ルーミア2



5スレ目>>661-662


 >>447の続きかもしれないけど。
 多分、読んでなくても大丈夫……と思う。

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神社の冬は忙しい。
何しろ正月は神社のかきいれ時なのだ。
その上、唯一の正規スタッフの霊夢は、神楽の準備やら巫女舞の練習やらがある。
だから。

「○○ーっ! 向こうの設営もよろしくねー!」
「おっしゃー!」

必然的に、暇な俺が動くことになる。

「ねえ、最近、霊夢とばかり一緒にいない?」
「なんだ、急に突然?」

久しぶりにルーミアと2人きり。
博麗神社の境内を歩いていると、唐突にルーミアが切り出した。
ちなみに霊夢は、注文していた衣装が来るとかで、香霖堂へと行っている。

「最近、わたしに構ってくれない」
「仕方が無いだろう。忙しいんだから」

あ、リス。
ちょろちょろとドングリを拾っている。
秋の間に貯めきれなかったのか。
……のんびりしてて、いいなあ。

「今もわたしを見てくれないし」
「い、いや、別に深い意味はないぞ」

棘のある声。
慌ててルーミアを見る俺。
石畳の上の彼女は、堤防決壊寸前だった。

「○○の、バカーっ!」

堤 防 決 壊。
ルーミアは空へ舞い上がると、そのまま物凄いスピードで飛んで行ってしまった。
……やれやれ。
眼を神社のほうに戻すと、先ほどのリスまで俺を責めているような気がした。

その夜。

「あんまり、ルーミアをいじめないでやってね」

今日の顛末を話すと、霊夢は開口一番、そう言った。

「別に、俺は苛めているつもりはないぞ?」
「でも、あの子はまだ、精神的に幼い部分があるから」
「どういうことだ?」
「あー、もうー。とりあえず明日一日お休みをあげるから、ルーミアとデートしてきなさい!」

翌朝。
朝、起きたら暗かった。
いや、比喩じゃない。何も見えないんだ。
頬をつねる。OK、俺は起きてる。

「霊夢~」

家主の巫女を呼ぶ。
情けないが、本当に何も出来ないのだ。

ドタドタドタ

廊下を走る音がして、すぐに霊夢が顔を出す……気配がした。

「ちょ、あんた、それ、何!?」
「知るか。起きたらこうなってたんだ」
「闇があんたを取り巻いて、毛玉みたいじゃない!」

よりによって毛玉なのかよ……。

「うーん、こういうことの出来る奴は……。
 そうね、多分そうだわ。
 ルーミア! 出てきなさい! そこにいるんでしょう!!」
「なんでわかったの?」

心底不思議そうな声がする。ルーミアだ。
彼女が出てくる……気配がした。

「簡単な推理よ。昨日の話を聞けば、動機があるのはあなたしかいないでしょう?
 大体、あなたは闇の妖怪じゃない。
 今日は一日、○○がデートしてくれるって言うから、解きなさい」
「わはー、解くー」

その言葉とともに、俺を取り巻く闇が、すっ、と消えた。
その手を、楽しそうなルーミアが掴む。

「さあ、行こ。早く早くー」
「ちょっと待て! まだ俺は起きぬけなんだ!」
「まったく、こんなんでも貴重な労働力なんだから、嫉妬はほどほどにしておいてね」

霊夢、それはひどくないか? ……って、嫉妬?

「なあ、霊夢。それってど」
「あー! また霊夢ばかり見てるー!!!」

どういうことだ、と言おうとした俺の声をルーミアがかき消す。
結局、そのまま聞けず仕舞いでデートに行くことになってしまった。

どんよりとした空の下。
物寂しい湖畔を歩きながら、俺は考える。
嫉妬、か。
俺の自惚れでなければ、ルーミアは霊夢に嫉妬しているということだ。
そして、対象は俺。
ということは、俺はルーミアに惚れられているのか。

「ねえ、○○、楽しくないの?」
「いや、そんなことはないぞ」
「でも、なんか難しい顔してる」
「そうか?」

では、俺の気持ちはどうなんだ?
ルーミアのことをどう思っているんだ?
……決まっている。
俺はルーミアと一緒にいたい。
ルーミアと一緒にいれば元気になれる。
どんなことだって超えて行けそうな気がする。
ああ、きっとこれが恋、なんだな。

