ハーレム?24



新ろだ2-022



ある日突然、あなたに12人もの妹ができたらどうしますか?

それも……とびっきり可愛くて
とびっきり素直で
とびっきり愛らしくて
とびっきりの淋しがりやでそんでもってちょっぴり恐い
しかも、そのうえ……
彼女達はみんなみんな、とびっきり!
お兄ちゃんのコトが大好きなんです!!!


しっかり者でお兄ちゃんに対してはちょっぴり甘えん坊な清純派妹、早苗ちゃん
早苗「お兄ちゃん!この婚姻届に(ry」

ドジっ娘系妹星ちゃん
星「お兄ちゃま、星の大切な宝塔が…宝塔が…」

健康的な魅力を持つボクっ娘妹魔理沙ちゃん
魔理沙「あにぃ!借りてくぜ!」

お兄ちゃんの気を引くため色っぽい振る舞いを見せる小悪魔系の妹紫ちゃん
紫「お兄様♪今すぐ子作りを(ry」

無邪気で人懐っこい性格の妹フランちゃんウフフ
フラン「おにいたま♪遊ぼ?」

病弱で読書が大好きな妹パチュリーちゃん
パチュリー「兄上様…ゴホッゴホッ」

姫系妹輝夜ちゃん
輝夜「にいさま…って何か私だけ説明が適当な気が」

発明家として類まれなる才能を持つ理系妹にとりちゃん
にとり「アニキ!お小遣い頂戴」

魔女のような妖しい魅力を持つ妹アリスちゃん、噂では魔界の住人で親は神だとか…
アリス「兄くん…フフフ」

お兄ちゃんを立てることを忘れない淑やかさも兼ね備えたまさに良妻賢母型の妹依姫ちゃん
依姫「あ…兄君さま、床の準備が整いました。で、ですから…ゴニョゴニョ」

何でもかんでもチェキしまくるムードメーカー兼トラブルメーカー妹文ちゃん
文「兄チャマ、チェキ!」

生粋のお嬢様でのんびり屋、そしてちょっと泣き虫。少々世話がかかるタイプでお菓子が大好きな大食い妹幽々子ちゃん
幽々子「兄や…くすん、お腹減った」



紫「お兄様のための12人の妹達ですわ。さぁ存分に萌えてくださいお兄様!」
〇〇「え?」
紫「え?」
〇〇「いもう…と達?」

ざんねん!! 〇〇の ぼうけんは ここで おわってしまった!!


新ろだ2-052


 この世の忘れ去られた物や生き物が最後に流れ着く場所、幻想郷。
 そこにはあらゆるものを惑わせるほどの竹が生い茂る、迷いの竹林と呼ばれる場所がある。
 わずかなものしか知らない隠された道筋を頼りにその竹林を奥へ奥へと進んでいくと、
 不意にその場にふさわしくない立派な建物が目の前に現れる。

 永遠亭だ。

 その屋敷は、幻想郷でも指折りの有力者、月の民とその配下の兎達が暮らしていた。
 幻想郷に住まう者にとって、彼らは薬師であり、医者だった。それも得体のしれない。
 見たこともない道具、聞いたこともない知識でどんな病も難なく治していくという存在は、
 ありがたいと思うとともに、畏るべきものでもあった。
 人々は進んでここを訪れるようなことはなく、永遠亭側もときおり薬の行商に人里に赴く程度の距離感で接していた。
 ゆえに、永遠亭で見かけるものは月の民や兎たちがほとんどで、なんの力もない普通の人間がいることは稀なことであった。

 そしていま、妖怪が時を謳歌する夜中のことである。
 永遠亭の中庭に面した縁側に、永遠亭にすれば奇妙な光景が映し出されていた。

 永遠亭では普段見かけない人間の青年が、一人縁側に腰かけて、ぼんやりと空を眺めているのだ。
 どこか儚げな、そのまま消えてしまいそうな青年だった。
 すでに日は沈み、あたりには竹林の夜独特の笹のさわめきを孕んだ静けさが漂う。
 空にはやわらかく光を放つ月が浮かぶ。

 青年はじっと月を眺めていた。
 まるでそこに映る何かをすくい取ろうとするように、もしくはまるで何も考えていないようだった。

「お今晩は。○○」

 不意に○○と呼ばれた青年は声をかけられた。彼は特に驚いた様子も見せずに振り向いた。

「ああ、今晩は。輝夜様」

 黒く長い髪をたなびかせ廊下の向こうから現れたのは、この屋敷の主にして元月の民の一人、蓬莱山輝夜だった。
 どこか気品にあふれるかのような雰囲気で歩く彼女は、○○のそばまで行くと先ほどまで彼が視線を向けていたものを見上げた。

