魔理沙19



新ろだ701



 ◆少女+α飛行中◆

「なー、魔理沙ー!」
「なんだー!」
「毎回こうして乗っけていってくれるのは有難いんだけれどもー!」
「別にいいってことよー!」
「その、後ろからしっかり抱きしめてないとやっぱり駄目なのかー!?」
「駄目だ!振り落とされたいなら止めてもいいぞー!」
「それはちょっとー!」


 ◆ランディング◆


「着いたぜー、降りろ降りろ」
「ぜえ……はぁ……、うん、さんきゅ」
「いいってことよ。それじゃ私はそろそろ行くぜ」
「ああ、うん……なぁ、魔理沙」
「どうかしたか?」
「もうちょっと、その、箒の速度「無理だな」……さいですか」
「別に事故とか起こしてるわけじゃないし、構わないだろう?」
「それはそうなんだけど……」
「なら問題ないな。○○もそろそろ仕事の時間だろう?
 また迎えに来るぜー」
「あ、やっべ。そんじゃ、またな」


 ◆とある飛行経路の井戸端会議◆


「いつもいつもアツアツだよね、あの二人」
「わはー、そうなの?」
「飛んでる時の二人の顔をよく見るとすぐわかるよ。
 二人とも真っ赤だもん」
「あれにはちょっとイタズラする気も起きないわ……」
「でもまだ付き合ってないんだよね?」
「あれ、ルーミアひょっとして?」
「違う、違うよ!いい加減気付けばいいのになーって」
「だよねぇ……」


 ◆夕暮れに御座います◆


「おー、待ったかー?」
「いや、今来たとこ。ほら、乗った乗った」
「おう。あ、それでだな。今日はちょっと荷物が多いから低速で頼めるか」
「えー……?」
「えー、じゃないよ、えー、じゃ。仕事道具も入ってるから落とすわけにもいかないんだよ」
「ったく、しょうがない奴だな……そんじゃしっかり掴まってろよー」
「りょーかいりょーかい……よっと」
「ひょわっ!?」
「こんなもんか?」
「あ、あああ。それくらいでいいいぜ」
「今回も宜しく頼む」


 ◆終着◆


「……おーい?」
「……生きてるって、素晴らしい」
「だからごめんってば」
「普段の倍近く飛ばした奴のことなど私は存じ上げません」
「……うー……」
「ま、荷物は無事だったし。今日のところは見逃してやろう」
「ほんとか?」
「男に二言はないぜ。ああ、そうだ」
「?」
「美味そうな茶請けとか色々買ったんだ。
 ウチ、あがってくか?ご馳走するよ」
「勿論だぜ!」



新ろだ716



※頭のネジ外れてます
※無駄に喋る

そんなんでもいい方どうぞ









 ・1

「はいはーいこんにちはー。毎度おなじみ素材屋ですよー。魔法使いの味方ですよー」
「お、来たな。よーっす」
「ウェーイ!」
「で、わざわざ来たって事は何か珍しいもんでも手に入ったのか?」
「ああうんー……まあボチボチ? とりあえず見てもらおうか? いくぜ俺のターン!!」
「……お前時々変な言葉使うよな」
「ああそりゃあ俺の国で流行ってたネタみたいなもんだよ。気にしないでくれ」
「ふーん」

