霊夢35
新ろだ917
勢いだけで描いた。
時期が違うことも理解している。
誤字もたくさんあると思う。
正直我慢できませんでした。ごめんなさい。
「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
走る、走る、走る。
猫車に大量の荷物を乗せ、ただただ疾駆する。
この日の為に改造した猫車。
とある河童に外の世界の機械と引き換えに動力を搭載し、
とある魔法使いに頼み込み極めて高出力の推進力を得る筒を作ってもらった。
車輪の軌跡には蒼い残滓が残り、必死にしがみつく私の肩は風を切り白い線を描いていた。
今日という日の為に、こつこつと貯めてきたものがある。
幻想郷に迷い込んでから、幾日か。
人里で仕事を見つけてはせっせと働き、たいして物欲も沸かなかったので貯まっていったもの。
食事とたまの酒、宴会を除いては出費がほとんどなかった。
なんて素敵で質素な生活なんでしょう、枯れてるとか言わない。
きっかけはある時の宴会である。
「最近、とうとうお賽銭が途絶えたのよ!」
人妖混ざり、開かれていた宴会。
べろんべろんになりながら、あの紅白巫女はのたまった。
成程確かに。彼女の神社に訪れる参拝客というものを俺は少なくとも見たことがなかった。
……いつも賽銭をいれなさそうな人間やら妖怪やらはみかけるのだが。
作戦時間は短い。
友人からもらった魔力は僅かである。
猫車を動かすための燃料にはスペースの都合、多くは無い。
貨物をおろせばもう少し余裕がでるが、そういうわけには行かない。
そして、日が昇ってしまっては意味がない。
なんとしても速やかに目的地まで到達し、任務を達成させなければならない。
とても見てみたいものがある。
正直に言えば俺は最初から彼女に惹かれていたのだろう。
もともと私は人の笑顔を見るのが大好きだ。
人を笑顔にするのが大好きだ。
その過程で私も笑顔であれば満点である。
そして私は、いつ見たかは覚えていないけれども、彼女の見せる様々な表情が非常に魅力的だとおもった。
和んでいる彼女はかわいい。
まったりとしている彼女はかわいい。
嬉しそうにしている彼女はかわいい。
昼、うたた寝している彼女はかわいい。
めんどくさそうにしている彼女はかわいい。
退屈そうにしている彼女はかわいい。
俺の感性は、彼女と出会っている時、所謂沸点のようなものが非常に低くなってしまう。
これを突然送られた彼女は、一体どんな笑顔をみせてくれるのだろうか―――
今夜は深深と雪が降っている。
世は静寂に包まれ、神聖で、白銀の舞う、夜。
月は出ていないが、代わりに雪が光を照らし、幻想的な灰色の世界である。
キイイイイイィィィィィィィィィ
場違いにもそれを引き裂くのは私の猫車。
星と光と金属音を撒き散らし、雪道を掻き分け白い大地をカッターのごとく斬り進む。
目指すは彼女の眠る神社唯一つ。
厚い手袋をしているが指先の感覚はとうに無く
ゴーグルには雪の結晶がぶつかり氷が張って
マフラーをしているが気休め程度にしかならず
背中に背負ったバックパックのかけ紐が肩に食い込み常に引っ張られているような錯覚を作り出す
冬装備のコートとブーツは地を蹴るたびにバリバリと氷が砕けて剥がれ落ちる音がしていた
―――階段が見えてきた
ここからが本当の関門である。
長い長い神社へと続く階段。通常の猫車では登るのにかなりの時間がかかるだろう。
俺は切り札の準備に取り掛かった。
速度をあげる。最高速度まで、ただただ上げる。
貨物を固定しているベルトを簡単に確認、異常ない。
――――――ィィィィィィィ
推進筒の出力を最大、発光がさらに強くなった。
猫車下部にくっつけられていた「危険」のテープが貼られている瓶の点火準備に入る。
友人に、外の本との交換でもらった実験廃棄物再利用爆弾。
それの爆風に指向性をもたせた、改良型。
右側下部に二つ。左側下部に二つ。
さらに友人の好きな言葉は「火力」と「パワー」。
これだけあれば多少貨物が重くても、空は跳べるはずだ。
イイイイイイイイイイイイイイイ!!
猫車がさらに叫びを上げる。
そう、行きさえ動いてくれればいい。帰りは手で押して帰っても問題はないのだ。
俺は猫車の上げる悲鳴が、頼もしくすら感じた。
予行練習なんてしていない。
目測と、感と、勢いだけの一発勝負。
大事なことは躊躇わないこと。
ここは幻想郷、外界と隔絶されて幾星霜
思えば形になるだろう、根拠なんて無いけれど
今の俺に出来るのは、タイミングよく爆発させ猫車にしがみ付くだけ
3、2、1
カチリ
―――――――――――――っ!!
