大妖精2
>>515
「ねえねえ大ちゃ~~ん」
「何?
チルノちゃん」
今日は紅魔館の方まで遊びに行っていたチルノちゃんが、大きく両手を振って私の名を呼びながら帰って来た。
程無く私の傍らに降り立つと、彼女はいつも以上にそわそわと落ち着き無く、一気に捲し立ててきた。
「今日あの紅い館に行ってみたらさ、何だか『十四日はばれんたいん』だとか言って盛り上がってたんだ。
ねえ、大ちゃんは『ばれんたいん』って何だか知ってる?」
「う~ん、何だろ……私も初めて聞いた」
最近出来た遊びか何かかな?
「だよねぇ……でもさ、あんなにみんな楽しそうだったんだから、きっと凄くいいものだと思うんだ。
あたい達もやってみようよ!」
「でも、どうするの? チルノちゃんも私も知らないんじゃ、どうしようも無いよ?」
当然の疑問だと思ったけど、それをチルノちゃんは両手を少し掲げて「はん」とか言って鼻で笑い、
「バッカだねぇ大ちゃんは。分からないなら、調べればいいだけじゃん!
……って、どうしたの大ちゃん? い、いきなり泣き出したりして」
「うぅ……ぐすっ……チ、チルノちゃんに馬鹿って言われた……ぐすっ」
「アンタ結構失礼ね!! こうしてやる!!」
――ぎりぎりぎりっっ。
「いっ、痛いよチルノちゃんっ。やめてやめて~~」
チルノちゃんの渾身のコブラツイストに悶絶してギブアップを訴えると、ようやく満足げに解放してくれた。
「ふっふん、やっぱりあたいが最強ね。……で、何の話してたんだっけ?」
「…………」
私、何でこの子と友達なんだろう……
…………
という訳で次の日、チルノちゃんと二人で『ばれんたいん』を調べる為に紅魔館を訪ねた所、
図書館の小悪魔さんが、一冊の本を借してくれた。
彼女とは、あまり顔を合わせる機会はないけど、悪魔の癖に私達に良くしてくれる、とても優しいお姉さんだ。
『バレンタイン?
そうね……一言で言うと、女の子が日頃お世話になっている男性や、好きな男性にチョコを贈る日なの』
『えっ……』
『は? 何それ。何でそんな事でみんな盛り上がってるの?』
『う~ん……今のチルノちゃんにはちょっと難しいのかな……大ちゃんはどう?』
『ええっ。わ、私っ?』
『……あらあら。大ちゃんには思い当たる所があるのね。
羨ましいわ、このこのっ』
『や、ややややめて下さいっ』
『え~~っ、何それ。大ちゃんだけずる~い!』
『あはは、きっとチルノちゃんにもいつか分かる時が来るわよ。
それじゃ、この本に成り立ちとかやり方とか書いてあるから、二人で読むといいわ』
『あ、ありがとうございます』
『頑張ってね、大ちゃん。チルノちゃんはあんまり頑張らなくていいわ』
『な、何よそれ~~!!』
『どうもありがとうございました、小悪魔さん。
ほ、ほら行こうチルノちゃん』
そんな遣り取りを経て小悪魔さんが貸してくれたのは、『二月の行事大全 ~煉獄の燻ぶり編~』という本だった。
真っ黒な羊皮の表紙に、大きなハートマークを髑髏頭の死神さんが今にも鎌で切り裂こうとしている絵が描いてある。
「……何だか凄い表紙だね、チルノちゃん……」
「そう? 格好いいじゃん。
……へぇ、二月だけでも結構色んな事があるんだ。えっと……バレンタインは、十四日だったっけ」
「そうね。えぇっと……あったあった。これだね」
