ハーレム?25



新ろだ2-133


 流れとしてはここのリンク先の一番上です。が、似て異なる作品であることに注意してくだされ。
この流れに白蓮さんとなぜだかゆゆ様を追加した状態で。

ttp://www15.atwiki.jp/orz1414/pages/372.html
(編者注:うpろだ1278 新wiki ttp://www26.atwiki.jp/propoichathre/pages/1301.html15の一番上)



「突然だけど、あなたに大役を与えるわ」

 何ですか?

「ここに集まった人妖全てのスキル・コーディネートを行う権利よ!」

 スキル・コーディネート?スペルカードとは違うんですか?

「スペルカードはみんなの攻撃手段であり、個性付けにも役立っているのだけれど、スキルは対象の
存在に情報量を追加することで、より個性を深めていくための手段なのね」

 そうすることでどんなメリットがあるんだろう?

「例を挙げて説明するわ。例えば魔理沙のマスタースパーク、確かに高威力だけど高燃費でしょう?
考えもなしに撃ち続けるのは問題外として、どれだけ計画的に使ってもいつかは魔力が切れてしまう」

 すぐに回復できるような代物でもないしね

「そこで魔力を制御し、効率よくすることで消費を抑えられるスキルを与えればどうなるかしら?」

 抑えた分は余計に撃てるようになりますね

「他にも、霊夢が使う針とか護符とかも効率よく使えるようにして、消費量を抑えたりできる」

 なるほど、それは分かりやすいです。他にはどんなのがあるんですか?

「テンションを恒久的に上げたり、被弾時のダメージを抑えたりするスキルもあるのよ」

 固有の特徴を追加したり、強調する事も出来るんだ…管理とかはどうしたらいいんですか?

「基本的にスキルは身につけただけですぐに能力を発揮するから、気にしなくて大丈夫だよ」

 暴走したりしないのかと不安だったんですよ。それなら大丈夫ですね

「更にスキルは追加後も増強していくことが出来ます。極めればかなりの戦力になりましょう」

 ということは、スキルを追加してそれっきり、とはいかないですね。深いな…

「不要なスキルは上書きできますが、それまで増強した分も失いますから気をつけてくださいね」

 考えもなく取り替えは危険だってことだね。気をつけるよ



 みなさんのおかげで大体は分かったんですが、それでどうやってコーディネートするんですか?

「あら、そんなの決まってるじゃない」すっく

 !?

「あなたがしたい少女に(閻魔様の検閲に引っ掛かったため削除)でコーディネートなんてお手の物よ」ずい

<紫、謀ったわね!あんた、抜け駆けする気満々じゃないの!このヒキョー者!

「私を使って、今のうちに練習しておいた方がいいんじゃない?今ならお得よ…色んな意味で」ずずい

<パチェ、居候のクセに館の主を出し抜こうなんていい度胸してるじゃない!

「ほらほら、遠慮はいらないわよ~。こんな私だけど、存分に練習してちょうだいな」ずずずい

<幽々子様やめてください!こんなところで、は、はしたないですっ!

「大丈夫だ、何も心配はいらないぞ…寺子屋で教えてたように一から教える」ずずずずい

<何それ、慧音ずるい!それは職権濫用だぞー!この破廉恥教師!

「真に天才なら、他者に対しての教え方も上手じゃないとね。では」ずずずずずい

<師匠、それフライングです!輝夜様も何とか言ってください!

「ケロちゃんは子育て上手ってね、えへへ…さ、しよう?」ずずずずずずい

<諏訪子、どさくさにまぎれて何してる!?似合わんだろ!?

「さぁ、あなたの知識の世界を光で満たしましょう」ずずずずずずずい

<聖、煩悩まみれじゃない!隣で一輪が泣いてるわよ!?

「私も…記憶と違いますから、気軽にどうぞ」ずずずずずずずずい

<阿求、あんたその前に非戦闘員でしょー!?

