ハーレム?13



うpろだ1482


「なぁ、巫女って昔は情婦の役割だったってホントかな?」
「いきなり脈絡のないこと言いだすわね」
「だって二人の巫女さんが並んでるから何故かそんな記憶が呼び覚まされたんだい」

 まぁ我ながらおかしなこと言ってるとは思うけどさ。

「でもそれはでキリスト教に因って迫害された中世の魔女ってことだったと思いますが……」
「……うちの神社には似たような変な決まりがあるけどね」

 そう言って霊夢は早苗さんに巻物を手渡した。

「なんですかこれ? お賽銭の金額による巫女のおもてなし……二千円、参拝者にお茶を振舞う……二千五百円、参拝者に食事を振舞う……ふぇっ!? いいい、一万以上はっ!?」
「まぁ滅多にお賽銭なんて入れる奴なんていないから忘れていたわよ。実際蔵の中で埃被っていたし」
「はぁ……ま、いいじゃないですかこんな変なことしないで済んでいるんですから」

 しかし霊夢は早苗さんの言葉を受けジト目で俺の方を見た。

「ここに十万叩き込んだバカがいるけどね」
「えええっ!? ○○さん本当ですかっ!?」
「えーと本当だけど早苗さん、俺の名誉のために言っておくがそんな掟俺知らなかったからね。知ってたらやらなかったし」

 神社に居候させてもらっている身としては世話になっている霊夢に生活費ってことで里で手伝いして貰った給金を渡そうとしたんだが
 お賽銭として入っていたら霊夢喜ぶだろうなって思ったのが間違いだった。
 賽銭箱にお金を入れて霊夢を呼んで中を確認させたその晩霊夢に神社の奥の部屋に連れていかれて部屋の中のもの見せられて絶句したし。

「ででで、そのまさか……」
「そう、そのまさかよ」

 あっさり肯定すんな。
 だってさすがにそんな無体なこと出来なかったけどせめて一万円分のおもてなしをさせろって聞かないし
 最終的には軽く涙目で首輪つきの霊夢が『私なんかじゃ抱く気になれない……?』なんて言われたらさぁ、逃げる訳にもいかんだろ。女の子にそこまで言わせて逃げたらヘタレだ、ヘタレ。
 そういう訳で俺と霊夢はその晩大人の階段を昇ったのだ。

「……ううう」

 呻き声をあげてる早苗さんは勢いよく縁側から立ち上がるとズビシッて霊夢に指を突きつけた。

「じ、常識で考えてはいけません! お二人が、に、肉体関係を持ったとしても相性が合わなくて別れる人はいるんですっ!」
「あら、相性は良いみたいよ、私たち。お互い初めてでも○○はやさしくしてくれたし、果てる時はいつも一緒だし。一昨日も、ね?」

 こっちに振るなよ。どう答えていいか困るじゃないか。
 でも確かにシてる時の霊夢はかわいいし優しくしてあげたくなるし、未だに果てた時の表情が瞼に焼きついている。
 確かに相性はバツグンだ。

「うううううう~……」

 あー早苗さん涙目だよ。やっぱりこういう話苦手なんだろうか?
 そう思っていると後ろから声が聞こえた。

「あーやっぱり霊夢に先越されたか」
「あーうー、早苗は奥手すぎるんだよ」
「ふふふ、賭けは私の勝ちだね。ほら早く賭け金出しな」

 いつの間にやって来たのか神奈子と諏訪子、それにもう一人緑髪の魔法使いみたいな恰好の人がいた。……だれ?

「あーこうやって姿を現すのは初めてか。私は魅魔。この神社の祟り神みたいなもんさ。よろしく○○」
「ああ、よろしく……」
「み~ま~! あんた急に出てきたと思ったら賭けごとなんかしてるんじゃないわよ!」

 怒る霊夢を余所に神様達はまた賭けの話をしていた。

「じゃあ今度は○○が誰を娶るか賭けようじゃないか」
「いいよ~。私はまた早苗にする。とりあえず一万!」
「私も早苗にだね。五万」
「か、神奈子様に諏訪子様! 勝手に賭けの対象にしないでください!」

 そこに魅魔様がとんでもない爆弾を落としてきた。

「……そういえば娶るなら一人だけじゃなくてもいいんじゃないか? そこの早苗って娘が言っていたじゃないか。常識に囚われるなって」
「……そうだね。昔は長が何人もの女性を抱えていたし」
「あーそういえばそうだったね」

