美鈴11
新ろだ390
「こんにちわー!○○です!誰かいませんか!」
大きな紅い館の門前で男が張り叫んでいた。後ろには大量の樽やら俵やらが詰まれている荷車があった。
普段ここには門番の紅美鈴という女性が立っている。その美鈴に荷台を引き渡して代金を得る。彼は配達を生業とする人間であった。
が今日に限ってその美鈴はどこにもいない。何度かここへは配達しているが、こんな事は初めてであった。
門にも鍵がかかっている様で入る事も適わない。荷車を置いて帰るような無責任な事も出来ない。
もう一度叫んでみようかと彼が息を吸い込んだ時であろうか。
「聞こえてますからそれ以上叫ばなくて良いですよ」
そう言い、美鈴がこちらへと降りてきた。
「遅れてごめんなさいね、館の中で用事をしてたもので」
「いえそんなに長い時間待たされた訳でも無いので気にはしてませんよ」
「それじゃ注文された分が揃っているか、確認の方お願いします」
そう言い彼はポケットの中から注文表を彼女に手渡した。
「………はい、全部揃ってます。いつもながらありがとうございます」
確認を済ませると表に判子を押し、彼に代金と一緒に渡した。
「毎度どうも。次も御ひいきにして下さいね。」
挨拶をし、荷車を引いて帰路に就こうとした時
「あ、○○さん。待たしてしまったお詫びにお茶でも飲んでいきませんか?」
「それともこの後も仕事の用事があったりしますか?」
「この後は…今日はこの配達だけで終わりですね」
「だったら是非!美味しいお茶の葉があるんですよ!」
「な、ならご馳走になろうかな」
彼女の勢いに押されてではあるが彼はご馳走に預かる事になった。
門から入りしばらくの間広大な庭を歩いていたのだが、次第に館の方から逸れていく事に彼は気づいた。
「あれ?館の中に美鈴さんの部屋があるんじゃないんですか?」
「実は庭の方に私の家があるんです。…決して仲間外れにされてる訳ではありません」
「そうなんですか、てっきり中で生活してるものだと思ってましたよ」
あれこれとやり取りをしていると、どうやら彼女の家に着いた。
あまり大きくは無いが、大人の女性が住むには十分なくらいの大きさであった。
その辺に荷車を置かせてもらうと、家の中へと通された。
「お邪魔しますよ…。」
家の中は生活に必要な物が大体揃っていた。そして奥には何故か銅鑼が一つ置いてあった。
「これは…銅鑼?何でこんな物が家の中に?」
「ちょっとお休みを貰った時に村の骨董品屋で見つけたんです。懐かしいと感じたらいつの間にか買ってて」
「分かります、買うと思ったらもう買ってなきゃいけないんですよね」
「買った!なら使って良いんですよね。そこに座ってくつろいでいて下さい」
クスクスと笑いながら、彼女は台所へと入っていった。
少し経つと盆に急須と湯呑みを二つ乗せて彼女が台所から戻ってきた。
「お持たせしました。今日は○○さん待たせっぱなしですね」
「自分は待つのも待たされるのも好きな性分なんで、気にしてないですよ」
湯呑みを二人分机の上に置き、急須からお茶を注ぐ。
「どうぞ、入れたてなんできっと美味しいはずですよ」
口に入れると普段飲むものとは全く違う味だった。
「これは…?緑茶や麦茶じゃないみたいですけど」
「これ私のいた国のお茶なんですよ。烏龍茶って言うんです。」
「確かに美味しいですね。もう一杯貰えますか?」
「はい、どうぞ。まだ沢山入っていますから、遠慮せず言って下さいね」
楽しい時間はあっという間に過ぎていく、気づけばもう夕暮れ時になっていた。
夜になれば妖怪の時間、人間である○○が無事に帰れる保障など無くなってしまう。
「とと、もう日が暮れてきたのか…そろそろ帰る時間だな」
「えっ、もうそんなに時間が経ったんですか?」
窓から差し込む光は橙色。確かに夕暮れの証拠であった。
「残念です…。もう少し○○さんと話していたかったんですが…」
「なら、今度の木曜日にまた来て良いですか?仕事抜きで」