商談中

「ところでさ、前から思ってたんだが」
「何だい。お嬢ちゃん」
「うわー、壊滅的に似合わないぜー」
「何だよ魔理沙」
「言い直すくらいなら最初からやるなよ」
「性だーね」
「……よくわからんがまあいいか。で、話を戻すが。お前何でこんな職業やってんだ?」
「素材屋?」
「しかも魔法使い……というか魔法関連のアイテムほとんど専門だろ?」
「そうなるね」
「里の住人ですらやるヤツ居なかったのに、なんでお前そんな仕事始めたんだ? そもそ
も外来人だってのに帰らない時点で変わり者な訳だが」
「んん、まあ理由はそれなりにあるけどもね。まあ順序立てますか。まず帰らないっての
からかね。そりゃあ単純にこの郷に残りたい理由が出来たからだ。んで、住んでいくには
働いて食い扶持稼がにゃあならねえ。そんでまあ残りたい理由に関連して、俺には目標が
あってーね。それ達成すんのにいっちゃん都合のいい職っつうことでこんなん始めた訳で
すよ。まあ確かにそこまで稼ぎはよかないが、そこら辺はあんまり問題じゃなかったりす
る訳ですハイ」
「魔法関連の素材が目標……もしかしてお前魔法使いにでもなりたいのか?」
「いんや。物語の活字は好きだけど、勉学の活字は御免だね。っていうか勉学は嫌いだね。
モノ覚えも悪いし」
「むう……じゃあさっぱりわからん」
「一個目でもうギブかい。まあ何だ。郷愁ブッ飛ばす位の理由はあった訳さー」
「何だ、そういう言い方されると気になるな。教えてくれよ」
「そりゃあお前好きな子が出来たからよ」
「…………はい?」
「気になるあの子は魔法使い。けれどもワタシは一般人。弾幕? 何それ不可能だよ。じ
ゃあどうやって関わろう。そうだ魔法使いならではの必需品を扱えばいいじゃない。堂々
と尋ねる理由になるよ! っつーね」
「お、おぉ……そうか、アリスを好きになる何て物好きだな」
「お前だよ」
「?」
「後ろ振り返ってもだれもいねえよ。俺が好きなのは霧雨魔理沙さんですが何か」
「………………え、ま、待て。じゃあお前」
「当方は君と会いたい一心で魔法絡みの素材を扱っております。まあ最近はマーガトロイ
ドさんとかノーレッジさんも顧客ではあるがね」
「い、いや、ちょ、待っ」
「始めて名前で呼んでいいと言われた日、感動で日記が一冊埋まりました」
「あ、あ……」
「前に一回だけ会った、寝巻きで出迎えられた時の画は脳に焼き付いています」
「う、ううわあ、」
「とりあえず真っ赤になってる顔がすげえ可愛いので撫で回していい? 正直持て余すんだけど」
「な、なにを……?」
「色々と。言ってもいいけど魔理沙にはまだ速いんじゃないかなウフフ」
「え、なん、それ……」
「っと、いけね。もうこんな時間だ。あんまり遅くなると夜になっちまう。ここじゃあパ
ンピーの夜の独り歩きほど怖いものはないからねえ。っつー訳でじゃーなー。また何か入
ったら売りに来るわー」


「………………………………い、言うだけ言って、な、何事もなく帰りやがった。ってい
うか、ちょっと、待ってくれよ……わ、私がす、好きって、言ったよな、あいつ確かに言、
う、うわあああ……!」




「あのですねけーね先生。男の子には、こう、どうしてもテンション上がる時ってのがあ
ってですね。いややった事には後悔してないんですがね、恥ずかしさっての、後に来るじ
ゃないですか。だからほら、その辺のもやもやを解消しようと全力疾走で壁の一枚や二枚
ぶち抜いてしまうのは仕方がない…………違います違います後悔して無いのは壁をブチ抜
いた事じゃなくてその数時間前の方なんですそっちはちゃんと反省してますから謝ります
からだから頭突きだけは勘弁し、」



 ・2

「よっ」
「………………おう」
「という訳でやってきました霧雨邸。さあ売っちゃうぞー」
「…………」
「何かさー、最近いいもん見つかんないんだよー。時期的にまだ大丈夫だと思ったんだけ
ど、いや自然ってのは読めないもんだね。都会育ちっつう訳でもないんだけど、いや向こ
うとこっちじゃ自然の格が違う感じがするわ。大変大変」
「…………な、」
「ん?」
「……なんか、いつも通りだな」
「そりゃあ病気でもしなきゃあ人間なんぞ大体いつも通りでしょう」
「そうじゃなくて!」
「おおビックリした」
「…………お前、この前」
「この前?」
「…………わ、わた、わ、私の事、その、えーと、す、す……」
「なにかなー。ちゃんと言ってくれないとぼくわかんないなー」
「す、すー…………すー……」
「聞こえないなー。もっと大きくはっきり言ってくれないとわかんないなー」
「…………お前、もしかしてわざとやってないか」
「うん」
「…………さ、最悪だ」
「で、俺がこの前魔理沙が好きで好きでしょうがないって事を暴露したのがどうかしまし
たかね」
「何で表現が装飾されてるんだよ! お前もっとさらっと言ってただろ!?」
「いやあ、さらっと言い過ぎたかなーと思って。ちょっと本音の一部を解き放ってみた。
だが俺はまだ後二段階解放を残している……この意味がわかるな……?」
「わからんわ!」
「ですよねー。あーこういうネタが通じる知り合い欲しいなあ…………おっと」
「うひゃああ!!」
「…………手を伸ばしただけでそこまでバックステップされると流石に傷付くんですが。
肩に糸くず付いてるだけだって」
「え? あ、ああそうか……ま、紛らわしい事するなよ……」
「…………ウフフ何をされると思ったのかなーウフフ」
「う、うるさい! そんな事より商品売りに来たんじゃないのか!?」
「そうですよ。つっても魔理沙が挙動不審なんだからしょうがないじゃない。さっきから
会話が詰まりっぱなしだろに」
「う、ううぅ……なんでお前はそんな平然としてるんだよぉ」
「取り乱して魔理沙の好感度が上がるなら取り乱してもいいけどねえ。そうでもないっつ
うんなら変に取り乱して魔理沙を怖がらせる訳にもいかないっしょ」
「…………変なやつだなあ」
「ああその呆れかえった視線、何かゾクゾクする」
「うわぁ…………」
「ああいい、その目線もっといい……何か目覚めそう……!」
「目覚めるな」
「まあ冗談は置いといて。商売しましょうか、いつも通りに」
「……あ、ああ。そうだな……まったく私とした事が……」

