霊夢34
新ろだ643
「おぉ、また光った」
彼がそう口にしてから5秒と待たずに、雷鳴は低く唸る。
私は、縁側に座り込んで、夕立の空を眺めていた。
殴るように降りかかる雨、手に届くほど低く垂れ下がった土留色の暗雲。身体全体を響かせる重音。大量に湿気を含んだ土の匂い。
実のところ、私は雷が苦手だ。どの異変よりも、どの災害よりも、雷が嫌いである。
──ついこの間まで地震が一番嫌いだったが、それはまた別の話。
こうして縁側に座っているのも、気持ちを落ち着かせるため。立ち上がれば、たちまち身体が震え出しそうで、怖かった。
嵐は、もう少し続きそう。
「そんな所に居ると、びしょ濡れになるぞ」
彼の足音が近づいてくる。畳の乾いた音。一つ、二つ、三つ。
やがて彼は、私の左隣に胡坐をかいた。
「それにしても酷い降りだ」
「そうね」
「龍神様がお怒りなのかも」
「そうね」
適当で、素っ気ない相槌。
こうでもしないと、冷静さを失ってしまいそうで、それもまた怖かった。
ふと目線を彼に向ける。物思いにふけるような彼の目は、何故か楽しそう。
視線に気づいたのか、彼も横目で私を見る。
ちょっと恥ずかしくなって、咄嗟に私は目を逸らした。
「あなたもそこに居ると、濡れるわよ」
ごく僅かに、声が震えた。
まただ。またいつもの「揺れ」が始まった。
どうして。
いつもなら──彼がまだ居なかったときなら、こんな嵐も見過ごせたはずなのに。
どうして。
彼と一緒に居ると、心が緩んで、乱れて、甘えたくなって。
どうして。
でも、そんな彼が何を思って私と居るのか、わからなくて、怖くて。
──ねえ、どうして?
「……霊夢?」
彼が、俯いた私の顔を覗き込む。
「なんでも、ないわ」
嘘に決まってる。
本当は甘えたい。彼にすがりたい。
でも、そんな姿を、自分の弱みを見せたくなくて。
──強がってるんだな、私。
肩が、小刻みに震え始める。それを噛み締めようとすると、逆に身体がビクッと震え上がってしまう。
制御が利かなくなる。喉が詰まる。声が漏れそうになる。また震え上がる。
「ちょっと、霊──」
彼が身を乗り出す。
同時に突然、空を稲光が白刃の如く駆けぬけた。
──いけない。
殴るように降りかかる雨。
手に届くほど低く垂れ下がった土留色の暗雲。
気がついたときには、私は彼に抱きついていた。
彼の肩に顔を埋めて、身体をびくつかせていた。
目頭が、熱い。
心の奥底でずっと張り詰めていた何かが、先程の雷鳴のおかげで、ぷつりと切れてしまったようである。
「霊夢、一体どうし──」
「本当は、気づいて欲しかった」
必死で声を絞り出すが、どんなに唇を噛み締めても、その震えだけは収まらなかった。
「私だって、怖いのよ」
万物に動じない、気まぐれな、完璧な、浮世離れな。
そんな名を背負った私にだって、恐怖心はある。
誰かに、気づいて欲しかった。
再び轟く、重低音。
「やぁっ……」
情けない声が勝手に漏れる。私であって、私じゃない。
怖い。雷が怖い。彼が怖い。全部が怖い。
元々強く抱きしめていた腕の力を、更に強くする。
「でも──でも、こんな私を見て、私を嫌いに、なるんじゃないか、って、そう思うとまた、怖くなって……わからなくって……」
嗚咽が混じって、上手く言葉にできない。何を伝えればいいのかわからない。
彼の肩が、僅かに動いたのがわかった。
私の背中を、彼の手がゆっくりと滑り降りていく。不思議と、心が安らぐ。
「僕は、好きだよ、こんな霊夢も」
彼は、優しく答えた。
その言葉にはっとして、顔を上げる。その勢いで、涙が2,3粒零れ落ちる。
彼が笑顔を作る。どこか楽しそうな笑顔。
「博麗霊夢の目にも、嵐が来てるな」
彼がくすりと笑う。
「結局びしょ濡れだっての」
彼の人差し指が、私の眉間を小突く。私は反射的にぎゅっと目を瞑る。
「んぅ、やめてよぉ……」
再び漏れる未熟な声。
が、その余韻に浸る間もなく、私は我に返った。
何が「やめてよぉ」だって?
