早苗11



Megalith 2011/02/06



 俺は○○。幻想郷に迷い込んで数年になる。
 特別な能力はないけど外の世界で服飾専門学校を卒業して留学したりしてから
 小さなアパレルメーカーで働いていたから服はちょっと作れる。
 それ以外は空も飛べなきゃ弾幕も張れない。もちろんスペルカードも持っていない一般人だ。
 それが何の因果か人里で洋服屋(外界の服と言うべきなのかもしれない)を営んでいる。
 客はあまりこないので、呉服屋などの縫い物などを手伝って食いつないでいる。

 今日は着る人のいない新作を仕上げて、気分転換に外に出たところで
 里に買い物にきた早苗さんを会ったので、試着のお願いをして来てもらった。

 ★今日の早苗さんのコーディネート★
 メルトン地のネイビーのショート丈Pコート(襟にはファーがついている)
 チェックのシャツ、Uネックのカットソー
 ベージュのジョッパーズ、ブラウンのショートブーツ。
 パンツの裾はブーツイン。髪はポニーテールにまとめた。

「○○さん、どうですか? 」
 ぽてぽてとその場で回ってもらう。
 うむ、髪がさらさらで美しい。ポニテは至高。
 裾をAラインに広げたデザインがPコートの堅い印象を打ち消して、
 ポンチョのような可愛らしさを醸し出している。
 乗馬ズボンのディティールを入れたパンツと合わせてスポーティなイメージの格好だ。
 ボタンをかっちりしめたPコートの袖から見えるチェックがネイビーと対比してなかなか。
 バランスはまあまあよい。しかし……。
「うむむ……イマイチ。早苗さん着替えて! 」
 俺は眉間に皺を寄せて叫んで、着替えの指示を出し、部屋を出る。
 背中で、結構かわいいと思ったのに、と残念そうな声が聞こえるが無視する。
 仕事部屋を出てため息一つ。新作の何が悪かったのか考える。
「グリーンの髪にあうコーデ。うぬぬ、こちらに来る前にみた初音なんとかみたいのがいいのか。
 というよりも、幻想郷の人間があんなカジュアルな服装をしているイメージがわかない 」
 狭い部屋をウロウロしながらブツブツ言っているとドアが開いて早苗さんが出てきた。
「あぁ早苗さんありがとう、お疲れ様」
 ねぎらいの声をかけるも、早苗さんの表情はちょっと暗め。
「あのう、私どこかダメでしたでしょうか? 」
 不安そうに言うので、さっきまでの思考を打ち消してベタ褒めする。
「そんなことないよ! 早苗さん! 似合ってたよ! かわいかったよ! いつもの巫女服と違って
 アクティヴな感じがしてたし、なんていうか一緒にピクニック行ったら楽しそうだなとか
 一緒にスポーツしたら楽しそうだなとか色々思っちゃったよ。
 早苗さんスタイルいいからどんな服でも似合っちゃうよね」
 機嫌を損ねたら弾幕をくらうだけじゃ済まない。
 幻想郷で普通の現代人モデルは貴重だ。それを失うわけにはいかない。
「そうですか? えへへ、そんなに褒められるとテレちゃいます」
 そんなこちらの事情を知ってか知らずか、泣いた子供(?)がもう笑った。よし、機嫌はOK。
 早苗さんはOKでも俺はOKじゃないわけで、頭はコーディネートを考え続ける。
 無言というわけにはいかないので適当に話でもあわせようと声をかける。