割と簡単に見つかったバレンタインの項目を、チルノちゃんとやいのやいの喋りながら読み進めていく事にした。
…………
「……結局、あたい達があげるチョコの分、損するだけじゃないの? これって」
一通り読み終えてそんな夢の無い感想を述べ、チルノちゃんは本を一人で取り上げて他の項目を読み耽っている。
だけど、私は……
いつもは紅魔館の外回りを担当していて、よく私達と遊んでくれる一人の男性を思い浮かべていた。
…………これって、チャンスだよね。
「あ、あの、チルノちゃ……」
「あ~~~~~っっ!!」
相談しようとしてチルノちゃんにかけた呼び声が、当人の突然の大声に掻き消されてしまった。
「わっ。ど、どうしたの? チルノちゃん」
「あ~もうっ。この節分って行事、すっごく面白そうなのにさ。もう終わっちゃってるのよ」
「そ、そう……」
そう言ってチルノちゃんが指し示したページを、ざっと流し読んでみる。
そのページの挿絵では、子供達が投げつける炒り豆が鬼の全身を蜂の巣にし、一つの真っ赤な肉塊に変えてしまっていた。
「…………確かにチルノちゃん、こういうの好きそうだよね……
そ、それよりさ。あの、私……」
「あっ、そうだ!!」
「…………」
何でこの子、いつも私の話を聞いてくれないんだろ……
「どうせなら節分とバレンタインと、一度にやっちゃえばいいじゃん!!
やっぱりあたいってば、頭ったまいい~~」
「えぇっっ!?」
やっぱり小悪魔さんの言う通りだ。
……チルノちゃんが頑張ると、大抵ロクな事にならない……
…………
さて、今日は楽しいバレンタイン。
館の人達からそれなりの数の義理チョコを頂戴して、上機嫌のうちに今日の仕事も無事終了、と。
「…………ん?」
美鈴さんに業務終了の許しを得ようと門前に赴いた所、
何やらとんでもない数の妖精達が館に詰め掛けてきており、美鈴さんが途方に暮れている様子だった。
「……何だありゃ?」
眉を顰めてそうごちた瞬間、突然チルノが俺の方を指差し、大声を上げた。
「ああ~~っっ!!! 居たー――――っっ!!!」
そのチルノの怒号を号令に、
「「「わああああっっ!!」」」
――ずどどどどどどどどどっっ!!!
妖精の大群が、俺目掛けて突貫してきた。
「なっ、何だ!?」
先頭を切って走って来たチルノが、何やら石飛礫のような物を振りかぶる。
「ここで会ったが百年目!! 喰らえ、鬼は~~~~外!!」
十一日遅れの掛け声と共に、投げつけられた飛礫が俺の脇腹にヒットした。
「あ痛っっ!! な、何しやがるいきなり!!」
うろたえて脇腹に付着した汚れを見てみると……
「チョ、チョコ?」
「そうよバレンタインチョコよ!! 嬉しいでしょ!!」
「う、嬉しくないわっ、このど阿呆!!」
こんなバイオレンスなバレンタイン、聞いた事無いっちゅうねん。
チルノとアホな遣り取りをしている間に、あっと言う間に妖精達に取り囲まれて、チョコ飛礫の集中砲火を浴びる。
「い、痛てっ、痛ててててっっ!!! マジ痛いっ!!」
「それそれっ、みんな続け~~!!」
可愛いナリして、流石は人外。
100マイルオーバー、超メジャー級の豪速球が、次から次へと俺の体に叩き込まれる。
バ、バレンタインの日に、いつも仲良くしている妖精さん達にこんな仕打ちを受けるなんて……!
