霊夢4
4スレ目 >>152(うpろだ0018)
「ちっくしょー! 朝は快晴だったのに。あてが外れたか!」
今僕は必死に自転車を漕いでいる。いや別に漕がなくてもいいんだけど、気分的な問題なのだ。
現在地は紅魔館と魔法の森の中間地点の、上空。
愛車に跨り必死にスピードを出す僕は空を飛んでいる。
雨をさえぎる物の無い上空で、僕は必死に雨宿りの場所を思い出していた。
「家は遠い。紅魔館も魔理沙の家の中間…。そうなると、やっぱあそこしかないか」
雨でびっちょびちょになったジーンズや下着に違和感を感じつつ、僕はその目的地に向かって更にスピードを上げた。
上からではなく横から叩きつけられる雨を振り払い、目的地まで一直線に飛ぶ。
しばらくすると、目的地の赤い鳥居が見えてきた。
そう、幻想郷の博麗神社。僕が向かっている場所である。
スピードを緩め、神社の縁側の方に向かう。明かりは漏れているが人の気配はしなかった。
塗れた玉砂利にタイヤを取られそうになるものの、なんとか着地。うむ、9.4点くらいかな。9.6点満点で。
庇の下に自転車を置き、ちょっと声を上げて叫ぶ。
「霊夢ー。ちょっと雨宿りさせてくれー! っているのかー? いないのかー?」
暫く待っていると部屋の奥の襖が開かれ、霊夢が出てきた。
「そんなに叫ばなくても聞こえるわ。それよりも、ひどい格好ね」
いつもの改造巫女服、ではなくシンプルな白い浴衣姿の霊夢。
「お風呂から上がってみれば外は酷い雨だし、貴方は濡れ鼠だし。酷い日だわ」
なるほど、良く見れば肌が上気してほんのりピンク色だ。…変な想像はしてないぞ!断じて!
「しょうがないだろ。一番近かった雨宿り場所がここだったんだから…
それよりも何か拭く物ないか? 上から下までびちょびちょで気持悪いんだ」
両手を挙げて外国人の「どうしようもないぜ」って感じのポーズをする僕。
「それよりもお風呂入ったら? 私の後でよければ、ね。着替えも貴方が入っている間に用意するし」
なんという提案か!僕は一つ返事でオーケーした。好意には甘えないと。
そうだろう?
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突然だか僕の趣味はサイクリングだ。
今日も週末を利用してちょっと長めの旅に出ている。
といってもほんのちょっと県外に出て、また戻ってくるルート。
所要時間延べ6時間。普段と変わらないいつもの小旅行。
その時はちょうど帰りのルートの最後の上り坂だった。
キツイ急勾配の上り坂だが、これを上りきればあとはまっすぐ下り坂。
その下り坂で風を思いっきり感じるのも好きなのだが、それよりも望んでいることがある。
「やっと…これで…坂の頂上!」
ギアを一番軽くしても息の上がる急勾配だか、後ろを振り返ればその疲れなんて一気に吹き飛ぶ光景が見れる。
「…今日もいい夕日だな」
海に沈みかける夕日。その光に照らされる住宅街。
全てが暖かい紅に染められた世界。正直、僕はこの光景が見たいためだけにサイクリングをしているのかもしれない。
ブロロロロ…
しばらくいつものように見とれていると、坂の向こう側からトラックのエンジン音が聞こえた。
慌てて我に返り自分の走っている位置を見ると、これはいけない反対車線。
これは危ないと思いつつ左の車線に戻る。
(この時間にこの場所で車とすれ違うなんて事、滅多にないんだけどなぁ)
そう思いながら峠を越えて…僕は我が目を疑った。
あろうことかトラックが僕のいる車線を走ってくる。しかも3tくらいのデカイトラック。
運転手は僕に気付いてない。トラックの運転席からの目線の高さの違い。なにより…
(しまった! 逆光だ!)