「さな「あの……」うん? 」
「○○さん、部屋にあったワンピースなんですけど……」
「ワンピース? はて? 」
 そんなものあったかなと仕事部屋に入る。
「あのマネキンが着ているやつです」
 早苗さんが指さした先にはトルソーが白いシャツワンピースを着ていた。
「ああ、これか。これはまだ完成してないんだ」
 縫い終わっていないわけではない。シャツをそのまま大きくしたようなシンプルなものだ。
 胸元近くまで開いた襟ぐりと、襟がついたオフホワイトのワンピース。
 形としては何もおかしなところはない。でも、何か足りない気がしてほったらかしにしたままだった。
「着てみちゃダメですか? 」
 何か妙に気合が入っている。女の子アンテナにひっかかるものがあったんだろう。
「いいよ。今脱がすからちょっと待ってて」
 トルソーの着ていたワンピースを脱がして早苗さんに渡す。
「じゃ、外にいるから着替えたら声かけてね」
「はい」
 白いワンピースっていったら麦藁帽子がセットで夏の避暑地で女の子が着てると威力倍増~。
 いや、そんなことより新作だろう。モヤモヤしながら脳内で着せ替えを繰り返していると
 ○○さーんと声がかかったので部屋に入る。
「おおぅ 」
 何の変哲もない、飾り気のないシャツワンピースとまとった少女がそこにいた。
「どうですか? 」
 太ももの半分くらいの裾から出る健康的な白い脚。
 大きめに開いた襟から見える鎖骨ときめ細やかな肌。
 控えめながらしっかりと主張する胸。
 秋口を意識して作ったので若干生地が薄い。
 そのせいかちょっと体をちぢこませている。
 それゆえにうっすらと赤くなった頬。……マーヴェラス。
「○○さん? 」
「綺麗だ……」
「え?」
「すごく綺麗だよ、早苗さん。あー……なんていうか、その、かわいい」
 我慢できずに仕事部屋を飛び出す。
「あ、ちょっと、○○さん! 」
 素晴らしいと思う。美少女は何を着たって似合うのだ。
 シンプルなものは素材の美しさを際立たせるのだ。
 でも、
「でももっと飾ってやりたいんだー! 」
「もう……行っちゃった」

 数分後、部屋に戻ると早苗さんは椅子に座って外を眺めていた。
 白い生地が陽の光に透けて、うっすらとボディラインが見える気がした。
 うーん、透けてないのにエロイ。そこが美しい。
「ごめん、早苗さん」
「おかえりなさい。女の子を一人にしちゃダメじゃないですか」
 ふふっと笑う早苗さんは清楚な格好とは対照的にどこか艶めいて見えた。
 抱きしめてしまいそうになるので、それには気づかない振りをする。
「立ってもらえる? 」
「はい。あ……」
 首の後ろに手を回しシャツの襟を立てていく。
 ぐっと近づくと女の子の匂いとでもいうべき不思議な香りがする気がした。
 そこにブラックのリボンをタイのように通して、襟元で二本に結んで裾まで垂らす。
「後ろ向いて」
 俺のクロゼットから持ってきたカーマインのブレザーを羽織らせる。
 濃いグリーンとレッドとブラックのチェックのマフラーを首にかける。
 頭にはブラックのリボンのアクセントが入った、白に近いグレイの中折れ帽をちょこんとのせた。
「前を向いて」
 帽子の位置を直して、完成。おっと靴を忘れていた。
「早苗さん、座って」
「はい。え、ちょっと何するんですか」
「靴はいてもらうだけだからじっとしてて。あ、足はあげてね」
 跪いて白く細い脚からソックスを脱がしていく。
「ん……」
 それにしても肌綺麗だなぁー。こんな肌を見ていると傷つけないよう優しく扱わないとダメだな。
 前を見たら見てはいけないものが見えそうなので足だけを見て、
 モスグリーンのハイソックスをはかせる。
 それからさっき使ったブラウンのショートブーツをはかせて、完★成。

「ふいぃー」
 気分は一仕事終えた職人の気分。あぁ、陽の光が眩しい。
「完璧だわ。早苗さん超かわいい……これで街を歩けば男が10人中100人は振り返るね」
「え、あ、うぅ。酷いです」
「うん、知ってる。ごめんね。早苗さん素敵だったから熱くなっちゃったよ、ははは……」
 笑顔で答える。女の子に靴下はかせてあげるなんてちょっと変なシチュエーションだ。
「恥ずかしかったです」
「ごめんなさい」
 本気で謝る。
「いいですけど。私以外の女の子にやっちゃダメですよ」
「善処します」
 いたずらっぽい笑みで言われた言葉にこちらも合わせて答える。
 それにしてもこの可憐な姿を俺の記憶に残すだけっていうのは惜しい。
「あー、早苗さん、その、せっかくだから写真一枚撮らせてもらえる? 」
 そういって手を差し出す。
「いいですよ」
 にこりと笑ってその手を取る早苗さん。
 秋の午後、窓から入る日差しのもとで笑う早苗さんはとても儚げに見えた。
 ヒロインをダンスに誘うヒーローの心境だ。

