霊夢17



11スレ目>>528


 ○○がそれを見てはじめに思ったことは、そんなんじゃ寒くないのかなぁ程度の事だった。


 イエスだかノーだか知らない人の誕生日にかこつけて色々とお祝いをする日。俗に言うクリスマス。
 ここ幻想郷でも決してそれは例外ではなく、いつもよりかは割かし盛大な宴会が催された。博麗神社で。
 だが平素と違ったのはあくまで規模だけだったらしく、客たちは会が終わるなりいつものようにさっさと帰ってしまった。
 薄情だと言っている暇も無い。

 そしていつも通り○○は片付けを一人で終え、洗い物で冷えた手を温めようと居間に来た時にそれを見つけた。
 即ち、畳の上でぐでーっと寝転がっている霊夢の姿を。


「霊夢ー?」

 些か心配になって呼びかけてみる。が、返事は無い。
 顔を覗き込んでみるとすやすやと息を立てて眠っているようだった。後、若干お酒臭かった。
 どうやら酔いつぶれて眠ってしまっているようだ。

「また、呑みすぎちゃったのかな」

 僅かな期待と八割ぐらいの諦めを胸に、ゆさゆさと肩をゆすって声をかけてみる。
 これで霊夢が起きたのなら明日は槍でも降るだろうと○○は思った。割と本気で。

「霊夢ー、こんな所で寝てると風邪引くよー?」

 が、○○の予想通り起きる気配は無い。
 なので今度は頬をぺちぺちと張ってみる。
 ○○は結構大胆だった。

「霊夢ー?」

 それでもやはり霊夢は起きようとしない。
 仕方がないので○○は断念して、ここでこのまま寝かせてあげることにした。

 寝室から布団を持ってきて被せる。
 そういえば昨日はやたらと萃香たちに絡まれてたなあ、と○○は思い出しながら同情した。
 宴会の席での天狗や鬼は怖いものである。
 出来れば回避、それが出来ないならせめて飲む量をセーブくらいはしたいものだ。無理だろうけど。
 溜息が自然と出た。

「んー」

 霊夢がゴロリと寝返りを打った。
 その声や様子からして、体調は一概には良い状態にあるとは言えないようだ。

 仕方あるまい。
 霊夢たちは酒をよくアルコールを摂取する方だとは言ってもその体はまだ発展途上(内部環境的な意味で)。
 ○○ほどに成熟しているわけでもなければ、妖怪のように特別身体的に発達しているわけではない。
 よって宴会の後も無事でいられるのは○○だけということが殆どだ。

 だから○○は自分から進んで宴会の片付けも請け負うし、またそれが当然だと思っている。
 出来ることは出来る人がやるのが一番だ。
 だからこそ○○も霊夢に頼っている部分がある。
 しかしこうして思い返してみると明らかに○○が日常生活の中で担っている部分の方が多いのだが、それを気にしないのが○○の人となりとも言えた。


「うー」

 霊夢がまたひとつ唸る。
 何も知らない人が見たら、その姿はちょっと気分の悪そうな年相応の少女にしか見えないだろう。
 実際、○○の目にもそう映っていた。


 でも、霊夢は違った。
 一人で、ずっと、我慢して過ごしていた。少なくとも一年程前までは。

 その事に○○が気付いてからは、霊夢も徐々に○○を頼るようになっていった。
 それは○○にとっても嬉しいことだったし、霊夢もそれ以前よりは幾らか明るくなった気がする。
 そうやって過ごしていくうちに霊夢のそういった一面はあまり意識しないようになっていった。

 しかし○○は偶にこうやって思い出すことがあった。
 霊夢の、その小さな体に秘められた強さというものを。

 そして、自覚することが、あった。


「…………」


 ○○は霊夢の傍に座り込んだ。
 寝相の所為でずれかかっている布団を掛けなおし、改めてその体に目を向ける。
 小さな、体だった。


 そして霊夢の頭をスッと持ち上げ、自分の膝の上に乗せた。
 その際、黒い艶やかな髪が手に触れた。

 その髪を手にとってみる。
 髪はさらさらと手から零れ落ちた。

 何度か繰り返す。
 綺麗だな、と○○は思った。

 そんな事を繰り返すうちに、主に疲労が原因で○○の意識は闇へと落ちていった。














 霊夢が目を開けるとすぐ前に誰かの顔が超どアップで映っていたので、声にならない悲鳴と共にとりあえず夢想封印を叩き込んだ。

 放たれた光球は狙いを外すことなく全て目の前の人物へと飛んで行き、その人物は障子を突き破って外へと吹き飛んだ。距離にして約10m。
 その人物が○○であると霊夢が認識したのは、それから数秒後の事だった。