「さぁさぁ」「思い切って」「遠慮せずに」「迷うことなく」「存分に」「やっちゃいなさい」「どうぞ」「ご自由に」

 あーれー

「お前ら、無駄に高い戦闘力を強調するなぁー!それとそこのお前らもこっそり参加しようとするなぁぁー!」

「う゛っ」

「はぇ?」

「ばれてしまいましたか」

「魔理沙、大声出してみっともないからやめなさい」

「アリス、お前もやろうとしただろ?」

「う゛っ」



 結局、練習させてもらいました。

「したんかい!」



後書き
スキル・コーディネートって、考え方次第ではエロい。


新ろだ2-182


風邪をひいてしまった
仕事での疲れがたまってたのだろうか、
ここのところ天気が不安定だったせいもあるだろう。
朝、迎えに来た職場の同僚に治るまで休むと伝えて布団にもどる。
病気の時は安静にしてるのが一番いいし、体を動かす気にはなれない。



昼になるころ、誰かが訪ねてきた。
しかし今自分は病人、客人にうつすわけにもいかない。
少し億劫だが、布団から出て玄関まで行き、今日のところは帰ってもらおうと思ってドアを開けた。

「あ……こんにちは、○○さんが風邪をひいたと聞いて……」
「それでお見舞いにね」

そこにいたのは妖夢さんと咲夜さんだった。

「あーこれはどうも、でもそんなにひどいわけじゃないですし、風邪がうつっちゃったら悪いですし……」
「人の心配より自分の心配したほうがいいですよ。顔色もだいぶ悪いです」
「どうせまだろくに朝ご飯も食べてないんでしょ。ほら、そのために私たちが来たんじゃない」

二人に押されて、布団に戻される。
横になっている間、妖夢さんは水枕を準備してくれて、咲夜さんは台所でなにやら料理を作っている。
本音を言うと二人が来てくれて助かった、一人だったら体を動かすのがだるくてまともな食事はしないだろうし、何より自分以外の人がいるだけで大分安心できる。

「○○さん、水枕持ってきましたよ」

枕を水枕と交換する。ああ、冷たくて気持ちいい。

「今、咲夜さんが卵粥をつくってます、たぶんもう少ししたらできると思いますよ。
 ちょっと、失礼します」

と言って妖夢さんの手が額に当てられる。妖夢さんの手は思ったより冷たくて熱がある体にはとても心地よかった。

「妖夢さんの手……ひんやりしてて……大分楽になった感じがするよ」
「そ、そうですか……、だったら……」

そういって妖夢さんは両頬を自分自身の両手で包みこむようにする。
火照った感じが和らいだと思ったら、妖夢さんの顔が若干赤くなっている。

「妖夢さん……?」
「あっ、いえ、そのっ……」

慌てふためく妖夢さん、その頬はどんどん赤みを増していってる、大丈夫だろうか……。



そうこうしてるうちに咲夜さんが鍋を持って出てきた、卵粥ができたらしい。
茶碗によそって三人で卵粥を食べる。

のかと思いきや、なぜかお粥を掬った蓮華が目の前にさし出されている。

「あの、流石にそれくらいは自分でできるんですけれど……」
「こういうときくらい、こっちに甘えときなさい」

言われるがまま、咲夜さんに食べさせてもらう。
お粥の味付けはとても上手で、流石メイド長といわんばかりだった。

「このお粥美味しいな、これなら病気じゃなくても食べたいな」
「言ってくれれば作るわよ、お粥だけじゃなくてほかの料理も」

なんだかんだでお粥全部咲夜さんに食べさせてもらっていた。
その間、妖夢はチラチラとこっちを見てくるし、咲夜さんは笑顔で蓮華をさしだす。
しかし、二人とも顔が赤くなっていたのはどういうことなんだ……?



後日、完全に回復した○○のもとに紅魔館のメイド長と白玉楼の庭師が度々訪れることになるのはもっと後の話……


新ろだ2-329



 永遠亭。
 その廊下を○○がぺたりぺたりと歩いていた。
 むず痒そうな顔を浮かべ、時折耳の奥に小指を突っ込んでいる。
 彼は探し物をしていた。
 探し物即ち、耳掻き棒である。



 もはや耳の奥の違和感は頂点に達している。
 このままでは満月光線を浴びずとも発狂に至ってしまう。
 先程、通りかかったイナバの一人に耳掻きを貸してくれないかと拝んだ○○だったが。
 にこやかに差し出されたのは、イナバ御用達耳掻き棒(ウサミミ用ビッグサイズ)。
 顔で笑って心で泣いて「ありがとなー、けどそれ俺にはちょっと大きいかなー」とその場を後にしたのである。