「でしたら、その時は…あの…何ていうか」
もじもじと美鈴は口ごもり、緊張さえも見て取れる。
「…その、あの、その時は…泊まっていきませんか!」
緊張しすぎて声の調整が出来なかったのか、かなり大きく家の中に響いてしまった。
「……ならお言葉に甘えて次は泊まらせてもらおうかな」
その返事を聞いて、彼女の顔には喜びの色が広がっていった。
「ほ、本当ですか!?」
「嘘を言ってどうするんですか。それじゃ自分はこの辺で」
そう言うと彼は家を出て荷車の元へと向かった。
門前まで美鈴に送ってもらい、彼は村へと帰っていった。
彼がやってくるその日が待ち遠しくて仕方無い。
別れた傍からもう彼女はそんな事を考えていた。
新ろだ459
「あ゛ー……頭いてぇ」
紅魔館の廊下を歩きながら俺は呟く。理由は分からないが、朝起きて暫く経ってか
ら急に頭痛がしだしたのだ。特に何かした覚えもないのに、決してひどいわけではな
いが無視できない痛さを感じながら前へ進む。
「あれ、○○さん。どうかしたんですか?」
声をかけてきたのは紅魔館の門番、美鈴。なんかあだ名が中国とか言われて、よく
凹んでいる。
「美鈴か……ってー」
喋ると地味に痛い。なんなんやろね、これ。幻想郷に来てから暫くお世話にならな
かったとはいえ、この頭痛は慣れない。
いや、頭痛なんて慣れるものでもないけど。
「頭痛いんですか?」
「ちょっと、な」
風邪でしょうかね。別に寒気とかはまったくしない。そんな受け答えをしている間
も、頭痛は襲ってくる。くそ、本当にいらいらする。
「永遠亭にでも行って、薬もらってくっかなぁ」
そこまでひどいものでもないにしろ、やはりこの痛みと早いところグッバイしたい
のである。好き好んで頭痛を楽しむ奴は、きっと阿呆だ。
「バ○ァリンぐらい幻想入りしてないのかね」
「バ○ァリン?」
ちょこんと首をかしげる美鈴。
「頭痛薬。錠剤なんだけど、結構効くんだよ」
俺は、と続ける。薬なんてもんは、効くと思えば一瞬で効くもんだ。俺なんか、頭
痛とかの時にバ○ァリンを飲むと、十分ぐらいしたらすぐに落ち着く。根が単純だか
らかもしれないが、認めるとなんか負けな気がする。
「あれの半分は、優しさで出来てるらしいからな」
言うまでもなく、もう半分は薬物である。というか、全部薬物だろという突っ込み
をしたのは俺だけじゃないはず。
「優しさ、ですか」
「美鈴の優しさで俺の頭痛を治してくれ」
なーんて……
「いいですよ」
え、マジっすか? 突っ込まれると思っていた俺は予想外の返答に目を丸くする。
そんな俺に美鈴は近づいてきて、ゆっくりと抱きしめてきた。
しかも場所は廊下。流石にこんなところを見られると、すんごい恥ずかしいんだけ
ど……離れる気にはまったくならない。
(……暖かいな)
美鈴の体温が伝わり、凄く穏やかな気持ちになる。背中に回された手が、ぎゅっと
力を入れてさらに俺を拘束する。
美鈴の心臓の鼓動が、とくん、とくんと伝わり落ち着く。
「……どうですか? 頭痛、少しはマシになりました?」
「え……あ、あぁ。うん、その、少しだけ」
良かったと笑う美鈴はいまだ、俺を離さない。恥ずかしくないんだろうか、恋人で
もない男に抱きついて。それともあれか、これは期待してもいいんだろうか。
「好きでもない人に、こんな風に抱きつきませんよ」
口に出したのか、それとも表情から察したのか、美鈴が不満そうに言う。
「あー……そ、そうか」
もう頭痛など感じない。それよりも恥ずかしさと嬉しさだけが駆け巡り、美鈴の顔
をまともに見られない。きっと顔が赤くなってる。
「ふふ、○○さん可愛い」
ぎゅっと今度は俺の頭を抱え、自慢の胸に押し付けてくる。苦しい、と思うよりも
先に恥ずかしさが勝る。その後に美鈴が俺の頭を撫でてきた。ゆっくりと、あやすよ
うに撫でられて、力が抜けていく。
「……なんか、すごい楽になった」
「えへ、そうですか? じゃあ、今日は一緒に寝ましょうか」