音速をも越えそうな勢いで、顔を上げる。
彼は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔のままで凍結していた。
見詰め合っていたのは、ほんの須臾のこと。
私の顔が、みるみるうちに熱を持っていく。
やがて彼の表情が、右の口元から緩み始めた。
堪えきれなくなって、彼は一気に含んだ空気を吹き出すと、大声で笑い転げた。
自分の顔が、更に火照っていくのがわかる。羞恥が胸の底から一気にこみ上げて、思わず下を向いた。
「でも、安心したよ。霊夢はいつもピリピリしてたから、こういう、溜まったものを全部吐き出す霊夢が見れて、ちょっと嬉しい」
笑いが収まってから彼はそう言うと、未だ降り続ける夕立の空に向き直る。
「……余計なお世話よ」
そう言いながらも、寄り添って彼の袖を掴みにいく自分が可笑しくて、一層顔が紅潮した。
「私も嬉しいけど、ね──」
「おぉ、また光った」
彼が口にしてから10秒ほど間を置いて、雷鳴が低く唸る。
でも、今は怖くない。
雷も彼も、今は怖くない。
弱い私は、もう隠さなくていいから。
彼に甘えたって、もういいから。
殴るように降りかかる雨。
手に届くほど低く垂れ下がった土留色の暗雲。
嵐は、あと少しだけ続きそう。
────────
いつも強がってると、ストレスになるよ? ギャップって大事だよね! なんてどうすか。駄目ですかそうですか。
これを巷では「ツンデレ」というと私は小耳に挟んだのだが、正解だったかなぁ?
新ろだ678
「ねぇ○○、キスしてもいいかしら?」
つい先日居候から恋人に昇格した俺にここの博麗神社の主、博麗霊夢は尋ねてきた。全く、何でそんな野暮な事聞くかね?
「ん?出来るものならしてみな?」
少し意地悪な事を言ってみる。
「…意地悪」
すると彼女は少し頬を膨らませて俺を睨み付ける。その理由としては俺と彼女の身長差にある。俺は長身だが彼女は少女の中でも比較的高い程度なのだかおおよそ30cm位とかなり身長差がある。
背伸びしてもまず無理だろう。
「…ちょっとこっちに来なさい」
霊夢は少し膨れた顔のまま、俺の手を引いて縁側まで俺を連れてくる。はて?お茶の時間まではまだあったはずだ。
すると彼女だけ縁側に登り、俺の前に立つ。あれ?ぴったり彼女の顔が真正面にある。そう思った瞬間、彼女にキスされた。
少し長くキスした後、ゆっくりと唇を話して彼女は綺麗に微笑んだ。
「キスさせてもらったわよ」あぁ、やっぱり俺は彼女の虜のようだ。
「ところで霊夢?」
「何かしら?」
「わざわざ縁側に立つより飛べば良かったんじゃない?」
「…」
「イテテ、叩かないでくれよ」
「…ウルサイ」
そこには顔を真っ赤にして俺を叩いている博麗の巫女の姿がありました。
新ろだ699
「霊夢、あのさ」
「何よ」
「いつも僕に対して言うことキツいし、実のところ僕の事、嫌いでしょ?」
「……嫌いだったらこうして隣に座ってお茶なんて飲んでないと思うけど?」
「――」
「何照れてるの。"好き"とも言ってないわ」
「はは、仰る通りで。そっか……どっちでもないのかぁ」
「……まったく、鈍いんだから」
「何か言った?」
「何でもないわ。黙ってお茶でも飲んでなさい」
「はーい」
◆ 翌日 ◆
「なぁ、霊夢」
「何よ」
「いい加減素直になったらどうなんだ」
「……何のことだかわからないわ」
「お前知ってるか?いつも神社から帰る時のあいつの顔」
「……」
「ま、昨日は違ったみたいだけどな」
「――、そう」
「程々にしておけよ。そのうち他の女に振り向いちまうぜ?」
「五月蝿いわね。分かってるわよ……」
「それじゃ、私は本でも"借り"に行ってくるぜ。じゃな」
「はいはい、いってらっしゃい。――そろそろ、○○が来る頃ね。
お茶の準備、しなきゃ」
◆数十分後◆
「霊夢、あのさ」
「何よ」
「僕、頑張るよ」
「……何を?」
「霊夢の"どっちでもない"が"好き"に変わってくれるまで。
何を頑張ればいいのかは、まだわからないけど……やってみせるよ」
「…………、そう。期待してるわ」
「え?」
