霊夢22



13スレ目>>196 うpろだ961


「ふあああぁっ……。まったくこんな朝早くにどこ行くのよ?」
 霊夢のあくび交じりの愚痴を聞きながら俺は一心不乱に自転車のペダルを漕いだ。
「この間見晴らしがいい場所を見つけてね。そこから上る朝日を見たら綺麗だろうって」
「ああ、だからこんな明け方に出かけようなんて言ったのね」
 空はだいぶ明るくはなっているがまだ太陽は昇っていない。しかし日が昇っては意味がないので俺は更にスピードを上げた。
「きゃっ!? いきなり飛ばさないでよ! で、なんで急にそんなことしようと思ったの?」
「ああ、前に見た映画でさ、最後に二人で朝日を見に行くシーンがあってそれに憧れてて一度やってみたくなってさ」
「その憧れに付き合わされる私の身にもなってほしいわ」
 それでもなんだかんだいいつつ付き合ってくれる霊夢。
「あ、霊夢寒くない?」
「大丈夫よ。あったかいお茶もあるし」
 振り向くと荷台に乗ったまま器用にお茶を飲む霊夢がいた。
「……そのお茶どこから取り出したの? 持ってきていたようには見えなかったんだけど」
「乙女のひみつ」
 まあ気にする方が負けなんだろう。
 そしてようやく目的の場所にたどり着いた。そこはちょっとした小高い丘で周りが見渡せる綺麗な場所だった。
「間に合ったみたいだね」
「そうね」
 そして今ゆっくりと太陽が昇り始めた。朝靄の中朝日に照らされている景色は雲海のように見えてすごく幻想的だった。
「綺麗だね」
「うーん、まあそういえばそうね。私はこういうの見慣れているから○○には珍しいのかもね」
「あらら、つれないお言葉」
「で、ここまで連れてきた本当の理由は?」
 そこまでお見通しか。俺はゆっくりとしゃべり始めた。
「霊夢さ、この間のことまだ引きずってるでしょ?」
「……」
 それは夜更けに霊夢が帰ってきた時のことだ。服は返り血で真っ赤。顔は蒼白で表情が抜け落ちてまるで能面のようだった。
 驚いている俺の前を通り過ぎすぐに寝室に入ってしまった。心配になって霊夢に話を聞こうとしたら
「入ってこないで」
 と一蹴にされてしまい、俺は行き場をなくした手を引っ込めて自分の布団に戻っていった。
 翌日訳を聞こうとしたらやんわりと微笑んで気にしないでと言われた。明らかな拒絶だった。
「霊夢ってさ、こうある一線からがちっと入れさせない部分があるよね。話を聞いたら俺が気を悪くしたり
 もっといえば俺に被害が及ぶかもしれないってことを考えてくれてのことなんだろうけどさ」
「……」
 太陽の方を向いて話しているため今霊夢がどんな顔をしているかはわからない。
「そうやって一人で背負い込んでるのを見ているこっちの身にもなってよ。つらいよ」
「――でも、何も聞かない」
「えっ?」
 驚いて俺の方を向いた霊夢の瞳をじっと見つめる。
「けれどさ、その背負ってる物のほんの一部でもいいから俺にも持たせてよ。それが無理なら俺に寄りかかってきて。
 俺だって霊夢を助けたいよ。だって俺は霊夢の恋人なんだから」
 キョトンとした顔をしていた霊夢だけれどだんだんと泣き顔に変わっていった。
「……うくっ、そんなこと、今いわないでよぅっ、○○のばかぁ」
 えぐえぐと泣き出した霊夢の背中に手を回してそっと抱きしめると堰を切ったように泣き出した。
 俺は霊夢の気が済むまで優しく髪をなで続けた。



「うー、信じられない。○○に泣かされた」
「人聞きの悪いこというなぁ」
 あの後さんざん泣いたため目が赤くなってしまい恥ずかしいから元に戻るまでこのままでいてと霊夢にいわれそれまでずっと彼女を抱きしめていた。
 俺は泣き顔の霊夢を見てみたくて顔を覗き込もうとしたら「見ないで」と胸に顔を埋めてしまい、結局見ることができなかった。
 そして行きと同じように霊夢を荷台に乗せて俺は自転車を漕ぎ出した。
「でも○○は私を支える自信ある? 私の背負ってるもの結構すごいわよ?」
「うーん、じゃあ支えきれるよう鍛えなくちゃね」
「鍛えるってなにを?」
「霊夢を軽々と抱えられるように体を」
「あははっ、なにそれ? それ私の体を支えてるだけで私全部を支えてるわけじゃないじゃない」
「やっぱり?」
「あたりまえよ」
 しばらく二人で笑いあったあと霊夢は俺の背に体を預けてきた。
「……○○はなにもしなくていいよ。むしろそのままでいて。それだけで十分私を支えてくれてるから」
「わかった」
 背にある暖かさを手放したくなくて俺はペダルを踏む力を緩めてゆっくりゆっくり帰り道を進んだ。