商談中

「……やっぱりお前は勝手すぎる」
「いやあこれ以上の値引きは勘弁してほしいナー」
「そうじゃない」
「ほへ?」
「……いきなり好きって言ったと思ったらそれっきりだ。私は、その、そう言う事はじめ
て言われたんだぞ。だから色々ずっと考えて、だけどお前はあれから数週間顔を出さない
し、来てもいつも通りだし……これじゃあれこれ考えてた私が滑稽だろう」
「……ふーん。そんなに気にしてもらえるとは思って無かったな。魔理沙の事だから普通
に笑い飛ばしそうだと思ってたんだけどもさ」
「そ、そう言われても……困る、んだぜ……」
「ふむ。んーとさ、まあ何だそんな気にしないでくれよ」
「え」
「いやさ。確かに俺は魔理沙の事を好きな訳だが。別に魔理沙は俺の事を好きな訳じゃな
いだろー」
「……まあ、そんな嫌いってほどじゃあないが」
「でもこう恋愛感情で大好きーって訳じゃないだろう。そん位わかってら。だから結局俺
の気持は一方通行なんだよ。そんなんで俺が無闇に騒ぎたてても迷惑だろ?」
「まあ、それは……」
「だから俺はいつも通りなのでした。いきなり馴れ馴れしくってのは俺の主義に反するね、
本気で好きなのだから、好きな相手にはしっかりじっくり熱意を伝えるさ」
「好き好きって、よくそんなに連呼出来るな、恥ずかしい奴だぜ……」
「まあ本当なんだからしょうがないよ。とりあえず半年かけてそれとなく示しただけじゃ
気付いてもらえない事がわかりましたので! これからは基本前面に押し出す方針で!」
「うぐ……な、なあ。聞いていいか」
「はいはい?」
「何で、私なんだ」
「一目惚れ」
「えぇ!?」
「一目見て色々思ってねー。髪がふわふわで可愛い。眼がくりくりして可愛い。若干丸っ
こい顔が可愛い。白黒の服が似合ってて可愛い。キラキラした星を出すのが似合ってて可
愛い。弾幕出してる時の笑顔がとっても可愛いと」
「……見た目だけじゃないか」
「最初は、ね。でも話すようになってから気付いた。だぜ口調の癖に変な所で乙女なのが
可愛い。何かしら知ったかぶったり見栄張っちゃうとこが可愛い。誰よりもがんばりやさ
んなとこが可愛い。そんな部分を誰にも見せないようにしてるとことっても可愛い。そんで」

「俺の示した一方的な好意を、きちんと考えてくれる魔理沙はすっごく可愛い」

「あ、あー、あうー」
「あら真っ赤っか。ちっくしょうやっぱ可愛いなあ。撫でくりまわしたくなる」
「あ、あうううう……!」
「んー。今日はもう話せそうにないかな。また日を改めるよ。商談は今度にしようか。
色々勝手に言っちゃったけど、全部本気だからなー。じゃあまた」
「お、お前は!」
「っとと」
「………………私にどうしてほしいんだ」
「それはできれば好きになってもらいたいけどね。無理にとは言わない、っつか言いたく
も無い。俺はこれからも魔理沙と関われるように色々やって、何とか好かれようとするけ
ど、魔理沙はそのまんままで居てくれればいいよ。その上でいつか俺の事ちょっとでも認
めてくれたら、そん時は教えて欲しいかな。俺はずっと魔理沙が好きだから。あ、他に好
きな奴が出来て、俺の事疎ましくなったら言ってくれよ。その時はちゃんと諦めるから。
魔理沙を困らせるようなことはしたくない」
「……むずかしい。今まで通り何て、できっこない」
「じゃあ多少は言った甲斐あったかな。気にしてもらうの嬉しいおとこのこー」
「……何か不公平だ、私ばっかり困ってる気がするぜ。お前も困れ」
「いや半年もやもやし続けて困り抜いた結果がご覧の有様だよ」
「……ははっ、何だそりゃ」
「あー、うん。困った感じでもじもじしてる魔理沙も可愛いけどやっぱり魔理沙は笑顔が
可愛いなあ」
「……あー、うん、何かわかった気がするぜ。あれこれ考えてどうにかなるもんじゃない
んだな…………ったく、しょしょうがないなー、まあ魔理沙さんは懐が広いからなー。こ
れからは思考の端っこにお前の事も入れてやるよー。でも私は厳しいからなー、ふ、不甲
斐ない事したら即脱落だからなー」
「おー」(プルプルしながら言ってもまるで凄みねえって言ったら怒るな、絶対。ああで
も怒った顔も見たい……! これがジレンマ……!)