 写真を一枚撮ると早苗さんは夕食の準備のために帰るとのこと。
 着替えた早苗さんを玄関に待たせて、先ほどのワンピースを包んで渡す。
「いいんですか、このワンピースもらっちゃっても」
「いいよ。似合う人が着てくれたほうが服も嬉しいってもんだ。
 でも丈短いからそれ着て飛んじゃダメだぜ♪ 」
「ま、○○さんっ! 」
「普段は風祝の服着てるんだろうから部屋着にでもしてよ」
 洋服を着ている妖怪やら神様やらは多いのに、幻想郷で洋服は流行らないんだよね。
 服屋としちゃがっくりだよまったく。
「宴会のときに着て行きます」
「はい? 」
「だから今度宴会があるのでそのときに着て行きます」
「あ、うん。いいと思う。そういうところに着て行ってくれれば宣伝になると思うし……」
「そうじゃなくて! 一緒に行きましょう」
「はいぃ? 」
 何言っているんだ、この娘。
「いや、宴会に服を着ていくのと俺が出るのとは何の関係「あります! 」」
「関係ありますよ。宣伝するんだったら服を作った人が一緒にいたほうが宣伝になります!」
 それはそうだが「あの宴会」おそらくだが「あの神社の宴会」に出ろというのか。
 ビール二口でダウンする俺にうわばみどものいる宴会に。
「いやー、ほら早苗さん、俺酒飲めないし、宴会にいらっしゃるかたとも親しいわけでもないし」
「親しくなければ親しくなればいいんです」
 どうしたんだろう、今日の早苗さんは妙に押しが強いぞ。
「それに私一人だけで外界の服着るよりも二人で着た方が目立ちます」
「でも宴会に出て急性アル中で死にたくないし」
「私がずっと一緒にいるから大丈夫です」
 早苗さんも弱いじゃないか。
「『貴方は人付き合いが悪すぎる』って言われますよ」
「言われても困らないんだけど」
「そんなだからお店が繁盛しないんです」
 い、言ってはいけないことを……。
「うぐぐ、そこまで言われたら出るよ、出ればいいんだろ」
「ほんとですか? 」
「本当です」
「それじゃ○○さんも外の服を着てくださいね。絶対ですよ。約束しましたからね」
 そういうと早苗さんは荷物を抱えて山のほうに飛んでいった。上は見ない。
 待てよ。冷静に考えると、あの宴会にいる連中で服の注文をくれるのは
 紅魔館のメイド長くらいで、まともな宣伝にならないんじゃないか。
 あの人たち洋服着てるくせに買ってくれないんだよね。
「あー……考えてても仕方ないから。閉店して飯食って本読んでデザイン考えて寝よう」

 ☆

 数日後、昼頃に早苗さんがやってきた。ちなみに服は売れていない。
「こんにちはー○○さん。ご飯もう食べちゃいましたか」 
「んにゃ、まだ朝飯も食べてない」
「ダメですよ、ごはんは活力の元なんですから」
「そう言われても倹約生活しなくちゃ、やっていけないんだよ」
「じゃ、私がご飯つくりますから食器を並べてください」
 そういうなり台所に行って準備を始める。
「あの、早苗さん。神社は大丈夫なの? 」
「今日は宴会なのでその準備があるので早く来ました。ご飯食べたら手伝ってもらいますからね」
「うへ、俺どっちかというと頭脳労働者なんだけど」
「ご飯はこの前のワンピースのお礼です。宴会の準備は宴会に出る人の義務です」
「果たされているようにはとても見えないけどね」
「と、とにかくご飯を食べたら二人で買出しです! 」
 うん、わかった。で、食材は俺のところのを使うんだね。