「……く、くやしい!…………でもっ……」
未知の快感に身を委ねたまま俺は、自分の意識が徐々に遠のいていくのを感じたのであった……
…………
「……あ、あ痛たたた……」
ようやく気絶状態から目を覚まし、上体を起こそうとして……
「あ、駄目ですよ。急に起きちゃ」
そんなやわらかな声と共に、小さな手の平でおでこを再び抑えつけられる。
程無く、後頭部に柔らかな感触。
見上げれば、よく見慣れたあどけない面立ち。
「なあ大ちゃん……これって」
「は、はい……」
所謂、膝枕という奴だ。
「あの……嫌ですか?」
「いや……いいかな? もう暫くこのままで」
「……風邪引きますよ?」
「大丈夫。大ちゃんの太腿、あたたかいから」
「う……」
日は傾き、空は茜色。
湖のほとりの原っぱで紅色の逆光を受け、ほのかに頬を赤らめた愛くるしい童顔が、俺の顔を上から覗き込んでいる。
「なあ。俺、どれくらい寝てた?」
「30分くらい……かな?」
「……あいつらは?」
「あの後すぐに帰っちゃいました……」
「そっか……」
赦すまじ、ど腐れ妖精団。
一ヵ月後の三倍返しを、楽しみにしておくといい。
怒りの業火を胸中で燃やしていると、大ちゃんがいかにも申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「あ、あのっ、ごめんなさい。
止めようとはしたんですけど、みんな全然言う事聞いてくれなくて……」
「いいよ。大ちゃんは参加してなかったんだろ?」
俺を取り囲んだ憎っくき軍団に、彼女の姿は無かった筈だ。
「は、はい……私の分は、此処に……」
そう言って大ちゃんは、懐からチョコの飛礫を取り出した。
「…………」
「…………」
温く流れる、こそばゆい沈黙。
堰を切ったのは、彼女のか細い問い掛けだった。
「あ、あの……今日って、その……バレンタインデー、ですよね?」
「ああ、何を今更」
「……その、私のチョコ……受け取って貰えますか?」
何処かいつもと温度の違う、思い詰めたような真摯な眼差し。
数瞬の逡巡を経て、俺の返した答えは。
「……うん。大ちゃんのチョコ、欲しいな」
「ほ、本当ですかっ!?」
「嘘言ってどうするんだよ……うん、欲しい。他の誰より、大ちゃんのチョコが欲しい」
「…………ありがとう。嬉しいです……
そ、それじゃその……目を、閉じてくれますか?」
「? いいけど」
言われるままに、両の目蓋を下ろす。
ほんの数秒、躊躇うような、上気した息遣いが彼女から流れ……
――――ちゅっ。
……唇に、柔らかな感触。
「っ!?」
驚きに全身の筋肉が弛んだ隙に、唇と前歯の隙間に小さな舌が捻じ込まれ、
そこから流し込まれてくるのは、彼女の体温で蕩けた、甘い甘い褐色の溶岩。
……見かけによらずこの子、随分大胆なのなぁ……
「…………ん…………っ、ちゅ……」
唇から全身に広がる甘い痺れに応えるように、こちらも舌を蠢かす。
俺の気持ちが余す所無く彼女に伝わるように、チョコごと彼女の舌を丹念に吸い上げる。
……たっぷり数分間お互いの口中を味わったところで、ようやく二つの唇が、飴のような橋を架けながら静かに離れた。
「ぷはっ……」
「ぷはっ…………なあ大ちゃん……何処でこんな事覚えてきたの?」
「い、いえ……その、ただ私がこうしたいなぁって……」
「そ、そうなのか……」
恐るべし、大いなる自然に育まれし妖精の本能……!
穢土に於いて育まれた俺は、その無垢なる獣性に抗う方法論を、一切持ち合わせていなかった。
「あのさ。順番が無茶苦茶になったけど、俺……君の事、好きだよ」
「……はい、私も……私も貴方の事、ずっと好きでした……」
肩口に掛けられた彼女の両手が、ぎゅっと抱きしめるように柔らかく締まる。
「…………あの」
「何?」
「実は…………チョコが、もう一粒あるんです」
「……そっか」
…………さあ、もう一度言ってみよう。
恐るべし、
大妖精……!