「――お茶、おかわりいる?」
「あ、うん。いる」
「待っててね。新しいの淹れてくるわ」
「はーい」
◆物陰にて◆
「あああ何故だ、何故そこで追撃をかけない○○!」
「……随分と熱入ってますね、魔理沙さん」
「当たり前だろう、遊びに来る度にあの何とも言えない
とろ甘い空気を見せ付けられる私の身にもなってみろ!」
「あやや……ご愁傷様です。でも――
霊夢さんの気持ちに気付かない○○さんも随分な鈍チンですねぇ」
「だろう?きっとお前なら分かってくれると思ってたぜブン屋ー!」
「あああ、くっつかないで下さい暑いです。
こっそり一枚撮って帰りましょうかね。……あれ、霊夢さんはどこに」
「呼んだかしら」
「あ、そちらに居――ひッ!?」
◆数分後◆
「お待たせ、○○」
「おかえり。いつもより長かったね」
「乙女に詮索をかけるのはヤボってものよ」
「それもそうだね。ごめんね」
「わかればいいの。はい、お茶」
「あ、ありがとう」
「ねえ、○○」
「何?」
「明日もまた、来るわよね」
「! ……うん!」
新ろだ743
カサカサ、と風に吹かれる枯葉達。
しかしその風はどこか不自然に飛び回っており、
枯葉は庭の一点にかき集められ――
「○○、掃き掃除お願いって言ったのに。
こんな所に座り込んでどうしたの?」
――失敗。霧散した。
「その"掃き掃除"を今まさにやっていたんだけどね」
ため息をついて、立ち上がる。
ぱんぱん、と服についた土ぼこりを落とすと、彼女の方に体を向ける。
「境内のど真ん中に座り込んで、どこを掃除しているのか教えて貰いたい所ね」
やや怒ったような顔でこちらを見ているのは、この神社の巫女である博麗霊夢。
僕の家主でもある。頭は基本的に上がらない。
「ああ、うん。ちゃんとやってたよ?これの練習も兼ねて」
懐から一枚のカードを取り出し、彼女に見せる。
「それ使ってたのね。まったく、紛らわしいのよ」
カードを視認するなり、得心したように頷いたが、まだ不満げだった。
このカードは一枚だけではなく、まだ懐に数枚残っている。
この世界での最低限の自衛できる力を求めた結果、
霊夢が知人である流星の魔法使いと歩く図書館に掛け合い、
火風水土の基本属性を操れるようになるカードを作ってくれた。
自身のイメージに基づき、それぞれの属性の力を魔力により具現化、行使できるらしい。
僕自身に魔力というものは塵ほどもないのだけど、どういう仕組みか、
使用者の体力を媒体にして魔力を生成してくれるようになっていた。
言うまでもなく使いすぎるとバテて倒れる。経験済みなのはここだけの話だ。
少し話が逸れたけど、要はこのカードの力を使って、僕は庭掃除をしていた。
自身が風である、とイメージをし続けていれば、そこら辺の風を捕まえて動かすことも出来なくはない。
自分の手から風を発生させるほうが楽なのだけど、イメージ力のトレーニングも大事なんだぜ、と
使い方をレクチャーしてくれた白黒は言っていた。
「……というわけで、大体の掃除は終わったよ。裏庭の一角に集めてある。はず」
「確かに見える範囲は綺麗になってるわね。……はず?」
「……声をかけられて途中で術が切れたから見届けてないんだ」
「頼りにならない男ね」
呆れたような目線が僕を貫く。何も言い返せないのがちょっと悔しい。
しばし間をあけてから大きめのため息を一つつき、彼女は柔らかく微笑んだ。
「まあいいわ。どっちにしろ疲れたでしょう、お茶でも飲まない?」
「是非にー」
労働をした後の休息って大事。凄く大事。
場所は変わって縁側。
彼女がお茶を淹れてくれるのを待つ間もやはり暇であり――やる事は一つ。
イメージを集中させる。自分は目と耳を持つ風。自由に動ける――
程なくして視界が切り替わった。
壁に少しもたれて、傍目から見れば寝ているようにしか見えない自分の姿を確認する。
力の行使は問題なく成功したようだ。
それでは、状況を開始する。
台所までは比較的スムーズに侵入する事が出来た。
これも戸の少ない、古き良き日本建築の成せる技である。
「~~♪」
鼻歌を歌いながらお湯が沸くのを待っている標的の姿を視認。
