霊夢20



12スレ目>>444 うpろだ830


突然ですまないが、霊夢が暴走した。


「さぁぁぁぁぁいせぇぇぇぇぇぇんんんんん!」
その叫びは幻想郷中に響き渡り、人々を震え上がらせた。
そして、その叫びが収まった直後。霊夢は……
「妖やー人ー間ー達、わーすれーてるー。思い出せー神社ーのー役目ー、信じーるーこーころー」
何かの歌を口ずさみながら人妖構わず賽銭を強奪するようになってしまった。
「……一体、どうしちまったんだ?霊夢の奴……」
それを遠巻きに見ていた魔理沙が一言漏らす。
「というか、○○は何やってるんだよこんな時に!愛しの霊夢があんな暴走してるのにほったらかしか!?」
『……心外だな、魔理沙。俺はここにいるぞ』
霊夢の恋人の名を叫んだ瞬間、本人の声が聞こえた。しかし、姿は見えない。魔理沙が辺りを見回していると、目の前にスキマが現れた。
「……ほいっと、お待たせ」
「お待たせ、じゃないだろ!どこ行ってたんだ!」
紫の生み出したスキマから○○が出て来ると、魔理沙が彼に勢い良く掴みかかった。
「まあまあ落ち着け。ちょっといろいろ用意をな」
『今回の事件は彼が原因なのよ。ちゃんと責任を取ってもらわないとね』
スキマの中から紫の声が聞こえる。
「……原因?」
「いやな。ほんの些細な事なんだが……」


事は数時間前までさかのぼる。その博麗神社の縁側にて。
『ねえ、○○?』
つつ、と霊夢が寄ってくる。
『……ちょうだい』
『……い、いや……いきなり言われても、なぁ……』
少女とは思えないほど艶かしい視線で擦り寄られ、○○はたじろいだ。
『……スマン、持ち合わせが無いんだ』
『何よぉ』
○○の返答に霊夢は頬を膨らませて、その後に……こう歌いだした。
『おー金をー入ーれてー、鈴ーをー鳴ーらーしてー』
歌いながらさらに近寄る。
『二ー礼ー』
ぎゅっと肩口を掴み、
『二ー拍手ー』
その手に軽く力を込めて○○の上体を傾けさせ……
『○○ー、おー願ーい……』
潤んだ瞳、上目遣いで○○を見つめた。だが……

『い・や・だ・よ』

その言葉によって、霊夢の額あたりからビキィ、と音が鳴った。


「……んで、気がついたらでかいたんこぶ作って気絶してたんだ。はっはっは」
「魔砲……」
「おk、時に落ち着け。頼むからこんな所でファイナルスパークを撃たないでくれ」
○○のあまりの能天気ぶりに思わず八卦炉を構えてスペルを撃ちそうになってしまった魔理沙。
「それに、俺だってただ傍観しているだけじゃないさ。ちゃんと対策も練ってある。その準備のために紫さんに手伝ってもらったんだよ」
「ほう、その対策ってのは何だ?」
「……すぐにわかる」
どういう事だ、と魔理沙が聞く間もなく。殺気があたりに満ちてきた。
「……へえ、こいつは凄いな」
「こ、この殺気、というか気配は……」
顔をしかめる○○と怯えた目で気配の主を探す魔理沙。……刹那。ものすごい音を立てて何かが振ってきた。
「……な……」
「こぉんにちわぁ、お賽銭の徴収に来たわよぉ」
それは、賽銭箱を抱えた、鬼。……もとい、霊夢。
「こら霊夢。どこに行ってたんだ?」
ちりちりと首の後ろが焼けそうなほどな殺気の渦の中、冷静を何とか保ちながら○○が話しかけた。
「あらぁ、○○じゃないのぉ……ちょうどいいわぁ、あなたにももう一度お賽銭をもらおうかしらぁ」
ビキビキと音を立てながら口元をゆがめる霊夢。常人が見たら恐怖で失神してしまいそうな顔だ。
だがそんな事で失神してはいけない。やらなければいけない事があるんだ、と無理やり意識を連れ戻す○○。
「さぁて、魔ぁ理ぃ沙ぁ?お賽銭を入れなさい。四の五の言わずに問答無用、よ?」
「…………」
「霊夢、気絶してる」
しかし魔理沙は先ほどのデススマイル(視覚的な意味で)の直撃を受け、気絶していた。
「……はぁ、まったく。そ・れ・じゃ・あ。強制的に賽銭を奪わせてもらうわ」
「やめておけ。どうせ魔理沙はそんなに持っていないだろう?……わざわざお前のために金を下ろしてきてやったのに」
金。その言葉に反応したのか、霊夢の耳がぴく、と動き、直後にこちらに顔を向けた。
「あぁらあらぁ。嬉しいわ?神罰を下されて反省してくれたのねぇ」
神罰ではなく人災だ。そう突っ込みかけた口を結び、恐怖を顔に浮かべながらも強い口調で○○が言葉を紡ぐ。
「ほら、受け取れ」
賽銭箱に早速五百円玉を投げ込む。それも五枚。
「……満足、したか?」
○○がそう聞くと、霊夢は……
「あは、あはははははは……はは……」
哂った。そして……


