ナズーリン3



Megalith 2011/11/22


「いやはや、いつも助かるよ。男手は地味に必要なものだからね」
「これくらいお安い御用だよ。むしろ楽しいし」

 里で買い物をして、メモを持つナズーリンと荷物持ちをしている○○。日ごろよく見かける光景だ。
 一部の店主達はまるで夫婦だとはやし立てるが、お互いそんなもんだと達観しているため好意として受け取っている。
 そしてある店のところに来ると○○は目を輝かせる。

「あ、あのさ、ナズ?」
「ああ、分かってるさ。買うものは全部買ったから、遅くならないうちに帰ってくるんだよ」

 ナズと分かれて○○は香霖堂の中に足を踏み入れる。
 相変わらずよく分からない物がごちゃごちゃと置かれて、少し埃臭い香りが鼻につくが、この匂いが○○は好きだ。

「霖之助さーん、おじゃましますよー」
「ああ、ごゆっくり」

 奥で文々。新聞を読んでいるここの店主は○○の来訪に軽い返事をしてまた新聞に目を戻す。
 そんな中彼はある一角、骨董品が並べてある場所に足を進める。数少ない○○の趣味である。
 高額な目利きはできないものの、出来のいい一品を見つけることにはそこそこの力がある○○。
 ある宴会のときに彼の目利きはナズーリンから分け与えられたものじゃないのか、とそこから少々下世話な話に逸れてしまったが
 当人である二人は皆の想像に任せると、あっさり受け流した。

 今回はそんな良い品物はないか、としばらく物色をしていた○○はある茶器の前で足を止めた。
 暖かみのある、それで純朴な湯呑みを見つけた。しばらくそれに目をとられていたがふと頭をよぎったものがあった。

(そういえば、ナズーリンに似合いそうだ。この湯呑み。渡してあげたらよろこぶかな……)

 そう思い立ち、○○は霖之助と交渉することにした。

「すみません、この湯呑みいくら位ですか」
「どれどれ……。相変わらず陶器に関しては目利きがいいね。そうだな、値段は――」
「……ぐぅ、今の手持ちでは足りませんね。もう少し勉強することはできませんか?」
「いやいや、これでもそれなりに譲歩はしているよ? うちに来る者の中ではちゃんと代金を払ってくれる大事なお客様だからね」
「うぅ……。すみません、今回は諦めますが、そのうち取りにきます」
「分かった。ではこれに○○推薦と値札でも掛けておけば魔理沙が持っていくかもね」
「あはは……止めてください……」

 仕方なしに香霖堂を後にする○○、命蓮寺に帰る道すがら考え続けた。

(うーん、あれは是非とも手に入れたいんだが、ナズから貰うおこづかいじゃあと半年くらい溜めないと……
 それじゃ間違いなく魔理沙が持っていってしまうだろうしなぁ……。聖に相談してみようかな……)





 ◆     ◆     ◆





 それからしばらく日にちが経った命蓮寺。廊下を歩きながら○○を探すナズーリン。

「ふむ……、最近○○はどこへ出かけているのやら。聖に聞いてみても笑顔ではぐらかされてしまうし、別段悪いことをしているわけでもなさそうだ。
 しかし、一度気になってしまうとダメだな。何をしても彼のことが頭から離れん。ちゃんと話をつけるべきか……」

 そんなことを考えつつ歩いていると前から寅丸 星が歩いてきた。駄目元でいいか、とナズーリンは彼女を呼び止めた。

「ちょうどいいところにご主人。○○の行方を知らないかい?」
「ふぇぇっ!? し、知りませんねー。どっかお使いにでも行っているのではないですか……?」

 ……まったくこの主人は隠し事に弱くて仕方が無い。もう少しポーカーフェイスというものを身につけてほしいとナズーリンは思いつつも
 足がかりを見つけたのは幸いとしてもう少し彼女の証言を揺さぶることにした。