律儀にも薬缶の前で直立の姿勢でいる。チャンスだ。
気付かれぬように、ごく自然に隙間風が吹いてきた風を装って。
標的の下へ滑り込む事に成功した。めくるめく桃源郷が視界に広がる。
健康的ながらもやや丸みを帯びた細い足首、太腿。そしてその上にある――
いつまでも浸りたい誘惑に駆られたけど、あんまりやると彼女に気付かれる。
――目標を確認したぞ、大佐。白、だ。
そんな昔やったゲームの主人公のような言葉を心の中で呟いてから、すばやく術を解いた。
勿論、脳裏にしっかりと焼き付けて。
縁側で待っていると、すぐに彼女が戻ってきた。
「お待たせ、○○」
「うん、ありがとう霊夢」
お盆から湯のみを一つ受け取ると、口をつける。
「あ、美味しい。ひょっとして茶葉変えた?」
「あら、分かるものなの?前に里の人から戴いたのよ。妖怪退治のお礼にって」
開始される何気ない会話。あまりにも何気なさ過ぎて
「ふーん……」
「ところで、○○」
気付くのが遅れた。彼女が立ったままだということに。
「うん?」
「よくも覗いてくれたわね?」
「――ッ!、ナンの事かナァ。僕わかラ無イヤ」
ぎちぎち、と音を立てている錯覚を覚えるくらい、鈍い動きで顔を上げると、そこには。
「大丈夫。怒らないから、ね?」
――正直に、話しなさい?
そんな心の声が聞こえるくらいの、素敵な笑みを浮かべた楽園の巫女がいて。
「モウシワケアリマセンデシタ」
「そう、やっぱり」
視界が、白く染まった。
「……ずびばぜんでじた」
「ふんっ」
数分後。
手加減されたとは言え、夢想封印の直撃を受け、僕は神社わきの温泉あたりまで吹き飛ばされた。
落下の時に防御壁を作っていなければ、今頃は全身が粉砕骨折でばたんきゅーである。
作っていてもかなりボロボロなのだけど。
(着地の衝撃は大分殺せたけれど速度までは抑えきれず、地面を転げまわった際にあちこちぶつけた)
「次やったら……わかるわね?」
目の前で自前の御札をひらひらとさせる霊夢。
逆らったらどうなるかわかったもんじゃないので、とりあえず首を縦に振る。
「わかればよろしい。さ、行くわよ」
にこ、と笑顔を見せたと思うと霊夢は僕の腕をひっつかみ、ずんずんと歩いて行く。
神社に戻るのかと思ったけれど、その行く先は――
(温泉……?)
「最近ご無沙汰だったからいけなかったのよね。
このままにしておいたら他の女の所にまで覗きに行きかねないし」
こっちを一瞬見ると、ちょっと恥ずかしいのか顔を赤くする。
「その気が起きなくなるくらい、見せ付けてあげる」
「……なんてこった」
ここより下は特殊なフォントで執筆されています。
続きが読みたければ、スキマ妖怪を説得して下さい。
新ろだ778
今日も今日とて獲物を振るう。
舞台は境内、狙うは枯葉。
「よっ、ほっ、はっ!」
時々意味もなく格闘の真似事をしているのは、だ。
どうしようもなく暇だからに過ぎない。
「ふぅ……今日の対戦相手も中々に手強かった!」
「何が対戦相手よ。満足気な顔してないできちんと掃除しなさい」
ぽかり、と頭を小突かれる。
後ろを振り返ると、呆れた様な顔をした霊夢がそこにいた。
「いやぁ、こうも秋晴れだとちょっと身体を動かしたくなるじゃない?」
「だからって……もう。しょうもない人」
霊夢はため息を一つつくと、苦笑を浮かべた。
時は変わって、縁側。
「茶が、うまいな」
「そうねー……出がらしだけど」
「言うな、悲しくなる」
毎日のように繰り返されるやり取り。
ただ日常と一つ異なることがあるとするなら、
ぽふ
肩に感じる僅かな重み。
「……霊夢?」
「……」
反応がない。下手に動くわけにもいかないので、横も見れない。
「寝ちゃったのか」
「起きてるわよ」
間髪入れずに応答があった。
「……」
「……」
何も言われない。
だから、何も聞かない。
「……○○?」
「何?」
「その、――ありがと」
「うん。僕も、ありがとう」
「えへへ……」
たまにはこんな日があってもいい、と。
僕は思う。
新ろだ798
博麗神社に住む霊夢と外来人○○が恋人同士になってから、霊夢にある変化が起きた。
