燐1




22スレ目 >>253 うpろだ243


 大晦日の博麗神社。
 遠くから聞こえてくる除夜の鐘に耳を澄まし、異変が立て続けて起こった今年の冬を振り返る。
 まず、地の底から間欠泉とともに怨霊たちが湧き出てくる、という異変。
 最初は地底深くまで潜ることを渋った霊夢と魔理沙だったが、妖怪達に進められて結局はいつも通りに異変を解決した。

 そしてもう一つの異変、通称“豪雪異変”
 何の捻りも無い名前で、ご察しの通り異常なまでに雪が多く降り注いだ事件である。
 故意に起こされたものではなく、とある冬の寒気を操る妖怪が毎日張り切って恋人の下に会いに行ったことが原因で起きた異変だった。

 ――これだけ聞くと地味に思えてしまうが、雪の所為で守矢神社の巫女の恋人が遭難してしまったからさぁ大変。
 巫女は奇跡を起こす神の力をフル活用して恋人を探し出し、鬼もかくやという勢いで神様二柱従えて道中の妖怪たちを軽々と打ち破り、
 あっというまに異変を解決してしまった。霊夢も形無しである。

 黒幕の妖怪と、その恋人はこの件でこってりと絞られたのでこの異常な雪景色も後少しで落ち着くことだろう。
 そう思うと、安心すると同時に少し勿体無く感じる。寒いのは嫌だが。

「――はぁ」

 炬燵と蜜柑、これ鉄板。思わず溜め息が出る程に。
 籠に積んであるオレンジ色の山のてっぺんから一つ摘み、皮を剥いて身を咀嚼する。
 口の中で潰れる果肉と溢れる果汁がたまらない。
 うむ、やはり炬燵と蜜柑の相性は最高だ。

「ゆーきやこんこん、あーられやこんこん♪」

 ――と、蜜柑の味に舌包みを打っていると廊下から霊夢の口ずさむ声が聞こえてきた。
 犬は庭で駆け回り、猫は炬燵で丸くなる、か。
 猫の橙曰わく、それは迷信らしいが。
 その当の本人が、炬燵で丸くなっているのはどういうことだろうか。しかも俺の胡座の上で。
 炬燵の中で丸くなる猫が橙だとしたら、庭で駆け回る犬は椛だろうか、それとも大穴狙いで咲夜さんだろうか。
 ……どちらにしろ想像すると中々にシュールな光景だが。

 そんな本人達に知られるとナイフとのの字弾幕をしこたま喰らいそうな妄想をしている最中、
 此方に近付いてくる足音が段々大きくなっているのを感じた。
 足音は影を伴って、この部屋の前でぴたりと止まり、シルエットの手が襖に掛けられて。

「失礼するけど、こっちに橙が――」

 ガラリと襖が開く。
 影の正体は、俺の膝で丸くなっている化け猫の主、八雲藍だった。
 どうやら橙を探していたらしく、俺と橙の姿を確認すると安心したように溜め息を吐いた。

「なんだ、そんな所にいたのか。道理で探しても探しても見つからないわけね」

 そう言うと俺のすぐ側に腰を下ろし、炬燵に足を突っ込んだ。
 必然的に視界に入るふかふかな金色の九尾。触ってもいいか、と聞くと快く承諾して一本を背もたれの代わりにしてもらった。
 柔らかい感触が俺と橙の体重を受け止め、いい具合に沈む。
 まるでどこぞの社長室のソファのようだ。もっとも、そんなソファには座ったことが無いので想像上の話でしかないけれど。

 暫くそうして高級な気分に浸っていると、蜜柑の皮を剥きながら藍が話を切り出した。

「……お前には感謝しているよ。橙のいい遊び相手になってくれて有難う」
「いえいえ、そんなお礼を言われるようなことじゃないですよ」
「そうでもないさ。ここ最近の橙は、お前のもとに遊びに行くのが楽しくて仕方ないらしい」

 少し嫉妬してしまったよ、と藍は苦笑した。
 確かに藍は殆ど橙の親のようなものだ。
 愛娘に関しては色々と複雑な心境なんだろう。

「そう言えば紫さんはどうなんですか?
 冬眠とかそこら辺」
「あぁ、確かにいつもなら冬眠している時期なのだが……」

 そう言葉を区切ると藍は再び苦笑した。今度は少しばつが悪そうに。

「なんでも、外界の恋人と一緒に過ごしたいから今年の冬は起きているそうだ。
 ……はぁ、起きているのなら仕事を押し付けないで欲しいのに……」
「あはは……。でもそのお陰で異変の時は助かったじゃないですか」
「霊夢の支援にはな。豪雪の時はまるで役に立たなかった」

 いつになく毒舌で愚痴る藍。
 しかしこのまま話がネガティブな方向に進むのもあまりよろしくない。
 ならばさてどうするかと首を捻っていると。

「ぅうん……」

 橙がもぞもぞと身じろぐ。
 そろそろ起きてくる頃合いか、橙が動き易いように足を広げてやり。
 寝ぼけ眼を開き、俺の顔をまじまじと見詰めてくる橙。
 そして、とんでもない一言を口にした。

