紫苑1
37スレ目>>390
紫「○○、幻想郷へ迷い込んだ貴方に、能力を授けましょう」
「はい、『浮きも沈みもしない程度の能力』~!!」
「……具体的に言えば、とりあえずどんなに頑張っても生活水準は向上しないわね。
幻想郷のことだしなんとか食べるには困らないけど、まあぜいたく品とは無縁かしら」
「夢も希望もないとか言わないの。ちょうど余ってて……あ、いや、こほん。
い、意外と役に立つかもしれないわよ?」
このときの○○は気付きませんでした。この一見箸にも棒にもひっかからない能力が
ヤクビョウガミ ビンボウガミ
妹 の妨害をかわしつつ一目ぼれした 姉 と愛を育んでいく鍵になることに。
から始まるビンボーイチャイチャライフ、みたいな
もちろん真正面から乗り越えるのもありだが
37スレ目>>397
紫苑「火鉢に入れる炭がないと寒いね」
「煎餅蒲団だと今一つ暖かくないし」
「……でも二人で入ると、すごくあったかい」
「おやすみなさい、○○」
37スレ目>>408
紫苑で。
僕は彼女に関わらないほうがいいのかな。
彼女は僕が近づくと、すぐに離れようとしてしまう。
たまたま彼女が人里の周辺近くに居るとき、僕が彼女のほうに走っていくと、
やはり彼女は回れ右をして、明後日の方に歩いていってしまった。
なんとか走って追い付こうとするけど、まったく近っくことができなかった。彼女は多分人間ではないのだろう。
それでも、僕は彼女と仲良くなりたい。
もしかしたら、僕は彼女のことが好きなのかもしれない。
でも僕は彼女と男女の関係、つまり恋人同士になれなくてもいい。
彼女のことを、もっと知りたいだけだ。
見た目は、一言で言うと、貧相だ。彼女の姿を見ると、どうにかして助けてあげたくなる。
痩せていて、お腹いっぱい食べさせてあげたくなる。
このまえ彼女に僕の作った弁当を持っていってあげた。
たしか雨の日、人里の近くの林の中の洞窟の入り口付近での出来事だった。
案の定、彼女は僕の目を見なから相手をしてくれなかったけど、次の日、そこに彼女は居なかったが、
空の弁当箱と、『ありがとう』という文字が刻まれた木片が置いてあった。(きっと彼女は紙や筆さえ持っていないのだろう)
髪の毛は青い色をしていて、手入れが行き届いていなくて、ぼさぼさになっている。ボロになったシャツとスカートを身につけていて、所々『差し押さえ』や『請求書』とか書かれた札が貼ってある。
それでも彼女は可愛いんだ。肌は透き通るように白いし、無気力なところもちょっと僕と似ている。
一度でいいから彼女の笑顔を見てみたい。できることなら…イチャイチャしてみたい。
いや、高望みしすぎかな…。
初めて会ったときは今と比べると、積極的に僕と話してくれたんだけどなぁ…。
僕が趣味で釣りをしている時だった。
「…恵んで」
「え?」
「その魚、私に恵んでくれない…?」
だが、彼女から僕に話しかけられたのは、その最初の一回だけである。
そんなふうに思考巡らして、僕はまた里の外を、
彼女の姿を探して歩いていた。
続く(連レス自重)
37スレ目>>415(37スレ目>>408の続き)
私は彼に関わらないほうがいいのだろう。
彼とたくさん接すると、彼は不幸になる。
ただの人間でしかない彼が運気を失いすぎたら、、
…彼は死んでしまうかもしれない。
私は能力の暴走を防ぐことはできるようになったし、
彼に取り憑いたこともない。
でも、現に彼の運気はだんだんと減っている。
だから、私は彼から離れることにした。
私は彼のことが好きだ。
貧乏神である私が人間を好きになるというのも変な話かもしれない。
でも私は彼が好き。好きで好きでたまらない。
無意識に彼を陰から目で追ってしまう。
日中、四六時中彼のことで胸がいっぱいになってしまう。
一度でいいから甘えてみたい。イチャイチャしたい。
だけど、その願いは叶わない。
私は彼を幸せにすることなんてできない。
ただただ不幸にすることしか。
どのみちこの恋心は成就しない。だから夢なんか抱かない。
そうやってひたすら頭の中で言い続けた。
そうでもしないと、また無意識に彼の元へと足を運んでしまうから。
…駄目だ。彼に会いたい欲が勝ってしまう。
勝手に足が動いてしまう。
しばらく面と向かって話していなかったから、
彼の運気はたくさんは減っていないはず。
なのに私が人里に行くことで、彼の回復してきた運気をまた奪ってしまう。
彼が人里から出掛けていなければ。
彼は私のこと好きかな?