 マズい。話がヤバい方向に進んでいる。俺はこの場から逃げ出そうとしたが勘付かれていたらしく神奈子と魅魔にしっかり取り押さえられた。

「ふふふ、なら私も参戦させてもらうかね。久しぶりの若い男だ。たっぷり可愛がってあげるよ」
「あ、あのな、実を言うとそんなに経験はないんだ。やさしくしてくれな?」
「ちょ、二人とも本気ですか?」
「「ああ」」

 ああ、俺の貞操の危機。他の三人に助けを求めようとしたら、霊夢も早苗さんも、ケロちゃんまで本気で俺を食べる気でいた。
 俺を助けてくる神も仏もいないのか……。ここにいる神はみんな敵だし。

「ふふふ……私の舌使いは凄いよ~何分持つかな~」
「あ、あの○○さんっ! ふつつかものですがよろしくお願いしますっ!」
「……○○、私以外にイカせられたら許さないからね」

 原人に狩られたマンモスのように五人に抱え上げられて神社の奥の部屋にドナドナされていく俺。
 ……どこで選択肢を間違えたのだろうか?
 いや、たぶん最初からこうなる運命だったんだろうなぁ……。
 はぁ、紫からもらったエビ○ス錠まだ残っていたかな……。


うpろだ1508


ある日の白玉楼、夕食時。
あの人の何気ない一言が、全ての始まりだった。

八畳程度の畳部屋の真ん中で、ちゃぶ台を囲んで夕飯を食べる三人。
庭師の私としては主と食卓を共にするのは少し不本意だが、
大勢で食べた方が美味いだろうという○○さんの意見と幽々子様の同意によって、少し前からこうして食べている。


「妖夢、おかわりちょうだい」


幽々子様がもう何度目か分からないおかわりを、これが二杯目だと言わんばかりに要求する。
最早私の背丈くらいになったおひつの蓋をよいしょと開き、中を覗き込んで───

「…幽々子様、もうお米がありませんよ」

おひつの中は、数えるほどの米粒を残してほとんど空っぽになっていた。

「え~~~……」
「え~~~……じゃありません。ない物は出せません」
「今度からもっと炊いておいてよ。これじゃお腹空いて夜も眠れないわ」
「そんな事ばっかり言うからおひつがこんな大きさになったんでしょう…第一、幽々子様は毎回ご飯を食べすぎです。お米だって無限じゃないんですから、もう少し考えて───」

丁度その時、さっきから口を閉ざしていた○○さんが不意に笑い出した。
なんだか気恥ずかしくなって思わず顔を伏せてしまったが、何も私のことで笑ってる風ではないようだった。

「どうしたの?」
「いや、なーんか二人が親子みたいだなと思ってね…」

微笑ましいと言う風に私達を見る○○さん。その一言を聞くや否や、幽々子様は○○さんの腕を取って自分の腕と絡めて言った。

「あら、それじゃ私達が夫婦で妖夢が子供かしら?」

照れたようになる○○さんを見て少しムッとなる私。
…もう、幽々子様は○○さん相手になると慎みが無くなるのがちょっと…………羨ましい、です。

「い、いやいや。どっちかって言うと妖夢が母さんで幽々子さんが娘って感じかな…」

ハハハ…と笑う○○さん。……え?そそそそれじゃ夫は○○…さん?あ、いや、そんなまだ早いですよ私にも心の準備が…

…と、私があらぬ妄想の世界へ身を浸している隙に幽々子様は新たに一手を指していた。

「あら、○○が子供っていうのもいいんじゃない?ほら、貴方って結構───」

そう言って、幽々子様は○○さんの頬についたご飯粒を箸で取ってそのまま優雅に自分の口へ運んでしまう。

「───子供みたいな所、あるしね」

そして妖艶に微笑む幽々子様。
ああもう、どうしてこうも私にないものばっかり使って○○さんを誘惑するんですか貴方は。

しかしそこは○○さん。軽く笑って何もなかったかのように受け流しました。

「ハハハ・…ま、どうでもいいかな。母さん、おかわり」
「……だからご飯無いんですってば。あと母さんはやめて下さい」
「そうよ○○。妖夢は母さんじゃなくて、「妖夢」もしくは「おまえ」って呼ばれたいんだからね?」
「ゆっゆゆゆゆゆ幽々子様何言ってるんですかもう!」

────と、まあ、そこまでは日常的な風景だったのです。……お二人が私の事を母さん母さん言ってくる以外は。

問題はその後です、後。
そろそろ寝ようと思って座敷に敷かれた布団に横になり、掛け布団を被った刹那。

障子が開いて、小脇に○○さんを抱えた幽々子様が入ってきたんです。

そして、ああそして、あろうことか私の布団に○○さんとご自分の体を横たえて、そのまま布団を被ってしまったのです!