「あいったたたたた……霊夢?」

 頭を抱えながら○○が起き上がる。
 というかあれだけの攻撃を受けておいて「痛い」で済む辺り、○○もどんどん人間離れしてきていると言える。
 慣れだろうか。

 ○○の一声で霊夢は我に返った。

「あ、うん、私、霊夢」

 まだ動揺しているのか、霊夢の言葉は途切れ途切れで意味不明瞭だった。

「ごめんね、驚いた?」
「そりゃ、まあ」
「どうも寝ちゃってたみたいだ」

 ははは、と苦笑を浮かべながら体に付いた汚れを手で払いながら○○は家の中に戻ってくる。
 ○○に怪我がなかった事にほっとしつつ、霊夢は先程から気になっている事があった。
 ぶち破ってしまった障子の修理も気になるが、それはひとまず置いておくことにする。


「あの、○○」
「ん、晩ご飯ならまだ作ってないから待ってて」
「ああ、そう。――――じゃなくて」

 危うく流されかけるところだった。
 霊夢は霊夢でマイペースな所はあるのだが、○○のそれは霊夢を遥かに超越するものなので気を付けていないといけない辺りが手強かったりした。
 咳払いなどして気分を改めながら、霊夢は○○に問うた。

「何で膝枕なんかしてたのよ」


 台所に行きかけていた○○の足がピタリと止まり、霊夢の方に向き直った。
 その時霊夢が見た○○の表情は何とも言えないもので、そこから何かしらの感情を読み取ることは困難を極めた。

 しばらくお互いに何も言わない時間が過ぎる。
 相変わらず○○は微妙な表情をしたままで、霊夢は炬燵に入ってないのでいい加減体が冷えてきた。
 やっとのことで○○が口を開いたのは、霊夢がもう炬燵に入っちゃおうかしらなどと考えた時の事だった。


「霊夢」
「ん」


 少し、表情が分かりやすいものになった。
 そこから垣間見えた感情は、労り。




「――――晩ご飯、宴会の残りでもいいかな?」




「……ええ、構わないわ」


 言いたくないことがあるならそれでいいだろう。
 無理に聞きだす必要もないし、またそんな事をする気も起こらなかった。

 炬燵に足を入れて天板に顔を乗っける。
 ひんやりと冷たい感触が霊夢の頬に返ってきた。
 やっぱり枕にするなら○○にしてもらおうか、と霊夢は思った。




 やがて、○○がいくつかの料理を持って帰ってきた。
 残り物と言えど、盛大な宴会の後だったのでそのメニューは中々に豪華だった。

「もう調子は大丈夫?」
「万全とは言えないわね。あー、あの二人め、無理やり飲ませるんだから」

 体の不調を訴えつつも、ひょいひょいと料理を口に運ぶ霊夢。
 どうやら腹はどんな状態であっても減るものらしい。
 ○○はそんな霊夢の姿を微笑みながら見ていた。

「あ、そうだ。霊夢」
「んー?」

 何か思い出したように○○が上を向いた。
 霊夢は口をもごもごさせながら声だけ返して、もう箸は次の獲物に伸びていた。


「メリークリスマス」


 霊夢の箸の動きが止まった。
 幾分呆気に取られながら霊夢は○○の方へ視線を向ける。
 そこには相変わらずにこにこと笑みを浮かべる○○の姿があった。
 やがて霊夢も顔を弛緩させて。


