魔理沙13
13スレ目>>297 うpろだ969
「では、僕は里の手伝いしに行くから、気をつけて」
「おう。いってらっしゃい」
もう何かの研究に取り掛かった魔理沙が後ろを向いたまました返事を聞いてから、○○は霧雨邸を出た。
森の中から空はよく見えなかったが、どうやら夜には一雨来そうな感じである。
森の生活が長くなったため、そういうこともわかるようになっていた。
「行く前に、竜神様の像に参っておくかな……」
慣れた足取りで、彼は森の出口に向かっていった。
○○が霧雨邸に住み始めて結構時間が経つ。とはいえ、半年は経過していないが。
それでも、森自体にも、また魔法自体にも造詣が深くなっていっているのは自他共に認めるところ。
そして何より、霧雨邸が以前よりも住み良い場所になったのは彼の功績だ。
まあ、片付ける側から物が増えていくのだが……
魔理沙の盗癖も半分になった。正確には、半分彼が返しに行っている、なのだが。
返しに行く際、必要な部分はメモしたりノートにまとめたり、としていたので、彼自身も魔法の基礎が身に付きつつある。
それが良いことかどうかは置いておいて、ともかく、二人の生活は割合順調のようだった。
「……駄目だ……」
本日何度目かの失敗をして、魔理沙は宙を仰いだ。
そもそも、失敗など怖くはない。失敗するなら成功までやれば良いだけの話だ。
駄目なのは他の事に理由がある。
「……ああ、くそ! どうしてこんな…………」
昨晩、何となく訊いてしまったのが悪かったのか。
そのときの会話を思い出しながら、魔理沙はため息をついた。
『お前はさ、何で私だったんだ?』
『何がです?』
『いや、そのー……一緒に住んだりしてるのが、さ』
しばらく魔理沙が研究に入るということで、森の外に行く準備をしていた○○は、ふむ、と考え込んだ。
『何故か、ということですよね? 難しいなあ……』
普段は敬語を使う青年なのだが、できるだけ敬語をやめてくれ、という魔理沙の要望に応えて、少しずつ言葉を変えていっている。
『僕は魔理沙さんを好きになったから。ただそれだけだからなあ』
『…………真っ向から言わないでくれ、何か照れる』
『訊いたのは魔理沙さんじゃないですか……でも、そうだね。魔理沙さんの傍にいたいなって思ってるのは、本当だよ』
そう微笑まれて、魔理沙は表情と返事に困った。
『……そっか』
『ええ、そうです』
結局、魔理沙はその晩、○○の顔を直視できなかったのだった。
「あー……」
机に突っ伏して、意味の無い唸りを上げる。誰もいない、中途半端に片付いた部屋が、何となく無駄に広く寂しく感じた。
「……広いな」
呟く。呟いて、この空間に何かが足りない気になって、自分で不思議な気持ちになった。
魔理沙は研究のときに傍に人がいるのを好まない。だから、その間○○は里に仕事に行く。常の行動だった。
魔理沙もそれをわかっていた。だから何も言わないし、それを当然と取っていたところがある。
(でも、あいつは何処にいるんだろう?)
大抵、神社か香霖堂にいる、という話は聞いていた。
神社は、彼がこちらに来てしばらく世話になっていた場所であるし、今でもちょこちょこ顔を出している。
香霖堂では、霖之助とよく話をしているのも見かけるし、外の物品について彼は結構知っているのでその話もしている。さすがに作り方はわからないようだが。
(それ以外にも、行ったりするのかな……)
少しだけ、不安になる。あいつは佳い奴だ、と彼女は思っている。だから、あいつに想いを寄せるのは、自分だけじゃないんじゃないかと。
一度考え出すと、気になって仕方がなかった。
「……何をうじうじ悩んでるんだ、私は」
そうだ、気になるなら行けば良い。それだけだ。研究は中途になるが、このまま悶々としたまま続けても良い結果は出ないだろう。
すっきりさっぱりしたら、また研究に戻れば良いのだ。
そう決めた彼女は、家を飛び出ると箒に乗って夜を駆けはじめた。
「あれ、ここにはいないのか」
「来て第一声目がそれかい、まったく」
霖之助は、突然の訪問者に大きくため息をついていた。
「いや、○○の奴なんだけど」
「ああ、今日は来ていないな……何だ、また研究で追い出したのか?」
「失礼な、あいつが気を遣ってくれてるだけだよ」
「同じことだと思うよ。まあ、彼も嫌々ってわけじゃないみたいだけどね」
「どういうことだ?」
魔理沙が不思議そうに訪ねると、霖之助は何ともなしに答えた。
「彼は魔理沙がそうやって一所懸命なところを見るのが好きなんだとさ。毎回惚気られる身にもなってくれ」
そう軽口を叩いて、霖之助は、ともかくここには来ていないと告げた。
「里か神社か、じゃないかな」
「そうだな。あたってみる。じゃな、香霖、邪魔した」
そして、曇天の中、一条の彗星のように駆けていった少女を見送って、彼は、やれやれ、と微苦笑を浮かべた。
神社にも、彼の姿はなかった。
「ここにもいないか」
「珍しいわね、魔理沙。一人なんて」
縁側に座っていた霊夢が、茶を啜りながら応対する。
「そうでもないぜ。単独行動はよくするぞ」
「○○さんは?」
