霊夢26



うpろだ1398


「じゃあ、1・2・3で同時にね」
「1・2・3 ね…」

珍しく茶菓子を持って行ったかと思えば
それはそれは珍しい「黒糖たこやき風味かりんとう(ソース味)」
そんなものを食べるのに、だれかお供が欲しい。と思い霊夢を誘ってみた。
いや、お供というか道連れです。本当に(ry

「行くよ。1・2・」

しばらくの沈黙が流れる

「3!」


二人で顔を見合わせ爆笑する

「いや、食べようよ」

「○○。貴方こそ男のクセに卑怯じゃないの?」

そう。二人とも「3」でお互いの出方を伺って、タイミングを盛大に逃したのである。

「で、どうするよ?「コレ」」
「こんな不味そうなもの捨てちゃいなさいよ」

正論だが金を出して買ったからには食べなきゃ損。

「…霊夢。じゃあ俺食べるから、俺食べたら霊夢も食べてよ?」

「う~ん。○○が食べてみて美味しそうだったらね」

「じゃあ、食べるよ」

そろりそろりと黒い長いソース臭いものを口に運ぶ

ボリ…ボリ…とゆっくりと噛む音が神社の空に響く
そして喉を鳴らし飲み込む

「ど…どうだった?」

「うん。うん。まぁ美味しいなぁ」

あまりの微妙な反応に顔に疑いの色が浮かぶ霊夢

「本当に?」
「食べてみたらまぁ分かるんじゃない?」

怪訝そうな顔をして○○の顔を見つめる。

暫くして意を決したのか、霊夢がゆっくり。黒いものを口に運ぶ
口に入った瞬間○○は満面の笑みを浮かべ言う

「霊夢!お茶持ってくる!」

「ッ!!!!!!」

「はい霊夢!お茶お茶!あぁ不味かった~」

お茶を一気に飲み干し叫ぶ

「不ッッッッッ味ーーーーー!!!」

霊夢を見ながら腹を抱えて笑う

「騙したわね!!!」

○○の背中をバシバシ叩きながら愉しそうに笑う
そんなしあわな、お茶菓子の時間

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うpろだ1452


「うひゃー。相変わらず凄まじいな」

 ○○は空を見上げて何時ものセリフを呟いた。
 上空ではまるで花火のような弾幕の嵐が巻き起こっていた。
 なんのことはない。日常となった少女達の恋の鞘当てである。
 華麗な弾幕を見上げ、まったりとしている○○の横にスキマが開き、そこから紫が姿を現した。

「ごきげんよう。○○」
「ああ、紫さん。こんにちは」
「ああ、また弾幕ごっこ? 今回は誰から仕掛けたの?」
「えっと、最初霊夢とお茶を飲んでいたんですけど、そこに魔理沙とアリスがきて、口喧嘩を始めたところに
 咲夜さんが乗り込んできて、今の状態に至るわけです」
「なるほど。経緯は分かったわ。で、今回の勝利者への特権は?」
「負けた人に何でも言うことを聞かせる権利です」
「あらあら、それはいいわねぇ。ところで○○は誰が本命なのかしら?」

 うさんくさい笑みを浮かべる紫の横で○○は決心を決めていた。

「まぁ、あの中にいるのは確かです。それにそろそろ覚悟を決めようと思っていまして」
「ふふ、○○の眼鏡にかかるのは誰かしら? 楽しみだわ」
「その前に他のみんなにもけじめをつけなければなりませんしね」

 と、ようやく決着がついたのか○○の前に霊夢が降りてきた。

「ああ、やっと終わったわ」
「お疲れ様、霊夢」
「ありがと」

 ゆっくりと霊夢に近づく○○。

「大丈夫? 怪我とかしてない?」
「グレイズもしてないわ。けどもう霊力もすっからかん。弾ひとつも撃てないわ」
「それはよかった」
「えっ!?」

 ○○は霊夢を抱きしめるとポケットの中から一枚のカードを取り出した。
 混乱する霊夢を余所に○○は話を続ける。

「これ霊夢が作ってくれた護符だよね。弱い妖怪くらいなら追い払える弾幕が放てるお守り」
「えっ!? ちょっ、○○?」
「それにさすがに抱きしめられたままじゃ避けることも無理だよね」
「あら、○○ったら策士ねぇ」
「う、嘘でしょ? は、離してぇ」