「あぁ……え?」
「○○さんを頭痛から守る為に、今日は私が一緒に寝てあげます。ほら、そのバ○ァ
リンの代わりです。私が優しさで癒してあげますよー」
抱きしめから一転して、美鈴は俺を抱き上げる。それもお姫様だっこという、女の
子にとっては夢でも男にとっては羞恥プレイに等しい形で。
「ちょっ!? も、もう頭痛は治ったから大丈夫」
「いえ、ここは大事を取って安静にしないと。私の能力は気を使う程度の能力、一緒
に横になりながら癒しますよっ」
何このやる気。なんとなく鼻息も荒く思えるのは、恐怖心からくる幻だろうか。
「ま、まだ朝だし」
「じゃあ昼寝で」
撃沈。
「仕事っ、仕事!」
「○○さんの方が大事です」
嬉しいけどもっ。
「おぜうに怒られる!」
「○○さんの方がry」
これもだめか。
「メイド長に」
「○○さんry」
これも。
「パッチェ」
「○○ry」
ダメだ、この美鈴聞く耳もたねぇ。今の俺には止める術が……あ。
「い、一緒に寝ると俺が我慢できなくなる!」
ぴたりと美鈴の動きが止まる。よし、流石にこれは返せないな。なんとか体を揺ら
して美鈴の腕から脱出をしないと……。
「私は、○○さんなら構いませんよ……?」
顔を赤くしながら呟く美鈴を見たら、そんな気はなくなった。されるがまま、俺は
美鈴に連れて行かれる。
……まぁ、いいか。美鈴が嬉しそうなのを見ていたら、もうどうでもよくなった。
なるようにしかならない。もしメイド長とかに怒られるなら、俺も一緒だ。
急に頭痛がして、バ○ァリンを飲んでから出てきたネタ。美鈴の優しさはきっと病
気なんかもすぐに治すんだよ!
美鈴の半分は優しさで、もう半分は愛で出来てるに違いない。
お母さん美鈴 その2(新ろだ619)
拾われっこ○○が美鈴の付属品となってから暫く、紅魔館門前は平和そのものだった。まる
で○○が平和をもたらしたのだと、門番隊が噂をするくらいに。割と頻繁にあった美鈴への挑
戦者や、レミリアに対して敵意を持った妖怪の襲撃。
そして何より、毎度毎度美鈴を含む門番隊を吹っ飛ばしては紅魔館に侵入、パチュリーの図
書館から書物を掻っ攫っていく憎いあんちくしょうこと黒白魔法使い、霧雨魔理沙の襲撃もな
かったのだ。仕事としては暇で仕方ないが、その分美鈴や他の者は○○に構えるという最大の
メリットがあったので問題はなかった。
だがしかし、現実は非情である。今日この日、美鈴が○○を拾ってから初の霧雨魔理沙の襲
撃があった。
「イヤッハァァァァァァァァァ!!」
再び図書館からパチュリーの本を盗む――もとい、借りるべく魔理沙はいつものように速度
全開、テンションマックスで紅魔館に向かっていた。彼女の辞書に自重の文字はきっとない。
「げえっ、魔理沙!?」
○○をあやしていた美鈴が慌てる。ここ暫く平和だったので、完全に油断していた。○○を
抱えたまま魔理沙と戦いなど危険すぎる。自分ではなく、○○が。
既に母親全開の美鈴。
自分の安全<<超えられない壁<<○○の安全
彼女の脳内ではこういう方程式が出来上がっている。しかし、それでも彼女は心の底から門
番であった。逃げなければ、と分かってはいてもそこを離れることは出来ない。
「ま、まずい。だ、誰かー!」
せめて○○だけでも逃がそうと誰かを呼ぶ。その行為は恐らく、無駄だろう。魔理沙の最高
速に対抗できるのは幻想郷でも烏天狗の射命丸文だけ。ここに彼女が来ることなど期待できる
はずもない。
「今日も侵入するぜ門番! 先手必勝、マスタァァァァ――」
「ちょ、待って待ってー!?」
本気で焦る。美鈴は大丈夫だとしても、○○が魔理沙のマスタースパークを浴びてしまえば
決して無事ではすまない。最悪、命を落とす危険も……。
それだけは絶対にダメだ、と美鈴は自分の体を盾にして○○を庇う。普段は自分の体を頑丈
にしている気を、全て○○へと注いで。
(○○には、傷一つつけさせない!)