「里、かなあ。私はてっきりここに来てるかと思ったんだが」
魔理沙の言葉に、霊夢はきょとんとする。
「○○さん、最近は夕方からはここに一人では来ないわよ」
「え?」
「この意味、わかる?」
微笑った霊夢に、魔理沙は少し考えて――ああ、と呟いた。
「……そこまで気を回さなくても」
「○○さんにとっては大事なのね、きっと」
「……かも、な」
魔理沙はそれだけ呟くと、また箒に跨る。
「邪魔したな、霊夢」
「いいわよ、いきなりなのはいつものことでしょ。ついでにお賽銭とか入れてってもらえるともっといいんだけど」
「今度な」
「はいはい……ああ、魔理沙、雨に気を付けてね。降るわよ」
「珍しいな、お前が忠告なんて。まあ、それでも、私は行かなきゃなんないんだ」
互いに了解した微笑みを浮かべて、魔理沙は再び夜空に上がり、霊夢は静かにお茶のおかわりを淹れた。
「……大丈夫か」
戸口にに立つびしょ濡れの魔理沙を前に、慧音はただ一言そう口にした。
「ああ。すまないが、○○の場所を知らないか?」
「○○? どうした、喧嘩でもしたのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが」
魔理沙は苦笑して、無駄とわかりつつ帽子の水を払った。
「あいつなら、確か集会所にいる。そこで寝ると言っていた」
「そうか。てっきり誰かの家に行ってるかとも思ってたんだが」
「まあ、里にも知り合いは多いしな……だが、あいつらしい言い分でな」
慧音はからかうように微笑した。
「今は、誰かの場所に厄介になるのが、お前以外は気が引けるのだそうだ。だから極力、誰のところにも行かないようにしている、とな」
「私ならいいというわけか、あいつ」
「お前だからこそ、だろう」
「……そか」
魔理沙は帽子を深く被る。表情が見えないように。
「悪い、邪魔した」
「いいや。風邪引くなよ」
「ああ」
わかっているのかいないのか、魔理沙は再び雨の中を飛び出していった。
集会所には、小さな明かりが灯っていた。
「……○○?」
「え? ……魔理沙さん!?」
集会所の隅に荷物を動かしていた○○は、全てを放り出して魔理沙の元に駆けてきた。それが、少し嬉しく感じた。
「何かあったんですか!? こんなびしょ濡れで……!」
「あー、いや、何があったっていうわけじゃないんだが」
帽子を取って、魔理沙は何と言ったものかと考える。
「その、心配になってな」
「心配? 僕が?」
「ああ」
ああ、こんなことを言うつもりではなかったのに。
「お前、人気あるからな、誰かに言い寄られてないか、とか思ってな」
「……それだけのために?」
「ん、いや、まあ、な」
言いたい事が出てこない。何を言いたいのかも言えば良いのかも。
「魔理沙さん」
「え……あ、おい! お前が濡れるぞ!」
抱きしめられて、魔理沙は焦る。○○は濡れるのにも構わず、さらに強く抱きしめた。
「……こんなに、冷えて」
「……雨だからな」
「僕に会うために?」
「…………そうなるか」
「研究まで中断して?」
「失敗続きだったんだ」
「こんなに――こんなに、不安そうな顔で?」
そこまで言って、○○は魔理沙の顔を覗きこんだ。
「そんな顔してるか、私」
「はい」
魔理沙は苦笑して、逆に訊き返した。
「……お前は、どうして、私に付き合ってくれるんだ? 研究のときは追い出して、里でこうして一人でほっといてるのに」
「それでも、帰らせてくれる。傍に居させてくれる」
「私は、お前に何もしてやれないぞ? せいぜい、掃除と洗濯と飯当番を振ってやることぐらいだ」
「それは、楽しいよ。魔理沙さんと一緒に生活できてて。昨日も言ったように、僕は魔理沙さんが好きだから」
「……お前、馬鹿だろ」
「そうかも。でも、何だかんだで、魔理沙さんは僕が傍に居ることを赦してくれるでしょう?」
「…………まあ、な」
魔理沙はそう応えて、逆に○○に抱きついた。
「広いんだ、家が」
「だいぶ片付けたからね」
「おまけに、片付けてくれるでかい図体も見当たらない」
「む、そう太ってはないはずですが」
「背が私よりも頭一つ分以上高ければ十分でかい」
そして、表情を見られないように彼の胸に顔をつける。
「手伝いが必要みたいだ。研究中に、いろいろ周りのことしてくれるのが」
「……それは」
「私はアリスみたいに人形とか操れないしな。誰か要るんだ」
「…………僕は、居ていい?」
「居ないと困る。困るんだ。私の気も散る」
「居たら気が散るのでは?」
「そのはずだったんだが。どうやら、私も変わったみたいだ」
そう、魔理沙は口にした。そうだ。いつの間にか変わってしまっていたのだ。
誰かに邪魔されることが嫌いだったのに。誰かがいると気が散るから嫌だったのに。
いつしか、居ることが当たり前の存在が自分に出来てしまうなんて。
「だから、居てくれ」
「はい」
「……帰ろう?」
「はい。では、少し待ってて。すぐに荷物まとめるから」
○○は柔らかく微笑んで、自分が放っていた荷物を取りに戻った。
慧音に集会所の鍵を返して、雨の中を二人は急ぎ帰った。
風邪を引かないよう早めに交代で湯を取って、今日はもう研究にならないからと一度中断し、それぞれの部屋で休む、はずだったのだが。
