霊夢19
12スレ目>>130
「とりあえず、風邪薬と熱さまし渡しておくわね。風邪薬は毎食後、熱さましは熱が40度を越えたら使いなさい」
「ああ、わかった」
俺は永琳から薬を受け取った。
まぁ、具合が悪いのは俺じゃないんだが。
「しかし、今年の風邪はたちが悪いな」
「ええ、うちもついにウドンゲとてゐが二人とも倒れちゃって、姫と二人で朝から永遠亭みんなの看病で大忙しよ」
「……珍しい、あの姫様が」
そう、今この幻想郷では風邪が猛威を振るっているのだ。
なにしろ、人、妖怪問わず感染し、40度を超える高熱を発し数日寝込むくらい急速に悪化する。
しかも感染力が非常に高く発病に1日かからないので幻想郷全域に広まるのにさほど時間はかからなかった。
聞いた話によると輝夜、永琳以外に発病していないのは俺だけらしい。
……誰だ幻想郷一の⑨っていったやつは……
「さて、私はこれから紅魔館に行ってくるわね。あそこはもう誰も動くことができないみたいだから」
「うわ、咲夜やフランまでダウンしちゃったのか……」
「ふふ、それにしても彼女はいいわね。つきっきりで面倒みてくれる人がいて」
そう、この風邪は幻想郷全域に広まった。ここ博麗神社も例外ではなく……
「まぁ、あなたがいれば大丈夫でしょうが、とにかく水分、栄養、休息、そして病人へのいたわりが大切よ。
最後のところは心配いらないでしょうけど」
「ああ、まかせておいてくれ」
「じゃ、なにかあったらすぐに知らせなさい。かけつけるから」
「わかった。ありがとう永琳」
「それじゃお大事に」
そう言い残し、彼女は次の診察に向かっていった。
「ふぅ、あの調子じゃ休む暇もないんだろうなぁ……
さておかゆでもつくるとしますか」
――――青年料理中――――
「ウルトラ上手に出来ましたっと」
俺は出来上がった特製おかゆを小さな土鍋に移し
彼女の寝ている部屋へと急ぐ。
「おーい、霊夢ー。起きてるかー? 飯食べられそうかー?」
「うー、あんまり食べたくないー」
襖を開けるとそこには布団に入って真っ赤な顔で唸っている少女がいた。
彼女がこの博麗神社の素敵な巫女、博麗霊夢である。
ってなんで俺説明口調なんだ?
「だめ。ちゃんと食べないと直らないぞ。ほら、起こしてやるからしっかり食べな」
「うん、わかった」
彼女の上半身を起こしておかゆの入った土鍋と蓮華を渡す。
うーん、しかし風邪をひいている姿の霊夢はどこか引かれるものがあるな。
潤んだ瞳、ほつれた髪、うっすら汗の浮かんだうなじ……
それに普段凛とした雰囲気のある彼女がなにか年相応の少女みたいになっているところなんかなんとも……
はっ、いかんいかん。病人相手になにを考えている、俺は。
考えを払拭させるべく俺はたわいもない世間話をもちかける。
「そういや、おかゆの材料買うために里まで行ってきたついでに香霖堂覘いてみたけど霖之助さんもまだ治ってないみたいだったよ」
フラフラしながら店に出てきたときにはさすがに驚いたが。
「へぇ、そうなんだ。ねぇ、外の世界でもこんな風邪ってよくあったりするの?」
「うーん、そうだなぁ……もし例をあげるならインフルエンザかな?でも今はワクチンであらかじめ予防したり
タミフルっていうインフルエンザ用の薬も出てるし、ここまで一気に広まったりはしないかな」
余談だが俺はインフルエンザにかかってもあの薬は飲まん。まだ永琳の正体不明の薬を飲んだ方がマシだ。
いや、どっこいどっこいか?
「あ、あと帰りに自分の氷頭に乗っけてウンウン唸ってる
チルノ見たときは笑っちまったよ」
「なにやってるのかしらね、あの妖精は……」
っと、食べ終わったみたいだし、あとは薬を飲ませて休ませないとな。
「ほれ、風邪薬と水。それ飲んだらまたゆっくり眠りな」
「うん、ありがと。……んっ、あのさ一つお願いがあるんだけど……」
「うん?いいぞ、俺ができる範囲ならな」
「えーとね、おでこに手をあててほしい」
「あいよ、了解」
そういい俺は霊夢の額に手を乗せる。やっぱり熱があるせいだろう。手のひらがあっという間に熱くなる。
「えへへー、冷たくていいきもち」
むー、かわいいなぁ。いつもはそっけないし、素直じゃないことも多いし、いっそこのままずっと風邪でいてほしいと思う俺は不純ですか?