今まさに、魔理沙のマスタースパークが放たれようとしたその時、自分の母親に迫る危機に
気付いたのか○○が大声を上げて泣き出した。
「――スパってうぇぇ!?」
突如聞こえてきた赤ん坊の泣き声に驚いた魔理沙は、最高速の状態から一気に急ブレーキ。
その衝撃で持っていたミニ八卦路を落とし、マスタースパークは放たれずに終わる。無論、そ
んな事をした彼女もただではすまず、真っ逆さまになった箒から地面へと投げ出された。
「ぐぇっ……。くぁー、酷い目にあった」
打ち付けた腰を撫でながら、魔理沙は立ち上がる。地面に転がった箒を拾い上げて、美鈴の
下へ。
「おい、門番。いつの間に子供なんて作ったんだ? いくらなんでも早すぎるぜ」
○○を抱きしめていた美鈴は、危険がなくなったのを知り安堵のため息。未だ泣いている○
○をあやしながら魔理沙へと向き直る。
「そんなすぐに出来ないわよ。この子は捨て子、それを私が拾ったのよ」
「そうなのか。しかし、危うく巻き込むところだったぜ……なんでお前が抱いてるんだ?」
「私が○○のお母さんだからに決まってるじゃない。ほら、よしよし、もう大丈夫だからね」
○○をあやす美鈴を魔理沙はじっと見つめていた。泣き止んで笑う○○の姿に、どこか心惹
かれる魔理沙。
「な、なぁ、門番。私にも抱かせてくれないか?」
「え……まぁいいけど。気をつけてよね?」
分かってる、と返し魔理沙はゆっくりと○○を受け取って大事に抱いた。もしかしたら泣か
れるかと不安になったが、そんなことはなく○○はきょとんとしたまま自分を抱く魔理沙を見
上げている。
不意に笑って自分の顔へと手を伸ばす○○の姿に、魔理沙はノックアウトされた。
「か、可愛いな」
「そろそろ○○返してー」
「あ、あぁ。悪い」
魔理沙は○○を美鈴へと返し、そのまま美鈴が○○をあやす所をじっと見つめたまま動かな
い。美鈴もそれに気付いているが、何を考えているのか分からずそのままにしている。
今日も今日とて、図書館から本を無断拝借しにきたのではないのか、とは思っているのだが
魔理沙に動きはない。
「……えっと、何?」
「別になんでもないぜ?」
「ふぅん」
不気味すぎる。美鈴は何も動きを見せない魔理沙に、不安を隠せない。○○はそんな美鈴の
姿を無邪気に見ているだけ。赤ん坊は気楽でいい。
「美鈴、○○は……あら、魔理沙。来てたの」
○○の様子を見に来た咲夜が、美鈴と共にいる魔理沙を見つけて目を丸くする。いつもなら
美鈴をぼろぼろにして図書館に直行するというのに。
「よう、今日もお邪魔してるぜ咲夜」
「本当にね。で、今日は図書館にいかないのね? いつもなら風のようにやってきて、風のよ
うにパチュリー様から本を盗んで行くのに」
「人聞きが悪いな、あれは"借りてる"だけだって」
「死んだら返す、なんて泥棒と同じじゃない……」
疲れたように突っ込む美鈴。しかし、本当に何故今もこうしてここにいるのか。考えられる
理由としては……やはり、○○の存在。
「ま、まさか黒白……○○を持って行くぜ、なんて言わないわよね」
敵意すら含ませて美鈴はそれを口にする。それと同時に、咲夜の視線も鋭く。そんな成り行
きを見守っている門番隊の妖精達もはらはら。その内心は○○を持って行かれるという恐怖と
自分達に被害がきませんようにという自己中心的なものが半分半分。
妖精だから自己中心的なのは仕方ない。
「流石に人間の子供まで持っていくなんてことはしないって。借りもしないから安心しろ」
憮然とした表情の魔理沙の言葉に美鈴と咲夜も安心した表情。いつもいつも図書館からパチ
ュリーの書物を強奪していく彼女にも、常識は残っていたようだ。
「その、だな……持ってきはしないけど、頼みがあるんだが」
「な、何?」
「あうー?」
○○をかばうように美鈴は尋ねる。そんな美鈴に、○○はよく分かっていないような(いや
実際分かってないだろうが)声を上げる。そんな○○に魔理沙は胸を締め付けられる。
まぁ、○○を見て魔理沙も母性本能に目覚めたということになる。