「えーとお前は私がす、好きなんだな?」
「うん」
「じゃあそれ、もうちょいまからないか?」
「それとこれとは話が別」
「エー」











『返事』がもらえるまでにかかった期間、この日から三ヶ月


新ろだ723



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そんなんでもいい方どうぞ









  • 3

「――という訳で私の弾幕の直撃を食らった氷精は真っ逆さまだった訳だ」
「やったーすごい」
「……聞いてるか?」
「半分」
「ほう」
「まずはそのミニ八卦炉を仕舞え、話はそれからだ……というか特に弾幕絡みだと魔理沙
の顔が輝いてるから、そっち見るのに忙しいんだもの。仕方が無いやね」
「何だそりゃ……」
「それがマイジャスティ……あちゃあ、雨降って来やがった」
「おー。結構勢い強いな」
「という訳で魔理沙さん」
「どこがという訳なんだかな」
「雨宿りさせてくだせえな。雨具持ってきて無いヨ」
「条件次第だな」
「二割引」
「乗った」

商談中

「それにしてもよく降るな」
「だーね。あーあこりゃ帰るとき地面グッチャグチャだな。憂鬱ったらありゃしねー」
「……そういや前にもこんなのあったな」
「前?」
「ちょっと前の天人が起こした異変の時にな。私の家の周囲だけ延々雨が降り続けたんだ
よ。洗濯物が溜まるったらないぜ」
「え? テムジン? そんなのまで幻想入ってんの? マジで?」
「何だそりゃ。てんじんだぜ、てーんーじーんー」
「うん、まあどうでもいいんですがね。しっかし止みそうにないなこれ。暗くなる前に止
むといいんだけど」
「どうだかな、この様子じゃ難しいかもしれないぜ」
「しょうがないなあ。ギリギリまで粘って駄目っぽかったら素直に濡れるか。傘をささず
に踊る人間が居てもいいってどっかで聞いた気がする」
「何だそりゃ、ズブ濡れになるだけじゃないか」
「自由ってそういうものらしいよ…………しかし」
「ん?」
「女の子が濡れるって言うと若干えろい響きが……」
「…………………………」
「あ、痛い痛い痛い。ちょ、待って、ごめんなさ、ていうかミニ八卦炉で殴り付けるのは
使い方間違ってない!? それじゃただの鈍器じゃな――痛い! でもうれしい!! こ
れで後一年戦えるぅぅ!!」
「何で喜ぶんだ!?」