・
・
・
・
・
・
・
「ううっ……何であいつ等、私達から見える所であんな凄い事してるのよ~~」
「と言うより門番長、向こうからして私達が眼中に無いだけのような気がしますが……」
湖から流れて来る冷たい風が、肌を深々と刺す。
春も間近い、そんな冬の末期の寒空の下、一組の人間と妖精の居るあの辺りだけが、何故かぽかぽか暖かそうだった。
「く、まさしくアレは、世界最強の気孔術……『恋の温度』!!」
「門番長……少しは脳味噌使って喋って下さいよ……」
「……冷静にツッコまないでよ…………あぁ、それにしても寒いわね……」
「はい……寒いです……」
今日も紅魔館門番隊の仕事は、容赦無くスパルタンを極めていたのであった……
4スレ目 >>476
ふと空を見上げたら大妖精がいてさ、スカートの中見ちゃったんだよ。
そしたらその大妖精が降りてきて
「せ、責任とってお嫁に貰ってください……」
って言うわけよ。
割と仲はいいほうだったけど、まさかそんな事言われると思ってなかった俺は当然慌てちゃってさ 、
「……え? は、はぁ……」
みたいに返してそのまま通り過ぎようとしたら
俺のシャツをチョコンと指で掴んでずっとついてくるのね。
そんでとうとう家までついて来ちゃってさ、
「は、はじめてですけど覚悟は出来てます……」
とか真っ赤な顔で俯いて言うわけよ。 マジで可愛すぎ。
俺もう理性が吹っ飛んじゃって。
部屋に入った途端、いきなりギュっと抱きしめちゃって、その柔らかい感触を
12スレ目>>122
大妖精「あれ?〇〇君、チルノちゃん見なかった?」
〇〇「ん?チルノ?ここ数日見てないなぁ、どうしたんだろ?」
大「そうなんだ。ねぇねぇ、チルノちゃんとはどこまでいったの?」
〇〇「ど、どこまでって?」
大「付き合ってるんでしょ?手はつないだの?キスはしたの?」
〇〇「付き合ってるって言うのかなぁ。手はつないだことあるよ。たまに腕にしがみ付いてきたりほっぺにチュウしてきたりするけど…。」
大「そ、それ以上は?」
〇〇「ぶっwwwそれ以上って、ないない。」
大「そうなんだ。あの、〇〇君、私のお願い聞いてくれる?」
〇〇「え、何?」
大「チルノちゃんとは今まで通り付き合ってて良いから、その、私と‥‥私とも付き合って。」
〇〇「え‥‥‥それってどういう…。」
大「チルノちゃんと付き合ってるんでしょ。その関係はそのままでいいの。ただ、裏の存在でも良いから私と付き合って。チルノちゃんが居ない時だけでも良いから私の事構って。」
〇〇「き、気持ちは‥‥嬉しいけど、チルノに隠れてそんなことするのは‥‥‥。」
大「わかった、それならチルノちゃんにも言って三人仲良く付き合いましょう。それなら隠してる事にならないよね。」
〇〇「え…あ‥‥そ、それは、まぁ…その…。」
大「チルノちゃ―――――――ん!どこにいるの―――――――!?」
〇〇「えっ!?ちょっ!」
数分後
チルノ「何よ!急に呼び出して。あっ〇〇!〇〇――――ッ!!」
大「ほら〇〇君を見つけて喜んでるよ。」
チルノ「どうしたの?二人して。」
大「チルノちゃんは〇〇君の事好き?」
チルノ「うん、大好き!」
大「私も大好きなの。だから三人でもっと仲良くなりましょうよ。」
チルノ「三人で?」
大「二人より三人の方が楽しいでしょ?だから三人で付き合うの。」
チルノ「うん、わかったぁ。三人で付き合う。」
〇〇(チルノは意味が分かってるのか?)
この日から〇〇、チルノ、大妖精の奇妙な共同生活が始まる
大(ふふ、いずれは〇〇君の全てを私の物に‥‥‥。)
最終更新:2010年06月01日 01:54