霊夢「ね、○○。キス…しよ…」
霊夢が○○にキスをせがむようになった。
今まで誰とも一線を越えない付き合いをしてきたその反動からなのか、
始めは6日に1度だったのが5日に1度。4日、3日……
今では毎日のようにキスをせがんでくるようになった。 ……ディープなのを。
○○は霊夢とのキスは嫌ではないのだが、こうも毎日キスをしつづけてるとムラムラとしてくる。
このままだと近い将来、霊夢を押し倒して <<そこまでよ!>> な事になってしまいそうだった。
そこで、○○は霊夢にある交渉を持ちかけてみることにした
―――翌日
霊夢「キスの仕方を変えたい?」
○○「うん。マンネリ化しないためにもいろいろな仕方を試しておこうと思ってさ」
少々無理がある理由である。
霊夢「私は今のが一番好きなんだけど…まあ、とりあえずやって見せて。変えるかどうかはそれからよ」
そういって霊夢は目を閉じて、○○からのキスを待つ体制に入った。
○○は霊夢に近づき優しく抱きしめると……
霊夢の額に優しくキスをした。
―――俗に言うデコチューである。
霊夢「……え?おでこにキスするの?」
○○「うん。おでこにキスをする仕方だけど…どうかな?」
霊夢は呆けた顔でキスされた額に手をやり、少し考えると…
霊夢「…もう一回してみて」
と、要求してきた。言われた通りにもう一度額に優しくキスをする。
霊夢「……えへ~」
霊夢はかわいらしい笑みを浮かべていた。どうやら霊夢は気に入ってくれた様子のようだ。
これでしばらくは○○の理性ももってくれることだろう。
○○「気に入ってくれた?」
霊夢「うん。とってもよかった」
霊夢「ね、今度は私のほうから…」
そういって霊夢は○○の額に優しくキスをした。
自然と○○も笑みがこぼれてきた。
霊夢「ちゅ……えへへ、○○…ちゅ…」
今日も2人しか居ない神社で、2人は愛を育む。
新ろだ810
本スレッド>>732を若干加筆修正。
芋の美味しい季節になりました。
「あら、境内掃除のついでに落ち葉焚き?」
『ついでに芋も焼いて霊夢と一緒に食べようと思ってさ…そろそろいいかな。はいどうぞ。
十三里半を目標に頑張ってみたんだけれど』
「十三里半?何それ?」
『九里と四里、足して十三里。栗より(九里四里)甘くて美味しい芋、という言葉遊びだよ』
「ふーん…そうねぇ、これだと八里半、てとこかしら。栗(九里)に近いと言う意味で」
『それは手厳しいね』
「でもこうすれば甘くて美味しくなるんじゃないかしら?」
もふっ
『?』
「んっ」
『わっ…ん』
ちゅぷ ちゅぷ ちゅるっ
「ん、んふ、うう、ん…」
『う、ん…』
ちゃぷ ちゅぷ ちゅぷり
「んっ…はい、甘くて美味しい十五半の焼き芋よ」
『十五里半?』
「八里に一里と四里と二里で十五里。栗(九里)に近い八里でも一人より二人で(一理四里
二里で)食べれば甘くて美味しくなるってかけてみたんだけど」
『なるほど、これは確かに十五里半だね。霊夢は賢いなぁ。それじゃあ…』
もふっ
『ん…』
「きゃぅっ、むぐ、むぅ、ん…」
ちゅぷり ちゃぷ ちゅぽん
『はい、霊夢にも十五里半の美味しい焼き芋をお返し。もしかして嫌だった?』
「も…」
『も?』
「もう、一個…欲しいな」
『お望みどおりに』
もふっ
『うん…』
「ふぅ…んっ、んんっ、んふっ…」
あややぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それを見ていた鴉天狗が目を回して鼻血を垂らしながら墜落、通りがかった紅魔館の
主従に埋められそうになったり、二人の様子を覗き見していた普通の魔法使いと七色の
魔女がそれぞれの想い人に向かって口に芋を咥えながら迫って舌を火傷したり、それを
聞かされた図書館の主が影でこっそり練習していたのを想い人に目撃されてしまったり、
妖怪の山頂上にある神社の神職が偶然に同じことを実行に移して想い人もろとも熱暴走
したりしたのは、ここだけの裏話。
あなたが食べた焼き芋は十三里半?それとも、十五里半?それとも、もっと別ですか?