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13スレ目>>295 うpろだ967


「~♪」
 俺は鼻歌まじりに紙に筆を走らせる。
「○○なにやってるのよ?」
「ああ、博麗神社の絵を描いてみたいと思ってね」
「この間霖之助さんのところでもらったやつさっそく使ってるのね」
 そう、この間香霖堂で画材道具一式を見つけてしばらく忘れていた絵描き魂がむずむずとざわめきだしたのだ。
 なんとかして手に入れたいので霖之助さんと交渉したところ何か一枚絵を描いて見せてほしいといわれ、香霖堂の全景を描いてみせたところ
 君にならこれを渡してもいいと言われ、さっそく活用しているのであった。
「そういえばこの間それ持って出かけていったら紅魔館と永遠亭の絵を描いてきたわよね」
「うん、今度守矢神社の絵も描きたいと思ってるから」
「はぁ、ほんと物好きね。そのうち幻想郷の景色全部描きあげちゃうんじゃない?」
「まあ俺としてはそういうつもりだけど」
「え? 冗談のつもりで言ったんだけど。まさか阿求みたいな本を創るのを目指してるの?」
「ははは、それはない。だってあの二つの絵輝夜とレミリアが持ってっちゃったじゃないか」
 宴会のときに俺が紅魔館と永遠亭を絵にしていることが話題に挙がりそれを見せてほしいといわれたのでちょうど描きあがっていた二つの屋敷を見せたら
 二人同時に「これちょうだい」ってハモったときには笑ってしまったのを覚えている。
 その絵はちゃんと額に入れられて居間に飾られているらしい。ちょっと恥ずかしい。
「それに俺が絵を描いてるのはこの幻想郷に俺がいた証を残したいからかなぁ」
「ふーん」
「なにかで知ったけれど人が一生で書ける線は地球、あ、地球ってのは俺がいた世界の住んでいる星のことでな、それの6週分らしいんだって。
 で、その線分俺は絵を描いてその軌跡を残したいなぁって思っているわけ。まぁ案外半分もいかないうちにルーミアのお腹に収まってたりしそうだけどな」
 あははと笑いながら冗談を言ったのだが、カランと箒が倒れる音がしたかと思ったら背中から霊夢に抱きしめられた。
「……あのね、そういうことって言葉にすると本当になったりするのよ。お願いだからそういうこと二度と言わないで」
 ぎゅっと抱きしめる腕に力がこもった。
「……ごめん」
「わかればよろしい」
 霊夢は腕を解くとまだ描きかけの絵を覗き込んできた。
「ここに描かれてるの私?」
 指差したところには箒を持った人の姿が小さく描かれていた。
「ああそうだよ」
「こんな細かく描けるってのが私には信じられないわ。しかもこれ覚えて描いているんでしょう?」
「用は慣れだよ。慣れ」
 と、俺は前々から思っていたことを口にする。
「霊夢、こんど絵のモデルやってくれないかな?」
「えっ? 私なんかでいいの?」
「うん、久しぶりに人物画も描きたいと思っていたし」
「わ、私なんかで良ければいつでもいいわよ」
「じゃ今度暇なときにでもお願い」
「わかったわ。じ、じゃ掃除に戻るわね」
 箒を拾ってまた掃除を始める霊夢は心なしか嬉しそうに見えた。