 何とか逃げ出そうと身をよじる霊夢の耳元で○○は囁く。

「ごめんね、霊夢」

 ピチューン




 ……一応勝利者になった○○はみんなに命令する権利を得た。
 その権利を使い、○○は自分にして欲しいことをみんなから聞きだした。



「えーと、あと必要なものは醤油、味噌、あとお米ね」

 咲夜に付き合い○○は荷物持ちとして彼女と買い物にきていた。

「やっぱり男手があると助かるわ。私一人じゃこんなに持ちきれないもの」
「そ、それは、恐悦至極……」
「それじゃ最後にもう一つだけ」
「ま、まだ買うんですか?」
「あの、指輪を買って欲しいの……」

 咲夜の願い通りに○○はアクセサリーショップで彼女に似合いそうな指輪を選んで中指に嵌めてあげた。

「似合いますよ。咲夜さん」
「そう、ありがとう」

 咲夜は紅魔館に帰るまで愛おしそうにずっと指輪を撫でていた。
 そして門に辿り着き、美鈴に荷物を持たせると○○に振りかえった。

「今日はありがとう。本当に助かったわ」
「いえいえ」
「……本当にありがとう。指輪大事にするわ。明日からはまた普通に接するよう努力するわ……」
「ごめんなさい」
「謝らないで……。さ、もう帰って。このままいるのも辛いのよ」
「それじゃ失礼します」

 ○○の姿が見えなくなるまで咲夜は背中を見つめ続けた。

「……咲夜さん、泣いているんですか?」
「違うわ、これは汗よ。そう、心の汗よ……」

 咲夜は美鈴の胸を借りると声を殺して泣き始めた……


 アリスの願いは人形作成の手伝いだった。

「ああもう! そうじゃない!! ここはこうやるの!」
「うう、ごめん。自分不器用ですから」
「似てないわよ」
「な、何故ネタだと分かった!?」

 アリスの指導のもと、やっと○○は人形を完成させた。
 決して上手いとは言えないがしっかり心を込めて作られていることが分かった。

「こんなヘタクソな人形でいいの?」
「いいのよ。○○が作ってくれたことに意味があるの」

 二人で紅茶とアリスが作った手作りクッキーでお茶を楽しみ、たわいもない話で盛り上がると、○○はそろそろお暇すると言って帰って行った。
 ○○が去った後、アリスは隠しておいた自分の姿の人形を取り出して、二つをテーブルに並べた。

「あーあ、フラれちゃったな。もっとハッキリ伝えていくべきだったかしら……。もう……後悔しても……遅いけど……ひっく、うぅっ」

 笑顔の人形の上にアリスの涙が零れ落ちた……



 魔理沙の願いは部屋の片付けを手伝ってもらうことだった。

「にしても凄まじいな。床が見えないってのは」
「だから呼んだんじゃないか。さ、始めようか」

 魔理沙の掛け声と共に掃除を始める。
 二人掛かりで片付けをしてようやく床が見え始めたとき、○○の手に今までとは違うきめ細かな感触の布があった。

「おや、これは――」
「わーっ! それ引っぱり出すなー!!」

 慌てて駆け寄ったため魔理沙は○○を押し倒す形になり、○○の手にはドロワーズが握られ、はたから見れば、下着泥棒を捕まえたようである。

「重い、退いてよ魔理沙」
「女の子に向かって重いはないだろ?」
「いや、だって体重掛けてるでしょ」
「……このままいれば○○は霊夢のところには行けないな」
「それは困るよ」
「……やっぱりか。予想が当たっても、ちっとも嬉しくないぜ」

 魔理沙は○○に覆いかぶさると○○にキスをした。

「……○○はキスするのは初めてか?」
「……うん」
「そうか……霊夢に全部くれてやるのは癪だからファーストキスは奪わせてもらったぜ」
「ごめん」
「謝るなよ。私だって辛いんだぜ……」

 その後はもくもくと掃除をし、夕暮れ前には○○は帰って行った。
 夜、魔理沙の家からはすすり泣く声が聞こえてきた……



「初めてよね、こんなことするの」

 湯船には霊夢と○○。
 ぴったりと体を寄せ合い時折顔を合わせると横を向いてしまう。
 タオルで大事な部分は隠しているとはいえ、やっぱりどこか気恥ずかしい。
 気まぐれに視線を移した窓の外には沢山の星が輝いている。