「ええ、メリークリスマスね」


 こんなクリスマスも悪くないかな、と思った。
















 夕餉後のおまけとか


「ご馳走様」
「まあ僕が作ったわけじゃないけど、お粗末様」
「で、○○」
「うん?」
「私はまだプレゼントを貰ってないわ」
「僕もあげた覚えが無いな」
「まだ今日中なら受け付けてるわよ」
「それは良かった。もう受理してもらえないかと思ったよ」
「え、あるの?」
「自分から催促しておいて何言ってるかな。
 (ガサゴソ)はい」
「……何、これ」
「ストール」
「って何かしら」
「肩に掛けて使うんだよ。ほら、霊夢見るからに寒そうだからさ」
「こんなもの、何処に売ってたの?」
「作ったんだよ、無かったからさ」
「え」
「うわ、何その意外そうな顔」
「だって、そんなの見かけたこと無い」
「そりゃ気付かれないようにやってたしね」
「何でよ?」
「ばれちゃ面白くないだろ? 善行は気付かれないようにやれってね」
「ふーん……ありがと」
「どういたしまして」
「………」
「………」
「何も言わないのね」
「言って欲しいかい?」
「意地悪」
「霊夢ほどじゃないな」
「どうだかね。
 ま、私はあなたの思っている通り何も用意してないわけで」
「言わなくてもいいのに」
「うっさい。こっちにも面子があんのよ」
「はいはい、それで?」
「だからあなたが何か私に要求があったら聞いてあげる券を今ここで発行します。今日限定で」
「聞くだけ?」
「場合によっては履行も可」
「随分と限定的だね」
「いちいち水を差さない。で、どうするの?」
「うーん……特に思いつかないし、いいや」
「何それ」
「いやぁ、してもらいたい事はいつもやってもらってるから満足だし」
「それじゃあ私の立場ってもんが無いのよ。
 いいから言いなさい。言うの。言え」
「最早脅迫だね」
「あーもー、埒が明かない!
 こうなったら私がしたいと思う事をしまーす」
「主旨変わってない?」
「あんたが悪いのよ、何も言い出さないから。
 ほら、こっち」
「全く強引だなぁ。
 っと――――――んぅ」



「――――――――っは」
「…………………」
「…………………何よ」
「照れるくらいならやらなきゃいいのに」
「うるっさい!大体なんであんたはそんなに平気なのよ!
 あー、何か腹立ってきた!もう今夜は寝かせてあげないんだからね!!」
「何気に爆弾発言だね」



 そんな聖夜の一日後。

───────────────────────────────────────────────────────────

10スレ目>>366


「愛してる」
会話が途切れた時、物は試しと言ってみた。
「そう。ありがと」
彼女は素っ気ない返事をよこしてからさっさと席を外してしまった。
あっさり躱されたなぁ。
なにか面白くなくて、話し相手もいないので手持ち無沙汰に湯飲みを啜った。

お待たせと声がかかり、ぼーっとしていた僕のすぐ隣に彼女が腰を下ろす。
「あのさ――」
――さっきのは冗談なんだけど。
「何?」
いつもより嬉しそうに湯飲みを覗き込む顔に、続きを言い出せなくなる。
彼女はまごつく僕を見て柔らかく微笑んだ。
「冗談でもね、言われると嬉しい言葉ってあるのよ」
「そうかな」
「そうなの」
とん、と肩に寄せられた僅かな重みと赤いリボン。
なんだか無性に恥ずかしくなってきて、逃げ場も失った僕は遠くに広がる自然の彩りに集中した。

きっと夜になっても終わらない、神社の紅葉観賞会。
辺りの木々は朱に染まり、日々近づいてくる冬の足音。
触れ合う肩から伝わってくる温もりに、僕は大きな欠伸をした。

───────────────────────────────────────────────────────────

11スレ目>>915


○○:僕。人間。怠け癖全開の人。イチャつくよりは一緒にゴロ寝。
   甲斐性? きっとそれなりには。
   霊夢の一応旦那様。
霊夢:ご存じ博麗の巫女。紅白。腋がたまらん。
   怒ると おんみょうだま が さくれつ するぞ!
   ○○の一応嫁。






「嗚呼……炬燵が温い。しあわせ♪」

 博麗神社の一室。
 "博麗神社の眠れるナマケモノ"こと僕は、炬燵に潜りこんでその温かさを噛み締めていた。
 本当なら料理の仕込みとか、やらなくちゃいけないんだけど、
 手早くしてしまえば本当に数分で仕上がってしまうのだ。

 ……ズボラ料理? 上等じゃないか。
 お腹が膨れればいいんだよ、膨れれば。

 そういう理由から、僕はギリギリまで炬燵から動くつもりはない。
 そんな言い訳(?)を考えているうちに、縁側に続く戸が開いた。


「……またここにいたのね、○○。
 台所にいないからもしやと思ったら……」
「やあ、霊夢」
「やあ、じゃないでしょう、やあ、じゃ。
 貴方にも仕事を与えているのだから、ちゃんとして貰わないと」