急激な加速に、声無き悲鳴を上げた。
猫車と自分はベルトがつなぎとめてくれていたが、そのベルトが体に食い込みかなり痛い。
目下には高速に通過しているせいで、灰色の線に見える階段。
空中で、勢いが死なないうちに推進筒を臨界させる。
そして背中に背負っていたバックパックの紐を思い切り引っ張った。
「COUTION」と印字されたシールが焼けはがれ、白い光が漏れ出す。
八咫烏の力を封じ込めた、一回だけつかえる切り札。
友人の仕事を何度も手伝った上で、且つ弁当などを振る舞いそしてお願い倒して籠めてもらった彼女の力の片鱗。
「ロケットダイブ」
加速するのはほんの一瞬だけ。
すぐに光は止んでしまった。
しかしその一瞬でも十分なほどの推力は得られる。
今度は猫車が私の体に食い込む。
負けじと腕に喝を入れなおし、バランスをとり天を仰いだ。
私は自分に何度目かの喝を入れた。
時間にして、どうせ数秒たらずしか飛べないのだ―――――と。
今日は雪が深々と降り続けている。
珍しく今日は神社で宴会が行われなかった。なんでもそれぞれ用事があるのだとか。
いまごろ桃色の砂糖でも大量に生産しているに違いない。
そういえば昼ごろに友人が訪ねてきた。
また遊びに来たのかと思いきや、一言。
「今日はおもしろいものが見れるかもしれないぜ」
そして彼女は一目散に飛び去っていった。どうせ彼女も桃色の砂糖を作りにいったんだろう。
今日はあまり風が無く、淡々と雪が降っている。
それは美しく、幻想郷を白銀に変えていっていた。
時たま雲の薄いところから覗かせる月光は、美しいの一言である。
これを彼女は「おもしろい」と言ったのだろうか、そうだとしたら彼女は自分が思っていた以上に趣がわかっているのかもしれない。
ひそかに友人を見直していると、異音がしていることに気がついた。
普段ではあまり聞かない。
そう、鬱陶しいブン屋や件の友人、どっかの鴉が接近してきているときに鳴る、特有の空気の裂ける音。
友人の言った「おもしろいもの」とはこれのことかと、半ば失望していた時。
鋭い爆発音がした。
何事かと身構えた瞬間。鳥居を勢いよく潜り、「空間を突き破ってきた」物体が目に映った。
白い線を引きながらそれは着地。
すさまじい音を響かせ、境内を横滑りしながら賽銭箱の前で止まった。
「メリーーークリスマーーーース!!」
やけに陽気なその声は、聞いたことのある声だった。
見かけるたびに誰かと共に笑っている青年の声。
「うおりゃーーーーー!」
ザラーーー!
荷車からバチンと荷物を取り出し、賽銭箱に中身をぶちまけた。
「それじゃ、さらばだーーーーー!」
目を白黒とさせている私の目の前で、彼はそう叫び、背を向け凄まじい速度で走り出した。
任務完了。コレヨリ帰役スル――
目的は果たした。
出現してから全て賽銭箱に投入すまでわずか数秒。我ながら見事な手際であり、全て順調である。
あとは混乱した彼女を残して消え去り、後日友人から彼女の反応を聞くだけである。
やり遂げた達成感におり気分は高揚し、笑顔を浮かべながら鳥居をくぐろうとした瞬間。
突然現れた透明な壁に阻まれ、俺は激突し、吹き飛んだ。
地面を転がり、何がなんだかわからず混乱している私に声がかけられる。
「そう、なるほど、これが『おもしろいもの』ね」
彼女の声が近づいてくる。なんてことだ、あれほど秘密にしておいてくれと言ったのに。
「確かに面白かったわ。神社に強襲して、ぶちまけるだけぶちまけて帰っていこうとするなんて」
彼女の声にはどこかに迫力があった。おそらくさっきの壁は彼女の結界だろう。おそらくもう脱出は叶わない。
「しかもあなた、ただの人間じゃない。それなのにあんなに高速で、階段まで飛び越えてきて。初めてよまったく」
恐怖と寒さと地面に叩きつけられた衝撃で体はまともに動かない。
しかし痛みそのものは少ない、着地するとき彼女がなにかしてくれたのだろうか。
「それで、素敵な贈り物をしてくれたあなたに質問があるの」
かろうじて彼女のほうに振り向くが、顔を見ることが出来ない。恐らく驚かされて怒っているのだろう。顔を見ることが出来ない。
「あなたは今日、なにか嬉しいことはあった?」
「……いや、今日はまだなにもないよ」