答えは、あなたの思ったとおりです。
【おまけ】
「う…これじゃあ十里半よ神奈子」
「諏訪子、十里半ってどういう意味?」
「五里と五里で十里。ごりごりしてるってこと。生焼けじゃないの!」
「ギャフン」
新ろだ824
博麗神社の近所に、ある施設ができた。地底での異変が起こった時に出た間欠泉を利用した天然の露天風呂である。
博麗神社に住む博麗霊夢が神社にお客を呼べるチャンスと思い、鬼の伊吹萃香に露天風呂を作らせた。
しかし作らせたものの、神社までの道のりが危険である事、神社が妖怪の巣窟になっているという噂から神社にやってくる者は少なく、利用者は皆無に等しかった。
―――そんな温泉を利用している二人の人間がいた。
外来人にして霊夢の恋人の○○とこの施設の発案者の博麗霊夢が隣り合って湯船に浸かっていた。
霊夢「は~……いつ入ってもいい湯ねぇ~」
○○「ん~……そ~だね~」
互いの格好は素肌にタオルのみと少々刺激が強すぎる格好なのだが、先ほどの2人の会話のやり取りや様子から
そんな事は気にならない位にまで仲が進んでいることが窺い知れる。
霊夢「やっぱり、温泉が一番癒されるわね~。命の洗濯と言うのもあながち間違ってないわね」
○○「今回も大変だったもんね。本当にお疲れ様、霊夢」
今年の春先、森に住む人間の魔法使い、霧雨魔理沙から「雲の切れ目に不思議な船が空を飛んでいる」という不思議な噂を耳にし、
その真相を確かめに船を追っていたらなんと魔界の片田舎まで行ってしまったらしいのだ。
霊夢「ありがとう、○○。そう言ってくれるのは○○くらいだから嬉しい」
そういって霊夢は優しい笑みを浮かべた。
博麗の巫女は異変解決を生業としている。しかし霊夢の代の場合、解決したことで人からお礼を言われることは多くはなかった。
解決をしたのが霊夢なのかと疑う者もいれば、巫女が異変を解決するのは当然の事と思っており感謝しない者もいた。
中には解決したと言うのにケチをつける者もいるという。
そんな事があっても霊夢は「気にしてないわ」の一言で済ましていた事が○○にとって悲しかった。
○○「…霊夢。俺には何も力がないし、出来ることもここでは限られてる。だから霊夢の為にできる事は何でもしたい」
突然の申し立てに少し驚いた霊夢だったが、すぐに理解した。
霊夢「本当に何でもしてくれるの?」
○○「うん男に二言はないよ」
霊夢「じゃあ、ちょっといい…?」
そう言って霊夢は○○の前に座り、しなだれかかりぴったりと体を密着させてきた。
霊夢「えへへ……こうやって一緒に居ること」
霊夢は満足そうな笑みを浮かべながら、○○にそう言った。
○○は霊夢を後ろから優しく抱きしめ、綺麗な黒髪を優しく撫でてあげる。
霊夢「ふふ…のぼせちゃいそう」
○○「じゃあもう上がる?」
霊夢「ううん、もう少しこのまま…」
二人の時間はまだまだ続きそうだ。
次に起こる異変はどんな物なのだろうか。今まで起こった異変より奇怪で厄介な物なのだろうか。
だが、この2人ならどんな異変だろうと解決できるだろう。
霊夢「○○……大好き」
○○「俺も大好きだよ、霊夢」
新ろだ835
号外:文々。新聞
〔今年もやってきた!ポッキーゲームの日〕
~非常に面倒くさいので中略、あややぁ酷いですぅ~
「だそうよ」
『へぇぇ…ポッキーゲーム、かぁ』
「あなた、元々外界の出身でしょ?ポッキーが何だとか、知らない?」
『うーん、僕は確かに外界生まれだけど育ちは実質幻想郷だからなぁ…そうだ!こんな時
こそブラックボックスに収めた蔵書で調べよう』
「はぁ…便利なものをあげたのねぇ、慧音は。で、何て書いてあるの?」
~以下、引用文
惚気威 芸夢(ぽっきぃげいむ)
それは 欧州から亜国へ伝えられたと言う、男女の交際の儀礼である。