「○○、顔が怖い。やっぱり、ルーミアといても……」
「ルーミア!」
「きゃっ」

しまった。
いきなり肩を掴むのは不味かったか。
おびえた表情のルーミア。
初めて掴んだ彼女は、こちらがびっくりするほど小さい。
いまにも折れてしまいそうな、よわよわしい感覚が掌に伝わってくる。
こんな少女を不安にさせていたのかと考えると、本当にすまないと思う。
でも、俺の心は決まった。
心が決まればすぐ告白するのが男の甲斐性ってもんだよな。

「ルーミア! 好きだ! 俺と付き合ってくれ!」
「え……」

ポケッとした表情のルーミア。
「精神的に幼い部分があるから」霊夢の言葉がこだまする。
彼女には、少し早かったか。

「嬉しい! わたしと付き合って!」

ポフッ

だが、一瞬の後、ルーミアが抱きついてきた。
ルーミアの返事は、了承。
想いが通じ合った後なら、この腕にかかる重みも格別だ。
その時、

パサッ

ルーミアの懐から、何か落ちた。
見たところ、紙袋のようだが。

「ルーミア、何か落ちたぞ」

すると、ルーミアは慌てて拾い上げ、

「はい、プレゼント」

いささか緊張の面持ちで、それを俺に渡してくれた。

「プレゼント? 俺に?」
「うん、そう」
「開けていいか?」
「うん」

ルーミアは、俺が紙袋を受け取るとすぐに俯いてしまった。
なんだか随分としおらしい。
そんなことを思いながら開けてみると、そこには1枚のマフラー。

「これ……」
「アリスに教わって一生懸命編んだの。
 初めてだから不格好になっちゃったけど、貰ってくれる?」

ちらちらとこちらに視線を向けるルーミア。
その瞳が不安の色に染まっている。
俺はそんなルーミアが可愛くて、

「ああ、……でも」

彼女の体を抱き寄せて、

「俺には少し長いから、一緒に巻こうな」

俺たちの首に、その赤いマフラーを巻きつけた。
と、急に、

ドドドドドドドドォォォォォォォォォーーーーーーーン

大きな爆発音。
湖のほうを見ると、氷が紅魔館からこちらへ向かって裂けて来ている。

「わはー、すごーい!」
「御神渡りだ! まさかこんなところで見られるなんて……」
「おみ、わたり?」

首をかしげるルーミア。

「神様が今、あそこを通っているんだ。こっちに向かって」
「じゃあ、きっとわたしたちを祝福しているんだね!」
「……ああ、そうかもな」
「なら、見せ付けてあげないと。恋人なんですよーって」

言葉は積極的だが、実際はおずおずと腕を絡めてくるルーミア。
いつの間にか雲が晴れ、明るい太陽がこちらを覗いていた。

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6スレ目>>765


「あのね、これ、あなたにもらってほしいの」


村のみんなと、村によく遊びに来る何人(匹?)かの妖怪と遊んだ帰り。
森の出口で振り返った宵闇の妖怪――ルーミア――がそっと差し出したものは、
なんだか甘い匂いのするへんてこな茶黒い物体だった。

「……これ、なに? えっと、食べ物?」
「そうよ? あら、わかんないかしら。
 女の子に恥ずかしい思いをさせるなんて減点対象ねー」

せっかく女の子が勇気を振り絞ってるのにダメねー怒髪天だわー、とか呟いていたが、
言葉ほど怒っている様子はなく、なんだか顔を赤らめてむしろ恥ずかしそうにしていた。
よく村に遊びに来る妖怪メンバーは、みんな“妖しい怪”などという呼称が滑稽に思えるくらい面白くって、
村のみんなと同じくらいバカでやんちゃで、しかも可愛い連中だ。
その中でもルーミアは一番可愛いと思ってる。
そのルーミアからの贈り物だなんて、これ以上なく嬉しかった。

……けど、これなに?