「……………何してるんですか幽々子様ーーーーっ!」

思わず声が荒くなりました。早いでしょ、誰がどう大目に見たって。
幽々子様が○○さんに並々ならぬ感情を抱いてるのは知ってますけど同衾って。しかも私の布団でって。

「何…って、寝ようとしてるだけだけど?」
「…なんだか知らんが、家族三人で川の字になって寝たいらしい」

布団の中から解説を加える○○さん。…あ、私の布団で○○さんが寝て…っと、いけないけない。煩悩退散。でも役得。

「川の字…ですか」
「そ。私が右端、○○が旦那様役で左端、妖夢は一番小さいから真ん中ね♪」

私の脳は考えるより早くその状況を想像してしまう。
三人が私の小さな布団の中、身を寄せ合って……………ああまるまるさんそんなにおしつけないでわたしどうにかなってしまいますー。

そうして赤面五秒の後に、現実に戻る。
正気に返った私がいた場所はお二人の間──つまり、布団の中でした。

「えっ…えええええええっ!?」

「妖夢、思いのほかノリノリでしたね幽々子様」
「そうね。もっと渋るかと思ったのに…あんな笑顔でお布団に飛び込んで来るなんてねえ」

あの五秒間で何をやったんだ私っ!

「あー…でもまあ、こういう寝方も悪くないかなあ。暖かいし」

この状況下であくまでマイペースな○○さんはどうかしてると思います!

「ふふ…それじゃ、明日はもっと熱い夜にしてみる?」

さりげなく誘わないで下さい幽々子様!私が間にいるのに○○さんにひっつこうとしないで!ああ!胸板が!○○さんの体が私にぴったりくっついて ─────っ!












その晩妖夢は、結局一睡もできなかったという。


新ろだ162


博麗神社の縁側で昼寝中、甘ったるい匂いで目が覚めたら目の前に橙がいた。
うん、橙がうちに来ることはいつものことなんだ、紫さんや藍さんもよく来るし。
ただ問題なのは・・・・

「○○~」
「・・・うわぁ!!ちぇ・・橙?」
「うふふ~」

橙の様子がいつもとおかしかったのだ。
いつもの橙なら「わーい○○遊ぼう~」と寝ている俺の上に飛び込んでくるぐらい元気でおてんばな子なのだが・・今日の橙はいつもと違った。
そう、いつもの橙を子供と例えるなら、今の橙は・・・ものすっごく色っぽい。
衣服はいつもと同じなのにとてつもなく色っぽい・・。

「橙・・だよな?」
「そうだよ~」

間違いなく橙だ、しかしどうなっているんだ一体・・。

「えへへ・・○○」
「な・・なんだい?」
「子作りしましょ」

静寂・・・そして橙は服を脱いで・・・・

「この泥棒猫!!!!」
「わぁ!!霊夢!!」

いきなり霊夢が乱入してきた。

「人の居ないところで何乳くり合おうとしてるのよ!!」
「してないしてない!!」
「なー、邪魔しないでよ~」
「するわよ!!というか人のうちで何しようと」
「子作り」
「即答!!!・・霊夢落ち着け、とりあえずその陰陽玉をしまえ!」
「落ち着いていられるか!もう・・紫ったら式の教育がなってないわね」
「あらそんな事ないわよ」

と、スキマから現れた紫さん。

「紫!!ちょっとあの子何とかしなさいよ」
「何とかって・・無理♪」
「なんでよ!」
「何とかしたら面白くないじゃない」

紫さんの言葉に俺と霊夢は目を丸くした、まったくこの人は・・

「・・・霊夢・・俺頭が痛い」
「私も・・・」
「だってぇ~今の橙は発情期なのよ」
「は・・発情期?」
「そう、私は一切ノータッチ、この時期の橙って大変なのよ・・いつもはスキマに閉じ込めておくんだけど・・今回は先手を打たれたようね」
「ぼやっとしないで早く橙をスキマに閉じ込めなさいよ!!」
「だからそれじゃつまらないじゃない・・」

この人は・・・霊夢も青筋が浮かびっぱなし、目つきも悪くて・・うわっ!霊夢ちゃん目怖っ!!