「――お父さん?」
「ゴフっ!?」
「ゲホっ!?」

 俺のどこかに無き父の幻想を見たのか、心臓に悪い台詞を放ち。
 藍が緑茶を吹き出し、俺が喉に蜜柑を詰まらせた。

「……ぅ…うん…」

 そしてまた眠りに付く橙……やはり子供に夜更かしは無理な話か。

「……じゃなくて、だ」
「あぁ、大変だな“お父さん”?」

 素早く落ち着きを取り戻した藍はくつくつと面白そうに笑っている。
 ああくそ、頬の火照りが止まらねぇ。


△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽


 その後、取り留めもない話をして橙を引き取ってもらい。
 風邪をひいた恋人の家へ看病をしにいった霊夢を見送って、今は一人で新年を迎えようとしているのだが。
 首筋に感じる、剣呑な視線。

「……いるんだろ?」

 ――にゃーん。
 どこからともなく、鳴き声と共に現れる黒猫。
 二つに分かれた尻尾の持つ、赤い瞳の妖怪猫。
 俺は、こんな特徴を持つ妖怪は一人しか知らない。

「なぁ、お燐?」

 そう名前を呼ぶと、猫の尻尾がくるくると回り始めて。
 光を放ち、やがて人の形になり。
 俺の腹の上に乗り、お燐になった。
 不機嫌なのか、眉間に皺を寄せて頬を膨らませている。

「……」
「…怒ってる?」
「……」
「あのー……もしもし?」
「あったりまえじゃないのさ!」
「うわっ」
「うわ、じゃないよ! あんな雌猫に浮気して――」

 これは相当腹を立てていると見てよさそうだ。
 が、俺としてはお燐のそんな姿を見たくはないのでどうにかして鎮めないとい
 けない。いや、そんな姿も可愛いけどさ。

「大体、お父さんってなにさ!? お兄さんったらあんな雌猫に鼻の下伸ばしちゃって」
「いや、あれは妹とか近所の子供を相手にするのに似たような感覚で」
「ロリ? ロリなの!? 本物のロリなのかー!?」
「いや、落ち着けって」


 このままでは埒が開かない。開かないので――
 お燐の唇を、塞ぐことにした。


「ん!?……ん……」


 ただ重ねるだけのそれから、深く互いを求め合うものまで。
 たっぷりと時間をかけて、口付けをした。


「お兄さんはズルいよ……あたいがこうされたら黙ること知ってるくせに」
「でも、満更でもないんだろう?」
「……ばか」
「ばかで結構。俺が愛しているのは後にも先にもお前だけだよ」


 ぎゅうっと抱き付き、より強く体を密着させる。
 あぁ、今年の大晦日は長いことになりそうだ。
 しんしんと雪が降る外の景色を眺め、お燐と共に過ごす大晦日。


「明けましておめでとう、おにーさん」
「うん、今年もよろしくな」
「うんにゃ。今年どころか、未来永劫離してあげないよ」
「いやそれは困――らないか別に」
「えへへ」


 愛しい人と一緒に過ごす大晦日。
 愛しい人と一緒に迎える新年。
 あぁ、まったくもって最高だ。



23スレ目 >>522 うpろだ385


仕事から帰る途中に、猫が子供にいじめられてるのを見つけた。
猫好きの俺は黙っていられるわけもなく、指導『ハクタク式ヘッドバット』で懲らしめて、猫に謝罪をさせた。
うむ、いいことをした後は気持ちがいい。
「よしよし、ひどい目にあったな。もう大丈夫だ」
助けた猫を撫でながら言い聞かせてやる。
「お兄さん、ありがとう。お礼に地霊殿に連れていってあげるよ」
「地霊殿?」
「あたいのご主人様のお屋敷だよ」
「そーなのかー。……って喋った!?」
「そりゃ喋るよ。妖怪だもん」
……嘘だ。こんなに可愛い猫が妖怪なはずない。
「あ、疑ってるね? 証拠見せてあげるよ」
いうなり猫は、赤い髪をおさげにした女の子に姿を変えた。
ぴこぴこと動く猫耳と尻尾がその正体を告げ、どこから持ってきたのか、猫車を片手に携えている。
「じゃじゃ~ん!」
驚く俺に笑顔で話しかけてくる猫娘。
「さとり様の命令で、人間に手を出すことが出来なかったからね。さすがにあの子達を運んじゃったら、もうお仕事出来ないだろうし、困ってたんだ~」
「……」
目の前の猫娘は本当に妖怪だったらしい。
俺が通りかかって助かったな悪ガキども。
「で、お礼にお兄さんのことを、あたいのいるお屋敷でおもてなししたいなって。さとり様にも紹介したいし」
「いや、そこまで大層なことはしてないよ」
「そんなこといわないでさ。あたい、お兄さんのこと気に入っちゃったし、ご招待だと思って、ね?」
うーん。そう考えれば魅力的かもしれないな。
目の前の女の子は可愛いし、お屋敷となれば美味しいものや、珍しいものもあるかもしれない。
ちょっと遊びに行っても、ばちは当たらないだろう。
「じゃあ、案内してもらおうかな」
「本当? じゃあこれに乗って」
と、指差したのは先ほどの猫車。
確かに大きなサイズのそれは、俺が入るには十分だ。
「……えと、遠い?」
「大丈夫大丈夫。あたいの足なら半刻もかけないで行けるからさ」
「でも、これ」
「平気平気。普段はもっと重いの運んでるし。さあ、乗った乗った」
どうやら乗らないと話が進まないみたいだが、他に方法はないのか?
「乗ったね? じゃあ行くよ、クロネコお燐の特急便、しゅつど~う!」
言うなり、物凄いスピードで猫車を押す猫娘。
振り落とされそうになるのを、猫車の縁を掴んで支える。
「ちょっ……速すぎ」
「まだまだ行くよ~! 加速加速ksk~!」
顔面に強い風を受けながら何とか踏みとどまろうとするが・・・
「ぎゃあああああっ!」
掴んでいた手が離れ、頭に強い衝撃を受けた後、俺の意識は途切れた。