 あの話からしばらくたった後、ようやく霊夢が絵を描いてもいいと言ってきたので部屋で彼女を待っていた。
 しかし、遅いなぁ。服でも選んでるんだろうか。更に十数分後やっと霊夢がやって来た。
 いつもと変わらない巫女服で心なしか顔が赤くなっているみたいだ。
「どうしたのさ? 結構時間かかってたけどいつもと同じみたいだけど」
「ちょっと心の準備がね。それじゃ準備するから」
 そう言うと霊夢はしゅるしゅると服を脱ぎ始めた。え? え? いったいなぜ??
「えええええっ!? ちょっ、ちょっと待って!? なんで服脱いでるの!?」
 なんとか再起動したとき霊夢は下着姿でさらしをほどきにかかっていた。危なかった……
「え? え? だって外の世界じゃ人物画は裸で描くものじゃないの?」
「そういう絵もあるけど全てがそうじゃないよ……。ってかその話誰から聞いた?」
「ゆ、紫からだけど……」
 はっはっはっ、やっぱりそうか。今度会ったら油彩で額に肉を書いてやる。
「悪いけど、服着てくれないかな。裸じゃちょっと描き難い……」
 女の子の裸を見て絵が描けるほど俺は人間できてません。
「う、うん。わかった。でポーズとかとった方がいい?」
「いや。普通に座っていてくれればいいよ」
 そして目の前で正座している霊夢を俺は絵に写し始めた。

 ――青年描写中――

「よしっ、こんなものかな。霊夢お疲れ様、もう動いていいよ」
「ふうっ、動かないってのも疲れるわね。絵見せてもらってもいい?」
「ああ、いいよ」
 俺の後ろに回りこんで絵を覗き込む霊夢。
「へぇ、結構うまく描けてるわね」
「まだ乾いてないから触らないでね」
 中央に軽く斜めに正座してこちらを見て軽く微笑む霊夢がそこに映し出されていた。久しぶりに人物を描いたがなかなかうまく描けているようだ。
 じっくり眺めている霊夢がその証拠だ。
 絵を見てしばらく何か考えていたようだが考えがまとまったのか霊夢が絵の一角を指してこういった。
「ねえ、この空いてるところに○○を描き加えてよ」
「え? 別にいいけどなんで?」
「そ……それは、このまま一人だとちょっと寂しいし、もしかしたらふ、夫婦みたいに見えるかなぁって、な、何言わせるのよっ」
 はたかれた。
「ああ、ご、ごめん」
「……まあいいけどさ」
 そうして霊夢の隣りに俺を描き加え、絵は完成した。
 ちなみにその絵はというと居間の見やすい位置に飾ってあった。
 それを見た魔理沙や萃香がまるで夫婦みたいだなと冷やかしたのだが、逆に霊夢のお惚気を聞かされ砂を吐くはめになったそうだ。
「ねえ、これからさ、こんな絵をいっぱい増やせていけたらいいね」
 二人でお茶を飲みながら霊夢がそう話し出した。
「本当に結婚して白無垢と紋付袴着た二人の姿とか子供の絵とか、おじいちゃんおばあちゃんになったところまで。
 だからさ、約束しない? これからたくさんの思い出をつくるため、決していなくなったりしないって約束」
「それってこの間言ったあれを打ち消すのも入ってる?」
「まあね。で、約束する? しない?」
 霊夢はそっと手を差し出してきた。
「ああ、約束する。勝手にいなくなったりしない。霊夢も約束してくれないか?」
 俺は彼女の手を握りそっと指を絡ませた。
「うん。約束する」
 どんなことがあろうと決して解けないよう願いを込めて――

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13スレ目>>406 うpろだ988


 幻想郷に迷い込んで、
 右も左もわからず夜空の下を歩いていた僕は、
 妖怪にとって格好の標的だった。
 霊夢に助けられなければ、あっと言う間に食われていただろう。
 颯爽と現れて僕を救ってくれた霊夢は、
 凛々しく、神々しく、美しかった。

 行くあてもなく、そのまま博麗神社に住まわせてもらうことになった僕は、
 幻想郷に、そこに住む人々に、そして何より霊夢に惹かれていった。
 同時に、博麗の巫女として妖怪退治を続け、幻想郷を守ることがいかに孤独かを知った。

 いつしか、僕はこの世界で生きていく意志を固めていた。
 少しでも、霊夢の助けになりたかった。
 彼女を、支えてやりたかった。
 その重荷を分かち合いたかった。






 どのくらい前になるだろう。
 強い妖怪と戦い、なんとか倒したものの重傷を負った霊夢の元に、
 間髪を入れず助けを求める知らせが届いた。
 起きることもできない身体で、行かなくちゃ、と繰り返す霊夢。
 行かせるわけにはいかなかった。

 だから、紫さんに頼んだ。
 自分はどうなってもいいから、霊夢を助けたいと。

 紫さんがくれたのは、
 彼女の力を込め、ただの人間である僕でも使えるようにしてくれた、一枚の符。
 人妖の境界を一時的に操り、短時間ながら強力な人外の力を与えてくれるそれを、
 紫さんは少し悩んでから僕に手渡した。