「もういいか?じゃ食器洗ってくるからいいこで寝てるんだぞ」
「いわれなくてもわかってるわよ。おやすみ」
さて、洗いものが終わったら掃除を始めようか。
夜中になって霊夢の症状は悪化した。
「はぁ、はぁ……」
「まずいな、41度7分もある」
呼吸をするだけでも苦しそうで意識も朦朧としている姿はとても痛々しくて見ていられない。
こんなとき何の力にもなれない自分がとても妬ましい。
「あ、そうだ。永琳から貰った薬に解熱剤があったな」
そうそう、たしかこの袋の中に……
そして袋の中から出てきた薬は――
――――どう見ても座薬です。本当にありがとうございました。
「……うんっ!!わかっていたさ!!こうなる事ぐらい!!わかっていたけどさぁ!!」
たしかに俺と霊夢はもうタダならぬ関係ですよ?
体のどこに黒子があるかも全て記憶してますよ?
でもこれはないでしょう!?飲み薬とかあるはずだよねぇ!?
はっ!?こうやって俺が取り乱すことさえ計算済みっ!?えーりんおそるべしっ!!
「うううぅ……」
「はっ――」
霊夢の苦しげなうめき声で俺の頭は急激に冷えていく。
そうだ、俺がバカなこと考えているときも霊夢は苦しんでいるんだ。
なにもやましいことじゃない。心を落ち着かせて薬を使わなくては。
「――心頭滅却、明鏡止水、体は剣でできている」
よし、覚悟完了。
俺は布団をどかし、霊夢の寝間着の裾を捲り上げる。
――ああ、霊夢の足シミ一つなくて本当に綺麗だぁ……
ってまた変な妄想してるっ!?ダメだダメだ。
気を取り直し、下着に手をかけ……
「ねぇねぇ、霊夢が風邪で倒れたって聞いて様子見にきたんだけ、ど……」
なんで、いつもジャストなタイミングで出てくるんですか?ゆかりサン?……
「あらあら、お邪魔だったみたいねぇ?それじゃごゆっくり~」
「まってぇーーーー!このまま放置していかないでぇーーーー!!」
その後どうしたかっていうと永琳を呼んできてもらい男の俺には出来ないこと(着替えや体の汗拭きなど)をやってもらい
今は三人で一息ついているところだ。
ちなみになぜ彼女が平気なのかというと病人と健康の境界をいじったからだそうだ。
……もはやなにもいうまい。
「にしてもやることがなくてそわそわしているところなんかすごくかわいかったわぁ。
うちまで攫っていっていじめたおしたいくらい」
「あら、奇遇ね。私も実験にも愛玩用にも使えるこんなかわいいモルモット、霊夢に内緒で持って帰ろうかと思ったわ」
この二人笑ってはいるけど目がマジです。
「やぁねぇうそよ、うそ。本気にしないの」
「そうよ、人の男に手を出すほど飢えてないわよ」
……幻想郷には嘘つきしかいないのだろうか?
「さてそれじゃ私はおいとまするけどあなたも早めに休みなさい。看病は意外に疲れるのよ」
「ああ、じゃ最後に霊夢の顔みてから休むって……なにさ?」
「やぁねぇ、ここまで見せつけてくれるなんて。甘すぎて砂糖吐きそうよ」
「ええ、私たちのこといきおくれの年増って見てるに違いないわ。イケない薬注入してやろうかしら?」
「……アンタら、とっとと帰ってくれ」
「はいはい、それじゃまた様子見にくるわね」
「本当に早めに休みなさいよ」
幻想郷の少女臭コンビは最後まで騒々しく帰っていった。
はぁ、なんかどっと疲れた。霊夢の顔見たらすぐに布団に入ろう……。
「いよぅ、調子はどうだい?」
「うん、熱さましが効いてるからそんなに辛くないかな」
たしかにさっきよりかは少しは顔色もいいみたいだ。
「ねぇ、寝る前に最後にお願いしていい?」
「なに?のど渇いた?水?」
「あのね……キス、して?」
布団から半分顔を出して潤んだ瞳で上目遣いをしている霊夢はとてつもなく可愛い。
ヤラれた。どうしてこう不意打ちがうまいんだろう?頭の中が沸騰状態でグラングランだ。
「もしかして、イヤ……だった……?」
俺の沈黙を否定と受け取ったみたいだ。
「いやいや!!そんなことない!それじゃいくぞ……」
「うん―――んっ」
ただ唇が触れ合うだけの軽いキス。
「……これでいいか?」
「だめ……たりない……もっと強いのをちょうだい……あっ」
さっきよりも強く、求めるようなキス。
「んぅ……んっ…ちゅっ……ふ……ぁっ……」
俺と霊夢の離した唇の間に銀糸が渡る。
「…………」
「……ありがと。元気出てきたよ。すぐにでも元気になりそう」
「それはよかった」
「うん。疲れたでしょう?もう休んで。○○が倒れたら私……イヤだよ……」
「ああ、すぐに眠るよ。それじゃもう行くよ」
「おやすみなさい」
目を閉じた霊夢はすぐに眠ってしまった。
おやすみ、いい夢を……
そして翌日みごとに風邪をひいた⑨がここにいるのでした。
「うー、頭痛いー気持ち悪いー目が回るー」
「もぅ、文句言ってないで静かに寝ていなさい」
昨日とはうってかわって立場が逆になってしまった。
って何で布団捲り上げて寝間着の裾持ってるんですか?