いや、たとえ彼が私のことを好きって言ってくれても、
私の想いが成就するわけじゃないけど。
でも、もしもそんなこと言ってくれたら、ってかんがえると、とても嬉しくなる。
そんなのあり得ないけど。だって、多分私は恋愛運もない。
そもそも私は嫌われ者であることが普通なんだ。
…だったら彼に想いを打ち明けるか?
ムリムリムリ、絶対無理!!いや、だって恥ずかしい!
…それに、まずこれ以上関わっちゃダメなんだって。いよいよ二度と彼に会えなくなる。
今はまだ彼が私を訪れて、私はそっぽを向いてるだけ。
だから彼に程よく不幸を与え、彼を財禍から守れるし。
……あ、しまった。気づいたら人里に入っちゃってた。
でも、彼は人里には居なかった。……いや、べつに残念悲しくない。
彼に会わずに済んだんだから。彼を不幸にせずに済んだのだから。
(モチベーション次第で)続く
37スレ目>>426(37スレ目>>415の続き)
あれから里の外を歩き回って彼女の姿を探したけど見つからなかった。
明日から仕事が再開するので、会える機会も減るだろう。だから、今日会っておきたかったのだが…。
まあ二度と会えなくなるわけじゃないから。とりあえず里に戻ろう。
そろそろ人里の桜も花を咲かせる頃だろう。
あの子と一緒に見る桜はどんなに綺麗だろうか。
そこで一言、「桜も綺麗だけど、君のほうが…」
…やっぱりこの妄想はやめよう。さすがに彼女でもドン引きするときはドン引きするだろうな…。
そんな所詮妄想止まりの夢を見ながら人里を歩いていた
が、次の瞬間、彼女の姿が目に入った。
気のせいか?いや、そんなこと考えている場合じゃない。
彼女を追いかけよう。完全にストーカーだけど!
駄目だ、やっぱり追い付けない。
それ以前に、さっき見た彼女の姿は本当に気のせいだったのかもしれない。
我ながらひどい思考だと思うが、あれは僕の妄想によってできた幻覚かもしれないと思った。
それでも僕は走り続けた。
居た。彼女の背中が見えた。
僕は息を切らし、歩みを進めながら、前に叫んだ。
人里の道行く人の視線なんか気にせずに。
「君は僕のことが嫌いなのか?はっきり言ってくれ!」
周りから見ればまさしくストーカーだな…。まあいいや。
「…」
彼女は答えない。
「そう言ってくれれば、僕はもう君を追いかけないから」
「……嫌い…。
だから来ないで」
彼女の声が聞こえた。
それは僕を地に激しく叩きつけるような残酷な拒絶の言葉。
僕はそのまま、
「…すまない。悪い思いをさせてしまって」
とだけ言った。これは彼女に聴こえただろうか。
「…さようなら」
立て続けに彼女が言った。
心が悲鳴を上げる。ここまで異性を好きになったことなんてなかったから。
こんなに彼女のことが好きだったんだって、今気づいた。
僕は激しい勘違いをしていたようだ。
彼女は僕のことが好きなんて、これっぽっちも思ってはいなかった。
となれば長居は無用。
僕は逃げるようにしてその場から離れた。
続く(こんなの、続くしかないでしょ)
37スレ目>>437(37スレ目>>426の続き)
私は歩いていた。
彼は今こちらを見ているだろうか。
彼の足音が遠くなっているから、私が振り返っても目は合わないはず。
だけど、それはしてはいけない。もしも彼と目が合ってしまったら確実に未練になる、
と自分に言い聞かせた。
好きなのに「嫌い」と嘘を吐くのは、
相手が自分を好きかどうかも分からず「好き」と言うのと同じくらいエネルギーを消費する。
だからさっき私が「嫌い」を言えたのは奇跡だ。もちろんいい意味で。
今ここで彼と目を合わせてしまって、彼に「嫌い」を疑われでもしたら、、、
…そんなことありえないじゃん。
ほら、珍しく私がこんな考え方をしてる。
もう彼には会ってはいけない。もう関係を修復できない。もう諦めるしかない。
…彼は私のことが好きなのか、じゃない、好き『だった』のかな…?
