ハーレム?5
11スレ目>>812
「新年会というものがしてみたいわ」
八雲紫のこの一言で、元旦という日もまた常と変わらぬ宴会が博麗神社で行われる事になった。
「結局の所、ただ宴会がしたいだけだよなぁ……」
ぼやきつつも作業は淡々とこなしていく○○。
「と言いつつも、貴方も準備に余念がないじゃない」
「仕事はいつも俺に回ってくるからでしょう、霊夢さん」
背後からかかる声。振り向かなくても誰か分かるようになったその声の主は
博麗 霊夢。
「まぁそうだけど。ほら、御節の準備もしなきゃいけないんだから」
「宴会で御節食べるんじゃないんですか? どれだけ食べるつもりなんですか」
呆れ返ると返事は誤魔化しだった。
「まぁ、いいじゃない。ほらほら、用意、急いで」
「誤魔化さないで。準備大変なのは俺なんですから」
「やる事に変わりは無いでしょー? じゃ、私は明日に備えて寝てくるわーふぁぁ……」
「お待ちになって霊夢さーん」
逃げられそうになる。慌てて袖を掴むがするりとかわされ、逃亡を許してしまう。
「んー……。何よ?」
「……やればいいんでしょう」
「よく分かってるじゃない。じゃ、頑張ってね」
三白眼で睨み、自身の寝室に引っ込む霊夢。
「……ずりぃなぁ」
ぼやく口も、無言の一文字に。
「明けましてお目出度う御座います」
ぺこり、と振袖姿で礼をするのは霊夢。
対する○○は、幻想郷に来たときの格好、詰まる所、ジーパンにセーターという不格好。
「御目出度う御座います。本年も昨年と変わらぬご指導ご鞭撻の程を、って何処の挨拶だよ」
「新年なんだから挨拶くらいちゃんとしなさいよ」
うだうだと長く、変になった挨拶を止めるとそれに賛同する声が一つ。
「そうよー○○」
「あ、紫さん。それと、藍さんと橙。おめでとう御座います。今年もよろしくお願いします」
「おめでとう。そうねぇ、今年と言わずに何時までもよろしくしてあげるわよ?」
「まぁ、寿命続くぐらいまでは」
「ここでは死んでも死後の世界がしっかりとあるわよ」
「あぁ、そうだった。まぁ、死んだ後の事は死んだ後に考えますので。当面の問題は寒くて宴会に誰も来ないっていう、ね」
「そんなに寒いかしら?」
「そりゃあ、貴女はスキマで一瞬ですし。こらこら、橙。何もわざわざ炬燵の中で丸くならなくていいから」
疑問に答えつつ丸くなった橙を炬燵から引っ張り出す。せめて顔だけでも出しとかないと脱水症状を起こしかねない。
「さ、寒いんだもん……」
「な、何!? 寒いのか橙ようし私が暖めてあげようさぁこっちへおいで!」
「藍さん藍さん。鼻血垂らしながらスッパの準備しないで下さい」
今にも、というか既に暴走している九尾の狐に突っ込みを入れると、あっさりと沈静化してくれた。
「はっ!? いかんいかん。いや、済まない○○」
「お気になさらずに。で、どうしましょうか、人数。無理にでも何人か拉致りましょうか」
拉致などと危険な言葉を発しながら宴会に関する提案をする○○。
「こらこら、物騒な発言しないの。でも、ま、悩んでても仕方ないから、ね!」
「え? 何笑顔で肩に手を置いてるの霊夢さん?」
○○の言葉通り、良い笑顔で、それはそれは良い笑顔で霊夢は○○の肩を掴む手に握力を加える。
「貴方が呼びに行けば何人かは釣れるでしょ? ―――――行け」
「命令ですか!? 俺だって外に出るの嫌なんですよ?」
「私だって嫌よ。女の子をこの寒い中、外に行かせる気?」
いけしゃあしゃあとそんな事をのたまうが、当然のように○○も反論。
「俺は何時だって男女平等を叫んでますよ? ここは平等にじゃんけんで」
「良い度胸してるじゃない。私に勝負を挑んだ事、後悔させてあげるわ」
「上等。じゃあ、……最初はグー!」
両者勢いよく、それぞれの手を出す。
『じゃんけん、ほい!』
「あ、私の勝ちね」
そこへ割って入った、紫の声と手。
グー同士であいこだった筈のじゃんけんは、紫がパーを出した事によって紫の一人勝ちになっていた
「へ?」
「ゆ、紫……、あんたねぇ」
「ほら、仲良く二人で行ってきなさいな」
「……行きますか、霊夢さん」
諦めたように外に行く支度を始める○○。コートを探しに宛がわれた自室に戻ろうとする。
「……そうねぇ。でも、少し待ってくれる?」