上り坂と下り坂、視点の高さの違い、そして逆光。
トラックは僕に気付くことなく迫ってくる。
車線を変えようと体重移動した僕に、とっさの動きは出来なかった。
ああ…僕は死ぬんだな
妙に落ち着いた感覚の中で、僕は目を閉じた。
─…? あら珍しい。
あなたは合格よ─
綺麗な女性の声がしたようだった。トラックの音はしないし、体のどこかに衝撃が加わった感覚もしない。
意を決して、僕は目をゆっくりと開けた。
目を開けたら、そこは猫の国でした。という事は無く、上下左右、闇が広がっていた。
目が慣れてくると、それはただの夜だったというのが理解できた。
上を向けば星は光っているし、横を向けば森が広がっている。
そして僕は違和感を覚えた。
まず一つ目、人工的な光が見えないという事。
遠くの方に、ちらほらと光は見えるが心もとない。さっきまでいた坂道から見える景色とは全く違っていた。
そして二つ目、なぜ僕は森を上から見ているのか。
360度回りは森が見える。が、どれも上から見ている景色だった。
僕はしっかり考えた。ゆっくり数えて30秒、しっかり考えた。
そして僕の灰色の脳が導き出した答えがコレだった。
─僕は浮いている─
まじめに考えた。高校の嫌いな古文の期末試験並みに考えた。
んで、出た答えがコレである。…反省はしてないよ。3割くらい。
暫く僕の上に輝く満点の星空を見上げ、そして一気に下を見た。
瓦屋根の建物、その建物の外で茣蓙を敷いて酒盛りをする集団。
良く見るとその集団の人達は、僕が今まで見た事無い珍妙な服を着ていて、ポカーンと口を広げて僕を見上げていた。
初対面の人に対して挨拶というのはとても大事だ。
その人との関係を良くするのも悪くするのも第一印象、最初の挨拶が大事だと僕は思っている。
そんな僕が一番最初に発した言葉はこれだった。
「高っっか!!」
だって思ってたより高い場所にいたんだもん…
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「そして二言目には どうやって降りるんですか? ですもんねー。あの時は笑った笑った」
ケラケラと屈託なく笑う霊夢はお茶を啜る。
卓袱台を挟んで座る僕も、霊夢と同じ白い浴衣姿だった。表情は全く逆でむくれていたけど。
「うるさいなぁ…仕方ないだろう。本当に分からなかったんだから」
最初は「浮く」なんて動作自体良くわかっていなかった。捕らえられた宇宙人の如く両手を持たれ地上に着地した僕は、情けなくも腰を抜かしてしまっていた。
本当に忘れたい。今でも思い出すと涙が出てくる…
魔理沙なんか飛んでる最中に会うと毎回
「お、今日は腰抜かしてないのか? 大丈夫か?」
とからかってくる。僕が怒って追いかけようとしても到底追いつけないスピードで振り切られてしまう。
というか音速超えてると思うんだけどなー。前にもすれ違ったら「後から来る音と衝撃波」で吹き飛ばされた事があった。
幸い木の枝にひっかかったからいいものの、一歩間違えれば墜落死してたかもしれなかった事件だ。
まぁ今生きてるからいいけど。
「でも今は制御できるんだからいいじゃないの。何事も慣れよ、慣・れ」
お茶を啜り、片目を空け、僕にそう言ってくる霊夢が僕に空中での動作を教えてくれた。
僕「単体」では空を飛べなかったけど、自転車に跨ってみると、なんと飛べたのだった。すごいぜ愛車。毎日メンテしてた甲斐があったってもんだ!
「魔女が箒に乗るのと同じよ。気分的なものなのよ」
その台詞、魔理沙に言ったらどんな顔をされるだろうか。今度言ってみようかな…やめておこう、マスタースパークで吹っ飛ばされるのがオチだ。
「そんなもんなのかな? まぁ、こうやって飛べるようになって、皆の役に立てて嬉しいけどね」
幻想郷と呼ばれるここに来て1ヶ月、僕は魔法の森の近くに建っていた小屋をきれいにし、そこに住んでいる。
─働かざるもの食うべからず─
昔の偉い人が言った言葉を思い出し、せめてもと、幻想郷に住む皆のために働くことを決めた。
僕の仕事は重い荷物の運搬とか運送とか。いわゆる「男手」が必要な事に協力し、報酬を得ている。
今日も紅魔館の図書館で本の整理を手伝ってきた帰り道に雨に降られたわけで。
ふと、外を見る、雨はまだ止まない。
「…」
「…」
しばしの沈黙。お茶を啜る音と、雨の音だけが響く。
「貴方さ」
先に口を開いたのは霊夢だった。
「仕事帰り、毎回神社に寄るわよね」
「…」
「…なんで?」
僕は答えない。湯飲みを持ちながら外を見続ける。
なぜなら今の自分の顔を見られたくないから。
「…まぁいいわ。とりあえず今晩どうするの?」
雨が降っているから外は暗いままだが、それなりに遅い時間であるのは確かである。
「そうだな。雨は止みそうに無いしな」
「ならうちに泊まってく?」
咽た。ついでに盛大にお茶を畳にこぼしてしまった。