嫌われて当たり前の私が人間に?
私の正体を知らなかったとか?それなら私の選択は正しかった。
私が貧乏神であること、それを知らずして彼が私に手を差し伸べていたなら、
そしてそのまま私が彼の告白を受け入れていたら、、
彼は滅んでいた。
それはどうでもいい。
そう、どうして彼は私にあんなこと言ったんだろ?
なかなか考えが纏まらない。
私の見た目が好きなのか?
清楚さなんて微塵も感じさせない私の姿に?
私の顔が、偶然彼の亡き想い人に似ていたとか?
そんな物語みたいなことあるのかな?
それとも実は好きでもなんでもなくて、私を利用して、なにか企んでいたのかな?
かつての妹みたいに。
…そんなわけない!あの優しい彼がそんなことするわけない!!
私を気遣う言葉も、私を哀れむ目も。
どこにも嘘なんかなかった。
なのに、私は彼を傷つけた。
せめて彼だけでも傷つかない未来はなかったの?
いや、彼は私に < 自分のことが嫌いなのか? > と尋ねてきただけ。
別に彼は私に「好き」とは言っていない。
私が「嫌い」って言った瞬間の彼の表情の曇り様で、なにを勝手に決めつけているのだろう。
でも、私のこと、好きだったら、やっぱり、嬉しいな…
もうやめよ。あの人のことを考えるの。
まだ諦めきれてないんだ。
だって、……好きだから。
37スレ目>>475(37スレ目>>437の続き)
これは悲恋エンド派にとっては完全に蛇足な>>437の続きになります。
(そしてイチャイチャに欠けているのです)
「どこほっつき歩いているかと思えば…」
ようやく見つけた。姉の姿だ。
最近は頻繁に天界から外に足を運ばせていると聞いていたから、取り敢えず人里に来てみた次第、案の定、姉は居た。
下を向きながら、とぼとぼと歩いている。普段から暗いオーラを纏っている姉ではあるが、今日は一段とそれがくっきり見える。なにかあったのだろうか。
「おーい、姉さーん。こんなとこでなにやってんの?」
「女苑!?…別に。散歩してるだけよ」
清々しいくらい分かりやすい嘘だ。目を逸らして、少し黙り込んでから述べる。
「嘘を吐いている」と思わせるように誘導しているのではないか、と変な疑いを抱いてしまう。
まあいい。わざわざ苦手な嘘を実の妹に吐くくらいだから、きっとよほど私に知られたくないことがあったのだろう。
気になるところではあるが、下手にさぐりを入れるのも良くない。
「あっそう。それより今日は姉さんにおすそ分け持ってきたんだけど」
「あ、ありがと」
喰いつかない。普段の姉ならもっと嬉しそうな顔をするのに。なにがあったのかますます気になる。
「大丈夫?」
「え、うん」
「とりあえず人里からは出よう」
姉が頷いたのを確認して、私たちは一緒に人里近くの草原へ出た。
「それで、なにがあったのよ」
「…だから散歩してただけだって」
「嘘でしょ。今の姉さん、明らかに普段より暗い顔してるもん。言いにくいことかもしれないけど、私で良ければ相談に乗るから」
「……私、ね、、、。ううん。なんでもない」
ここまで言いかけてなお口を紡ぐとは。天界に住み始めて口も頑丈になったのだろう。適当な冗談でも言って話しやすい空気を作ってみるのがいいだろう。
「なに?もしかして恋のお悩み?」
「えっ!!いや、そそそそんなわけ!」
冗談で言ったのに、どうやらビンゴだったようだ。………マジか。まず、どういうわけか私の姉は人里に頻繁に出かけている。そして普段よりも落ち込んだ表情…。
「まさかとは思うけど、よりによって人間に恋して、そんでフラれて、」
「あっ、ち、ちがうちがうちがう!ちがう!ちがう!!え、えーっと、えーっと、、、…私が、、私が、、、嫌いっ、て、、言うしかなかったのよ!!」
…泣き出してしまった。
そして本当にわかりやすい。
きっと人里で恋愛関係に発展した人間を、自らの能力のせいで不幸にさせたくなかった。だから別れを切り出した。多分そういうことだろう。
しかしあの姉さんを泣かせるとは。きっと姉にはもったいなくらい相当いい男をゲットしたのだろう。