「おやおや? その動揺ぶりからはまったく彼の行方を知らないという訳でもなさそうだ。もしかして○○はいけないことに手を出して……」
「そ、そんなことはありません! 彼は健全です! むしろそこまで思われている貴女の方が羨まし……ハッ!?」
「ふむ、どうやらご主人は○○が何をしているか詳しく知っているようだ。ちょうど居間に近い。ゆっくりお茶でも飲みつつ話し合いをしようか?」
「あぅぅ……すみません○○……私が至らないばっかりに……」

 しょぼくれる星を連れて軽い注意と共に彼のことを聞きだそうと居間に向かった。



「いらっしゃいま……うえぇっ!? ナ、ナズーリンっ!?」
「おやおや、お客様に対してその反応は無いんじゃないかな?」

 里の一角、とある茶店での会話。じゅうじゅうとおいしそうな音を立てているたこ焼きをくるくるとひっくり返しながら驚いている○○。
 作務衣姿もなかなか……と余計な方向に思考が向かう前にナズーリンは彼に疑問を投げかけることにした。

「で、こんなところで副業に勤しんでいるとはね……。ご主人を問い詰めたらあっさり白状してくれたよ。さて、これから弁明を聞こうと思うのだが?」
「はぁ、分かったよ。もう少ししたら休憩時間に入るからそこで話をしよう」

 じゃあ、奥の席で待っている、ついでにたこ焼きと飲み物を二つ頼むとナズーリンは店の中へと消えていった。



「さて、何故こんなところで○○はバイトなぞしていたのだ? 私に話を通してくれればおこづかいの値上げも視野に入れたのだが?」
「そ、それは、できれば自分の稼いだお金で手に入れたかったものがあってさ、今日ちょうどその金額が溜まったから買ってこようかと」

 少し奥ばった席でたこ焼きをはふはふと食べながら話をする二人。
 どうやら詳しい事情を聞いているらしい店の若い女性従業員陣はニヤニヤしながら二人の状況を楽しんでいる風である。

「ほぉ……。ところでそれは私がついて行ってもいいものなのかな? ああ、春画を買いたいというなら謹んで辞退させてもらうが」
「はぁ……。できればナズーリンには内緒にして買いたかったものなんだけどなぁ。いいや、手間が省けたと思えば」
「それじゃ、仕事が終わるまで私はしばらく時間を潰してくるよ。だいたいの時間になったら戻ってくるさ」

 かたりと、席を立ち店を後にするナズーリン。○○もまた焼き場に戻ってたこ焼きを焼き始めた。
 そうして軽く日が傾きかけた辺りで、二人は合流し、香霖堂に向かった。
 香霖堂に着き、○○は店主である霖之助に声を掛け、あの湯呑みを現金と引き換えに渡してもらった。

「はい、これナズーリンに」
「これは……」
「本当はちゃんとプレゼントとして渡してあげたかったんだけどね。バレてしまったんじゃしょうがないし」
「ふふふ……それでもうれしいことには変わらない。ありがたくいただくとしよう」

 大切な宝ものを扱うようにぎゅっと胸に抱くナズーリン。その笑顔が見られただけでも胸が高鳴ってしまう。

「おいおい、お二人さん。あんまりここで愛を育まれてもこっちには毒にしかならないよ。それにここから命連寺は遠い。
 遅くなる前に帰った方がいいんじゃないかな?」

 微笑ましいものを見せてもらった、と言わんばかりの表情をして二人を冷やかす霖之助。
 人目を憚らずイチャついてしまったことに少し顔を赤くしながら、またいいものがあったら買いに来ますと言って香霖堂を後にした。





 ◆     ◆     ◆





 命連寺に帰ってきて夕飯を食べた後、いつもの通りにナズーリンと一緒にお茶を飲むことにした。

「ああ、そうだ。私の方からも○○に渡したいものがあった。どうぞ」

 ことりと置かれたものは先程ナズーリンにあげた湯呑みとそっくり、というよりもどう見ても同じものとしか思えないものだった。

「…………? あれ、これナズーリンにあげたものじゃ?」
「いや、こちらは私が里で見つけ、○○に似合いそうだと思って取り置いて貰った品だ。
 まさか○○も同じものを見つけていたとは分からなかったが」

