魔理沙2
1スレ目 >>783
@ @ @ @ @ @ 本屋 @ @ @ @ @ @ @
いつもと同じ静かな朝、そこに彼女はやってくる。
「メイド小隊A,B、ゆけー!」
ワー、キャー、ドスン、ドガン
「駄目です!抑えきれません!」
遠くでそんな声が聞こえる。にしても毎日ご苦労なこった。
「くそっ!黒い悪魔はゴキブリか!?」
いや、聞かれましてもね、人によっては違うと思いますけど。なんて思いながら俺はゆったりと仕事をやっていた。
ここは紅魔館の中の大図書館。大図書館なんていうけどその広さはどこぞの神社よりも広いかもしれない。外見は神社以下だが。
そこで俺は本の整理をしている。元々本が好きなのであまり苦にはならなかったけど。
思えば、外からやってきた右も左も解らない俺を助けてくれて、今ここに住まわせてもらっているレミリア様と咲夜さんには感謝している。
助けてくれなければ妖怪にでも食べられていただろうか・・・。
それはともかく、朝から聞こえた騒々しい音が止まった。
次に来るのは決まっている、その先を考えてため息が出た。
扉が勢いよく開かれた。こんな空け方をする人妖は紅魔館にはいない。・・・・・・例外はあると思うけど。
扉の方を見てみると、金色の長い髪に色白の肌、それと黒と白だけの服と帽子。
一見するとフランス人形の様に見えなくも無いが、黒と白の服でそのようにはあまり見えなくなっている。
「また来たの?」
この図書館の主、パチュリー様のいつもと同様の言葉、返って来る言葉はいつも同じ。
「また来たぜ」
そういいながら本棚から本を物色する。俺はため息をついて
「見るのは別にいいけど、毎回毎回散らかさないでくれ。片付けるのが大変なんだ」
毎回毎回散らかして、その上何かを持っていくんだから手におえないったらありゃしない。
そりゃあ蚊取り線香で毎回やられるリグルも切れるって。関係ないか。
「努力するぜ」
絶対しないな、こいつ。家の片付けもろくにしない人間ができるものではない。
「これと、これと・・・あとこれだな」
三冊を選んで図書館に一つしかない机に持っていく。それ以外にもあるがそこは図書館ではない。個室である。
「ほら、何してんだ?さっさと仕事しないと終わらないぜ?」
魔理沙を見ながら考え事をしていた俺に魔理沙はそっけなく言った。俺は我に返って適当に「ああ」と、答えた。
っていうか仕事が終わらないのは、あんたのせいなんだがな。
「あ、そうだ。○○、紅茶くれ」
「・・・はいはい、わかったよ」
「私のもお願い」
この本の虫型魔法使いは・・・。まぁどうせ命令だろうし、逆らったら焼かれるな。そう思いつつ紅茶を取りに行った。
「ふああ・・・、おはようございますー」
眠たそうな挨拶とともに、
小悪魔がやってきた。前の時に「あんまり寝ていない」と話していたので手伝ったら、それ以来仕事のほとんどが俺に回ってきた。
「ん、おはよう。今日はA-300の本の整理だっけ?」
ここの図書館は広すぎるのでA-Zと1-500までの組み合わせで位置訳をしている。しかもまだまだ増える予定らしい。鬼か。
「・・・たぶん。それじゃあいってきま~す」
あれは絶対寝ぼけてる、足フラフラだし。水でもかけてやろうか。
「お~~~~~い!まだか~~~~!?」
おっと、そうだった。まずこっちが先だな。俺は急いで魔理沙たちがいるところへ向かった。
「遅い、遅すぎて死ぬかと思ったぜ」
「そんなことがあるのかしら?」
「あるぜ、たまにだけどな」
「あら、ぜひ聞いてみたいわね」
発言に突っ込みを入れたりトゲを入れたりしながらパチュリー様と魔理沙は紅茶を飲んでいる。
さて、俺はそこら辺で休むとするか・・・。極稀に来る暇な時間はすべて休憩に当てるのが俺流だ。意味無いけど。
「あ、そうだ。どうせならここで一緒に紅茶を飲みながら休むか?」
「いえ、お断りさせていただきます」
魔理沙の近くで紅茶を飲んだらどんな薬品を盛られるかわからん。前の時は犬耳が生えたな。あの時は咲夜さんに殺されかけたな。
なぜか俺が、だが。それはもう鬼神のようで・・・トラウマトラウマ。
「そういえば、なんで俺に紅茶を淹れさせたんだ?咲夜さんの方が、美味しいじゃないか」
ただ淹れるだけなら誰にもできるが、不味いよりは美味い方が良いだろう。
「あー?なんとなくだ」
「なんとなくで、淹れさせる人がいるかしら?」
「ここに居るぜ?」
また下手すれば弾幕ごっこスレスレの話がはじまったので意識を別のところに移す。そこで
「○○さ~ん!ちょっと来てくださ~い!」
遠くから普通の人では全く聞こえない音量の小悪魔の声が聞こえた。ここ幻想郷に来てから、凄く耳が良くなった。犬耳が原因だったりして。