「…そう、あなたは恋人とか、そういうのはいるのかしら?」
「……いや、まだだれもいないよ。たぶんこれからもいないんじゃないかな」
「…そう、あなたは今日、これから予定とかあるの?」
「……いや、しいて言うなら猫車の片付けぐらいだ」
「…ばっちりね」
何がばっちりなのだろうか。会話をしながらも彼女は歩いてきていて、もう目と鼻の距離である。
惨めにも這いつくばっているせいで彼女の顔をうかがうことが出来ない。
彼女がしゃがみこんできた。
硬くて冷たい石畳の感触を味わっていた俺に、暖かくてやわらかいものが触れた。
「ふふ、驚いたかしら」
彼女は笑っていた。その表情はとても、とても、もはや言語でなど表せない。
素敵だった。
「さて、贈り物があるのだけれど」
いまので十分だ。そう言おうとした私の気配を悟ったのか。ぐいぐいと私の襟首を掴み、神社へ引きずっていく。
「そうね、まずは一緒にお風呂に入りましょう。ずいぶんと冷たかったもの」
その言葉で私は瞬時に頬に熱が燈るのを感じた。さらに先ほどの「贈り物」を思い出し、耳まで熱くなる。
「そして暖かいご飯でも食べましょうか。芯まで温まらないとね」
聞けば彼女の声にもすこし羞恥の色が見える。恥ずかしがっている彼女もやはりかわいいと思ってしまう私はもうだめなのかもしれない。
「そしてその後は、わかるわよね?」
もはや私の思考は沸騰寸前である。うれしい、うれしいが、それは流石に…。
「あらやだ言い忘れてたわ。結構前からそうなんだけど、好き。愛してる」
なんと?
「ほらほらもう縁側に到達しちゃったわよ」
え、ちょ、 れいむさーーん!?
「ほらほら抵抗してもいいことないわよー、ほーらほーら」
や、ま、まって!まって!
「あらなにかしら」
「好きです、付き合ってください」
「もう遅いわ。愛し合いましょう」
これが、俺と彼女が恋人になった日である。
このまま正月までかたときも離れずべたべたしまくり、周りに砂糖を撒き散らしまくったのは言うまでもない。
新ろだ933
「………腹立つ」
「……何よ、いきなり」
目の前の男が、突然何か言い出した。
前々から頭の中身が残念だと思ってはいたが、そうか。遂に。
「あ、今俺の事を 好きだ! って思った?」
「………………」
「………」
「………………」
「……」
「………………」
「…ごめん」
こういう手合いには無反応が一番だ。
下手に突っ込んで調子付かれると目も当てられない。
二人きりのときは勿論、他人が居るときだって自重しないから尚更だ。
言葉を返せば返すほど言い訳みたく聞こえて……いや、思い返すのはよそう。
「で、何よ? わざわざやってきて、ズカズカ炬燵に入り込んだ第一声がそれ?」
「しゃーない。あんなトコに居られるか」
「何したのよ」
「俺が悪いのか?」
「概ね」
「ぐへぇ」
バッタリと机に倒れこむ。
私は悪くない。誰が悪いかって、こんな反応をさせるコイツが悪い。
「……ほら、今年もこの季節がやってきましたよ」
「そうね、明日ね」
「その所為でな。里の奴らがイチャイチャベチャベチャと。空気が粘つくくらいに」
「あー………」
明日の聖誕祭を前に、どうやらヒートアップしているらしい。
今日明日は独り身にはさぞや辛い、のだろう。
とは言え、空気が粘つくとはどれ程の事か。ちょっと見てみたい。
「ありゃ異変だよ、異変。空から砂糖でも降ってくるんじゃないか、雪の代わりに」
「そんなに凄いの?」
「……だな。こんな時こそ巫女さんの出番だろ? 解決ついでに見てきた方がいい。
あとあいつら溶かしてくれ、雪と一緒に」
「そんなにお熱いんなら勝手に溶けるでしょ」
「その前に俺が溶ける」
溶けるのが嫌で、逃げ出してウチへきた、ということか。
情けないのか、賢明なのか。とりあえず、さっきの見てみたいは取り消し。
私まで中てられそうだ。自然解決を待とう。
まぁ、寒いから動きたくないだけなんだけども。
「うへー、ここはのんびりできて良いなぁ」
話すだけ話して機嫌も戻ったのか、緩んでいた。
結局溶けてるんじゃないか。
と、急須のお茶が無くなっていた。
………ついでにコイツの分も淹れてくるか、と席を立つ。
「なー、れーむー」
「何よ」
「すきだー、あいしてるー」