「お月見かしら? 風流ね」

 鈴を転がしたような声で、輝夜は彼に話しかける。その声色にはかすかな親しみがこめられていた。
 ○○は肩をすくめて、

「いいえ、ただ呆けていただけです。空を見上げるのも、満月も、久しぶりだなあと思っていたらいつのまにか」

 そう言って、少しばつの悪そうに笑った。
 あらあら、と輝夜もつられて口元に手を当てて笑う。
 そして、ちらりと廊下の奥に目を向けると、

「お邪魔じゃなければ、私もご一緒してよろしいかしら」
「ええ、どうぞどうぞ」



 山の上に浮かぶ月の下、輝夜と○○は並んで座っている。
 ぼんやりとした月明りは二人の影を廊下の向こうまで伸ばした。

「季節とは少し外れているけれど、良い月ね」

 ぽつりと輝夜はつぶやいた。目は月のほうにむけられている。

「そうですね。満月には少し足りない気がしますけど。こちらのほうが僕は好きです」

 ○○も月を見たまま、そう返す。

「あら、○○も?」

 輝夜はうれしそうに○○のほうに振り向いた。月を写す黒髪が軽く波打つ。

「この月はね、十三夜月とよぶの。昔はこの月の下でよく宴を催したのよ」

 私も、この月は好きよ。輝夜はクスクスと懐かしそうに笑った。
 それを見る○○もどこか嬉しそうにしながら訊ねる。

「宴というと、歌を詠んだりとかですか?」
「そうねえ、お酒をたしなみながら、音楽に合わせて舞ったり、芸をしたり。……今と大して変わらないかも」
「それでは、輝夜さまも?」
「……むかしは歌を詠んだこともあったわ。今はあんまり」
「あ、ごめんなさい。訊いたらいけませんでしたか」
「あら、そうじゃないの。昔の歌って、季語やら、枕詞やらって面倒臭いでしょう? そんなに楽しいことがなくって」
「ははぁ、少し堅苦しいと」
「そゆこと。それに宴会は騒いでなんぼでしょ?」
「ははは。それはお姫様らしくはないですが」
「あら」
「でも輝夜様らしくて、素敵です」
「あらあら、まったくお上手ね」
「あ、いや、そんなつもりじゃあ」
「もう、うふふ」

 ………
 ……
 …


 一ヶ月ほど前の話だ。その夜、幻想郷は季節外れの嵐に見舞われていた。
 人間はもちろんの事、普段は我が物顔で闇夜を跳梁跋扈する妖怪たちも、この日ばかりはさすがに大人しく雨風が通り過ぎるのを酒など嗜みながら、過ごしていた。
 しかし、迷いの竹林、もとい永遠亭に住む者たちはわずかに色めき立っていた。

「ねえ、今日のおゆはんは?」

 その主を除いては。
 話しかけられたのは訳あって永遠亭に居住している月の兎、鈴仙・優曇華院・イナバだ。
 彼女は彼女は土間に大きな桶をおいて、何やら洗濯をしているようだった。
 風が戸板を挟んでびゅうびゅうと吹き荒んでいた。やや神経質に鈴仙はいちどそちらに視線を向ける。
 そして、すぐ彼女の主に向かってやや愛想笑い気味の表情で答える。

「ええと、ごめんなさい姫様。今ちょっと手が離せなくて、今適当な兎を呼ぶので……」
「あら、とうとうイナバを食べる日が来たのねぇ。いつか来るとは思っていたけど」
「違います! 食材の話じゃないです!」
「冗談よ。それで、なにかあったの? なんだか周りが血の気立ってるわ」

 目線だけで周りを見渡し、実際その土間には二人しかいなかったのだが、輝夜は不思議そうに訊ねた。
 鈴仙は驚いて目を見開いた。

「お聞きになっていないのですか? さっき竹林に凶暴な妖怪があらわれたという報せが入ったんです」
「あらまぁ」
「しかもその妖怪に人間が一人襲われて、今その処置に追われてて……」
「それは大変ね。全然気がつかなかったわ」

 輝夜は全然大変そうな様子を見せず言った。
 鈴仙は洗濯桶の中の、血まみれの手術衣を見て、心の中でため息をついた。

「暢気で悪かったわね」

 はっと鈴仙が顔を上げると、もう輝夜は向こうを向いて廊下に向かっていた。

「永琳は診療所のほうね。今日のおゆはんはいいわ。たまには不死らしく不健康に過ごすから」

 そう言葉を残して、あわてる鈴仙をよそに軽快に廊下の向こうへ消えていった。
 鈴仙はしばらく落ち着かずにいたが、やがてあきらめるように洗濯板に手術衣を擦りつける作業に戻って行った。


 輝夜が部屋の前に着いたと同時に、中から竹林の白兎、因幡てゐが中から出てきた。

「永琳は中かしら?」

 輝夜が半分確信していることを問うと、彼女は多少億劫そうにうなずいた。
 その拍子に半乾きの短い黒髪が妖しげに灯りを映す。
 そしてそのまま一言もなく、すぐにてゐはどこかへと去ってしまった。
 その態度にも輝夜は特になにも何も感じず、部屋の中に入って行った。
 てゐがこんな調子なのは珍しいことではないのだ。