雨宿り中

「まりささーん」
「なんだー」
「暇潰しに本を借りたはいーんですがー。何書いてあるかさっぱりわかんないー」
「自分から貸せって言った癖に……あ、もしかして字読めないのか。外とこっちじゃ字が
違ったりするのか?」
「いや内容がさっぱりわからんのよ。字は読めるし書けますよ、覚えたからな」
「覚えたのか」
「寺子屋で子供たちに混じって勉強しましたが何か。つっても根幹は同じだからそこまで
労力でも無かったけども」
「お前、変な所で妙にやる気があるよなあ……珍品も結構手に入れてくるし」
「のんのんのん。魔理沙絡みの事だけ死に物狂いですよ。思春期の男の子は単純だからね
え。これができれば好かれるかもと考えれば大概の事はどうにかできるのよ。という事を
最近知った」
「…………うぐ」
「魔理沙ってさー」
「なんだよ」
「好きとか唐突に言われると真っ赤になるよねー。かわいいなー。だきしめたいなー」
「う、うるさい!」
「その反応は俺を悦ばせるだけですよお嬢さんゲッゲッゲッ」
「うううるさい! うるさい! 後その変な手つきを止めろ! わきわきさせるな! 何
か気味が悪い!!」
「冗談だってのに本気にしちゃって。まあそういうとこも可愛いから好きなんですけど
ネー。それにしてもまあ、何書いてあんのかサッパリわからんわ」
「…………お前は本当変わらない、よなあ」
「だから人間病気でもせにゃあ」
「そうじゃない」
「……む。背中に体温。何、」
「振り向くな」
「いえすまむ」
「……まあ最近は、その、す、好き好き言うようになったけどさ、それでも今までとほと
んど変わらないじゃないかお前。話し方も。する事も。訪ねてくる頻度も。何か、私には
よくわからなくなってきたんだ」
「恋色魔法使いなのにウブな魔理沙ウフ、」
「茶化すな」
「……いえすまむ」
「うー、何だこれ、自分でも何が言いたいのかよくわからん……」
「魔理沙は難しく考えすぎなんじゃないか、ね。もうちょい簡単に行こうぜ」
「……こういうの、簡単に考えるものじゃない」
「ああ……まあ。そりゃそう、だけどねぇ」
「私はな、お前の事そんなに嫌いじゃないんだ。少なくとも一緒に居て、嫌とかじゃない。
ていうかいやならとっくに叩き出してる」
「光景が目に浮かぶようです」
「この前までは、こんなに考えなくて済んだのに。ただ変な奴ー、妙に明るい奴ーくらい
で普通に考えられたのに……今じゃよくわからん、頭がぐるぐるするんだ」
「……ああ、そうだな。じゃあ決めちまおうか」
「え」
「俺はね、軽はずみに好き好き言うけどね。それは正真正銘本気な訳で。うん、これだけ
は絶対に本当だ。それで魔理沙は俺の事をどう思う?」
「…………嫌いじゃない」
「俺が魔理沙の事もっと知りたいって言ったらどうする?」
「…………嫌では無い」
「俺がもっと魔理沙と触れ合いたいって言ったらどうする?」
「…………て、程度による」
「俺が魔理沙の恋人になりたいって言ったらどうする」
「………………考えてみた、お前と、そのそういう関係になったらって」
「どうだった?」
「嫌じゃなかった」
「ああ、そうなのか。それは嬉しいな、うん。すっごく嬉しい、本当嬉しい」
「……お前と、そうなったとしてな。こんな事したりするんだろうなって、たくさん考え
たんだ。嫌じゃなかったし……こうなったら楽しいんだろうなって思う事もあった。こう
したいなって、思う事もあった。気が付いたら、こうするのかなってのが無くなって、こ
うしたいなって、のが増えてって、もうそれだけになってるんだ」
「うん」
「なあ、これって、好きって気持ちなのかな」
「それは魔理沙が決めるべき事だと思うがね」
「…………絶対に振り返るなよ、こっち向くなよ」
「いえすまーむ」
「お前は私の事が好きなんだよな」
「うん」
「私も、お前が好きだよ」
「………………本当?」
「………………ほんとう」
「………………そっかー」
「そっかってお前それだけ……って待て。こっち向くなって、言っただろ、こら、見るな
ぁ……!」
「あははー顔真っ赤ー、えーいぐりぐりしちゃうぞー」
「ぷあー!? や、やめろー!!」
「さて、今われわれの額が接触している訳ですが」
「……お前が押しつけているんだろうが」
「熱いのわかる?」
「………………ああ、熱いな。よく見たらお前も真っ赤じゃないか、林檎みたいだぜ」
「魔理沙は俺よりもっと赤いね」
「いやお前の方が赤い」
「いや魔理沙には負けるなー」
「おまえだー」
「まりさだー」
「うらー」
「おりゃー」

「…………なあ、私達はこれから、その恋人同士になる、んだよな」
「そうだーね……そうなったね」
「こいびとどうしって、何すればいいんだ?」
「何でもいんじゃねいですかね。話したきゃ話して、つつきたくなったらつっつく。そん
なんだと思うよ」
「それじゃあ今までとあんまり変わらないな」
「かもね」
「……何か、悩んでたのが無駄だった気がするぜ」
「じゃあ無駄にならないようにしようか」
「?」
「キス」
「きっ」
「定番だけど、これは恋人同士じゃなきゃやれない事だと思う次第。嫌?」
「…………その聞き方は卑怯だと思うんだぜ」
「断られたら嫌だもの」
「確信犯か、タチのわるいやつめ」
「していい?」
「ん」

「なあ、キスって痛いのか。ガチって言ったぞガチって」
「……………………ごめん、失敗した」
「成功とか失敗とかあるのか」

「これが正解。たぶん。俺も初めてだからよくわかんないや」
「…………も、もう一回していいなんて言ってない。ふこうへいだ」
「そんな事言われ、」

「仕返しだ、これで両成敗だな」
「…………以外と積極的ですね魔理沙さん」
「うるさい」
「ちなみに知ってますか」
「何を」
「キスって種類あるんですが」
「……そうなのか?」