「た、たまにでいい。私も○○の相手をしてもいいかな、っと」
「……無理矢理うちに侵入しようとしなければいいけど」
「本当だな? 言質は取ったぜ?」
そうなればこちらとしても万々歳だから問題ない。○○は紅魔館に平和をもたらしただけで
なく、パチュリーにも平和をもたらしたようだ。まさに天使の子。悪魔の館に天使の子とは矛
盾している。
でも天使だから仕方ない。仕方ないったら仕方ない。
「ぁー」
「ん? どうしたの○○。お腹すいた?」
その場合、きっと泣いている。赤ん坊にとって泣くという行為は、母親とのコミュニケーシ
ョンだ。お腹がすいた、おむつがごわごわする、などを知ってもらう為に赤ん坊は泣いて母親
との意思疎通をはかる。
「あぶ」
「あ、こら。髪の毛食べちゃダメ」
○○が美鈴の髪の毛を口に咥える。なんでも口にいれたがるこの癖は、ちゃんと矯正してお
かないとなーと美鈴は考える。
ちなみに、この癖は○○が大きくなってからも残っていたが、美鈴の調教もとい育て方でち
ゃんと矯正は出来た。
「今日は帰るぜ。じゃあな、門番、咲夜。○○、また来るからなー」
一撫でして魔理沙は去っていく。
「○○は本当に紅魔館を平和にしてるわねぇ。ふふ、少しつまらないと思うのは今までのこと
に慣れてたからかしら」
咲夜も○○を撫で、仕事に戻っていく。
「ぶー」
「あれ、もう眠い? よしよし、じゃあねんねしましょうねー」
紅魔館の平和は、今日も○○によって保たれていた。
------------------------------------------------------------------
チラシの裏。
美鈴お母さんに育てられたい。しかし、色々とイチャから離れてる気がしなくもない。
でも、美鈴に小さい時から育てられて婿にとかされたい。
何が言いたいかというと、美鈴は可愛いってことで。
よし、とりあえずまた砂糖生産の為にイチャつくことにしよう。
新ろだ708
◆紅魔館、ゲート前にて◆
「本日の配置ですが、A班は裏庭を中心にお願いします。
B班は館周辺の補強を。C班は門を中心に散開して警護にあたってください。
無理はしないように、危険を感じたら助けを呼んで下さいね。
では、解散!」
「……いつもいつも精が出ますねぇ。いや、頭が下がります」
「あ、○○さんお早うございます。今日も薬売りですか?」
「そんなところです。ほら、図書館のあの子が、相変わらずみたいで」
「ああ、パチュリー様が。はい、通って頂いて結構ですよ」
「はいはい、失礼しますよー」
◆紅魔館、図書室横にて◆
「ということで、減っていた常備薬の補充は完了で」
「はい、いつもどうもです。あ、あとこれ御代です」
「はいどうも。あと、これはあの子に。喉によく効く薬と、のど飴ね」
「あら、ありがとうございます。パチュリー様も喜ばれると思います」
「はは、喜んでもらえたなら重畳。小悪魔ちゃんも、風邪には気をつけてね」
「お気遣いありがとうございます、○○さん」
「あれ、でも風邪引いて貰ったほうが商売的にはありがたいのかな?……うーん」
「あはははは……」
◆同時刻、ゲート前◆
「今日も押し通らせて貰うぜー!」
「むっ、今日こそは通しませんよ!」
「借りたい本があるからな、譲らないぜ?」
「こちらも明日の御飯の為、負けてあげられません!」
「いざ」
「尋常に」
「「勝負!」」
◆十数分後、ゲート前◆
「それじゃあ失礼しますよー……と。おやまあ」
「……きゅう」
「実に古典的なやられ声で。……無視出来る程の怪我じゃあ無さそうですね」
「――」
「意識の無い女性の身体に触るのは抵抗がありますが……この際仕方ありません。目を瞑りましょう。
さて、消毒薬はどの袋にいれてありましたか――」
◆さらに十数分後◆
「……う……ん」
「おや、お目覚めですか」
「あ、れ……○○さん?――!」
「どうか動かないで下さいませ。湿布がズレ落ちてしまいます」
「えっ、えええっ!?」
「帰り際にこっぴどくやられた貴女様を見かけたので、処置を行っただけです。