とりあえず、ほんの少しの休み時間を惜しみながら暗闇の中へと進む。
「えっと、これをD-480までお願いしますね」
「ん、わかった」
と言われて渡された十冊の本。これじゃあ前が見えないです、鳥目以下。BGM ~もう本しか見えない~
つってもこれは仕事なのでやらなければいけないんだよな。
それで、運んでいってちょうどB-480に差し掛かったところで
「○○~。『メルランのめるぽと力の関係』を持ってきてくれる~?」
「そんな声じゃ、聞こえないと思うぜ」
残念ながら聞こえています。小悪魔と話しているときも聞こえていたんだけど。
あの本は確かSの・・・200だっけか?遠いなぁ・・・。
まずはこの本から持っていかないと、本気で。出ないと消し炭にされて浄化されてしまう。
「お、本当に持ってきたんだな。ってことは、聞こえていたのか」
「だからいったでしょ、たとえでは無しに地獄耳はいるって」
失礼な、俺の聞こえる範囲ではここから地獄まで聞こえるほどよくはない。
「たとえよ、たとえ」
俺の心を呼んだか読まないか、そんな事を言った。ちなみに魔理沙は俺が持ってきた本を読んでいる。
「ふむふむ、ワーハクタクも稀に暴走する・・・か」
なんか題名と全く違うんですけど。
「さて、そろそろ帰るかな。パチュリー、これ借りていくぜ」
「持っていく、の間違いじゃない?」
「じゃあ持っていくぜ」
「持ってかないで~」
どっちですか。何て思いながらも仕事に戻る。あの本は返ってくるのか解らんな、なんて考えながら。
夜だろうと昼だろうと図書館には関係無い。窓なんて無いから。パチュリー様曰く、紫外線は本の天敵らしい。
そういえば、ここ最近外に出てないな、何て思いながら咲夜さんが作ってくれたご飯を食べる。うん、不味いもう一杯って言おうとしたら
ナイフが頬を掠った。あっちの方が地獄耳だわ。それはともかく最近食べる時間がなくなって租借が早くなったのは内緒だ、なんとなく。
「毎日毎日ご苦労様ね」
後ろから声をかけられたので振り向く。そこには幼いながらも威厳というかオーラらしきものが漂う、レミリア様であった。歩く音は前から聞こえていたけど。
ついでにレミリア様を見て、今が夜だという事に気付いた。
「いえ、コレが仕事ですから」
「そういえば、寝てる?あなた最近寝てないでしょ」
「でも、なれちゃいましたよ」
それでもたまに眠気が来ることがあるが、その時は根性で。
「慣れって言うのが一番怖いのよ。時にそれが命取りになるかもしれないから気を付けることね」
そのあと「それじゃ」といって出て行った。とりあえずは俺を気遣ってくれた、そう解釈していいのか?
そうだな、今は仕事もないし。たまには寝ておこう。
眠気はなかったがベッドに入ったらすぐに意識が切れた。
@ @ @ @ @ @ 本蟲 @ @ @ @ @ @
今俺は魔理沙に頼まれて一番遠いところ。つまり、Z-400まできている。まったく、読みたいって気持ちもわからんでもないが
もう少し近いところにしてほしい、っていうかなんで知ってんだ。
えっと、『幽々子の胃袋は宇宙』は・・・あったあった。
「んで、パチュリー。少し頼みがあるんだ」
「何?アナタからの頼みごとなんて珍しいわね」
遠くからなのではっきりとは聞こえないが声が聞こえた。面白そうだったので少し聞いてみる事にしてみる。
「少し貸してほしいものがあるんだ」
「借りていいものと悪いものがあるわよ」
「実は、・・・だ」
ん?よく聞こえなかったな。
「あなた、それは論外よ。人に聞くもんじゃないわ」
「それでも許可が必要、だろ?」
きょ、許可!?あの本なんて有無を言わさずに持っていく魔理沙が許可だと!?幽々子が小食になるくらいおかしいよ!
「そうね、駄目かしら?」
「そうか・・・」
少し残念そうに言った。・・・ように聞こえた。
「でも、・・・・・・・だし」
いまいちよく聞こえない。元々小声だし。
「そうか!?じゃあそうさせてもらうぜ」
「犯行予告はあんまり言わないほうがいいと思うわ」
「犯行じゃないから関係ないぜ。それよりも・・・、おーい!まだなのかー!?」
あ、終わったか。これは探るのはやめた方が良いな、そう思いながらパチュリー様のところに向かう。
「遅すぎるぜ。もう少し早くならないのか?」
「そうだな、魔理沙がもう少し近いところを選んでくれれば早くなるな」
なんて言いながらも本を渡す。すると魔理沙は申し訳無くなさそうに。
「あ~、すまん。用事を思い出したから私は帰るぜ」
そう言って愛用の箒を持ってそそくさと外に出た。・・・俺の苦労は?