「入ってくるなら一声かけなさい、はしたないわ」

 中にいた女性が静かなよく通る声で言った。
 女性の名前は八意永琳。永遠亭の薬師にして輝夜と同じ元月の民である。
 彼女は部屋の中の机で書き物をしているところだった。
 部屋の中はなぜか廊下よりも薄暗く、そして静かだった。机の上の蝋燭が、部屋の中に闇色の影を朧に映している。
 その雰囲気のためか、それとも今叱られたせいか、言葉には答えなかった輝夜だが、静かに戸を閉め、そろそろと暗闇にも浮かぶ銀髪に向けて音も立てずに歩みだした。

「やっぱりイナバの耳にはかてそうもないわね」

 輝夜は永琳のそばまで来ると、小さくそう言った。
 永琳は顔を上げ、輝夜のほうを見てから小首を傾げた。
 揺れる永琳のみつ編みを目で追いながら輝夜は続ける。

「私も知らない永遠亭の大騒ぎを知ってるんだもの。今日のおゆはんがないこととか、その理由とか」
「あら、輝夜にも兎の伝達は出したはずなのに。耳はお上手でも口は下手なのね。まあ薄々わかっていたけれど」
「普段は軽いくせにね。イナバに頼む永琳も永琳だけど。おかげでイナバも食べ損ねるし」

 そう不機嫌に眉をゆがめる輝夜だった。
 輝夜はただ仲間外れにされて悔しいだけだということ、非は永琳ではなく途中でどこかに行った兎にあること、そもそも輝夜に伝えてもどうにもならなかったこと、兎は緊急の保存食糧ではないこと、
などすべて把握していた。が、

「ごめんなさい。許して頂戴」

 永琳は輝夜に詫びた。子供らしく頬を膨らます輝夜を見ながら。
 とりあえず感情の区切りがついたのか、まぁいいわ、と輝夜は納得した。

「それで、件の彼はどこかしら」

 瞳を灯りで輝かせながら輝夜が訪ねた。
 永琳は小さくため息をつつきながらも微笑んで、筆を置く。

「隣の部屋のベッドで眠っているわ。覗くのはいいけれど、騒がしくしないでね」
「あら、そんなはしたないことしないわ。騒ぐのは私の周りの人の仕事だもの」

 輝夜はひらひらと袖を振って隣の部屋に入って行った。その後ろに永琳が付き添う。

「そこの彼よ。眺めるなら彼の許可を取るか、内緒でしてね」

 広くも狭くもない、清潔な部屋の中にひとつだけあるベッドを指さして永琳が言った。
 部屋は暖房が利いていて、壁にはオレンジ色の照明が灯る。風に揺れる窓からは嵐の竹林がうかがえる。
 表情の読めない顔で、輝夜はベッドを覗きこんだ。

「その子なんだけど、おそらく幻想郷の外出身の子ね」

 窓辺に近づきながら、やや声をひそめて永琳が語りだした。
 外をやや見渡してから、カーテンを閉める。そしてベッドの隣の台に置かれているものを手に取る。

「ほら、この服の布地、こんなに繊維が細かい。それにこれは、一種の通信機ね。動かないけれど、いつだったか香霖堂で―――」
「ねえ、永琳」

 ぽつり、と輝夜がつぶやいた。

「この人、泣いてるわ」

 永琳が驚いて彼を見た。
 ベッドで眠る青年は、静かに涙を流していた。
 目尻からあふれ出すように滴がこぼれおち、枕に染み込んでいく。
 どうしたのかしら、と永琳は涙を傍のタオルで拭いとり、彼の額に手をあてる。

「……特に熱もないし、おそらく夢を見ているのでしょう」

 涙は次から次へとあふれていった。それでも青年が目を覚ます気配はない。
 それは無垢で危うげな感情の発露のようだった。泣き方を知らない子供のようでも、泣くことのできない大人のようでもあった。

「男の人って」

 輝夜は彼の顔に手を伸ばした。そして、

「みんなこんな風に泣くの?」

 あふれ出る涙を自ら掬い取った。 


……
……… 


 話しこんでいるうちにも夜は更けていく。
 月が夜空を渡るにつれて、二人の影も解ける様に移動していく。

「それでは月の方たちは月のことを歌に詠まないのですか?」
「そういえばそうね。今まで考えもしなかったわ」

 いつのまにか正面にまで来ていた月が○○の目端に反射した。
 それを見つけた輝夜は自然と月に目を向ける。
 追って、○○も。

「こうして月を見上げることも……」
「……」

 ふと会話が途切れた。はかなくも途切れることのない竹林のさざ波だけが耳に届いてくる。
 二人は再び空を見上げていた。
 やや光の弱い月明りは、儚い星の瞬きを邪魔することなく夜空に彩りを与える。

「見たままのことを、感じたままのことをありのままに言葉にできれば」

「……」

「それは全部歌になる。下手も上手も、技術も何もいらない、素敵な歌」
「……想いをこめた言葉はすべて歌になる、ですね」
「……ちょっと気取り過ぎたかしらね。恥ずかしいわ」