「これはね、“ちょこれーと”って言って、とっても甘くって美味しいお菓子なのよ」
「へー、これが貯古令糖か。ちょっと昔に幻想郷に入ってきたってじーちゃんが言ってたな。
 甘くって美味しいらしいけど、うち貧乏だからそんな珍しいモノ初めて見たや」
「それでね、えっと……外の世界の行事で、今日はバレンタインデーって言って。
 うふふ、あのね、女の子が、想いをチョコに溶かして好きな人に伝える日なんだって」

「私ね、あなたのことが好き」

うわ、わ。俺、一瞬で脳みそ沸騰した!

胸のあたりがばくばく言ってて、顔が熱くなって頭ん中が真っ白になって、
何か言った方が良いと思うのに、嬉しい気持ちを伝えたいのに、何も考えられない。
何もないのに何かを探すかのようにあちこち視線を彷徨わせているうちにふと、
顔を多分同じくらい真っ赤にしてこっちを見つめるルーミアと目があった。
と思うやいなや、にこっ、と目を細くして微笑んでくれた。
それを見た俺は、気付くと必死でウンウンと頷いていた。
それで、気持ちは充分伝わってくれた。

「わぁいっ、やったっ♪」

文字通りぴょんぴょんと俺の周りを飛び跳ねて喜んでくれるルーミア。
はいっ、食べてっ! と、元気よく突き出された手の平くらいの茶色い塊
――ちょっと溶けててべとべとする――を受け取り、ぽりぽりと口に含んでみr
「あまいいいいいい!」

びっくりするほど甘かった。

「そう言ったじゃないー
 んと、もしかして口に合わなかったかしら?」
「いや、かなりびっくりしただけ」

神妙な面持ちのルーミアを横目に、今度は落ち着いてゆっくりと口に含む。
舌でゆっくり転がすと、じんわりと体中に甘みが広がっていく。

「……うん。
 へー、猪口って美味しいんだな」
「美味しい!? ホント?」
「うん、ほんとほんと。上手に出来てるぜ」
「よかったぁ」

ほぅ、と胸をなで下ろすルーミアをみて、ちょっと意地悪がしたくなる。

「ルーミア食いしん坊だからな。
 作ってる途中にいっぱいつまみ食いしたんじゃないかぁ?」
「えー、そんなことしてないよー。
 ひどーい、私のことそんな風に見てたのー?」

意地悪そうに言ってみると、途端に頬を膨らませてむくれる。可愛い。
そっぽを向いたルーミアの肩を優しく回してこっちを向いてもらうと、ちょん、と、
ふっくらとしたルーミアのくちびるに自分のくちびるを触れあわせた。

「は、はぅ……」

胸のあたりに手を置いてボーっとするルーミアに向かって告げる。

「俺の気持ちを言ってなかったけど……俺はルーミアに好きだって言ってもらって嬉しい。
 俺もルーミアが大好きだ」
「う……うん! うん! うんっ!
 やったぁ! 私は○○のことが好きっ! ○○も私のことが好き!
 これってすっごく嬉しいわ!」

手を繋いでそこを支点にぶんぶんと回りあって喜んで、
今度はルーミアからくちびるを近づけてくる。
今度も短かったけど、

ちゅっ、ぺろっ

なめられた。

「うゎ」
「○○とのキス、甘~い」
「そりゃ、そうだよ……」
「もっとする~」

そう言って三度くちびるが近づき合う。今度は長く。

「ん~~っ」

れろれろと口の中をルーミアのちっちゃな舌が這いずり回り、
甘味の残りカスを舐め取っていくたびに酷くヘンな気分になる。
ルーミア、これが大人のキス(多分)ってこと、気付いてるのかなぁ……