「……どうしてこういうことになってるのかな」
「何がだ?」
「僕が魔理沙さんの抱き枕になっていることについて、です」
○○の背中に、魔理沙が抱きついている。ベッドの上で横になって。
「少し大きすぎる枕だが、暖かくて丁度良いぜ」
「それは光栄。でもこの際言いたいのはそういうことでなくて」
密着体勢がヤバいのですが、と心の中だけで思ってみる。
「……戻ります」
「駄目だ」
「…………このままだと理性がヤバいです」
「それでも」
いやに強情な魔理沙に、彼は気を引かれる。彼女が強引なのは今に始まった話ではないが、今日は何か違う気がする。
「……理由を訊いても?」
「…………お前を連れて帰って来た意味がないだろ、離れてちゃ」
「………………」
「……お前が傍に居たいって思うくらいには、私もお前に傍に居てほしいって思ってる。それだけだ」
魔理沙は、自分が○○の傍にいないときに、誰かが傍にいるかもしれない、ということが不安だった。
それを素直に言うことはないから、○○にそれが正確にわかるわけではない。わけではない、が。
「……僕が好きなのは、貴女だけですよ」
「ん」
魔理沙の返事は頷きと、摺り寄せてきた頬だけだった。それだけでわかりきっていた。
「こっち、向かないのか」
「……いいんですか?」
「顔、見てたいんだ」
魔理沙の要望を受け入れて、○○は身体を反転させた。向かい合う形になる。
「ん、こっちの方が落ち着くな」
「それなら、いいけど」
「うん、落ち着く」
○○の片腕を枕にするような形で、魔理沙は彼の胸に擦り寄ってきた。
腕の中にすっぽりと収まってしまった魔理沙を見て、○○は、こんなに小柄だったかと感じた。
彼は思う。力もなく、能力もないけれど、僭越かもしれないけれど。
「魔理沙さんの落ち着ける場所かな、僕は」
「んー? そだな。落ち着く。お前は落ち着かないのか?」
「……そうだね、落ち着く」
そう言って、○○は腕の中の魔理沙を抱きしめた。
翌朝。
「んー、よく寝た。何だ○○、寝不足か?」
「若干……」
「寝付けなかったのか? お前寝付き悪かったっけ?」
「……そういうわけではないけど。朝ご飯用意してくる……もう研究に掛かるでしょう?」
「ああ。しかし、よく眠れたなー。またよろしくな」
「…………うん、いいよ。僕の理性が持つ間なら……」
最後の一言は、あまりに小さかったので魔理沙には届かなかったかもしれない。
ともかく、霧雨邸の朝は、今日も平和だった。
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「おーっす」
「あ、こんにちはー」
「やっと着たわね」
少し遅れて境内に到着した魔理沙と俺。
出迎えたのは早苗と霊夢だった。
「やっとって言ったって。直前まで来るなって言ったのは霊夢だろ?」
「まあまあ、とりあえずこちらへどうぞ」
早苗の先導でたどり着いた裏庭には、大きな階段状の枠組みが組み立てられているところだった。
「おー。リアルでひな壇か。豪快な事考えるなぁ」
「ま、一年に一度の事だしね」
見上げる魔理沙に、霊夢は楽しそうに返している。
「で、私は三人官女でもするのか?」
「いいえ」
「じゃあ…大臣か? 私には似合わないと思うんだが」
「そこも他の人が居ますよ」
「じゃあ、どこに?」
「空いてるじゃない。打って付けの場所が」
……待て。まさか。
「……?」
本当にわからないらしい魔理沙が軽く首を傾げると、霊夢はため息を吐きながら指差した。
「ほら、あそこ」
「あそこって……」
そこは最上段の咳。と言う事は。
「魔理沙さんがお雛様で、○○さんがお内裏様ですよ」
「な……っ!」
早苗の付け加えで、魔理沙の顔が一瞬で真っ赤になる。
「どうせ公然の仲なんだし。何を今更恥ずかしがってるのよあんたは」
本人からすれば唐突なんだろうなぁ。
真っ赤になったまま応対出来ずにいる魔理沙の横で、俺は思いの他落ち着いて自体を把握していた。
「○○さんは驚かないんですね」
「いやぁ。横でここまで驚かれるとなぁ……。反対に驚くチャンスを見失った」
「それも貴方らしい、かも知れないわね。
さ、魔理沙。覚悟しなさいよー」
苦笑で返した霊夢は、まだ真っ赤なままの魔理沙の手を取って神社を目指す。
「ちょ、何を……?!」
「もちろん、着替えるのよー。紫と霖之助さんが全員分調達してきてくれたわ」
「えええええええええええ!?」
助けを求めるようにこちらを振り向く魔理沙。
……すまん。俺には霊夢を止められん。 合掌。
「てことは、俺のも?」
「はい。こちらに準備していますのでご案内しますね」
「応」
早苗に連れられ、少し離れたところに向かう俺。
「さー!皆さん準備は出来ましたか?」
撮影担当の文が、壇の前に集まった皆を注目させる。
「それでは、本日のお雛様の入場でーす!」
文の言葉と共に、神社の襖が開き霊夢が現れる。
それに一歩遅れて、魔理沙の姿が。
「おお……」
思わず、見とれて感嘆のため息を漏らしていた。
美しい、とでも言うべきなのだろうか?