「丁度良いわ、○○。あなたには重要な仕事があるのよ」
「な、なんですか?」
重要な仕事って・・・魔道書の封印解いてその中の魔物を倒すとか?そういうのは小悪魔にやらせましょう。
「簡単よ。それは」
そう言って言われた仕事が、神風特攻隊よりも酷い仕事だった。
「あの本一万冊を、書いてあるところにしまって頂戴」
ぜぇ、ぜぇ。こ、コレで何往復目だろう・・・。結局一万冊といわれた量に唖然として、流石に一人では無理だという事で小悪魔と一緒に
やら何やら反論して一緒に仕事をする事になったのだが、小悪魔も丑二つ時には寝てしまい、残り百冊を一人という、まだできる仕事になったわけである。
次第に数が減っていき残り十冊前後!ってところで来客が来た。
ガチャ「よう」
いや、「よう」じゃ無いって。何で魔理沙がここに居るの?良く見ると少し変だ。
「ちょっと来てほしいんだが・・・いいか?」
「来て欲しい?なんで?」
「なんでもいいだろ。YESかNOか、半分かだ」
たぶん半分は無いだろう。まぁ残り十冊だし、いいか。
「ん、まぁ別に良いよ」
「そうか!よし、それじゃあ善は急げだ!」
「うわっ!」
急に俺の腕を掴み箒に乗ってそれはもうブレイジングスターをぶっ放す勢いで紅魔館の廊下を進んでいく。
「ちょ、ま、りさ。い、くっ、てど、こ、へ?」
「決まってるだろ?外さ」
いやいや魔理沙。決まっては居ないと思うぞ?
@ @ @ @ @ @ 恋色 @ @ @ @ @ @
「はー、こうやって久しぶりに見ると星が綺麗だなー」
今俺は魔理沙につれられて紅魔館の屋上の上の箒、つまりは空中にいる。
「お前、最近外出てなかったのか?」
「見てれば解ると思うが?」
「え、あ、そそ、そうだな」
なんや今夜の魔理沙は変だ。
「それで、なんで俺をここに連れ出したんだ?」
「ん?ああ、それはだな・・・」
そこでいったん区切って、口を開けたり閉じたりしながら「あ、ええと、そのだな・・・」なんて言ったりする。早くしてくれ。
「ああ、もう面倒だ!いいか、よく聞けよ?単刀直入に言わせてもらうぜ」
なんかもったいぶった言い方に思わず息を呑む。
「私は・・・・お前の事が好きだ」
正直驚いて何がなんだかわからない。なんだって魔理沙が俺のことを好きだって?ハハハ、冗談はよしたまえそんな事がありえるわけ。
「ほ、本当だ!はじめてあった時から・・・・好きだったんだ」
「な、何で?」
頭の中がショートしている状況でようやく食いえた言葉がこれ。理由がわからなければ人に聞くべし。
「ななな何でって・・・。解らないんだよ!けど、なんか見るたびに胸がこう変な感じにだな・・・え、ええとそれと
なんだ、なにかと・・・恋をしている感じ・・・なのか?」
いやいや、聞かれてもね?してないから実際わからないんだよ?なんて俺が返答困っていると。
「で?答えは?」
こっちに顔を真っ赤にしながら近づいて聞いてきた。お、落ちるって。
「こ、答えって言われても・・・」
「今言え。今言わなければ落とした上にマスタースパーク打ち込んでなかったことにしてやるぜ?」
それだけは絶対嫌だ。けどもう心の中では決まっていたのかもしれない、あとは言語化するだけど。
「そうだな、俺の答えは・・・・・・ノーだ」
「えっ・・・」
そう言って、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした魔理沙に、軽く口付けしてこう言った。
「なんて言うわけ無いだろう?・・・俺も、もしかしたら魔理沙のことが好きだったのかもしれない」
「・・・・・・よ」
「よ?」
「・・・よっしゃーーーー!!」
「うわっ!お、落ちるって」
無邪気に大声を出してはしゃぐ魔理沙。落ちる、死ぬ。
「決まりだな!決まりなんだな!」
「男は一度言った事を曲げないさ」
「っしゃー!」
横で騒ぐ魔理沙を軽くスルーしながら辺りを見る。そこで良いものを見つけた。
「魔理沙、あれ」
「ん?おー」
目の前に写るのは眩しい日の出。
「こういうのもいいかもな」
「どういうことだよ」
「さあね」
そんな何気ない会話をしている遠くで
「若いって良いわね・・・」「急に老けないでください。それに日が出てきましたから、館に入りますよ」
そう聞こえた気がした。
happy end
「・・・・・・・・・・あ」
「どうした?」
「・・・・仕事、忘れてた・・・・」
happy end ?
@ @ @ @ @ @ 蛇足 @ @ @ @ @ @
「それじゃあ○○は私が持っていくぜ!」
「持ってかないで~」
「なんだよ、良いって言ったじゃないか」
「私は言ってないわ」
「こういうの早い者勝ちだぜ?」
「意外とそうでもないわ」
「なんだ、やるか?」
「今日は喘息の調子が良いわ・・・」
「ハハハ、まいったな。・・・・逃げるか」
ガシッ!