「ん~?さっき紫に聞いたんだけど私に座薬使おうとしたんですって?」
「あっあれは不可抗力でっ」
「うん、わかってるけど女の子にそんなことしようとするのはちょっと許せないかな~って」
うひゃあ、笑っているのにとんでもなく怖いー!
「だからってこんなことしなくてもっ、マジやーめーてー」
「ほら動かないの」
「ちょっ、おまっ、アッ――!」
「……本当に入れられるかと思った」
「冗談だって、私だって変な気があったわけじゃないってわかってるし……」
「うー、なんか悪化しそう……」
「じゃ、風邪がすぐ治るようにいいものあげるから目閉じなさい」
「うぃ」
なんだろう?って考えてたら唇にやわらかいものが。
これって……やっぱりアレ?
目を顔を赤らめた霊夢が見えた。
「これが一番の特効薬でしょ?早く風邪治してね」
そういって霊夢は部屋から出て行った。
「……更に熱が出そうだ」
さて元気の素は貰ったんだし、さっさと風邪を治すとしますか。
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12スレ目>>138修正版
「それじゃあ行って来るな」
「……行ってらっしゃい、はやく帰ってきてね」
「そんな寂しそうな顔をするなよ、すぐに帰ってくるから、な?」
寂しそうに俯く霊夢に後ろ髪を引かれながらも俺は出掛ける準備をした
「……ねえ、○○」
「ん?なんd、んぅ!?」
ピチュ クチュリ
霊夢に呼び止れて振り向いた瞬間キスをされた
不意打ち状態だったので何の抵抗も無く俺は霊夢の舌を受け入れた
「んっ!ぁ…ふ……あっ」
クチュクチュ
霊夢のやわらかい唇の感触と甘い吐息を味わうだけで
俺の脳髄に快楽の電流が走り霊夢しか目に移らなくなる
このまま快楽に流されそうになるのを必死に押し止めて霊夢を引き剥がす
「はぁ、はぁ…これで満足か?霊夢」
「はぁ…ふぁ…はぁっ……うん、行ってらっしゃい」
「ああ、行ってくるよ」
霊夢は俺と離れようとするとすごく嫌がる
そして先ほどのようにキスをせがんで俺を放さないようにする
それが例え里に買い物をしに行くわずかな時間でもだ
「分かってるんだけどな……」
どうも俺は霊夢のことになると甘くなってしまう
それが依存的なものでお互いにとって悪いことだと理解はしてるr
「理解をしているなら何故貴方は霊夢から離れようとしないの?」
ゾクッ!!
「!!!???」
突然気配の無い虚空から声が聞こえたと思ったら、周囲が目玉の付いた奇妙な空間に変わった
それと同時に圧倒的な妖気がその空間中に充満したそして俺はその妖気の持ち主を知っている
「紫か!!」
俺が叫ぶと空間に裂け目ができそこから麗しい妙齢の女性が出てきた
「御機嫌よう○○」
彼女こそ他の妖怪とは違う一人一種の妖怪にして
幻想郷の頂点に君臨する境界を操る妖怪八雲紫
「……一体何の様だ」
「何の用?分かってるくせに、私が貴方と会って話すことなんて霊夢との事以外になにかあるの?」
やはりか、紫は俺に会う度に霊夢から離れろと言い続けていたからな
「何度も言うようだけど俺は霊夢から離れるつもりは無い」
「ええ、知ってるわよ、だから今までどおり忠告じゃなくて」
「ん?、っが!!??」
ギリィッ!!