「あ、あのさ、私のところに最後に来たってことは、その……」
「うん、僕は霊夢のことが、い、一番好きだよ」

 ○○の告白に霊夢は湯に浸かり血行の良くなった顔を更に赤くする。

「じゃ、じゃあ私からも……わ、私も○○のことが、す、好き……」
「あ、ありがと……」

 それからお互いゆでダコのように真っ赤になりながらしばらく時間が経った。
 そして○○が口を開いた。

「あ、あのさ、霊夢にはまだ権限を使いたいんだけど」
「な、なに?」
「えと、その、霊夢の、女の子の一番大切なものをくれない?」
「あ……、うん、いいわ……今まで大事に守ってきたもの、○○にあげる……」

 霊夢は○○の前に立つとタオルをはらりと取り払った。
 湯気にけぶる中、胸から脇腹、そして臍にかけ、湿った肌の上を水滴がつるりと落ち、肌に溶ける。
 緊張しているのか、臍下のあたりが浅く上下していた。そしてその動きで水滴が落ちる。
 ○○の目には朝露に濡れる美しい椿のように映った。

「うぅ……そんなに見つめないで……恥ずかしい」
「あ、ご、ごめん。そ、それじゃ」

 ○○は真っ赤になった顔を両手で覆い恥ずかしがっている霊夢の肩に手を掛けた。
 ほの暗い風呂場で、しかし触れればそこにいるのが解ると言うように○○の指が触れ、押され、揉まれて、舌を這わされて――
 そんな二人の姿をやさしく天狗が見つめていた――






「「っておい!!」」
「あやややや! 見つかってしまいました! これは三十六計逃げるしかありません!!」

 高速で飛び去る出歯亀は途中でスキマに飲み込まれた。
 そしてそれを見送った二人は顔を見合わせ笑い合った。

「さーて、今度文がどうなったか紫に聞いてみないとね」
「あんまりヒドい目に遭ってなきゃいいけどね」

霊夢は○○の膝の上に乗ると触れるだけのキスをした。

「それじゃ、今度こそ私の何もかもを○○に見てもらうわ……」
「うん、全部僕のものにしてもいいよね」
「ええ、全てを貴方に捧げます……」

 ○○は、さっきの続きと言うように霊夢の臍をいじる。
 ふあっ、と、可愛らしい悲鳴をあげて身をよじる。

「あっ、……な、何だか手つきが、やらしいわよぅ、やぁっ」
「霊夢が可愛過ぎるのがいけないんだよ」

 その言葉に霊夢は一瞬にして沸騰。
 頭から湯気を噴く。
 夢うつつのまま、霊夢は臍下に指が来たのを感じた。

「おねがい……どんなに泣いても、決してやめないで……わたしのすべてをあなたのものにして……」

 互いに喜びの声を奏で、愛し合う二人を月だけがみつめていた――

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うpろだ1464


 神無月の某日、俺はとある駅で待ち合わせをしていた。
 紫が神様達の出雲大社に集まる行事に合わせて特別に外界への「扉」を開けるという触れ込みがあった。
 それに俺は応募したのだが、誰を連れていくのかと聞かれ霊夢と一緒にと答えると紫は表情を曇らせた。
 何でも博麗大結界を維持する巫女が何日も留守にしていられないらしくせいぜい一日かぎりだけどそれでもいいかと言ってきた。
 別に何日も日数はいらないし、むしろずっと一緒に泊まったりなんかしたら俺の理性が完全に無くなってケダモノになるだろうからいいと言うと
 外に行く日程を決めてくれという運びになり霊夢と相談して都合の良い日を合わせた。
 そして現在俺は彼女が来るのを待っていた。
 デートは待つ時間も楽しいものよ、と紫に言われ別々に出発することになったが確かに霊夢がいつ来るか分からないって結構ドキドキする。
 そんな考え事をしていると、ふと袖を引っ張る感覚に気づくとそこには可愛らしい女の子がいた。
 チェック柄のプリーツスカートを履き白のブラウスにカーディガンを羽織り、頭にはニットの帽子を被っていた。
 俯き気味だった顔を上げた少女の顔は見覚えがあった。