………まったく。コイツは。
「……はいはい、私もよ。で、今日も泊まっていくでしょ?」
新ろだ950
12月25日―――クリスマス
クリスマスとはイエス・キリストの誕生を祝うキリスト教の記念日・祭日であり、『神が人間として産まれてきたこと』を祝うことが本質である。
―――が、どうやら幻想郷ではこの事を知っている者は殆ど居らず、間違った知識が蔓延していた。
曰く、『めでたい日だから飲んで食って騒げる日』
曰く、『自分の足袋を枕元に置くと紅白の衣装を着た老人が寝ている隙に望みの品を足袋に無理やり押し込んでいく日』
曰く、『特定の人には認識できない日』
などなど、例を挙げるときりがないが、概ね宴会できる日とされている。
今年も幻想郷ではこの日、あちらこちらで宴会が行われていた。
人里や、妖怪の山、そして博麗神社でも……
今、博麗神社は宴会の真っ只中にあった。
亡霊は食い、鬼は飲み、烏天狗は撮影して回り、氷精は酔っ払って迷子になり、騒霊達は演奏し、夜雀は歌い……
そんな賑やかな所とは距離を置き、二人きりで酒盛りをしている者達がいた。
一人は博麗神社に住まわせてもらっている外来人、○○。もう一人はこの神社の主の博麗霊夢である。
○○「寒くない?霊夢」
霊夢「お酒も入ってるし、なによりこうして○○のおかげで寒くないわ」
霊夢は○○の胡座の上に座り、さらに軽く抱きしめられている状態にある。
長い時間をかけて築いた深い仲だからこそできる体勢だ。
○○「そうか、よかった。今の時期に風邪とかこじらせると年末の行事に響いちゃうからね。体は大事にしておかないとね」
霊夢「ふふ、ありがと○○。ほら○○も暖かくしとかないと」
そういって霊夢は○○を抱きしめてきた。
霊夢は○○の胸板に顔や体を擦り付け、甘えてくる。
○○はお返しとばかりに霊夢の綺麗な黒髪を優しく撫でたり額に軽くキスをして返す。
○○「ん…ありがとう霊夢、暖かいよ。」
霊夢「えへへ、私がここまでしてあげたんだから、『ぷれじぇんと』が良いものでなかったら許さないからね」
そういって、○○の顔を見上げる。口にした言葉とは裏腹にその表情は華やかな物だった。
思わずその笑顔に見とれそうになりつつも、○○は霊夢に答える。
○○「『プレゼント』ね。大丈夫、安心して」
○○は懐から装飾が施された小さな箱を取り出した。
とりあえず、霊夢の危惧していた『プレゼントはなし』という事態はなくなったようだ。
○○「はい、メリークリスマス。霊夢」
霊夢「ありがとう、○○! ねぇ、さっそくあけてみてもいい?」
○○「うん、いいよ」
霊夢は○○から小さな箱を受け取るとワクワクしながら箱を開けていく。
そして箱を開けると霊夢は少し驚いた。
霊夢「えっ…○○、これって…」
小さな箱から表れたのは銀色に光る小さな指輪だった。
外界では婚約指輪と言われる物である。
○○「人里で売られていたんだ。霊夢に似合うかもって」
『ちょっと高かったけどね』と付け足す○○だが、後悔しているようには見えなかった。
霊夢「もう、変な見栄なんか張るからよ。でも……」
霊夢「ありがとう…○○。本当に嬉しい…」
○○に向けるその表情は本当に嬉しそうに笑っていた。
霊夢「ねっ、こういうのは相手にはめてもらう物なんでしょ?さっそくやってみせて」
○○は指輪を手に取ると霊夢の左手を取り、その薬指に結婚指輪をはめた。
指輪はまるで始めから霊夢の為に作られたかのように霊夢の指にぴったりだった。
霊夢「西洋ではこれで夫婦になるのよね……此処が西洋でないのが残念だわ…」
霊夢ははめられた指輪を見ながら少し残念そうにしていたが、○○に顔を向け、
霊夢「でもいいわ。今はこんなに幸せなんだから!」
満面の笑みを浮かべ、霊夢は抱きついてきた。とても幸せそうな表情をしている。
そんな霊夢が愛おしくて、大好きで仕方なくて、○○は霊夢をまた優しく抱きしめた。
外界ではクリスマスの過ごし方は3通りあると言う。
1つ目は『仕事や商売に追われて過ごす』、
2つ目は『親しい者たちと共に騒いで過ごす』、
そして3つ目は……
『愛する人と共に過ごす』である。
宴会場は相変らず賑やかだ。
だが、ある一角だけは雰囲気が他と違うようだ。
少し見てみますか?