「実力行使で行くことにしたわ」
「がっぁ!?」
ギリギリ!!
突然首を掴まれ軽々と宙に吊り上げられた
見た目は女でもそこは妖怪、人間一人持ち上げるのなんて造作も無いだろう
「でも私は優しいから選択肢をあげる
1:このまま死ぬか
2:私が記憶の境界を弄って霊夢の記憶を忘れる
3:霊夢から離れる」
どれでもいいけどわざわざ私を動かしたのだから1がいいわね」
「ふざ、けるな…ふざけるな!!!」
「あら、どれも選ばないつもり?折角選択肢を用意してあげたのに」
つまんないと言いたげな顔で俺を吊り上げたまま見上げてくる紫
その顔を見ていると俺の胸の中に言いようのない怒りが沸々と沸いて来た
「当たり前だ!!!俺が選ぶ選択肢は1,2,3のどれでもない
4:俺はこの窮地を脱し霊夢と添い遂げる
以外は考えられないんだよ!!!」
「そう、そんなに死にたいわけね」
ブォン!!
ドサッ!!
「くっ!げほっげほっ!!…はぁはぁはぁ」
「元気がいいのは結構なことだけど、貴方程度じゃ、私に勝つどころか掠り傷すらつけられないわよ」
そんなの最初から分かてる、何も力の無い俺が紫と戦ったところで勝ち目なんか万に一つどころか億に一つもないだろう
今だってあのまま首を絞めていたら俺の命の火は消えていた
周囲の妖気も一向に減るどころかますます増え、俺の場所だけ重力が増したかのように重圧をかける
「じゃあそろそろ眠くなってきたし幕引きといこうかしら、貴方の死をもって」
「幕引きにはまだ早いぜ!!」
威勢よく吼えたものの正直八方塞だ
それでも例え勝機が無かろうとも俺は負けるわけにはいかない
「誓ったんだよ俺は、霊夢を守るって!
霊夢が弱くなったのならその分俺が強くなって霊夢を支えてやるんだってな!!」
どこまでできるか分からないがこのまま何もせず、むざむざと殺されるよりかはましだ
「……そう、これだけ力の差があっても貴方は諦めないのね…………
でも残念だけど今の貴方程度の力じゃ、霊夢を守ることなんて夢のまた夢
そして、夢はいつか覚めるものよ」
「だったら夢を現実にするまでだ!!!」
一直線に紫のほうへ疾走する、しかし
「でも残念、貴方は夢を見ることも現実に戻ることもないわ」
紫の手が俺の視界を奪い、程なく俺の意識は闇に沈んだ
「 ○! き !! い! !!」
声、声が聞こえる何を言っているかわからないけど俺を呼ぶ女の子の声が
……そうだこの声は霊夢の声だ、例え地獄に堕ちようとも絶対に聞き間違えることは無い
「 ○!起き !!お い!目を して!!」
霊夢の声が聞こえるごとに俺の意識が蘇っていく
「っ…霊、夢?」
「○○!!起きたのね!!」
「あ、ああ俺は一体」
「紫が連れてきたのよ、森で倒れてたって…」
「紫が?」
俺を殺そうとしたくせに殺さずにあまつさえ霊夢の所に運んできた?
何を考えてるんだあのスキマ妖怪
「本当に、本当に何も無くてよかった、紫も『直ぐに目を覚ますから安心しなさい』って言ってたけど
でも目を開けない○○を見てると不安で、もしかしてもう二度と私に笑いかけてくれないんじゃないかと思うと怖くて
それで、それで……」
ギュゥ
「大丈夫、俺は生きてるしちゃんと霊夢の側にいるから」
両手を抱きしめ震える霊夢を俺は静かに、力強く抱きしめた
そしてそこから霊夢の体の振るえを感じ、どれだけ霊夢が不安だったかが分かった
「ごめんな、霊夢」
「うぅ、良かった、○○が無事でよかった…うわぁーーーーーん!!」
大声で泣く霊夢に俺はただ無言で抱きしめるしかなかった
「ん…すぅすぅ」
俺のことを心配した心労と大泣きした所為か今はぐっすりと眠っている
おかげで何故紫が俺を生かしたかゆっくりと考えられる
あの時紫は確かに俺を殺す気でいた、それがどうして俺を殺さなかったのか
誰かが助けに入った?