「というわけで橙、○○を好きにしていいわよ」
「はーい!」
「こら紫!!!」

俺に向かって走ってくる橙を抑える霊夢。
俺はとりあえず逃げようとしたそのとき、風が吹いた・・・

「え?」
「無事でしたか○○さん!」
「あ・・文?」

気がつけば俺の体は文に抱きかかえられ、空を飛んでいた。
眼下には「泥棒鴉!!!」と叫んでいる霊夢と橙の姿が。
流石幻想郷最速、あっという間に博麗神社から離れ山の麓にあるとある小屋へ到着。

「文・・助けてくれたのは嬉しいけど・・」
「はい、お礼は子作りで結構ですよ」

…はい?

「文さーん、射命丸さーん?」
「明日のトップは私と○○さんの婚約会見で決まりですね!」
「え?だから・・」

あ・・甘い匂い・・・まさか文も発情期ってか?
というかこの小屋の中、何故かラブホテルのような内装になってるし!!

「さぁ、○○さん」
「脱ぐな脱ぐな!!!」
「えー・・仕方がないですね」

と残念そうに体操着+ブルマを着た。

「まてまて、それを着るな」
「ヱー」

と再び全部脱ぎだしたので・・

「全裸になるな!!!」
「はーい・・」

と、今度はセーラー服を着だした。

「次の衣装が気になるけど自重して・・・」
「えー、とにかく・・・子作りしましょう♪」
「いやだー!!人生の墓場はまだ早い!!」
「そこまでです!!!」

ばーん!!!

「大丈夫ですか○○さん!!」
「椛!」

救世主現る!!

「椛・・」
「そこまでです!○○さんと子作りするのはこの犬走椛です!!!」
「な・・なんだってー!!!」

わーお事態悪化、とりあえず逃げるべ。

「逃がしません!!!」

椛先手必勝、○○は拘束されてしまった。

「文さん、○○さんは私が頂きます」
「駄目!私よ!!」
「あたしだよ!!!」

いつの間にか橙も加わっていました。
ということは橙を追って霊夢が・・・いや、過度な期待はよしたほうがいい。
目の前では3人がじゃんけんをして誰が一番かを決めている、何の一番かって?
聞くなよ・・・とりあえずここから脱出する手立てを考えねば。

「あややキリがないですね」
「むぅ」
「やはり弾幕で決着を・・」
「おーい外で頼むぞ弾幕は」
「いいこと思いついた!三人同時に子作りすればいいんだ!」
「あやっ!ソレは俗に言うら・・らん・・」
「は・・破廉恥です!!」

いや、そんな破廉恥なことを君たちがやろうとしているわけで。
とりあえず、脱出の手立てを考えなきゃ・・・。
魅力的な少女が言い争っている中、俺は拘束をはずそうと四苦八苦していた。


「じー・・・・」
「あら霊夢、そんな玩具の犬耳付けて何してるの?」
「なんでもないわよ!あっち行って!」
「まさか、それで「私も発情期~」って混ざりたいの?」
「な・・そんなわけないでしょ!!」


新ろだ168


―某月某日、香霖堂にて…



 外界から流れ着く幻想入りした物品が陳列している雑貨店、その
名は香霖堂。確かにここで取り扱われる物品は珍しいものばかり。

 ですが立地場所が博麗神社と人里のちょうど中間点のため、里の
人間達は妖怪に襲われることを恐れて近寄ろうとしません。

 立ち寄るのは自力で妖怪退治が出来る僅かな人間か、ここ幻想郷
でもトップクラスの実力を持つ勢力下の者達ばかりで、余計に人が
近寄れなくなっています。

 …ですが、何事にも例外というものは存在するようです。



 そう、あなたなのです。



 ひょんなことから幻想入りして、慧音の庇護の下人里で暮らして
いるあなたにとってここ香霖堂は、時折陳列している懐かしい物品に
出会える唯一の場所。

 今日も香霖堂の扉を叩いては陳列している商品を眺めています。

 そんなに欲しいんだったらせめて一品くらい買っていってくれよ
と人と妖怪のハーフである香霖堂の店主、森近霖之助は言いますが、
ここの商品に『真っ当な』値段がついたためしはありません。

 …!……?………!