~途中長文な上大変にカニバリズムな表現が見られたため、スキマ検閲に引っ掛かり省略~
そして現在になり、直径4ミリ程度の棒状の焼き菓子にチョコレートでコーティングした
ものを男女が端を咥え合い、落とさないように食べていくという行為で親睦を深めるという
形で受け継がれている。
この焼き菓子が食されて短くなると接吻が出来るほどの距離まで近づくことになるが、
それでも続けられるか止めてしまうのかでその男女の関係の一部を垣間見ることも出来ると
専らの評判で、最後まで食べきった男女は決まって大いに冷やかされたと言う。
以上、引用は民明書房刊 『世界の愛情遊戯』~
『…とあるね』
「色々妖しくて怪しいことが書いてある蔵書ね…」
『この小筆より少し短いくらいの長さと、箸より少し細いくらいの焼き菓子をこう…』
「あーいちいち咥えて実践しなくても良いから。でも、そんなものどこにあるの?人里の
お菓子屋さんとかで売ってるものなのかしら?」
「どうぞ。ここにありますわ」
「咲夜の慈悲に感謝なさい」
『あ、どうもありがとうメイド長さん、それとレミリアもこんにちは』
「いつの間にいたのよ二人とも。あなたも何食わぬ顔して受け取るのやめなさい」
『幸い貰えた事だし、やってみようか?』
「…聞いてないわね」
「あら霊夢、せっかくのチャンスなのにやらないの?」
「もったいないですわ」
「用がすんだら帰れ」
「あら、じゃあ帰れないわ。霊夢が愛しの彼とポッキーゲームをやるその瞬間を見ないと、
帰れない運命に定めてしまったもの。やらないと、このオンボロ神社に居ついちゃうわよ」
「オンボロは余計!…別に私でなくてもアンタ達だけで見せ付けあえばいいじゃない」
「既に私達紅魔館の主要人物は全員実行済みよ…主にお嬢様の提案で」
「いやぁ、あれは見ものだったわねぇ。主に咲夜が」
「お、お嬢様…(そういうお嬢様だってあの人と…)」
『そうだったんだ。メイド長さんちょっと頬が赤いけど、気のせいじゃなかったんだね』
「そ、それは…(虫も殺さない顔をして鋭いところのある人だわ)」
「そういうわけだから霊夢も彼とやりなさい、今すぐ。運命を弄くろうかと思ったけど
霊夢には何故だか私の力が通用しないし、通用しても面白くないからね」
「アンタに言われてやることじゃないわよ」
『じゃあ霊夢、する?』
「する?じゃないでしょ!レミリア、アンタまさか彼の運命いじったんじゃないの?」
「弄ってないわよ。だって彼にも何故だか通じないし、通じたら通じたでちょっとも
面白くないじゃないの。もう一度言うわよ、やりなさい。と言うかやれ」
「はぁ…もう。こうなったら毒を喰らわば皿まで、ね」
『何もそこまで考えなくても…僕が咥えてるから、霊夢はこっちからどうぞ』
「…分かったわよ。んっ」
ぽり ぽり ぽり
「(…落とさないように食べるのって案外むつかしいわ…彼の体に掴まっていないと体の
バランス崩しちゃいそう)」
ぽりっ ぽりっ ぽりっ
「(ち、近くなってきた…彼の顔が近く…って言うか咲夜とレミリア、にやけるな!)」
ぽりん ぽりん ぽりん
ちゅぷ
「んぅ!?」
ちゅぷ ちゅぷ ちゅぷり
「(し、舌が入ってくる…!やだ、ちょっと、やめなさい…っ、二人がっ、うぅんっ)」
ちゅぷ ちゅぷ ちゃぷん
「ふぁっ…」
『霊夢、ご馳走様でした』
「ご馳走様でしたじゃないでしょ!あいつら見てる…って、砂糖吐いて倒れちゃったわ」
『このままにもしておけないから、どこかで寝かせてあげよう。それと霊夢』
「?」
『二人を運び終わったらもう一本、する?』
「…まぁ、あいつらも気づかないだろうし…いいわよ」
※おや?どこかで見たような終わり方ですねぇ(棒読み)。お笑い同様、イチャも基本は
繰り返し(棒読み)?