それは無い、スキマ空間に干渉できる能力を持った奴は俺の記憶じゃいないし(いたとしても霊夢ぐらいだ
霊夢が言ったことが確かなら紫自身が俺を神社まで連れてきたんだ
「まあいいさ、こうして霊夢と一緒にいられるんだから」
紫に何があって心変わりしたかは分からないが生かしてくれたというのならそのまま生きてやる
「強く…ならなくちゃな」
今回みたいに霊夢を心配させない為に、俺はもっともっと強くならなくちゃいけない
力だけじゃない、心身ともに、霊夢の心と体を守れるぐらいに
「んぅ、どうしたの?○○」
「いや、なんでもないさ、もう少し寝てろ」
「側に居てくれる?」
「ああ、霊夢が目を覚ますまで側に居るよ」
再び寝る霊夢の頭を撫でながら想う
願わくば、この瞬間を永遠に
「紫様、アレでよろしかったんですか?」
「何が?」
「○○のことです、何故生かしておいたのですか?
わざわざ殺しにいったというのに」
藍の言うことも尤もね、確かに私はあの時○○を殺す気でいた
でも……
「見たでしょ?あの霊夢の様子を、○○を失ったらあの子、壊れるわよ」
幻想郷を守るために霊夢から○○を引き離そうとしたのにその結果霊夢が壊れてしまうのでは意味が無い
それなら○○を生かしておくほうがまだいい
それにアレだけ力の差を見せて尚諦めない心、に揺るがない信念があるなら○○はまだまだ強くなる
「ふぅ、取らぬ狸の皮算用ね……眠たくなったし帰りましょか」
「寝酒はどうなさいますか?」
「帰ったらそのまま寝たいから布団の用意だけお願い」
「分かりました、では先に帰っていますね」
「よろしくねー
…………頑張りなさい○○、貴方の夢は現実となった
だけどその現実はこれからも続いていくんだから」
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うpろだ792
少し遅めの昼食をとり食後のまったりとした空気のなか俺は炬燵にあたりながら縁側を見つめる。
冬の季節としては珍しく暖かい日の光が差し込み、雪の積もった庭をやわらかく照らす。
……近頃霊夢とほとんど話していない。
里の方で異様な数の妖怪が出て討伐の仕事で大忙しだそうだ。
夜遅く帰ってきて、朝早く出かけていく。
顔を合わせることはまれで、会話をすることなど不可能に近い。
……俺が力になれることはない。
未だにまともな弾幕は張れず、ザコ妖怪にすら手こずる俺が何の手助けになろうか?むしろ霊夢の足を引っ張るだけだ。
そういえば、俺がここにくるまでは霊夢も今の俺のような状況が多かったんだろうなぁ。
やることがなくただ時間が過ぎるのを待つだけの退屈な日常……
そんな日々の繰り返しを続けていた霊夢の気持ちはどうだったのだろうか?
さまざまなもやもやを抱えたまま、意識が闇に落ちていく中、ただ一言だけ呟いた……
――――さみしいよ、霊夢……
「ふぅ、疲れた」
里の異変を片付けて神社に帰ってきて私は炬燵に突っ伏して眠っている○○を見つけた。
昼食だったのだろう。頭の横につゆの入ったどんぶりがあった。
「もう、ちゃんと食べたものくらい片付けてから眠りなさいよ」
どんぶりを片付けようと手を伸ばして――
○○の頬に一筋の涙の跡があることに気づいた。
伸ばした手をひっこめ、○○の隣に入り込み彼がここに来てからのことを思い出す。
最初はこの幻想郷に迷い込んだただの迷子だと思った。
すぐに元の世界に帰ると思っていた。
でもそうじゃなかった。
彼はあっという間にこの世界に馴染んだ。まるで元からこの世界で生まれたかのように。
彼は誰とでも打ち解けて、みんなも彼を受け入れた。
宴会では萃香と魔理沙の二人に飲み比べを挑んで、ぶっ倒れたことがあった。
紅魔館の吸血鬼姉妹に振り回されていることもあった。永遠亭で談笑をしていたこともあった。
まるで昔からの友人のようだと彼を知る人々はそう言った。本当に彼は変わった人間だった。
そして一番変わったのはこの私だ。
今までずっと一人で暮らすのに何の不自由もなかったし、それが当たり前だった。
それが人ひとり増えることでここまで変わってしまうことには驚いた。
言い合いをした。すれ違いもあった。喧嘩も仲直りも数え切れないほどした。