 食事を済ませると早苗さんはちょっと待っててくださいね、と仕事部屋に行ってしまった。
 出てきたときにはこの前のワンピースを着ていた。
「さすがにちょっと寒いですね」
 なんでその格好と理由は聞かないよ。
「この前のPコートでも羽織る?」
「ありがとうございます。それでですね、お店の宣伝のために
 外界の服を着た二人で買い物をすればいいと思ったんです」
「ほうほう、なるほど。でも、俺いつも外界の服だけど宣伝になってないよ」
「○○さんが着てても華がないんだと思います」
「どうしてそうやって人の心をえぐるかな。まぁいいや、行こうか」
「はい」

「それはいいんだけど、どうして腕を組むの? 」
 お店のあるほうへ歩き出したら早苗さんが腕をからめてきた。
「そ、それは、その、寒いから! 寒いからです! 」
「ふーん、まぁいいけどさ、胸が当たって嬉しいし」
「きゃー! ばかばか! 何言ってるんですか! 」
 バシバシと叩いてくる早苗さんの腕をがっちりと固める。役得としておく。
 早苗さんは顔を赤くしてうつむいてしまったが抵抗せずに何かブツブツ言ってる。

 そのままデート(もどき)をしながら宴会の食材を買い歩いた。
 周囲からの視線は珍しいものを見るような、生暖かい視線だった。
 八百屋のおっちゃんに兄ちゃん家に篭ってると思ったら巫女さん口説いてたのかと言われる。
 事実とは異なるのだが、否定する前に早苗さんが
「私に似合うって服を作ってくれるんです」
 と答えてしまう。ちょっと待て。
 呉服屋の若旦那に着る人がいいと外界の服も映えるねぇとちゃかされる。この野郎。
 酒屋の看板娘にあんた山の巫女さんといつの間にそんな仲になったんだいと言われた。
 違うんだ結構意地張って腕組んでるだけで、まだそんな中ではと言おうとすると
「○○さんはあまり積極的ではないので……フフフ」
 と笑顔で濁す。きっと明日には天狗のネタになってるんだろうなぁ。
 人里での宣伝になったかどうかはわからないけど、注目されたのは確かだ。
 これで客が来てくれればいいんだが。

 宴会が始まると魔理沙がさっそくからんできた。
「お前ら人里でイチャついてたって本当か? 」
 もうネタになってるよ。予想以上だよ、こんちくしょう。
「さすがに天狗の新聞は速いね。まさか夕方には広まってるとは思わなかったよ、ははは」
「小部数で宴会の出席者のところだけに配りましたからね」
 この鴉天狗、余計なことをちくしょう。
「やっぱり二人でいるとアピールできますね」
 それは違う、それは違うんだよ早苗さん。違うアピールされても売上は出ないよ……。
「早苗さん、次は何か別の方法でお願いします」
 そういうと早苗さんの目がギラリと光った気がした。ニッコリと笑うと
「わかりました、それでは「別の方法で」いきましょう」
 背筋がぞくりとしたが考えないことにして酒を飲み干す。
 そのあとは人妖入り乱れての飲み会で、金髪の人形師から服について聞かれたり
 鴉天狗から早苗さんとどこまで行ってるかを聞かれたりした。
 天狗の質問はどこまでも何もないので適当に流しておいた。
 俺も早苗さん同様早々に潰れて寝てしまったので、
 気づいたときには片づけが終わろうとしていた。
 ちなみに向こうの木を背に寝ていた早苗さんはもういない。
 霊夢に起きたなら手伝えと言われたので、フラフラしつつ片づけを手伝い家に戻った。
 普段行かない宴会に出てみたものの、大変なこともなかった。
「こんなもんなのかね。こっちにきたときは慌てたけど平穏な日々だ」
 この様子なら依頼された縫い物をしながら、デザイン考えたり、
 型紙引いたりする日々に戻ることができるだろう。
 そんなことを寝なおすために敷いた布団の中で考えていると睡魔が襲ってきた。


