華扇1
新ろだ2-271
春先の夕時のことだった。
「インタビュー? いいですよ」
ありがとうございます。まずはお名前と種族を。
「○○、人間です。って、知ってるじゃないですか」
形式的にですよ。何事も形から入るものじゃないですか。
「はぁ」
えーと次は、この度発覚しました恋愛模様ですが、実際のところいつ頃からお付き合いを?
「そうですね、お互い告白し合ったのはつい先日の話なんですが、実際は一月くらい前から既に恋人みたいな感じでしたね」
ほうほう! 告白はどちらから!?
「俺からでしたね。彼女は俺の言葉をゆっくりと聞いた後、頷いてくれました」
ほうほうほう! ズバリ彼女の何処に惚れましたか!?
「どこ、ですか。まずは優しいところですね。説教臭いと言われることが多いですが、面倒見が良くて優しいんです。それにあの可愛らしさですね。あの凛々しさと儚さと美しさを兼ね備えた可愛らしさですね。あとはあとは……(以下エンドレス」
「ただいま帰りました。……おや、誰か居たんですか?」
インタビューの最中であった。俺が彼女の可愛さについて語っていたところ、渦中の人物が帰宅した。
茨木華扇、通称茨華仙と言われる仙人であり、俺の恋人だ。
「お、おかえり。……ん? あれ? さっきまで天狗がいてインタビューをしていたのに……いつの間にいなくなったんだ?」
一番重要な華扇の可愛さについて語っている時に帰ってしまうとは。せっかく華扇の可愛さを幻想郷中にしらしめるチャンスだと思ったのに。
「天狗? インタビュー?」
「ああ、文々。新聞の射命丸さんだよ。どこから情報を掴んだのか知らないが、俺と華扇が恋人同士になったって知っててな、いろいろ聞かれてた」
「たとえば?」
なぜだかやたらと食いついてくる華扇。はて、確かに客は珍しいがそんな問いつめるほどだろうか。
それとも、やはり天狗が相手だったと聞いて何かしら思うところがあるのだろうか。
「告白した時のことについて、とかだったな。まぁこの手のインタビューだと鉄板だな」
「それだけですか? 他には、何もしていませんでしたか?」
「? まぁ、特には」
「そう、ですか……」
執拗に問いかける華扇に疑問を抱きながらも、俺は質問に答える。普段はこんなにいろいろ聞いてこないが……。
何かあったのかと俺が聞こうとした時だった。突然、華扇は俺に向きなおり、そして少し寂しそうに笑うと、
「ん」
俺の背中に手を回して頬に軽いキスをしてきた。触れ合うだけの軽いキス。最近はもう習慣のようになってきている。
「私は、ですよ」
「?」
突然、華扇が不安そうに話し出した。
「自分が予想外にも醜いのだと知ってしまいました。あなたが天狗と居たのを見たときに、」
「じゃあ、見て」
「私の中に何か嫉妬心のような、寂寥感のような、焦燥感のような、よくわからない感情が現れたのです。それは次第に形を変えて、やがて独占欲のようになりました。それは私の目にあなたと天狗をたいそう仲良く映しました。だから、あなたを試すようなことをした。あなたから、あの映像が私にはそう見えただけだという証拠を聞き出そうとした。私の心が安心出来るまで」
ぎゅっと華扇が抱きしめてくる。
「私だけを見てほしい。私だけのあなたで居てほしい」
「そう思う私は嫌いですか……?」
懇願するかのように俺を見つめる潤んだ目、赤く染まった頬。「反則」という言葉が俺が最初に思い浮かべだ言葉だった。
これでは仮に嫌ったとしてもそうは言えないだろう。聞く必要なんてないのに。分かっているはずなのに。心配で心配で仕方ないのだろう、自分の奥底にある欲望をかいま見てしまって。
答えはもう、決まっている。
「いいや」
俺は愛しい恋人に返答する。彼女を安心させるために。彼女への愛を再確認するために。