 限界かと思われたそのとき、進退窮まった○○の目の前に救いの女神が現れる。
 女神のウサミミはへにょりと垂れていた。

「……鈴仙!」
「あれ、○○。どうし……ひゃわあっ!」

 曲がり角から現れた鈴仙。
 名前を呼ばれ、振り向くその小さな両肩を逃がすまいと抱きしめる。

「鈴仙、頼みがあるんだ聞いてくれ。もう、お前だけなんだ」
「んなっ、なっ、そんな、急に……」

 切羽詰った表情で正面から見つめる。
 狂気の瞳も知ったことではなかった。
 なにせ耳奥の異物感は、既に脳に届かんとしている(ように感じた)のだから。
 狂うというのなら、とっくのとうに彼はイカレている。

「もう我慢できない。お願いだ。俺と、俺に――」
「あう、あうあうあうあう……」

 視線を彷徨わせ、口をあわあわと動かす鈴仙。
 彼にここまで真剣な目で、真正面から見つめられたのは初めてであった。
 赤面してうろたえるその様は初々しくて、とてもよい、が。
 彼は残念ながら、真に残念ながら、それどころではなかった。

「俺の――耳掃除をしてくれ!」
「わ、私も――って、へっ?」

 何かと台無しではあったが。
 彼は彼なりに限界だったので、致し方ないところである。





 鈴仙の自室。
 あの後、ぷりぷりとお怒りになった鈴仙だったが、それでもちゃんと耳掻きを用意してくれた。
 竹製で後ろにポンポンの付いた、何ら変哲の無い耳掻き棒。
 それを「はい」と彼に手渡したところ、そっくりそのまま「はい」と返され、小首を可愛らしく傾げた。

「……え?」
「耳掃除、してください」
「……私が?」
「鈴仙が、膝枕で」
「なんかオプション付いてるし!」

 なるほど、彼女にしてみればそれは付加価値かもしれない。
 しかし、彼にとっては、いやさ男にとっては耳掃除と膝枕というのは表裏一体、セットのものであるのだ。

「というわけで、さあ!」
「なんでこんなに活き活きしてるんだろう」

 まるで水を得た魚のようだった。先程まで悶え苦しんでいた人物とは思えない。
 しかし呆れつつも最終的には「しょうがないなあ」とばかりに膝を明け渡す彼女も大概であった。
 しょうがないのは何だかんだで押しに弱い鈴仙の方であって、彼にいたっては「どうしようもない」というのが正しい。

「では、お邪魔します」
「はいはい……。ひゃ、っぅ」

 一礼して太腿の上にやってきた重みと温もりに、思わず声を上げかけた。
 彼の体温を常に感じることになるという状態に今さらながら気付いた鈴仙だったが、時既に遅しである。
 喉元までせり上がってきた悶え転がりたくなるような衝動をどうにか飲み下し、深呼吸一つして耳掻きを手に取った。

「ああ、俺の敏感な穴に、鈴仙の固く聳え立つ棒が……」
「変なこと言わないでよ!」

 彼の冷やかしに平静を取り戻したという事実がなんともやるせない。





「おふぅ、天にも昇る心地とはまさにこのことか……」
「地底から下界に復帰した程度だと思うなあ」

 始まりこそ波乱を匂わす耳掃除だったが、思いのほか滞りなく進んでいた。
 最初はおっかなびっくりといった体だった鈴仙の手際も、丁寧さはそのままに気後れが消えている。
 ちまちまと耳垢をこそぎ落とし、横に置いた懐紙に捨てる。
 どうにも神経を使う作業であるはずのそれだが。

(なんだか、楽しくなってきたかも……)

 鈴仙の方こそいたく気に入ってしまったらしい。
 もともと細かい作業はそれほど苦にしない性格だが、それ以上にこの姿勢が彼女にとって都合が良かった。

 至近にある彼の顔は、しかし横を向いている。
 だというのに寂しさを感じないのは、彼の耳が文字通り彼女の方に傾いているからか。
 視線こそ交わらないけれど、そこには確かに交感があった。
 それに、気恥ずかしさも覚えず彼の横顔を凝視できるというのも良い。
 おまけに自分の手管一つで男を蕩けさせるという行為が、どうしようもなく女としての矜持をくすぐるのだ。