もしかして大人に見つかったら怒られるかなぁ? って思ったけど、もうちょっとだけ。
もうちょっとだけ、こうしていようかな。

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7スレ目>>302


ルーミアと肩寄せ合って縁側でぼんやり月夜を見上げてるときに。

「四月ももう終わろうってのに、朝晩はまだ冷えるな」
ぎゅーっ
「えへへー、こうするとあったかいよ、○○!」

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うpろだ231


 >>答え③ 喰われる。現実は非情である。

答え ―――― ③ 



答え ③ 






答え ③






「答えは③か……現実は甘くねーな……ルーミアの食欲の……勝ちってとこか」

「わはー♪ おいしそうな ごはん、いただきまー…」


あばよ、みんな。


「……あ……あれ…?」

冗談抜きで答え③を覚悟した俺の前で、いきなりルーミアは前のめりに倒れてしまった。
そして、そのままピクリとも動かない。

「……な、なんだ?」

一瞬 誰か助けてくれたのかとも考えたが、すぐにルーミアが倒れた理由に気がつく。

「…夕日か」

そういえばルーミアは確か、日光が苦手だったということを聞いたことがある。
よく見てみると、崖の周囲はほとんど日陰になってはいるが、一か所だけ日なたになっている場所があった。

「なるほどな……あいつ、あの日なたに入っちまったのか。」

夕日と言えど、宵闇の妖怪にとっては毒だったのだろう。
しかし、日光の下に出たことにすら気付かなかったなんて、よっぽど腹が減っていたんだな……

「ぅー……」

ルーミアは、完全に目を回して ばたんきゅーしてる。
やれやれ……とりあえず命は助かったわけか。

さて……
目の前には俺を喰おうとしていた宵闇の妖怪が一人倒れているわけだが……
このまま夕日に当たらせていれば彼女は死にかねない。
どーしたもんかね?


うーん……


「やれやれ……しかたない、家に連れて帰って介抱してやるか」

このまま放っておいて死なれるのは寝覚めが悪いので、俺はルーミアを家に連れて帰って介抱してやることにした。
彼女が目を覚ました時に また襲われるかな と思ったが、家の中には妖怪対策として隠し通路や 魔術の心得のない俺にも使えるインスタントスペルカードとか 黒白の泥棒魔女対策として罠とかいろいろ作ってある。
気を付けていれば、喰われることはたぶん無いだろう。
そうと決まれば、善は急げ。
俺はルーミアを連れて帰るべく彼女を背負う。

「…軽っ」

女の子を背負うのは初めてだが、あまりに軽いのでびっくりした。
女の子って軽いんだな……いや、こいつだけ特別なのか? いつもふよふよ浮いてるし。

「んぅ……」
「!!」

眠っていたはずのルーミアが声を上げる。
ヤバイ、目を覚ましたか!?

「ん~……もう、食べられないよー……」

…………

ベタな寝言だなオイ……つーか、ひょっとして俺 夢の中で 喰われてんのか?
ルーミアの夢の中で喰われてゆく俺の姿に背筋が冷える。


連れて帰るのやめようかな……


一瞬、そう考えたが 男が一度決めたことを覆すのはどうかと思ったので、彼女が目を覚ます前にさっさと家に帰ることにした。
なお、家に帰るまでの間、背中で目を覚まされて そのまま俺の頭にかじりつかれることにビクビクヒヤヒヤだったのは言うまでもない。

 ・

 ・

 ・

「ふー」

家に帰りついた俺は、まずルーミアをベッドに寝かせた。
そして、水で濡らしたタオルを頭の上に乗せる。

「んぅ……」

相変わらずのんきにスースー寝息をたてて眠っている。
さっきよりも顔色は良くなったし、これならもう大丈夫だろう。


さてと……腹も減ったし夕食でも作るかな。


そう考え、ルーミアに背を向けた瞬間――――

「ごはんー!」
「!?」

いきなりルーミアが飛びかかってきた。
いくらなんでも起きるのが早すぎる。
こいつ、俺を油断させるために寝たふりしやがってたな!!
ルーミア……恐ろしい子…!

「捕まるかよ…っ!!」

完璧に不意打ちだったが、俺はルーミアの突撃を間一髪かわすことができた。

フ、『ルーミアから逃げ切れる程度の能力』は伊達じゃないぜ!


びたん!