「いっそう好きになった」
優しく彼女の頬に口づけする。
「あ……」
「華扇から愛されてるってすごく実感出来たよ。思っていたよりも俺は愛されていたんだってね」
華扇のあの行動は華扇が俺を愛しているからに他ならない。そう思うと目の前のこの少女がとても可愛らしく思えてくる。
普段の華扇を見ていると確かに独占欲が強そうには見えなかったが、それは俺の思い違いだったみたいだ。
「むぅ! その言い方じゃあ愛が足りてないみたいじゃないですか」
ぷぅ、と頬を膨らませる華扇。
「いやいや愛は十分だよ。オーバーすぎるくらいだ。だから余計に驚いたのさ」
「……?」
華扇が首を傾げる。
「華扇の新しい顔を発見出来たからな」
「……ふぇ?」
「すごく可愛かった。俺に嫌いかって聞いた華扇。そりゃあもう惚れ直すくらい」
俺は華扇を優しく抱き寄せ、その唇に俺の唇を重ねた。
「んっ!? んんっ!」
突然のディープキスに驚いた華扇は目を丸くし体を強ばらせた。しばらく華扇の唇をむさぼる。やがて俺が華扇の唇を割って舌を入れると華扇の強ばっていた体は次第に力を失い、やがて体を俺に預けてきた。しばしお互いに舌を絡める。
「ん……ふぅっ……んんっ……はぁっ、きゅ、急にするから息が」
「っは……ごめん、あまりにも可愛かったから」
言って俺は華扇を抱き上げベッドへと運ぶ。立ったままだとやはり辛いだろうから。
ゆっくりと華扇をベッドに横たえ、覆いかぶさるように俺もベッドに横たわる。そして再び唇に吸い寄せられるように向かった。
「んちゅ……んん……ちゅ……」
唇と唇が絡み合い、どれくらい経ったろうか、不意に華扇が唇を離し、ベッドに入ったときとは逆に今度は華扇が覆いかぶさるような体勢になった。
「嬉しい……○○が私のことを嫌わないでいてくれて」
「安心したか、なら良かったよ。……しっかしそれくらいで不安になるなんて、華扇は可愛いなぁ」
「け、結構真剣に悩んでいたんですよ? もし嫌われたらこの先寂しくなるなぁとか、○○がいない夜はどうすればいいんだろうとか」
「夜?」
「あっ」
「あー、あぁ……」
「き、聞かなかったことにしてください! 空耳です!」
顔を真っ赤にしてわたわたと手を振る華扇。
まさか華扇がそこを心配していたとは……。けど「うぅ……誤解なんです誤解なんです……」と恥ずかしそうに言う華扇を見ていると、まぁそんな華扇もありかなと思えてくる。
「まぁ安心しろ、俺の愛は恋人の独占欲が強かったり性欲が強いくらいでなくなるようなもんじゃないから」
「も、もう」
少しからかってやると華扇が頬を赤く染めて恥じらう。可愛いな……よし、もっとからかってやろう。
「華扇は可愛いからね、昼も夜も大歓迎だよ。華扇的には夜のほうの希望が多めかな?」
「い、いい加減その話を引っ張るのは止めてください! そういうイジワルするなら、こっちにも手がありますよ!」
「な、何だ?」
いかん、少し調子に乗りすぎたか。何をされるのだろうと思い、思わずたじろぐ。
すると、華扇は俺の頬に手を添え、
「仙人の修行の一つで、房中術って知ってます?」
艶っぽい笑みを浮かべた。
翌朝、部屋がよく見える窓の辺りに大量の砂糖があったのは、また別の話。
あ と が き
つい、可愛かったので久々にSSなんぞを……それも設定の大部分がまだ出ていない華扇を書いてしまいました。後々判明する設定と矛盾があったらすみません。
あと馬鹿なんで房中(ry。に関しては適当な知識しか持ってません。間違ってたら笑ってやってください。
追 記
同時進行で絵も書いたけどスキャナもケータイもデジカメも持っていないでござる。
Megalith 2017/01/02
○○「あーやっぱりきたか」
魔理沙「なあ〇〇お年玉~」
チルノ「ちょおだ~い」