 ――追い出すわよ?
 と視線で語られる。言葉にされるよりもちょっと怖い。


「まき割りも済んだし、里への買出しも終わってるよ。ご心配なくー」
「……ご飯は?」
「ちゃっちゃと作る予定。それよりも霊夢も炬燵で温まらないかい?
 そんな格好じゃ寒いだろう」

 冬の真っ盛り、雪だって積もっているにも関わらず、彼女はいつも同じ格好のままだった。
 去年、見ている方が寒いと僕がプレゼントしたマフラーはきっちりとまいていたけど。

「あんたね……」
「ほらほらー、あたたかいよー? ぬくぬくだよー?」

 ぽふぽふと自分のスペースの隣を叩いて誘う。

「……仕方ないわね。しばらく付き合ってあげるけど、それが終わったら○○もちゃんと仕事しなさいよ?」
「了解ー」

 やれやれ、とジェスチャーまじりに霊夢は溜息一つ。
 すたすたと僕の真向いに座る。

「なっ……」
「ど、どうしたの?」

「霊夢が、隣に座ってくれない……」
「はい?」

「仮にも僕は、君の旦那様なのにっ」
「……」

「嗚呼、これが噂に聞く倦怠期ってやつか! ……よよよ」
「違うわよっ! ……ただ、ちょっと、恥ずかしくて」

 顔を赤くしてそこだけは否定する霊夢。
 大袈裟に拗ねてみただけなんだけど、まさか本気で対応されるとは。

「恥じらうことなんてないじゃないか。僕達は曲がりなりにも夫婦だよ?
 そっちから来てくれないなら……」
「何?」

「こっちからいくまでさ! 必殺、トンネルドライブ!」

 炬燵の中へ体を潜らせ、一気に向こう側へと突き進む。
 布団を突き破った先は、霊夢の真横。
 驚きと呆れの混じった表情を眺めつつ、彼女の身体を捕える。


「捕まえたー」
「ちょっ……あんたドコ触ってんのよ! 離しなさい!」
「嫌♪」

 顔を真っ赤に染めながら抵抗する霊夢。
 それがかえって嗜虐心を煽ることに彼女は気づいていないのだろうか。

「ここか、ここがええのんかー」
「あっ、ちょっとそこはだめだってば! ……んっ」
「ふふふ」
「いい加減に……ふぁっ……しなさ、いよ……」

 そろそろ止めないと霊夢が怒りだしそうだ。ぴくぴくしてるし。
 霊夢をいじっていた手をぱっと放す。

「……○○、あんたね……」

 息をちょっと荒くしながら拳を震わせる霊夢。
 そんな姿さえも僕にとっては愛おしく見える。
 恐らくそのまま放っておけば放たれるであろう鉄拳ごと、彼女を抱きしめた。

「っ!?」

 僕の突然の行動の連続にとうとう対応仕切れなくなったのか、彼女は緊張した猫のように身体を固くする。

「れいむー?」
「……な……何よ」
「いつも御苦労様です」

 えらいえらい、と彼女の頭を優しく撫でる。指も使ってさらさらと髪の感触を楽しむ。
 あまり抵抗しないのは緊張してるから、かな?

「でもね、最近色々と頑張り過ぎだと思うんだ。たまにはこうやって休まないと、ね?」

 彼女はこの幻想郷を守る博麗大結界を管理している。
 それだけでも大変だと思うのに、連日のように妖怪退治したり、神様にケンカ売ったり、宴会開いたり。
 そうやって頑張る姿が好きだからこそ、一緒になっているのだけれど……
 たまに疲れた顔をしているのを見て、それを僕に気付かせまいとしているのを知って……黙っているほど野暮じゃない。

「○、○……」

 先程いじり倒したせいか、それとも別の理由からか、彼女の眼尻にはうっすらと涙が浮かんでいた。
 それを指先で拭いつつ、言葉を続ける。

「せめて今だけは、他の事を忘れて。僕だけを見て、僕の事だけを考えて」

 今までやってきたこと、今もしていること。
 偉業とも呼べる数々を成し遂げたくせに、硝子のように細い体をそっと抱き締めて。
 精一杯の口付けを交わす。

「っ、んぅ……ぷは……○○……」

 拙いながらも必死に応えてくれる霊夢。
 この一時が永遠に続けばいいのに。






「……続きはベッドで……と、霊夢?」

 長いキスも終わり、しばらく抱き締め合っている内に、霊夢は腕の中で眠ってしまっていた。
 そろそろ晩御飯の支度にかからないといけないのだけれど、
 炬燵の中な上に服の裾を彼女に掴まれている。