 ごまかすように輝夜ははにかんだ。
 ○○は楽しそうな笑みを崩さずに、

「とてもいい歌だと思いますけど?」

 にこやかに言った。

「やーね、いじわる」

 輝夜は恥ずかしそうにしながら○○の肩をはたく。すみません、と○○は謝りながらもやさしい笑顔。
 その余裕が気にいらない、と言わんばかりに輝夜は何度も小突いた。
 彼女はふと何かに思い立ったように、はたいたてのひらをそのまま肩に手を添え、ゆっくりなでた。

「傷はもう大丈夫のようね」

 そして愁いを帯びた目で見上げるように○○の目を覗きこむ。
 ○○は少しだけ困ったように目を細める。
 いつの間にか先ほどの楽しげな空気は夜陰に散っていた。

「はい、皆さんのおかげです。記憶のほうはまだ戻らないのですが」
「そう……」

 しばらくの間、輝夜はやさしくいたわるように○○の腕をさすっていたが、やがて名残惜しそうに手を離した。
 ややあって、意を決したように口を開く。

「ねえ、○○」

 そこでいったん区切って、強調するように言った。

「どうしても、ここを出て行くの?」

 申し訳なさそうに、○○が顔を伏せた。
 表情は見えないが、その沈黙は、輝夜にとっては肯定も同然だった。
 またしても、しかし先ほどとは明らかに質の違う沈黙が二人を覆った。
 雲が月を朧にし、二人の影は輪郭をなくす。ますます暗い影が○○の表情を隠す。

「いつまでも、ここでただ甘えているわけにもいきません」

 しばらくして沈黙を破ると同時に挙げられた○○の顔は笑顔だった。
 ただ、かすかに膝の上に置いている手が震えていた。
 黙ったままの輝夜に向けて、○○はさらに言葉を続ける。

「輝夜さま、本当に感謝しています。あなたが気さくに声をかけてくれて、どれだけ私の心が救われたか。輝夜さまとの語らいは生涯―――」
「やめて」

 輝夜が○○の口に手をやって言葉をさえぎった。

「今出て行くわけではないのでしょう。そんなこと言わないで」

 そっと手を離しながら、輝夜は話す。悲しげな、それでいて優しげな瞳は○○の目をまっすぐに見ていた。
 そして○○の手をとり、さらに輝夜は付け加える。

「それに、いつだって会いに来てもいいのよ? 私たち、その……お友達、でしょう?」

 同意を求めるように、輝夜は軽く力を込めて○○の手を握った。
 ○○は何も言わず、ただ感謝するように頭を垂らした。



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 輝夜はただ薄暗い廊下を歩いていた。
 先ほどまで穏やかに眺めていた月を左に、しかし今は一瞥もせずに黙々と前へ進む。
 彼女は、廊下に面する多くの障子の内の一つ、中から光の漏れる部屋ので止まった。
 そして無造作に障子を開け、中に入る。

「ノックぐらいしなさいな」


部屋の中で、座布団を敷いて正座していた女性が、輝夜を静かにたしなめた。同じく隣に座る少女が苦く笑う。
 女性は永遠亭の薬師にして輝夜と同じく月の民、八意永琳、少女のほうは月兎の鈴仙だった。
 一服していたのだろう、二人の間には急須が一つと湯気の立ち上る湯のみが二つ、空の湯のみが一つ。
 輝夜は二人の前に座ってもなお口を閉ざしていた。永琳がお茶を注ぎ差し出すもも手に取る気配はない。
 鈴仙はそんな彼女をただ黙って見つめ、すぐにはっと息をのんだ。
 鈴仙の目には小さく震えている輝夜の肩が映っていた。
 永琳のほうを見るが、彼女は力なく首を横に振るだけだった。

「姫様、大丈夫ですか?」

 鈴仙がいたわるように声をかけると、

「……か……」

 輝夜は呻くように何事か呟いた。
 肩の震えが一層ひどいものになり、鈴仙があわてて傍に寄り添う。

「姫様、落ち着いてください!ひめさ」




「  か   わ   い   す   ぎ  よ  ○○~~~ッッ!!!!」





 永琳はため息をついて、吹き飛ばされて湯呑みを中の茶をこぼすことなく捕った。
 鈴仙は障子を吹き飛ばして廊下の向こう側に消えていった。

「ああもう! ねえ永琳、どうして○○ってあんなに可愛いのかしら! 月明りって卑怯よね! 今日はほんとに襲いかかりそうになったわ!」
「ごめんなさい、輝夜」
「?」
「今何も聞こえないの。もうちょっと待って。よければその間にうどんげを回収してきてちょうだい」