ミスティア「準備~してるんでしょ~?」
こちら博麗神社宴会所
去年お世話になった方々に挨拶して回っている所、既に出来上がってしまったお姫様達がお年玉をせがんでくる。
小柄な彼女たちが首やら腕やらにぶら下がりながらセミのように同じことをぼやき続ける。
数少ない男にはせがんでもいいという雰囲気があるようで、若いっていいよなあなどと思いながらため息をついた。
リグル「あけまして~おめでとうございます~」
ルーミア「〇〇~お年玉~」
増えた。なんだかコートハンガーになった気分だ。よくわかってなさそうだがノリで捕まってくる奴らもいる。
ああ俺だって昔は貰う方だったのにな などと返事をしながら次は古明地家だなーとお姫様ズをずるずる引きずっていく。
ハタから見れば砂鉄を集める磁石のようだ。
文「ああいいわねえ○○わたしも~」
はたて「子供が好きって記事にしてあげるから~」
椛「これ私たちも掴まっていいのかなあ」
勢いで変な新聞作るな、少しは遠慮しろ、等色々ツッコみたいところはあるが 微妙に好感度が上がりそうな話でいいかもしれない。
変に打算的な事を考えながらさとりさん達に挨拶。あけましておめでとうございます以下略
さとり「あれ、なんですかこれ」
こいし「これに捕まればいいことあるんだって~」
お空「なんか聞いたことあるよ、人間のふうしゅうってやつで、えーっと」
お燐「お年玉だろう?」
ヤマメ「
キスメ~お年玉だって~」
コジラのしっぽのようになった列を引きずりながら次を探す。彼女たちは力自体はすごいがそれに比例せず体重が軽く、全く人間の常識が当てはまらない。
これだけの列になっても以外に動けるものだ。かなり重たいが幻想郷に着て様々な仕事をこなした俺ならまだなんとか動けるレベルであった。
霊夢「あらあ~?楽しそうな事してるじゃない~」
ぬえ「ねえ〇〇、お年玉くれるってほんとお?」
天子「アンタ都合に良い時ばっかり子供になるのやめなさいよ」
リリカ「あけおめ~ダ~イブ~!」
前言撤回。組み付くところが無くなったからと言って頭上から潰された。動けん。アホかお前ら
○○「あーいてて、落ち着けちょっと。これで全員か?」
降参のポーズを取りながらひっつき虫のような絡みの多くを外す。あれちょっと服伸びてない?余所行き用なんだけど
○○「ほれ、皆で話し合って分けろ」
そう言って懐からお財布そのままを
大妖精に渡す。しっかりした子だし俺はきついし彼女に任せるのが一番だろう。酔っ払いどもより全然良い。
○○「いいかー大ちゃんをリーダーにしてちゃんと話し合うんだぞー!」
はーいと返事が返ってくる。ああ、これでよかったのだなあと寂しくなってしまった懐を撫でつつ心の中で涙を流した。
そんな輪の中から這って出てくると周りの人の影の中に今回一番会いたかった人の顔を見出す。やっと会えた。
華扇「明けましておめでとう。大人は大変ね」
○○「あけおめ。んーまあ予想はついてたけどなあ」
現に財布には結構多めの額は入れていたが、割りやすいように高い価値の紙幣は一枚も入れないようにしてある。
ふらつきながらへたりと彼女の隣に座り一息をついた。
「じゃあ~人いるから~分にして、えーと合計いくらあるのかな」
「おおいっぱいある~!」
円になって相談を初める彼女達を眺め、俺も本当に大人になったものだなとしみじみと考えていた。
○○「ん」
華扇「えっ」
華扇に封をしたポチ袋を渡す。かなり驚いた様子でこちらを見る彼女と目が合った。
○○「気持ち程度しか入れてないさ、貰ってくれ。」
華扇「こ、子供扱いしないでください!第一に私は仙人で・・・」
○○「気にするな、お前はただ愚かな人間の自己満足に付き合ってくれたらいいんだよ」