「もう、ちゃんと綺麗にしておかなくちゃダメだよ?」
「じゃあこれからも鈴仙にしてもらうことにしよう」
「また調子いいこと言ってー」

 字面こそ苦言を呈しているものの。
 実際、彼から見えぬ彼女の顔は、思いっきり緩みきっており。
 今にも「えへへぇ」などと言い出さんばかりのニヤケ顔であった。





 両者にとって至福の時が暫し続き、経過でいえば片方の耳が綺麗サッパリ掃除されつくした頃合。
 鈴仙が未練がましく耳のくぼみなどを擦っているとき。
 ふと、彼のなかで悪戯心が首をもたげた。

 今、自信が枕にしている彼女の太腿。
 膝枕と呼ばれつつも、実際に頭を乗っけるのは太腿。
 包み込むような温もりを持ちつつも、ハリと弾力を兼ね備えるコレ。
 触ってみたらどうなるかなー、と。
 っていうか、既に頭を乗せてるくらいだから、手を滑らせても全然問題ないよねー、などと。
 思ったが早いか、次の瞬間には実行に移していた。

「──ひぃう!」

 つつーっと。太腿の表面を指で線を描くようになぞったところ、効果は覿面だった。
 先程までフニャフニャしていた彼女の背筋が一気にピンと伸びる。

 耳掻き棒を突き立てない辺りは大したものだが、このときはそれが裏目に出た。
 即ち、さらなる侵攻を許してしまうことになったのだ。

「ちょっ、ちょちょちょっ!」
「おお、良い反応。じゃあこの辺はどうかな?」
「ひゃあああああ!」

 つるりとした膝頭に五指を這わせ、それを中央に向かって窄めたり、また広げたり。時には回転も加えたり。

「なに! なんなの! なんでこんなことになってるの!」
「いやあ、長いこと膝枕させっぱなしだから? 足の一つも痺れてるかなあと。だもんでマッサージなど」
「いい! いいから、そんなのいいから──」
「イイんですね。わかりました、もっとやります」
「ちが、っくぅううううん!」

 なんだか愉しくなってきたぞう、とばかりにエスカレートする彼の指技。
 足を組んで座ることで普段より量感を増した太腿、それに深く指を押し当て、芯を揉み解すようにバイブレーション。
 さらには指をふくらはぎにまで這わせたり。挙句の果てに足首からくるぶし、足の裏にまで手を伸ばしてみたり。
 水魚どころか、滝を登る鯉。雲を泳ぐ龍。縦横無尽にして傍若無人の如き指使いは、留まるところを知らなかった。





 そして数分後。
 そこには頬はおろか、着崩れたブラウスから除く胸元まで赤く染めて、息も絶え絶えな鈴仙の姿が。

「なにこれひわい」
「はぁっ、はぁっ……く、ふぅー、ふぅーっ。ん、んんっ!」

 彼の軽口に応ずることすら今の彼女には不可能であった。
 時折、思い出したかのようにピクピクと身悶えする様がなんともskmdyである。

 しかし一方で○○は己のしでかしたことに今さらながら後悔していた。
 日も高いうちから調子に乗りすぎた結果がこれだよ!

 後悔先に立たず、立つのは死亡フラグばかりなり。
 怒った鈴仙の細腕にポカポカ殴られるのは日常茶飯事のことなのだが。
 俯いたままの彼女の表情は窺い知ることができず、荒い息を吐きつつも沈黙を保ったままなのが不安をかきたてる。
 因みに、もはや膝枕などという名目は明後日の方向にすっ飛んで入るが、彼の頭は汗ばんだ彼女の太腿に乗せられたままだったりする。

 彼は自身の交渉術における基本にして唯一の手段、『DOGEZA』を行使すべく起き上がった。

 が。

 両肩を押さえつけられ、再び太腿にダイブする。

「おおっと」
「っ…………」

 そして有無を言わさず頭を横に向けられる。
 原点回帰。振り出しに戻る。それは最初と同じ姿勢だった。
 耳に手を当てられ、覗き込まれる。鈴仙が傍らに取り落としていた耳掻き棒を再び握る気配があった。

「えーっと、鈴仙? 鈴仙さん?」

 鬼気迫るといった雰囲気を匂わせる鈴仙に、○○の背筋を冷たいものが走る。
 まさかこのまま必殺仕事人よろしく、耳掻き棒を急所に突き立てられ亡き者にされてしまうのか。
 戦慄する彼の耳に、蚊の鳴くような声が届いた。