それとも普段嫌われている分、そうでもない男にちょっと優しくされただけでコロッとおとされたのかもしれない。なんにせよ、とりあえず泣き止むまで待とう。
「…落ち着いた?」
「…うん」
「少しずつでいいから話してくれない?」
「あのね、私、ある人間の男の人に、、片想いしてて―――――」
私の推測は概ね当っていた。
ただ恋人関係には発展していないなど、私の推測とは少し違う部分もあったのだが。
「…」
気まずい空気が漂う。しまった、気軽に聞いていいことじゃなかった。
『だったら後ろから追いかけて、抱きしめて耳元で<好き>って言えば?男なんて簡単よ』
『そんな人間のことなんて忘れて、天子んち行こーよー』
私の喉から空気の読めない言葉が出かかったが、寸でのところで食い止めた。
「少なくとも、その人間がまともな奴なら、姉さんから行動しないと。そうしなきゃ、もう話すことさえできないかもよ」
それくらいしか言えなかった。ここで本当に言うべき言葉なんて見当たらなかった。
優しく気遣う言葉も。応援する言葉も。(応援というのも変な言い方だが)他の話題を提示するような言葉も。
どれもこれも、言ったところでさらに姉を苦しめるだけだと分かっていた。
「…そうだね。ありがと、女苑」
笑顔でそう言った。
失恋した上、妹に適当なこと言われても、怒鳴ったりキレたりせずに笑顔で短く返事するだけなんて。
普段はだらしない姉だが、改めて見てみると本当は優しい人(貧乏神)なんだと思う。
いや、優しいのは事実だ。事実だけど、私の意見を肯定しながら、そう、口先だけでは肯定しながら、
どうせもう二度とその人間には会わないようにするんだろう。
…ほんっと仕方ないわね。
ここは私が手を貸してあげようかしら。
続く。是非紫苑ちゃんに幸せになってもらうために
37スレ目>>498(37スレ目>>475の続き)
『……嫌い…。
だから来ないで』
『…さようなら』
―数日前、彼女が僕に向けて言った言葉だ。忘れるわけがない。
心に被弾した絶望という名の弾幕は今でも精神をグレイズし続けている。
がむしゃらに仕事に精を出そうとしたが、あの言葉が何度も心の中で響いていた。
当然、普段よりも作業ははかどらなかった。今ではどうでもいいが。
今日は仕事も休みだ。久しぶりに釣りにでも行こうかな。
あの霧が立つ湖は全く魚が釣れなかったし、妖怪が出没するかもしれなかったから、
むしろそんなデメリットだらけの場所を選んだんだろ。
今日からは運河の上流のほうでやろう。…なにより彼女がまたあそこで会う可能性もあるし。
簡易な釣り場のようなところまできて、適当に釣りをはじめた。
しかし見事にフラれたもんだ。あんなの、ほとんど『好き』って言ってるようなものだしね。
フラれたショックもそうだけど、あんな人通りのど真ん中で告白じみた事やってたから、
如何せん里の人間の僕を見る目が痛いものを見るような目をしている。
それもどうでもいい。自分という人間をどんな風に見ようが、見る人の勝手だ。
―諦めらめきれない―
なぜだろう。さっきからずっと、背後から声が聞こえるように感じる。
―…一目見に行くくらいなら―
あ、危ない。煩悩に体を乗っ取られるところだった。やはり自分は欲望に忠実なようだ。
―好きだったんだ―
…。ああ、そうかもしれない…。
―…一言、そう、その、好き、を伝えるだけなら―
そうだ、口実ができた。…彼女には悪いが、僕は一言伝えて、それで完全に終えよう。今度こそは。
そして僕は歩き始めた。冷静になってみれば、なにを考えているんだと精神を疑うだろうが、
その度に後ろから声が聞こえた。
最初は違和感を覚えたが、気づいたら、実は彼女は僕のことが好きだったんだ、とまで錯覚していた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「姉さーん!」
女苑の声だ。含みのある表情で、こちらに近寄ってきている。
「どうしたの?」
「実はねー…」
含みのある表情というより、ニヤニヤした表情といったほうがいいかもしれない。
「姉さんの想い人を洗脳してきた」
「!!」
…え!?
