大妖精6



Megalith 2011/01/27


「あぁ……あつい……」
「大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃないかも……」

さて、今の状況を説明しておこう。
今俺は腰に手ぬぐいを巻いている湯上りの様な恰好で、大妖精に膝枕されながら団扇で仰がれている。
何故そのような状況になってしまったかと言えば、ただ単に俺が風呂でのぼせたからである。
元々熱い湯に長い間浸かるのが好きな俺だったが、今回ばかりは長く浸かり過ぎたらしい。
気持ち悪さを覚えた時にはもう遅く、その後すぐに吐き気とめまいが襲ってきた。
ぶっ倒れそうになりながらもなんとか脱衣所までたどり着いたが、そこまでだった。
ほとんど気絶している様な状態だったが、それを大妖精が発見して今に至る、と。

「ホントゴメン……手間掛けさせて……」
「ううん、そんな事無いよ」

大妖精はやさしい声で答えた。
顔の部分に濡らしたタオルが掛けられている為見えないが、きっと大妖精は笑顔を浮かべているのだろう。
それを思うと、俺の心は申し訳なさと情けなさで一杯になる。
考えてみれば俺は大妖精に迷惑ばっかり掛けてる気がする。
前にも宴会で調子に乗って飲み過ぎて泥酔状態になった時にもこうやって介抱して貰った気がする。
本当、俺には過ぎたいい娘だよなぁ……。
という事をその酔っぱらった時に言ってみたら、

「そんな事言わないでください!!そんな事いう○○さんは嫌いです!!」

と怒られてしまった。
しかも若干涙目になりながら。
そんな事もあったので自分を卑下するのもこの辺にしておく事にする。

「どう、まだ気分悪い?」
「いや、だいぶ楽になったよ」

大妖精の介抱もあってか体調はかなり良くなった。
まだ多少熱っぽさと頭痛はあるが、大丈夫だろう。
これ以上ずっと膝枕をしてもらっているのも悪いと思って体を起こそうとしたが、

「駄目、まだ安静にしてて」

と、制止されてしまった。
仕方が無いので体の力を再び抜き、大妖精に任せる。
その時、突然頬に何か冷たいものが触れた。
いきなりの事に驚くが、少し経つとその感触からそれが何なのか分かった。
おそらく、大妖精の手のひらだろう。
彼女のそれは火照った体にはとても冷たく、とても心地よく感じるものだった。

「ほら、まだこんなに熱いじゃない。まだ安静にしてないと……」

俺は無意識の内に大妖精の手の上に自分の手を重ねていた。

「気持ちいい……」

そのひんやりとした心地良さから、思わず声が漏れる。
その冷たさは乾ききった砂漠に水が吸われるように浸透していく。
もっとその冷たさが欲しくて、抑える手の力を強める。

「ふふっ……」

ふと、大妖精の笑い声が聞こえた。

「んあ、ご、ごめん……」
「ううん、いいよ。ちょっと嬉しかっただけだから」
「嬉しい?」
「うん、○○さんに甘えられてると思ったら嬉しくて。あと、可愛かったし」

それはそれで情けない理由に感じられる。
正直、男として可愛いと言われて素直に喜べない。

「○○さんはいつもしっかりしてて、弱い所を見せないで、何でも出来て。私の事、必要無いのかなぁって思えちゃう時があるんだ」
「……」
「でも、前の酔っぱらった時とか今みたいに私を頼ったり甘えてくれたりすると安心するんだ。ああ、○○さんは私の事信用してくれてるんだなって」

大妖精の告白を聞いて俺は激しい自責の念に駆られた。
俺は知らず々の内に彼女をここまで思い詰めさせていたのだ。
俺は顔に掛けられているタオルを手で払った。
目に映るのは大妖精の笑顔。
その笑顔の目には、涙が少し浮かんでいる様な気がした。

「ゴメン……大ちゃんの事も考えないで……」
「うん……うん……」

そして彼女は笑った。
とびっきりの笑顔で。
涙を流して彼女は笑った。



Megalith 2011/12/16

僕は今友人とメールをしている。

「大ちゃんに慰めてもらいます、っと」

そうひとりごちながら文字を入力した。
無論本当に大ちゃん-僕の伴侶である大妖精にそんなことをしてもらうつもりはない。
第一男が女の子が慰めてもらうなんて子供っぽいし女々しくて情けないしね。
むしろ僕が慰める側になりたいなー、なんて。
まぁうだうだ言ってみても状況は変わらないだろう。 
あーもうなんか全部が面倒くさい。