ニア 見てみる。
どうでもいい…
………
紫「私はまだイケルの十分にぴちぴちで流行り物もばっちり把握してるからだいじょうぶだしだってマダワカイダカラマダチャンスハアルノタダイイトノガタガミツカラナイダケデワタシハ…」
藍「……(目を合わせないようにしている)」
紫が涙を流しながら藍に何か語りかけている。その瞳には光も生気も宿ってない…
幽々子「おかわり」
妖夢 「幽々子様……おかわりはもうありませんのでこの辺りで…お体にも悪いですし…」
幽々子「(ブツブツ)……私だって…私だって……好きな人と一緒に…好きでこんな事…(ブツブツ)」
妖夢 「い、今お持ちしてきますね…(いつもの幽々子様じゃない…)」
空になった皿が粉雪のように積まれていく。その勢いが止まる気配はない…
永琳「……」
酒で満ちた杯を片手に何か考え事をしているようだ。その表情は険しい。
月の頭脳の考える事は凡人などには到底理解できない事だ。一体何を思考しているのだろうか…
永琳「……(これから毎日バカップルの家を焼こうかしら…)」
神奈子「今年もまた早苗と諏訪子と、か……」
諏訪子「…あまり背負い込むなよ。神奈子に出来ないなら、私にも早苗にも出来ないんだ」
早苗「うぅ…グス……○○さ、ん…○○さん……ヒック」
二柱の神は絶望し、風祝は悲しみに暮れている。
………
見なかったことにしました。
新ろだ955
序:霊夢と一緒に行く年を見送り、来る年を迎えたい。それだけです。
師走、誰もが忙しい時節の末日の、大晦日。決して広くない博麗神社の境内を掃除し、煤払いを
終えて僕と霊夢は年越蕎麦をすすっていた。
霊夢に今年の蕎麦はどう?と聞くと素直においしいわよと返してくれた。今年の蕎麦は人里の蕎麦
職人さんから提供してもらったもので、僕自身もお世話になっている。気に入ってくれたのは嬉しい。
「ね、今度そのお店紹介してくれる?」
そう言いながら目を輝かせて語る彼女の姿を独り占めできるのは、僕の密かな喜びだ。
蕎麦もなくなってこたつを囲み、紅魔館のメイド長さんから譲ってもらった古時計を見ながら今年
の終わりが近づいているのを感じていた。もう少しで終わるのねと霊夢が何とはなしにつぶやく。
そうだ。今年が終わろうとしている。
今年も無事に終わることが出来たねと切り出すと、騒がしくもあったけどと返してくる。そこから
僕と彼女の今年の回想が始まった。
春は雛祭り、端午の節句にエイプリル・フール。特にエイプリル・フールは幻想郷にまた異変か?
と思わせるような大騒ぎになった。幻想郷の勢力抗争、それも騙し合戦だったんだから。後片付けが
大変だったんだ…
「あの時はみんな揃って他人を騙そうとして、一生懸命だったわね。特に魔理沙と
チルノあたりは凄く
ムキになっていたのが可笑しかったなぁ」
そう言いながら特にあなたはみんなにとっての大目標だったのよ。幻想郷屈指のマイペース人間を
どうやって騙そうかってねと指を指してくる。霊夢も僕を騙そうと思った?と聞くと彼女はくすっと
笑いながらこう返してきた。
「そういうあなたはどう思ってるの?」
どうなんだろう。騙そうと思えば騙せたはずだし、騙されたって実感もない。霊夢はしなかったと
思うよという僕の答えに対する解答は、ちょっと意地悪そうな感じの笑顔で思ってたわよというもの
だった。え、そうなの?分からなかった。
「分からなくて当然よ。それこそ古明地の覚りの能力でもないとね」
まぁ、確かにそうだ。それに分かったら分かったで何かと大変そうだし。
夏は七夕、花火大会、盆踊り大会とか。霊夢がある意味で一番忙しかったんじゃないだろうか。
「年に一度の御先祖様が下界に帰ってくる時期ね。あの時は手伝ってくれてありがとう、助かったわ」
彼女はそう言うものの、文字通り本当にちょっと手伝うだけたった。細かいことはほとんど慧音様が
やっちゃったし、男衆の人達も良く話を聞いてくれたからうまくいっただけ。それでも、そんなことは
ないわよと霊夢が気遣ってくれるのがどこかこそばゆくも、嬉しかった。
あの後の盆踊り大会では、霊夢がおろしたての浴衣を着て盆踊りを披露してくれたのを覚えている。
人の群れの中で当たり前のように踊る姿は、どこにいてもおかしくない一人の女の子だ。後で神社まで
一緒に行った時、僕だけにしか見せないと言って正装姿で踊ってくれたのは色んな意味で驚きだった。
後にそのことが何故だかばれてしまい、男衆の人達の一部から写真撮って送ってくれと迫られ、凄い