「お兄さん、起きて~。着いたよ~」
猫娘の声に目を覚ますと、そこにあったのは大きな屋敷だった。
確かに屋敷とは聞いていたが、まさかここまで大きいとは。
猫娘の主人ということは、妖怪だよな?
まさか俺、このまま喰われちゃうとか?
「大丈夫だよ。さとり様はちょっと怖いけど、悪い妖怪じゃないからさ」
尻込みする俺に声をかけてくる猫娘。
「付いてきて。さとり様に紹介するから」
というと、彼女は屋敷の中に入っていく。
慌てて後を追い中に入ると、しんと静まり返っていた。
目の前の猫娘の足音が廊下に響く。
歩く度に形のよい耳がピョコピョコ動き、すらりとした尻尾がゆらゆら揺れる。
なでたらきっと気持ちいいに違いない。
……触ってみたい。
ふらふらと手を出しかけて……
「着いたよ」
「……っ!」
急に振り返った猫娘に、慌てて手を引っ込めた。
「どしたの、お兄さん?」
「え、あ、いや、珍しかったもんでついきょろきょろと……」
「あはは、お兄さん意外と落ち着きないんだね」
イノセントな猫娘の笑顔が痛い。
……仕方ないじゃない
……仕方ないじゃない
あんなに可愛らしい耳と尻尾を触らないなんて、猫フェチの名が廃るってもんだ。
「さとり様、お客様を連れてきました」
俺が悶々としてる間に猫娘が部屋の戸を叩いた。
「あら、お燐。珍しいわね。
……へえ、人間の。 ……そう、助けてもらったの。
……そうね、私からもお礼を言うべきでしょう。
入りなさい。そこのお客様もご一緒に」
「さ、お兄さんも入った入った」
猫娘に引っ張られるままに部屋に入ると、そこにいたのは小柄な少女。
「ようこそ地霊殿へ。お燐を助けてくれたこと、感謝します」
淡々とお礼を告げる少女。
幼い割りにずいぶん落ち着いた物腰だが、彼女がここの主なんだろうか?
「お察しの通り、わたしがこの地霊殿の主、古明地さとりです。
ええ、名前の通り、さとりと呼ばれる妖怪ですよ。
そんなに警戒しなくとも、敵意が無ければこちらも何もしません」
こちらが疑問を浮かべるたびにすらすらと答えていくさとり。
「……会話が成立しないのは少し寂しい、ですか。
これは失礼しました。少しおさえましょう」
「そんなに気をつかわなくても」
「いえいえ、お燐が人間のお客様を連れてくるなんて初めてなので、わたしも少し興奮してしまったようです」
まあ、こんなところにただの人間が来られないわな普通
「それはそうとお燐、あなたまだ自己紹介していないようね。○○さんが名前を知りたがっているわ」
「そだ、忘れてた。改めまして、火焔猫燐だよ、お兄さん。
長ったらしいからお燐って呼んで」
「○○だ。改めてよろしく、お燐」
「じゃあ地霊殿を案内するよ。○○お兄さん、付いてきて」
いそいそと腕を引っ張るお燐。
「ちょっと待ってお燐、○○さんと少しお話させてくれないかしら?」
「……どうしてですか?」
少しだけ不機嫌そうにお燐が聞く。
「きちんとお礼が言いたいのよ」
「……分かりました」
しぶしぶといった感じで出ていくお燐。
お燐が出ていったのを確認して、さとりが話始めた。
「さて○○さん」
「なんでしょう」
「私はお燐とのことについてどうこう言うつもりはありませんが……」
そこで言葉を切りニヤリと笑うさとり。
「『そういう関係』になるなら、責任はとってくださいね」
「ぶっ!?」
行きなり何を言い出しますかこの方は。
「扉のむこうからはっきり聞こえましたよ……
『おりんちゃんのむぼうびなうしろすがたウフフ』」
「……曲解せんでください」
「冗談はさておき、お燐はあなたのことを気に入っているようですので、仲良くしてやって下さい。お願いします」
真面目な顔に戻ると深々と頭を下げるさとり。
「分かりました。こちらこそよろしくお願いします」
……確かに悪い妖怪ではなさそうだ。
「それと」
あげた顔は再び意地の悪い笑み。
「私に隠し事は通用しませんのでそのつもりで」
……タチの悪い妖怪ではあるようだ。
「それはどうも」