「ふ、ざ、け、ん、じゃ……ないわよ!」


叫んだ。その声は一発の弾となって○○に襲い掛かる。あまりにも大きすぎるそれを慌てて避け、体勢を立て直した。
「……まだ持ってるんでしょう?お金の匂い、あなたからぷんぷんするもの……」
ダメか。○○は心の中で落胆した。もうここにいるのはあの博麗霊夢ではない。金を喰らう鬼、餓鬼だ。
「霊夢」
「出しなさい。さあ。今すぐ。さあ、さあ、さあ、さあさあさあさあさあ!」
餓鬼に言葉は通じない。あるのは己の欲を満たすための力のみ。
「……そうか、お前はもう鬼なんだな。それなら……」
す、と右手を腰に付けたシザーケースに入れ……

「俺も鬼になろう。…………『禁(金)弾「山吹の杭 ~金喰らいを穿つ牙~」』!」

瞬閃。居合いのように踏み込み、シザーケースで隠した右手に持つ物を打ち込んだ。それは霊夢の眉間に吸い込まれるように飛んで行き……

ドッ

見事にめり込んだ。その衝撃で身体が後ろに倒れ……かけたが。まだだ。まだ鬼は倒れない。続けて二度、三度と打ち込んでいく。

ドッ  ドドッ

眉間と両肩、そして胸。そこまで打ち込み、ようやく鬼が倒れた。
「…………ぷはぁっ!はぁ、はぁ、はぁっ」
倒れたことを確認し、己の緊張を解く。すぐに足がダメになってしまいその場にへたり込んでしまった。
『お疲れ様』
「もう嫌だ……もうこんな事やりたくない……」
この世の終わりを味わったかのような顔で○○が呟いた。
『それは、どちらの意味でかしら?』
「両方に決まってる。……こんな怖い事も、霊夢の賽銭おねだりを断る事も」
初撃で霊夢が倒れなかった瞬間、○○は人生で一番の恐怖を味わった。もしこんな事をして、霊夢が怒ったら。……確実にラストスペル24時間耐久で避け続けなければいけない。
正直、死を覚悟した。だがそれよりも早く自分の生存本能が右手を動かしていた。……殺られる前に殺れ、と。
『さて、と。……魔理沙、起きなさい。もう危機は去ったわ』
スキマの中の紫が魔理沙を呼ぶ。ついでにスキマの中から手が出てきて、魔理沙の頬をつねった。
「……っいやぁぁぁぁっ!」
魔理沙が気が付いたが、頬をつねっている手を掴んでぶんぶんと振り回す。
「落ち着け魔理沙!……霊夢は倒れたよ」
「やぁぁぁ……ぁ、え?」
○○が声をかけてようやく魔理沙の動きが止まった。
「ほ、ほんとう……?」
「ああ、ほら」
○○が指差す先には棒状の何かをめり込ませて倒れた霊夢がいた。
「……れ、霊夢ッ!?」
「死んではいないよ。気絶させただけだ。……これを使って、な」
シザーケースから出したのは……五百円玉を五十枚で纏めた物。
「普通の弾だったら避けていたけど、多分これなら大丈夫だろうと思って。一応六本持ってきたんだ」
目が覚めた後に紫から事情を聞いた○○は紫に頼んで外の世界に行き、総額十五万円の弾を用意していたのだ。
「でも、お金で人を倒せるのか?」
「ああ。こいつを持ってみればわかるよ」
そう言って五百円棒を魔理沙に手渡す。……うわ、と小さくうめいたのが聞こえた。
「重いだろ?重量的には投げて当てるだけで十分人を殺せるくらいはあるからな。よかったよ、少し手裏剣術をかじってて」
ただ投げるだけでは誰でも出来るが威力が落ちるかもしれない。しかし、技術があれば確実に最大のダメージを与えることが出来る。
○○が外の世界にいた頃、手裏剣術の動画を見て興味を持ち、我流ではあるが自分でも練習していたことがあった。
『それはいいんだけれど、ねぇ。○○……貴方、手加減と言うものを考えたらどうなの?』
「そんな事言っても、そんな余裕なんて無かったんだよ」
『そうじゃなくて。ちょっと霊夢の顔を見てみなさい』
その紫の言葉を不思議に思いながら霊夢に近づくと。
「……あーあ。私は知らないぜ」
「うわっ……まずったな……」
○○は頭を抱え、魔理沙はため息をついてやれやれと肩をすくめて首を振った。


その後、文々。新聞の一面はこんな言葉で飾られていた。

『怪奇!巫女の額に硬貨の模様が浮かぶ』『銭の神様の祟りか!?』

…………結局普通にシメられましたが何か?orz


   あ・と・が・き(ほぁた

すいません。本当にすいません。
あの『お賽銭ちょうだい』の『巫女のおねだり~』の後の部分に『い・や・で・す』とアテレコしたら……こんな怪電波が。
これはまずい。『お賽銭ちょうだい』+『鬼巫女』はとんでもない物体になる。まるで杜仲茶+粉末オレンジジュース(参照:ざざむしでググれ)のように。

あと、五百円棒はマジで人殺せます。それくらい重いです。

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12スレ目>>454 うpろだ834


ふと外を見れば、雪がこんこんと降っていた。


○○が神社のど真ん中に落ちて来てから、もう一ヶ月経つ。
あの時は雪も地面を覆い隠すほど積もっていなかったが、もう覆うどころかまともに歩けないくらい積もってしまった。