 おや?向こうにできている人だかりで何やら談笑しているようです。

 幻想郷の権力家達がみんな揃って我が子の自慢合戦をしているのさ、
不用意に近づくと危ないよと霖之助は教えてくれましたが、あなたは
こっそりと様子を伺うことにしました。すると…



「私の自慢の娘、咲夜は時を止めることができるわ。家事一般は
当然のこと、ナイフ捌きもお手の物よ。瀟洒で完全、を自称する
のに相応しいわね」
「光栄ですわ」

 紅茶を一口、その後に傍らに佇むメイドのことを自慢するのは
紅魔館の主にして吸血鬼のレミリア・スカーレット

「あら、うちのアリスちゃんはそんな程度のこと人形さんたちに
任せてすぐにでも片付けちゃうわよ。伊達に一人暮らしをしてる
わけじゃないの」
「まぁ、一人暮らしだからその程度のことは出来ないとね」

 普段はここ幻想郷に顔を出すことはありませんが、自慢の娘の
様子を時折見に来る魔界の神、神綺。

「その程度ではまだまだね魔界神さん。私の自慢の娘である藍は
式神の身でありながら、式神を扱うこともできるのよ。私の身の
回りの世話もしてくれるし」
「紫さま…(普段からこう言ってくれればなぁ…)」

 外界で言われる事象『神隠し』の主犯にして幻想郷の管理人、
従えている式神を称えるスキマ妖怪八雲 紫。

「うちのイナバは狂気の瞳を持っていて、並大抵の者が力任せに
襲い掛かってきても余裕で撃退できるほど強いんだから。永琳に
薬学も師事してもらっているから、将来が楽しみね」
「そ、そんな輝夜さま、私なんか師匠に比べたら全然…」

 御伽噺「かぐや姫」のモチーフとなった月人、不老不死の罪を
背負い…という肩書きはどこへやら、兎自慢する永遠亭の象徴、
蓬莱山 輝夜。

「妖夢は剣術に秀でていて、庭師としても雑用係としても優秀よ。
以前あなたの兎さんに一度勝利しているじゃないの」
「ゆゆっ、幽々子さま、そんなに挑発しないでくださいよぅ。
鈴仙さんだって困っているじゃないですか」

 冥界にあると言われる白玉楼の管理人西行寺幽々子は、お庭番
にして抜刀術に秀でる妖夢を褒めちぎる。

「あーうー、その程度大したこと無いわよ!うちの早苗だって
私と神奈子の面倒を見てくれているし、仕事熱心だし、奇跡を
起こして見せる能力持ちなんだぞー!」
「洩矢さま、そう興奮しないでください。私は当然のことをして
いるだけなんですから」

 最近妖怪の山に現れた守矢神社の裏管理人、洩矢 諏訪子は子孫
であり自慢の娘である風祝の少女のことを負けじとアピール。

「衣玖は空気を読んで必要に応じて的確な行動をとることで私に
尽くしてくれてるわ。時々歯向かうのが珠にキズなんだけどね…」
「私はいつも必要に応じて行動しているだけです、総領娘さま」

 天界に住む天人くずれの比那名居 天子も自分の使者の有能さを
アピールします。さりげなく皮肉られているのは気のせいでしょう。

 さぁ一通り出尽くしたか、と思ったところにまだ一人いました。
地霊殿の主、古明地さとりです。彼女はまだ一言も喋っていません。

「『さぁ、貴方のご自慢の妹さんはいかが?』とでも仰る?」

 第三の眼、で他者の心を読み取るさとりは、誰の心を読んだか
知りませんがそれを言葉にした後、ふっ、と得意げに笑いながら
語りだしました。

「家事が得意だ?弾幕を構築するための魔力が高い?特殊な能力
持ち?そんなものワケないわ。私の自慢の妹、こいしは床上手よ。
妹の魅力の前にあらゆる異性は文字通り骨抜きにされるわ!」
「お、お姉ちゃん!?それって物騒すぎるよぅ…」

 そんなことを言われると思ってもいなかったか、思い切り動揺
しておろおろとうろたえる妹のこいし。しかし、さとりは続けます。

「最終的には殿方を喜ばせられるような技術が無ければ、ねぇ?
貴方達の従者はそこまで能がないのかしら?」

 突然空気が変わるのを感じました。おやおや、と霖之助が溜息
一つついています。

 そしてそこから凄まじい自慢合戦に発展してしまったのでした…



「この地底人は何を言っているのかしらね?うちの咲夜に不満を
抱く者など一人もいるとは思えないわ。ほどよい若さ、これが命よ」
「お嬢さま?」

 流石の咲夜もただならぬ空気を感じ取り、

「アリスちゃんだって指先鍛えているから、どこをどうすれば殿方を
喜ばせることが出来るか良く分かっているわよ?」
「お母さん!?」

 アリスは母親の暴走に驚き、

「藍が昔何人もの殿方を篭絡した手練れであるということは、
皆さんご存知のはずでしょう?男の一人や二人、楽勝よ」
「紫さま、お戯れを!(ああっ、やっぱりこうなるのか!?)」