「ちょっと汚いわね!」
「ぐえ、ごほ!だっていきなりそう言われたらびっくりするだろ!」
「えっち」
「ぐあ!」
「へんたい」
「げあ!」
「何変な想像してんのよ。馬鹿アホ鈍感間抜け鈍間」
「ぐっさー! って、え? 今何かちょっと違う単語が聞こえたんだけど」
「気にしないの。とりあえずお布団ひくから手伝って」
「あ、ああ…わかった…」
よっこいしょ、と爺臭く声をかけ立ち上がる僕。
一方、霊夢は座ったままだ。
「霊夢、僕は布団がどこにあるのかとか全然わからないんだけど」
湯飲みを卓袱台に置き、節目がちに霊夢は言った。
「運んで」
「…え?」
「運んで、って言ったの。運ぶのが貴方の仕事でしょ? 私を運んで」
ぽりぽりと頭を掻きつつ、霊夢の横に立ち、一息で霊夢の体を持ち上げる。
「僕は重い荷物を運ぶのが仕事なんだけどな」
「あら嬉しい。私は重くないのね」
お姫様抱っこで抱えあげられた霊夢が、いつもの感じで言う。
「いや、やっぱ重いよ」
僕の言葉に、霊夢が驚き反応する。
「酷い事言うわね。お仕置きが必要かしら」
「違うよ。霊夢の想いが重いんだ」
顔を真っ赤にして言う僕。
きょとんと、目を丸くして見つめる霊夢。
「それ、洒落のつもり?」
「今はこれが僕の精一杯」
二人とも、どちらからともなく、笑う。
「もっと精進することね」
「頑張ります」
「とりあえず、廊下を出たら左ね」
「了解しましたお姫様」
雨は止んでいたけど、そんな些細なことは、僕たちには関係なかった。
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霊夢をお姫様抱っこしたかった。
それだけだ!文句あっか!ウワーン!
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4スレ目 >>169-171(>>152からの続き)
/ i
. ー- 、 i , -, - 、,
!_,.........⊥ ,、 ,、 ,イ!〃 , ='‐ \__ト,__i、_ お待ちください
/! |l T! Tl'lT_-r-、ィ_‐_7´ l l! l! | 霊夢さんと貴方の残り湯を
,ノ-┤ |l、` ` lヽ_lー〈!_,. - ´j _ -, ! なんとか戴けないでしょうか。
{ ‐コ. ____| \`丶!、l  ̄ l /,ィ ´ /
| ´_,`T‐┬‐" \ i、!  ̄ l´ ,ィ ヽ/
「んんっ!?」
「? どうしたの?」
突然怪訝な顔をした僕に、霊夢が尋ねる。
「いや…何か鋼鉄の漢(おとこ)が見えたような気がしたんだけど…気のせいだ、気のせい」
「そ、そう? 疲れてるんじゃない? あまり無理しないようにね」
「ああ、ちゃんと休むさ」
二人して笑いながら僕は霊夢を抱え、霊夢は抱えられ、廊下を歩く。
「あ、そこ。そこの部屋よ」
霊夢が指差した部屋に僕は向かう。もうちょっとだっこしてみたかったなぁとか思っていると、妙な違和感を二人とも感じた。
雨上がりの芝生の香りというか、草が水に浸かった後の匂い。
外の散歩中に嗅いだらそれはそれは気持いいだろうが、ここは神社の中である。ぶっちゃけありえなーい。
僕と霊夢は同時に叫ぶ。
「まさかっ!!」
案の定、霊夢の寝室は雨漏りしていた。
長年修繕をしていなかったせいであろうか、天井から黒い水のシミがいたるところに現れている。
「あちゃー、こりゃひどい…」
とりあえず霊夢を(心惜しいが)降ろし、部屋に入る。
雨はすでに止んでいるためこれ以上の雨漏りの心配はないだろうが…
「ああ!お布団がずぶ濡れじゃないの!」
濡れた畳に足を着けたくないのか、浮遊しながら押入れを開けた霊夢はそう叫んだ。
良く見ると押入れの上からも水が滴り落ちていた。
「こりゃぁ…困ったな…」
「困ったわね…」
二人して、ただ唸るしかなかった。
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「それでだ」
「何?」
「運が良かったわけだ」
「そうね」
「まだ塗れてない布団があったわけだ」
「助かったわ」
「でも一組しかなかったわけだ」
「見れば分かるじゃない」
「んでなんで二人で一緒の布団に入っているんだ」
「さ、明かりを消すわよ」
「なんでもいいから相槌打って!僕コワレチャウ!」
「うるさい」
「ごめんなさい…」
来客用の布団の一番下にあった布団一式が幸いな事に濡れていなかった。
屋根の修繕、布団干しはとりあえず明日やるとして、とりあえず寝ようということになった。
ちなみに僕は最初、毛布だけ貸してもらって寝るつもりだったのだが、
布団を敷いた霊夢がちょいちょいっと手招きするのでほいほい一緒の布団に入ってしまったわけだ。
僕は悪くない。決して悪くない。
「明かり消すわよ」
そう霊夢が言って、明かりが消される。