「…結構、経ったわね」

○○は炬燵をはさんで反対側、退屈そうにみかんの皮をむいていた。

「…そうだな」



「…で、だ。まだ「紫さん」は見つからないのか?」
「あー…まあ、ね。アレはいつもふらふら歩いてるから、これがなかなか捕まらないのよ」

嘘。

「早くしてくれよ。いい加減、この妙な世界に慣れてきちまってる自分が怖えぜ」
「…あら、それは聞き捨てならないわね。博麗の巫女のお陰で幻想郷は今日も平和だっていうのに、どこが妙だって言うのよ?」
「そりゃ全部だろ。天狗が新聞配ってるし、メイドは時止めるし、俺より年下としか思えないような少女が人食い妖怪だったりするし、
 少女は空飛び、魔法と憩ってるし、神様はくるくる回ってるし、射命丸は向こうでテニスをしてるし、鰻屋の夜雀は帽子が変だし。」

「なにをーっ」

炬燵布団で中の様子は分からないが、どうやら夜雀が炬燵の中から○○に攻撃を食らわせたらしかった。

「…まあ、外の世界から来たアンタからすれば、そうなんでしょうね。
 ちょっと待ってて、軽く食べるもの作るから」



~~~~しばらくして~~~~



おやつの焼き鳥を食いつつ、彼は言う。

「…なあ、本当に紫さんは見つからないのか?」
「しつこいわね。そんなに疑わしいのならアンタが探せば?」

もっとも、本当に見つけられても困るから、紫の特徴なんて教えてやらないのだけど。

「探すまでもなく見かけたよ。ここ一ヶ月で二回ほど。」

         え?

「え?でもアンタ、紫の外見なんて知らないんじゃ──」
「この間の新聞に載ってたんでな。遠目だったけど、傘さしてたから多分間違いないと思う」

ああもうあの天狗はなにかとロクな事しない!

「…あー…そう。」

「…やっぱお前、俺を帰す気ないだろ?」
「………うるさい、アンタを帰す事ができるのは私だけって事、忘れるんじゃないわよ」
「………………はいはい」

…ちょっと無理のある言い逃れだったかしら。
私がアンタを帰したくない理由、ばれたらすごく困るのだけれど。


しかし彼は特に気づいた様子も無く、得心のいかない顔で焼き鳥を頬張っていた。
…ほっとした反面、なんだか複雑な気分になる。




「…いいかげん働いてくれませんかね。巫女さん」
「…寒いし、そういう事は春の妖精が沸いてから考えましょ」

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うpろだ847


「○○! れれれ、霊夢が! にんっ、しんっ、しちゃった!!」
「……しゅべすた自重ー」

 言葉と共に○○と呼ばれた青年は湯飲みに白湯を注ぎ、扉を破らんばかりの勢いで部屋に押しかけてきた男に差し出す。

「久しぶりの再会での第一声がそれか……ほれ、とりあえずこれ飲んで落ち着け●●。話はその後で聞くから」
「あ、ああ。ごめん」

 煽る。熱湯に耐え切れずに吹く。展開があまりにも期待通り過ぎて逆につまらない。
 床が受けた被害をため息一つで無視して○○は口を開く。

「しかし、妊娠ねえ……お前が婿入りしてから半年位か? 案外早いじゃないか、やっぱり博麗の跡継ぎがいないと周りがうるさいものなのか?」
「いやそうじゃなくて。ほら、下手な鉄砲数うちゃ当たるという言葉があってだね」
「……しゅべすた自重ー」

 つか下手なのか。○○の●●を見る目線がちょっとだけ哀れむ物になる。

「……で、結局お前はなんでここにいるんだ? おめでたの嫁さん置いて遊びに来たって訳でもなさそうだし」
「ああ。体調が悪いって言うから霊夢を医者に連れてきたんだ。それでさっき子供が出来たって分かったんだ。
 今は霊夢、医者と話してるからちょっとの間蚊帳の外なんだよ俺」
「別にここじゃなくても時間は潰せるだろうに」
「動転してたんだよ。気が付いたらここに向かって走ってた。多分俺、一番最初にお前に教えたかったんだと思うよ」
「……ふん」

 ○○は立ち上がり、戸棚の奥から饅頭を取り出し●●に投げて寄越す。

「ちょっとそれ喰って待ってろ。鶏捌いて来る」
「え?」
「祝いと見舞いの品だ。肝なんかは栄養があるからきっちり嫁さんに食わせとけ」
「そんな、悪いよ。まるでそれが目的で来たみたいじゃないか」
「違うのか?」

 意地悪そうな目線でそう訊ねる○○に、●●は顔を赤くして「違うよ!」と返す。

「いいから人の好意は素直に受け取っておけ。真っ先に報告に来てくれた友人を無下に扱えるほど人が出来てないんだよ、俺は」

 ほんの少し、間があった。
 ふとした時に見せる○○のこういった気遣いは●●にとって心地良い物で、かつて博麗霊夢を知らずにいたあの頃が戻ってきたようだった。
 だから、●●は饅頭に目を落として、そっと呟くように一言。

「……ありがとう」

 それに対して○○の声はどこまでもからかう色が抜けない。

「礼を言うよりも先にもっと稼ぎを増やせ。嫁さんの妖怪退治なんて不定期の稼ぎなんだから。
 定収入を安定させることがお前に出来る善行だぜ?」