(……起こすのは、無粋だよね)

 そっと霊夢の髪を指で梳きながら、安心しきった寝顔を眺める。

(晩御飯は……一緒に作れば、いいか)


 きっと僕一人では彼女の足元にも及ばない。仕事の手伝いなんて以ての外だろう。
 でも、心の負担くらいは、受け入れてあげたい。
 彼女には、笑っている顔が、よく似合うのだから。
 いつ彼女がここへ帰ってきてもいいように、笑顔でいられるように。
 僕はここで出来ることしようかな、と思った。


「これからもずっと、一緒にいようね、霊夢」

───────────────────────────────────────────────────────────

12スレ目>>22


「ねぇ、○○」

「何?」

「……なんでもない」






















 誰かから聞いた事がある。
 雨は誰かの代わりで泣いているからあんなに冷たいのだと。
 そうだとしたら今降っている雨は誰の代わりに泣いているのだろう。







 さわさわと縁側で囁く雨。朝からずっとこの調子だ。
 昨日はからからに晴れて冬とは思えないくらい暖かかったのに。
 今は少し着込まないと寒いくらいだ。


 こたつの上に置いてあるみかんの入れ物に手を伸ばして中の一つを手元に持ってくる。
 橙の皮を向くと、特有の柑橘の匂いがした。
 お昼を食べたとはいえ、やはりこたつにみかんは付き物である。そう一人で考えて皮を向いていく。

 だるそうに背中を丸めてみかんの皮を向く俺とは対照的に、正座をしてこたつに入ってくる彼女。
 食器洗いが終わったのだろう。ふぅとため息をついてお茶を淹れるように指示してくる。

 言われた通りに彼女のお気に入りの湯のみにお茶を注ぐ。香りと共に湯気が立つ。


「よく降るわねぇ、洗濯物が出来ないわ」

 少し熱いのだろう、ちびりちびりと飲みながら霊夢はお茶を啜っている。
 こたつに入っている俺の横で、同じくこたつに入りながら彼女はぼんやりと外を見ている。
 俺とは反対方向の縁側を、どこか鬱陶しそうに。

 俺はみかんを食べ続けながら、霊夢に言葉を返す。

「まぁ仕方ないんじゃないのか? 降る時は降る」

 何処か適当に返事をしながらお茶を飲む霊夢を見る。




 夜の闇のような髪。動きに合わせながら肩からさらりと零れていく。

 真っ白い肌に少し赤味が差した頬。少女特有の、いや、女の子特有の柔らかい輪郭。

 何処か切なげに影を落とす長い睫。俺とは全然違う、生き物。




 どちらも喋らない。外から降る雨の音が部屋を満たしていく。
 雨と縁側を背景に見る霊夢は何処となく儚い気がして、思わず視線を逸らした。
 なんとなく、雰囲気がいつもと違う。雨のせいか。
 それとも、この沈黙のせいだろうか。よくわからない。