「覚悟があるなら使いなさい。
 ○○のことだから、悪用したりはしないでしょうね。
 ……でも、多用はおすすめしないわ」






 符の力を使い、僕は里の人を襲っていた妖怪を倒した。
 その後霊夢はなんとか回復したものの、まだ予断を許さない状況だった。
 僕は何度も符を使い、霊夢には内緒で、何度も代わりに戦った。
 その内、だんだん身体がきしむような感覚が現れ始めたが、気にしてはいられない。
 霊夢は気付いていなかったけれど、それでも力になれるのが嬉しかった。

「最近は人を襲う妖怪が少ないのかしら」

 なんとか起きられるようになって縁側でお茶を飲んでいた時、
 霊夢がぽつりと言った。

「いいことじゃないか」
「そうだけど……何となく不安なのよね」

 どきりとする。霊夢は勘がいい。

「でも……○○と一緒にゆっくりできる時間が増えるのは嬉しいかな」
「ん?霊夢、何か言った?」
「……ううん」

 霊夢がなんと言っていたかは聞き取れなかったが、
 気付かれずに済んだようだ。
 こうして、何事もなく二人で過ごす時間が、とても幸せに思える。
 例え、僕の一方通行の気持ちだとしても。





 ある日、眠っていた僕のところに突然紫さんが現れた。
 僕の身体は、人妖の領域を行き来し過ぎた負担のために、
 もう限界が近いと言う。

「もう一度符を使ったら、貴方の生命は消えてしまう。
 私にできるせめてものことは、貴方を戦わずに済む外の世界へ帰して、
 休ませることだけよ」

 そんなわけにはいかない。
 まだ霊夢の身体は治りきっていないのだ。
 戦えば生命に関わるのは、僕も霊夢も同じ。
 ならば、答えは一つだ。





 里が襲われているという知らせが届いた。
 ……行かなければならない。
 これさえしのげば、霊夢も何とか大丈夫だろう。





 夜も更けた。
 こっそりと、神社を出る。
 身体のあちこちが、悲鳴を上げているかのように痛む。
 頭の中で紫さんの声が、やめなさい、と響いている。 
 痛みを何とかこらえ、声を振り切り、懐から符を取り出した。

「―○○?そんなところで何をしているの?」

 まだおぼつかない足取りで、霊夢が歩いてくる。
 どうやら気付かれてしまったらしい。

「そのお札は?紫の力を感じるわ。人妖の境界を操る……
 ○○、まさか」

 ああ。やっぱり彼女は勘が鋭い。

「私の代わりに、妖怪退治を?」

 僕は、黙って頷いた。

「そのお札の力を使って?」

 重ねて、頷いた。

「馬鹿っ!どうしてそんな危ないことを!」

 霊夢は、僕の胸に飛び込んできた。
 服がぎゅっと掴まれる。

「ただの人間なのに、無理しないで。
 貴方はそんなことしなくていい。傷つかなくていいの
 ……ううん、傷つかないでほしい。
 ○○、貴方のこと、好きだから」

 初めて、霊夢の気持ちを聞いた。
 正直、嬉しくて仕方がなかった。
 ―だけど、それを聞いたらなおさら、伝えなければならない。

「僕も、霊夢のことが好きだ。でも」
「…………」
「そろそろ、身体にガタがきてるみたいなんだ。
 これを最後に外の世界に、帰らないといけない」

 少しだけ、嘘をついた。

(そんな嘘をついてなんになるの)

 紫さんの悲しげな声が聞こえる。

(どのみち会えなくなることに変わりはないのに)

 わかっています。

(本当は、帰ることさえできずに死んでいくのに)

 それでも、そう言わずにはいられなかった。

「私が行くわ。○○はここで待っていて」
「だめだ。今行けば、霊夢の方が危ない」

 霊夢を引き離し、背を向ける。 

「○○のこと、愛してるわ。
 だから、貴方には行ってほしくない。
 これ以上傷ついてほしくない。
 例え私がどうなっても」
「……霊夢のこと、愛してるよ。
 だから、僕が行ってくる。
 例えもう会えなくなっても」