地霊殿のガイドお燐は、最初こそへそを曲げていたが、俺に友人の地獄鴉を紹介したり、
友人の地獄鴉が俺を死体と間違えたり、俺が友人の地獄鴉のエサになりそうだったり、
友人の地獄鴉に現在進行形でメルトダウンされかけてたり、そんなところを見ているうちに機嫌が直ったらしい。
と言うか、見てないで助けろ。
で、結局ズタボロにされて、しばらく地霊殿で療養するはめになった。
「あのままいけば俺の死体が手に入る、とか思ったんじゃないだろな」
「やだなあお兄さん、そんなことナイヨー」
「目を逸らすな、棒読みするな、頬を掻くな」
「にゃはっ」
「……まったく」
思わずため息をつくと、お燐が体を寄せてきた。
「でも、こうやってお兄さんの看病が出来るのは嬉しいかな」
「お燐?」
「なんだろうね? お兄さんと一緒にいると、ふわふわして、暖かくて、ずっと一緒にいたいなんて思っちゃうんだ」
胸板に頬を擦り付けるお燐。
驚いた拍子に手が跳ねて、お燐の慎ましいそこに触れた。
「ひゃっ!?」
思わずといった風に顔を上げるお燐。
やっぱり敏感なんだな。……ってそうじゃなくて
「ご、ごめん! わざとじゃないんだ」
「ううん、……その、お兄さん、ここ触ってみたい?」
「え?」
「……お兄さんなら、……いいよ、触っても」
顔を赤らめて、目を伏せるお燐。
触ってもいいって、本当に?
恐る恐る手を伸ばせば、目を固くつむりながらも抵抗しない。
……ごくりと生唾を呑み込む。
ゆっくりと伸ばされた手が、そこに触れた。
「……んっ」
やはり敏感なのか小さく声を上げるお燐。
強くしないよう、麓からてっぺんへと、優しく撫でていく。
柔らかい、ふにふにした感触が気持ちいい。
「……あ、んぅ」
撫でるたびにピクリと動くお燐。
「柔らかくて、ふわふわしてて気持ちいいよ」
「えへへ~。なんだか恥ずかしいな~」
その感触の良さを誉めてやると、はにかみながら触られている耳を動かす。
なんとなく幸せな気分に浸っていると、眠くなってきた。
「眠いの? お兄さん」
「うん」
「じゃあ、一緒にお昼寝だね」
言うなり猫の姿になって潜り込んでくるお燐。
温かくふわふわした感触が、胸を満たす。
その気持ち良さですぐに眠りに落ちた。

そんなこんなでお燐とずっと一緒にいた一週間。
どうにか怪我も完治し、一度帰宅することにした。
お燐と離れるのは寂しいが、家を開けてだいぶ経つし、移住するにしても準備がいる。
近所の人も心配してるかもしれない。
「ではお燐に送らせますよ。 ……ふふ」
さとりさん、そんなにニヤニヤして、貴女完全に読んでますね。
「聞こえてしまうんですからしかたないでしょう。
旧地獄がまた暑くなってしまいましたね」
「……えーと、あまりからかわないで下さいよ、さとり様」
「なんでしたら貴方達の想いを、一字一句発言しましょうか?」
……この人絶対Sだ。
「『お兄さんと離ればなれ寂しいよー』
『はあ、今夜はお燐と一緒に眠れないのか』
『家に押し掛けちゃおうかな』
『今度は俺の家に招待しようかな』
……ふーん、考えるタイミングまで一緒なんてねぇ」
「「勘弁してください」」
「わたしの機嫌は損ねない方がいいですよ、○○さん」
すいません、ホント許して下さい。
「じ、じゃあ行くよ○○お兄さん。乗って」
「あ、ああ」
恥ずかしさで真っ赤になりながら猫車に乗り込む。
今回は気を失わずに無事に人里に帰れた。

お別れのキスをしてお燐と別れ、久々の我が家へ帰る途中に人だかりを見つけた
重苦しい雰囲気と、線香のにおいから察するに葬式らしい。
俺がいない間に誰かなくなったのだろうか。
ちょうど近くに慧音さんがいるので尋ねることにした。
「慧音さん、誰か亡くなった方がいたんですか?」
「……ああ、避けられないこととはいえ、悲しいことだ」
ポツリと呟くように答える慧音さん。
「……どこの方ですか」
「ちょうどこの近くに住んでる青年……で…」
俺を見た瞬間に目を見開く慧音さん。
「で、……で、……」
その顔がだんだんと青くなっていく。
ふと気付けば、周りにいた人たちも俺に気付き、固まっていた。
一瞬の静寂。……そして
「出たあああああああああああああああ!!」
「ぎゃあああああああああああああああ!!」
「お助けええええええええええええええ!!」
「なんまいだぶ、なんまいだぶ、なんまいだぶ!!」
「悪霊退散、悪霊退散、悪霊退散!!」
響き渡る絶叫。
「え? 何、死んだって俺?」
聞けば一週間前お燐の姿を見た奴がいたらしい。
火車が現れた直後に俺がいなくなったので、みな俺がさらわれてしまったと思いこんだそうだ。
まあ、無理もないと言えばそうか。
ともあれ、俺はこうしてお燐と出会い、俺たちの恋愛模様はちょっとした語り草になるわけだが
…それはまた別の話



新ろだ861


「にゃぁ。」

ときて

「やぁ。」

あたいとお兄さん、猫と人間。一匹と一人のそんな関係。



あれは日課の散歩途中、猫(あたい)の気まぐれで入っていった、一本の細い見知らぬ道。
道と言っても獣道。周りよりほんのちょびっとだけれど、短い草が茂っている、自然に隠れた一本道。
舗装されてはいたのだろうけど、今は立派な獣道。獣の代表、猫たるあたいは、威風堂々進んだのさ。

尻尾をピーンと、腰をフリフリ、鼻をフンフンご機嫌で。自由気ままに冒険するのは、猫と子供の特権なんだ。
そしてあたいは猫だし子供。それはそれは愛くるしくて、黒い毛並みが艶やかな、小さな小さな子猫なのだ。二倍も楽しむ権利がある。
ここは何処だろ? 見知らぬ道だ。だけど気分はノスタルジックで。体を叩いていく草々や、地を這う虫に飛ぶ鳥達も、それらは何故だか懐かしかった。
それでもやはり見知らぬ道だ、目に映る全てが新鮮で。ノスタルジックで同時に新鮮。矛盾だろうか? 矛盾じゃないさ。