『逃がさない』「ぜ!」「わよ!」
「この鬼ーーーーー!!!」
「へくしょんっ!!」
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1スレ目 >>882
1
「しかし、お前が私のうちに来るなんて珍しいな。明日は雪だ、洗濯は控えにゃ」
キッチンのほうから声がする。
指先で弄んでいたマジックアイテムをテーブルに置いたのと、魔理沙がを持ってきたのはほぼ同時だった。
「そういう迷信を信じるなって。……それにしたって、この部屋、いや、もはや家中だな、少しは片付けようという気にはならねぇのか?」
そこら中に魔理沙の蒐集品が散りばめられているので足の踏み場どころか人間の暮らせそうな場所もない。
こういう場所こそ、あるいは混沌と形容すべきなのか。
「こういうの、『生活感がない』っていうんだろ?」
「ベクトルが真反対だけどな……」
差し出されたマグカップを受け取ってコーヒーを啜る。
……コーヒー吹いた。
苦い、熱い。もともとコーヒーとはそういうものではあるが、これはどっちの限度も軽く二百由旬は超えている。
何の意趣返しだこれは。どこの世界にこんな煮え立った地獄の釜のようなコーヒーを飲む奴がいるんだ。
とりあえず人間の飲むものではない。そうかこいつ魔砲使いだからか。
「……で、その珍しいお前が来たということは何か面白い話でもあるんだろう?」
どういう発想をしたらそうなるんだ。
まあ実際俺も用があったから来たわけなんだが。
「紅魔館の門番の武勇伝かドジっ子メイド・マジ狩る☆咲夜ちゃんの話。両方実話」
「ありえないな」
軽い冗句を一蹴。さすがに厳しい。つーか根本から嘘だし。
「いや何、お前の顔が見たくなってな」
「面白くもない冗談だな……で、どうしたんだ?」
これもダメ。俺はもはやあきらめに近いものを感じ、ストレートに切り出すことにした。
瞬間的に魔理沙は凍りつく。
取りそこねたコーヒーカップが落下するが、テーブルの低空をさまよっていたのが幸いした。
「……はは、すまないな、聞き逃しちまった。もう一度、言ってくれるか?」
「帰るって言ったんだよ」
今度ははっきりと。口ごもる様なへまはせず、言葉の内部には拒絶を内包して。
「どういうことだよ……。ずっと、ずっと一緒だって、言ったじゃないか!!」
後ろ半分は涙声になりながら、叩き割らんかの勢いでテーブルに両手を叩きつける。
コーヒーメーカーが揺れ、カップが落下し甲高い音を立てて砕けた。
それでも俺は動じない。動じてはいけない。感情を殺せ。
「はぁ? まさか本気にしてたのか? おいおい、これだからガキは嫌なん……」
と、言い終わらないうちに軽快な音とともに左の頬に盛大な衝撃。ぐっと足を踏ん張って衝撃に耐える。
ゆっくりと魔理沙に視線を戻すと、やはり彼女は、泣いていた。
「……さっさと外でもどこでも帰っちまえよ!! この最低のろくでなし!!」
最後はもう絶叫に近かった。
これで良い。
「ああ、言われるまでもねぇよ。じゃあな。こんな男、さっさと忘れちまえよ?」
これで思い残すことなく現実へ帰れるのなら、安い痛みなのだ。
2
翌朝。
気分を害する程の快晴である。
吸血種であるレミリアお嬢様には昨晩のうちに挨拶を済ませておいたので、後はこの部屋を引き払うだけである。
紅魔館執事としての生活も、悪くは無かった。と思う。
「……さて、と。こんなもんか」
来た時よりも美しく整頓された寝室。
俺のような流れ者には私物はほとんどないが、幾つか愛着のある品物はある。
そういったものを小さな鞄にまとめていると、ふと一つの写真立てが目に留まった。中身は烏天狗の新聞記者に頭を下げて撮ってもらったツーショット。
恥ずかしそうにはにかむ俺と、もう俺には直視できないほどの眩しい笑顔で俺の首にぶら下がる魔理沙。
フラッシュバックする、昨日の出来事。
……もう俺には不必要なものだろう。そのまま写真立てはチェストに伏せる。
「あら、そんなもの置いてかれても困るだけよ」
後ろから声。部屋に入ってくる気配もさせないのは当然だろう、彼女は時間を止めるのだ。メイド長、十六夜咲夜がドアのすぐ側に立っていた。
「そう言われても、俺にも不要なものなんですよ」
「ふーん。……なら、どうして今まで置いてあったのかしら?」
彼女のナイフが問答無用に、一片の容赦もなく心を貫き、抉る。
この人はっ……
「単なる気まぐれですよ。ここに残していくものは好きに処分してくれて構いません」
「ええ、解ってるわ。だからこの写真は貴方の鞄へ」
「……勝手にしてください」
「勝手にしたわ」
そう言い終るが早いか、彼女の姿は消えていた。
多くの関係者に丁寧に別れを告げ、大きな紅い門をくぐると、いつものように門番は門柱に寄りかかっていた。
「ああ、帰るって本当なんだ。……門番隊に引き抜こうと思ってたのになあ」
「勘弁してくださいよ。不老不死でもない普通の人間なんだから、いくつ身があってももちません」
この人もいい人だった。気を使う程度の能力は平坦に読まねばならないだろう。