ごそごそ、と霊夢が布団に入ってくる。
闇夜に目が慣れ、月明かりにうっすら映し出された霊夢の顔が真横にあった。
「静かだな」
「いつもそうよ」
幻想郷の夜は静かだ。
僕のいた街では、絶対に考えられないほどの、静寂。
それこそ、隣の霊夢の呼吸音でさえ聞こえるような、静寂…
突然、もそもそと霊夢が動き、僕の左胸に頭を置いてきた。
「あ、おい、霊夢!」
「…聞いてるの」
「え?」
「聞いてるのよ。貴方の心臓の音を」
「…」
「さっきからずっとこんな感じ。早くて、忙しくて。でも、すごく暖かい音。
一生懸命動いてる音。私は、貴方のこの音が大好き」
以前神社で酒盛りをした時、酒でぶっ潰れて倒れて起きたら霊夢が僕の上で寝ていた、という事があった。
あの時は慌てて霊夢を起こしてしまったけど、その時も、僕の心臓の音を聞いていたのだろうか。
「…霊夢の、心臓の音も聞いてみたい」
言ってしまった。言った瞬間針が飛んでくるか!と思ったが、何も来なかった。ただ、
「…いいわよ」
という霊夢の声が返ってきた。
霊夢が僕の胸から頭を外す。代わりに今度は僕が、霊夢の胸に頭をつける。
─トクン、トクン、トクン─
規則正しい、心臓の音。
人の時を刻む、心臓の音。
そしてなにより
「うん、本当だ。霊夢の音も暖かい」
僕は頭を外し、霊夢と見詰め合う。
お互いに無言で見詰め合う。
障子から透ける月夜に照らされた霊夢は、とてもとても綺麗だった。
霊夢が目を瞑る。僕は霊夢の頭を抱え、枕を外し…
そのまま虚空に向かって投げつけた。
ボフッ!いやんっ!という音と声と共に、誰かが畳に落下する音がする。
無言で霊夢が明かりをつけ、その人物の正体を確認する。
「さて、紫さん。僕は人の趣味をとやかく言う事はあまりしないんですが…
さーすがに犯罪行為を趣味にしている人には注意しないと」
「いやんっ、そんな事言わずに~♪
っていうかいい雰囲気だったじゃないのん。あのまま行っちゃえば良かったのに。ぶちゅ~って。
ああ、今でも遅くは無いわよ~。れっつご~れっつご~♪」
「貴女って人は…」
思わず頭を抱えてしまう僕。とにかく早く帰ってください、と言おうとした瞬間、ものすごい寒気を感じた。
髪が逆立つ、血液が冷える、鳥肌が全身に出る。
恐怖、畏怖、全ての負の感情が僕の背後からしている。
後ろを向くな! 死ぬぞ! 決して振り返るな!
紫さんの表情もみるみるうちに凍っていく。
「…紫…」
「は、はひぃ?」
ゆらり
「…今日という今日は…」
「あ、あの霊夢? 落ち着いて、ね? ね!?」
ゆらり
「…針千本夢想封印八方龍殺陣夢想転生のフルコンボを…」
「これはジョークなのよ! いっつあじょーく! ゆかりんじょーく!」
ゆらり
「…喰らわせてあげるわ…」
「ほらほらぁ、そんな怖い顔しないで。可愛い顔が台無しよっ♪」
ゆらり
「…シネ…」
「別にこの事は誰にも言わないから! あ! 今度美味しいお酒持って来るからそれでってやめて本当に針出さないでいややめてごめんなさ」
その後、スペカ連発で疲れた霊夢はそのまま寝てしまった。
ぼろぼろになった部屋と布団。しかし幸いにも無事だった毛布を拾い上げ、霊夢に掛けてやる。
「…んんっ」
のんきなもんだ。僕は必死にいつ流れ弾が来るかと思って死ぬ思いをしていたのに。
「ん~…だっこ…」
むにゃむにゃと、寝顔のまま微笑みを浮かべ、寝言を言う霊夢だった。
「はいはい、了解しました、お姫様」
僕は霊夢をそっと抱え上げ、柱に寄りかかる。
まだまだ時間はあるんだ。ゆっくり行こう。
そう、霊夢を抱きかかえながら僕は思った。
「あー、お取り込みのところすまんが、紫様はどちらに?」
「そこのボロ布みたいなのが紫さんだったモノですよ」
「あ、これか、また酷いなこりゃ」
「すごかったですよ。そうですね…
,.へ ,' ||ヽ、
.//:::::`ヽ、., _,....、_____ _,.、__ // || / i
| |::ヽ: >''"´ ̄:::::::::`ヽ、;:/7. / / || | |
>..,ゝ'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::<i !/ ..|| Y
くヽ::/::::::::::::-―-/::、__,::::::::::::::`ヽ. ハ.. .|| 〈
/:Li::::::::::::::/ ,!'叨¨ヽ/ `ー-、i::::::', / |.. ||/ ヽ、
/::::::Li__::::::_i ` ー /叨¨).ハ::;:::::i. / | .||\ \
,':::::::::::::i. [__] 〃 ヽ, /:::i:::i:::;:| く /,. _,.-''、 \/´ 陰陽玉をくらえー