草で編まれた自然のトンネル、それは長くて短くて。時間の感覚が無くなる程には、猫(あたい)は夢中だったらしい。
夢中で抜けたトンネルの、その先に建つ一軒の家。夢中な猫(あたい)はその一軒家で、夢のような出会いをしたのだ。


そこに居たのは一人の青年。古い御家の縁側で、一人ぼーっと庭を見ていた。
はて、何故人間がこんな所に? ここは確か森の中。妖怪人外魑魅魍魎が、縦横無尽に跋扈する、そんな素敵な森の筈。
そんな危険な森の奥地に、冴えない青年が只一人。妖怪だろうか? 妖怪じゃないさ、あれはどう見ても人間だ。
むくりと湧き上がる好奇心に、猫のあたいじゃ逆らえなかった。そろりそろりと猫のまま、抜き足差し足忍び足。静かに彼に近づいた。

彼も庭先に現れた、一匹の猫(あたい)に気付いたようで、猫(あたい)に向けて微笑んだ。それはとても暖かな――。
突如あたいは停止する、胸に衝撃を感じたからだ。彼は当然訝しがった、突如の猫(あたい)の行動停止に。

トクン、トクン――。

その衝撃が、胸を突く。何度も何度も胸を突く。これは鼓動か、じゃぁ心臓だ。何かの病気を患った?だけども何か心地良い――。
当時のあたいはホントに無知で、鼓動の意味が分からなかった。そんなあたいは無知故に、混乱の極みに陥ったんだ。


どうにもおかしい猫(あたい)の様子に、その青年も疑問顔。だけどもすぐに納得したように、うんと一つ頷いた。
あたい自身が分からないというのに、その青年は分かった様子だ。期待をしつつ視線をやるけど、何故だかすぐに逸らしてしまった。
何だろ? 直視ができないんだ。どうしたんだろ、今日のあたいは。顔が火照るし、鼓動がうるさい。真っ直ぐ前を向けやしない。
俯く猫(あたい)に向け青年は、優しい声で一言いった。


「にゃぁ。」


後に聞いたところによると、お兄さんはその黒猫が怯えていると思ったらしい。
「恥ずかしいから忘れてくれよ……。」お兄さんはそう言うけれど、優しい思い出、からかいの種だ。早々忘れるものじゃない。


ともあれ青年が発した声で、またもあたいは停止したのだ。「にゃぁ。」鳴き声だ、猫なのこの人? いやどう見ても人間だ。
またも混乱する猫(あたい)だけれど、一つ分かったことがある。それはとても大事なことで、それは即ち――

この青年(お兄さん)は、優しいということ。

そして猫(あたい)は安心したんだ。何か体が変なのだけど、そんなことはどうでもいい。
重要なのは目の前の、優しげに微笑む青年(お兄さん)だ。
様子のおかしい猫(あたい)に向かい、「にゃぁ」と挨拶してくれた。優しい優しい青年(お兄さん)だ。
さあさあ、あたいも挨拶しよう。彼が猫ならあたいは人か? 逆転するのも楽しいな。
さあさあ、あたいも挨拶しよう。人間(ヒト)の言葉で挨拶だ。そいつは確か――


「やぁ。」


後々あたいは思ったけれど、この時本当に混乱してたね。まさか口から出た言葉が、「こんにちは。」じゃなく「やぁ。」なんて。
恥ずかしいから忘れてよ。度々お兄さんに言うけれど、「大事な思い出で、お燐のことだ。絶対忘れはしないよ。」そう返してくる兄さん。
――ちょっと嬉しく、恥ずかしい。


猫が喋ったその事実に、しばし唖然とする青年。そんな彼を見つめる猫(あたい)は、フフンしたりと得意げで。
外から見ると少し間抜けな、そんな一匹と一人のコンビ。それがあたいとお兄さん。

ともあれこうして始まったのだ。「にゃぁ。」ときて「やぁ。」な奇妙な関係。
奇妙だけれど温かで、温かだから大切な。唯一無二の陽だまりのヒト――、あたいの大事な猫だまり。


その後お兄さんのその家に、あたいは足繁く通い始めた。今は散歩以上のあたいの日課だ。
そして今はあたいが猫の姿で――


「にゃぁ。」


と来て。


「やぁ。」


とお兄さんが返事をする。そんな関係になっていた。


「やぁ? お兄さん、『に』が足りないにゃぁ?」
「……そりゃぁ、お燐は猫で僕は人間だもの、挨拶が『似ない』のも当然じゃないかな?」


戯れじゃれる、一匹と一人。笑顔が絶えないこの関係。
そんな関係を、あたいはとても気に入っているのだ。


「あれあれ? お兄さんおかしいなー、初めて会った時の挨拶は――。」
「……いや、本当にもう忘れてくれよ……。」
「無理無理! だってからかいの種なんだから。早々忘れられるものじゃないよっ。」


からかいからかわれ、一匹と一人。話題の絶えないこの関係。
そんな関係が、あたいはとても大事なのだ。


「そういうお燐だって、初めての挨拶は――。」
「あーあー! そっちこそもう忘れてよ!!」
「いやいや、無理だね。だって――」


今なら分かる。あの激しい鼓動の意味が。あれは一目惚れの音なのだ。
初めて見たお兄さんの笑顔に、あたいが参ってしまった音なのだ。


「――大事な思い出で、お燐のことだ。絶対忘れはしないよ。」
「……。」
「ん? どうしたんだお燐、突然俯いて?」


今なら分かる。お兄さんを直視できなかったその意味が。あたいは恋をしていたのだ。
笑顔から感じた陽だまりの『匂い』に、あたいはクラクラしていたのだ。だって――


「……お燐? 大丈夫か? どこか痛むのか?」
「……お兄さん――
「え?」


だって、だって、こんなにも――


「――大好きっ!!」


――お兄さんが、大好きなんだからっ!!