「あぁ。数秒で済ませろよ」
振り返る○○の表情は八雲家の誰にも見えなかったが、口の端が歪み、かなりの黒い表情になっていた。
合わせて、霊夢の表情も同種の物へと。
「えちょっちょっと霊夢何をそんなに殺気立って」
「問答無用! 夢 想 封 印 !」
アッー
「おー、吐く息しれー」
膝ほどまで丈のある漆黒のコートと、鍔広の、コート同様漆黒の帽子に身を包む○○。
それに合わせて歩くのは、振袖にマフラーというなんとも微妙な出で立ちの霊夢。
「遊んでないで。まずは、魔理沙の所に行きましょ」
「それからどうしますよ。ていうか二手に分かれた方が早くないですか」
「んー。そうだけど、さっ」
言葉と共に○○の帽子を取り、被る。
「うわっ、と」
「一人だと、寒いじゃない」
「まぁ、……そうですけど」
「ほら、行きましょう」
「ん、了解です」
「帰れ」
玄関に来た来客の姿を見るなり、一言だけ若干の怒りを込めて発したのは
霧雨 魔理沙。
いきなりの不満顔に○○の不満が漏れる。
「えー、せっかく呼びに来たのに」
「五月蝿いお前らがいちゃついてる場所になんかいたくないんだよ!」
「と、申されておりますが霊夢さん」
「そっちこそ五月蝿い四の五の言わずにさっさと来なさい」
「と、申されておりますが魔理沙」
「○○を私にくれるんだったらいいぜ」
「と、申されておりますが霊夢さん」
「はっ、何を言ってるのかしら。○○は私のものよ。誰かに渡すわけ無いじゃない」
「と、申されておりますが、魔理沙」
「だったら行かないだけだ。行っても無駄なだけだと、今はっきりしたからな」
「と、申され」
『いい加減にしろ』
「あい」
この両者にどすの利いた声で脅されて平気な人はいるのでしょうか、とそんな事を考えながらガクブル震える○○。
「ったく……。惚れた男のイチャを見るのは結構辛いんだぜ?」
「てゆーかさ」
反論するように声を上げる○○。
「俺、別に霊夢が好きだって一言も言ってないんだけど」
な、何だってー!?
それはもう幻想郷が割れんばかりの声で、むしろ幻想郷が声を発しているような感じで世界が揺れた。
どこから聞きつけたのか、地獄耳の烏天狗が「号外ー! 号外ー!」と叫んでいる。
「ちょ、ちょっと○○!」
「世話になってる身で悪いんだけどさ、恋愛感情はそれと別だわ。霊夢が好きならしっかり好きって言うけど、言ってないし」
「な、成程……。つまり、私にもチャンスが残ってるんだな!?」
「まぁ、結論を出すのは多分もっと先ですし。兎に角今は宴会に来い」
「勿論行くぜー!」
「来るなー!」
「おいおい、お呼びでもない人たちが来すぎだろ」
陽気な魔理沙と、落胆した霊夢を連れて博麗神社に一旦戻ると、何故か朝には来ていなかった連中がまぁわんさかと。
そして、○○の言葉を聞いたのか、ぐるりと一斉に○○を見て、一言だけ。
『嫁を探していると聞いて飛んできました!』
「探してねぇよ! 天狗の誇張された噂を信じるな!」
「でも嫁は霊夢じゃないんでしょう?」
代表者なのか、日傘をメイド長の
十六夜 咲夜に差してもらいながら
普段は無いカリスマを最大限に発して発言するのは
レミリア・スカーレット。
どうでもいいですが咲夜さん傘差しながら狩人の目で此方を見つめるのは止めてください。
「だからと言って何故貴様を嫁にしなければならない」
この○○、幾ばくかの確執がこの吸血鬼とその周辺住民に存在する為、普通なら即死級の言葉遣いなのである。
勿論、機嫌が悪ければ一撃なのだろうが。
「よ、よよよよよ嫁といいい今」
「お嬢様、せっかくのカリスマが急降下中ですわ」
心なしか、咲夜さんのフォローも投げやり感が漂う。
まぁ、主人が鼻血流してそれを止めようともしてなければそうかとも納得できる。
「そ、それで、○○さんは一体誰が好きなんですか?」
カリスマ急降下中の吸血鬼に代わって質問してきたのは守矢神社の巫女、
東風谷 早苗である。
○○と同様、外から来た人間なので襲撃した霊夢のお詫びに行った時にすぐに打ち解けた。
「いやだから、俺は今すぐに決める気はなi」
「いいこと早苗? 恋愛が絡めば女は須く敵よ。―――――勿論私もね」
「なっ、神奈子様まで!?」
「勿論、私もいるよ」
「諏訪子様!?」
「……話聞けよ」