 どこかで聞いたことのあるような決め台詞を言い放ち、○○は庭へと向かう。
 真面目な話をきちんと返せないような奴は地獄に落ちてしまえ、と●●は毒づいた。
 しばらくの間饅頭を眺めていたが、どうにも食べる気にならない。●●は少し考えた末に○○の後を追ことにした。
 出てきた庭先では既に血抜きが始まっていた。吊り上げられた鶏を眺める○○と並ぶ。

「たまには神社に遊びに来てくれよ。俺も霊夢も歓迎するからさ」
「そうだな、その内時間が出来たらな……どうだ? 上手く生活できてるか?」
「ああ。神社の仕事も覚えるのは大変だったけど、霊夢と一緒だったしそんなに苦じゃなかったよ」
「ご馳走様だな……お前が早すぎるだけなのに何だか婚期を逃したように感じるよ」
「そう思うなら相手を探せばいいじゃないか。里の自警団の隊長である○○さんならよりどりみどりじゃないのかい?」

 先程のお返しとばかりに軽口を叩く●●に○○は苦笑で返す。

「慧音さんの腰巾着、という見方も出来るんだぜ? 自警団の中核なんて大した肩書きじゃないさ」
「はは、そうかもね」

 そのまま、しばしの沈黙。
 三分ほど続いた静寂を破ったのは、●●の方だった。

「○○。俺、不安だ」
「……何がだ?」
「俺、本当に父親になれるのかなぁ」

 多分、この不安をぶつける為に、●●はここに来たのだろう。○○は直感的にそう思った。
 思えば無理もない話だ。父になるには●●はまだ若すぎると言ってもいいくらいの歳だ。
 それに加えて、相手は博麗の巫女だ。大結界の管理者の跡継ぎ、ともなれば様々な所から重圧がのしかかってくるのは想像に難くない。

「あんまりこういうこと考えてもしょうがないっていうのは、分かってるんだよ。
 でもさ、考えずにはいられないんだ。本当に霊夢は俺が相手でよかったのかな……」

 何を言ってやればいいのだろうか。○○は考える。同い年でまだ自分は子供どころか伴侶のアテすら見つかっていない、というのは言い訳にならない。
 助けてやらなければいけない。●●のために、そしてなによりも――

「なあ、たまに思うんだよ。もしかしたら霊夢は俺じゃなくてお前が好きだったのかもって」
「……」

 動揺は、なんとか心の内に押し込める事ができたと思う。

「お前だって、本当は霊夢の事が好きだったんじゃないのか?」
「なあ、●●。初めて彼女に会った日のこと、覚えているか?」

 言葉と思考を遮るように○○は問いかけ、相手の返事を待たずに話を続ける。
 ●●は突然話題が変わったことに若干の戸惑いを覚えるが、それでも意識をその話題へと向ける。

「俺はよく覚えているよ。まだ自分の限界なんて知らない、妖怪の恐ろしさをはっきりと自覚してなかった頃の事だ」

 ●●が「ああ」と相槌を打った瞬間、世界中の時が過去を刻み始める。
 庭先に並ぶ二人のまなざしは時間を越え、セピアに彩られたかつての自分たちを見つめている。
 当時、まだ●●が自警団にいた頃の話だ。
 里の自警団の中でも腕の立つ二人であったが、その日は相手が悪かった。
 討伐するつもりで妖怪に立ち向かい、返り討ちに遭ってそのまま死を覚悟した。
 その時、彼女は現れたのだ。
 思い出す。玲瓏な輝きを放つ力の奔流。打ち返される弾幕を難なく避けていく足捌き。
 そして、何よりも心が惹きこまれた、相手を真っ直ぐに見据える横顔。
 物語の中の英雄が現実に現れた。そう感じてしまうほどに全てが美しかった。

 はじまりは、そんな出会い方だった。
 そして、礼を言う為に神社へ向かい、見知った仲になった。
 神社の仕事を手伝わされた。黒白の魔法使いの騒動に一緒に巻き込まれた。妖怪が跋扈する宴会に混ぜてもらった。
 そんな中で、段々と仲の深まっていく二人を、一番近くで見てきた。

 俺はいつも、手の届かない人ばかりを好きになる――○○は心の中でそう呟いた。

 博麗の巫女。結界の守人。
 手の届かない人。そう思っていた。
 だけど、それは思い違い。
 ●●という男が。親友が。彼女の心を射止めた。
 間を阻む檻があったのかもしれない。だから手が届かなかったのかもしれない。
 でも、檻があれば壊してしまえばいい。
 大切なのはその一歩を踏み出せる勇気があるかどうか。
 ●●にはそれがあり、自分にはそれが無かった。つまりはそれだけだ――○○はそう思っている。

 だから、言う。●●のために。
 そしてなによりも、かつて博麗霊夢が好きだった、自分のために。

「全く……子供が出来て心配するのは女だけじゃないんだな。さっきから下らない事でグチグチと……」
「だけど……」
「だけども何もあるか。彼女はお前を選んだ。ならそれにきちんと応えてやらないでどうするんだ。
 もっと自信を持てよ。博麗霊夢はお前の嫁さ。何も心配する事なんてありゃしない」

 血抜きが終わった鶏の羽をむしる。
 その仕草が何処か自分に言い聞かせるような仕草に見えたから、●●はもう一度何かを言おうと口を開こうとした。

「あ、ここにいた」

 開きかけた口を閉じて振り向いた先、大切な人が佇んでいた。

