らかに僕を狙っている。
 意識せず後ずさってしまう。

 パキッ

 ただ、僕が枝を踏んだだけのことだった。
 でも、その音、その感触は僕の感情の堰を溢れさせ、僕は情けない声を上げながら逃げ出した。
 振り返りもと来た方向へ、出せる限りのスピードで走りだしたその時、目の前に突然弾が現れた。
 慌てて避けようとしてそのまま転ぶ。
 荷物はばら撒いてしまい、僕は死を覚悟した。

 迫り来る死の気配は何故か僕の横を通り過ぎ、散らばった荷物のほうに行った。
 本以外は何も入ってなかったはず。
 そう思ってそちらを見ると、散らばった本を目を輝かせながら見ているさっきの妖怪がいた。
 その表情は子供のようで、抱いていた恐怖が薄れていくのを感じた。

 興味を示したのは僕が今読んでいる本だった。
 それは困るので、手元にあった既に読み終わっている本を差し出した。
 妖怪は少し悩んでいたが、それを引ったくり、嬉しそうに読みながらどこかへ行ってしまった。
 不意に恐怖を思い出し、散らばった荷物をかき集めて、僕は一目散に逃げ出した。

 そんなことがあったのに、僕は時々本を持ってその場所を歩いている。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

…甘くもむず痒くもねぇよorz
火種になってくれれば嬉しいな、と


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年06月09日 14:03