ところではその浴衣と正装の服をくれとか無茶な要求をする人もいた。その人は後で慧音様の頭突きの
餌食だったけど。
その話をしたら、そんなことするくらいならちゃんと賽銭箱に入れて頂戴と頬を膨らませていたんだ
けど、その姿が微笑ましいと思ってしまったことは、ここだけの秘密。
秋は穣子さんと静葉さんをお招きしての豊穣祭があった季節。おかげで今年も豊作だった。
個人的には信仰取られちゃうの面白くなかったけどねとちょっとむくれた感じの表情になる。でも
それは守矢神社も同じじゃないのかなと返すとそれでも、と返される。確かに秋姉妹の社は妖怪の山に
あるし、何より彼女達は神様そのもの。つまり信仰の対象そのものだ。
それに神様は彼女達だけではなく厄神の雛さん、守矢神社は語るまでもなく二柱も神様がおられる。
競争相手が増えて焦っているのだろうかと思いもしたけど、霊夢なら大丈夫だと思う。根拠はないけど。
ふと思ったことを口にしてみる。
『ねぇもし僕がきみのことを信仰していたら、いつか霊夢は神様になれるのかな?』
それに対する答えは至ってシンプル。
「嫌よ、神様になったらなったで何かと面倒くさいもの。それに神様になったら人間ではいられなく
なっちゃうし、それに」
あなたと私の間に上下関係作っちゃうじゃない、とはっきり答えてくれた。
しかし、今年の一大イベントは冬だ。レティが出てきて幻想郷を銀世界にするのはいつもどおり
だけど、今年は何と言っても…
「あのクリスマス・イベントね。あの時は散々だったわ。紫にいきなり衣装を取替えられるんだもの…
スカートの裾が短くて落ち着かないし、いつもの衣装に戻そうかと思ったら箪笥の中身が全部アレに
替えられてたのよ?」
もううんざり、と言いたそうな感じの表情をする。ここは流石と言うべきなのか、紫さんが徹底
していると言うのか…無駄なことに力を入れているとも取れるんだけど。お気の毒様。
今年のクリスマス・イブは故あって僕と霊夢がサンタ・クロースを演じることになった。とは言え
僕は只の人間なので、演じられるようにするには事前準備が必要。そこに面白い話を聞いたと現れた
紫さんに手助けを得て、一時的に空を飛べるようにしてもらったのだ。
トナカイとかは用意できなかった、というよりしなかっただけだ。そもそも、誰にさせるのかが
問題だし。
紅魔館のクリスマス・イベントを一足早く切り上げ、皆が寝静まる頃を見計らって幻想郷を飛び
回り、プレゼントを置いていく。ここでは紫さんがこっそり開けていてくれた隙間が役に立った。
みんなの部屋の中を垣間見た時は新鮮な感じがした。意外なことが分かったりして、これは二人
だけの秘密にしておいた方がいいなと思うことがたくさんある。
「特に咲夜がぬいぐるみコレクター、だっけ?あれを知った時、笑いを堪えるの大変だったわ」
そのことを思い出して可笑しいと思ったのか、霊夢に笑顔が戻った。
あと一時間で今年が終わる。人里のお寺で撞(つ)かれているであろう(もしかしたら白蓮さん達が
いる命蓮寺かもしれない)除夜の鐘がここにもはっきりと聞こえてきた。今年のうちに107回撞かれ、
最後の一回が年の始まりと共に撞かれる。
その瞬間が、今年が終わり新しい年が始まる時。
いきなり、何かを思い立ったかのように霊夢が立ち上がる。どうしたの?と聞くと彼女は一緒に
外に出てほしいと言ってきた。
外に出ると暖かさに慣れきった体に鞭を打つような寒さが襲い掛かってくる。雪は止んでいて、
綺麗な星空の一言以外に言い表しようのない雲もまばらな、澄み切った夜空が広がっていた。
階段から神社までを繋ぐ石畳の上を霊夢は何も言わずに歩き、その後を追うように僕が続く。
どうしたのかと聞くことも出来たのにしなかった。
いや、出来なかったんだと思う。それをしてはいけない、何故かそんな雰囲気が漂っていたから。
ちょうど真ん中辺りまで来た頃、霊夢の足が止まる。深呼吸を一つして、彼女は語りだした。
「今年の終わりを、あなたという存在と一緒に迎えることが出来た。今までたくさん我侭も言って
きたし、時にはひどいことを言ったかもしれない。それでも私のことを信じて、想ってくれている。
そのことを私は本当に感謝してるのよ。だから」
ここに今年の私達を置いていこうと思うの。そして、新しい私達を出迎えたい。そのための儀式を
したいから、私に力を貸して。そう言いながら僕を見つめる彼女の表情は、いたく真剣だ。でも僕は