そんな適当な言葉を投げ続けると黙って受け取ってくれた。全くとか正月じゃなければ説教ですよ説教とか不穏なワードが聞こえるが、
赤くなった顔で実際にそう言葉をぶつけられても余り怖くもないだろう。
妖怪や妖精などはずっと若いままの姿を保っていられるからいいものだ。華扇へのお年玉には普段の修練にねぎらいの気持ちを込めたもので
まあいうなればたしかに子ども扱いなのかもしれない。腕を広げて来いっ!とポーズをとってみた。
○○「よし、次は甘えてこいお嬢様」
華扇「・・・その馬鹿は死んでも直らないわね」
そんな話をしていると会場の向こうでは上手い事相談がまとまったようで、それを受け二人で顔を合わせて笑う。
円満に話がまとまるとは珍しい。
しかしここには久しぶりに来たと思う。師走とはよく言ったもので12月の忙しさと言ったら凄まじいものだ。雪は降る人は来る収支は回りに回り
夜になると毎日泥のように眠っていたと思う。だからこそ元旦の素晴らしさを実感できるのかもしれない。
そう思いながら広げた腕を下げようとしたところだった。
華扇「・・・もっと会いに来てくださいよ」
少し俯きがちにそんなことを言って、ぽすっと体を預けてくる。虚を突いた嬉しい一撃を支えつつ、ああしまったなあという思いを胸の中で温める。
全然会いに行けていなかった。周りの人によるとたまに家に尋ねに来てもいたらしい。作った時間は休憩などに充てていて、全く構ってやれていなかった。
素直な思いを伝えられるのは何時振りか。謝罪の気持ちを込めて柔らかい髪に指を通した。
○○「すまん」
華扇「いつでも待ってますから」
○○「ああ」
華扇「忙しいなら呼んでくれてもかまいません。私は喜んで貴方の元へかけつけます」
○○「・・・心配かけた」
華扇「・・・ずっと一緒に居たいです」
○○「ああ・・・俺もだよ」
彼女から体温が流れてきて、それが温かい気持ちを芽生えさせてくれる。
(なんだか今年は良い一年になりそうだなあ。)
ざわめく宴会場の中、寄りそう二人は全く同じことを考えていた。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします
35スレ目 >>375
○○「華扇ちゃんかわいい!!かわいい!!」
華扇「や、やめてください!」
○○「(´・ω・`)」
華扇「ホント困りますよ~ず~っと言ってくるんですから~」ニヤニヤ
青娥「でも、悪い気はしないでしょ?」
華扇「…………ま、まぁ…かわいいと言われて嬉しくないという女性がいたら見てみたいものですけど…」
芳香「素直じゃないナー」
雷獣「らーい」
○○「ンッハァー↑↑↑↑↑クワァウィーッ!!」
雷獣「じゅぅ?」
○○「かわいいなっ!!雷獣かわいいなっ!!おてて触らせて!!」
雷獣「らいらーい」
○○「。゜(゜´Д`゜)゜。かわいいよぉーうわぁぁぁぁぁん!!」
華扇「」
華扇「トントン」
○○「はい?」
華扇「クイクイ」←自分を指さしてる
○○「どうしたん?」
華扇「…」
雷獣「らいらーい」
○○「かわいいぃー!!」
華扇「」
華扇(ついこの前まで私のことかわいいかわいいって言ってくれた癖に…!!)パルパル
雷獣に嫉妬する華扇ちゃん
避難所>>937
華扇「恋人繋ぎ、というものを」
○○「はい」
華扇「してみたいと思うんです。私なりのやり方で」
華扇「きつくないですか?」
○○「大丈夫です。怪我とかテーピングとかしたことないから新鮮な感覚ですけど」
華扇「勢いに任せてやってしまいましたが、これは恋人繋ぎと言っていいのでしょうか……」
○○「手首から先は普通の恋人繋ぎになってるし、大丈夫ですよ。
……何より、すごく幸せです」
華扇「――もう少し、このまま歩いても?」
○○「ええ、喜んで」
最終更新:2024年08月25日 23:06