i::::i:::::::i::`::i::::i `ヽ.___´ "i_]:::ィi⌒ _,,..-'" iイ'i-- i ハ
|::::|:::::|::::::::|::::ト、. `ニ´ ,.イ:::|:::::| ,、-=''"´ |i i二 i / |
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ヽ::|:::|::::::/|::::|´ \,,,/ ,;|::::| | i┐ \_||// /
ヽ::i::/:::|;;/ヽ、/〈ム,〉ヽ、/::|;;/-─ヾ |_| ||/.ヽ/
ヽ/"ヽ、イ:::::/λヽ、:::::::i /ハノ `─------─''''.|j
/ ヽ i;/ / ヽ、 ヽ、Y:i
_r‐''"´ヽ く___/,ヘ,__ヽ/;;/
,⊂_ヽ /.7'====='"ヽ
!__,.ィ‐i / /:::::/:::::::::::::::::ヽ::::\
`「 / / /:::::/::::::::::::::::::::::::ヽ:::::ヽ、
Y / /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::':;
このくらい」
「うおっまぶしっ」
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やっぱり
ゆかりんは
おちゃめだ
な
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4スレ目 >>411-412
七夕ネタ。
「おーい霊夢ー、永遠亭から来た竹、これで全部かー?(がさがさ)」
「それで全部よー?(ちょきちょき)」
七月七日。七夕の日。
織姫と彦星の逢瀬、その幸福に肖り、ふてぶてしくも願いよ叶えと
笹と短冊にささやかな夢を乗せる日。
「よっし、後は飾りだけだな(折り折り)」
「まったく、どういう風の吹き回しよ、人里の分までなんて(ぺたぺた)」
「いーじゃないか、伝統行事に積極的に貢献するのは巫女さんの勤めだって(ちょきちょき)」
「慧音が言ってた?(折り折り)」
「クレームは本人に頼むぞ(ぺたぺた)」
今、巫女さんとその相方は、その準備に大忙し。
何故引き受けたかと聞けば。
「里の子供たちが『高い竹で飾りたい』なんて言うもんだからな。
慧音さんと二人で永遠亭の人らと交渉した(ぱちん)」
「まーたしち面倒くさい親切心?
それで巻き込まれる人の身にもなれば?(折り折り)」
こんな日に相応しくない、巫女さんの溜息に、相方さんは苦笑。
だが、悪びれもせず。
「んな顔する程嫌なら、断れば良かろ?(かさかさ)」
「それ自体はいいのよ、暇は暇だったし(ちょきちょき)。
それに、竹一本と食事一折貰える事を考えれば、報酬としては充分(ぺたぺた)」
「現金な巫女さんだ(ぺたぺた)」
「悪い?(折り折り)」
正直者の巫女さんに、相方さんは満面の笑み。
「いや―――むしろ惚れ直した(ちょきちょき)」
「あら、ありがと(ぱちん)。―――はい、こっち終わり」
「(がさごそ)こっちも無い。ノルマ達成、だな」
飾りの箱詰めの最中、相方さんがふと気付く。
「あれ?お前、短冊に願い事とかする性質だったか?」
「んーにゃ、寧ろ自分でするなんて似合わなさ過ぎて寒気がするわね」
「あー?んじゃ何で竹貰ったのさ」
「決まってるじゃない」
巫女さんは、にっこり笑顔で、
「七夕には笹と短冊。これ以上の風情は無いわ」
「まーそりゃそうだが」
「それに、ね」
相方さんの隣に立つ。
そのまま、頭半分程上の顔を覗き込み。
「酒で労うには、良い一計じゃない。
ね?―――ご利益無しの神社の為に、汗水流す物好きさん?」
「……素面で言う辺り、つくづく敵わんな」
素敵な笑みを一発披露。
たちまち相方さんの顔は赤ら顔。
だがそのどちらも、笑みは隠さず。
「ま、短冊に書くことが無いのは同じだな」
「へー、男の夢はでっかく高く、じゃなかったっけ」
「いやいや霊夢―――こういうのは、だな」
空の神々が、地上の二人にも気を利かせたか。
照らす月を、雲が過ぎる。
「他人の恋路に便乗なんて、野暮な真似は性に合わない、ってな」
「独り身なら、敗北宣言と紙一重よ?それ」
「うむ、見事に台無しな一言有難う」
「惚れ直した?」
「勿論―――とても素敵な、博麗の巫女さんだ」
寄り添った二つの影が、月影に優しく覆われる。
空に輝く一組、今宵の主役の邪魔にならぬ様にと。
「あれま、見えなくなっちまった―――曇り空」
「いいじゃない、それとも何?空の姫様に浮気?」
「成る程、彦星に『こっちみんな( ゚д゚ )』されてんのな。
「いや、表現選べよ」
「それとも―――」
相方さんは意に介さず。ただ傍らの『地上の星』に首っ丈。
「あんまこっちが綺麗なんで、向こうの姫さんに釘刺されたか?