どうも、言葉にしてしまうと無粋な気までしてくる程に似合っていた。
「どう? ○○さん。 私が選んだ着物よ」
「……ああ」
霊夢に連れられてここまで来た魔理沙は、俺の目を見て顔をそらした。
「……綺麗だぞ。魔理沙」
「……あ、ありがと」
視線を逸らしたまま、小さく呟く。
やべぇ。かわいい。
「ではでは!お内裏様にはお雛様を壇上までご案内お願いしまーす」
「りょうかいー」
段取りを聞いていた俺は、魔理沙の横に行って軽くかがむ。
「へ? ひょあぁっ!?」
唐突で変な声をあげる魔理沙を無視して、抱き上げる。
「おー。お嬢様抱っこ」
「ちょ、○○っ! 恥ずかしいだろ下ろせよー!」
「暴れるなよ、な」
何とか落とさないように頑張って、魔理沙に耳打ちする。
「……。」
「!!!!!!」
はい、真っ赤になって大人しくなりました。
「……何言ったの?」
「ひ・み・つ」
半眼で睨む霊夢に笑いかけてから、足を踏み出す。
「じゃ、行くぞ魔理沙」
コクコクと、頷く魔理沙を抱き上げて段を上がる。
…………結構、一段一段高いな。 それに衣装が動き難い。
「よ、っと」
お雛様の席に魔理沙を下ろし、自分はお内裏様の所へ……
「○○」
「ん?」
小さな声に振り向くと、魔理沙が小さく呟いた。
「わた──」
「はいでは、皆さん各自の場所にお願いしますー!」
文の声に邪魔されて聞き取れなかったが、意味は伝わった。
「ああ」
俺は出来るだけ優しく微笑んで、所定の位置に座る。
「それでは、記念撮影しますねー。
はい、チーズ!」
こうして撮影された写真は、今でも霧雨邸の写真立てに収められている。
貴重な体験をさせてくれた幻想郷の皆に感謝、だな。
☆個人的ひな壇のメンツ☆
・お内裏様…○○
お雛様…魔理沙
・三人官女…八雲紫、西行寺幽々子、
レミリア・スカーレット
・五人囃子…八意永琳、みすちー、ルナサ、メルラン、リリカ
・右大臣…風見幽香
左大臣…藤原妹紅
・仕丁…博麗霊夢、東風谷早苗、鍵山雛
番外編
「……なあ、妹紅」
「なんだ?慧音」
「これは、何かのイヤガラセか?」
「……私に言われても、な」
・牛車…上白沢慧音
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13スレ目>>583 うpろだ1008
「ごちそうさま」
「あれ、もういらないのか?」
「ああ、あんまり腹減ってないんだ」
机に茶碗を置いて魔理沙はそう答えた。
変だ、何か変だ。いつもは3杯くらいは綺麗に平らげる魔理沙がたった1杯、それも半分くらいしか入れてないのにだ。
心配になって俺は魔理沙に問いかけた。
「大丈夫か? どこか調子よくないんじゃないか?」
「そんなことないぜ? ほら、こんなに元気だ」
その場でいきなり体操を始めた。何かあやしい。
「なぁ、何か隠してないか? 俺でよければ相談にのるけど?」
「べ、別になにもないぜ? ○○は心配性だな。あんまり心配ばかりしてるとハゲるぜ?」
「ぐっ……まあ魔理沙が平気だっていうなら」
「おう、それじゃ今日はパチュリーのところに行ってくるぜ」
「いってらっしゃい」
颯爽と飛び出していった魔理沙を見送り、やっぱりちょっと心配になって少し考えることにした。
魔理沙がおかしくなったのはこの間の宴会の後からだ。
前までは普通に飯を食べていたのに、今は腹八分目、いや、もっと少ないかもしれない量しか食べないし
霊夢のところに遊びに行ったときも出された茶菓子に一切手をつけなかった。いつもなら食いすぎだって怒られているのに。
しかし、宴会で何かがあったことは確かだが情報が少なすぎるため何故食べる量を減らす理由がわからない。
これ以上は無駄だと考えるのをやめて家事をすることにした。
掃除、洗濯を終えて一服していると猛烈な勢いでドアを叩く音が聞こえた。
何事かと慌てて玄関のドアを開けるとそこには息を切らした
小悪魔がいた。
「おう、こぁじゃないか? どうしたそんなに息を切らして」
「た、大変です○○さん! 魔理沙さんが倒れました!!」
一瞬小悪魔が何を言っているのか解らなかった。そしてその言葉を理解したとき俺は駆け出していた。
「あっ、○○さん!?」
くそっ、やっぱりどこか悪かったんじゃないのか!? なんで相談してくれなかったんだ!? 魔理沙!!