「……ひょっとして霊夢?」
「そうよ。ようやく気付いたの? ずっと傍に居たのに気付かないんだもの」

 驚いた。普段巫女服しか着ていないからパッと見ただけでは霊夢とは気付かなかった。
 可愛い子がいるなぁとは思っていたがまさか霊夢だったとは。

「……似合ってないの? いつもの巫女服で来ればよかったかしら……」
「あれは神社、っていうか幻想郷だから良いんであってこっちで着てたら変な目で見られるよ……」
「ならこっちの格好でよかったのね。紫が用意してくれたんだけど似合ってる?」
「すっごく可愛い。最初誰だか分らなかったもの」
「あ、あう……。そんなに褒められると照れるわよ……」

 しかしどう見ても釣り合わないよな。俺は普段着に黒いコート羽織って幅広のストローハットを被っただけだし、時折飛んでくる恨みの籠った視線が怖い。
 このままでいるわけにもいかず、とりあえず電車に乗ることにした。

「それじゃ行こうか。逸れないように手を繋ごう」
「う、うん」

 おずおずと俺の手を握り返してきた霊夢の手は暖かく柔らかかった。





「で、いきなりこんな洗礼を受けるとは思わなかったわ」

 ぎゅうぎゅうのすし詰め状態の電車の中でそう愚痴をこぼす霊夢。
 通勤ラッシュの電車の感覚は何だか懐かしく感じるが慣れてないと耐えるだけでもキツイだろう。
 俺は人ごみに背を向けると両手をつき支えを作ると霊夢を守るように壁になった。

「これで苦しくないだろう?」
「う、うん。でも周りに迷惑かけるんじゃない?」
「これぐらいはみんな許容範囲だよ。人ごみに慣れてない霊夢の方が辛いだろ」
「でもこのままじゃ悪いから……」

 背中に手を回し、ギュッと抱きついてくる霊夢。
 俺も霊夢の背に手を回してお互い密着する。
 うーん、今まで電車の中でイチャつく奴の気がしれなかったがすっごくいいことが分かった。
 あははー、周りの視線が痛い痛い。許してくれ企業戦士の皆さん、俺は今すごく幸せです。

 その後のデートはお決まりというかセオリー通りというかほぼ誰もが思いつくコース巡りだ。
 ゲーセンのパンチングマシンで俺よりデカイ数値を出したり、買い物を楽しんだり(大量の日用品を買いこんでスキマ送りにした)、動物園でオカピなんかを見たりした。
 普段よりコロコロと変わる表情を見せてくれる霊夢に誘ってよかったと思う。
 でも時折悲しそうな表情を浮かべるのは何故だろう?



 時間はあっという間に過ぎ、夜景が綺麗な時間帯になりこれまたお決まりといっていいデートの締めに選ばれる観覧車に向かい合わせになって乗り込んだ。
 だんだん高度が上がっていくにつれ遠くのイルミネーションが見えてくる。
 展望台とかが好きな俺にとって観覧車は遊園地の乗り物の中で好きな部類に入るが好きな人と乗るとまったく雰囲気が違う。

「きれいね……」

 空を飛ぶことに慣れている霊夢でもこんなに明るい夜は初めてなのか、夜景を見つめて瞳を潤ませていた。
 ちょうど真上に到達した時、急に動かなくなり機械系統に異常が見つかりしばらく停止しますとのアナウンスが入った。
 沈黙が続く中、霊夢は口を開いた。

「ねぇ、○○はさ、帰りたいと思ったことはないの?」
「いきなりどうしたのさ」
「今日○○といろんなところを回って思ったの。外世界と幻想郷はまるで違ってしまったって」

 確かに未だ魔法や妖怪などが存在する幻想郷と、幻想を否定し科学を追及してついに宇宙にまで手を伸ばした外界。
 その隔たりは計り知れないだろう。

「いいのよ……このまま帰ってしまっても。紫には私から言っておいてもいいんだから」

 切ない表情で呟く霊夢。俺と目線を合わせようともしない。
 ああ、そうか。あの悲しそうな表情は俺が望郷の念を持ってこのまま帰ると言い出さないか不安だったからか。
 ――俺は口を開いた。

「確かにこの世界は便利だ。夜出歩いてもよほどのことがないかぎり命の危険はないし、欲しいものはすぐに手に入る。
 何をするにしてもまだまだ早さを求め、便利さを追及してる。
 けどさ、何だか大事なものをどこかに置き忘れてきている気がするんだ。
 幻想郷にはその大事なものがあると思う。それに……」