「霊夢……どうしてここが?」
「心当たりが此処しかなかったってだけよ。○○、久しぶりね」

 ○○の表情は何処か硬く、逆にそれが自分の問いかけへの返事であることを、●●は確信する。

「……ああ。最後に会ったのは何時だったかな」
「私たちの結婚式で喋ったのが最後ね……あら、この鶏美味しそうじゃない。貰えるの?」
「これは俺の今日の夕飯だ」
「じゃあ今晩はご馳走になっていこうかしらね」
「図々しいな。心配しなくてもこれはお前らへの贈り物だ。妊婦なんだから栄養あるもの食っとけ」
「あら、●●から聞いたの?」

 まだ膨れていないその腹をさする姿は慈愛に満ち溢れていて、博麗霊夢は母親になるのだ、という実感がようやく○○に湧いてきた。
 ふ、と苦笑いで表情を崩す。

「たっぷりと惚気を聞かせてもらった。今汗を舐めたら塩分よりも糖分が勝るに違いない」
「ちょっと●●、あんまり変なこと言わないでよ。恥ずかしいじゃない」
「それだけ愛されてるって証拠だろうよ……」

 言いながら適当な袋に鶏を詰める。ついでに保存してあった野菜を適当に見繕ってそれも一緒に入れておく。

「ほれ。今度来る時はガキの顔を見せに来い」
「そうね、いいお茶を用意しておいてね? ●●、行きましょ」

 彼女が歩き出す。けれど●●は動かない。
 顎で彼女の方を指して促す。

「ほら、行けよ。置いてかれるぞ?」
「……うん」

 ●●は愛しい人の元への一歩を踏み出して、もう一度だけ○○の方を向く。

「○○……本当にごめん」

 肩を竦める。こいつは何時でも最後の最後に色々な事に気が付く奴だ。
 だから、あえてとぼけてみせる。
 謝る事なんかじゃないのだ、と相手に伝える為に。

「何で謝られてるんだか分からんな。理由が無いのに謝られても虚しいだけだから止めてくれ」
「うん、ごめん。それと――ありがとう」

 苦笑が濃くなる。噛み合っていない会話。なのにどこかがきちんと噛み合っている。

「……礼を言われるところでもないな。まあ、困った事があればまた来ればいい。出来る限りのことはしてやるよ」
「うん。じゃあ、またね」

 ●●が霊夢のところまで駆けていく。合流した二人は一度だけ○○に向かって手を振った後、手を繋いで仲良く歩いていった。
 その姿が見えなくなるまで○○はずっとその場を動かないでいた。
 涙が頬を伝うのを感じる。押し込めていた気持ちが、今になって溢れてしまったのかもしれない。

『なあ、たまに思うんだよ。もしかしたら霊夢は俺じゃなくてお前が好きだったのかもって』

 余計なお世話だ、と呟いた。
 未練がましい思考を足蹴にする為に荒っぽく袖で拭い、家の中へと戻っていく。
 酒でも飲もう。たまには昼間っから酔いつぶれるのも悪くない。
 玄関の前で振り返り、二人が去っていった方向を見る。芽吹き始めた庭の植物が、春がそう遠くない未来に訪れる事を語っている。

「……さようなら、愛しかった人」

 ぽつりと口に出た言葉が、風に吸い込まれて消えていく。
 扉が閉まる。一人きりの酒盛りが始まろうとしていた。

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12スレ目>>555 うpろだ850


「ご馳走様でした」

「……あ。う、うん。お粗末様」

 食卓につきながらも、どこか心ここにあらずといった感じだった霊夢は、僕の言葉にちょっと遅れて反応した。

「霊夢、どこか調子悪いの?」

「あっ、ううん、そういうんじゃないわ。大丈夫」

「なら、いいんだけど。じゃあ、お茶を淹れてくるよ」

 少しあわてた様子で笑みを作る霊夢に僕も笑顔を返し、食器をお盆にまとめて立ち上がる。霊夢は一瞬何か言いたそうな目を向けたが、すぐに視線をそらした。
 僕は仕方ないので、そのままお勝手へと向かう。端っこの桶に食器を置き、次いで戸棚からお茶っ葉の入った筒と急須を取り出した。
 もう、どこに何があるのかは全部分かっていた。

 僕がここ、博麗神社にお世話になるようになってから、既に三ヶ月が過ぎていた。
 あの日、寒さの中にも春の訪れが明確に感じ取れるようになって来た頃。
 右も左も分からず途方に暮れていた僕に、僕よりも幾分か年下に思える霊夢は、落ち着いた笑みを浮かべてこう言った――
「まあ、あと半月もすればあのバカも起きるでしょうから、それまでの辛抱ね。そうすれば帰れるから、安心していいわ」と。
 そして……半月は一月になり、一月が二月、二月が三月になって、空気は長雨の終わりと、暑い夏の到来を告げようとしていた。
 僕はまだここにいる。

「ねえ」

 突然背後から声をかけられ、僕は危うくお茶っ葉の筒を取り落としそうになった。

「……なんだ、霊夢。びっくりさせないでくれよ」

「うん、ごめん……」

 歯切れ悪く謝る霊夢は、視線をあちこちに飛ばし、口を開きかけては閉じるという動作を繰り返した後、ようやくおずおずと切り出した。

「あの……さ。今日、紫と会ったんだけど」

「うん」