「あはは。大変な事になってるわね、○○」
傍にスキマを出して現れたのは紫だった。
「笑い事じゃないでしょう。俺の責任ではあるんでしょうけど、暴走しすぎです。たかが俺ごときの事で」
「ごとき、なんかじゃないわよ? 事実、これだけの女性の心を動かしているのだから」
私も含めてね、と参戦宣言。
そんな紫の言葉を聞いてか聞かないでか、○○は集まった女性陣の方を眺めていた。
「……なーんか、喧嘩腰のふいんき(何故かry)になってきましたね」
「何よ! ○○は私の事が好きなのよ!」
知らんがな、と突っ込みを心の中で先ほどの発言をした
蓬莱山 輝夜に入れておく。
「ほほぅ……。いい度胸してるじゃない、輝夜。焼かれて死ぬ?」
「私は死なないわよ馬鹿妹紅ー!」
「比喩だ馬鹿輝夜ー!」
「……微笑ましいんだか、何なんだか」
「あら、誰が微笑ましいって?」
「んぁ? ……どこから湧いてきてんですか、貴女は」
「別に、少し気配を絶っただけよ?」
「気配断ち、ですか。たかが人間の俺には無理な事です」
「そうよ。でも、心は人と一緒。誰かを好きになったり、恋したいと思うのも、ね」
「……本気で喧嘩になりそうだな。止めてくるか」
「止めときなさい。火に油よ?」
「かもしれませんが、何もしないわけにはいかないでしょう」
「なら私が千切っては投げれば」
「比喩でもなく本当にしそうですので遠慮しておきます。こら、そこの今にも取っ組み合いしそうな二人。いい加減に―――――」
「……平和、なのかしらねぇ」
幽香の呟きは、誰にも聞こえない。
「それで、どうするのよ」
と、目の前に正座する女性達に向かって問いかける霊夢。
「その前に少し待とうか。何で俺、亀甲縛りで縛られてんねん」
その後ろでうねうねと動く○○。
「逃げるじゃない」
「あぁ逃げますとも! こんな事されるくらいなら逃げますとも!」
「さて、馬鹿は無視しといて。この馬鹿を見てくれ。こいつをどう思う?」
『すごく……、欲しいです……』
「何でー!?」
うほっ、良い視線。こんな視線に晒された日には僕は、僕は思わず。
「いやぁー! 何か○○がうねうね動きながら逃げてるー!」
「無駄に動きが気持ち悪いー! しかも高速ー!」
「うわぁこっち来た気持ち悪いー!」
無駄に阿鼻叫喚な状況を作り出してしまった。出来る事と言えば、横回転とニャ○キの様に這う事である。
しかし選択は横回転。故に目が回り動けなくなるのは自明の理。
「うげ……、吐きそうだ……」
「動きが止まったぞー! 捕らえろー!」
本当に無駄にテンションと連携力が高く、警戒しての事なのか、彼女達は○○の周りを囲うのみ。
「酔った……。視界が回る……」
「隊長! 目標は行動が困難なようです! 今の内に捕らえるべきなのでは!」
「まぁ待ちなさいよ。イタチの最後っ屁というのもあるじゃない」
「譬えは悪いですがその通りですね!」
それにしてもこいつら、ノリノリである。因みに隊長は霊夢で、今霊夢に話しかけているのが噂の発生源、
射命丸 文である。
「……」
「目標の沈黙を確認! 今より、捕獲に移ります!」
「楽しそうだな、あんたら」
「えぇ、それはもう」
「てか選ぶ気、今はさらさら無いって言ってるんだから帰してくれよ!」
「いやでもこの中から全員可能性があるのなら高めておきたいじゃないですか」
「駄目だ、この烏天狗……。早く何とかしないと……。こんな事されたら逆に嫌いになりますが」
その言葉で面白いぐらい陣が乱れる。
「はぁ……。俺が望んでいるのは日常で、だから壊さないでおくれよ」
「これも日常の一種じゃない」
「亀甲縛りが日常とか、嫌な日常だなぁ。……あ、そうだ。今度、それぞれの場所にお伺いしますよ。それで見極めます」
本当はこんな事言える立場じゃないんだけど、と付け足す○○。
それに合わせて女性達はそれぞれの日常へ慌てて戻る。亀甲縛りの○○を残しながら。
先ほど答えた霊夢でさえも○○を残して、神社の奥の方に戻る。
「それで、宴会は?」
――――――――――
日数分けたり、夜中に書くと自分が如何に異常かが分かる。
さて、紅、妖、永、萃、花、文、風。それぞれ書きますか。
こ、この全ての人が出てくるなんて無茶だと思ったから打ち切ったわけじゃないんだからね!