何をしたらいいのかな、と聞いてしまう。それはそうだ。僕には何の力もないのだから。
それに対する答えは単純だった。
「私のこと、ぎゅっと抱きしめて。それだけでいいの」
離れていかないようにしっかりと、でも壊したりしないようにそっと抱きしめる。彼女の体の線は
思った以上に細く、加減が難しいんじゃないかとさえ思ってしまう。
彼女はそう、それでいいから。そのままでいてくれれば、儀式は終わるわと言って僕に抱きついて
くる。こんなに密着したのは今に始まったことでもないのに、それでもどこか厳かな雰囲気のような
ものを感じてしまう。それは儀式だからなんだろう。それも特別な。
鐘の音と一緒に、霊夢の心臓の鼓動が聞こえてくるような気がした。文字通り、僕たちは今ここに
一つになった。二人で、一つに。そしてこれを今年に置いていくんだ。
淋しくもあり、そして嬉しくもある。置いていかれるのが淋しい、でも二人だから温かい。置いて
いかれるのが淋しい、でも二人一緒だから嬉しい。
除夜の鐘、互いに聞こえているだろう胸の鼓動、そしてそれと共にしっかりと刻まれていく時間。
終わり行くもの、去り行くものとやって来るもの、迎え入れられるものの場所が入れ替わる瞬間が
近づいている。その瞬間が訪れるまでこの手を離してはならない、離したくない。二人一つでここに
置いていくのだから、離してはいけない。
そして年の終わりと同時に始まりを告げる最後の一撞きと共に霊夢がスペルカードの名を静かに、
しかしはっきりと聞こえる声で唱える。
「夢想…封印!」
霊夢のシンボルマークとも言えるスペルカードの『夢想封印』が織り成す弾幕は一つの年が終わり、
そして始まった空に花火のように広がった。
博麗神社だけじゃない。魔法の森から、紅魔館から、竹林の永遠亭があるだろう場所から、妖怪の
山のあちこちから、他にも色んな場所からそれぞれのシンボルマークとも言える弾幕が空に広がる。
何だ、みんな考えることは一緒なのねと呆れたように呟きながらも霊夢は笑っていた。
変わらないものなどどこにもないと聞いたことはある。彼女と僕の関係も例外ではなく、見えない
ところで確かに変わっていくんだろう。でも、僕たちの関係をいい方向へ変えていく事は出来るはずだ。
あの年に置いていった僕達に自慢話できるようになるその瞬間まで、二人交わったこの道を歩いて
いこう。今年も霊夢と僕と、二人で。
「今年が始まったんだからしなくちゃ駄目よね、あれを」
『うん?ああ、そうだね』
明けましておめでとう。今年もよろしくね。
おめでとう霊夢、今年も一緒にいられますように。
年の初めの挨拶、年始と共に僕達の唇が自然と重なった。
*Fin*
新ろだ2-068
長い石段を上り、目的地を目指す。
千とは言わないまでも百以上はあるだろう石段だ。
それを上り切るとそこには、一つの神社があった。
俺は境内を掃除している1人の巫女さんに声をかける。
「霊夢ー、買って来たぞー」
「ありがとう、〇〇。丁度いいから休憩にしよっと」
「お前な…。俺が買い物に行く前も休憩してたじゃねえか」
「いいじゃない、別に。掃除なんてめんどくさいんだし」
そう言うやいなや持っていた竹箒を壁に立てかけ、縁側に腰を下ろす霊夢。
それに少し呆れながら俺もその隣へ座り、買って来たものが入った袋を差し出す。
「ほら、言われた通りの物買って来たぞ」
「どれどれ…。ほんとだ。これがおいしいのよね~」
そう言って袋の中からアイス(バニラ味)を取り出し、食べ始める霊夢。
それを見て、俺も自分の分のアイス(チョコレート味)を取り出し、食べ始める。
「しっかし暑いわね。こんな暑いと溶けそうだわ」
「さすがに溶けはしないだろ。暑いってのには同意するが」
それも当然だろうと思う。なぜならば、今は夏休み。
一年で一番暑いときなのだから。
もっとも、夏休みが終わっても暑いのは続くんだろうけど。
そんなことを考えていると、いつの間にかアイスが無くなっていた。
「あれ?俺もう全部食べたっけ?」
「なくなってるならそうなんじゃないの」
それを聞き、やはりあそこで味ではなく量を取っておくべきだったか…などと考えながら中身が無くなった袋にゴミを捨てる。
なにもすることが無くなったので、霊夢のほうを見てみる。
するとそこには、笑顔でアイスを食べる霊夢がいた。
(やっぱり笑うと可愛いよな…ってなに考えてんだ俺!落ち着け!)