「これ確かバードキスだったかな。ちょんちょんやるの、鳥が啄ばむイメージね」
「か、数が多いな」
「しかえしまだー?」
「かくしんはんかぁ!」

「……うん、本当にやってくれるとは思ってなかった」
「や、やれっぱなしで黙ってるのは私の性に合わないぜ」
「魔理沙」
「…………何か嫌な予感がするんだが」
「俺、もう一つやり方知ってるんですが」
「…………や、やるのか」
「んーでもどうしようかなー。これ大人のやり方だからなー。魔理沙にはまだ速いかなー」
「何だそれ、く、くるなら来いよー、受けて立つぜー!」
「そう言ってくれると思った。ああもう本当可愛いなこの生き物」

「ん…………ん!? んぅ、んんぅー……んー!!」
「ぷあ……これ、ディープキスね……」
「ぷはっ……でぃーぷ? こ、これもキス、なのか……? 今、お前舌……」
「そう。そういうキスなの。おれわるくない。わるいのかんがえたひと」
「何か、頭がぼーっとする」
「しかえしは?」
「……する」

「ん……んぅ……ちゅ、ん……ん、んぅ……んー、んぅ」
「…………」
「んぅ!? ん、ん……! ん……ちゅ、ぷあ…………ふぁ」
「ごめん、我慢できなかった」
「……こらぁ。わたしのばんだったのに、お前も舌動かすなんてずるい」
「つ、い」
「……もう一回、もう一回仕返しだ」
「もしかして気に行っむぐ」
「ぷぁ……ちゅ、んぅ、ちゅ……んー……んぶ、ぷあ、ふぁ、ん」
「……、……ふは。魔理沙、今。明らかに飲ませたよね俺に。唾液」
「ちがう、お前が勝手にやったんだ。お前がまたそんな勝手するから、私はお前に仕返し
するんだ……はぶ」
「んっ」
「んー……ちゅ、はぶ、っちゅ、んぁ、んーんー……ふっ、ん、ぅん、ふ…………ん……!」
「っぷは、ああ、駄目だこれ、溶ける、ああ、いいや、気持ちいいから…………はぁ」
「ふぅ……ぁ……やめていいなんて言ってないぞ、またお前の勝手だ」
「じゃあ、しかえしですか」
「……そう、しかえしだ」






「目が覚めたら真夜中でした。酸素不足で昏倒ってどういう事なの俺。ちくしょう理性に
は自信あったのに。魔理沙のせいだ。可愛すぎるから悪いんだ」
「んー……」
「寝ておられる。まあいいか、今のうちに帰ろう。これ以上は理性が死ぬ。文字通り死…
………服の端掴んでるその可愛らしい手は何でせう」
「夜の一人歩きは、危険じゃなかったのか」
「つっても、ほら帰らなきゃいけないし」
「お前に何かあったら私の責任になるからな、そんなかってはゆるさないぜ」
「心配だったら飛んで送ってくれてもいい訳ですが。雨あがってるし」
「もう夜中で真っ暗だから、どこかにぶつかるかもしれないな。お前のせいで私は大怪我だ」
「どういう理論っスか」
「私と一緒に居るのは、嫌か?」
「…………くそう、先にしかけといて何だけど。これは卑怯だ。断れるかこんなもん」
「しかえしだしかえし…………言っとくが、変な事は駄目だからな。素振りを見せたらマ
スパだぞマスパ」
「変な事ってなんなのか具体的に言ってもらわないとぼくわかんな」
「………………」
「スイマセンでした!!」
「わかればよし」
「ところで一つ質問いいですか魔理沙さん」
「ん、何だー?」

「キスは変な事に入るんでしょうか」
「あ、あー……そうだな、それはギリギリ、入らない、かな……」
「入ってないなら、してもいいって事ですか」
「あー、まあ、そう、なる、な」
「…………どれがいい?」