10スレ目>>572
……ふぅ、大体こんなものでしょうか。
ん? はい、どうぞ?
ああ、ありがとうございます……もうそんな時間ですか。
そうですね、では少し休憩するとしましょうか。
ん……美味しいですね、この羊羹。
程良い甘さがなんとも……はい?
ああ、それですか? 少し幻想郷縁起に載せる人物を追加しようと思いまして。
ええ、その資料はそのためのものです。
いいえ、妖怪じゃありません、人間の方です。
いえ、只の人間ですよ?
外の世界から来たことを除けば、空を飛んだり魔法を使うことも出来ない一般人です……しいて挙げるとすれば、逃げ足が物凄く速いことぐらいでしょうか。
なんでそんな人を載せるのかって?
確かに彼は、我々人間の間では無名です。
ですが、人間以外の間ではとても有名な人なんですよ。
現在、名の有る人外達が対立していることはご存知ですか?
……そうですね、あれだけ大っぴらにやっていれば知る気が無くても知ってしまいますね。
その人外の方達、正確には……紅魔、西行寺、八雲、永遠亭、風見、伊吹の鬼、天狗、閻魔、魔界、そして洩矢の神々。
どれもこの幻想郷では知らぬ者は居ない程の方達ばかり。
この方達の対立の原因が、彼なんです。
ええ、私も驚きました。
何故これほどまでに強大な力を持った方達が、こんな、なんの変哲も無い只の一般人を奪い合うのかと……
答えは単純にして明解。
所謂、恋の多角関係というものです。
はい呆けないでください、気持ちは分かりますけど。
残念ですけどこれ本当なんです。
紫様にお会いした時に、直接聞きましたから。
彼のことを話す時の彼女は、正に恋する乙女といったところでしょうか。
幾ら強力な妖怪と言えども心は少女、ということですかね。
おや? 誰かいらっしゃったみたいですね。
……あら、これはこれは。
貴方も大変ですねぇ……離れが空いていますから、どうぞそちらへ。
……彼も相変わらず大変みたいですね。
え? ああ、貴女は会ったことが無かったんでしたっけ?
偶に痴話喧嘩から逃げて、此処に匿って貰いに来るんですよ。
まあ、相手をするには分が悪すぎですからねぇ……
それでですね、何故彼女達が彼に惹かれたのかが気になった私は、彼についての情報を集めたんです。
ええ、あなたの予想通り、烏天狗の彼女からです。
彼についての情報が欲しいと言った時の彼女の形相と言ったら……もう凄かったですよ~。
いつも笑顔で好奇心旺盛な彼女の顔から笑みが消えて、一瞬無表情になった後、突然般若のような顔になって睨みつけてきましたからね。
もう殺意剥き出し、殺す気満々。
あの時、あと数秒理由を話すのが遅れていたら……私、今この世に居ないんじゃないでしょうか?
いやはや、恋をするとああも変わるものなんでしょうかねぇ……
まあ、すぐに誤解を解いて資料をお借りすることは出来たのですが、その後がまた大変でした……言わなくても分かりますよね?
彼との出会いから始まり、彼に恋をした時の心境、寝顔を覗き見た時の胸の高鳴りなど、その他色々と……
資料の恩が有るとはいえ、流石に惚気話を半日は辛かったです……
ま、その話はこれくらいにしておいて……で、それがこの資料です。
大半が彼女の私的な資料でしたが、先程なんとかまとめることが出来ました。
この資料によると、どうやら彼は彼女達以外の人外からも好かれているみたいなんですよ。
例に挙げると湖の氷精や夜雀、宵闇の妖怪などですね。
彼女達も彼のことを慕っているみたいです。
ですが彼女達の場合、幼さも相まってか恋愛感情ではなく純粋な好意だと思われます。
優しい人ですからね、女性や子供には特に。
それに相手が人間だろうが人間以外だろうが差別しない。
そこに皆さん惹かれたんじゃないでしょうか?