「きゃうっ!」


ルーミアの突撃をかわすことによって、彼女の顔は壁に激突することとなってしまった。

「う~…痛いよぅー……」

赤くなった鼻を押さえ、眼尻に涙を浮かばせる。

「どうして いつも逃げるのー?」

ルーミアが恨めしげな目を向けながら言った。

「どうしてって…逃げなきゃ喰われるだろう?」
「あなたは、わたしに食べられるのは……嫌なのー?」
「当り前だろ。痛いのは御免だ」
「……」

まったく何を聞いてるんだか。
大方、こいつは一度も喰われそうになったたことがないんだろう。
だから、こいつは喰われる者の恐怖とか苦痛なんて知ったことじゃ――――

「……うぅっ……」
「は!?」
「ぐすっ……ふぇぇ……」
「ちょ、ちょっと待て! 泣くほどのことか それ!?」

正直、かなり驚いた。
まさか、泣かれるとは完全に想定外だった。

「やだ…やだよぅ……」

ルーミアがその場にへたりこむ。
そして、ぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら、言った。


「あなたが…大好きなのー……」


「は!!??」


だ……大好き!?


「お願い…わたしを…嫌いにならないでよぅ……」


いや、ちょっと待て なんだこの展開は。
「嫌いにならないで」ってことは「ごはん」として好きなんじゃなくて……

そして、今更ながらに妙な事に気がつく。


ルーミアはいつも“俺だけ”を追っかけてくるってことに。


みすちーを追っかけてる最中ですら、俺の姿を見つけると俺を追い回す。
つーか、それって お腹が空いていたからじゃなかったのか?


みすちーと話しているときによく現われていたのは、みすちーに対する嫉妬?

ただひたすら俺だけを追いかけまわしていたのは、彼女なりの愛情表現?

さっき、日なたに出ても気付かなかったくらい俺を追いかけたのは、そこまで俺のことが好きだったから?


「ちょ、ちょっと待て。じゃあ、いつも『ごはんー』とか叫びながら追っかけてたのは なんでだよ?」
「ぐすっ……好きな人に… どういうふうにしたら いいのか……わからなかったから……ぅぅ……わたし、黒白の魔女に聞いてみたの……」

ああ、よく俺の家に忍び込んではいろんなもの無断で持ち出していく 黒白の泥棒魔女か。
でも、あの魔女に恋の相談って、相談する相手を微妙に間違えてる気が ――――

「そしたら…そしたらね、『好きな人がいるなら…襲いかかって食べちまうのも手だぜ。』って…」


―――― あ の 黒 白 の 耳 年 増 ッ …!


ルーミアは魔女の言葉を言葉どおりに受け止めてしまったらしい。


……ってことは、今までルーミアにさんざん追っかけまわされてた元凶はあの耳年増のせいだったのか。

本当に悪いのは……大人びた話題に魂を売った黒白の耳年増だったんだ!


覚えてろよ耳年増……後で絶対  修 正 し て や る … !


耳年増への報復を誓った一方で、俺はルーミアは責めないでおくことにした。
ぽろぽろと涙を流し、嗚咽を繰り返すルーミアの側にしゃがみ、彼女の両肩を両手で掴む。
そして、子供に言い聞かせるように彼女の眼を見つめながら語りかけた。

「……あのな、ルーミア。とりあえず黒白の言ったことは信じるな。あの魔女は悪い子だから」
「……そー…なのかー…? ぐすっ…」

悪い子っつーか、ただの耳年増だけどな。

「あと、俺は別におまえのことが嫌いなわけじゃない」
「ほんと…!?」

ルーミアの泣き顔がみるみるうちに笑顔に変わっていく。
そして、俺は彼女の涙が止まるとともに急速に場の雰囲気が和んでいくのを実感していた。

「ああ、本当だ」

それにしても、ルーミアが俺のこと好きだったなんてな……
正直、俺を好きでいてくれることは嬉しいし、彼女はすごく可愛い。
……彼女が俺のこと好きだって言ってくれたときから、彼女に対する愛情がふつふつと湧き上がっているのも本当だ。
でも、俺を喰おうとするのがなぁ……