―――うん、無理ねえなぁ」
「随分と臭い世辞ですこと」
「そう褒めるな、照れる」
「減らない口ね。塞いであげようかしら」
「そりゃ願ったり―――どうだ、こっちも台無しだ」
「勿論ですとも―――台無しすぎて惚れ直しましたわ、旦那様」
「わーお、似合って無ぇ」
「偶には色でもつけて上げようと思いまして」
「泣かせるね」
お隣さんには端から興味無し。
いつもの素敵な笑みは、動じずも僅かな赤ら顔。
「あ、報酬。晩飯どーすんの」
「さくっと取りに行って、上がるとしましょうか」
「そして飲ませて酔わせて―――」
「後は言わぬが花、と」
そんな素敵な巫女さんなのでした。
「……さて皆の集、あの地上版織姫彦星に晩飯を届けに来たわけだが」
「こちとら未だ箸も付けていないのに、お腹一杯なのは如何なものか。
織姫と彦星が空に居る理由が解った気がするぜ……」
「奇遇ね、魔理沙……ハクタクの能力が伝染ったかしら」
「こっちは食べた後だっての……うへぇ、冷たい麦茶が怖い」
お後が宜しい様で。
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4スレ目 >>450
あら、○○じゃない。
こんな御利益のない山奥の神社までご苦労様。出涸らしで良ければどう?
……相変わらず、熱いお茶は飲めないのね。人生の2割くらいは損してるわよ、多分。
別に、ちゃんと食べてるってば。
おかげさまで、修行まがいの五穀断ちとか最近はしてないわよ。
そっちはどうなのよ。慧音がいるでしょうけど、妖怪に畑とか荒らされてない?
ああ、あいつね。気をつけなさいよ、あんなに小さくても、私を食べようとしてたんだから。
……それじゃあ餌付けじゃない。それとも買収? まあいいわ。私だって、人の事言えないし。
こっちにもたまに、『おなかへったー』って来るのよ。来るのはそいつだけじゃないけどね。
……だから、本当にちゃんと食べてるわよ。
一人じゃ食べきれないし、日持ちがするって言ったって限度があるでしょ。
漬物作るのだって限度があるし、面倒だし――あ、今笑ったでしょ。
私らしいってどういうことよ。失礼ね。
そう言えば、そろそろ枝豆の季節よね。茄子とか胡瓜とか。
……宴会は別にいいのよ。みんなにも色々持って来てもらうから。
魔理沙にも変なキノコ貰ってるし。何回か死に掛けたけどね。
だから私は別に大丈夫だってば。
いざとなったら、前みたいに一食二食抜けば、半分くらいの食料で……。
え、朝食? ○○が来ると思わなかったから、山に生ってた梨二つ。……何よその目は。
……まあ、助かってるのは確かだけどね。
そっちこそどうなのよ。自分が食べる分削って、私に分けてるんじゃないでしょうね? ならいいけど。
――もう暗くなってきたし、ご飯作りましょうか。何持って来たか、ちょっと見せてもらうわよ。
あ、それと注いだ分のお茶はちゃんと飲んでね。
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4スレ目 >>456(うpろだ0025)
(※1 『早瀬渡』を見た人なら特に解る話。)
(※2 ファンの方々、気を悪くしたら済みませぬ。)
ただいま―――ってなんだ、起きてたの?
……もしかして、わざわざ待ってたの?
この辛気臭い雨の夜に。日もすっかり変わった時間に?
『お仕事』だから遅くなる、って言ってたじゃない。……はぁ?悪い予感がした?