そういう事には疎そうな方達ですからねぇ……恋に落ちたらラブラブ街道一直線!みたいな感じでしょうか?
……すみません、忘れてください。
なんにせよ、もてる男は辛いってことですね。
ま、彼に自覚がないっていうのが、そもそもの原因なんでしょうけど。
朴念仁とは良く言ったものです。
え? 何故彼が誰にも捕まらないのか、ですか?
そうですね、理由を挙げるなら二つ。
一つ目は、彼に出来るだけ被害を与えたくないため。
想い人ですからね、怪我などは避けたいのでしょう。
相手に嫌われること、相手を傷つけること程、辛いことはありませんから。
なら何故争っているのかって?
そんなの、ライバルは一人でも少ない方が良いからに決まっているじゃないですか。
そして二つ目は、彼を守護する者がいるためです。
ええ、それはもう、とびっきりの守護者が。
幻想郷最高クラスの彼女達も、本気になった彼女と戦うのは不利と分かっているのでしょう。
ですから彼の傍に彼女が居る場合は滅多に彼に近づかない、もとい近づけないという訳です。
当然、捕まえるなんてもってのほか。
彼女が彼の傍を離れるまで我慢するしかないんです。
……と言っても、あの二人は大抵一緒に居ますから、捕まえるチャンスなんて滅多に無いんですけどね。
守護者ですか?
貴女も良く知っている人物ですよ?
というか、この幻想郷で知らない人はまず居ないでしょう。
ほら、あそこの神…………ん? また誰か来たみたいですね?
……あら、これはいつも御苦労様です。
彼ですか?
こちらには来ていませんよ?
ええ、本当に。離れになんて居ませんよ?
いえいえ、どういたしまして。
はい、それでは。
……ふぅ。
え? 彼の居場所を教えて良かったのか、ですか?
被害は少しでも減らしたほうが良いでしょう?
……ふぅ、御馳走様でした。
さてと、一息入れたところでそろそろ作業を再開しましょうか。
ええ、ありがとうございます。
では、また夕御飯の時に。
……
…………
………………
さて、そろそろでしょうか……
『何処かに出かける時は私を呼べっていつも言ってるでしょうがこの馬鹿ーーーーーーっ!!!!』
『わかった! わかりました! 今度から気をつけます! だから……』
『心配ばかりかけさせるなーーーーーーっ!!!!』
『ギャーーーーーース!!!』
<チュドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!>
……後で離れの修理を頼んでおきましょうか。
さてと、執筆執筆……
『幻想郷縁起』
英雄伝・追記
「異邦人・○○」
外界から来た青年で、誰に対しても差別なく接する優しい性格の人物である。
その対象は人外にも及び、よく氷精や宵闇の妖怪、夜雀などと遊んでいるのが目撃されている。
能力はこれと言って保有していない、いわゆる一般人である(しいて言えば、逃げ足が物凄く速いことだろうか)
だが、一般人だからといって甘く見てはいけない。何故なら彼の周囲には最上級の危険が山程あるのだから。
彼という人間は、何故か妖怪・その他、人外の者達に好かれてしまう体質(もしくは人柄)であるらしく、その影響(注:1)は甚大であり、
常に彼女達から注視されているのである(注:2)
なので、彼に接触する際には不貞を働かぬよう注意が必要だ。
もし不貞を働いた時、その先に待っているものは、死、のみである(注:3)
彼自身、そのことを不満に思っているらしく、最近では若干改善されたようである(注:4)
しかし、彼女達が何故そのようなことをしているのかを理解していない模様(注:5)
幻想郷に来た当初は村に住んでいたのだが、周囲の環境が変わったため、現在はその現状を見かねた巫女の計らいによって、
博麗神社にて生活をしているらしく、巫女と一緒のところが度々確認されている(注:6)
時折、様々な場所で彼と巫女の喧嘩(というより私刑?)が見られるが、見かけた場合は速やかに退避するのが得策であろう。
触らぬ神に祟り無し、である。
(注:1) 所謂恋の病。
強大な力を持つ者故、そのような事柄には不慣れであったのだろう。
突然湧き出した感情に戸惑いながらも彼女達は現在、彼に対して求愛活動真っ最中である。
ちなみに、今起こっている人外達の対立はこのことが原因。
恋は盲目と言うが、少しは程度というものを知って貰いたいものである。
(注:2) 主な例として、紅魔館の面々、西行寺の亡霊嬢とその庭師、八雲一家、永遠亭、風見幽香、伊吹の鬼、烏天狗と白狼天狗、
閻魔とその死神、魔界神、守矢神社の神々などが挙げられる。
(注:3) 特に女性は要注意。
女性の嫉妬というものは、どの種族にも存在するものだが、いかんせん相手が相手。
(注:4) だが油断は禁物である。
(注:5) 朴念仁とは彼の為にある言葉であろう。
(注:6) 巫女との関係は現在調査中。
これは私見だが、もしや巫女も彼に好意を抱いているのではなかろうか?