宴会の裏

「早苗は周囲にアピールしながら外堀を埋めてるね」
「埋めてるっていうか、3日に一度は様子見に言ってるんだからもう通い妻なんじゃないか」
「様子見に行ってるだけで家事までやってるわけじゃないよ」
「似たようなもんじゃないか」
 ……二柱としてはとりあえずまだ様子見を続けるということになったようだ。

宴会の裏

 ・後日談
 注文はちょっとだけ来るようになった。
 稗田の乙女が外界の服に興味を持ったり、アリス嬢がたずねてきたりするようになった。
 ちなみに最新作はアリス嬢にお買い上げいただいた。ありがたやありがたや。
 そのことを早苗さんに言うとちょっとムッとした様子になって何かブツブツ言っていた。
 概ね平和な日常である。

END?



東方キャラに現代の服を着せたいという欲望から始めました。
初SSの練習作です。
仕立て屋の人ではありません。

工業用ミシンもなくてどうやって縫ってるんだとか
パタンナーが本格的な縫製までできるってどういうことだとか
色々突っ込みどころはありますが、
生地はゆかりんと交渉して手に入れてるとかそういう方向で勘弁してください。
もっと服の描写増やしてわかりやすくしたいし、後半の宴会部分でイチャらしてもよかったかと。
批評・アドバイス等お待ちしております。


Megalith 2012/03/04



「はぁ……やっぱりこうなりましたか……」
 守矢神社境内、そこかしこに空いた一升瓶やら酔いつぶれた河童やら未だ管を巻いている天狗やらや気持ちよさそうに寝息を立てる神様やらが転がっていた。
 有り体に言えば地獄絵図か。
「今時地獄でももうちょい行儀のいい飲み方するだろうになぁ」
「あ、○○さん無事でしたか!」
「まあしつこい天狗は河童になすりつけたり神奈子様とかにそれとなく押し付け……もとい、対応を任せて逃げてたよ」
 俺――○○は神社の社務所で片付けに取り掛かろうとしている早苗の元へ行き、この惨状を見て揃ってため息を吐いた。

 昨日は雛祭り、ざっくばらんに言えば女の子の健やかな成長を願ってお祝いをする日だろうか。
 この幻想郷では妖怪や幽霊等が多く住んでいるため見た目が少女や果ては幼女に見える者も多くいる。
 常識にとらわれていても話は進まないし、天狗相手に喧嘩を売る気もない。
 この際百歩譲って実年齢は問わない事にしよう。しかし、しかしだ。
「その雛祭りで“女の子”が飲んだくれて酔いつぶれてるのはどうなんだ……」
「まあそこは言わないお約束ですよ」
 早苗さんにやんわりと窘められる。彼女も常識に囚われない幻想郷民の一人だが日は浅く、また半分は人間である為年齢は外見相応で異変でもない限りまだ常識的に行動してくれている。
「一先ず片付けられる所だけ片付けて、明日皆さんが帰った後にちゃんと片付けましょう」
「ああ、そうだな。うん」
 このまま愚痴を零していてもどうしようもないので、早苗さんの提案に乗って手近なところから片付け始めることにした。


「……でさぁ、その白狼天狗に言ってやったわけよぉ。『あんた犬に転職したらどうよ』ってねぇ!あはははは!」
「あ、あはは……」
 数十分後、そこには引き攣った顔でで酔っ払い天狗に絡まれる○○の姿が!
 ――俺もある程度気を付けながら片付けを進めてはいたのだが、完全に伸びていると思って横たわった天狗の前を横切ったらがっしりと足を掴まれ、そのまま絡みモードに入ったというわけだ。
 相手が顔見知りの天狗、姫海棠はたてだったのが幸か不幸か、妙な絡み方はされないのだが如何せんいつまでも解放される気配がない。
 いつまでもこうしている訳にも行かず、俺は少々分の悪い賭けに出た。
「はたてさん、ここにまだ空いてない瓶があるんで開けてもらえませんか?」
「ん……ああいいわよ。勿論あんたも手伝いなさいよね。ふふふ」
 第一段階、一升瓶を飲んでいる隙に逃げられるかと甘い期待も抱いたがそんな虫のいい話はなかった。
 第二段階、こちらは逃げていただけあってまだ余裕がある。相手は天狗とはいえ酩酊状態。酔い潰して逃げよう作戦である。
「じゃあまずは一杯どうぞ」
 そう言って杯を渡して瓶を差し出す。
「ありがと。ん……っくはぁ!効くわねこれ。じゃあ次はあんたの番ね。喜びなさい、天狗の酌よ。有り難く頂く事ね」
「どうもありがとうございます。っとと」
 思いの外――いや思った通りか、遠慮なく注がれた。流石天狗である。
「では、頂きます」
 覚悟を決めて一気に流し込む。……流石妖怪の宴会で出る酒だ。強い。
「おぉ、行くわねアンタ」
「ええ、またはたてさんの番ですよ。どうぞ――」