「大ちゃんかわいいよ大ちゃん」

つぶやきながら送信する。
そのとたん、自室の入り口の方ですごい音がした。
見ると、彼女本人、大妖精がそこにいた。

「」
「えと…ごめんなさいっ!」

どうやら彼女は先ほど時計を落としてしまったことを気にしているようだ、ハハッ可愛すぎワロス。
…思考回路が正常に機能しない。
状況を整理しよう。
やべえきかれた。
\(^o^)/

「えっと…大ちゃん」
「は、はい!」

まともに顔が見れない。

「その…いつから聞いてたの…?」
「な、慰めてもらいますのところから…」
「」

死んでくる。
ほぼ全部じゃねーか!
恥ずかしいってレベルじゃねーぞ!


「!?なんで窓に足をかけてるんですか!?」
「しぬんだよ?」
「いやそんな当然でしょ?みたいな顔しないでやめてください!」

いったい彼女はなにを言っているのだろうか?
!ああわかった!

「この高さじゃ死ねないや!」
「そうじゃありませんって…カッターナイフを手首に当てないで!?とりあえず死ぬことから離れてください!」

死ぬな…生きたまま苦しめと言うことか…。
相当怒らせちゃったなー。
ちらりと大ちゃんの顔を伺う。
…やべえ顔真っ赤だ絶対ブチギレてるよどうしよう助けてえーりん!

「…あなた」
「ふぁい!」

我ながら間抜けな返事をしてしまったと思う。
まるで酸素を止めることを命令されたロボットのような返事をした僕のことをきっと養豚場の豚を見るような目で見ているだろう彼女の次の言葉をうつむいて待つ。

「そこに正座してください」

ktkr!制裁時間(ヴァイオレンスタイム)キタコレ!!
何されるんだろうかなぁ!?
ビンタからのクナイ弾ってのが一番想像しやすいなぁ
そんな期待(?)に胸を膨らませる僕に、

「め、目を閉じてください」
「」

\(^o^)/
彼女が近づいてくるのが気配で分かる。
続いて飛んでくるであろう頬を打つ衝撃に備えて顔をこわばらせる僕だったが、
肝心の衝撃がいつまでたってもこない。
その代わりにきたのは、ふに、という顔が何か柔らかいもので包まれる心地よい
感覚だった。

「!?」
「ひゃうん!」

驚いて思わず顔をよじると、大ちゃんが変な声をあげた。
今度はその声に驚き、目を開けると、そこには顔を真っ赤にして自分のたわわな胸に僕の顔を抱き抱えるようにして押しつけている大ちゃんがいた。
そうかここが天国か。

「えっと…その…慰めてほしいって言ってたので…その…///迷惑でしたか…?」

その潤んだ目は反則です大ちゃん。
色々と吹き飛びそうになる理性を必死に押さえて、口を開いた。

「だだだだだだ大ちゃん」 
「は、はいぃっ!」
「子供は何人ほしいっ?」
「」

やべえ間違えた。
バイツァ・ダストとか使えねえかな…

「二人…です…」
「へ?」

一瞬何か聞こえた気がしたが気のせいだろう。

「…ありがとう」
「はい!」

気を取り直して先ほど伝えたかった言葉を言う。
鼻孔をくすぐる甘い香りを惜しみつつもゆっくりと彼女から離れる。
大ちゃんも疲れるだろうしね。

「あの…」
「うん?」

なんだかもじもじしている。
ああもう殺人的に可愛いなぁ!