そうしている間にも顔に血が上っていくのがわかるが、もっと笑顔が見たいという欲求に負けて霊夢を見つめる形になってしまう。
すると当然霊夢もそれに気づくわけで、
「なに?アイスならあげないわよ?」
「え?い、いや、そんなこと考えてねーよ!」
「それならいいけど…じゃあなんでこっち見てたのよ」
どうする?もし霊夢のことを見てたなんて言ったらなんて言われるかわかったもんじゃない。
だが、この状況を打開する話題なんて……あった!あれだ!
「いや、霊夢の笑顔が可愛いと思ってさ」
……。
なに言ってんだ俺はぁぁぁぁ!待て!落ち着け!落ち着いて状況を確認しろ!
俺→何か言っちゃった。できることなら取り消したい。だが言った言葉は取り消せない!
霊夢→な、な、な…とか言いながら顔を真っ赤にしてうろたえてる。
結論
あれ?顔真っ赤にしてうろたえる霊夢って可愛くね?
………
どうしてこうなった!どうしてこうなった!
頭が斜め上の回答を出してきた。これが惚れた弱みという奴なのか…!(※違います。
「あ、あんたはなにいきなり言ってんのよ!」
顔をさっきより真っ赤にしてそう言って来る霊夢。
その顔がかわいくてもっと見ていたくなるが、怒っているのは確かなようなので謝ることにする。
「ご、ごめん霊夢!いきなり変なこと言って悪かった!気に障ったのなら取り消す!だからごめん!」
そう言って謝ると、霊夢は動きを止めた。
これで助かるかと思っていると、今度は体が震え始めて…って
「このバカ!なんで謝るのよあんたは!どこをどうしたらそんな結論に行くわけ!?」
「な、なんだよ!怒ってるみたいだから謝っただけだろ!」
「は?怒ってる?私が?」
「そうだよ!」
そう返して、考える。
今霊夢は、怒ってると言った俺の言葉に対してなにを言ってるのか分からないという感じだった。
ということは、霊夢は怒っていないんだろう。
なぜそう断言できるかといえば、それが霊夢だからとしか答えようがない。
霊夢は他人との関係を深く考えない。だから、嫌いな人間にははっきり嫌いと言うし、怒っていたら怒っていると言う。
だからそれをしないということは、本当にそう考えていないということだ。
なら一体どうして…。という俺の考えはすぐに解消された。俺の想いもよらない霊夢の言葉によって。
「好きなやつに可愛いって言われてなんで怒んなきゃいけないのよ!」
解消されたと同時に頭が混乱したが。
…は?待て。霊夢は今何て言った?好き?誰が?俺が?
そんな考えが頭の中をぐるぐる回って、気づけば口から出ていた。
「ま、待て霊夢。今お前好きって…。それは俺のこと…でいいのか?」
それを聞いて自分が何を言ったか気付いたのだろう。
だが、逆にそれで踏ん切りがついたのか、開き直ったように言ってくる。
「ええ、そうよ。私はあんたのことが好き。優しい〇〇が好き。これは冗談なんかじゃない」
それを聞いて、俺は驚いていた。
霊夢がこんなに感情をあらわにするのは初めてだったから。
だが、返事を返さなければならない。もう答えは決まっているが。
「俺も好きだよ、霊夢」
そういった瞬間、笑顔になって抱きついてきた霊夢を抱きしめ、間近にある笑顔を見てこれが幸せなんだと感じ。
それを守り続けていくことを誓った。
最終更新:2011年02月27日 00:00