 二つ同じ湯呑みにお茶を注いでまったりとくつろぐ。

「うん、おいしい。それに同じ湯呑みってさ、あの、まるで……夫婦みたいだね」
「ああ、私もそう思った。いいな、君と夫婦か……いつかこの指に似合う指輪、くれるんだろ?」
「もちろん」

 ぽかぽかと暖まった身体。くいくいとナズの袖を引いて彼女を見つめる。分かっていると言わんばかりに○○の胸に飛び込む小さな賢将。

「あったかいな……」
「ナズ、良い匂いがする」

 きゅっと抱きしめてナズーリンの香りを胸いっぱいに吸い込む。
 指で梳くとサラサラと合間からこぼれる絹糸のような柔らかな銀髪。

「○○、何度でも言うけれど、私は君のことが大好きだ」
「俺だってナズのこと、大好きだよ」

 ○○の背に手をまわしてもっと、もっと彼と密着する。
 こつんと額をつっくけてお互いに笑顔を見せ合い、心が満たされる。
 愛おしい。とても愛おしい。自然に唇を重ねて愛を交換しあう――

「なぁ、○○」
「ん……」
「こんな幸せが長く続くといいな……」
「続くさ……きっと」





 Fin


35スレ目 >>347


無縁塚 ナズーリンハウス

ナズーリン「風邪をひいたしまったぞ…ズビ」

ナズ「こういう時一人暮らしは辛いところだな…誰も面倒見てくれる人がいない」
ナズ「lineで連絡いれとくか…風邪引いたので今日は行けませんっと…」スッスッ
ナズ「薬を買いに行きたいが苦しくて行けそうもないな…ゴホッゴホッ」

ナズ「ゴホッゴホッ…ううっ…うーっ…苦しい…苦しいぞぉ…」ゼェゼェ

あー…ひんやりして気持ちいいぞ…誰かがタオルを乗っけてくれたのか…

トントントントン グツグツ

誰かが料理してる音が聞こえるぞ…

○○「起きましたか」
ナズ「○○じゃないか…勝手に乙女の家に上がるなんて感心しないなゴホッゴホッ」
○○「乙女なんてどこにも見当たりませんけどね」
ナズ「これは手厳しいゴホッゴホッ」
○○「もう少しで飯できますからゆっくりしててください」
ナズ「すまないね…ハァハァ」

○○「お粥できましたよ、食べられますか」
ナズ「あーんして欲しいところだが贅沢は言えないね」
○○「いいですよ、ほらあーん」
ナズ「む、むぅ…どういう風の吹き回しだい?や、やめたまへ恥ずかしいじゃないか」
○○「羞恥心あったんかいお前」
ナズ「あるよ失礼だな」

○○「時間潰しの為にDVD借りてきましたよ」
ナズ「ほほう、助かるね。何を借りてきたんだい?」
○○「トム・ヤン・クンです」
ナズ「病人にアクション見せんな」

ナズ「うーっ…うーっ…」ゼーゼー
○○「大丈夫か?」
ナズ「苦しいぞ…苦しいよぅ…」
○○「…せっかく聖住職のもとで修行しているというのに、こんなときホイミのひとつもできんとはな…」
○○「私にできるのは手を握って元気づけてあげることぐらいです」ギュッ
ナズ「うーっ…うーっ…」
○○「できることならかわってやりたい…」

ナズ「…ぅ」
ナズ(眠っていたのか…今何時だろう…ん…誰か手を握って…)
○○「…」
ナズ「やぁ…」
○○「なんか飲むか?」
ナズ「頼むよ」
○○「えーっとペカリは…」ガサゴソ
ナズ「君、タンス漁ってないだろうね…まぁ看病のお礼だ、一枚くらい見繕っても構わないよ」
○○「…誰がお前の下着なんているかドラゴンラナすんぞ」
ナズ「フヒヒ」
○○「はぁ…眠ってる間はあんなかわいいのになぁ…起きたらこれだもん」
ナズ「!」
○○「あったあったほらペカリスェット…ん?」
ナズ「…うー///」
○○「顔赤いぞ?ぶり返してきたか?」
ナズ「な、なんでもないよ///」