膝枕は……他に枕になりそうな薬袋がありませんでしたので。
お嫌なら退きますが如何いたしましょう?」
「そ……それじゃあ、このまま、で」
「はい♪」
◆さらに数分後◆
「あの、○○さん」
「はい、何でございましょう」
「その、疲れませんか?」
「この姿勢が、という事ならばご心配なく」
「あう……はい、わかりました」
「それに、可愛らしい貴女の一面が見れましたので。役得感をかみ締めております」
「可愛っ――!?」
「ああ、だから動かないでくださいと」
「▲○◆※~!(だっ、抱き締められっ)」
「ああもう…………ふぅ、少しは落ち着きましたか?」
「――――」
「あれ、美鈴さん?美鈴さーん?」
美鈴と旅行(新ろだ734)
「――行きましょう!」
「嫌や」
そう言って○○さんは私に背を向けて再び横になった。
「なんでですかー。行きましょうよ外界旅行」
寝ている○○さんにのしかかるようにして第二回外界旅行の案内の用紙を見せる。お嬢様も自分の
恋人と出かけるし、咲夜さんも同じく。紅魔館の人達全員がこの外界旅行に行くのだ。私も負けてら
れないとこうして○○さんを誘いに来たって言うのに。
むぅ。
「面倒くさい。この前の糖度異変の時は家に引きこもってて事なきを得たんやから、今回も俺はゆっ
くりするねん」
「一緒に異変に巻き込まれてくれても良かったのに」
「冗談はよしこさん、砂糖生産工場になる気はさらさらないわ。聞いたとこによると、外でもいちゃ
いちゃしてる奴が多かったって聞いたし、出んで正解やね」
むー。皆が幸せそうな中、私だけ○○さんとあんまりいちゃつけなかったから寂しかったのに。ち
ょっとむっと来たので○○さんにさらに体重をかけてのしかかる。
「重い」
「ひどいっ!?」
「女があんまりそんな風に圧し掛かるもんやない。……恥ずかしいやろが」
小さくぼそっと呟いてるけど、ちゃーんと私には聞こえてるんですから。○○さんってばほんと可
愛いんだからー。きっとにやにやしてる私の顔を見て、○○さんが苦虫を噛み潰したような表情に。
「何笑ってるねん」
「いえ、○○さん可愛いなーって」
「またそれか。男が可愛い言われても嬉しないねん」
拗ねちゃった。っと、いちゃいちゃするのは大好きだけど今日の目的は○○さんと一緒に外界旅行
へ行くことだった。ちゃんと説得しないと。
「ねぇ行きましょうよぉ」
「嫌や。さっきも言ったやん、面倒くさいって」
「そこをなんとかー。咲夜さんもお嬢様達も行っちゃうんで、私一人なんですよ。○○さんと一緒に
遊びたいんですよー」
一人だけ紅魔館に留守番は嫌だし。○○さんと一緒に外の世界で遊んだり、いちゃいちゃしたり、
いちゃいちゃしたり、いちゃいちゃしたりしたいんですと告白する。
「おま、そこまで俺に羞恥プレイさせたいんか!?」
「前も言ったじゃないですか。そのうちそれが快感に」
「なってたまるかぁぁぁ!」
暴れる○○さんを押さえ込み、抵抗できないように両手を掴む。男の人でも、私は妖怪で力にはか
なり自信がある。なんとか振りほどこうと抵抗する○○さんだけど、そう簡単にははずせませんよー。
「……ダメ、ですか?」
「む……ぅ」
○○さんの目をじっと見つめる。これで拒否されたら、私は泣くかもしれない。○○さんと一緒に
外界旅行して、一緒に楽しみたい。
普段は紅魔館の門番があって、○○さんとはあまり会えないし……。この機会に出来ることは全部
やりたい。
「……わぁった、わかりました! 付き合うたらええんやろ!」
「やった、だから○○さん大好きです!」
「だぁっ、抱きつくなぁ!」
嬉しさのあまりそのまま○○さんに抱きつく。といっても、押さえつけてた腕を離してそのままく
っついただけ。真っ赤になってもがく○○さんのほっぺに何度もちゅうする。
そのうちに諦めたようにぐったりとなった○○さんを、もう一度抱きしめて頬と頬をくっつける。
「……どなしてん、美鈴」
「いえ、嬉しくて。やっぱり○○さん、優しいから好きです」
「そうかい。物好きやな」