私の、、想い人、を?、、きっと彼のことよね、を、洗脳?
「…どういうこと?」
「ふふふ、昨日くらいからこっそりあの人間に憑りついてみたの。
よーく彼を観察してみたらね、どうやらまだ姉さんのことを諦めきれていないようで。あとは私の出番ね。
フラれた異性への未練を増幅して、再び絶望に落とすなんて私にとって赤子の手をひねるより容易いことよ」
なに、、女苑はさっきからなにを言っているの!?
混乱する私をよそに、女苑は再び口を開いた。
「要するに、あの人間に向かって、姉さんに近づくように、心の中で囁き続けたの。
今では彼の頭の中では、姉さんに『嫌い』と言われたことさえ忘れかけて、
依神紫苑のことだけを考えながら、姉さんの姿を探していると思うわ」
え、それじゃあ、、つまり、、。
「どの道私の能力にかかった人間は不幸になるからね。
姉さんにまた『嫌い』を言われて、彼の心が壊れるまでまた私がおんなじことやるか。
それとも不幸にも貧乏神と両想いになって、結果的に不幸になるか。
まあ、姉さんには後者しか残されていないと思うけどね」
「女苑!!」
私は妹の名前を叫んで、睨みつけた。
「どうして!これで彼は必要以上に不幸にならずに済んだのに!」
そう言いつつ、自分を抑えきれなくなった私は、女苑の両肩を掴んだ。
「ちょ、ちょっと!私は姉さんのことを想ってしてあげたのに!
…あ!姉さん、愛しの彼が来たわよ」
「え!?」
慌てて女苑が指を指した方に振り向いた。
嘘は吐いていなかった。私の目には彼の姿が映った。
「じゃあ、私はこの辺で。がんばってね、姉さん」
そう言い残し、女苑はどこかに行ってしまった。
逃げ場を失った私は、どうしようもなく彼が近づいてくるのを虚ろに眺めていることしかできなかった。
次回はイチャつく予定。
37スレ目>>510(37スレ目>>498の続き)
目の前には彼の姿。その目は真っ直ぐ私の方を向いている。
もう私には近づかないと言った彼。それがなぜ今私の目の前にいる理由は、私の妹の仕業である。
彼の目は清純な、いつもの彼の目であって、彼の目ではなかった。
妹に憑かれた人間は、財産を使い果たしたところで初めて自分がなにをしたのかに気づく。
彼は、私に想いを伝えてから、我に戻るのだろうか。それとも、私の返事を聞いてからか。
私はなにも言えない。
「また君のもとに来てしまった。悪いとは思っている」
―彼が口を開いた。ああ、だめ。お願い。言わないで。
「一言、言い忘れてしまっていたんだ」
―嫌。……またもう一度、「嫌い」を言うのは。
「いつからだったか忘れちゃったけど、僕は」
―そこで彼は一旦言葉を区切った。そして顔を上げ、笑顔を見せ、一言。
「君のことが好きだったんだ」
…!!
―そこで彼は驚いたような顔になる。理性を取り戻しはじめたようだ。
…私の良心はもうダメだった。「嫌い」なんて言えなかった。
どうすることもできない。彼の顔から目が離せない。
言われてしまった。言われてしまった。言われてしまった!
『君のことが好きだったんだ』
この言葉が何度も心の中でこだました。
彼は私のことが好きだったんだ。少なくとも、それは紛れもない事実。
嬉しい。嬉しくてたまらない。
「僕…は?いったい、なにを…。どうして…こんな」
彼は完全に自我を取り戻してしまったようだ。待って、行かないで!