ナズはちょっかいとか悪戯とかして気をひこうとする構ってちゃんだけど
いざ向こうからアクション起こされるとタジタジするタイプという俺の妄想

35スレ目 >>399


ナズーリン「君ってよく命蓮寺にいて平気だな」
○○「と、いいますと?」
ナズーリン「私が言うのもなんだけど美少女美女揃いの中で男一人(雲山除く)で生活してて、劣情を催したりしないのかなって」
○○「ホント『なん』ですね」
ナズ「ホント失礼なやつだなたまに思うけど私のこと嫌いなのかな」
○○「嫌いだなんて一言も言ってないだろこうやって軽口言えるのは賢将ぐらいなんだから」
○○「喧嘩するほどなんとやらって、賢将との関係は大事だよ」
ナズ「……っ!…っと、君が私に劣情を催していたとはやれやれ。言ってくれれば相手するくらい吝かではなかったというのに」
○○「好きだとも言ってませんけどぉ」

○○「まぁ、そうですね。そういうことに関してはまだまだ『未熟』ですね」
ナズ「魔法使いだったのか」
○○「誰が経験について語ったよ精神修業に関して未熟って言ったんだよ」
ナズ「じゃあ経験はある?」
○○「まぁ人並みには」
ナズ「ふぅん…」
○○「どうした?」
ナズ「い、いや?なんでもないぞ…」

ナズ「でも君そういう欲とは無縁だと思っていたよ」
○○「所詮は雄だと言うことです。本能と言ってしまえばそれまでですが三大欲求ですから、切っても切り離せないでしょう?」
ナズ「えっ『切ってた』のか、なんか悪いこと聞いちゃったかな」
○○「部位じゃねぇよ」

ナズ「じゃあ好みのタイプとか」
○○「そうですねぇ、自分の意見はハッキリ言ってくれるようの芯の強い女性ですかね」
ナズ「性格じゃなくて、ホラ」
○○「えー…さすがに女性とそのような話をするのは気が引けますし…」
ナズ「まず君が私のこと女性として扱っているつもりでいるのに驚いたぞ」
○○「そりゃぁ毎度俺の尻触れば色んな尊厳なくなるでしょ俺に原因があるみたいに言わないでください」

ナズ「例えば命蓮寺の中なら」
○○「それ一番聞いちゃいけないやつでしょ」
ナズ「どーせ聖だろ?」
○○「住職にそんや邪な気持ち抱いたりしませんよ!!」
ナズ「それ毘沙門天様にも同じこと言えんの?」
○○「………い、言えないです…」
ナズ「正直というか嘘つけないというか」

○○「ぶっちゃけると一輪さんのお体が結構好み…だったり」
ナズ「ダークホース!?」
○○「スレンダーよりも多少ムチムチしてる方が好みで…」
ナズ「一輪体型に関しては結構コンプレックスあるから目の前じゃ言わないことをおすすめするぞ」
○○「くれぐれも内密にお願いしますよ!」
ナズ「君は響子が好きだからてっきりロリコンだと思っていたんだがな」
○○「俺を何だと思ってんだ」

○○「そういう賢将はどうなんだよ、俺だけ言わせて不公平だ」
ナズ「え、や、やだよ言わないぞ」
○○「言えよぉ」ヘッドロック
ナズ「ちょっやめっやめてくれぇ///」


ぬえ「あいつらずっと縁側で話してんな」
一輪「仲良いんだか悪いんだか」
星「いいなぁ…」


35スレ目 >>413


ナズ「やあ君か。最近は寒暖の差が激しくて些か体に堪えるね。」
そうだなあ、たしかに最近風邪気味かも。
ナズ「それはいけないな。ほら、これをやるからちゃんと栄養をとるといい。」
お、チーズか?
ナズ「何馬鹿なことを言っているんだ君は。チョコレートに決まっているだろう。」
ああそういえば今日は…もしかして
ナズ「勘違いするな。ご主人や聖にも渡しているんだ。」
ああ友チョコとか言うやつ? いつからそんな風習が生まれたんだか。
ナズ「まあ普段から世話になっているからな。じゃ、私はもう行くからな。」
ありゃ行っちゃった。なんか足早に見えたけど気のせいかな?