「それで、首尾はいかがかしら?」

 輝夜が引きずってきたうどんげを横に寝かしながら、永琳は訊ねた。

「順調よ。沢山お話もしたし、良いことも聞いたし、ね」 

 輝夜は上機嫌にうなずいた。ややぬるめになってしまったお茶を優雅に飲み、ほっと目を細める。
 永琳も自分のお茶をすすり、輝夜が話すのをじっと待つ。
 そのとき、微かなうめき声をあげて鈴仙が目を覚ました。
 いまだ前後不覚らしい彼女に、永琳が茶を勧める。

「大丈夫かしら?ごめんなさいね。はしたなくて」
「い、いいえ。平気です」

 輝夜が詫びると頭をふらつかせながらも鈴仙は答える。

「それで、その、どうだったのですか?」
「そうそう。彼ね、やっぱりここを出て行って里に住む気らしいわ」  

 鈴仙は目を見開いた。永琳は黙ってお茶を継ぎ足した。

「まあ、多少は安心といったところね」
「ええ!? どうしてですか?」
「いまのところ外界に帰る気はない。そういうことでしょう?」
「ええ、帰る気があるのなら博麗神社を頼るはずだしね」

 我が意を得たり、と言わんばかりに輝夜はうなずいた。ついでに空になった湯呑を永琳に差し出した。
 ああ、と鈴仙は納得する鈴仙に輝夜は意地悪く笑って、

「だから安心しなさい。あなたもご執心な○○は手の届くところにいてくれるわ」

 またしても吹き飛ばんばかりの勢いで、鈴仙は体を反らした。

「だっだっだれがあんな外界の地上人なんかを!」
「貴方が彼の悪口言うのってこういうときだけよね」
「むしろうどんげはいつも彼を心配してるのよ」
「し、師匠!」

 涙目で叫ぶ鈴仙をさまあたたかい目で見つめる二人。
 そしてぶつぶつと一人愚痴る鈴仙を尻目に輝夜が訥々と語り始める。

「私はうれしいわ。彼がまだこの幻想郷にいてくれて」
「姫様……」
「彼と話すのも好きだし、ときどきはかなげな顔をするのも好き。もっともっと彼と話をしたい。ずっと一緒にいたい。」

 こそばゆそうに輝夜は笑った。

「こんな気持ち初めて。なんだか弾けてしまいそう」

 その表情を見た鈴仙は恥ずかしそうにそっぽを向いた。
 永琳も母性あふれる笑みを浮かべて

「さっきは襲いかかりそうになったと言っていたような気がするけれど?」
「なによ聞こえてたんじゃない」
「読唇術よ」
「別にいいでしょ。無防備な○○が悪いの」 

 はしたないわよ、注意を促す永琳に輝夜は舌を出して応じた。
 そして、輝夜は手を口元で合わせるようにして小さく欠伸をすると、

「もう今夜は眠るわ。なんだか疲れちゃった」

 おやすみなさい、と部屋に入ってきたときのように我儘に出て行った。
 二人きりになったところで軽く鈴仙はため息をつきつつ、

「……結局、姫様は何をしたかったのでしょうか」
「多分、自慢と鼓舞でしょう。悔しかったら彼の気を引いてみなさいって。でも本命は私なんだからねってところかしら」
「はぁ……って私はだから別に」 
「ふふ、あれもまた愛嬌ね」

 共感し難そうに愛想笑いする鈴仙を静かな笑みで流す永琳。
 ふと鈴仙が口を開いた。

「ところで気になったのですが、○○には話したのですか? この幻想郷や自分の出自を」

 もちろん、と永琳はお茶のおかわりを入れながら答える。

「神社のこともその時話したけれど……正直言って実感が湧いていない様子だったわ」

 どう転ぶのかしらねぇ、と永琳は手に持つ湯呑を空にした。


 ―――つづくかも


新ろだ2-071


これはいったいどうしたことか。

冬からに春に替わりつつある今時分。
夕日の射す人里の小さな一軒屋にて、俺は畳の上で正座し、考え込んでいた。

そんな真剣な顔で考え事をするなんて○○らしくない?
なんとでも言え。俺は今、さながら修行僧のように瞑目し、解決策を導き出すための思考を続けねばならんのだ。

しかし、本当にどうしよう。いくら考えても思考がまとまらない。
というよりも、そもそも何故こんなことが起こっているのか、この状況が理解できなかった。

俺の目の前に置かれている、4枚の薄い封筒。
全て白色で、大きさも形も、表面に書かれた『○○様へ』という文字すらも一緒。
けれども裏面に書かれた文字――差出人の名前は全て違っていた。

そう、これらは全て手紙――いわゆる恋文、ラブレター。
俺は今日、それぞれ異なる4人から同時にラブレターをもらってしまったのだ。

「ありえないだろ……」

落ち着け、俺。
ラブレターを貰った嬉しさと、4人から同時という戸惑い、これから起こりうる事態への不安。
それらが入り混じった、なんとも言いがたい悶え苦しむような感情はさておき。