「にゃぁ。」

ときて

「やぁ。」

あたいとお兄さん、猫と人間。一匹と一人のそんな関係。






「にゃぁ。」

ときて

「やぁ。」

そんな素敵なこの関係が、ずっと続いていけばいいと、あたいは、そう思うのだ――。












(了)













チルノの裏)
お燐可愛いですよねお燐。前回は思わず絵に描いちゃったくらい可愛いです。
思いついて妄想し始め、暴走したテンションのままに書き上げてみました。

正直もっと長いのを考えてたのですけれど、書いている内に綺麗に纏まって……纏まってる、よね? ので、ここで切りました。
本当はさとりさんとか出してもちょっと山あり谷ありの、ほんのちょっぴり暗いストーリーの予定でしたが、止めました。

というか暗いのはつい数時間前に書き上げた幽々子様で十分だと思います。しばらくダークは要りません。




「やぁ? お兄さん、『にが足りない』にゃぁ?」
「……そりゃぁ、お燐は猫で僕は人間だもの、挨拶が『似ない』のも当然じゃないかな?」

の会話はちょっと分かりづらかったですかね?
「やぁ」+「に」=「にゃぁ」みたいな。
『にが足りない』から『似ない』みたいな。
もちょっと分かり易い言葉遊びをすればよかったですね。



ともあれ読んで下さった方々に感謝を。また次の作品で会いましょう。





Megalith 2013/04/07



……オニーサン?

そこにいるのはオニーサンかい!?

やっぱりだ。オニーサンだ! オニーサン、オニーサン!

うわっ、ヤダ、涙が、あぁ……オニイサン……

やっと……会えたね、オニーサン

よかった。もしかしたら『今回』は会えないのかと思ってほとんど諦めてたよ

えっ? アタイがだれかだって?

うぅっ、グスッ……アタイは火車の「火焔猫 燐」。みんなからは「お燐」って呼ばれてるよ

オニーサンもアタイのことはお燐って呼んでね

……いや、呼び捨ての方が良いかな

いやいや、「オマエ」というのも捨てがたいね……

なんでもいいや、とにかく会えて良かった……

あぁゴメン、ちょっと待ってて、今私ひどい顔してるよね

タオルが無い……オニーサンの服借りるね

……前と同じオニーサンの匂いだ

暖かい……

離れないで、もう少しこのまま……


まだダメ、もっと―――――――――――――――――――――




――――――――――あぁ、もういいよ。ありがとうオニーサン

ゴメンね、急にこんなことになって、ワケわからないよね

私がオニーサンのことを知ってるのかだって?

うん、知ってるよ、オニーサンのこと

世界中のだれよりもオニーサンのことを知ってる

まぁ、見つけることはできなかったけど

でも、また会えた

やっぱりアタイはオニーサンのことを誰よりも知ってるね

こんな所で立ち話もなんだから、場所を変えよっか

近くに行きつけの神社があるんだ

博麗神社って言うのよ、知ってると思うけど

それでね、そこの桜が凄く綺麗なのよ。一緒に見ましょ!

巫女? あぁ、大丈夫よ。あそこのお姉さんとは仲が良いの

それに私は悪い妖怪じゃないモン。退治される筋合いはないね

……そこにある死体?

これは……元から死んでた人間だよ

それも罪人の死体。……本当だよ? 火車は罪人の死体にしか興味ないの

いいから、ほら、早く行こうよ

細かいことを気にしてると、せっかくの桜がはげちゃうよ?

枯れ木に死体を吊る下げてお酒っていうのも悪くないけど

やっぱり満開の桜に死体を貼り付けるほうが、ずっとお酒がおいしくなるよ!






……着いたね。お姉さんは留守かな?

ちょっと待ってね。たしか倉庫にお酒のストックがあったはず……

……あったあった。せっかくのお祝いだから、ちょっと良いやつもらおっか

お姉さんには……ナイショよ?





さて、話を戻そっか

アタイはね、生まれ変わる前のオニーサンの恋人だったの

信じられない? でも本当なんだよ? 私にはわかる

同じ匂い……同じ顔……同じ魂の色……

怨霊以外は専門じゃないけど少しくらいならアタイにもわかる

それに出会うだけでアタイの体がおかしくなるもん

それも一度じゃない

何度も、何度も、オニーサンが死ぬたびに、生まれ変わるたびに

アタイはオニーサンを探して……

ふとすれ違えば、体が、心が、オニーサンに向かっていったよ

何千年も前からそれを繰り返してたの……健気でしょ?

でも、幻想郷が外界から隔離されちゃって


それから探すに探せなくなって

これはもうダメかなって思ってた

そしたら、オニーサンの方から会いに来てくれた

今のオニーサンは幻想郷で生まれたの? それとも外界から来たの?