 藍は語りたくない過去を無残にも主人に抉られ、

「イナバも負けちゃいないわよ。この兎の耳、尻尾、そしてこの
ほっそりとした体からは想像もつかないほどの熟れたかじt…」
「わぁわぁ輝夜さま、やめてくださいよぉ!」

 鈴仙は露骨にセクハラにはしる主を止めようと必死になり、

「年がら年中発情期の兎さんよりも、控えめで一生懸命に尽くす
妖夢のほうがウケがいいわよ。この未成熟なところが逆にそそr」
「駄目ぇ!幽々子さま、そんな風に言っちゃ駄目ですっ!」

 妖夢は自慢する傍らで露骨に挑発する主を止めようとして、

「それじゃあうちの早苗はその要素を全て併せ持った、文字通り
存在が奇跡ね!若いし、控えめだし、体つきもいいし!」
「よ、喜ぶべきか恥ずかしがるべきか複雑です…」

 早苗は主の自慢話に赤カブのように真っ赤になり、

「地上人如き、大したことなど無いわよ!衣玖の空気を読む程度の
能力の前に、男達は皆死屍累々になること間違いなしだわ!」
「総領娘さま、それでは意味が無いと思いますが」

 衣玖は主に冷静に突っ込みました。



―彼女達の自慢合戦が継続中です、しばらくお待ちください―



 それからどれほど時間が経ったのでしょうか?全員が喋り疲れて
グロッキー状態になった頃、紫が切り出しました。

「不毛な自慢合戦をしていてもキリがないわ。いっそのこと、誰が
真に優れているか素敵な殿方に決めてもらいましょうか」

 ああちょうどいい、そこにいるじゃないのとレミリアがあなたの
ことを指差すと、全員の視線があなたに向けられました。視線上には
霖之助も入っていましたが

「二重の意味で遠慮するよ。厄介ごとは御免だし、彼女達の視線は
はっきりと君に向けられているようだからね」

 柳に風、といった感じでかわされてしまいました。



 主はボクシングのセコンドのようにそれぞれの従者、自慢の娘に
つき一言檄を飛ばしています。

「咲夜!」
「お任せくださいお嬢さま。咲夜に不可能などありませんわ」

「アリスちゃん、大丈夫よね?」
「大丈夫よお母さん、今度そっちに行ったら結婚報告するわね」

「妖夢、負けちゃ駄目よ」
「いつだって全身全霊です、大丈夫、負けたりなんかしません!」

「藍、わかっているわね?」
「紫さまご心配には及びません。必ず勝ちますとも」

「イナバ、負けたらおしおきどころじゃ許さないからね」
「ううっ、どうしてこうなるんだろう…で、でも勝たなくちゃ」

「早苗、今こそ奇跡の力でゴールインよ!」
「帰ったらお二人に次世代の風祝をお見せします…!」

「衣玖、空気を読みなさい」
「空気を読んで勝利、その後駆け落ちなんて…ああっ」

「こいし、今こそ本気になるときよ。無意識の力を存分に活用なさい」
「え、えーっと…う、うん、やってみる!」

 文字通り逃げられない状態です。

 観念して誰か一人を選ぶべきだよ、幻想郷の少女達はタフだからね
と霖之助が肩を叩いて言いました。

 さぁ、あなたならどうしますか?

 コマンド?


新ろだ179


「ですから、元々外の人間なんですから外から来た守矢神社に住まわせるのが良いでしょう!」
「いいえ、稗田が預かったんですから、このまま稗田で預かります!」

 ぼんやりと縁側に座っている自分の目の前で、二人の女子が言い争いをしている。
 切欠は何だったのだろうか、途中から観戦している自分には知る由も無いが、文脈からそれが自分に関しての戦いだと推測された。
 ただ自分の何でそんなにも争っているのかが皆目見当も付かない。
 だから仕方無しにその争いを見守ることしか出来なかった。