……ふぅ、こんなところでしょうか。
では、これを清書に……
あ、お帰りですか?
え? ああ、いえいえ、そんなお気になさらずに、いつものことですから。
はい、はい……ええ、わかりました。
それでは、また、お気をつけて。
お大事に~。
12スレ目>>549 うpろだ846
穏やかな日差しが窓から射しこむ。
俺は気持ちの良い暖かさのせいでついウトウトとしていた。
ガンガン!
その眠気を吹き飛ばすような音が玄関の方から聞こえてくる。
おそらく来客だろう。
そう思った俺は玄関の方へ行き、扉を開けた。
「また、来てやったわよ! ○○!」
そこにいたのは、バカ四人+保護者。
偉そうに腕を組む
チルノ。
チルノの態度に申し訳なさそうにしている
大妖精。
相変わらず、何を考えているのかわからない
ルーミア。
蝶やら蜂やらいろんな虫を侍らせたリグル。
俺が出てきたのに、気にせず歌っているミスティア。
「ホント、いつもと変わらないよな」
「すみません、○○さん……」
「いや、君のせいじゃないよ」
「何で大ちゃんが謝ってんのさ?」
「お前は少しは遠慮ってもんを覚えろ、このバカ」
「むきー! バカって言った方がバカなんだぞ!」
「はいはい。じゃ、中に入れよ」
五人にそう告げ、俺は家の中へと引っ込んだ。
五人が俺の家に来るのはこれが初めてではない。
いや、実を言うと何回目かすら覚えてない。
まぁ、それぐらい多いってことだ。
俺は外の世界にいたとき、小説家の真似ごとをしてた。
だからこっちに来てから、外の世界にあった物語とか、自分で作った小説なんかを話したり書いたりした。
それを目の前の連中にもやったところ、どうやら大ハマリしてしまったらしい。
それ以来、こいつらは俺の家に入り浸っているってわけだ。
「それで、この前はどこまで話したっけ?」
机の上にいろんなお菓子を置きながら聞く。
「実は主人公の相棒が敵だった、ってとこまでだよ」
リグルが答えてくれた。
「ああ、そこか」
一息吸い、五人の方を見る。
皆が皆、真剣に聞こうとしてくれている。
これほど真剣だと、こっちも熱が入るってもんだ。
「じゃあ、始めるか。『そいつの言葉に俺は衝撃を隠せなかった』……」
「『そして、主人公は新たな任務につく。仲間達とは別れることになったが、それでも彼は寂しくはなかった。
だって、彼らの間にはちゃんとした絆があるから』……。おしまいっと」
充足感を感じながら、彼らの方を見る。
興奮冷めやらぬ、といったところであろう。
これなら甲斐があったというものだ。
いや一人だけ、チルノが何やら難しそうな顔でうつむいている。
腹でも壊したか?