OK、自分の頬を殴ってニヤケ顔を止めよう。身体の震えもこれでおさまるはず。
そして現状の再確認だ。

まず1通目。
これは俺が朝目覚めた時、玄関の扉の下に挟まっていたものだ。
裏面には『さるの』と書かれている……チルノのことだろう。

内容に関しては次の通り(文字が間違ってたりぐちゃぐちゃだったりしていたので非常に読みづらかった)。

『はいけい
 あたい あんたのこと きになってる なんだか あんたのことかんがえてると すごくからだがあつくなる
 きっと あんたのせいだ! いっつも あたいをからかう あんたのことだから へんなまほうかなにか かけたにちがいない!
 このままじゃ あたいがとけちゃいそうだから あんたに いいたいこと いおうとおもう
 きょうのよる きりのみずうみのちかくの おっきなきのしたで まつ
 こなきゃ こおらせてやるから! かしこ』

解読した限りではこんな感じで間違いない。
最初と最後にちゃんと頭語と結語があるのは、親友の大妖精あたりに手紙の書き方でも教えられたのだろうか。
何にしろ、これはラブレターだという他ない。

にしても、あのチルノがねえ……あいつとはよく遊んでる仲だが、まさかこんなことになるとは。
俺とチルノはいわゆる喧嘩友達という奴だ。
顔を合わせるといつも口喧嘩になり、悪くすれば弾幕ごっこにまで発展してしまう。
まあ、弾幕勝負になると弾を出せない俺の一方的な負けになるから、極力そうなる前に逃げているけど。

『おーい、チルノー。暑いからちょっと俺の氷嚢になってくんない?』
『な、な、なんであたいが! このばかー!!』

こんな風に、冷たくて気持ち良いからって抱きしめると、その度にあいつは顔を真っ赤にして怒って、俺を凍らせようとしてきたものだ。
そんなチルノがいきなりこんな手紙を送ってくるのだから……正直驚く。

ただの喧嘩友達だと思っていたのに。どうすればいいのだろう。




次に2通目。
この手紙は、俺が昼間、森の中を散歩している間にいつの間にか胸ポケットに突っ込まれていたものだ。
不思議だった。散歩の間に誰とも会った覚えがないし、そもそも人の気配を感じたことすらなかった。
なのに、まるでいきなり現れたかのように手紙がポケットに入っていたのだ。

帰宅後に手紙の裏面を見てみると、そこには『あなたの瀟洒な従者より』とあった。
先の出来事から考えても、これは紅魔館の十六夜咲夜からのものに違いないのだが……どうにも信じられない。あの咲夜さんが?

内容はこうだ。文章はとてもかわいらしい文字で書かれていた。


『私がこんな手紙を送るだなんて、あなたは想像していたかしら?
 もしかしたら、あなたはこの手紙を笑い飛ばし、破り捨ててしまうかもしれない。
 日頃の私があなたに取っている態度を思えば、それも当然のこと。
 けど、聞いてほしいの。私の本心を。私の時間がどれだけあなたに奪われているのかを。
 この想いを言葉で伝えるために、今日の夜、私は紅魔館前の湖のほとりにある、あの大きな木の下で待ちます。
 よければ来てください』

これは本当に「あの」咲夜さんからの手紙なのだろうか。信じられない。
あのちっこい吸血鬼の主人のいたずらだと言われた方がまだ信じられる。

はっきり言って、俺と咲夜さんの仲はそれほど良くない。
俺は運送業という仕事柄、紅魔館を訪れることが多く、そこの主人であるレミリア・スカーレットにはたいそう気に入られている。
よくお茶会にも招かれているし、『深夜のお出かけ』とやらに付き添いを命じられたこともあった。

だがその反面、レミリアの従者である咲夜さんは俺のことを嫌っている。
別に言い争ったり喧嘩をしたりはしない。
だが、俺が話しかけても彼女はすぐに「そう」の一言で会話を終わらせるし、あからさまに俺の視線を避けもしていた。
態度がなんだか冷たいのだ。

なるべく俺と関わらないようにしているのが見て取れて、あんなに綺麗な人が俺のことを嫌っているのか、と一時期は落ち込みもしたものだ。

『あの、咲夜さん。お世話になってるお礼に、お嬢様に紅茶を贈ろうかと思うんですが、どんな茶葉がいいんでしょうか?』
『……好きにすればいいわ。きっとあなたからなら、どんなものでもお嬢様はお喜びになるから』
『え、け、けど苦手な茶葉とかもあるでしょうし……』
『私に聞かないでちょうだい』

こんな感じで、彼女はいつも俺に冷たい(それでも最後はおすすめの茶葉を教えてくれたりした。物凄く嫌そうな顔をしていたが)。

そんな咲夜さんがどうして? あまりにも普段の彼女とのギャップが激しすぎて、どう反応していいか分からない。




よし、3通目だ。
これは散歩から帰る途中、里の守護者である上白沢慧音さんに手渡されたもの。
慧音さんは「よく考えてやってくれ」と真剣な顔でこの手紙を俺の手に掴ませた。
彼女の背中には怒気すら感じられた。ちょっと怖かった。