「…………から」
「え?」

 あんなことするから、とでも責められるのかと彼は思った。
 いや全くその謗りは甘んじて受けるべきものでもあるのだが。

「まだ、片っぽしか、終わってない、から」

 一語一語噛み締めるように、彼女は再びそう言った。
 なるほど、同じ姿勢と思いきや、顔の方向が逆である。
 しかし、あんなことをしておいて、それでもまだ一方的な頼みを聞いてくれる余地があるものだろうか。
 そう疑問に思う彼に、「だから」と、彼女は続ける。「だから」。


「ぜったい、ぜったい、動いちゃダメなんだからね……?」


 囁かれた言葉は、警告というには余りに甘ったるくて。忠告というには余りに蕩けきっていて。
 柔らかい声音のはずなのに、ヤスリのように彼の思考をゴリゴリと削り。
 先程凍えたはずの背骨を、内から融かす熱が走る。

 もはやそれは、彼には『おねだり』にしか聞こえなかった。

 その言葉に後押しされるように、おずおずと、だが明確な意思を込めて、彼の手が再び蠢き始める。
 すべすべとした肌はうっすらと汗を浮かべ、まるですいつくようなさわり心地。

 そして、先程は彼も流石に遠慮した部分、スカートの内側、その裾に指先が触れる。
 小さく息を呑んだ鈴仙だったが、潤んだ瞳の焦点をなんとか合わせて、彼の耳に耳掻きをあてがう。
 奇妙なシンクロを生み出しながら、彼の指と彼女の耳掻きはゆっくりと先に進められ──。















「話は聞かせてもらったわ! バカップルは滅亡する!」



「んっきゃあああああっ!」
「ギャアアアアアアア!」



 次の瞬間、訳のわからないことをのたまいながら、永遠亭の主、輝夜が襖を開け放ち参上した。
 もちろんメガネはない。

 思わぬ、そして計ったかのような彼女の出現による被害はまさしく甚大。
 あれだけの彼の暴挙においても、遂には振るわれることが無かった鈴仙の持つ耳掻き棒は、狙い過たず彼の耳の穴を穿ち。
 その痛みに○○は鈴仙の膝から転げ落ち、片耳を押さえて悶え転がり回ることになった。



「姫様のそれは犯行声明だと思うな。滅亡させるぞー、みたいな」
「私にだって……治せないものくらい……ある、のかしら?」
「んじゃ、お師匠様。そこの大回転馬鹿は?」
「既にして、良い薬よ」

 続いて、てゐと永琳が益体もない事を駄弁りつつ、のたのたと侵入してきた。
 先程までピンク色だった空間が、あっというまにグラウンド・ゼロである。
 先の一打は露払いにしか過ぎない辺り、救いようも無い。





「さて」

 上座ではなく出入り口のすぐ近くに陣取る輝夜。マナーが如何こうではなく、単純に逃げ道を塞ぐためだ。
 お姫様からは逃げられない。選択肢が『はい』しか無いのだから。

「二人とも。随分と、ずううういぶんと。楽しそうだったじゃない?」

 片胡坐をかき頬杖を付いた輝夜は、粘着質な態度と声色でそう言った。
 投げ掛けられた二人、○○と鈴仙は正座である。言うまでもなく、言われるまでもなく。

「鈴仙がエロ可愛くてすっっっごく愉しかったです」
「ちょっ、ばっ」

 慌てて彼の口を塞ぐ鈴仙だったが、そもそも誤魔化すどころか、既にモロバレしていることは明らかなので無駄である。
 部屋の中が物騒な気配で飽和状態となったところで、輝夜はフンスと荒く鼻息をついた。