 一旦言葉を区切る。
 深呼吸をして、言葉を紡ぐ。

「霊夢のいない世界になんて興味はない。これからも一緒にいてほしいから、俺は幻想郷に戻るよ」
「あ……」

 感極まったのかぽろぽろと涙を溢す霊夢を俺は愛しく思い、髪を優しく撫でてあげた。

「――っ。 あっ……うれし、ぁ…ふぁっ、も、もう私っっ!」

 何かを吹っ切ったように霊夢は俺の胸に飛び込んできた。

「好きっ、大好きっ、こんな気持ち我慢できるわけないじゃない!」

 霊夢は俺の唇を強引に奪い、いつもとは違う情熱的な抱擁を交わしてきた。

「○○と話してると、一緒にいると、気持ち…よくて、嬉しくて、暖かくて、愛しくて――帰っちゃうんじゃないかって思うと寂しくて、苦しくて、胸が張り裂けそうで、
 私の中から○○への気持ちが溢れてきちゃった…あ、あれっ、ぐすっ」

 独白が終わると、更に瞳から溢れた雫がぽろぽろと零れ落ち俺の胸を濡らした。

「ひっく…っ、すんっ、○○が大好き、私の全てを捧げるから、ずっと一緒にいて、んっ……」

 俺が深く口付けを返すと霊夢は蕩けた表情を浮かべ強く抱きついてきた。

「好き……好きっ……この幸せ、絶対逃がさないんだから」

 霊夢はいつもの彼女らしい笑顔を俺に見せ、高らかに宣言した。
 それからしばらくしてゆっくりと地上に向けて観覧車は動きだした……。





 まぁその後はホテルで昨夜はお楽しみでしたねってことになり、お土産を買って幻想郷に帰ってきた。
 ゆかりんに冗談で起毛くつ下を渡したら笑顔で顔面直球コースに投げ返してくれたよ。
 他のみんなも結構楽しんできたみたいだけど誰一人外に帰った奴はいなかった。
 しかし、宴会の席でスキマTV新企画「幻想郷少女達の初めての旅行」を流した時は驚いたね。
 他人に逢引を見られることの恥ずかしさといったらないね。
 しかも観覧車が止まった理由が近くにいた衣玖さんカップルにわざわざ頼んで雷落としたらしい。
 彼女曰く、『空気を読んでみました』だって。
 オッケー衣玖さん。後でウニぶつけてやる。
 だいたい主催者自身のも公開しているところが凄い。ゆかりんって実はマゾ?
 自分の部分だけ編集したDVDは思い出として皆大事に保管しているそうだ。
 そして……




 真昼の博麗神社。社務所の縁側にいつものように箒を立てかけて霊夢がお茶をすすっている。
 その膝の上には俺が頭をのせて柔らかさを堪能中。
 日が陰ったと思ったら霊夢が顔をのぞき込んできて、軽く口づけをしてきた。
 平穏な時間が静かに過ぎる。
 俺は寝返りをうち霊夢の下腹部に顔をつけた
 とくんとくんと規則正しい霊夢の鼓動が聞こえる。

「聞こえる? 私の鼓動」

 と霊夢は微笑む。

「うん。子守唄みたい……。何だか眠くなってきたよ……」

 うつらうつらし始めると優しく髪を梳いてくれた。

「眠っていいわよ。私が起こしてあげるから……」

 優しい声に導かれ、俺は夢の世界へと落ちて行った。

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新ろだ131


そろそろ肌寒さを感じる季節、俺はいつものごとく朝食を食べた後に、景色まで寒々しい博麗神社の縁側に腰掛けていた。
初冬の空はどんよりと曇り、あまり天気が良いとは言いがたい。
無論博麗神社に電気仕掛けの暖房器具などありはしない。
足元に置いてあった火鉢を近くに寄せて、寒さを紛らわせるように手を擦り合わせた。
「だらしないわねぇ」
廊下を平然とした顔で歩いてくるのは、この神社の巫女にして、我が最愛の巫女でもある霊夢さんである。
「その服で、平然としてるお前らのがありえねぇよ」
「別に寒くないもの。すぐに雪が降るわよ」
「雪が降ったら、俺はどうすりゃいいんだよ……」
「火鉢あるじゃない」
「外から来た人間を舐めるな」