 渡り廊下が軋んだ音を立て、誰かがやってきたことを告げる。
 だがその存外大きな音も目の前で白熱した少女たちには届かないらしく、依然言い合いは続いていた。
「久しぶりだな。変わりないか」
「おや、慧音さん」
 一つ頭を下げて挨拶すると向こうも同じようにして返してきた。
 そのまま慧音は自分の隣に座り、話を続ける。
「どうしたんです? こんなところに」
「いや、寺子屋で使う教科書について話し合おうと思っていたんだがな。妙な場面に出くわした」
 妙な場面。確かに全く妙である。そもそもこの二人の喧嘩自体が想定できない。
 恐らくは苦虫を噛み潰したような顔をしていただろう自分に慧音は言う。
「止めないでいいのか、あのまま争わせておいて」
「構わないでしょう。手を出すような人種じゃありませんし」
「それもそうだが。それにしたって、まあ」
 彼女はそこで一旦区切ると、じろじろと自分の顔を覗き込みながら言った。
「なんだか、随分と人事のような顔をしているじゃあないか」
 自分はそこで一つ溜息を吐き答える。
「それはまあ、余り関わりの無い争いですし。怪我をしないのなら放ってても良いでしょう」
「でもお前のことで争っているんだろう」
 すかさず言い返され、若干たじろぐ。
「とはいえ実感が湧かないのでどうにも。それに……」
 言い難い事、この場では特にだ、なので言い澱むが言う他無いので仕方無しに言う。
「それに直に向こうに帰りますしね」
「ああ、やっぱり帰るのか。いつぐらいになるんだ?」
 多少驚いたような調子で訊いてきたので、博麗の巫女との少し前の会話を思い出して答える。
「いつかは未定ですが、準備が出来たら連絡が来るようです」
「準備?」
 怪訝な顔をして問うてくる慧音に答える。
「ええ準備らしいです。それが帰らせる準備なのか、それとも自分の冬の準備なのかは判りませんが」
 それを聞いて納得したような表情を慧音はし、その話をやめて他の話を始めた。
 そして二人は向かい合って話をしていた為、阿求と早苗が自分たちのほうを向いて微動だにしていないことなど気付いてもいなかった。


「どういうことですか? 私を置いて居なくなるつもりなんですか?」
 空が暗くなったと思ったら、不意にそのようなことを言われた。
 どうやら太陽が雲で隠れたのではなく、阿求の体で隠れたらしい。
「前にも帰る心算だって言わなかったっけ」
「ええ言われました。言われましたとも」
 阿求の発した問いに答えると、自棄になった口調で言い返される。
「でも本当に帰る心算とは思いませんでしたよ。私にあんなことまでしておいて」
 慧音が不信げな目つきでこちらを見てくるが、この場では無視しておく。
「そうですよ、何で帰るんですか。ずっとこっちに居れば良いじゃないですか」
「いやだって、こっちいろいろ怖いし」
「妖怪が怖いなら、幻想郷縁起読んで勉強すれば良いじゃないですか。何ならきっちり教えますよ」
 自分が答えるとすかさず阿求が言い、早苗もそれに続いて言う。
「大丈夫です。神徳で護身しますし、術も教えます。早く神社に行きましょう」
 怖いのはお前らだよとは言え無い。言ったら後が怖いからだ。
「だから、神社に連れて行こうとしないで下さい。大体あそこじゃあ里に降りられないでしょう」
「空だって飛べるようにちゃんと教えます。何も不便になるようなことはありません」
 阿求と早苗の言い争いは先ほどにも増して白熱して行き、そこに自分の意思の介在する隙は無かった。
「こら、お前達やめないか」
「慧音さんは少し黙ってて下さい」
 余りの白熱振りに慧音が慌てて仲裁に入るが、阿求に即座に沈黙させられる。
「そうです。関係ないですから向こうでお茶でも飲んでてください」
 早苗にも言われ、慧音は縁側で不貞腐れたように壁に凭れて足を投げ出してしまった。

「もういいです。このまま神社に連れて帰ります」
 言って早苗は首を引っ掴むと、風を起こして空を飛ぼうとする。
 それを見て阿求は慌てて胴を掴み、浮遊を阻止しようとした。
「待って、早苗さん首絞まってる!」
「ちょっと辛抱してて下さい。もう少し上がったら抱えなおしますから」
 息を振り絞って悲鳴を上げるが、早苗には聞き入れられない。
 すると阿求が自分の腰に抱きつきながら煽るように言い放った。
「早苗さんですって、それが限界なんですよ。私には呼び捨てです。あなたとは違うんです!」
 それを聞くと、負けじと早苗も応戦する。
「友達程度にしか思われていないんじゃないですか? 親しき仲にも礼儀有りって言うでしょう!」
 だんだんと目の前が暗くなっていくのを感じながら、そんな喧騒を聞いていた。



 気が付くと布団の上に寝かされていた。
 見渡してみると畳敷きに障子戸、回廊と稗田邸と同じ造りの様だが部屋が少し大きい。
 こんな部屋があったのかと思いながら起きると、傍らに居た女性に声をかけられる。
「あら、もう大丈夫なの?」
 医者の類だろうか、それにしてはそれらしい服には見えないが、と内心訝しみながら返答する。
「ええ、なんとか助かりました。ありがとうございます」
 しかし彼女は小さな溜息を吐くと言った。
「残念だけど、助かってないのよ」
「幽々子様、紫様がお見えです。急ぎだそうですが」
 障子の外から声がかけられた。ここは――