「お嬢様は冗談だと思ってたみたいだけど、私は本気だったよ? なんだかんだであの白黒とまともに渡り合ってたのはアンタと咲夜さんくらいだったし」
私の面目なんてないよねー。と困ったように笑いながら頭をかく。
「そういえば、アンタ、あの白黒が来たときはえらく嬉しそうに迎え撃ってたよねぇ」
その無邪気にも取れる笑顔が今、この一瞬はどれほど憎く感じられるだろう。
「……渡り合えたのはスペルのお陰ですよ。それに、仕事は多少難しい方がやりがいがある」
心象の変化を気取られぬように、出来る限り感情を殺して言う。
「成る程ね。確かに私のと違って地味だけど、アンタのは実用一点張りだもんなぁ。私も少し考えた方がいいのかな?」
解っているなら改善すればいいのに。……とは言ってもあの色とりどりの弾幕を棄てるのは惜しいと思うけど。
「ん、じゃあ、これ使ってくださいよ。どうせ外に戻れば紙くずも同然になりますから。使ってもらえるのが美鈴さんなら本望だ」
といって、内ポケットから数枚のカードを取り出す。
トランプ大の大きさのソレは、俺がこの館に就職した後に作ったスペル。
最も愛着のある品物ではあるのだが、幻想が力を失う外の世界に持っていくよりは、幻想は幻想のまま置いていくのがいいと思ったのだ。
「他人のスペルを使っても効果が薄まるわけでもないしね。……うん、ありがたく使わせてもらう」
「それじゃあ、俺はこれで」
大橋をゆっくり歩き出す俺に、美鈴さんはずっと大きく手を振っていた。
俺は一度だけそれを確認すると。踵を返して二度と振り返らなかった。
3
「よう、大嘘つき」
「なんだ酔っ払い」
大橋を越えて紅魔湖の岸に着くと、見えないところから伊吹萃香が話しかけてきた。
一瞬で目の前に現れる咲夜さんとは違ってこれはこれで気味が悪い。
「そもそも何で俺が嘘つきなんだよ」
「そりゃそうさ。アンタは人間として一番いけない嘘をついているんだ」
背中を縦横無尽に駆け巡る寒気。
これ以上は聞きたくない。
やめろ、耳をふさげ
それを聞いたら俺は――
「アンタは、自分の心に対して嘘をついているのさ」
心を覆う硬い殻にヒビが入る。
全てを見透かされたかのような悪寒。
姿は此処に居ないのに、これほどまでに感じる威圧感の前では、どんな虚言空言も灰塵と帰すだろう。
「仕方ないだろう……」
震える言葉を必死でつむぐ。
「『貴方が居ると幻想郷の秩序が崩れてしまう。幻想郷で生きられるのは幻想だけなのよ』なんて言われたら……」
自分が居ることによって彼女に害が及ぶのならば、潔く身を引くほうが良いと思ったのだ。
しかし
「……大丈夫。アンタはもう十分に幻想だよ。スペルを撃って、妖怪と互角以上に戦える。そんな人間が外にゴロゴロしてるかい?」
そんな不安をこの子鬼は、まさに一言で吹き飛ばしてしまった。
萃香はいつの間にか俺の前に現れて、あきれたような顔で腕を組みこちらを見ていた。
「大体さ、紫の言葉なんて話半分に聞かなきゃダメなんだよ。さあ、魔理沙のところへ行ってやりな。紫には私と霊夢から話をしておいてあげる」
走る。走る。野を越え、川をまたぎ、走り続ける。俺を浮かせる熱を動力に足は動き続ける。
ここは魔法の森。うっそうと木々が繁茂し、太陽が最も精力的に活動する昼でも、なお地表から大半の陽光を奪う。
薄暗い森の中をひた走る。目的地は解っている。後は到着が早いか遅いか。
「ねーねー」
頭上から降って湧いた呼びかけに思わず足を止め、自分の愚かさに思わず口元が苦笑にゆがむ。
どうやら俺は、とんでもないことを忘れていたらしい。
ここは魔法の森。うっそうと木々が繁茂し、太陽が最も精力的に活動する昼でも、なお地表から大半の陽光を奪う。
「貴方は食べられる人類?」
魑魅魍魎が住み、妖怪が跋扈する森に俺が一人で中へ入っていけば、それは彼らにとって食事と同意義だろう。
「さあな。食あたりしても知らんぞ」
森に入って十分弱。残りの行程と体力を考えれば、撒き方しだいで十分逃げ切れるだろう。
手持ちの中で最も相手を束縛出来るスペルを選ぶ。
カードを内ポケットから取り出し、宣言する。
この魔力にあふれる森の中なら、俺の能力も存分に発揮できる。
「樹海『ロスユアウェイ――――」
あれ? 内ポケットに入れてあるはずのスペルが、無い。
仕事中はもとより、外出するときでも必ず持っているのに……。
『ん、じゃあ、これ使ってくださいよ。どうせ外に戻れば紙くずも同然になりますから。使ってもらえるのが美鈴さんなら本望だ』
この光景は今でも鮮明に思い出すことが出来る。当然である、つい小一時間前の回想なのだ。畜生、誰のせいだ。
自己嫌悪に陥る暇も無く、横合いから滅茶苦茶な振りの右腕が襲い掛かる。
抵抗する手段すら持たない俺は、不本意ながら完全な狩られる側に回ってしまった。
後ろに飛んでかろうじて身をかわす。
刹那遅れて、その細腕にはあるまじき轟音とともに、俺がいた場所を正確に破壊するために盛大に空振る凶器。
「一食いで人食い~」
どこの戯言ですかそれ。あんなものをまともに受ければ食われるとかそういう話の前に俺が消し飛んでしまうのではないだろうか。