 振り向いて抱きしめたい衝動を抑えて

「行かないで!」
「……さよなら、霊夢」

 僕は、符を目の前に掲げた。

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13スレ目>>496 うpろだ999


「ふぅ……23体目完成。まだまだ先は長いなぁ」
「お疲れ様。はかどってるかい?」
「まぁ、半分ちょい位は作れたかと」
 ○○は霖之助からお茶を受け取って一休みをすることにした。
 今彼は香霖堂の台所を借りてバレンタインデーのお返しを作っていた。
 何故この場所なのかと説明するならば他の場所では何を作ってるか誰かに知られてしまう可能性があり、その心配がない所はここしかなかったのである。
「にしても頑張ってるね。昨日も寝ていないんだろう?」
「ええ、でも大丈夫ですよ。永琳から薬貰いましたから。一週間寝なくても大丈夫な強壮剤を。その後一ヶ月ほど昏睡したままになりますけど」
「ぶっ!? それ本当に飲んだのかい?」
「いやいや、さすがにそれは。もう少しマイルドなやつを処方してもらいましたよ」
「どっちみち飲んではいるんだね……。にしても本当に全員分のお返しを手作りするつもりなのかい? 市販品でも喜んでくれると思うけれど?」
「それはできません。みんな俺のために頑張って作ってくれたり、何を送るか悩んでくれたはずです。
 そのお返しをただの市販品で済ますことなんて俺にはできません。」
「……なんとなく君が彼女たちに好かれているか解った気がするよ」
「そうですか? 俺にはさっぱりなんですけど」
「それも君の美点かもね。それじゃ残りも頑張って」
 霖之助は台所から居間に移動してちゃぶ台の上に見慣れぬ紙袋が置いてあるのに気がついた。
「○○ー! これ君のかい?」
「ああ、それは霖之助さんの分ですー! 台所占領してるんでせめてものお詫びですー! 食べてくださいー!」
 紙袋の中身を覗くと醤油の香りが漂う煎餅が入っていた。
「ほんと、とことん律儀だねぇ君は」