「……まあ、いいわ。イナバがあざといのは今に始まったこっちゃないし」

 酷い言われようだと鈴仙は思ったが、口には出さない。寧ろ出せない。
 そんなことより、と彼女は続ける。

「そんなことより! あんた達だけ面白そうなことするなんて許されないんだから!」

 高高と宣言し、ドサクサに紛れて奪い取った耳掻きを彼にズビシと突きつけた。

「というわけで、○○。いらっしゃい。おいで。来い」

 指名された彼はむむむと一唸りして。

「それはつまり、俺が姫のフトモモを撫で回すということで……」
「そっちじゃねーよ」

 両手をワキワキとさせたところで、近くに居たてゐに頭を引っ叩かれた。
 ついでに鈴仙にわき腹を抓られた。

「じゃあ、姫が俺の下半身を弄り回すんですね!」
「あら、それもいいかも──いたいいたい、痛いから、永琳やめて痛いから」

 満更でもなさそうな輝夜の顔を、永琳のアイアンクローがギリギリと締め付ける。
 穏やかな笑みを浮かべたまま、輝夜の顔を鷲掴んだまま。彼の方を振り向いた永琳は、表情一つ変えずに言った。
 もしくは命令した。

「○○、Go」(※意訳:輝夜が余計なこと思いつく前にさっさと済ませなさい)

「いえす、まむ」

 有無を言わせぬ迫力であった。



 のっそりと立ち上がった彼を、切なげな表情で見やる鈴仙。
 思わずといった感じで、己から離れ輝夜に歩み寄る彼の服の袖を掴もうとしたが。
 腰を上げかけたところで何かに気付いたように凍りつく。
 次の瞬間、頭から湯気を立ち上げんばかりに赤面して、先程よりよっぽど緊張したようにその場で座りなおした。

 不思議なこともあったものである。

「……鈴仙さぁ……」
「お願い何も言わないでお願いだから」
「いや、言わないよ? っていうか言えないし。けど、ねぇ?」
「うううう、○○のバカぁ……」



 そんなことは露知らず、解放されたこめかみを押さえる輝夜の前によっこらせと座った。

 のらりくらりと回避を試みた彼だったが、正直なところ、輝夜の膝枕に惹かれないかといえば嘘になる。
 姫様のお膝元なのだ。そもそも彼女に何かをしてもらうという時点で既に希少なのだ。
 逆のパターンならともかく、そのレア度は、言っちゃ悪いが鈴仙の膝枕とは確たる差があるだろう。

「あー、割れるかと思った……。じゃあ、ホラ。許可するわ」
「失礼しまーす、っと」

 態度こそ気安いものの、姫と扱われることは伊達ではない。
 身に纏う雰囲気からして、無遠慮に近寄ることを躊躇わせる『難さ』が存在するのだ。
 彼はそれを何とか無視しつつ、彼は輝夜の無造作に組まれた足、その太腿部分に頭を乗っけることに成功した。

「ふぅん、案外重いのねえ。空っぽなんじゃないかと思ってたけど」
「いえいえ、愛とか欲望とか煩悩とかで溢れておりますとも」
「実が無いんだから、結局空っぽじゃないの」
「水を頂ければ実が出来ますともさー」
「水差されたのを根に持ってる?」
「いいえぇ、べぇーつにぃー」
「あはは、変な頭」
「そりゃ生まれつきです」
「私はさっき変わっちゃうかと思った」

 普段より口が回るのは緊張が故。
 一度触れることが叶えば、彼女の懐は何より離れがたいものと変わった。
 ほのかに香るジャコウ、上等な仕立ての着物の感触。
 しかしその芳しさも滑らかさも、彼女の生身のそれには及ばないということを、彼の中の『男』は容易に喚起した。
 いや、それを何よりも高く匂い立たせることこそが、彼女の魔性ともいえる魅力なのかもしれないが。

「えーと、耳、耳っと。ちょっと暗いなあ」
「あんまり引っ張らないで下さいよ……っ、うあ」

 思わずといった感じで○○は上擦った声を上げた。
 さらりと、長く伸びた彼女の髪が微かに彼の頬を撫でたのだ。

「くすぐったかったかしら」
「あ、いや、このままでいい」
「そう?」
「ん」
「ふふっ。子供みたいよ、今の貴方」
「輝夜に比べればガキだもの、少年だもの」

 まるで玩具を取り上げられまいとする幼子のような反応は、普段の彼からすれば割と珍しく。
 しかしそれに向けた輝夜の慈しむように柔らかな笑みの方こそ、よっぽど貴重なものであった。
 角度上、彼から見えないのが残念なところ。



「ありのまま今起こってる事を話すわ。バカップルを滅亡させると宣言した姫様が目の前でイチャついてるわ」
「馬鹿馬鹿馬鹿。○○のバカ、○○はバカ、○○でしかもバカっ!」
「何このキックオフ状態。輝夜ったら、すっかり自室モードじゃないの。彼までそれに引き摺られてるし」