そういう○○さんだけど、赤くなった顔を私から背けて言っても格好つかないと思うな。ふふ、や
っぱり○○さん可愛い。
「じゃあ、準備しないといけませんねっ」
「はいはい。あんまり旅行とかせーへんから、ようわからんわ」
「手伝いますから大丈夫ですよ」
「頼むで? 出不精やからほんまに苦手やねん」
○○さんには私がついてないとダメですねー。でも、個人的には嬉しいかな。さて、用意を手伝わ
ないと。ふふふ、行き先も決めてあるから楽しみ。
きっと○○さんも、この外界旅行を機にいんどあ派からあうとどあ派になってくれると思う。よー
し、頑張るぞー。
「……なんや、急に嫌な予感が」
--------チラシの裏-----------
相変わらず美鈴が可愛すぎて生きるのが辛い。
ゆかりん、俺を幻想郷へ連れて行ってくれ……。
もしくは、美鈴の義理の息子にして育てられたいとです。
外界旅行を書くのは初めてだけど、頑張って終わらせたい。
あぁ、美鈴に癒されたい。
--------チラシの裏ここまで-----------
美鈴と旅行2(新ろだ757)
「…………一つ、聞いてもええか?」
美鈴に外界旅行に誘われたのはまだええ。面倒くさいんは本音やけど、コイツと一緒にいるのは……
吝かやないし。まぁ、仕方なく付き合ってるだけや。
そこ、誰や今ツンデレかとか思うた奴。正直に出てきたらスペカ一枚で勘弁したる。使えへんけど。
「はい、なんですか?」
俺の横でいつもの中華服に身を包み、にこやかに微笑む阿呆一人。背中にはやけにでかいリュックサ
ック。旅行用とかではなく、主に登山とかで見かけるような奴。何かがおかしいな、この時点で。
「ここは……どこや?」
そして俺も美鈴に仕立てられて、何やら物々しい装備や。こっちの荷物にはサバイバルナイフに組み
立て式テント(香霖堂に売ってたのを買うた)、何日か分の食料などなど。服装も動きやすく、かつ丈
夫そうなものを着とる。
そして、今俺らがいる場所が一番の問題や。
「どこって……無人島ですよ?」
「なんでやねんっ!?」
外界旅行っちゅーからにはもっとこう、東京とか、俺の故郷の大阪とか、蟹食べに北海道とかあるや
ろうに!
それが、なんで、無人島に、来とんねん! 大事なことなので分割して心の中で言いました!
「いやぁ、○○さんってあまり外に出ないじゃないですか、お仕事の時以外」
「そうやね。面倒くさいからね」
買い物の時とか、美鈴と……デートする時以外は基本家で寝とる。外に出るのが億劫やし、仕事の疲
れを癒す意味でも変に体力消耗させたないしね。近所付き合いはええ方やと思うから安心や。
「ですから、無人島でサバイバルでもしようかと」
「ちょい待ってくれ。一体どんな風な思考で俺がインドア派やから、無人島でサバイバルっちゅー結論
に飛んだんや?」
お兄さんにはまったくもって理解できへんよ? この子、本当に阿呆とちゃうんか。なんで俺、この
子と付き合うてるん?
「だって、あうとどあになるにはサバイバルをした方が手っ取り早くて」
「飛躍しすぎや!?」
ほんまに阿呆の子かコイツは。ええい、なんでこないなとこでサバイバルせなあかんねん。幻想郷で
もある意味サバイバルやっちゅうのに。たまーに出会うてしまうるみゃっことの生存競争がいい例やわ。
一応、念の為に食料とか身につけていくからそれで事なきを得るけども。怖いもんは怖い。
「まぁ、スキマ妖怪も帰っちゃいましたし諦めて私とサバイバルしましょう」
「くそぅ……いらん時にはいるくせに、こう必要な時にどうしておらんねんあの妖怪。後で穴の中に思
いつく限りの悪口を言ったる」
美鈴に引っ張られながら、哀れにもサバイバル突入を果たす俺。いや、でもほんまにこんなんやった
ことないから何をすりゃいいのかすらわからんよ。一般的な都会人にサバイバル知識を求める方が間違
っとるんや。
そないなことせんでも、働いとりゃ飯は食えるし。幻想郷でもそれは同じや。自給自足とかそういう
感じにはなるけど。ん、そう考えるとあれもサバイバルか……?