素手では抵抗できない。しかし、だからといってただでは死んでやることもできない。今の俺には目的がある。
4
男が森の中で宵闇の妖怪と死闘を繰り広げるころ。魔理沙はベッドの上でひざを抱えて、鬱々とふさぎ込んでいた。
普段の傍若無人、疾風怒濤の様子と違い、明日にでも世界が消滅しそうな雰囲気さえ醸し出している。
もちろん理由は昨夕の一件にある。あの男が放ったたった一言の言葉は魔理沙を失意と絶望のどん底に叩き落すには十分すぎるほどの破壊力を持っていたのだ。
男が空気に耐え切れず家を去った後からずっとこの調子である。
彼女には、何故自分がここまで苦しんでいるのか解らなかった。解らなかった、が、この吐き気がしそうなほどのストレスは確かに彼女が今まで味わったことのない極上品だったのは間違いないだろう。
「よう。まるで沈没船みたいじゃないか」
漂っていた極薄の妖気が集まってどこからとも無く伊吹萃香が姿を現す。
散らかっているのもお構い無しに部屋の真ん中に胡坐をかいて座ると、さも当然といわんばかりに一杯やりだした。
「……なんだよ、アル中の出歯亀」
心なしか、彼女の軽口にもトゲがあるような気がする。
「なに、出歯亀だからね。最新の知らせを持ってきてやったのさ。……良い知らせと悪い知らせ、どっちを先に聞きたい?」
「……どっちでもいい」
魔理沙の目に光は無く、その声に覇気は無い。
声には微かだが、しかし、はっきりと解る苛立ちが含まれていた。
「おいおい、つれないねぇ。じゃあ良いほうから聞かせてやるよ。……あの男は外に帰らないってさ」
いままでうずくまった形の銅像の様だった魔理沙が、一瞬、凝視しないとわからないほどの反応を見せた。
「そんな奴、知らないな。……もう、私には関係の無いことだ」
魔理沙の言葉は無視して萃香が続ける。
「次に悪い方だ。あいつは今全速力でここに向かってるよ。でも、途中で妖怪につかまってたね」
もう一度。今度はそれとわかるほどの、明らかな反応。
「……どういうことだよ」
「あいつは自分の気持ちに気付いたんだ。いや、むしろ始めから変わっちゃいなかったんだ。ただ、少しその気持ちが強すぎただけ。……さあ、今度はあんたの番だよ、魔理沙」
それを聞いて、不意に涙がこぼれた。
先ほどまでの悲しみを満たす涙ではなく、喜びから芽生える涙。
アイツは自分のために率先して悪役の衣をまとっていたのだ。
自分がいなくなっても大丈夫なように、あえて自分から離れるように仕向けたのだ。
「で、どうするんだい?」
呑むだけ呑んで満足したのか、床に散らかった蒐集品を無造作に手で除けると、横になりながら訊いた。
「……決まってるだろう?」
魔理沙は勢いよく立ち上がって二・三度袖で涙を拭くと、外へ駆け出してゆく。――もちろん右手には彼女の愛機(箒)を持って。
箒にまたがりあふれんばかりに魔力を注ぐ。逆立つ穂の一本一本に魔力が充填されていく。
外へ外へと向かいたがる魔力を十二分に凝縮するとともに限界まで加圧し、一気に吐き出すその推進力から生み出されるスピードはまさに、幻想郷最速。
「彗星『ブレイジングスター』!!」
そして高らかにカード宣言。
一条の光の矢となった彼女の瞳に憂いは無く、その言葉に影は無い。
問1:次の式を解け
(1)人間-スペルカード
=餌
5
さあ絶体絶命である。
死の間際かもしれない状況でこんな冗談を考えられるくらいだから俺も結構危機感が無いのかもしれない。
やれることは全てやった(と思う)。
この容姿端麗な妖の類は、その少女の姿からは想像もつかないような腕力で俺を組み伏せると、恍惚の表情を浮かべ――恍惚の表情を浮かべ――ること十分弱。
こいつは一体何をしているのか。
「あの……つかぬ事をお尋ねしますが……一体何をしているのでしょうか?」
解らないことがあったら人に訊く!! ただしひたすら腰は低く。これ、世界の真理也。オトナとはへりくだる事と見つけたり。
「えー? 久しぶりの人肉だから、どうやって食べようか考えてたの~」
……どうも見事にピラミッド大の墓穴をスコップ一丁で掘った気がする。絶対コイツ人の命を転がしてたいそう楽しんでやがる。
「煮て良し、焼いて良しな俺だけどたたきは止めて。ワサビがしみる」
「でも決めた。やっぱり丸かじりに決・定!!」
彼女の目は一段と輝きが増し、押さえつけられて紅い爪が食い込んだ腕の皮膚がぷっつりと裂けたのが感覚できた。
「それじゃあ、いただきまー……」
突然、突風のような魔力の奔流が洪水となって俺を飲み込んだ。
そして食前の挨拶は言い終わることなく、俺の上に乗っかっていたものは瞬間的に消失した。目を見開いていたにも関わらず一体何が起こったのか把握できない。ただ一つ言えるのは――とんでもなく速い何かが目の前を通り抜けていったということだけ。
「よう。何寝てるんだ?」
あまりの眩しさに視力が落ちている。俺の枕元に誰がしゃがんでいるのか解らない。
姿ではわからないけど、この声と口調、どうして忘れることができるだろう。