 外野の声なんて聞こえない。



 前置きの時点で既に出来上がり気味ではあったが。
 如何せん、彼もやはり少なからず浮かれていたのだろう。
 周りの白い目より、呪詛の声より、気にすべきものがあるはずなのに。

「ところで、輝夜。耳掃除なんてしたこと有るのか?」

 彼は、なんでもないような口ぶりでそう尋ねた。
 その問いに輝夜は、上機嫌で、胸を張って、自信満々に、答えた。「安心なさい」と。

「痛みも、快感も、所詮は一瞬のものでしかないわ」
「…………え゛?」

 一瞬、彼はそれが問いに対する答えだとはわからなかった。
 もしくは理性と本能が総動員で、理解することを拒絶したのかもしれない。

「重要なのは、私が、貴方に、こうしてあげるという事実そのものなのよ!」
「待て。待て待て待てマテ!」

 事実上の過失傷害宣言に危険を覚え、離脱を試みるが。
 時既に遅し、耳に凶器を添えられ、身体を起こすことができない。
 あてがわれた耳掻き棒は、もはや彼にとって拳銃の銃口と同義であった。

「いやー! 助けてー!」

 恥も外聞も無く助けを求め、手を伸ばす。
 しかしその手は横からてゐに掻っ攫われ、何故か指ずもうに持ち込まれた。

「これも一応は初体験ってことになるのね。嫌だわ、また○○に私の初めてを施しちゃう」
「せめて、せめて優しくしてください」
「だぁめ。せっかくだから、ここでいつぞやの意趣返しといきましょう」

 そして輝夜はにっこりと微笑んで。

「初めてなのに、うんと激しくシてあげる」

 彼が真っ先に確かめるべきは、身の安全だったということだ。





 以下、ダイジェスト。



「狭いわねえ。もうちょっと広がらないのかしら」
「無理! 無理だってば! っていうかメリメリって音がー!」



「この、コレが、もう少しで取れそうな感じが……」
「そんなに擦っちゃらめええええええ!」



「ふふふ。固いのが膜に当たってるのがわかるでしょう?」
「お願いそれだけは! つーかマジでそれだけは勘弁して!」



「いーち、にーい、さーん、しーごーろーく、なーな……」
「てゐ待って、今ちょっとカウント加速したろ! 輝夜も、もっとゆっくり! ゆっくりして痛ってええ!」



「あっ」
「あっ」





 そして十数分における嵐が過ぎ去った後。
 そこにはボロ雑巾のように打ち捨てられた○○の姿が。

「もう、こわれちゃうよぅ……」

 魂すら吐き出していそうな口から出た言葉が『いつぞや』の輝夜の台詞そのままな辺り、凄惨と見るか、余裕があると見るか。
 もしくは輝夜の意趣返しが正しくなされたとも見るか。
 どちらにせよ、彼のライフは既にゼロであることは確かだ。

 一方、当の輝夜はスッキリしたとでも言わんばかりの表情でご満悦である。
 もはや今の彼、もしくは耳掃除に対する熱意も興味も使い果たしたらしい。

 てゐは動かなくなった彼の手を意味も無く弄んでいたが、それにも飽いた様子。 
 砂浜に打ち上げられたクラゲにするが如く、彼をつんつくと突っついたりしている。

 鈴仙は最初こそ彼の態度に思うところがあったものの、その惨劇を目にしてすっかり毒気を抜かれてしまったようで。
 倒れた○○と、その近くに居るてゐと輝夜、三者の間にオロオロと視線を彷徨わせていた。





 そして、この場に居る最後の一人。最後の女。
 月の頭脳が、満を持して動く。

「優曇華も、姫も。詰めが甘いわね」

 今まで傍観を決め込んでいた永琳が立ち上がった。
 表面上は完璧に見える笑みを浮かべながら、倒れ伏したままの彼の元に歩み寄る。

 一体何をしようというのか。
 とどめでも刺すつもりなのだろうかとてゐは考えた。
 一段落終えた後で彼を介抱するつもりだった鈴仙は、先を越されてしまったと悔やんだ。