「……………………でぃーぷ」











無限ループ


新ろだ740



秋の気配が忍び寄る季節のある朝。カーテンの隙間から差し込んだ日の光に照らされて目を覚ました。
腕に重さを感じて隣に目をやると、すうすうと寝息を立てる魔理沙が視界に入る。腕枕の上で安心しきった顔で
眠る彼女は、もはや見慣れた光景だ。
いつもなら肩を揺すって起こすか、あるいは目を覚ますまで寝顔を眺めるのだが
今日はちょっと悪戯心が芽生えて魔理沙の頭を軽く撫でてみた。
髪に触れるとぴくりと震えて首をすくめるようにしていたが、構わず頭を撫で続けるとやがて力を抜いてこちら
に身を寄せてきた。
「ん……」
くしゃくしゃと少し強めに撫でてやると、溜め息ともつかない声と共に身をよじらせ、やがてゆっくりと瞼を開
いた。
「おはよう、魔理沙」
「……! ○○おはよう」
撫でる手を止めて囁きかけると、魔理沙は少しの間ぼうっとした目でこちらの顔を見つめていたが
焦点が合った途端に目を見開き、眠そうな声で返事をしてくれた。
「目覚めの気分はいかが?」
撫でる手を再開し、頭頂部から毛先まで梳くようにしながら尋ねると
悪くはないなと小さな声で呟き、気持ち良さそうに目を細めた。
太陽の光を浴びて金色に輝く髪は指通りにほとんど抵抗しないほどさらさらで
しかも撫でる度にふわっと魔理沙の甘い匂いが広がる。
このまま魔理沙を抱き締めて二度寝したい衝動に駆られたが、起きない訳にはいかないので髪の感触を惜しみな
がらも「起きるぞ」と声をかける。
「……」
普段ならすぐに起き上がるのだが、今日は起きようとせず、逆にむすっとした顔で睨んできた
いつもと違う反応に戸惑って、どうしたんだと尋ねようとしたが、そこではたと理由に思い至った。
仕方ないなと苦笑しつつ魔理沙の肩に手を回して抱き寄せると、唇にそっとキスをした。
ただ触れるだけのキス。魔理沙の寝起きの唇は若干カサついているが、 それでもマシュマロのように柔らかな
感触が伝わってくる。
唇の僅かな隙間から流れ込んでくる魔理沙の呼気に、口の中に蕩けるような甘さが広がる。
ふと視線を感じて目を開くと、睫毛の一本一本まで数えられるような距離から魔理沙のジト目が睨んできた。
次は絶対忘れるなよと語りかけてくる瞳に、肩を抱く力を強めることで答える
その答えに満足したのか、魔理沙は再び目を閉じて、代わりに首に腕を回してぎゅっと抱き締めてきた。
唇は押し潰されてもはやどこまでが自分の口でどこからが魔理沙の口内なのかわからない。更に胸の辺りに控え
目ながら柔らかな感触が押しつけられて
もう今日は起きなくていいんじゃないかと思い始めた時

「さて起きるか。今日も一日頑張るぜ」
伸ばしかけた手をするりと躱して起き上がると、魔理沙はさっさと部屋から出て行ってしまった
ドアを出る直前に見せた意地悪そうな笑みを見て、敵わないなと内心思いつつ、ダイニングに向かった恋人の後
を追った



新ろだ744



「魔理沙ー、チラシの類を出しっ放しにするなと言ってるでしょー、もーこの子ったらー」
「あっちこっちで号外号外って配ってるんだ。勝手に引っ掛かって来たそいつが悪いんで
あって私の所為じゃないぜ。あとその口調やめろ」
「うん我ながら酷かったから止める。それにしても……先週から毎日続いてるんだからさ
ぞ長期間大量に撒いてるんだろうネー」
「…………」
「まあともかく片付け片付け、紙類は燃えるごみじゃーうふははははは」
「か、勝手に私の部屋を片付けるなと何度も」
「魔法絡みのは手を付けてない訳ですが何か問題でも。というかテーブルの上にあったら
メシん時に困るっしょー」
「うー……何だ、気になったりはしないのか?」
「何が?」
「いや、だから、ほら」
「なにが?」
「ま、毎日持って帰ってくるくらいだから、何が書いてあるのか……とか」
「それでぇ?」
「お前、まさか……」

「素直に言い出せず恥ずかしがる魔理沙、あると思います」

「わざとかぁ――!!」
「ごちそうさまでした! イェア!!」
「お前のそういうとこ、ほんっとーに変わらないな」
「性だもん」
「どうやったら矯正できるか教えて欲しいもんだぜ」
「不可能だと思うよ。前にも言ったが俺はまだ二段階解放を、」
「わからんネタは遠慮するぜ。というか話を別方向にもっていくな」
「バレましたか」
「そんなにまで話したくないって事は、お前本当に興味無いのか?」
「外界ツアー?」
「ん」
「いやまあ興味の有る無いで言うとそりゃ有る方なんじゃないの?」
「何で疑問形なんだ」
「癖」
「ああもー、話が進まない……じゃあ何でそんな意図的に避けるんだよ。あれか、そんな
に私をからかいたかったか」
「まあそれもあるけどね、九割くらい」
「ほぼ全部じゃないか!?」
「俺今そのために生きてると言ってもいい」
「お前は……あー、もうまた話を逸らされてるぜ」
「まあ十分堪能した事だし本題に入りましょうか」
「おいこら」
「で外界ツアー行きたいんですか、魔理沙さんは。あちこちで聞いた限り、随分参加者が
多いらしいけど。やっぱ郷の人間は外に興味があるもんなのかね」
「まあそれはそうだろう。基本面白い事好きな連中ばっかだしな、私含めて」
「面白いかねえ、お外は」
「?」
「……いや、見て回るだけならそれは面白いのかもしれないな。こっちの様子と比べれば
十分娯楽に値はするか」
「何だ急に難しい顔して。似会わないぜ」
「ひでえ。そんな俺の顔がデフォルトで間抜け面みたいな言い方」
「いやそう言ったつもりなんだが」
「…………性格変えようかなあ」
「変えれるのか」
「頑張れば」
「そうなのか」
「そうなのよ」
「まあそれは置いておくとして、お前本当に乗り気じゃないな」
「外は知ってますからね。確かに今どんな感じになってるのかって興味はあるよ。でもま
あだからこそ微妙っていうかねー。まあ別に向こうが駄目って訳じゃない、こっちの人間
には堅っ苦し過ぎると思……ああ観光か。ならば楽しいとは思います。技術レベルもダン
チだし、見て回りがいはあるでしょう?」
「面白いならいいじゃないか…………でも」
「デモ?」
「お前が行きたくないなら、いかない……その、一緒だから、行きたいし」
「二分待って、鼻血止めるから」
「ちり紙ならそっちだ」