 来たる3月14日、博麗神社には大勢の少女達が集まっていた。
 集まったのは紅魔館、白玉楼、永遠亭、マヨヒガ、守矢神社、風見、鬼、天狗、閻魔と死神など過去を振り返ってもこれだけの人が集まったことは無いといえる位の人妖の数だ。
 そしてなにより違和感があるのは酒や肴ではなく紅茶やジュース、お菓子の山が用意されていることである。
 大酒豪ばかり、というか大酒豪しかいないこの集まりでもやはり乙女であるのだろう。甘いものも苦手ではなくさまざまなお菓子に舌鼓を打っていた。
「にしても凄い人だかりだね。しかもほとんどが妖怪で幻想郷最強クラスばっかり。知らない人が見たら戦争でもするんじゃないかって思うんじゃない?」
「そうかもね。あ、これ美味しい。ねえこれ鈴仙がつくったの?」
「うん。焼き加減がちょっと難しかった」
「おや、珍しい組み合わせだ。鈴仙にフラン、楽しんでもらえてるかい?」
 二人が声のした方に視線を向けると小さな包みを持った○○がこちらに歩いてきていた。
「楽しんでるよー。にしてもホワイトデー当日にまさか全員集まってパーティやるとは思わなかったよ。」
「パーティだったら私のお屋敷でもよかったのに」
「そうだね。でも宴会やるところがいつも博麗神社だからここでやろうって思っただけなんだけどね」
「そーなのかー。で、私たちまだお返し貰ってないんだけど?」
「さっきからみんなのところ回り歩いてるのはそのためなんでしょ?」
「うん。で、これが鈴仙とフランの分だよ」
 ○○が差し出した包みを受け取り二人は中身を取り出した。
「うわぁ……」
「すごーい……」
 そこには二人の姿がデフォルメされた飴細工人形があった。
「これ、全部手作りしたんでしょ? 苦労したんじゃない?」
「そうだよね。私の羽の部分まで丁寧に作りこんでるし」
「ははは、まあね。今日まで一睡もしてないし。でも全然辛くないのはさすが永琳の薬だよね」
「ああ……師匠から貰ってた薬このためだったんだ……。新薬だから効果のほど教えて欲しいって言ってたよ……」
 引きつった笑い顔になる鈴仙。
「でも、こんな凄いもの貰っていいのかな? 私ただの手作りチョコだったんだよ?」
「いいんだよ。チョコをくれただけでも嬉しかったんだし、ある意味俺の自己満足だよ」
 ○○の言葉を聞いても、むーと納得いかない顔の二人。と、何か思いついたのがギラーンと二人の目が輝く。
 その眼光にただならぬものを感じて半歩後ずさる○○。
「ふふ、これだけ良いもの貰うだけじゃ悪いから私が作ってきたお菓子食べさせてあ・げ・る☆」
「私も~♪」
 目の前に差し出されたお菓子を眺めて○○はなんとか逃げられないか視線を動かすが、二人の目が決してニ・ガ・サ・ン☆と訴えているため
 ああ、前にもこんなことあったような……とデジャブを感じながら一口ずつ齧った。
 食べかけのお菓子をじっと見つめていた鈴仙とフランだったが、おもむろにそれを口の中に放り込んだ。
「あ」
「ふふっ、間接キスしちゃったね」
 その瞬間空気が軋んだ。
 周りから気絶しかねない殺気が噴出し始める。
「あらあらウドンゲ、師匠を差し置いてなに○○とイチャイチャしているのかしら? 一度上下関係をはっきりさせておこうかしら?」
「初めて意見が合ったわね。抜け駆けはいけないわ、フラン。姉より優れた妹は存在しないことを教えてあげるわ」
「何言ってるんですか師匠? こういうものは行動力がものをいうんですよ。師弟関係なんて二の次です」
「そうね、策ばかり考えているお姉様なんかじゃ○○といつまでたってもイチャイチャなんて出来ないわよ?」
「へぇ、言うじゃない。いいわ、あなた達に目にものを見せてあげるわ」
 その言葉を皮切りにみんな思い思いのお菓子を手にジリジリと○○に近づいていく。
「ま、○○? ほ、ほらこの飴やるよ。わ、私の食べかけだけど、い、一緒になめないか?」
「○○、このオンバシラポッキーを使ってポッキーゲームをしよう」
「い、いや、みんなちょっと落ち着こうよ、ねぇ……」
 もはや○○の貞操は風前の灯火となりかけたとき救世主が現れた。
「夢想封印 散!!」
 ○○を囲むように光弾が着弾する。そして○○の目の前に一人の少女が着地した。
「はいはい、あんたらそこまでにしておきなさい。○○が怯えているわよ?」
「た、助かったよ霊夢」
 ほっと息をつく○○。が、このとき彼は気づくべきであった。目の前の少女は救世主ではなく、己を狙う狩人であったことを!
「え? ちょっ――」
 目にも留まらぬ速さで霊夢は○○の唇を奪った。
「――――!?!?」
「「「「あーーーー!!」」」」
「んふふ、どう? さっきのお菓子の味なんてわからなくなる位甘かったでしょ?」
 彼女に似つかわしくない妖艶な瞳で見つめられ、壊れた人形みたいにカクカクと頷く○○。
「おのれ霊夢! ○○の唇を奪うなんて暴挙にでるとは見下げ果てたわ!!」
「あーうー! ○○はみんなで愛でるもので摘み取るのは反則なんだぞ!」
 皆の怒りなどどこ吹く風でひょうひょうと受け答える。
「ふっ、それはあんたらが決めたことでしょ? それに○○はうちに居候してるのよ? それを主の私がどう扱ってもいいんじゃない?」
「くっ、○○を所有物扱いかっ! ならば弾幕ごっこで勝利したものが○○の所有権を得るというのはどうだ!?」
「いい度胸ね。この際○○を貰うついでに幻想郷で誰が一番恐ろしいかこの場で知らしめてやるわー!!」
「「「「はっ、思い上がったな博麗の巫女――!!」」」」
 凄まじい轟音と弾幕が乱れ飛び、最大クラスの弾幕ごっこが開始された。これが後の求聞史記にある第一次幻想郷大戦である。
 歴史的に貴重な場面を○○は死んだ魚のような目で見つめていた。
「……どうしてボクがこんな目にあうのママン……なんにもおかしなことしてないのにみんながボクを取り合うよママン……」
 遠い星の人間災害の気持ちが解った気がした○○だった……