呆れた。慎ましく甲斐甲斐しいにも程があるわよ。
ん?何よ、んなどっかのもやしより真っ青な顔して。
え?―――あーホントだ、これじゃどっかの吸血鬼より真っ赤。
雨ん中だってのに、結局落ちなかったか。あーもーこれじゃちっとも目出度くないわね。
……大丈夫よ、自前は殆どないから。
へ?頭怪我してる?あーそういえばそうだった。ったたたたた思い出したら痛くなってきた。
あー大丈夫よ、血は止まってるし。手当て?する前に先ずお風呂で洗わないとね。っ痛ー。
あー、でもこの服も駄目ね。結構持った方か。
―――あ、お風呂沸いてるの?有難う、んじゃ入らせてもらうわね。
―――ふー、着替えまで置いててくれたんだ、気が利くわねぇ。
って、何で寝巻きの場所知ってるのよ?―――あ、今朝あなたが詰めたんだっけ。
へ?台所借りてる?―――つくづく甲斐甲斐しいわね、あなたって。
……ん?ああ、もう手当て終わったの?
え、御飯って―――あ、良い匂いねー♪味噌粥?贅沢ね、卵なんて。
食べないのかって?……勿論頂きますとも。……はむっ。むくむく―――むー?
……えーと、何か入れなかった?へ?下ろし生姜と刻み葱?
もしかして、今回もまたボケてますか、私!
ん、あーごめんごめん、こっちの話。
―――ホント参ったわよ、今回は。
山に入った一団が、植えた餓鬼やら何やらの群れに出くわしたらしくてね。
徹底抗戦もあって、もー酷い有様。殆ど後始末だったわ。
最後に、子供攫って逃げた奴が居てね。これがまた良く逃げ存外しぶといのよ。
当然、きっちり潰しといたんだけどね、これが往生際悪くてね―――
―――抱えてた子供に、齧り付きやがった。
こっから面倒事の連続。
人里じゃ手をつけられないだろうから、特急便で永遠亭。
あーあのときの永琳の顔ったら珍しかったわねー。つい笑っちゃったわ。
蓬莱人も怖いものってあるのね。引っくり返った弟子抱えて人を化け物扱い。
全くどいつもこいつも、人を何だと思ってるのやら。
取り敢えず一喝して解らせて、子供を見せようと思ったんだけど―――止めた。
だって、もう血が一滴も流れてこなかったのよ。
ちっとも冷たくなかったのに―――って、そういえば雨でびしょ濡れだったか。
あとは包む布だけ貰って、人里に戻った。
慧音から家を聞いて、その子の家に行ったら―――いきなり石を投げられた。
あー痛かった。拳大くらいあった。しかも結構投げられた。
しかも悉くナイスコントロールで頭。いい腕してたわねー。
面倒だったんで構わず近づいたら、途端泣いて謝られた。
これがまた化け物と勘違いしてたんだとか。あーもーどいつもこいつも鳥目なんだから。
手当てくらいは、って止められたけど、もーかったるくて寝るのが先だったわ。
で、振り切って帰って、今こうやって美味しい月見味噌粥に有りついている訳。
いやーこの染み入るような味。残り物の味噌汁と冷や飯が化けたとは思えないわ。
ん、どーしたのよ、さっきから黙って?ひょっとして眠い?
朝からずーっと起きてたんだから無理な
(―――ぼふっ)
きゃっ?何よ一体、粥零したら勿体無いじゃない!?
あーもー鬱陶しい、離せ離―――
って。
―――馬鹿、なんであなたが泣く必要があるのよ。
―――ん、そーね、凄く辛かった。
知り合いからも変な顔されるわ、人様には石投げられるわ、化け物に間違われるわ、もー散々。
正直、こっちが泣きたいわよ。
……御免ね。嫌な愚痴聞かせちゃって。
ん?ああ、何時もは魔理沙が相手してくれてるのよ。あいつ、こういう時間が良くってねー。
でもあいつ変に合わせて妙なこと言うから、しょっちゅう喧嘩気味になるのよね。
考えれば、これだけして貰ってるのに、こっちもこっちで酷い仕打ちね。
あいつも『おあいこ』って言うんだろうけど。態度で。ったくあの天邪鬼め。
その点あなたは言うこと無し―――今のあなただけ見たら、紅魔館の狗より便利そうね。
うん、本当に有難うね?
やっぱり早く帰って正解だったわ。手当てもお風呂も御飯も完璧。申し分無し。
あー、この為に生きてる、って感じ―――ってこらこら泣くな愚図るな鼻水垂れて来るから。
あーもー解ったわよ、湿っぽいのも腹も食欲の減る話は無し!だから泣くなー!