 鼓動が、早い。けれど、嫌なものじゃない。

 それでもなんとなく癪だったのでみかんを一気に口に放り込む。
 甘いような酸味が口に広がる。いつも食べるみかんより少し酸っぱい気もする。







「ねぇ、○○」



 ふいに霊夢が呼びかける。か細い声。
 少しビックリしてしまって、咀嚼しかけたみかんが変なところに入りそうになる。
 なんとか胃に押し込んで返事をした。



「何?」
















 唇に柔らかい感触。閉じた瞼。長い睫。

 さらりとした髪が俺の頬に触れる。

 不自然なほど近い距離で、瞼を閉じた綺麗な顔が見える。





 ふわりと漂う、霊夢の、匂い。


























 ゆっくり彼女が離れる。ほんの少しだけ紅潮した頬と、潤んだ瞳。

 小さい、声で。それこそ聞き取れないような声で。





「……なんでもない」



 そう言うと、飲んでいた湯のみも放っておいて何処かへと姿を消してしまった。


















 少し急いたような彼女の足音はもう聞こえない。

 時間が、止まっている。部屋を包む雨の音が少し大きくなった気がする。


 なんなんだ。よくわからない。どうして。

 ぐるぐると自問自答しながら、ゆっくりと自分の唇に触れる。
 先ほどとは全然違う感触。全てが違う。







 身体が熱くなった。指ではない、柔らかな感触を思い出す。
 霊夢のふんわりとした仕草、風のように目の前に来て。






 キス、された。そう思う。

 初めてだ。生まれて初めて。




 それこそ、身体が熱くなるような感じも。初めてだった。




















 紅白の衣装を着た彼女の家に住み始めたのはもう随分前の事。
 それまではお互い何も意識はしてないし、むしろ他人のように接していたつもりだった。

 外の世界から来た俺に特に興味を示す訳でもなく、ただ住処を与えてくれた。

 衣食住には困らなかったし、俺も霊夢に干渉するつもりもなかった。



 数日前、新しい家が決まった俺に、やっぱり特に何も聞かずに良かったわねと声をかけてきた。






 引越しまでまだある。だから今日も特になにもしないで二人でこたつに入っていた。


























「なんなんだよ…、一体…」

 誤魔化すように自分の頭を掻く。
 霊夢と全然違う、少し固い髪。







 彼女を思い出している自分に気付いて、見惚れていた理由も、何処となく速い鼓動も、いつも感じる安心感も、納得がいって。

 あぁ、そうか、と一人で呟いた。


















 しばらく、引越しを見送ろう。そして霊夢に聞こう。色々。

 誰よりも不器用な彼女は表に出せないだけで、誰よりも寂しかったのかもしれない。




 彼女の部屋の前にきて、すすり泣く声が聞こえた時、そう思った。


















 今日の雨は、一段と冷たかった。さわさわと音を立てて、幻想郷を濡らしていた。













































end.
───────────────────────────────────────────────────────────

12スレ目>>64


「ねぇ○○、抱きついてもいい?」


昼飯も食べ終えて何をするわけでもなく居間で炬燵に入りながらボーっとしていた俺に霊夢が突然聞いてきた


「何だよ突然」

「いいじゃない、ね?いいでしょ?」

「ああ、いいよ」

ギュゥ

「……んん、○○の匂いがする
 昔どこかで嗅いだことがあるような匂いでそれで安心する匂いがする…」


霊夢が俺の首に手を回し抱きついてくる 
それと同時に女の子特有の甘い香りが鼻腔の奥にまで漂ってきた


「○○が居てくれるなら私は他の何もいらない
 だから…だからずっと一緒に居て」

「ああ、約束だ俺は霊夢と一緒にいるよ」

「嬉しい……」


最近の霊夢はよく俺に甘えたがる
まるで甘えることで自分がここにいることを確認するかのように





霊夢は弱くなった、それは力の方ではなくて心のほうがだ
誰も深く干渉させなかった霊夢が俺という存在を引き入れた結果
心にスキマが出来てしまったからだ
それは博麗の巫女としては駄目なことかもしれない
紫にも


『貴方といれば霊夢は弱くなる、それは幻想郷にとっては害以外のなんでもないわ』


と言われた
でも、それでも俺はそれがいくら悪いことでも


『お願い…お願いだから私と一緒にいて、○○が一緒なら私は頑張れるから』


俺に縋り付いて泣きながら告白する霊夢を突き放すことなんて出来なかった
だから、だから俺は強くなると決意した
霊夢が弱くなったのなら代わりに俺が強くなればいい
どこまで出来るかわからないけどそれでも俺は霊夢の為ならどんなことでもしてみせる