 結局あの後更なる大混戦となり勝者も敗者もいないうやむやな結果になり、そのままお開きということになった。
 そして博麗神社の縁側でうつ伏せで○○はぶっ倒れていた。
「はぁ、疲れた……みんなあれだけ暴れてまだ元気なんだもんなぁ」
 と、目の前にコトリと湯のみが置かれたので顔を上げると霊夢がそこに腰掛けていた。
「お疲れ様。全員分のお返し作るの大変だったでしょ」
「いや、結構楽しかったから辛くはなかったよ。アリスの人形を作る気持ちがなんとなくわかったような気がする」
 体を起こして庭を見ながらまったりとお茶を飲む二人。しばらくそのままでいたが○○はふと何かを思い出したのか席を外した。
 そして小さな小箱を持ってきて霊夢の隣にまた腰掛けた。
「はい、これ霊夢に」
「え? なに?」
「開けてみて」
 箱を開けてみるとそこには対になった青い硝子のお猪口が収まっていた。
「わぁ……きれい……」
「前にさ、お気に入りのお猪口割っちゃって落ち込んでたでしょ? で霊夢に似合いそうなのを見つけてきたんだ」
「ああ、ずっと前のこと覚えててくれたんだ……ありがとう、大切にするね。ねぇこのお猪口でさっそく飲まない?」
「うん、いいよ。じゃあお酒取ってくるよ」
 立ち上がろうとした○○だったがバランスを崩して倒れこんだので霊夢は慌てて抱きとめる。
「ちょっ、○○大丈夫?」
「あ…う…マズ……限…界……みたい…だ……ご…め……れい……む」
 そういい残して○○は眠ってしまった。霊夢は○○の頭をそっと抱きしめた。
「本当にお疲れ様。今はゆっくり休んで起きたら一緒に飲みましょ……」
 それから○○は3日間眠りこんだがその間霊夢は片時も離れず、そして2人きりの酒宴を楽しんだそうだ。

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13スレ目>>109


「ねぇ○○、私が貴方を退治しようとしたらどうする?」
縁側でぼーっとしていた霊夢は、突然物騒なことを言い出した
しかし彼女が単なる思い付きでそんなことを言うはずはない、恐らく何か考えがあるのだろう
そしてその答えを俺に求めた
「そうだな、お前になら殺されてもいい・・・なんていうつもりはないしなぁ、殺られるまえに殺るだけかな」
下手な嘘や、取繕った言葉は、意味を成さない
何より嘘の回答は、コイツとの間に相応しくない
「・・・そう、私は貴方をちゃんと仕留められるか不安だわ」
何処を見ているのか解らない眼で
彼女は不安げな表情を見せた
きっと彼女は俺を殺すことを躊躇う、でも必要なら、きっと最後は殺そうとしてくれる
俺も、それに応えて、彼女を全力で殺し返そう
「なぁ霊夢、俺のこと愛してるか?」
「ええ、愛してるわ○○」
「いつか殺しあう仲に成るかもしれないとしても?」
「ええ、貴方を好きでも、愛していても、殺さなければいけないときは、そうするだけよ」
「そうか・・・やはりお前はいい女だ、お前を愛せてよかったよ」
こんなにいい女には何度生まれ変わろうともなかなか出会えないだろう
だからこそ、彼女とこれからもずっと、こうしていたいものだ
でも、少し、ほんの少しだけ、霊夢と、殺す殺さないの、命の取り合いをしてみたいと思ったりもした
「随分楽しそうに哂うのね、何を考えていたの?」
どうやら顔に出ていたらしい、お前と殺しあう想像をしていたとは言えず
「来ないことを望む未来を想像してたのさ」
そう、誤魔化しておいた
彼女も何かを感じ取ったらしく、嗜める様なまなざしを俺に向けた後、短く笑った