 そんな予想を知ってか知らずか、○○の隣に腰を下ろした永琳は。

 おもむろに、彼の頭を抱え上げ。

 その柔らかな胸に押し付けるようにして、抱きしめた。

「んなっ!」

 驚愕の声は誰のものか。
 少なくとも、永琳の乳に顔を埋めた○○ではないだろう。
 誰もが呆気に取られた中で、しかし永琳は周囲にも、自らの胸で硬直する彼にも構わずに、その行為を続けた。

 桜色の唇を、彼の耳に寄せる。
 触れるか触れないかといった至近で、口付けるかのように唇をすぼめ。


「ふぅ────っ」


 その息吹を、余すこと無く彼の耳に注ぎ込んだ。

「~~~~っっっ!」

 声なき声をあげる○○。
 先まで死に体だった筈のその身が、ひくひくと震える。

 悶える彼を己の胸に抱いたままの永琳は、今度は彼にくるりと逆を向かせて、残った片耳にもう一度ブレス。

「すぅ……、ふぅうう────っ」
「あええあうういいあああー……」

 溜めを作って三割増しとなった吐息の威力に、訳のわからぬ喘ぎを漏らす。

 今度は後頭部を乳に、顔を表に向けていたため、彼の表情は輝夜達にも見て取れた。
 先程まで青白く縦線すら入ってそうだった顔色は。死んだ魚のようだった目は。
 咲き誇る桜のように色めき、恍惚に満ち足りた目をしていたのだ。
 有り体に言えばこの上なく幸せそうであった。
 余人が見れば思わず引っ叩きたくなるくらいに。

 漸く永琳が腕を離せば、もはや亡我の境地に至っていた彼は、ぽすんと力なく彼女の膝枕に落ちる。
 そして永琳は聖母のように厳かに、或いは少女みたいに晴れやかに、もしくは悪魔の如く憎たらしく告げた。

「はい、おしまい」

 即ち、これぞ『詰み』である。





 因みに、詰んだのは何かというと。
 これはもちろん○○の進退であったりする。

「…………ふっ!」

 笑いというには鋭すぎる声が響く。
 その主は言うまでも無く、攻撃色を身に纏った輝夜である。

「ふ、フ。フフフフ腐。確かに? たぁーしぃーかぁーにぃ、私が甘かったようねえ」

 ゆらりと立ち上がるその様はまるで幽鬼の如く。
 亀裂のような笑みを口に浮かべ、しかしその目はこれっぽっちも笑ってはいない。
 お仕置きモード、難易度Lunatic仕様の輝夜が果たして降臨した。

 引き金を引いた永琳はといえば、やることをやった後はさっさと退出していた。
 去り際に「夜までには済ませてちょうだいね」とのこと。
 今夜の当番は彼女だったりする。

 この状況を作り出した根本の原因である彼は、うつ伏せになったまま冷や汗と脂汗をダラダラと垂らしていた。
 それでも逃げないのは、無駄とわかってるというのもあるが、身体的な都合により身を起こせないためだったりする。
 永琳先生ったらテクニシャン。

 辛うじて動かせる首を巡らせ、この場に残る他の面子に賭けようともした。
 しかし、てゐは彼のことをまるで汚物を見るような目をしているし。
 最後の良心にして希望である鈴仙に救いを求めたところ。

「……知らないっ」

 と、言われてしまった。
 頬を膨らませてそっぽを向くその仕草はいじらしくて、とてもよい、が。
 やはり彼は残念ながら、全く以って残念ながら、それどころではないのだ。



 執行者となった輝夜が一歩一歩近付いてくる。
 もはや逃れる術はなし。

「その不埒な性根! 欠片も残さず穿り出してあげるわ!」

 そう叫んで、怪鳥が如く踊りかかる輝夜の手にてゐが握らせたのは。

 先程まで使用していた耳掻き棒。
 ではなく。

 イナバ用ジャンボ耳掻き棒。
 ですらなく。

 似たような形ではあるけれど、まかり間違っても耳に入れるものではない。
 人それを、孫の手という。



 襲い来る悲劇を確信した彼は、せめてもの慰みとして。
 吸い付くような鈴仙の太腿と。
 全く高貴な輝夜の香りと。
 ぷにぷにとしたてゐの手と。
 何よりも柔らかな永琳の胸の感触を思い起こし。
 せめて最期は幸せな記憶とともに逝けるよう──。














 ひぎぃ



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最終更新:2011年02月21日 23:57