こんな会話をしてはいるものの、至って穏やかな俺たちである。
霊夢は俺の横に陣取ると、手に持っていた2つの湯のみのうち、一方を俺に渡してくれた。
寒い中に晒されてかじかんでいた俺の手に、一気に感覚が戻る。
最近知ったことだが、このでこぼことしたその湯のみは、この神社で代々使われている年季の入ったものらしい。
「今年はまだ寒くないほうよ。去年はもっと酷かったんだから」
「マジかよ……」
霊夢はお茶をずずずっとすすりながら、はぁとため息をつく。
「ま、紫に布団くらいは調達させるわよ。冬眠する前に仕事させないと」
「要るのか?布団」
「毎夜毎夜狭いと嘆いているのはどなたかしら」
「それはだな、なんだ……お前とするときにだな。布団の外に出たら寒いからだ」
何せお互い裸なわけで、寒くて寒くて仕方がない。
通気性の異様に良いこの神社の重大な欠点のひとつ、夜の冷え込みが厳しいことだ。
布団からはみ出ようものなら風邪引き確定なので、俺たちは毎日くっついたまま寝ているわけだ。
「別にいいじゃないの。布団ふたつのが広くていいわよ」
「……まぁ、そっちのがいいかもなぁ」
「前にも何度も同じ結論に達してるのにね。今度こそ布団、2人分よ」
「今度はどうにかしような」

湯のみに入った熱い緑茶をひとくち。
何ともいえない、お茶葉の香りが鼻に広がる。
「玉露?」
「結構いい奴。貰い物だけど」
「どうやったらこんな風に淹れられるのかな。俺も練習すれば出来るのかね」
「そんなに難しくないわよ」
霊夢はそう言うが、玉露を美味しく淹れるためにはかなりのコツが要る。
本人曰く玉露のポイントは「茶葉を多めに、湯はぬるめ、仕上げはキツく」らしいのだが、
機械が全くといっていいほどないこの神社で、玉露に適したお湯を用意することは相当に難しい。
第二に、仕上げに急須のお茶を一滴残らず絞りきるというのも難題だ。
以前一度挑戦したものの、結果は霊夢に鼻で笑われるレベルだった。
「くっそー、次は俺がコーヒーでも入れてやろうか」
「コーヒーを湯のみに淹れるの?」
「コーヒーカップくらい買ってもいいだろうよ」
「おそろいなら良し」
霊夢は早くもその絶品玉露を飲み終えると、湯飲みを脇に置いて俺にもたれ掛った。
暖かな体温が、俺の体にじんわりと伝わる。
「…ん。やっぱりあったかい」
「だな」
俺もそれに習って左手の湯のみを置くと、霊夢の白い肩に右手を回した。
霊夢の体温と俺の体温。
そう違わないはずなのに、どうしてこんなにも、他人の体は温かく感じられるのだろうか。
髪から漂う霊夢の匂いが、いっそう体を温めていく。
「コーヒーカップ、どこで買おうかしらね」
「里のほう行くってみるか?」
「あるのかしら?」
「さあ?」
お互いにクスクスと笑いあう。
じゃあ、午後はコーヒーカップを探しにデートと洒落込むか。
「可愛いのがいいな。こう、絵柄とかの」
「お前のことだから、また渋いのかと」
「あんたに貰うんだったら、やっぱりそういうのがいい」

霊夢はそういうなり、俺の胸に顔を押し付けて抱きつく。
俺もそのまま左腕を彼女の腰に回して、彼女を抱きしめてやった。
「……博麗の巫女らしくないかしら」
「それ以前にお前だって女の子なんだからな。俺的にはそっちのが重要かも」
「……ありがと」
俺の胸に頬ずりをするように、霊夢は俺の腕の中で甘えだす。
仕返しとばかりに、俺も霊夢の黒髪に顔を押し付けてみたり、ついばむようなキスをしてみたり。
霊夢の肌の温度は、身も心も俺を暖め続けている。
そして、それは霊夢も同じなんだろうという確信が、確かにあった。


次の日の朝。
「やっぱり布団、要るわよね」
「絶対どうにかしような」
「とりあえず、はいお茶」
「おうよ」
また寒くて暖かい一日が、今日も続く。

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最終更新:2011年02月26日 23:35