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13スレ目>>171


「霊夢・・・霊夢、霊夢ッ!・・・何か違うな」
この日、博麗のことを名前で呼ぶ練習+エアキス(キスのよこーえんしゅー)
を行っていた俺は、色々と青春していた
「さっきから人の名前を呟いて・・・何事?」
「くぁwせdrtgyふじこlp;@:!は、は、博麗!!?」
馬鹿な、家の鍵は閉めておいた、カーテンも閉めて!人が入る余裕などないはずなのになぜぜぜぜZEZEZE
「いくら呼んでも返事がないから、裏口から入ったわよ」
オゥ!シット!思わぬところを忘れていたぜ!!
「こ、こうなったら・・・もう自棄だぁぁぁああ!!!」
「な、なに!?」
「イマジネーション=ファンタズムッッ!!!」
ドドドドドドドドドドド
「こ、これはっ!!?スタ○ド!?」
説明しよう!イマジネーション=ファンタズムとは!
使用者が現実可能な事ならば一瞬にして想像を実現させてしまう恐ろしい能力であるッッ!
「霊夢はッ!俺とッ!キスをするッ!!」
簡単に言うなれば
妖怪?ボッコボコにしてやんよ、と言う想像に対して、勝率が5割以上ならば、戦わずして勝利することも可能!
してこの「霊夢は俺とキスをする」などの妄想の場合、相手が自らに好意を抱いていなければ、実現は不可能っ!
つまり、この能力を使って相手が自分に好意を抱いているか否か、判別する事が出来るのだっ!
「なっ!これは・・・魔力!?ぐ・・・」
霊夢は、俺の正面へ引き寄せられると
背を頑張って伸ばして、キスを、してきた
「ズギュ~ン」
や、やった!さすが○○!俺たちに(ry
頑張って背伸びをしてキスをしてくる霊夢が、あまりに可愛くて・・・俺は、俺はっ!!
「霊夢ッ!愛してるぞぉぉぉぉお」
思い切り、抱きしめた
絶対に離さないぞという、馬鹿の宣言
「馬鹿、くだらない事に力を使わないでよ」
「す、すまん、暴走した」
「あんなことしなくても、私はあんたが好きなんだから」
「れ、霊夢・・・大好きだ、愛してるよ」
「うん、私もよ、○○・・・愛してる」
そうして、俺たちはめでたく、結ばれることになったのだ
~完~

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13スレ目>>238


じー
霊夢「なに?」

ついっ
霊夢「なっ」

こちょこちょ
霊夢「や、やめてよ、くすぐったい」

こちょこちょこちょ
霊夢「……」

こちょこちょこちょこちょ
霊夢「……にゃあ」

ぬこ霊夢かわいいよぬこ霊夢

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13スレ目>>251


「暇だな」
「暇ね」

「……」
「……」

「あ、茶柱立ってる」
「縁起が良いわね」

「……」
「……」

「せんべい食う?」
「貰うわ」

「……」
「……」

「ねえ○○。私をお嫁に貰ってくれる?」
「あ、それ無理」
「そう」

「……」
「……」

「なんで無理なの?」
「博麗の巫女が嫁に貰われたらいかんだろ」
「それもそうね」

「……」
「……」

「ねえ○○。婿に貰われてくれる?」
「喜んで」
「ありがとう」

「……」
「……」

「平和だな」
「平和ね」

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13スレ目>>403


「霊夢の髪って綺麗だよな」
 霊夢の髪を数房取って手ですいてみる。サラサラと指の間を抜けていく感触が心地よい。
「別にこれといってやってはいないんだけどね」
「でもそれなりに気は使ってるんだろ?枝毛も見当たらないし」
「そりゃいくらなんでもボサボサにしてたらそれこそみっともないじゃない。
 まあ一番髪に気を使ってるのは輝夜でしょうね」
「まあね」
 たしかにあの腰まである見事な黒髪は目を奪われる。
「でも俺は霊夢の髪の方が好きだな」
「……○○がそう言うんなら今度からもっと磨きかけちゃおうかな」

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13スレ目>>607


「○○ー?起きてる?」
「ん、その声は、霊夢か」
ぼやけた視界に微かに見える紅白、そして声、それだけで彼女と判断するのは十分だった
「・・・眼鏡は?」
「妖精に壊された」
まぁ壊れたのが鼻の骨でなくて眼鏡だったのは良かったのか悪かったのか
外まで注文しなければならないせいか、届くのに時間の掛かる
「もう、大丈夫?」
「・・・せっかくの可愛い顔が、見えない」
「ばか、そんな事言ってる場合じゃ無いでしょ」
俺の前に、何かが近づいて・・・霊夢の手か?
「ほら、ちゃんと引っ張ってあげるから」
そういうと、彼女は俺の手を握り、誘導し始めた
歩き始めた赤子の、母親のように
「霊夢・・・ありがとな」
「ふふ、どういたしまして」
ぼやけて見えないのに、彼女の笑顔だけは、何となく感じ取る事ができた
「早く届くといいなぁ」
「そうね、不便だものね」
「ああ、早く君の顔が見たいよ」
いきなり、霊夢は顔を近づけてきた
俺は驚いたが、霊夢の顔がはっきり見えた
「これぐらい近ければ、ぼやけないかしら?」
彼女の唇が、近い
言葉を発するだけでその吐息が掛かる
俺はたぶん赤くなっている、だが彼女も、十分に赤かった
きっと恥ずかしいのはお互い様なのだと
ぼんやりと、たまにはめがねが無くてもいいかもしれないと、思った

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最終更新:2010年05月14日 00:27