「!、な、」
彼が驚いたような声を上げた。私が彼の体を抱きしめたからだ。
分からない。自分でも分からないけど、無意識の中、気づいたら彼を抱きしめていた。
「私も…本当は好きだったの」
自然と涙が頬をつたる。もうどうしたらいいのか分からない。
ある意味一種のやけくそだった。
「あなたのことが好きで好きで好きで、、たまらなかったの」
彼はまだよどめいていが、その両手は、自然と私の背中に回った。
もう彼は、私の、貧乏神の呪いからは逃れられない。
彼には私と一緒に不幸になってもらう。
天人の力でも、私たち二人を幸せになんてできないかもしれないから。
「ごめんね、ごめんね」
泣きながら謝る。もう私の感情は暗いのか明るいのか、自分でも判らなかった。
37スレ目>>542(37スレ目>>510の続き)
「嘘吐いちゃったね。私、ほんとは貴方が好きなのに」
「でも、私がこうして貴方と抱き合ってしまったら、貴方は不幸になるの」
「今なら間に合うわ。私、貧乏神に憑りつかれるのを望むか、不幸を拒絶するか」
「私、貴方に不幸せになってほしくないの。だからといって、貴方をあんな風に傷つけるのももう嫌」
「このままだと、もう貴方を離せる余裕もなくなってきそう…」
「お願い、貴方が決めて。貴方が決めてくれたら、私、きっと離れられるから」
―きっと混乱しているだろう彼をよそに、抱き合いながら質問をぶつける。
そのとき、彼が口を開いた。
「ごめん」
いきなりのことに戸惑う様子も見せず、すぐに答えてくれるのはありがたい。
しかし、たしかに聞こえた言葉。それがなにを示唆するのかは、もう目に見えて…
「知ってた」
!、え、どういうこと、
「…全部聞いたよ。妹さんに。君が…嘘を吐いていたって」
…女苑が?この人はただ女苑に憑りつかれて来ただけじゃないの?
「君が貧乏神だから。僕に不幸を寄せ付けないために。僕に近づかないようにしていることも」
そ、そんな
「少なからず妹さんの能力に頼って言ってたから、まったく憑りつかれてたわけじゃなかったんだけど。
でも、こういうのは恥ずかしいかな…」
彼が一度口を閉じた。そして、もう一度開きかけ
「君が何者であれ、僕は君のことが、、好きだ」
今度は少し罰が悪そうに、はにかんで、少し目を逸らして。その次には顔を紅くして。
自然と彼を抱きしめる力が強くなる。それに応えるように、彼も私を抱く力を強くしていく。
しばらくして互いに体を離す。そしてまたしばらく見つめ合うだけの時間が過ぎる。
ゆっくりと彼が目を閉じ、顔を近づけてきた。私もそれにつられて目を閉じる。
次に口に感じる感触は、すぐに私の思考を停止させた。
ただ触れるだけなのに、私は一瞬にして彼に完全に魅了されてしまった。
私たちは名残惜しく顔を離す。
彼が私の目を見てまた言った。
「好きだよ。紫苑」
37スレ目>>568(37スレ目>>542の続き)
少し強めの風が吹き、辺りの草木がそれになびく。
幻想郷の中では比較的広い原っぱの中、僕と紫苑は隣り合って座っている。そっと後ろでは互いの手を重ねて。
今までで一度も感じたことのないほど幸せだ。彼女もそんな表情を浮かべていて、見ていてとても愛らしく感じてしまう。
しかし、あんまり顔を見つめるのは小恥ずかしいものだから、一瞬だけ彼女の顔に焦点を合わせたあと、
すぐに近くで揺れ揺さぶられる草木の方に目を向けてしまう。
紫苑の方も、僕の右手の上に左手を置いたまま笑顔を浮かべている。
もう何度目になるかわからないが、その笑顔見たさにまた彼女の表情に視線をずらした。
あろうことか、今度はたまたま彼女が同時にこちらを向いたため目があってしまい、二人とも慌てて視線を戻す。
疫病神さんに、紫苑の妹さんに憑りつかれていたときは、あんな大胆に接吻までできてしまっていたけど、
やはり僕は恥ずかしがりやなんだな。紫苑も同じようで、また好きになってしまう。
紫苑が動いた。そっと両腕を僕の右腕を抱きしめたようだ。いや、冷静に言ったけど、かなり心臓がバクバク鳴ってる。
ヤバい。いろいろと、いろいろとヤバい。さっき目があったとき、紫苑の方も恥ずかしがっていたくせに。
「あ、、私の臭い、大丈夫だった!?臭くない!?」
突然彼女が慌てて腕を離し尋ねてきた。いや、それはどう答えてもアウトじゃないですか、紫苑さん?