……そうなんだ、外から来たんだ

素敵。やっぱりアタイとオニーサンは運命の赤い糸で結ばれてたんだね

これでオニーサンが私のことを覚えていてくれてたらもっと素敵なんだけどねぇ

……冗談だよ。いいのよ別に

所詮は妖怪と人間。ここまでうまくやれてたのが奇跡なんだから

高望みはしないよ。これまでだって「オニーサン」止まりの関係で終わったことも少なくなかったし

会えるだけでアタイは凄く幸せなのさ

オニーサン。アタイとトモダチになってよ

別に好きにならなくていいからさ

そのかわり嫌いにならないで

毎日、アタイにそのパっとしない顔を見せてよ





ねぇ、オニーサン

アタイのこと、興味無い? 嫌い? それとも……好き?

……好きなの?

一目惚れしちゃった?






ニャハハハ! オニーサンはあれかな? 八方美人さんかな? あれっ、意味が違った?

初対面の妖怪に好きだなんて……女の子が大好きなのかな? それとも……

……本当に赤い糸ってやつを……信じていいのかな?

ねぇ、今のオニーサンの名前を教えて

そう、○○って言うのね

じゃあ、これからはオニーサンのことを○○って呼ぶね

本当は名前で呼ぶの好きじゃないんだけどね

なんだか前のオニーサンと別人な気がしてさ

でも、そういうのはちゃんと受け入れないとね

事実記憶が無いわけだし、別人みたいなもんだよね

それでも○○のことが好き

優しい優しいオニーサン。妖怪の私にも優しいオニーサン

いつもアタイのことを見ていてくれた

だから代わりにアタイが生まれ変わったオニーサンを探した






よかった。ずっと探し続けてて

○○にまた好きって言ってもらえた

ゴメンネ、○○。アタイ嘘ついた

本当は恋人だったことなんて一度も無いの

次死んだらもう会えなくなるんじゃないかって

知らないうちにアタイ以外の女の子とくっついてたりするんじゃないかって

いろいろ心配しちゃってさ

それで、なんかオニーサンとそういう関係になるのが怖くなっちゃって

でも、もう大丈夫

○○がまたアタイのこと、好きって言ってくれたから

ちょっと待って、お酒飲むから

ング………ン……………ゴク…………………………………んっ



プハッ! ハハハッ! ○○、アタイ、今すごく酔ってるからね

酔っ払いの言うことは聞き流していいんだからね




……ねぇ、オニーサン、いや、○○




アタイは……………








私は幾千年もかねてより貴方のことをお慕い申し上げておりました




どうか、この手を






引いてはいただけませんか?



うpろだ0025




「俺って猫好きなんだよね」
「何を唐突に」
「いや、話題が無く」
「私も猫だけど?」
「お燐はこう……猫と人が合体して二つの良さがあるよな」
「猫耳とでも言いたいのかしら?」
「その通りだ」
「これでも耳が4つあるんじゃないかって皆から言われて昔は苦労したのよ?」
「可愛いから良いじゃない」
「そういう人が沢山いれば話が簡単に済んだんだろうけどね」
「今はどうなんだ?」
「そんな些細な事気にしてる人なんて見たことある?」
「あぁ……」
「地獄は心が広いのよ」
「やることも壮大だがな」
「あれはお空の勝手な暴走でしょうが」
「まぁな」

そしてふと思う事が一つ

「なぁ、猫に変身できるのか?」
「変身って……私は化け猫よ?」
「じゃあ変身してみてくれよ」
「嫌」
「即答だなおい」
「あの姿窮屈で仕方ないんだから」
「今の状態の方が自由でいいと?」
「そうに決まってるじゃない」
「つまらんなァ」
「つまらなくて結構よ」
「見てみたいなァ……」
「催促しても無駄よ」
「ちぇっ」
「はいはいじゃあ今日は帰った帰った」
「もうそんな時間か」
「夜は物騒でしょうが」
「へいへい、またなお燐」
「またね~」

惜しいなァ……変身してくれたら愛猫家の俺が物凄い勢いでじゃれるのに
猫飼いたいけど、家の周辺の猫はなんか懐かないんだよなァ……不思議だ
もしかして俺……猫に好かれてないんじゃなかろうか

~翌日~

「お~い、おり~ん、遊びに来たぞ~」
「あら○○さん」
「おぉ、さとり」
「お燐に会いに?」
「それ以外考えられんな」
「でもその割にはお燐が居なくても遊びに来てくれるんですね」
「偶然だよ」
「はいはいそういう事にしておきますよ」
「んでお燐は?今日は不在って聞いてないんだが?」
「おかしいわね……今日は出かけるって聞いてないんですけどね」
「まぁ探すよ、ありがとな」
「居たら連絡しますね」
「了解」

急用でもできたか?いや、それならきちんとさとりに言うだろうし……
まぁ居なかったら今日はお空達と遊ぶかねェ……ん?