張り裂けそうな思いを胸にわき目も振らず俺は紅魔館に向かって走り続けた。
「貧血ね」
部屋に駆け込んできた俺に対してパチュリーはアッサリとそう告げた。
「はう~○○さん速すぎますよぅ~」
振り返るとヘロヘロになった小悪魔がいた。
「こぁ、元はといえばあなたが悪いのよ」
「うう、すみませんパチュリー様……」
要約すると、紅魔館にやってきた魔理沙はもっていくぜー、もってかないでーのいつものやり取りを済ませて本を吟味していたのだが
急に立ちくらみを起こして倒れたところを小悪魔が目撃してパニックを起こしてしまい
パチュリーに魔理沙が倒れたことを伝えるとそのまま俺のところに飛んできたという訳だ。
「だから別に何かの病気ってわけじゃないわ。そんなに心配しなくてもいいわよ」
「そうか」
ベットで寝ている魔理沙に顔を向ける。パチュリーよりも顔色が白くみえる。
「へへ……ドジっちまったぜ」
「まったく、ちゃんと飯を食わないからだ。何で食べないのか今ここではっきり聞かせてもらうからな」
「えー、あの、その、あれだ、なんというか……」
ごにょごにょと言葉を濁し、はっきりと言わない。そこにパチュリーの横槍が入った。
「この間の宴会でアリスに言われたことをまだ気にしているのよ」
「パ、パチュリー!?」
慌てて止めようとするがまた眩暈を起こしたのかポスンとベットに倒れこんだ。
「詳しく聞かせてくれないか?」
「いいわ。私と魔理沙、アリスと3人で飲んでいたときに言われたのよ。最近魔理沙太ったんじゃないって」
「なるほど。だからダイエットを始めたと」
魔理沙を見ると布団で顔を隠しているのだがちらりと見える耳が真っ赤に染まっているのでどんな顔をしているのかは想像がつく。
「でも、別に見たところ太ったようには見えないけど? それに何で俺に黙っていたんだ?」
「……○○、あなたもう少し女心を理解しなさい。太ったからダイエットを始めたなんて恋人に知られたい訳ないでしょ。
それじゃ咲夜に何かスープでも作ってきてもらうから、それまで魔理沙をお願いね」
パチュリーは席を立ち、小悪魔を連れて出て行った。
「で、どこがぷよぷよになったんだ?」
「ひ、ひどいこというな!? ……お腹周りがちょっと」
「ふーん」
俺は布団の中に手を入れて魔理沙のお腹をさわった。
「ひゃっ!? ま、○○!?」
「んー、別に変わんないと俺は思うけど」
「い、いきなり何すんだよ! ……○○がそう思うだけだ。やっぱり太ってるんだよ」
「あのな、魔理沙? あんまり無理なダイエットは体に毒だ。それに他の大事なところが大きくならなくなったりするんだぞ?」
「う……それは困るが……でも……」
「……これだけ言ってもわかりませんか。じゃあ仕方が無い。その体に教えてあげましょう」
「え、○○なにを」
いうなり、俺は布団を剥ぎ取ると魔理沙に馬乗りになった。
「え? ちょ、○○? な、何をするんだ?」
魔理沙の問いかけを無視してわき腹に手を当てるとおもいっきりくすぐってやった。
「あははははっ!? な、なにを、や、やめっ、あはははっ、くすぐった、も、もうや、やめっ、いひひひっ、
だ、だめっ、しっ、死んじゃ、死んじゃうーーーーっ! あはははっ!!」
「はいはい、そこまでよ。また倒れられたら迷惑だからそれ位にしときなさい」
パチュリーからレフェリーストップが入ったのでマウントを解く。
お腹を押さえてピクピクと痙攣している魔理沙に言った。
「今おもいっきりくすぐってみたけど贅肉なんて摘めなかったぞ。
結局魔理沙の思い込みだったんだから無茶なダイエットは止めるんだ。解ったか?」
「はぁ、はぁ、わかった……」
「じゃこれ食べて少し休んだら帰って」
そう言ってパチュリーはスープを渡した。
「おかわりだぜー!!」
「……スマン、これで打ち止めだ」
ダイエットを止めるということで夕飯は豪勢にバランスと量を考えず作ってみたのでが甘かった……。
あっという間におかずとお櫃をカラッポにしてまるで幽々子が乗り移ったかのような恐ろしい食いっぷりを見せ付けてくれた。
「あー、やっぱり○○の作ったメシはうまいなー。いくらでも食べられるぜ」
ポリポリ、ズズーとたくわんと味噌汁を食べながらそんなことをのたまう魔理沙。
「あのなぁ、いくらなんでもこれは食いすぎだぞ。さすがに太るかもしれん」