ただいまといっておかえりと返ってくることがうれしかった。家に明かりが灯っていることがうれしかった。
二人で食べる食事がこんなにおいしいとは思わなかった。一つの布団でたわいもないことを話すのが楽しかった。
嬉しいこと、悲しいこと全て彼と共に作った。
いつの間にか、心の一番たいせつな場所に彼がいた――
「………………ん、うぅ」
すこし身じろぎをして俺は目を覚ました。
あの後そのまま眠ってしまったらしい。
妙に肩が重いと思っていたら霊夢が寄りかかって眠っていた。
「…………ふぁぁっ」
俺が動いたせいだろう、霊夢もすぐに目を覚ました。
「おかえり」
「うん、ただいま」
挨拶が済んだ途端に霊夢が俺のひざに向かい合わせに座ってきた。
突然のことに戸惑っていると霊夢が先に切り出してきた。
「……ごめんね」
「いや、急に謝れられても反応に困るんだけど」
「最近ほとんど顔も合わせられなかったし、話すこともできなかったし」
「いや、別に気にしてないし。霊夢も大変なことしてるのわかってたから」
俺は精いっぱいの強がりを言う。
「うそつき」
「え?」
「頬に涙の跡ついてるよ」
急いで頬を拭う。
「もう消えてるよ。それに私しか見ていないんだから気にしなくていいのに」
「でもかっこわるいし、男として恥ずかしいし」
「ふふ、そういうところかわいくて好きだよ」
うれしさと恥ずかしさで顔が熱くなってくる。
「ほんとにごめんね。私自分のことで手いっぱいになっちゃって○○のことほったらかしにしちゃって」
「霊夢……」
ああ、本当に俺はこの少女がいとおしくてたまらない。
この小さな体で有象無象の妖怪を相手にしていると思うとどうしようもない切なさが溢れてくる。
言葉では言い表せられず、俺は行動で示すことにした。
「――ちゅっ」
「んむっ……くちゅ………ちゅっ」
一瞬、または永劫のようなキス。
「ふぁ……ねぇ、今日はずっと話していようよ」
「あぁ、いいけど特に面白い話はないよ」
「それでもいいよ。私は○○の話が聞きたいんだから」
「じゃあ、ずっと話していようか」
「うん、夜明けがくるまで、ううん夜が明けても○○のそばにいたいよ」
俺は力を込めたら折れてしまいそうな霊夢の体を抱きしめ、何を話そうか考えていた――
「霊夢、好きだよ」
「私も、○○大好きだよ」
「ああっ、もうどうしてそこで押し倒したりしないのよっ!全然進展しなくてやきもきするわっ!!あのヘタレッ!!」
「紫さま……あまり覗き見をするのはどうかと……あとあまりそんな言い方はしないほうが…………」
「はいはい、わかったわよ。もうやめるから藍もあっちいきなさい」
藍をおいやってもう一度スキマの向こうで抱き合っている二人を見つめて
「ふふ、あのふたりほんとお似合いね。まるでお互いの心の帰る場所みたい」
そう呟いてパチンとスキマを閉じた。
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12スレ目>>418 うpろだ824
霊夢「おかえりなさい」
○○「ただいま、これおみやげのお団子」
霊夢「あら珍しいわね、おみやげなんか買ってくるなんて何かのご機嫌取りかしら?」
○○「食べたかったから買ったんだよ、あー寒い寒い」
霊夢「ふーん」
○○「やっぱりコタツは暖かいなー」
霊夢「暖炉の方が暖かいんじゃない?」
○○「いやー俺はコタツがいいよ、ってか何で暖炉?」
霊夢「別に」
・・・なんか機嫌悪いなコイツ。
○○「お茶入れてくる」
霊夢「いらないわ」
○○「ん?」
霊夢「私の分はいらないって言ったの」
○○「・・・なぁ、何か怒ってるのか?」
霊夢「別に」
○○「じゃあ、なんでそんなに機嫌悪いんだよ」
霊夢「知らないわよ、私はいつも通りよ。気に入らないならアリスのところにでも行けば?」
○○「・・・なんでそこでアリスが出るんだよ」
霊夢「知らない、さっさとアリスの家に転がり込んでシチューでもご馳走になればいいじゃない」
○○「おいおい、落ち着けよ、まずシチューはどこから出たんだよ」
霊夢「里で仲良さそうに話してたでしょ?一緒に餡蜜なんか食べちゃってさ。
アリスも珍しく楽しそうな顔してたじゃない。あの子人見知りするから、相当仲いいのね?