「あの……○○が帰るための準備、もう少し時間かかる……って」

「そう……なんだ」

「……」

「……」

 お勝手に沈黙が落ちる。
 向こうの家族や友人は、僕のことを探しているだろうか。もう死んだものと思っているかもしれない。
 そのことを考えると、僕の胸はどうしようもなく痛むし、霊夢もそれは十分に知っているはずだった。
 でも……

「仕方……ないよな」

「えっ?」

 いや、と僕は自分の首に手を当てる。

「結界とか、境界とかのことはよく知らないけど。でも、時間がかかるっていうなら、しょうがないよ」

「……そ、そうよね。しょうがないわ。ごめんね、私も、急ぐように言ってるんだけど」

「霊夢のせいじゃないよ。それじゃあ、お茶を入れるから、向こうに戻ってて」

「ん」

 あからさまにほっとした様子で、霊夢は戻っていった。相変わらず、分かりやすいなあと思う。
 そんなに社交的でもない僕が、幻想郷で頼れるのは霊夢だけだ。その霊夢が今は帰れないと言うなら、僕としてはしょうがないと思うしかない。

 でも、僕は知っていた。
 二ヵ月半前に、霊夢と「あのバカ」こと紫さんが話していたことを知っていた。
 霊夢が紫さんに、簡単に帰れるっていうことを○○に言わないで、と頼んだことを知っていた。
 どうして霊夢がそんなことを頼んだのか、その意味が分からないほど僕は鈍くはないつもりだ。

 きっと僕は、帰ろうと強く念じて鳥居をくぐれば、すぐに帰ることができるのだろう。
 でも、それは霊夢とのお別れを意味する。それは耐えられなかった。
 なぜなら、僕も霊夢のことが好きになってしまったから。
 じゃあ、ここで霊夢とずっと一緒に暮らすんだろうか。それも耐えられそうになかった。
 なぜなら、僕は家族や友人のことが、本当に大切だから。

 だから僕は霊夢に、知っているということを言わない。
 しょうがないよ。そもそも帰れないんだから、しょうがない。
 そして、もしかしたら……勘のいい霊夢のこと、僕が気づいているということに、もう気づいているかもしれない。
 それでも霊夢は僕に、帰れるということを言わない。
 しょうがないわよね。そもそも帰れないんだから、しょうがないわ。

 なんて卑怯な嘘なんだろう。
 それでも……いつか破綻することが分かりきっているけれど。
 もしかして将来、どちらかに天秤が傾くかもしれないその日まで、きっと。

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どっちの方がすき?  ~霊夢編~(12スレ目>>631 うpろだ857)


 どっちの方がすき?  ~霊夢編~





○○が賽銭しに博麗神社に来たとき。



1 普通の霊夢


あら、○○じゃない。 今日は何しに来たの?
えっ? 賽銭をするの?
うれしい事を言うじゃない! さっ、素敵な賽銭箱はここよ!(○○はその賽銭箱にお金を入れた)

……ちょっとした願い事ならご利益で願えるかもね。
んで、○○は何をお願いしたの?


……えっ? 私に愛されたいって!?
も、もぅ。 馬鹿な事にお願いするんじゃないの。
だって……これでも私、○○の事が好きなんだから。
そのお願いは残念だけど叶えないわよ。
だって私は、○○に愛してるもん。

チュッ。

えへへ。 ○○も私も初めてのキス、しちゃったね///
それじゃ、一緒にお茶でも飲む?




2 ツンデ霊夢



あら、何しにきたのよ。 悪いけどお茶は出さないからね。
…えっ? 賽銭をしに来たって? そりゃどーも。
じゃ、さっさと賽銭箱に入れてきなさいよ。 (○○はその賽銭箱にお金を入れた)

……で、何のご利益を考えたの?
まぁ、どうせあんたは商売の事や自分の健康といった、自分だけのご利益でもお願いしてるんじゃない?
違うの? じゃぁ、何をお願いしたのか言ってみなさいよ。


……はぁっ!? 私と付き合えるようにですって!?
ば、ばっかじゃないの! そんなのお願いしたって私はあんたと付き合いたくないわよ!!(表情は真っ赤ッかです)

な、何私の顔を見てるのよ…。 気持ち悪いからじろじろ見ないでよっ!

あぅ、わ、私の表情がかわいいって!?
も、もうこれ以上馬鹿な事を言わないでよっ! (これ以上何か言っても無駄なのでそっと抱きしめる)

――ッ!!?
……○○、素直になれなくてごめんね。
本当は私、あんたの事が大好き。
だから、もっと……抱きしめて。


―約2分後。

……ねぇ、今日、何か予定あるの?(無いよと首を振る)
そ、そっか。 それじゃ、お茶でも…飲んでいかない?
あんたと一緒なら、もっとおいしくなるかも知れないし…///

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12スレ目>>862 うpろだ862


霧の湖が完全に凍ったそうだ
射命丸が行ってたので間違いないだろう
俺には凄く関係ない、こんな寒い時はコタツで丸くなるべきだ、歌にもそうある
俺も化け猫の端くれだし、ここは伝統に従ってコタツで蜜柑でも食べて一日を過ごそうではないか