ガバッ

「なにボーッしてるの?」

「ああ、霊夢のことを考えてたんだよ」


思案していると突然霊夢に押し倒された
考え事をしてたため俺の体はろくな抵抗を出来ず畳の上に転がった


「そうなんだ…嬉しい」

「霊夢は何考えてたんだ?」

「そんなの勿論○○のことに決まってるじゃない」

「そっか」

「ねえ、それより……しよ?」

「おいおい、昼間からか?」

「○○と愛し合うのに時間と場所なんて選ぶ必要なんて無いわよ」

「せめて場所は選んでくれ…」 


求められるのは嬉しいけどいつか宴会の途中で求めてきそうで怖いな…
どっちにしろ俺には霊夢を拒むことなんてできはしない
それに俺だって霊夢と愛し合うのは好きだ


「いいよ、霊夢、しよっか」

「うん、愛してるわよ○○……ん…たくさん、しよ?」

「ああ、俺も愛してる」

そして俺たちは今日も愛し合う
これが罪だと言うのなら受け入れよう
霊夢と一緒なら地獄に堕ちるのも悪くない

───────────────────────────────────────────────────────────

12スレ目>>77


寒空の下、お茶を飲みながら縁側に腰掛けて・・・寒い。

「なぁ、霊夢」
そこにいた紅白の人物に語りかけてみた。

「何よ」
お決まりの台詞だな。だがそれがいい。
だから俺は、その素っ気無い態度を崩したくなったんだな。うん。

「好きだ」
そう、一言だけ告げた

「・・・」

あれ?やばい俺滑っt
穴があったら入りたい。

沈黙は続く。逃げちゃダメだッ!

「あの・・・霊夢・・・さん?」

「・・・なによ」

返答が変わってない。怖い。俺、どうする。
そこで思考がストップした。

唇になんだか暖かい感触がしたが、一瞬だけだった。

「・・・私も」

「それだけじゃ判らん。ちゃんとした文章で頼む。」

俺はもちろん判った上で、そう言った。

「・・・何よ。意地悪」

俺もそう思う。だから俺は行動で示すことにした。

「霊夢。これからも、よろしくな。」

そう言って、今度は自分から、深く、口付けた。

───────────────────────────────────────────────────────────

10スレ目>>536


ホーホーホー
「いい夜ね、こんな夜は静かにお酒を飲むに限るわ
 藍、貴女も飲むでしょ?」
「はい、ご相伴に預かります」
ホーホーホー
「宴会の席で飲む騒がしいお酒もいいけどこうして静かに飲むお酒もまた格別ね」
「そうですね、紫様」
「今はこの静かな酒宴を楽しみまsy「うわあぁぁーーーん!!ゆがりぃーーー!!」……短い酒宴だったわね」
「……そうですね」

「どうしたのよ霊夢、こんな夜分遅くに」
「うぅ…ひっく、うえぇ、○○が」
「○○がどうかしたの?」
「きょ、今日初めて○○とすることになってそれで、その……」
「なに?はっきり言ってくれないと分からないわよ、なにか変な性癖でもあった?それともイ○ポ?」
「違うわよ!!ちょっと…色々あっただけよ」

~時を戻すこと一時間前~

「……霊夢、いいか?」
「わ、私は○○となら……」
「ありがと」
チュッ
「んぅ……はぁっ!……はぁはぁ」
「もしかして霊夢、キスするの初めて?」
「○○以外にされたくないわよ」
(やべっ、興奮してきた)「じゃあそっちの方も」
「そ、そうよ、初めてよ、だからちょっと不安で……」
「そっか、大丈夫、俺も初めてみたいなものだし」
「……初めてみたいなもの?じゃあ○○は私以外の女の人とやったことあるんだ」
「え?あ、その……他の女性とはやったことあるような無いような……」
「こぉんの浮気者!!!」
神霊 夢想封印
「うぎゃー筋肉マーン!!」

~そして時間は現在に~

「と、言うわけなのよ、酷いと思わない?」
「……あのね、霊夢、○○も男性なんだから女性経験の一つや二つはあるわよ」
「でも!」
「デモもストもないわよ、いいじゃない、リードしてもらえるんだし
 第一今は霊夢が○○の恋人なのよ、○○が経験あってもそれは過去の女
 別に浮気してるわけじゃないんだしいいじゃない」
「……それも、そうだけど」
「それに霊夢貴方○○に夢想封印してそのままほったらかしでしょ?
 帰らなくていいの?」
「あ!!わ、私帰るわね!!」
「はいはい、あんまり痴話喧嘩を飛び火させちゃだめよー」

「はぁ、慌しい事で」
「お疲れ様です、紫様」
「なんか他人ののろけを聞いてたらムカムカしてきたわね
 藍、朝まで飲むわよ」
「じゃあおつまみを作ってきますね
 なにがいいですか?」
「貴女に任せるわ」

───────────────────────────────────────────────────────────

10スレ目>>995


霊夢、俺と結婚しよう。嫌とは言わせない

───────────────────────────────────────────────────────────
最終更新:2010年05月13日 23:38