「あなたは……」
「ん?」
「わたしのこと……好き?」

一瞬、心を見透かされたようでドキッとしたが、俺は、俺の心のままに正直に言うことにした。

「ああ……俺を食べずにいてくれたら」

ルーミアは、少し考え込み。

「じゃあ、わたし あなたを食べない」
「……そっか…いい子だ」

そうして、俺はルーミアの頭を撫でる。
俺を喰わずにいてくれるなら、ルーミアとも これからは楽しくやっていけるだろう。

「えへへ……だからねー…」

ルーミアがいたずらっぽい表情を浮かべ、完全に安心しきっていた俺に飛びかかる。

「うぉっ!」

俺、『ルーミアから逃げ切れる程度の能力』を持っていたはずだったのにな……

今度は……逃げられなかった。





「捕まえた! ずっと、私を好きでいてね!!」





ルーミア Happy End「捕まえた!」

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うpろだ247


「○○ー」
「や、ルーミア」

僕が木の枝の上に座っていると、彼女が飛んできた。
真夜中の上に、彼女自身も闇に包まれているからいまいち見づらいが、
月の光と僕の目の良さもあってか、すぐに判別することはできた。
ルーミアは、そのまま僕の方に飛んできて、おもむろに僕に抱きついた。
僕も、そのまま飛び込んできた彼女の身体を受け止める。

「んー」
「相変わらず抱きつくのが好きだね、ルーミア」
「だって、○○がやさしくてあったかいから」
「あはは」

いつも通りの答えだった。
まぁ、だからこそ彼女らしい。
その小さな頭――まぁ、僕と大差ないぐらいだけど――を優しく抱きかかえた。
彼女だって十分にあったかい。

「今日は、何してたの?」
「今日はねー、人間食べようと思って追いかけてたの」
「それで?」
「巫女に見つかっちゃった。お札投げられたから逃げてきた」
「あはは、そりゃ災難だ」

よく見ると、確かにルーミアの服は破かれたり千切れたりしていた。
そこから覗く、白い肌。
本当に、食べたいと思ってしまうほどに。

「結局収穫ゼロだった。○○は何してたの?」
「僕?僕はね…」

「暇だったから、ここでずっとルーミアが何してるのか考えてた」

「…そーなのか?」
「うん」
「当たってたのか?」
「まぁ、大体予想通りってところかな」
「すごいな○○はー。まるで予知能力者なのか?」
「肯定なのか疑問系なのかはっきりしてくれないかな」
「そーなのかー」
「答えになってないよ」

そういうと、ルーミアは僕の胸に顔を埋める。
そして目だけを、僕の目に向けた。

「やっぱり、○○は良い子なのだ」
「そうかな?」
「だって、私のことこうやって抱きしめてくれてる。
私の話を聞いてくれる。私の傍にずっといてくれてる」
「僕がルーミアを好きだからだよ」
「私も、○○が好き」

ぎゅ、っと抱きしめられた。
その力は見た目の少女の姿に反して強く、下手をすれば人間なら死んでしまいかねないほどだ。
だけど、僕は自然に抱きしめ返す。
それが、彼女の望むものだと知っているから。

――カプ。

痛みが、僕の胸元に走る。
その痛みは一瞬で収まらず、ずっと、ずっと続くのだ。
紅い液体が僕の上着を、肉体を染める。

「○○」
「なんだい」


もし○○が死んじゃったら、私がその死体を食べてあげるからね。

ああ、僕もルーミアが死んだら、そうさせてもらうよ。


ルーミアが僕の胸元を貪り食っている姿が見えた。
いつのまにか、ルーミアの肩に噛り付いている自分がいた。

互いとずっと一緒に居たいから。誰にもくれたくないから。
僕たちは食し続けるのだ。
愛すべき同胞を。

死ぬまでは、少なくとも互いの味というのを知っておきたかった。
そうすればきっといつまでも互いと一緒に居られると思っているから。
互いの血肉を自分の身体に入れることで共に在ろうと思っているから。
それが僕たちの、毎夜の日課。

ルーミアの肉は、骨は、血は。僕の想像以上に美味だ。
でも、果たして彼女は僕の血肉をどのような味だと思ってるのだろうか。
僕にはわからないけれど。

彼女が満足そうに僕の血肉を貪る、可愛らしい笑顔が、全てを語っていたのかもしれない。

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最終更新:2010年05月15日 01:21