この手紙の裏面には『健康マニアの焼き鳥屋より』と書かれている。この文句は藤原妹紅のことだ。
妹紅……彼女が? いやはや、妹紅は良き友人なはずで……うーん。

内容は次の通り。毛筆で書かれた、えらく達筆な文字である。

『あなたと出会ってから幾数年。これまで数々の出来事を過ごしてきた。
 一緒に遊びもしたし、探検もした。あなたの仕事の手伝いをしたことも何度もあった。
 春の花見、夏の水浴び、秋の紅葉狩り、冬のかまくら。
 年の暮れも明けも一緒に過ごした。色々なことがありすぎて、思い出の中ではおさまりきれないぐらいに。

 けど、私はあなたと始めて出会った時のことだけは忘れられない。
 きっと一目惚れだったのだろう。私は長く生きたせいで人の心の内側ばかり見えるようになっていたけど、あなたの内側ほど私の心を惹き付けるものはなかった。
 なのに、私が今まで素直に自分の気持ちを表に出せなかったのは、やはり私という存在があなたとは釣り合わないと思っていたから。
 私は不死者で、あなたは人間。この壁はあまりにも高かった。私はこの壁を越えることはできないと思っていた。

 ごめん。私は今、とても身勝手なことをしていると思う。あなたに負担がかかることをしている。
 それでもあなたが私の手を取ってくれるのなら……私は壁を越えられると思うから。
 まずは、私の気持ちを聞いてください。その後、私に手を差し出してくれるかどうかを決めてください。
 今日の夜、霧の湖の傍、大きな木の下で待っています。

 藤原 妹紅』


……これは本当に妹紅が書いた手紙なのだろうか。

こう言ってはなんだが、妹紅はこんな手紙を書くような人間ではない。
厭世的で、いつも世の中に対して斜に構えている、少し乱暴な少女。
けれど、こっちの話を興味深そうに聞いてくれて、一緒に遊ぶととても明るい笑顔を浮かべてくれる、気の良い少女。

初めて出会った時からそうだった。
何年か前のこと、永遠亭へ荷物を届ける仕事を請け負った俺は、慧音さんの紹介で、藤原妹紅に道中の護衛を依頼した。
その時の彼女は少々無愛想で、話は聞いてくれるけれども反応は薄く、あまり人と話すのに慣れていない様子だった。

けれど、話している内に趣味や興味のあるものに共通点がいくつかあることが分かり、自然と仲良くなっていた。
おかげで永遠亭への行き返りがとても楽しいものになってくれたものだ。
慧音さんなんかは「あんなに楽しそうな妹紅は初めて見た」とも言っていたっけ。

その日以降も、一緒に仕事をすることが何度かあり、俺たちは会う回数を重ねるごとに交友を深めていった。
そして、いつの間にか妹紅は自分自身のことも話してくれるようになり……

半年もすれば、俺にとって藤原妹紅は幻想郷の中で唯一無二の親友になった。

『おーい、配達屋。暇だろ? 花見に行かないか? 妖怪の山に良い桜があるんだってさ』
『いやいや、俺は普通の人間だぞ? 妖怪の山に入ったら天狗に瞬殺されるって』
『大丈夫。私が守ってやるよ。大事な……友達だしな』
『んー、それでもなあ』
『あの桜をお前と一緒に見たいんだ。な?』

彼女とは友人として色々と一緒に過ごしてきた。花見も紅葉狩りも。クリスマスにパーティをしたこともある。
俺から誘うこともあったし、妹紅が突然俺の家にやってくることもあった。
親友という言葉が本当にしっくりくる間柄だった。

彼女は俺のことを知ってくれている。
俺も彼女が不老不死であることを知っている。

彼女は、俺の幻想郷で過ごすことの寂しさを和らげてくれた。
俺は、彼女の蓬莱人であることの苦しみが和らいでくれたら、と考えたりもした。

友人として、長さの違う互いの人生に彩りを添えられたらと俺たちは思っていた。

だけど、この手紙は……完全に予想外。
彼女は友人としてではなく、恋人として俺と過ごすことを望んでいる。
斜め上から降りかかってきた熱い炎に、俺は混乱することしかできなかった。




4通目。これは郵便で送られてきた。
と言っても、幻想郷の郵便屋ではない。死神の郵便屋で、小野塚小町という女性が直々に家まで届けてくれたのだ。
「本当は、死神の姿が見える特殊な人間に、死期を知らせるために送る手紙なんだけどねえ」と、小町さんは呆れた調子で言っていた。
そして俺に手紙を渡すと、「この幸せもん」とからかうように俺の肩を小突き、帰っていった。なんだか死神のくせにやけに明るい人だった。

さて、この手紙の差出人欄には『幻想郷の裁判官より』とある(というか、皆どうして本名を書かないんだろう)。
これを見て、俺は本当にびっくりした。
まさか裁判所から手紙が来るだなんて、いったい何事かと思った。