うーん、さっき抱きつかれたとき、あの汗の臭いといい、しばらく洗っていないであろう髪の毛といい
………うん、最高でしtゲフンゲフン。
「…大丈夫だよ」
これでも自分にしては上手く答えたつもりである。
「あ、そう、…。なら良かった」
彼女はそう言って、少し俯く。…まずかったか?
「ほんとに大丈夫、だから」
少しでも傷ついていないか不安で、僕は再び彼女を抱いた。少しだけ彼女の放つ香りも意識してしまったが
罪悪感が沸いたので、すぐに意識するのだけはやめた。もちろん呼吸は続けるが。
「好きだよ、紫苑」
本音ではあるが、これこそ文字通り、「くさい」セリフである。
さすがに恥ずかしくて、また唇を当てる度胸は、もう僕にはなかった。
「愛してる、こうやって言った方が正しいかな?
…愛してるよ、紫苑」
「…もう。私が言いたいこと、全部先に言って」
そう言いつつ、またまた顔を紅くする。僕の顔の方がきっと紅くなっているのだろうが。
「その、『言いたいこと』を口に出して言ってくれると嬉しいな」
「……」
彼女は僕を抱く力を、少し緩くして上目遣いで見る。
一瞬だけ風が止まったように感じた。
「…………すき」
そう言い、さっきよりも強い力で僕を抱きしめた。
照れ隠しまじれに、僕の胸に顔を押し付けるようにしている。
僕は彼女の後頭部をそっと撫でてみた。一瞬、驚いたように体を震わしたようだが、
すぐに落ち着き、僕に撫でられるがままになってしまった。
なんて幸せなんだろう。僕は彼女のことがこんなにも好きだったんだ。
僕らはどうしてこんなに惹かれあったのだろうか、疑問にも思わなかったし、答えもいらない。
たとえ貧乏神であれ、一緒に幸せになれるんだ。
これから苦労はあるだろう。でもきっと一緒にいれば乗り越えられる。
僕らの恋はまだ始まったばかりである。
38スレ目>>24
「私ねぇ、夏って好きだよ」
時折紫苑が立てる水音に意識を向けないよう、川の音に集中していたので、
背後から聞こえた声に引き戻されて、どきりとする。
「こうやって、お風呂代わりに川で水浴びしても寒くないし」
ここ数日、紫苑は毎日のように川へ水浴びに来ている。
一人にすると流されたりしそうなので付き合っているが、
水着なんてぜいたく品はないし、水に入るのは(お互いを見ないようにしつつ)交代でだ。
「紫苑は神様なんだし、そんなにこまめに水浴びしなくても大丈夫なんじゃないの?」
冬の間は燃料節約のためにそうたびたび風呂を沸かすことはできなかったが、
貧乏神といえど神様だからか、多少埃っぽくなるものの汚れた感じはしなかった紫苑。
入浴好きな印象もさほどない。
「うーん、まあそうなんだけど」
そう言いながら紫苑は川から上がったらしく、水に濡れた足音が近づいてくる。
「――やっぱり、好きな人の傍ではちょっとでもきれいにしておきたいし」
どきりとする。さっきとは違い、聞いていなかったからではなく、聞いていたせいで。
「冬場のお風呂とかお化粧とか、お金がかかるのは無理だけど……わ、わわっ!?」
急に上がった声に慌てて振り向くと、足を滑らせた紫苑が倒れ込んできた。
間一髪のところで抱き止めたが、勢い余って押し倒されるような恰好になってしまった。
幸い足元は砂地で、頭を打つようなことはない。ただ――
水に浸かっていたせいで冷たくて、やけに軽くて、ちょっと柔らかさに欠けるところもあるけれど。
確かに腕の中にある、女の子の感触。目をそらすと、余計に意識してしまう。
「……ありがと、受け止めてくれて」
柔らかくささやいて、紫苑がそっと身を寄せてくる。服に水が染み込んでくるけれど、それさえあまり嫌ではない。
「○○、あったかいね。……もうちょっと、こうしててもいい?」
――そのまま、二人でしばらく動かず、折り重なって寝転がっていた。
自分の心臓の鼓動が気になって、川の音さえあまり聞こえなかった。
最終更新:2024年08月15日 16:54