補足:ポッキーの直径は実際調べています。長さは約135mmとのこと。
新ろだ902
そろそろ雪が降ろうかと感じさせる寒さが幻想郷にやって来た。
ただでさえ参拝客が少ないと言われがちな博麗神社が更に寂しくなる季節だ。
その境内を今一人の男が箒で掃除をしている。
普段ならここの巫女がしている仕事なのだが今日は彼が代わりを務めているようだ。
「○○さーん、お茶入れたから休みましょうよ」
彼の後ろから神社の巫女である博麗霊夢の声がかかった。
手を止め境内へと向かうと湯のみ二つ、乗せていたであろうお盆が置いてあった。
境内に腰掛けると○○は湯のみに少し口をつけた。中身は暖かいお茶であった。
「今年の冬って確かに暖かいけれども、やっぱり参拝に来る人少ないのよね」
「暖かくても寒くても普段からここに人はいないだろ」
「たまにはお世辞くらい言ってくれても良いと思うけれども」
「世辞を言えるほど口が達者な訳でも無いんだな、これが」
「お世辞一つ言えないと嫌われても知らないわよ?」
そう言うと霊夢はアハハと笑った。
「そういえば、前から聞きたかったんだけれども。」
意を決したかの様に霊夢が切り出した。
「何だ?今日の昼ご飯の相談か?」
「そんな事じゃ無いわ。どうしてウチに住む事に決めたの?
あの時、守矢とそれに里のハクタクからも誘いがあったんでしょ?」
「確かにあった。こっちに来てから住む家が無くてしばらくあばら家暮らしだったから
どこかに住まわせてもらえるなんて夢の様な話だったな」
「自分で言うのもなんだけれどさ、この神社ってあんまり…その…人来ないじゃない
それに比べて守矢も里の方もそれなりに裕福だし、何でわざわざこの神社を選んだのかなって」
「…こっちの方が静かそうだから選んだ。
里の方は人付き合いが煩わしいし、守矢神社はいくらなんでも山奥過ぎる
適度に辺鄙なこの神社が一番自分に合ってたからここに決めたのさ」
「ほ、本当にそれだけ…?他にもっと無いの?」
「今言った事が選んだ当時の理由だ」
「うん…そっか、そうだよね。理由なんてそのくらいよね。
…もう良い時間だし、お昼ご飯の仕度してくるね」
少し物悲しげな顔つきのまま霊夢は家の中へと入っていった。
彼女が家の中へ消えたのを確認すると
「お前だからこっちに決めたんだよ。
なんて事は面と向かって言える訳無いな…
ただそれだけなのに意外と苦労するもんだ」
俯き、彼は白い息と一緒にそんな独り言を吐き出した。
「ならお前は本当は霊夢の事が好きだと
どこら辺に惹かれたんだぜ?」
「どこって言葉には出来ないんだが、落ち着くと言うか安らぐと言うか」
「こりゃまた曖昧な答えが返ってきたもんだ
本人に言って、隣に寄り添って、確かめれば良いじゃないか」
「それが出来れば苦労はしないさ…って何言わせてんだよ」
彼が顔を上げると白黒の魔法使いがそこにはいた。
「何か霊夢に用か?今アイツなら台所で昼ご飯の仕度してるぞ」
「良い時間に通りかかったんでお昼を頂こうかと思って」
「で、ついでに俺の独り言を盗み聞きしたと」
「盗み聞きしたなんて人聞きの悪い事言うもんじゃ無いぜ。たまたま聞えただけだ」
「どうしたの○○さん、誰か来てるの…って魔理沙じゃないの」
「よう霊夢。お邪魔させてもらってるぜ」
台所に彼が誰かと話しているのは聞えていたようで、霊夢は気になって出てきたようだ。
流石に会話の内容までは聞えていなかったようであるが。
「霊夢、実は○○がな…」
「霊夢、コイツの分の昼飯も用意出来ないか?ご馳走になりに来たんだとさ」
いきなり霊夢に切り出そうとする魔理沙の言葉を遮りながら彼は霊夢に話しかけた。
「ええともう一人分作ると少し時間かかるけれども、良いわよね?」
「それで良いよな、魔理沙?」
威嚇するかのように目を開きながら○○は魔理沙に確認を取った。
「お、おう。それで良いんだぜ…」
「それじゃ出来上がったら二人とも呼ぶから、しばらくそこでくつろいでいてね」
そう言い彼女はまた家の中へと入っていった。
「…霊夢に今のやり取りの事言うんじゃないぞ」
「分かった分かった。でも早い内に伝えないと誰かに横から掠め取られるかもしれないぜ?」
「そんな事態になる前には流石に言える様にはなりたいもんだな」
○○と霊夢、この二人が距離を縮めるのはまだ先になりそうである。
最終更新:2011年02月26日 22:15