そう思った瞬間、何を決意したのか急に顔を上げた。
「ねぇ、○○……」
その言葉にはいつもの元気さはなかった。
「○○は……どこかにいなくなったりしないよね?」
しんみりとした声でつぶやく。
その途端、周りの空気が急激に重くなった。
全く、このバカは本当に空気が読めないな。
なんて軽くおちょくってやろうとした瞬間、ミスティアが口を開いた。
「外の世界に帰ったりとか……しない、よね……?」
不安げな声だった。
見れば他の四人も一様に泣きそうな悲しい顔をしていた。
いや、大妖精などは既に涙が見えている。
「はぁ……」
大きな溜息を吐いてしまう。
本当に俺って愛されてんだな。
少なくとも、ここにいて欲しいと思われる程には。
俺は立ち上がり、チルノの髪をくしゃくしゃにしてやった。
「な、何すんのさ!」
「やかましい。帰る気があるならとっくに帰ってるわ」
それは俺の偽らざる本音だった。
つまるところ、俺は幻想郷が、こいつらのことが気に入ってしまったんだ。
そう、外の世界よりも。
「だから、そんな顔すんな。お前らにはそんなのよりもバカっぽい顔のが似合う」
「むー、バカじゃないもん……」
目の前でチルノがうめいているようだが無視する。
「さーてと、こんなにいい天気なんだから外で遊ぼうぜ」
「「「「……うん!」」」」」「……はい!」
ようやくこいつらの顔に笑顔が戻った。
やっぱ、何だかんだで俺はこいつらのこういうところが好きなんだな。
「じゃ、戸じまりするから先に出てろ」
そう言い、キッチンの方へ火が止まっているか確認しに行く。
ホント。俺って恵まれてんなぁ。
こんなにいい奴らに囲まれて。
思わず笑ってしまいそうだった。
「火元はオッケーっと。じゃ、行きますか」
俺は満ち足りた気分で、あいつらの待つ外へと、その足を踏み出した。
12スレ目>>636 うpろだ861
「十三、十四、十五……これくらいかな」
早苗さんが大豆の数を数えている。
もう節分なので、皆豆を食って無病息災やら願うということだ。
「八坂様は大豆いくつ召し上がられますか?」
「バケツ一杯」
「なら俺は二杯で」
「じゃあ私は三杯」
「早苗、やっぱり四杯にして」
「「どうぞどうぞ」」
「おま、謀ったなコワッパーズ」
背中のオンバシラを叩きつけながら神奈子様が言う。
ズドーンと良い音を立てるオンバシラと、
直後鈍い音を立てて神奈子様の延髄に叩きこまれる早苗さんの蹴りの対比は非常に怖い物があった。
「皆さんバケツ何杯分も豆がありませんよ」
ずれた袴を直しながら早苗さんが言う。
「いや本当に作らなくても良いよ」
「そうね、それより酒のほうが良いわね」
「……いっとく?」
くいっとグラスを傾ける仕草をしながら諏訪子様が言う。
「でも発泡酒より麦酒のほうがいいわね」
「よーし、それなら蔵から出してこようか」
意気揚々と蔵に行く二柱、大してこちらの一柱は頭を抱えている。
「はぁ……、○○さんはいくつですか?」
「二十三頂戴」
「はい二十三……あれ? 今二十三歳ですか?」
「そう、今年二十四になる」
「じゃあ今年本厄ですね。厄除けは……まだですね」
「うん、まだだね。ここじゃやってないし、ここ以外には行ってないし」
「ほうほう○○は今年が大厄か」
神奈子様が麦酒片手にやってくる。
「それじゃきっちり厄払いしておかないとね」
つまみに何かの干物を齧りながら諏訪子様が来る。
「それでは今から厄払いしましょうか? もう結構遅い時間ですが」
「うん、俺は構わないけど」
「それじゃあ早苗、準備のほうはお願いね」
普段妙なことばかりやっている神様なのだから、お祓いも随分妙なことになるのだろう、
そう思っていたがそういうことは無く、粛々と神事は進められた。
でも神奈子様の膝の上に諏訪子様が座るのは無しだろ。
「それでは最後にこのお神酒を飲んでください」
中に少しの透明な液体の入った小さな椀を渡される。
ぐっとやるまでも無く、少し傾けただけで中身はすぐに空になった。
「おおいい呑みっぷり。じゃあ、その意気でこっちも行こうか」
そういって神奈子様がもう一つ、漆塗りの盃を差し出してくる、角隠しをして。
「えー神奈子様、この盃はどういった意味を持つ物なんでしょうか」
「もちろん固めの盃だ。三々九……」
途中まで言うと神奈子様の手の中の盃は諏訪子様に取られ飲み干されてしまった。
「ちょっと何するのよ諏訪子!」
「一人で抜け駆k……し……」
諏訪子様も途中で言を止める。その目の前には……
「鬼っ子じゃ、鬼っ子がおる!」
「まずいぞ、いつにも増して袴が青くなっている! あれは攻撃色だ!」
「ま、待つんだ早苗さん! 話し合おう! そ、そうだ。飴を――飴を上げるから!」
「どうして八坂様は最後まできちんと締められないんでしょうね……」
酷く怒気を孕んだ笑顔を見せる早苗さんがいた。
(神奈子、何とかしなさいよ)
(何とかってどうすりゃいいのよ)
ひそひそと皆で相談する。実際には生贄を選んでいると言ったほうが良いのだが。
(なんか早苗さんの頭に角が見えてきたよ)
(角……よし、その角隠してしまおう)
(いや比喩だから、喩えだから。意味ないですよそれ)
(よし手伝うよ。○○、早苗ちゃんの気を引いといて)
(やるの!?)