「ああもう殺人的に可愛いなぁ!」
「///」

しまったつい口に出してしまった。
ああもうどうにでもなれ!
そのまま大ちゃんを抱き寄せ、抱きしめた。

「ふぁっ!ん…」

胸の中で恥ずかしそうに大ちゃんが身をよじる。
何この可愛い生物。
どうやらちょうどいい定位置を見つけたらしく、おとなしくなった彼女の髪を撫でる。
さらさらとした手触りと、甘い香りに理性がry

「ねえ大ちゃん」
「ん…なんですか?」
「いや、さっきなんて言おうとしてたのかなって」
「それは…その…」

そう声をかけると、なぜか彼女は真っ赤になって口をつぐんでしまった。
なんだろう。
なにかまずいことでも言ってしまったのだろうか。

「…なって」

よく聞き取れなかったが、彼女が何か言ったようだ。

「うん?」
「わ…私も…その…慰めてほしいというか甘えたいなって…ああもう忘れてくださいぃ…///」

萌え死ぬかと思った。
クッションに顔をうずめる大ちゃんを優しく撫でる。

「ひゃうん…」

なでなで。

「ひゃうぅん…///」

鼻血出た。
ひとまず大ちゃんを離し、ティッシュを鼻にねじ込んだ。
この娘無自覚でやってるのか…?
可愛すぎだぜヒャッハー!

「ふぁんっ…///」

なでなでなで。
そういえば最近はいろいろ忙しくてあまり大ちゃんに構えなかったからなぁ…。
彼女も淋しかったのだろうか。

「大ちゃん」
「ん…なんですか?」
「愛してるよ」
「///わ、私もです…///」

これからもっと忙しくなって、彼女とこうして触れ合う時間も少なくなってくるかもしれない。
だから、せめて今だけは、もう少しこのぬくもりを感じていたい。
大妖精の小さな体を抱きしめながら、再度ゆっくりと彼女の髪を撫でた。

Megalith 2012/09/30



○○さんはロリコンなのか否か。
それは何時になっても絶えることなく
時には忘れそうになりながらも
ある程度深いところに残っていたその疑問。

そんなそれなりに浅い記憶を思い出したのも
友人の氷精による疑問が始まりである。
今現在自分とお付き合いしている男性
名前を○○さんというのだが

○○さんは優しくてあったかくて……
何だか気付くとこっちまで暖かい気持ちになってたり…
たまに意地悪なところもあったりもするけど
そのあとの子供みたいな顔も何だか優しい気持ちになれたり…

と、話が逸れそうになってしまった
つまりそういう人だ。
一段落して冷静になり疑問を掘り返す。

友人曰わく、やっぱり○○ってロリコンなのかな、と。
何故かというとここ幻想郷には
私たちのような妖精がたくさん居るのだが
友人や私と仲良くしている内に他の妖精にも懐かれてしまったようで
元々子供っぽい○○さんと全体的に幼い妖精とは気が合うというか

でも○○さんのそういうところも好きだったり…
でもちょっと最近は、意地悪というか私をちょっと子供扱いしたりとか
その反応を見て楽しんだりだとか多いと思う。
でもそういうところもあるけどいざとなったらちゃんと私のこと見てくれてたり
私が怪我なんかしたら心配して飛んで来てくれてなんだか嬉しくなったり…

また脱線してしまった…
話を戻そう

それ以後○○さんは来る度お菓子やおもちゃを持ってきては
その仲良し妖精勢力を広めていったのだった
その他にも私達と仲の良い闇や蟲の妖怪達ともたまに居るのを見ることや
人里の寺子屋の子供達とも仲良くしていたり、と 
友人の疑問点はそういうところから来ていたのだった。

○○さんは優しいからきっとみんなと仲良いだけだよ、とは友人に言うものの
実際のところ、どう思っているのだろう……。
というのも、本当に私の事をその……
一人の、女性として見ているのだろうかということだ。
それに例え女として見ていても私ぐらいの女の子が偶然好きなだけじゃないかとか
私はたまたま選ばれただけなんじゃないかとか
○○さんを信頼しては居るのだが、不安だった。
優しい○○さんに限って、そんなことはないとは思っている、けれど……
不安、というよりは怖いのかもしれない
○○さんがどこかに行ってしまうことよりも、忘れられてしまうことが。

……よし、会いに行こう。
こんなこと考えて、○○さんのこと悪く思いたくないから
会って、確かめに行こう
○○さんの気持ちも私の気持ちも


中途半端アンド微妙アンド甘くない


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最終更新:2013年05月11日 23:07