「さて、外界ツアーに行くにあたってですが」
「……何時の間に行くことが決定したんだぜ」
「行きたいって言ったじゃない」
「そりゃ行ったけど」
「なら案内するさ、少なくとも魔理沙よりは詳しいですとも」
「いいのか? 行きたくないんじゃあ……」
「ぶっちゃけどっちでもいい。それに涙目の魔理沙に上目遣いで私をお外に連れてって懇
願されたら断るわけがないじゃない」
「……か、勝手に付け加えるな。そこまでやった覚えはないぜ」
「真っ赤っかー……で、聞いときたいんだけどもさ」
「何だ?」
「どういうとこ行きたいの? ツアーつっても別にどっか決まってる訳じゃないみたいだ
し、各々で好き勝手行っていいみたいだからさ」
「……んーと、だな。あんまり決めて無いんだが、一つ、行ってみたい所が、ある」
「どこ?」
「そのな、ダメだったらダメって言ってくれていいんだ」
「……んー。どこなのさ」

「お前の故郷」
「いいよ」

「……はやっ」
「でも最初に言っとくとあんま面白いモンないよ。結構田舎だし。それでもいいん?」
「うん、いい」
「しかしまたどうして」
「いや……なんていうか、いいだろ別に、見てみたくなったんだから」
「……ふーん。本当なんも無いとこなんだけどなあ、名産品もショボいしさー」
「とにかく、行ってもいいんだな? 連れてってくれるんだな?」
「うんいいよ」
「そうか、ははっ、そりゃよかったぜ」
「何でそんなに楽しみそうなのか、まあ可愛いからいいけど……今になってわが故郷のシ
ョボさが妬ましい。どこ案内すりゃいいんだよう……んー」

「…………お前が自分のこと全然話してくれないからだろうが。私だって、お前の事知り
たいんだからな。たくさん」

「何か言った?」
「いやー何も! 旅行楽しみだなぁ、ははは!!」
「痛い痛い痛いもっともっと……つってもさすがにずっとそこって訳にもいかないっしょ。
他にどういうとこ行きたいか教えてくれると」
「というかだな、私は外のことあまり知らないから、どういうのがあるかがまずわからないんだぜ」
「あー……ですよねー……じゃあまずこっちが説明しないといけないのか」
「当てにしてるぜ」
「よーし、じゃあ外界授業だー」
「おー」

「という訳でこれに着替えてください。ずるり」

「どっから出した!? ていうか何だそれ!?」
「懐。制服。あとこれから先、俺の事は先生と呼ぶ様に」
「何でだ!?」
「先輩でも可! むしろそっちの方が個人的には良い! すっごくいい!!」
「私にもわかるようにいってくれよ!?」
「趣味!!」
「ああ、ああ! 何時もの事か!!」
「わかってらっしゃる! そう言う事で速くこのセーラー服に着替えるんだ魔理沙! 何
着方がわからない!? ならば手伝ってあげるからうふふはははあ!!!」
「うわああぁぁ、こっち来るな変態――! もてあそばれる――!!」
「これは愛でると言うのだよ! 我々の業界ではな!!」






「…………故郷ね。片付けるにはいい機会なのかな、これ」
「何か言ったか?」
「魔理沙はかわいいなぁって言った」
「嘘つけ」
「本当なのに。ていうかそんなにセーラー服駄目ですか。似会うと思うのに」
「お前の挙動が信用できない」
「そうか。ブレザーの方が良かったか。にゅるーん」
「また出た!? だからそういう問題じゃないって言ってるじゃないか!?」






準備とか計画立てる時って楽しいよね



最終更新:2010年07月30日 00:53