「おい、何で泣いてるんだ!? さっきのでどこか痛めたか?」
声を聞いた途端、突然涙が溢れてきて止まらなくなった。
涙腺の緩むままに、恥も外聞も棄てて、嗚咽を漏らして、泣いた。
「……もう、会えねぇかと思った。もう一度会えないまま、死にたくなかった……」
上半身を起こし、ゆっくりと目を開けて体後と彼女の方を向く。だんだんと視力が戻ってきているらしい。涙のせいか光のせいか、まだ薄らぼんやりしている視界に彼女を捕らえ
「なあ、こんな俺だけど、ずっと一緒にいてくれるかな?」
「……私でよければいつまでも一緒にいてやるぜ?」
俺の些細な勘違いで反故になってしまった約束をもう一度、交わした。
そしてどちらからともなく目を瞑ると、そのままゆっくりと唇と唇が触れた。
了
おまけ
「……そこよ!! いけ、押し倒せ!!」
…………ありえない声に目を開け、仰天してそっちの方向を振り返る。
後方数メートルの至近距離に、ぱっくりとスキマが開いておりましたとさ。
「……なにやってんですか」
「あら? 私を起こしておいて『やっぱりなかったことに』なんて言うんだからこれ位は役得じゃない?」
黙れ年増。お陰でムードもへったくれもあったもんじゃない。
「大体……アンタだけならともかく、これじゃあ幻想郷勢ぞろいじゃないですか」
スキマ妖怪の隣には白玉楼の亡霊嬢が扇で顔を隠しながらも目はしっかり笑ってるし。
人形遣いと庭師と図書館の主と月の兎と美鈴さんは、顔を真赤にしながらも食い入るようにこっちを見つめているし。
巫女とレミリアお嬢様と咲夜さんはあきれた様子で緑茶を啜っている。貴方達は幻想郷の最後の常識なのですね。
……でも最初に『押倒せ』って言ったのは咲夜さんだろ。
こちらからはこれ以上伺えないが、きっとほとんど集められているに違いない。
「まったく……プライバシーの欠片も無いのかよ、なあ、魔理沙」
魔理沙のほうを見返す。……と。下唇をかんで小刻みに震えている。
構えられたミニ八卦炉がオーバーフローを示すかのようにウォンウォン唸っている。
魔理沙も顔を真っ赤にして怒りのオーバーフローを示すかのようにフーフー唸っている。
「ちょっとまて!! その角度だと俺にも当た……」
「他人の恋路を邪魔する奴は……魔砲に撃たれて地獄へ堕ちろぉぉぉぉ!!!」
恋心『ダブルスパーク』
ギャー
おしまい
後書きにかえて
キャラがいっぱい出ているのは仕様です。
めっちゃ時間がかかった。
半分くらいはテンションに任せて一気に書きなぐったけど……疲れたorz
このスレと住人に幸あれ。
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2スレ目 >>23
俺のベッドの上で、普通の魔法使い――霧雨魔理沙が陣取っているのは
そう珍しい事じゃない。
つーか、いつもの事だ。
「なぁなぁ、この枕もらってっていいか?」
目の前の少女は年相応の笑顔で、枕を抱きかかえていた。
初めて彼女と出会い、色々あって今は恋人同士…らしい。
らしいというのも、いまいち俺に実感が無い為だが。
「…枕なんて何に使うんだ?お前のって確かあっただろう?」
「あぁ、でもこれにはお前の匂いがするからな」
「…ほとんど居候同然のくせに、これ以上物をもらっていってどうする?」
彼女の枕もあるし、第一この家は霧雨邸の近くの納屋を俺が改装したものだ。
彼女からちゃんと許可ももらって、既に俺のものになっている。
「…貰っちゃダメか?」
上目遣いに訊ねられたら…俺も流石に断るのは難しいぞ。
…きっと分かってやってるに違いない。悪魔っ娘め。
「いいよ。…まったく、好きにすればいいって」
「あぁ、ありがとう」
あぁ…やっぱりこういう笑顔に俺って弱いんだな。
と改めて実感させられる。
恋か愛か知らないけど、まぁきっと恋だと信じよう。
「眠い」
魔理沙がそういう事を言ったのも、俺が片付けを始めてからだ。
いつも遅くまで起きて、何かしらやっている為だろう。
昼寝とか、彼女には必要なのかもしれない。
「…寝ればいいだろ。ベッドの上に居るんだから」
とりあえず、片付けは一時中断。
「あぁ、軽く寝るから…」
「待て、何故俺に擦り寄る」
いつの間にか、俺は魔理沙の近くに寄らされて、彼女が擦り寄っていた。
まるで猫だな。
と思う反面、こんな姿を誰かに見られたら…それこそ、ヤバイなぁ。
などと、下らない考えをしていた。
「よし、寝ようぜ」
「…今ここで寝るのか?」
幸いにも眠気はあるが、今から寝ると夜に寝られない恐れがある。
「日が出ている内に寝てもバチは当たらないぜ」
「…それは良いんだけどな」
悪魔的猫っ娘、魔理沙は俺から離れる気は毛頭ないらしい。
「ちょっとくらい離れないか?」
「いやだぜ」
こう言いだした魔理沙は聞く気はないだろう。
まぁ、俺もそれなりに嬉しいといえば嬉しいんだけど…
甘い匂いや、柔らかい感触に耐える拷問で、果たしてどれだけ俺の理性を持たせてくれるか
という疑問が有ったり無かったりするのですが、如何なものでしょうか?