「大丈夫です。○○さんは私が守りますから」
「なら最初っからこないなとこ連れてこんといてくれ。行くなら普通、もうちょい都会とか俺の故郷と
か選ぶやろ」
それが何故、無人島でレッツサバイバルタイム。俺がインドア派なのは元々やねんから、そこは許容
してほしいで。元々アクティブな人間でもないんやさかい。
俺を引っ張っていた美鈴が突然立ち止まる。なんや?
「その、笑いません?」
「内容によるな。俺の判断基準は結構厳しめやで?」
「そこは笑わないって約束してほしかったです……まぁ、いいですけど。それで、なんで私が外の世界
に来たのにこんな無人島を選んだのか、ですよね」
サバイバル訓練させて俺をインドア派からアウトドア派にジョブチェンジさせる為やろ。
いや、それはそうなんですが。
「本当は、○○さんの故郷に行ったり、ご両親に挨拶して○○さんを婿にください、とか言ったりした
かったんですけど」
それは普通、男の俺の役目やないんかね。いや、でも後半は聞き捨てならん。そんなことうちの親に
言われたりしたら恥ずかしくて悶える。故郷に行かんで良かったと神さんに感謝や。祈る神さんは守矢
さんとこの二人と、厄神さん。
まぁ、あの人(神さんやけど)らも今頃外の世界でヒャッハーしとるやろうな。あ、いや、神無月や
から出雲辺りに出張中かね? 幻想郷の神さんも呼ばれるんやろうか。
「もし、○○さんが自分の故郷に来て、幻想郷に帰るのをやめたりしたらって思ったら……そんな事を
考えてしまって。ほ、ほら、やっぱり慣れ親しんだところって離れにくいじゃないですか?」
……ほんまに、阿呆やわ。ため息をついて、美鈴に掴まれとった襟を開放してもらう。寂しそうにあ、
とか呟くんやない。どこにも逃げへんわ。
「おい阿呆」
「阿呆阿呆言わないで下さいよぅ」
「阿呆やから阿呆やねん。よー聞いとけよ阿呆、一回しか言わんから」
あー、なんで俺がこんな恥ずいこと言わなあかんねん……俺のキャラやないっちゅーのに。つか、俺
今回だけで何回阿呆言うたんやろうか。
「俺が故郷に残る? そんなら、もっと早い段階にお山の上の賽銭巫女んとこへ行って帰してもらっと
るわ。こっちにゃ親も友人もゲームにパソコンもある。そんだけの誘惑があんのに、なんで俺が幻想郷
なんつーとこに残ってると思うてんねん」
ええいくそ、やっぱ言わなあかんか。顔赤くなってへんやろな。
「おっ……お、お前がおるからやろうがそうやなかったらあんな辺鄙な場所に残るかい」
「…………」
「おい、聞いとんの――――か!?」
突然押し倒される。下が砂とかばっかやったからあまり痛くなかったのが幸いや、とかそんな事を思
ってる場合やない。いきなり何すんねんコイツ。
「嬉しいです……○○さん、あんまり私のことを好きだって言ってくれないから不安で」
「どこまで阿呆やねん。す、好きでもない奴とずっと一緒におられるかい」
「だから嬉しいんですっ。んーっ、でも赤くなりながら言ってくれる○○さんすごい可愛い!」
「うが、だー! は、離せええ! なんやものすごい恥ずかしくなってきたー!」
だから言いたくなかったんや。なんやねんこの羞恥プレイは。俺を押し倒したまま美鈴は犬かなんか
のようにじゃれついてくる。あかん、この展開はあかん。
ちょ、誰か紅魔館の良心たるぱっちぇさん呼んでくれー!
「……うー」
「何うなっとる」
「我慢できなくなってきました」
「盛っとんのか!?」
やっぱこの展開か! ちょ、待て、確かに今ここには俺とお前しかおらんけど、流石にこんな解放的
な場所でとか俺は嫌、っと服脱がそうとすんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「○○さん、大好きです!」
「わかったから手を離せぇ!」
~チラシの裏~
何も外界旅行に行けば都会とか帰郷しに行くわけじゃないんだぜ!
美鈴はこれぐらいが可愛いと思うんだ。もう可愛すぎて生きるのがry
続き? あると思うの? 多分、あるんじゃないかな?
~チラシの裏~
最終更新:2010年07月30日 01:03