新ろだ187


 妖怪の山の中にある川。深くはないが、決して浅いとも言えないそこ。
 そのすぐ傍にある石場に腰掛ける、三人。白狼天狗の椛と、河童のにとり、そして人間である○○。
 種族もばらばらの三人だが、それと関係なくこの三人は仲が良い。暇があれば○○は妖怪の山までやってくる
 し、にとりと椛もそれを歓迎する。

「それにしても、今日は暑いね」

 自分達を燦々と照らす太陽を見上げて、○○は呟いた。その頬には一筋の汗。

「そうだね、こんな日は川の中でキュウリを食べたら気持ち良いだろうね」

「にとりはいつもじゃない。でも、確かに今日は川で泳ぐと気持ち良さそう」

 そういう二人の顔にも、うっすらと汗が流れている。その視線は、じっと川の中を見ていた。

「じゃあ、泳ごう」

 言うやいなや、○○は着ていた服を脱ぎ始める。唐突に始まるストリップに、椛とにとりは手で顔を覆う。
 流石に下まで脱ぐ気はないらしく、○○は上半身裸で川へと飛び込んだ。ばしゃんと、水が跳ねて椛とにとり
 に微かにかかった。

「ぷは、気持ちいいよー。二人も泳ごうよ」

 水から顔を出し、○○は二人を誘う。河童であるにとりならともかく、椛には替えの服がない。それを言えば
 ○○も同じだが、男と女では少々勝手が違う。

「いいなぁ」

「椛に悪いし、私も遠慮するよ。○○だけ泳ぎなー」

「そう? 気持ち良いのに」

 残念そうに呟き、○○は水の中に潜る。その姿に椛とにとりは顔を見合わせて、笑う。普通なら下心があるの
 ではと疑う所だがこの○○、天然なので本当に水の中が気持ち良いから入ればいいのに、という考えしかない。
 そんな○○だからだろう、二人は○○が人間にも関わらず好意を寄せている。

「元気だねぇ」

「そうだね」

 楽しそうに泳ぐ○○。それを眺めて、にとりは苦笑して呟いた。リュックから取り出したきゅうりを、一口齧
 る。ぽりぽりという咀嚼音に釣られてか、椛も一つ頂戴と言ってもらう。
 それから暫く、○○が泳ぐ音と二人のきゅうりを齧る音だけが聞こえる。

「あ、二人ともきゅうり食べてる。ずるいなー」

「○○も食べるかいー?」

「食べるー」

 誘われて○○は泳いで岸へと近づいていく。しかし、その途中で不意に○○の姿が水中へと消えた。

『?』

 きょとん、として状況を見守っていた二人。次に○○が顔を出したとき、ばしゃばしゃと手で水を叩く音でよ
 うやく溺れているのだと気付く。

『○○!』

 服が濡れることなど構わず、慌てて川へと飛び込み溺れている○○を岸まで引っ張っていく。出来るだけ平坦
 な地面に○○を寝かせる。川から岸へと上がるとき、既に○○の身体はぐったりとしていた。溺れたときに水
 を飲み込んでしまったらしい。
 手に口をあてるが、息をしていない。このままではまずいと、椛はすぐに○○の気道を確保。鼻をつまみその
 まま顔を近づけて唇を―――

「ちょっと待った!」

 それを止めるにとり。なんで止めるのかと、椛はにとりを睨んだ。

「人工呼吸なら河童の私に任せな。その道に関してはプロだよ」

 そういい、椛を押しのけて○○に顔を近づけていく。その頬が、やけに赤く染まっているのに気付いた椛はそ
 ういうことかと気付き、にとりを押し退けた。

「にとりはただ○○にき、き、キスしたいだけじゃない! そんな不純な理由でするのなら、私がやる!」

「それは椛だって同じじゃない! ちょ、私がやるから椛は引っ込んでなさい!」

「わーたーしーがーすーるーのー!」

 ぎゃあぎゃあと、今にも死にそうな○○の横で椛とにとりは人工呼吸をする権限を巡って騒ぐ。その間も、○
 ○は刻一刻と死へと近づいているというのに。




 次に○○が目を覚ましたとき、そこは白玉楼の一室だったとかなかったとか。


最終更新:2011年02月26日 23:53