おーばーひーと
かくん。
俺の視界は完全に閉じた。安心して眠ったというよりは、気絶して眠ったとか
ブレーカーが落ちたとかそう言う感じの方があってるかもしれない。
起きてみると、あたりは夕暮れになっていた。
うん、やばい。
片付けは済まなかったけど、それよりも晩御飯の支度をしていなかったという事が
最大の落ち度である。
今から準備して間に合うかどうか疑問だが、まぁ、何とかなると信じてみよう。
ふと、視線を感じた。
…魔理沙が起きている訳でもないし、鳥とか自然物が見るような視線ではない。
では?
と己に問い掛けて、該当しそうな人物が数人いた。
…とりあえず、消去法を図り残った奴を考えて――
「アリス=マーガトロイド!貴様、見ているなッ!」
と窓に視線と指を向けると、そこには確かに、金髪の少女が居た。
「!」
急に魔理沙が起きだし、八卦炉に光が点る。
まずい。
あれはまずい!
魔理沙は俺の家を破壊してもアリスの口を封じる気だッ!
「恋符――『マスター…』」
「ストップ魔理沙!」
何とか前に立ちはだかり、彼女を逃がすチャンスを与えた。
その隙にちゃんとアリスは逃げてくれたようだが。
「はぁ、何で邪魔したんだ?」
拗ねた子供のように、彼女は呟く。
その様子がおかしくて、思わず軽く笑ってしまう。
「む、何が――」
「…魔理沙って可愛いな」
「――っ」
素直に言ってみると、彼女は顔を紅くして、俯いてしまった。
「ほらほら、許してやれ。友達だろ?」
「…~、お前の頼みだからアレは不問にするけど、それでも
次は許さないつもりだからな」
今この場に居ない少女に向かって、魔理沙は怒る。
あとで、それとなく伝えてやろう。
「さて、晩飯にしよう。何がいい?」
「その前に」
何かあるのか、彼女は俺の前に立った。
俺と彼女の身長差はそれほど無い。
頭一つ分といったところか、それ以上か。
ともかく彼女が前に来ると首を下に向けるしかない。
――唇と唇が触れた。
「…恋の魔砲を撃とうとしたからな。魔力補給だぜ」
撃っても無いのに、彼女はしゃあしゃあと言う。
やっぱり、彼女に惚れてしまったのには間違いないようだ。
改めてそう思う。
願わくば、この日々が続きますように――
後書き
===チラシ寿司の裏===
チラシ寿司食いたいです。こーりん堂を読み直して再びそう思いました。
===チラシ寿司の裏ここまで===
シリアス?なにそれ、おいしいの?
と言うくらい、シリアス度があまり無いですけど。
て言うか、デバガメっていうネタも書いたことが無く。
要修行ですね。
リクエストに答えたのか?これは…
まぁひとまず、申し訳ありませんが、これで許してください。
土下座してゴメンなさい>orz
オマケなギリギリネタ
「…それで、とりあえず魔法を開発中なんだ」
「いい予感はしないが、とりあえず聞こう、どんな魔法だ?」
あの後の話だ。
アリスをどうとっちめるか彼女のアイディアをずっと聞いていた。
「その魔法を放つと、何が起きるか分からない」
……パルプンテ
そんな言葉が俺の頭を過ぎった。
「んじゃ、実験台になってくれ」
あぁ、そんなオチだろうと思っていた。
仕方あるまい、こうなった彼女は聞きはしない。まぁ彼女の魔法に興味があるって
言うのも有ったけど。
「…ー…~」
魔力の収束を感じる。
それほど、高い魔力ではないが、人を傷つけるよりも、むしろ
人を治す方が、光としては近いのかもしれない。
「ハァっ!」
魔法陣が開かれて、俺達の身体を飲み込んでいく。
あまりの眩しさに、目を閉じた。
ようやく、目のチカチカが取れると、彼女は下着姿だった。
…よく見ると、俺もだったが。
某魔界村の騎士のように、見事下着一丁だ。
「…魔理沙」
「………」
彼女は帽子を深く被り顔を見られないようにしている。
「魔理沙、服先に着とけ」
俺は彼女に一応親切として言ってやった。
八卦炉をぶつけられたが。
オチリ
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最終更新:2010年05月14日 23:22