……ふー、落ち着いた?そ、一杯のお茶は心のゆとりよ。
あーもぉ、良い歳こいた男が、子供みたいに。私ゃお母さんかっ。
まったくそのうちホントにおかーさんおかーさん言いそ―――ぉ
―――こども、みたい、っに、あの、こみた、いにっ、―――っく―――ん
ぉかーさ、んって―――うめ―――ぃて―――
っあ?ん―――っごめ、もぉ―――だめ――――げんか―――――
ぅあ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
……っはー、すっきりしたー。
やっぱ溜め込むのはよくないわねー。
でも本当に御免なさいね、お粥も結局冷めちゃったし―――はむ。
むぐむぐ―――まだ塩っぽいし。
はぁー?なら食べるな?
馬鹿言いなさんな。出された物はちゃんと食べる。でないと地獄行きよ?
大体、あなたがわざわざ用意してくれたんだし―――ね?
んー、大変ご馳走様で御座いました。幸せー。
んー?ああ、流石にもう眠い?
んじゃ、どーぞお休みなさいな―――は?寝ないのかって?ええ寝るわよ?一緒に。
何よ、そのいきなりな後退っぷり。畳痛むから止めてよね。
だって新しく布団敷くの面倒じゃないの。私もひと心地付いて眠いし。
あー、ひょっとして……眠くなくなっちゃったり?
わー茹蛸。可愛いーんだ。
いいじゃないの、傍に居てくれても。
別にとって食うなんてしないでしょ?
―――ん、素直で宜しい。
あー腕枕暖かいなー。でも昼間になると暑いかも。
ならやるなって?ふふん――――――だ が 断 る 。
何だか変だって?らしくない?気にしなさんな役得役得―――ふぁ~ねむ~……
ほんとつかれたわ~……お休みなさ~ぃ……
……んう……ちゃ~んと、暖かいなぁ……うん……
……あ、そーだぁ……
……別に良いのよぉ?……取って食っても……
むしろ……食べられないようにねぇー……んふふふふふぅ……
……うん、決めた―――冷めた塩っぽい粥の口直し。
煩いわね―――拒否権無ーし。博麗の巫女に逆らえると思うな~~~~~?
―――んっ――――――っふぁ、……んー……ほんのり……塩味……。
あと、さっきのお茶の味。
本当、言うこと無し。
お返し、しなくちゃね―――――――――
(省略されました。全てを読むには NO.890 時間無制限夢想転生 を習得してください)
――――――――――――――数刻後、昼時。
――――――――――ちんちんちんちんちん♪
「破廉恥な雀だぜ(めきゃっ)」
ちーーーーーーーーん――――――――――――
「おーい霊夢ー起きてるかー?(すぱーんッ)
―――ありゃ、またか。
こーらとっくにお天道様も上がったぞー☆(がばぁ)
何処ぞの妖…怪…………か……(硬直)」
「…………暑い!」
「……そりゃ、そうだろうぜ(赤面)」
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4スレ目 >>487
――初夏、博麗神社。
――しゃく。しゃく。
「美味いな。これ」
「○○が持ってきたんじゃない」
「まあ、そうなんだけどさ」
只今、霊夢と一緒に一足早い夏を満喫中。
旬には少々早いが、色よく丸々と育った西瓜を縁側で頬張る。
これをくれた慧音さんと、程よく冷やしてくれたチルノに感謝。
――しゃく。しゃく。ぷっ。
「これに塩ってどうよ?」
「邪道ね」
「俺もそう思う」
いや、確かに美味いけどさ。
やっぱり生で戴くのがいいと思うわけよ。俺は。
――しゃく。しゃく。
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
「……何故に霊夢がそれを言うかね」
「あら。切ったのは私よ」
なら、料理したのは私って事でしょ? という謎の理論を展開。
まあ、こんな突飛な発言もいつもの事なので、俺もそれ以上何も言う事は無い。
そして、十数分後。
――こてん。
何をするでもなくただ座っていた俺の右肩に、心地いい重さといい匂い。
この状況では誰か確かめるまでも無い。
……珍しい事もあるもんだ。
「……重くない?」
「重くはないけど、あんまり長くは勘弁な。腕が痺れる」
「ん、じゃあもう少しだけ……」
そう言って霊夢は安らかに目を閉じた。
……少しってどれ位なんだろうか?
そして予想通り、数分も経たずに俺の横から静かな寝息が聞こえてくる。
軽く声をかけたが反応が無い。どうやら腹が膨れて眠ってしまったらしい。
「…………」
そんな霊夢を横目にしながら軽く嘆息。
かといって、寝たばかりの彼女を起こすのも忍びない。
今日はそんなに暑くもないし、暫くはこのままでいるとしよう……。
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最終更新:2011年03月27日 22:07