「う……たしかにちょっと食いすぎたかな? でも今日だけだし○○はいつもはちゃんとバランス考えてくれるしな」
と、茶碗を置いて魔理沙がこちらを見つめてきた。
「それに、太ったかどうか○○が私のお腹を確かめてくれればいい……さ、さっそく触ってくれないか?」
「あ、ああ……」
魔理沙はスカートを捲りあげてお腹を見せているのでそっと手を当てる。
「あっ、やっ、く、くすぐったいぜ」
「まぁ、ちょっとぽっこりしてるけどこれは食べたばかりだからだろうな」
「ああ、今度からちょくちょく確かめてくれ……」
しかし、この状況を誰かに見られたらまさにごちそうさまってところだろうな……
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うpろだ1032
「…霧雨さん? 部屋の片付けを手伝えって言ってたけど、
これ、片付けってレベルじゃ済まないような……」
「う、うるさいぞ、○○! 良いか? こういうのはしっかり計画を立てれば簡単なんだ」
「計画って…。じゃあ、その計画とやらを聞かせてくれよ……」
「どかす、掃く、拭く、戻す!」
「…………」
俺は魔法の森の霧雨亭に、掃除の手伝いで呼ばれた。
霧雨亭内部は物が散らばって残念な事になっており、年頃の女の子が住んでいるとは到底思えない。
魔理沙本人は気にしていないようだったが、おおかた巫女や人形遣いにでも咎められたのだろう。
今日はこれらをどうにかすると言っていた。
「ちょっと霧雨さん。この本はどうする? 捨てちゃうよ?」
部屋の隅に積まれた本を指差して俺は魔理沙に尋ねる。
「馬鹿かお前! 本とかは絶対に捨てちゃあ駄目だぜ。
本は知識の塊そのもの。乱暴に扱う事なかれ、だ。大体それはパチュリーから借りてる大切なものなんだ」
確かに本を捨てるのは良くないな。言葉のあやだとしてもまずかった。
しかし、その手には乗らないよ。
「……あとで紅魔館に持って行って、門番さんに返してくれるように頼んでくる」
こんな風に溜め込むから部屋が散らかるんだ。
「わ、わ、止めてくれ! 分かった、自分で行くから!」
驚くべき速さで俺の手から回収していった。
これじゃあ紅魔館の魔女さんも大変だ。
見回してみると、魔法の実験道具やキノコだけでなく本も転がっている。まだ他にも紅魔館のものがありそうだ。
…ん? あれは……? あぁ、あれが霊夢さんの言ってたやつか!
そうだな、あれを使って……。
よーし! お仕置き代わりに、ちょっと意地悪をしてみるか。
「じゃあ、このぬいぐるみは? かわいいクマのぬいぐるみ」
魔理沙はいつも、このクマのぬいぐるみと一緒に寝ている。
ぎゅっと抱き締めて、それはそれは幸せそうに夢の中へと言うわけだ。
本人は恥ずかしいと思っているらしく、友人にしか教えていないのだが……。
そこを、すこーしだけわざとらしく攻めてみた。
「あ、それは……」
焦っているらしく、目が泳いでいる。顔も若干赤い。
「霧雨さんの、なの?」
「いや、ははは、何と言うか……」
耳まで赤みが到達、組んだ指がせわしなく動き始めた。
……頃合いかな。
「かわいいなぁ」
魔理沙の目を見てそう言った。
「……は?」
「かわいいなぁ。本当にかわいいなぁ。
優しそうな瞳がたまらないよ。それになんだか良い匂いがするし。
ほっぺたとか柔らかそうでキスしたいなぁ。耳とかはむはむしてあげたいなぁ」
魔理沙から目は反らしてない。
むしろ、嘗め回すようにねっとりとした視線を送る。
「ばっ、ばばばか野郎! いきなり何を言い出すんだお前は! いきなり本当に何をいきなり……!」
とうとう魔理沙は首のあたりまで赤くなってしまった。
スカートの端を握り締めていたが、目を合わさないように近づいてきて無言で俺をポカポカ叩く。
まったく可愛い人だ。もう少し見ていたい。
だけど、そろそろ本当の事を教えてあげよう。
「いたた、何だ、止めてくれ。違う、ぬいぐるみの事だ」
「……は?」
「だから、霧雨さんの事じゃなくて、ぬいぐるみがかわいいと言ったんだ」
口をポカンと開けて、俺の言葉を噛み砕いている様子。
そして吟味し終わると、
「………くっ、この野郎! ばかにしやがって!」
ちょっと怒った風にまたポカポカ叩いてきた。
そんな姿も愛らしいと思う。
うん、愛らしいよー……って痛い痛い! なんか本気で殴ってません!?
あっ、そこは! そこは蹴り上げちゃダメぇぇ!!!!!!!