「ニャアアアン」
「猫?しかも黒猫……」
「あ、○○」
「ようお空、この猫どうしたんだ?」
「私も知らないの、今朝ふと気づいたら居たんだけど」
「迷ったんかねェ」
「どうする?」
「愛でる」
「え?」
「俺は黒猫が大好きなんだ、この毛並みの艶々が堪らん」
「本当だ、(サラサラ)凄く綺麗だ」
「ニャアアア!」
「もう少し優しく触ってやれ、多分驚いてるんだ」
「ニャアアン……(スリスリ)」
「なんかこの猫○○にすごく懐いてるね」
「珍しいな……うちの周りにいる猫は威嚇したりすぐ逃げたりするのに」
「良かったね、存分にじゃれてあげたら?」
「そうだな……よっと」
「ニャッ!」
「ほれほれ~こっちだぞ~」
「ニャアン!ニャアン!」
「猫じゃらしって凄いね……」
「だな、野生の本能みたいなのがあるんじゃないか?」

ベシッ

「もう捕まえやがった」
「俊敏というか……慣れてるのかな?」
「お空もやるか?」
「ううん、見てて楽しいから見てる」
「そうか、じゃあ今日は思いっきり遊ぶかァ!」
「おー!」

~三時間後~

「スゥ……スゥ……」
「流石に遊び疲れたのかな」
「そう……みたいだな」
「○○も結構はしゃいじゃったね」
「寝るわ……グゥ」
「早っ」
「スゥ……ニャァン……(ベシッ)」
「フムゥ……(スッ)」
「あ、防いだ」
「ンウゥ……」
「……ニャア」
「なんか危なっかしいな……そうだ」

~さらに四時間後~

「ん……?(ワサワサ)」
「おに~さ~ん(ギュッ)」
「!?……何故お燐が」
「うふふ~逃がさないよ~」
「しかも寝言か」
「あ……待ってよ……」
「……ったく(スッ)」
「ふみゅう……」
「あらあら、お邪魔だったかしら?」
「さとり……見て分からんのか?」
「2人して仲が良いわね」
「んまぁそうだが……お燐はいつ帰ってきたんだ?」
「え?一緒に遊んでたじゃない」
「はぁ?お前何を言って……あ」

昨日お燐は猫に変身できると言っていた。それに突然の黒猫出現……
そしてようやく辻褄が合う、あの黒猫はお燐だったのだ。

「……気が付かなかったのね」
「俺今日色々しちゃったぞ……」
「てっきり知ってるものかとばかり」
「逃げようにも逃げられんし……」
「楽しみね~」
「この鬼めが」
「私は妖怪よ?」
「グヌゥ」
「まぁ精々イチャイチャしてなさい、邪魔者は退散するわ~」
「……」

言い訳とか考えてないし、それ以前に俺はあの猫がお燐だと言う事に気が付くべきだったのでは?
お燐……怒ってるかなァ……

「ん……あ、○○」
「お、おはようお燐」
「……って、えええええええ!」
「えええじゃないだろえええじゃ」
「あ、知ってたのね」
「今さっきさとりから聞いたばかりだがな」
「通りであんな大胆な事が出来たわけね」
「でもどうして黒猫なんかに?」
「気まぐれよ気まぐれ」
「本当か?」
「本当よ」
「……(ジイイイイ)」
「……(プイッ)」
「嘘だとばれてもまだしらばっくれるか」
「あああもう!言うわよ!」
「素直でよろしい」
「……貴方が猫好きって聞いたから」
「あぁ……」
「気に入ってくれた?」
「勿論だ、いい気休めになったよ」
「えへへ……嬉しいな」
「俺もお前も満足でハッピーエンドだな」
「でもよく見ず知らずの猫にじゃれつけるわね」
「俺は可愛い物が大好きなんでな」
「顔に似合わずって奴ね」
「うるせェよ」

一応これでもテディベアとかぬいぐるみ系統は好きだったりする
それで小さい頃とかは苦労したもんだ、趣味が男っぽくなくてな

「それで?さっきみたいに顔と顔近付けたり、お腹の上歩かせたりしてみる?」
「あれがお燐だと思うと恥ずかしくなるな」
「わ!私だってヤバいくらい心臓がドキドキしてたんだからねっ!」
「俺だって……今更だがな」
「でも少し嬉しかったかも」
「ほぅ?」
「普段はあんまりそういうことしてくれないじゃない?」
「して欲しいのか?」
「少しは……ね」
「言えばいいじゃないか」
「言ってやってくれるとでも?」
「……はぁ、ほれ(スッ)」
「うわぁ!いきなり顔を近づけないでよっ!」
「さっきと同じことをしただけだが?」
「もう……バカ(スッ)」

チュッ

「お熱い事で」
「そうですね~(ニヤニヤ)」
「なッ!」
「さ!さささささとり様!それにお空も!」
「さっきみたいな事するんじゃないんですか~?」
「ですか~?」
「お前ら本当に趣味悪いな」
「見せつけてるような物じゃないんですか?」
「ですか~?」
「お空……後で遊んでやるからそこの妖怪燃やしてくれ」
「無理」
「じゃあ外の世界に連れて行ってやろう」
「爆符『ペタフレア』!」
「お空!」
「冗談だよお燐、そんな事したら……後が怖いもの(ガクガク)」

改めてさとりが恐ろしい妖怪だと思った……此奴はどんな教育を施しているんだか
お空が真顔で怖いって言うシーンとか普通じゃ見れないもんな

「じゃあ邪魔者は」
「退散しますかね~ごゆっくり~」
「なッ!ちょッ!まッ!」
「向こうに行っちゃった……どうする?」
「んじゃ、あちらさんのお言葉に甘えますかァ」
「そう……だねっ!(ギュッ)」
「随分大胆になっだな」
「あんな大胆なアピールされたんじゃ……ね」
「へいへい」

そんなある日の出来事



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最終更新:2013年07月05日 23:43