食べたくて買ったとか言いながらお団子に手をつけないのをみると、あの後おかわりでもしたのかしら?」
○○「・・・見てたのか?」
霊夢「薄着してったのが心配で、あんたの上着持って追っかけていったのよ。余計な事しなきゃよかったわ」
○○「あのな、霊夢、アリスは」
霊夢「言い訳なんかやめてよ!珍しく買出しをかって出たと思ったら、浮気してただなんて!最低よ!!」
ガタッ
おそらく、これ以上言葉は通じまい。
そう悟った俺は立ち上がり、自分の部屋に向かった。
離れていても、霊夢が泣いているのが聞こえた。
俺は目的のものを取り出すと、足早に彼女の元へ戻っていき・・・
霊夢「・・・放っといてよ」
○○「ほれ」
霊夢「何・・・?」
○○「ほんとは完成してから見せたかったんだけどな」
霊夢「何よ、これ」
○○「人形だよ、細かい飾り付けがまだできてないけど。何に見える?」
霊夢は作りかけの人形をゆっくり回して見た。
赤白の布一枚を羽織っただけの人形が、小さな手の中でくるくると踊る。
霊夢「・・・もしかしてこれ、私?」
○○「お、よく分かったな。まだ服も未完成だってのに」
霊夢「こんなの、どこに隠してたのよ」
○○「秘密だ、それよりアリスとの事だが」
霊夢「・・・あー・・・」
ようやく自分の勘違いに気づいたらしく、霊夢は俯いてしまった。
恥ずかしかったのか、うなじのあたりまで真っ赤に染めてしまっている。ちょっと可愛い。
○○「これの次の手順がどうにも思い出せなくてな、
今日たまたま会ったんで教えてもらおうとしたら『同じ事を何回も聞くな』と高めの授業料を要求されてしまった」
霊夢「・・・もう、最初にそう言ってよ」
○○「知られたくなかったんだよ、人形作りなんて俺のガラじゃないじゃないか」
霊夢「でも、どうしてそんな物作って・・・」
言いかけて霊夢は固まった。こいつめ、やっと思い出したか。
○○「俺が霊夢に助けられて、ここに世話になり始めてもうすぐ1年経つからさ」
霊夢「・・・あー、もう1年経つんだ・・・」
○○「早いもんだよな。それでお礼じゃないけど、何かプレゼントしたかったんだよ」
霊夢「・・・いいのに」
○○「あー?」
霊夢「お礼なんかなくたって、いつも○○が傍にいてくれるだけで十分幸せよ」
俺はたまらなくなり、押しのけるようにして霊夢の隣に入り込んで・・・
○○「お礼『なんか』とか言うのはこの口か、えー?」
霊夢「い、いひゃい、はなせー」
○○「この寒い中買出しに出てやったというのに、帰宅一番で浮気しただのなんだのとー」
霊夢「いひゃいってう"ぁー、あぅっ」
○○「信用してないのか、俺のこと」
霊夢「信用・・・してるけど、さ・・・」
○○「不安?」
霊夢「・・・うん」
○○「・・・まぁ、それじゃしょうがない、のかな」
霊夢「・・・ごめん」
普段の霊夢からは想像もつかないくらい、見事にしおれてしまった。
これはこれで可愛いが、何とかしなければ。
・・・と思う気持ちよりも、このしおらしい霊夢をもっと弄り倒してやりたいという
ドS心の方が勝るのであった。
霊夢「んむっ!?」
○○「ん~~」
霊夢「んーーー!!」
○○「しょうがないから、俺がどのくらい霊夢のことを愛してるか今一度思い知らせてやろう」
霊夢「ちょ、ちょっと、待っtんむ~~~~!!」
突然唇を奪われ、ジタバタともがく霊夢。
押えつけて苛めてやりたい衝動に駆られるが、今日の俺は自重する。
霊夢「ぷはっ!な、何よいきなり!!」
○○「思い知ったか」
霊夢「はぁ・・・十分思い知ったわよ」
○○「なら良し」
霊夢「・・・むぅ」
俺は頬を膨らませる霊夢の頭をポンポンと撫でてやった。
○○「ごめんな、霊夢」
霊夢「・・・何でそっちが謝るのよ」
○○「不安だったんだろ?」
霊夢「そりゃ、そうだけど」
○○「不安にさせてごめんなさい」
霊夢「・・・私の方こそ、ごめん」
○○「うん、許す」
それを聞いて安心したのか、霊夢は俺の肩にぽんと頭を乗せてきた。
○○「あ、あと」
霊夢「うん?」
○○「これは完成するまでお見せしませんので」
霊夢「・・・うん、楽しみにしてるわ。でも・・・」
○○「ん?でも・・・何だ?」
霊夢「出会ってから1周年って、明日よ?」
○○「・・・あれ・・・来週じゃ、なかった・・・っけ・・・?」
霊夢「明日」
○○「・・・・・・・・・そ、そろそろ夕飯の支度を・・・」
霊夢「あれあれ、もしかして来週だと思ってたのかしら?