「ぐふっ!」
……――――。
■ ■ ■
ずさんな計画はやはり意味が無く、大掃除が終わったのは七時をまわってからだった。
それでも霧雨亭は朝に比べ、大分整頓されたと思う。本は本棚へ、カップは食器棚へ。
ベッドの下にあったドロワーズは……。べっ、べべ別に、右のポケットは膨らんでいないぞ。
「悪いな、遅くまで縛り付けて。助かったぜ」
「いや、良いんだ」
「そうか、ありがとうな」
片付いたテーブルでお茶を飲む俺たち。
他愛ないおしゃべりを楽しんでいると、魔理沙が急に真面目な顔になった。
「……あのさ、あのぬいぐるみだけどさ……。恥ずかしいけど、あれは私の大切なものなんだ」
どうやら、ぬいぐるみの事を自分から説明したかったようだ。
「そのー……、毎晩一緒に寝ててな。あれを抱き締めてなきゃぐっすり眠れないんだ」
恥ずかしさを我慢しながらも自身の秘密を打ち明ける魔理沙に、○○は言葉にし難い感情を覚える。
さっきの意地悪、謝んなきゃな。
「……俺も言わなくちゃいけないな。霧雨さん、俺はそれを知っててわざと訊いたんだ」
「は? って言うと、なに、お前知ってたのか……」
首を縦に振って○○は続ける。
「ちょっと霧雨さんを困らせたくて……。
神社の巫女さんに教えてもらったマル秘ネタを使って意地悪しちゃったんだ。ゴメンな」
「じゃ、お前は最初から……。つうか霊夢は何ばらしてんだよー……」
うなだれる魔理沙。
やっぱり言わないほうが良かったのかな。
魔理沙は何とも複雑そうな顔をして頭を抱えていたが、やがて俺に目を合わせてこういった。
「まぁ、良いや……。そうなんだ、まだ私はちょっとガキっぽいところがあるんだ。
家に一人で寂しい時は、ぬいぐるみに話しかけたりしちゃってるんだ…。アリスみたいだろ?」
そして、ちょっぴり自嘲的に微笑んで、
「……嫌いか、そんな奴は?」
そんな。
嫌いだなんてあり得ない。
だって、俺は―――。
「バカだなぁ、嫌いなはずないだろ?」
目の前の金髪の女の子がちょっとだけ帯びていた緊張は、その言葉で霧散した。
ニカーッと口を三日月形にして、そのくせ目はちょっと潤んでる。
やっぱりだ。やっぱり可愛いな。
澄んだ瞳。きめの細かい頬。薄桃色の唇。
あの時言った事は、ぬいぐるみなんかの事じゃないんだよ……。
「○○。もう遅いし、今日は泊まっていけ」
そのまま夕食もごちそうになり、気づけば十時を回っていた。
お腹も膨れ、適度に眠いこの身体で帰るのは確かに面倒だ。
「なぁ、泊まっていけよ。良いだろう?」
「そうだな、せっかく掃除したんだし。
邪魔じゃないなら泊めてくれよ。散らかる前の霧雨さん家で寝るのは、めったに出来ない経験だしな」
なんつってとか言いながら、俺はぐるりと室内を見渡す。
うん。布団を借りて、それにくるまって寝れば床でも悪くないはずだ。
「なっ、失礼だな。これでもベッド周りはいつも綺麗にしてあるぞ」
まぁそうだろうなぁ。流石に寝る場所は気を使ってるはずだ。
今日だって、あそこはホコリを掃いただけでOKだったし。
「だから大丈夫だ。一緒に寝ようぜ?」
うんうん、一緒に寝よう。
……ん? 一緒に?
「……は?」
「……お前と一緒に寝たいんだ」
「……え、ちょっと?」
○○は戸惑いを隠せない。
一方魔理沙はと言うと、熱っぽい眼で○○に視線を注いでいる。
もう完全に女のそれだ。
「……あのな、一緒の布団にくるまって、こう、抱き合いながら、さ」
机に置いた俺の手に、自分の指を絡めてくる。
引っ込めようとするとガシッと掴んで逃がしてくれない。
魔理沙は体を乗り出しているから、彼女の吐息が手にかかる。
「枕だって一つしかないんだ。もうこれはくっ付いて寝るしかないぜ。ふふ、恥ずかしいな……」
「ばっ、ばばばばか野郎! 何をいきなり本当にいきなり何を!」
そんなの、そんなのまだ早すぎる。
いくら魔理沙が箒で飛ぶのが速いからって、そっちははやまっちゃいけねえ!
大丈夫! そんな『私、もう子どもじゃないんだよ?』みたいな表情になんか負けない!
魔理沙は貞操はこの俺が守る!
だから、ここはしっかりと、せーのっ、
「はやまっちゃ……」
「と、あのぬいぐるみが言ってるんだ」
途中から俺の声がかき消された。
魔理沙はニヤリとし、してやったりとでも言いたげだ。
「……え? ……つまり、どういう事?」
「ははは、私もちょっぴり○○に意地悪がしたくなったのさ。
お前、顔真っ赤にしながらあたふたしてたぜ」
俺は指摘されて顔を押さえる。
気づかなかったけど、かなり上気しているようだ。
「なっ! ……くそ、仕返しとは趣味が悪いな」
魔理沙は楽しそうに笑ってやがる。
あんな顔を見たら、怒るにも怒れないじゃないか。
「まったく、やっぱり勝てないよ。……でも、本当に泊めてくれるのか?」
「ん? あぁ、それは構わないぜ。
引っかかったんだから、ちゃんとぬいぐるみと寝てもらうけどな」
そこは譲らないのね。
「はいはい、分かりましたよ。
……あれ、でも霧雨さん? あんた、ぬいぐるみがなきゃぐっすり眠れないって……」
重大な事に気づいた。ぬいぐるみと一緒に寝るという事は、結局……。
「ま、そういう事だな……。
お前はぬいぐるみと寝る。そして私もぬいぐるみと寝る。……悪いか?