そう思った矢先、勢い良く襖が開かれた

「○○ーワカサギ釣りに行くわよー」

残念な事にこのお嬢さんは釣りにいく気満々である
「寒いから嫌だ、って言ったらどうする?」
「泣く」
ぐ、単純でいて一番きついな
しかし寒いのはなぁ・・・
「しょうがない、行くか」
暖かいコタツを名残惜しみながら、湖へ赴く事にした



「ホントに凍ってるのな」
白岩頑張りすぎじゃね?
そう思ったが、雪は降っていないのであいつじゃ無いのか、単純に季節柄?
「結構人が居るわね」
「そうだな、この寒いのに良くやるなぁ」
ちらほらと見知った顔がある
幽霊のお姫様と庭師、音楽三姉妹
どっかで見たような気がしないでもない魔界の偉い人と人形遣い
霊夢は特に誰に声をかけるわけでもなく、氷に穴を開け始めた
「・・・そんな道具何処で・・・褌のところか」
「えええ、氷釣りセットで売ってたわ」
案外アイツのせいかも知れないなんて思ったが、思っただけだった
「よいしょ・・・よし」
慣れた手つきで釣り道具を準備している、実に意外だ
折りたたみの椅子を広げ、さぁ釣るぞ、と思いきや
「○○、猫になってよ」
「・・・はぁ?」
「おっきい方ね」
「いやいや・・・何ゆえ?」
霊夢はとある方向を指差した
そこには釣りをする藍さんと橙の姿が
よく見ると橙は狐の尻尾にはさまれてとても暖かそうである
「・・・無理だ、猫の尻尾じゃ無理だ」
「別に尻尾じゃなくていいのよ」
そして結局
俺が霊夢を囲むように丸くなった、これが一番暖かいらしい、俺は寒い
なんかよく解らん餌をつけて、釣りを開始した

つり始めて十分ほどたって、俺は霊夢の運のよさを再確認した
竿を上げるたびに魚がついてる
五つ付いてる釣り針の最低4つは魚がついてるような状況
俺は丸まってるだけじゃヒマなので霊夢が釣った魚でも数えておく事にした
にーしーろーぱーとーじゅうにーじゅうしー・・・・・・・・・・
羊を数えてるように、三百四十二辺りから眠くなってきた
「霊夢、もう十分釣ったから帰ろう」
霊夢は返事もせずに釣りを続けていた

※食べる量だけ釣りましょう


「んー・・・群れが過ぎたのかしら、全然来ないわね」
四百間近という所でぴたりと釣れなくなった
流石に釣れないと退屈してくる
○○はじっとしてると寒いとか言って何処かへ歩いていった
「・・・寒い、釣れない、退屈・・・帰ろ」
「お、帰るのか?」

「ええ、つれないと退屈だわ」
「今夜はワカサギ料理か」
「面倒だから全部てんぷらよ」
帰りに抹茶塩とか買っていきたいな
料理は・・・○○はやる気無いし、萃香は酒飲むだけだし
数もあることだし誰か呼んで料理させようか

「どうした霊夢、考え事か?」
ああ、なるほど
こんな寒い日、いつもならコタツにでも入って引きこもっている所だが・・・
「なんだ?ひとの顔をじろじろと」
こいつがいるから、一緒に出来ることをしたかったんだ
後半はほったらかしにしちゃったけど、それでもいいや
もっと後になって、そういえばあの時・・・なんて言えればいいんだ
「ううん、○○とこれてよかったなって思ったの」
「お、おお・・・それは防寒対策として?」
「んー・・・それも一理あるけどね」
彼はそれを聞いて、実にお前らしい、と笑った
私らしい、そういわれた事がなぜか嬉しかった




「霊夢とー」
「萃香とー」
「アリスの・・・」
「「お手軽晩御はーん!!」」
一人呼んだら複数ついてくるのはゴメン被りたかったので一人ぼっちで料理が出来る奴を呼んでおいた
「何で私が・・・いや、呼ばれたのは嬉しいけど・・・」
なんかアリスが嬉しそうに文句を言ってるけども気にしない
料理法は簡単、ワカサギを小麦粉でデロデロにして油で揚げるだけ
温度とかは気にしない、感、適当
「あれ?そういえばええと・・・大きい人は?」
大きい?ああ、○○の事か
そういえばアリスは人型の方しかみたことないのかしら
「コタツの中で丸くなってるわ」
「そんな、猫じゃあるまいし・・・」
コタツをめくったアリスが固まった
そこに居るのは紛れもない猫なのだからどうしようもない
「・・・やぁお嬢ちゃん」
「え、えと・・・猫?」
「こうして話すのは初めてかな?俺は○○、一応猫だ」
「ど、どうも、アリスです」

コタツの中に向かって話しかけてるようだ
実に不気味で不思議な光景にみえるだろうなぁ
あ、霊夢が怒ってる、ああ料理しろって、アリス後ろー
「アリス、料理に戻った方がいい・・・霊夢が睨んでるぞ」
「ああっ、ご、ごめんなさい」
アリスが台所に戻り、俺はまたコタツで温まる
「何のために呼んだ・・・小麦粉足りない・・・アリス、腸出さなくていい・・・」
そういえば夕食はワカサギだけ?他何もないの?ご飯+てんぷら?



ふぅ、腹の中パンパンだぜ
女三人寄れば姦しい、と言うが・・・
五月蝿い、主に萃香が
しかし女三人で飲んでる中に身を投じるのは危険すぎる
というかあんだけ食ったのに酒は入るんだな
「はぁ・・・冬の空は綺麗だなぁ」
「そうね、でもこんなところにいると風邪引くわよ」