まさか大切な記念日を忘れてたり間違えてたりなんてことはないわよねー?」
○○「あ、あはははははは」
霊夢「あはははははは」
ぶたれた。
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12スレ目>>430 うpろだ826
幻想郷の東の端に存在する博麗神社。階段を上りきると境内を掃除している霊夢の姿が見えた。
「こんにちわ。霊夢」
「あら、○○。久しぶりね。今日はなんの用?」
「うん、遊びに来たんだけど、ついでに参拝をしていこうと思って」
「珍しいわね。槍でもふるのかしら?まぁいいわ。素敵な賽銭箱はそこよ」
「わかってます」
さて、僕は賽銭箱を前にして財布を取り出すと――
「ちょちょちょっと待って!?なにそのパンパンに膨らんだお財布!?」
「うん、話すとちょっと長いんだけど……」
――青年説明中――
「ふんふん、かいつまむとその人は、初めて神社で参拝をしようとしていたわけだけど
連れの方が急用でこれなくなったのでたまたま通りかかった○○に自分の代わりに参拝してきてほしいってこの財布を渡してきたってわけね。
盗まれる事とか考えなかったのかしら?」
「うーん。たぶん大丈夫だと思うよ。あの人も“もしネコババなどお考えならば、後日殺すつもりで参ります”って言われたし
それに終始笑顔なのにずっと背筋がぞくぞくしてたもん。まるで幽香さんと話しているみたいだったよ」
でも、なんであの人エレベーターガールの格好してたんだろう?
「それじゃ奉納させていただきます」
そして僕は財布の口を開けひっくりかえして――
――拝符『賽銭弾幕』
ドバァッ!!
ズガガガガッ!!
「「うひゃぁ!!」」
瀑布のごとく流れ出る小銭に驚いた。
魔理沙のマスタースパークもかくやというこの硬貨の流れは1分経った後も衰える気配がない。
賽銭箱を揺るがし続けているこの財布、もしかしてスペルカードででもできているんだろうか?
マズい、中の小銭よりこの財布の方が欲しくなってきたぞ。
「――きゅう」
って、今までみたことない賽銭の量に霊夢が気絶してしまった。
「わあぁ!?霊夢しっかりー!?」
「――ううん……」
「あ、やっと起きた」
あの後気絶してしまった霊夢を抱き上げ縁側に寝かせて気がつくまででのんびりしていた。
「ええと、たしかすごい量のお賽銭に驚いて気絶したんだっけ……
あれ夢じゃないよね?」
「うん。嘘だと思うなら賽銭箱みてきなよ。小銭で溢れているから」
あのあと賽銭箱をほぼ満杯にしてようやくあの財布は動きを止めた。
「これで博麗神社の信仰も大幅アップだね」
「どうかしらねぇ。ご利益は奉納した金額に必ずしも比例するわけじゃないし
○○一人がいれたものだからあんまり変わらないんじゃないかしら」
「やっぱりそうか……」
「でもあれだけのお賽銭なんだから○○の願いくらいは叶うんじゃない?
ねぇ、なにを願ったの?」
「うん、霊夢と相思相愛になれますようにって」
そう言ったら霊夢は真っ赤になって顔を隠してしまった。
「……その願い叶わないわよ……もう叶っている願いはどんな神様でも叶える事はできないもの」
「あっ、そうか。じゃあずっと霊夢と一緒にいられるようにって願うべきだったか」
「もう……ばか……。そんなこと願わなくてもずっとそばにいるわよ。これからもね」
頬を染めて微笑んだ霊夢はとてつもなく可愛かった。
「じゃ、これからも末永くよろしくお願いします」
「はいはい。それでどうする?もう帰る?」
「そうだなぁ。そろそろ日も暮れるし、泊まってもいいかな?」
「うん、わかった。夕飯の支度するから手伝って」
「了解」
僕は夕飯の手伝いをするため霊夢の後に続いた。
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最終更新:2010年05月13日 23:49