「くかー……すぴー」
「あ、危なかった……」
 一升瓶が一本空になったところではたては静かになった。俺ももう少し粘られていたら撃沈していただろう。
「さて、とっとと片づけに戻るか、早苗さんも待ってるだろうし」
 少々ふらつく頭を押さえながら空き瓶を拾って社務所へと足を向けた。

「○○さん大丈夫ですか?随分と時間がかかったようですが」
「いや、酔っ払いに絡まれて……」
「あはは、私もです」
 再び合流して互いに報告。どうやら早苗さんも誰かに絡まれていたらしい。早苗さんの顔もほんのりと赤みが差している辺り、向こうも飲んだか飲まされたかしたらしい。
 しかし残念ながら他人の心配をしている余裕がないぐらいには今の俺の状態は大変なことになっていた。
「うおぉ頭が揺れる~次捕まったらもう倒れそうだ……」
「じゃあ片付けはこれぐらいにして今夜は休みましょうか」
 早苗さんはそう言って寝室の方へと引っ込もうとする。
「あ、ちょっと待った」
「ん?どうしました?」
「あれは片づけておかないといけないんじゃないか?」
 不思議そうに聞き返した早苗さんに俺は雛壇を指差した。
「ほら、出しっぱなしだと婚期が遅れるとかなんとか」
「ああ、それならいいんですよ」
 にこりと笑って気にも留めない様子の早苗さん。
 何故、と聞こうとする前に早苗さんは顔を近づけてきて照れくさそうに笑った。
「だって」
 ゆっくりと背中に手が回され、抱きしめられる。
「どれだけ遅れたって、○○さんが貰ってくれるでしょう?」

「それは襲っても構わないと言う事かな?」
「えへへ~そんなことを聞く理性が残っているうちはまだ駄目です。私も、ちょっと怖いんですから」
「結構一杯一杯なんだがな」
「○○さんの事、信じてますから」
「それはずるいよ、早苗さん」
「ふふっ、一緒に寝るだけならいいですよ?」
「生殺し状態だと知って言ってますか?」
「さあ、どうでしょう」
「まあ、今日は頭痛いし眠いからそのまま寝ちゃいそうだけどね」
「じゃあお布団用意してあるんでこっちへどうぞ」
「ん、お言葉に甘えて……おやすみなさい早苗さん」
「はい、おやすみなさい○○さん」

「ありがとうございますね」
 チュッ

「くー……」
「――ふふっ」


二、三年ぶりぐらいのうp はたてだと思った?残念、早苗ちゃんでしたー
日を跨いでから慌てて書き直し、書きあげたので誤字あるかも
それ以前の問題もあるかもしれないけど眠気で見直しとかは無理でした


35スレ目 >>326>>327

326
常識にとらわれない早苗さん(CV庵野秀明)がわがままの限りを尽くす、「風祝立ちぬ」。
○○は結核で死ぬ。

327
外界出身で常識にとらわれないながらも乙女心のある早苗さんなら
○○と自転車二人乗りしたがったりするのだろうか
ジブリを元にこのスレ向きなシチュエーションというとそれが浮かぶ

避難所>>55


夏が終わって しまい込む前の水着で
室内ファッションショーする早苗さんの一人だけの観客になる○○
二柱の神様は○○込みでイチャイチャする二人の観客(こっそり)


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最終更新:2024年07月24日 23:30