「霊夢・・・よく西瓜から逃れられたな」
「アリスを生贄にしてきたわ」
「はは、酷いな」
霊夢はさっきまですごく楽しそうに笑っていた
だけど今は
「ねぇ○○、私たちはいつまでこうして笑っていられるかしら?」
「さぁな、少なくともこのまま平和に行けば・・・お前が死ぬまでだろうな」
「・・・」
彼女は人間だ、俺は妖怪
何事もなければ彼女が先に死ぬ
俺に悲しみを残して逝ってしまうだろう
「人生百年、あと7,80年はあるんだぜ?」
「うん、私にとっては一度きりの短い人生・・・けど、貴方にとって、その数十年は」
「ああ、短いもんだ・・・でも、お前が一緒なら、その数十年は掛け替えのない一日の積もったものだと、思う」
霊夢がそんな心配をしてるとは思わなかった
残す悲しみ、残される悲しみ、どちらも別れは悲しいだろう
死が二人を分かつまで、別れの心配をするために結ばれたわけではあるまい
「・・・別れの時の心配をするために一緒になるわけじゃ無いだろ?」
「そうね・・・そうよね、まだ終わりの見えていないものの終わりを見ようとすれば、不安にもなるわね」
「次からは気を付けろ、遠くばかり見て足元見てないと転ぶぞ?」
「あら、転んでもあなたが支えてくれるでしょ?」
「馬鹿、転んでも安全じゃなくて転ぶな」
屋根の上は寒かった、だからか霊夢の体温がいつもよりも暖かく感じた
部屋に入ればいいものを、俺と霊夢は寒空の下抱きしめ合った


「・・・やってますねぇ」
「は、はい・・・ところで」
「ん?なに」
「私って何で呼ばれたんでしょう?」
「料理担当?それ+私の相手?」
「ひ、酷い・・・結局私は空気なんだわ」
「大丈夫っ!一人ぼっちの空気なら寂しいけど、二人で空気なら寂しくないわっ!!」
「す、萃香さんっ!」
「アリスッッ!」
ここに奇妙な友情のようなものが生まれたり生まれなかったり





end

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11スレ目>>991


霊夢!!好きだ!結婚してくれーーーー!!!

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12スレ目>>200


「・・・毎度ながら騒がしい」
宴会というのは騒がしいものだとわかってはいるのだが・・・
どちらかというと静かに飲む方が好きだ、しかしただ酒が出来るのだから参加しない訳には行かない
「○○~ちゃんと飲んでる?」
「霊夢・・・お前酔ってるか?」
一人でちびちび飲んでいると、紅白がふらふらとおぼつかない足取りでやってきた
賽銭入れろとかたまには酒かつまみを提供しろとか、酔ったこいつはうるさくて面倒だ
酔った萃香も面倒だがあっちの方が扱いやすい分まだいい
「何で一人で飲んでるのよぅ」
「うるせぇな、別に一人で飲んだっていいじゃねぇか」
「・・・なによ、そんな邪険にしなくてもいいじゃ無い・・・ぐす」
俺の隣に座っていた霊夢が、いきなり泣き出した
「ええ!?ちょ、霊夢!?霊夢さん!!?」
酒瓶片手に黙って涙を流す霊夢、ちょっと怖い
「・・・○○は私のことなんて嫌いなんだ」
「ちょっとまて・・・あー・・・うん、ダイジョブ、俺霊夢の事大好き、ラヴ、愛してる」
するとぴたりと涙が止まって、歪んでいた顔は笑顔になって
勢い良く俺に抱きついてきた
「私も○○の事大好きなんだからー!」
ああ、もう疲れた
このままじゃ心労で駄目になるよ
みんなの目線が痛い、もう俺駄目かもしれん
「ねぇ○○・・・ちゅーして」
「・・・酔いがさめてから後悔するなよ、文句も言うなよ、夢想封印するなよ」
「うん、だいじょーぶ・・・んっ、んん、ちゅ、んんっぷぁ」
「・・・酒の味がする」
「お互いにね、酒臭いー」
それから数時間、皆のニヨニヨ視線にひたすら耐え続けた
でもなんか霊夢が可愛いし、いい思いができたから、もう何かいいや



「頭痛い・・・宴会が始まったぐらいから記憶がないわ」
久しぶりに二日酔い、飲んでも飲まれるなといっていたのにこのざまだ
しかし・・・記憶がない間に変なことをしなかっただろうか?少し不安である
「・・・水・・・飲んで、寝とこ」
記憶はないし、頭も痛い、でも何となくいい事があったのだろう、ちょっとした幸福感に包まれてる気がする
「・・・ない記憶を探しても無駄ね」
水を一杯飲んで、布団に入りなおした
眠気はすぐに、あっと言う間に眠りに落ちる事が出来た

「・・・寝てやがる」
一度起きた形跡はある、恐らく二日酔いでダウンしているのだろう
「あんだけ飲みゃあな・・・」
しょうがないな、コイツが起きるまで看といてやるか
起きたときどういう顔をするかな?
憶えてないならそれでもいいけど、憶えているなら、それはそれできっと面白い反応をしてくれるに違いない
さて、それまではこの少女の寝顔でも眺めて、暇をつぶすとしよう


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最終更新:2011年02月26日 23:31