星「あ、ここにいたんですね。探しましたよ。」
お、星か。
星「はいっ、バレンタインのチョコです!」
おお、ありがとう。
星「そうそう、先ほどナズーリンからチョコを貰ったんですよ。」
友チョコとか言うやつね。
星「そうなんですか?ほら、これ。人里で有名なお店のものらしいんですよ。私もお返ししないといけませんね。」
へえ、なかなかかわいいじゃないか。
星「聖にも同じものを渡してましたね。あ、聖といえば呼ばれていたのを忘れてました、すみませんがこれで。」
ああ。じゃあまた。

自室にて
さて開けてみるか。おっ、星のは綺麗に飾ってあるな。これは美味しそうだ。
ナズーリンのは…さっき見たのに似てるけど不格好だな。ん?これは手紙か?
『こういうのはあまり慣れてないから正直うまく出来たとは思わない。だから…必ず、必ず感想を聞かせてくれ。いつか君のためになれるように。』


避難所>>293


「ナズーリン、おめでとうございます。本当に良かったですね」
「ペンデュラムだけでも大丈夫ですか? 宝塔、持って行きます?」
「聖や一輪と、私も弾幕アクションは出たけど整数自機はやっぱりすごいよ」
「何が待ってるかわからないけど、気を付けるのよ?」
「1ボスから自機デビュー……わちき驚いた!」
「驚いたー!!」
「ふぉっふぉっ、何はともあれめでたいのう。
 どれ、外の部下につないで上物のチーズでも差し入れさせようか」
「いーなー、私も獣の字入ってるし製品版で出らんないかなあ」

 新作出演の知らせに二人で驚いていたのもつかの間、
 小屋へ乗り込んできた皆にまとめて担ぎ上げられ、
 宙を舞うように胴上げされながら運ばれて行き、気が付くと命蓮寺で祝福の言葉を受けていた。
 当のナズーリンは、状況を飲み込むと
「いや、地道に働いていたから末席をもらえただけさ」だの
「毘沙門天様や命蓮寺の名に傷をつけないように、いつも通り勤めるだけだよ」だの
 謙遜するような口ぶりで応えていたけれど、得意げな表情が隠せていない辺りがかわいい。

「それじゃあお祝いの支度をしてきますから。○○さんと二人で待っててくださいね」

 潮が引くように一斉に部屋を出て行く命蓮寺の皆。
 その一人一人が、ナズーリンに見えないようにそっと肩や背中を叩いていく。

 二人きりになり、誰も戻ってこないことを確かめると、ナズーリンが抱き着いてきた。

「誇らしいし、皆応援してくれるのが嬉しいのは間違いないのだけれどね」

 触れ合う胸越しに伝わる鼓動は、人間のものより幾分早いいつものそれよりさらに早い。

「…………情けないな、どうも身体が震える。これでも場数は踏んできたつもりなんだが」

 きっと命蓮寺の皆は、小心なところのあるナズーリンが不安に陥る暇もないようにと、
 急いで駆けつけてここへ連れてきてくれたのだろう。
 そして、心からの、めいっぱいの祝福で勇気づけてもなお残った不安を受け止める役を、
 二人だけにすることで任せてくれたのだろう。

「大丈夫だよ、ナズーリン」

 感謝の気持ちを胸の奥にしまい込みながら、小さな背中に腕を回し、ぎゅっと抱き寄せた。
 無意識になのか、尻尾が脚に絡みついてくる。

「ナズーリンなら、大丈夫。きっと立派な自機になれるよ」

 背中をさすっていると少しずつ、腕の中に感じていたこわばりが解けていくのがわかった。
 もうしばらくして皆が帰ってきて、ささやかな宴が始まる頃には、
 きっといつものナズーリンに戻っていることだろう。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2024年08月11日 14:22