言いながら○○を押し出し、その後ろに陣取る諏訪子。
それより数瞬遅れて動き出す神奈子。
「OK、落ち着くんだ早苗さん。まず落ち着いて、その大幣っぽいものを下ろすんだ」
「落ち着いています、私は十分に冷静です。さあ、そこをどいてください」
「そんな物を振りかぶっちゃいけない、ああ絶対にいけないんだ」
早苗にクリンチしつつ、冷静になるよう声をかける。しかしあまり意味がない。
「早苗ちゃん落ち着いて!」
そんな時に真後ろから諏訪子が突進しつつ説得に来る。
全く慮外の行動だったため○○は為す術無く、早苗を下に巻き込む形で地面に倒れる。
かろうじて腕を下に敷くことが出来、早苗を下敷きにすることは避けられた、
しかし妙な体勢なのと、上に諏訪子が乗っかっているため一度腕を抜かなければ立つことが出来ない。。
「早苗さん、とりあえず一旦そこから退いて。あと諏訪子様降りて」
「え、ああはい、分かりました」
驚いたせいか落ち着きを取り戻し、体を上に引き摺りながら出す早苗。
対して諏訪子は背中の上で寝たまま、動く気配は無い。
その時――
「隠したー」
テンション高く、角隠しを早苗にかぶせる神奈子。
「神奈子ー、もう終わっちゃってるよー」
それに突っ込む諏訪子。うなだれる神奈子。
「八坂様、これはどういうことです?」
そして追求する早苗。
「え、それは」
「つまり、私と○○さんの結婚を認めてくれる、と言うことですね」
「違うよまだ何も言ってないよ」
「でも、角隠しを直に被せたというのはそういう事なのではないですか?」
「いやその理屈はおかしい」
結婚を認めさせようとする早苗と認めまいとする神奈子。
普通は嫁の父と婿のすることだが、ここでは嫁とその母役のすることらしい。
「早苗さん、いいから早く脱出して。あと諏訪子様降りて。もう腕痛い」
震える腕で体を支える○○。
ここで力尽きれば事態はより訳の判らない方向に進むことは必至なので、その点に関しては彼は必死だ。
「えいっ」
しかし掛け声と共に早苗が○○の腕を引き倒す。
支えを失った体は当然早苗の上に倒れ、伸し掛かり、押し倒す。
「早苗さん何するのん」
「押し倒されちゃいました。これは責任とって貰うしかありませんね」
「早苗…恐ろしい子!」
○○は非難の声を上げるが早苗は聞かず、むしろ体を抱きしめ離さずにいる。
そして何故か神奈子は慄いている。
「よし……早苗、そこまで言うなら結婚を認めましょう」
○○の意思は全く無視して話が進んでいく。
別に早苗さんを迎えるのに不服があるというわけではなく、むしろ願わしいことであるが。
「でもその前に私を娶ってもらいましょう」
「!」
「そして私も娶ってもらいましょう!」
「!?!」
眼前で神奈子様が、背中の上で諏訪子様が言う。
「というわけで早苗、式の準備を」
「神奈子ー、そこら辺は霊夢に頼んだほうが良いんじゃない。早苗ちゃんも出るんだし」
「んーそうか。そうだね。じゃあ明日依頼してくる」
「神奈子様、着物はやっぱり白無垢なんですか? それともウェディングドレス?」
「着物は考えてなかったねえ。明日一緒に里で仕立ててもらおうか」
「そうなると時間結構かかりますね」
「いいじゃない。その間に色々考えてようよ」
「あれ、また俺ハブられてる?」
○○のぼやきを聞く者は誰もいない。
「いや、結婚するとかはいいんだけどさ、こういう決め方はどうなのかなあ」
「なに暗い顔してるのよ。かわいいお嫁さんが三柱いるのよ」
「……かわいい?」
神奈子様が首に腕を回して言ってくるが、諏訪子様がそれを笑い飛ばす。
それを機に両者威嚇を始め、早苗さんに鎮圧される。
「まあこれでいいのか」
騒がしい彼女らが好きなのだから、求婚も結婚も騒がしいほうがいいのだろう。……一柱例外もいるが。
これからもずっと振り回されることになるんだろうな、と思いつつ○○は銚子の酒を飲み干した。
最終更新:2011年07月19日 00:16