『このままだと地獄に堕ちる』とでも言われるのか?
ドキドキしながら、手紙を開いたのだが……


『   
                   告白召喚令状

 あなたは裁判官四季映姫様より呼び出しを受けています。つきましては所定の日時・場所にお1人でお越しください。

                      記

                  期日:〇月〇日の夜
                場所:紅魔館傍の湖の、大きな木の下

 ※当日は、あなたと映姫様のご関係および恋愛事情について、映姫様より重大なお話がされる予定です。
 ※当日は指定された場所になるべく早くお越しください。映姫様がやきもきしながらお待ちしています。
 ※あなたのこれからの生活に重大な変化が訪れる場合がございますので、できる限りのご覚悟をされるようお願いいたします。

                                                 以上』

3度読み直してようやく気付いた。
これはラブレターなのだ。裁判所からの呼び出し状に見えるが、確かにこれはラブレターなのだ。

どうしてこんな書式になったのかはさておき、映姫様までラブレターを送ってくるなんて、本当に信じられない。

そもそも、映姫様は幻想郷の裁判官。彼岸の世界でも特に偉い人で、俺との接点なんてほとんどないはずだった。
なのに俺と映姫様が知り合いなのは、俺が幻想郷にやってきた初めの頃のこと、映姫様が突然俺の所にやってきたから。
その用件は……説教。

映姫様は時々下界に降りてくることがあり、罪深い人間達に説教をして回ることがあるのだ。
俺は特に罪深い人間らしく、その説教を何度も受けた。

曰く、
『そう、貴方は少し自分に自信を持たなさすぎる。
 身の丈に合わない虚栄心や思い上がりは身を滅ぼすが、己に対して確固とした自信を持たないのもまた身を滅ぼす所以となる。
 貴方は幻想郷に来たことで外の世界とのつながりを断ち、新たな自分を見つけ出すチャンスを得た。
 そのチャンスを活かさず、外の世界と同じように過ごしてはいけない。
 貴方が自分を信じきれないということは、貴方を信じる者達に対しての裏切りともなるのだから。
 己を見つめ、己を確立し、そうして私も含めた他者の気持ちにも目を向けなさい。それが今の貴方にできる善行です』

とまあ、こんな感じで云々と。
俺には、外の世界でちょっとしたことがあったせいで、幻想郷に来た当初は生きる理由を持てなくなっていた。それが罪深いことだったらしい。
まあ、映姫様から心に突き刺さるお説教を何度もしてもらったおかげで、今ではなんとか幻想郷にも馴染んできて、自分の居場所を作れるようになった。

それに伴い説教の回数も減った。それでも映姫様は俺のことを心配してくれているのか、忙しいのにちょくちょく会いに来てくれた。
最近では説教ではなくもっぱら世間話をしている。地獄の裁判官である映姫様の苦労話は、なかなか此岸では聞けないものばかりで楽しい。
俺が笑うと、映姫様もとても嬉しそうにしてくれた。『立ち直りましたね』と言ってくれたことが印象的だ。

ただ、立ち直ったと言ってもさすがに自分のことで手いっぱいなので、映姫様が言っていた他人の気持ちに目を向ける、というのがなかなかできていないのは、反省している。

……ああそうか、こうやってラブレターを貰って驚いているのは、他人の気持ちに目を向けていなかったからなのか。
そういえば、映姫様はこんなことを言っていたか。

『貴方は外の世界に居る頃から、その罪を背負っていましたね。
 大罪と言えるほどの罪ではありませんでしたが、貴方の心をきちんと知った私は、なんとか貴方を助けたかった……
 幻想郷に来た貴方の所にすぐにかけつけたのも、それが理由なのです』



はぁ……そうだな。俺は罪深い。確かにそうです、はい。他人の気持ちにまったく無頓着になってました。
けど同時に4通もラブレターを貰って、しかも彼女達が指定してきた場所・時間がまるっきり同じだということも、俺の罪深さゆえの報いなのでしょうか?
どうしたらいいんだ俺……このまま、のこのこと湖の傍の大木に行ってもいいのだろうか。


もうすぐ夜が近い。自宅から約束の場所まではそう遠くはなく、歩いて10分もすれば到着する。
なんだかその約束の場所がある方角から爆発音と怒号が聞こえるが、今はそれを気にしないでおこう。

……決めよう。どうするかを。彼女達の言葉に対し、俺はいったいどんな返事をするのかを。

そうだ。そもそも俺が好きなのは誰だ? これが一番大事なはずだ。
俺は……俺が好きなのは、

1.チルノ
2.咲夜さん
3.妹紅
4.映姫様
5.4人とも好きだぜ、こんちくしょー!
6.俺は常に独りだ!
7.うお! な、なんだ夢か……しかしどうして俺が配達屋なんかになってたんだろ。ん? こ、これは、ラブレター!

(7番の選択肢を選んだ方は、あなたの嫁からのラブレターを掲載する義務が生じます。ご了承ください)



続きはあなたの夢の中にあります


最終更新:2010年11月04日 02:01