それにだな、もういい加減魔理沙って呼んでくれよ。むず痒くて堪らん」
何ともないような口振りで話すけど、魔理沙の頬はまた赤くなっている。
「き、いや、魔理沙……」
「お、お前もあれを抱きしめて寝てみろ。ふかふかしてすごくいいぞ。
……べ、べつに、わわ、私ごと抱いても良いぜ?」
だ、ダメだ。……もう我慢できない。
「やっぱりぬいぐるみだけかな……? わ、私も、かわいくないか……?」
「魔理沙ァァァァァァァ!」
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うpろだ1114
とある暇な日に。
寝転がりながら厚めの本を眺める魔理沙に声をかける○○。
○○「……何をそんなに、目を輝かせてるんだ?」
魔理沙「えっ? あ、あー……いやぁ、ちょっとな」
○○「ふむ。外の世界のカタログか。アクセサリー関係なのな」
魔理沙「私だって、こういうの見てわくわくしたりするんだぜ」
○○「えーと、コンセプトは『アフォーダブルで、ファッショナブルなラグジュアリー』
さりげないトレンド感が個性的、とな。日本語か、これ?」
魔理沙「さあ? でも、これとか結構可愛いと思わないか?」
○○「……可愛いっちゃ可愛いけど」
魔理沙「けど?」
○○「こーいう派手なのは、魔理沙にはまだ早いんじゃないか?」
魔理沙「うううううう。どうしてそういうこと言うかなぁ」
○○「すまんすまん、別にアクセサリーをすることにとやかく言うつもりはなかったんだ」
魔理沙「どうせ私はちんまいですよ」
○○「しっかし、なるほどねぇ……」
魔理沙「何か企んでるだろ」
○○「いんやー、何でもゴザイマセンよ」
魔理沙「……ならいいけど」
数週間後。
○○「魔理沙、誕生日おめでとう」
魔理沙「……へ? あ、あぁ。そういえばそうだっけ」
○○「自分で忘れてたのかよ」
魔理沙「まあなぁ、祝ってくれる人なんか殆どいないし。
そもそも○○は誰から誕生日のこと聞いたんだ?」
○○「霖之助さんからな」
魔理沙「そーなのかー」
○○「まあ、それは置いといてだな。……これ」
魔理沙「お、プレゼントか。開けてみても?」
○○「そりゃいいだろうさ。魔理沙にあげるんだからな」
魔理沙「ずいぶんちっちゃい箱だけど」
○○「お前の言い方かたからすると、プレゼントにも火力が必要なわけか……」
魔理沙「どれどれ。あ……これって……指輪?」
○○「まーな」
魔理沙「随分シンプルなんだな」
○○「気に入らなかったか?」
魔理沙「そんなわけないだろ。でも、指輪にもサイズがあるって……知ってるよな?
私のサイズなんて教えた覚えがないんだが」
○○「それは、勘で」
魔理沙「入らなかったらどうす……いや、何でもない」
○○「あんまり気にするなって。金属アレルギーじゃないよな?」
魔理沙「ないない。うーん、ちょっと中指はキツイか」
○○「他の指は?」
魔理沙「……え?」
○○「ほら、ぴったりだ。うーん我ながら良いセンス」
魔理沙「…………」
○○「どうした? ものっそい複雑そうな顔してるけど」
魔理沙「○○、これ、どういう意味かわかってやってる?」
○○「意味? って、別に左手の薬指に指輪を…………あ」
魔理沙「わざとだろ?」
○○「ち、違うぞ。それ以前にどうやって魔理沙の指のサイズを測るんだよ!」
魔理沙「何度かチャンスはあっただろ!」
○○「いやいやいや! そもそも、どうやって測ればいいか解らないし!」
魔理沙「とっ、とりあえずありがとうな!」
○○「ああ、どういたしまして」
魔理沙「でも……意図的じゃないなら、そういう意味じゃないのか……」
○○「本当にそんなつもりじゃなかった。こないだアクセサリーに興味持ってたみたいだったし、
誕生日も近かったから、プレゼントしたら喜ぶだろうなぁ――ってくらいにしか考えてなかった」
魔理沙「うん。嬉しいぜ?」
○○「だけど訂正」
魔理沙「ん?」
○○「そうだなぁ……俺が一人前になるまで随分かかるだろうけど、それまで待っててくれるか?
その時には、ちゃんとした給料三ヶ月分のものを、左手の薬指に嵌めてくれると嬉しい」
魔理沙「…………」
○○「ダメ、か?」
魔理沙「……もちろん、良いに決まってるんだぜ」
それから暫くして。
よーむ「幽々子さま、さっき魔理沙が嵌めていた指輪なんですが、何か呪術的な意味でもあるのでしょうか?」
ゆゆこ「ええ、そうねー」
よーむ「それはどういったモノなのでしょう」
ゆゆこ「うーん、その存在を確認するだけで、気分が高揚したり、実力以上の力を発揮できる――ってとこかしら」
よーむ「私にも使えるでしょうか?」
ゆゆこ「妖夢にはまだ早いかしら、ねー」
よーむ「?」
ゆゆこ「あれはね、『予約済み』って意味なのよ」
よーむ「???」
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最終更新:2010年05月15日 00:46