チルノ5
うpろだ270
「さむ……」
朝起きて最初の感想がそれだった。今は冬。寒いのは当然だが、この廃屋でそのままだと凍え死ぬので十分な防寒対策はしてある。だが、それでもこの寒さはなんだ。どっ
かスキマ風でもはいってるのか?あ、スキマ妖怪は呼んでないからくるなよマジで。
できるだけ厚めにしてある布団をはいで……原因解明。
「すぴー……」
布団にいつの間にもぐりこんだのやら、水色の少女が隣で寝ていた。髪、服共に水色で、白い肌。背中には氷柱を思わせる羽が生えている。
チルノ。この氷の妖精の名前だ。
こいつがよく遊んでいる湖の近くに立っていた廃屋に住み着いた俺はこいつと出会い、まぁそこそこ知り合いにはなっているのだが……
「うりゃ」
「ふげっ」
そんなことはどうでもいいとして、まずはどかす。布団から蹴りだすとチルノは変な声を出して転がった。うむ、これで少しはマシになった。
「いったた……な、なにすんのよー!」
蹴られた腰をさすりながらおきるさまはさながらババア。声に出せば氷の塊が飛んでくるので言わないが、まぁとりあえず怒っているようだ。
「お前ね、寒い」
「極端!?」
これ以外言いようがない。年中クーラー状態のこいつが近くにいると、夏は超快適なのだが、冬はまさに地獄。そこら辺が難しいんだよ先生。
「てか、何でお前俺の布団の中にいるんだよ」
「うっ、それは、その・・・あ、あんたがそんな暑っ苦しいものかぶってたから熱いだろうなぁと思って涼めてやったの! 蹴るんじゃなくて感謝しなさいよ!」
最初口ごもったと思えばまくしたてるようにそういいたててきた。いやまぁ確かに布団は寒さをしのぐために厚目にはしてあるが……まぁチルノから見れば熱いのかもしれん。
「まぁ感謝はしてやろう。だが好意が殺人事件に変わることだけはやめてくれ」
こちとらただの人間だから脆いんですよ。まぁ最近紅魔館の門番に気の使い方とか、拳法とかならって頑丈にはなったと思うけど。
「で? またいくのか?」
「もち!」
「はいはい……」
寒いのになぁ……などとため息をつきつつも、服を着替えて準備する。俺が寝巻きを脱ぐとチルノは何かをわめきながら外へ出て行った。ふむ、異性の意識はあるようだ
な、見た目餓鬼だが。
やってきたのはいつもの湖―――だが。今は風に揺れる水は見えない。
見えるのは、この凍えるような寒さに凍りついた氷の膜だ。まぁつまりは、冬になって湖が凍ってしまったという話。
「きゃははは!」
湖からチルノの笑い声が聞こえる。チルノがなにをしているかというと、スケートだ。
チルノの靴の底に氷で作ったスケート板をはりつけて、滑る。当初チルノは靴だけで滑っていたのだが、どうもやりにくそうなので俺がスケート靴のことを教えてやった
のだ。チルノは氷の妖精であり、「冷気を操る程度の能力」をもっているから、氷を好きな形に作り出すことができるのだ。
形は俺が図に見せてやった。……うろ覚えだけどそう違いはないはずだ。
チルノはスピードスケートよりも、ほら、あれ。トリプルアクセルだとか、あっちの踊りみたいなほうが得意らしい。オリンピックとかあまり興味なかったからよく覚えてないんだよぅ。
最初は歩くのも精一杯だったが、毎日やり続けたおかげで今はもうかなり上達している。やっぱ、どこか人間とは身体能力が違うんだろうな。飲み込みの速さがすごすぎる。
でまぁ、俺はというと。
「あんたすべんないのー?」
「寒いから遠慮する」
湖の淵で焚き火を炊き、その隣に座って暖まり中。俺寒さに弱いんだよこれでも。スケートも実は下手だから、こけたら余計寒い。そして痛い。
「つまんないじゃーん」
「うっさい。寒いの苦手なんだよ俺は」
「へたれー」
「黙れ餓鬼」
「餓鬼言うなー!」
性格のためか、チルノは手が早い。大抵はやり返すが、弾を投げられたら俺には打つ手がない。ブンッと何かを投げるモーションをすると、突如氷の塊が現れ俺に向かっ
てくる。最初はあたりまくっていたのだが、何度もやられれば慣れてくる。俺は体をそらすことでそれを避けた。
ゴンッ、という音がしたが、木にでもぶつかったのだろう。
「へたくそー」
ハハハ、と笑いながらチルノを挑発。挑発に乗って弾幕―――と思ったが、それはなかった。見るとチルノの顔には驚愕の色。そしてなにやら、俺の後ろから威圧感。
恐る恐る振り返ると……なんか、俺の身長並みにでかい、蛙がいた。
その頭にはでっかいたんこぶ。どうやらさっきの音は、こいつに氷の塊が当たった音らしい。……ていうか、蛙って確か冬には冬眠するんじゃ……?
「ゲコッ」
蛙は俺に気づいてないらしく、元凶のチルノのみを見ている。その目には怒りの炎が見えた……気がした。
一鳴きしてから、ピョンと蛙らしいジャンプをして、俺の真上を通過してチルノの前に仁王立ちする。それに気圧されたのか、チルノは一歩足を後退させた。
「じ、上等よ、今は冬、冷気が高く、水にもぐれないあんたなんかあたいの目じゃないわ!」
ビシッと指さして宣戦布告するチルノ。足をグッとこらえてそれ以上後退することがないよう踏ん張っているのはなかなかの頑張りようだ。
なんでも、この二人(二匹?)は仲が悪いらしい。チルノはよくこの辺りの蛙を氷付けにしては、湖の水で生き返らせるなどという、微妙にえぐい遊びをしていたらしい。
それにここの主兼蛙の親分であるこいつが怒り、チルノをこらしめたらしい。それにチルノも怒って何度も挑戦しているとか。
聞く分にはチルノが一方的に悪いのだが、それを認めるほどチルノは聞き分けがよくない。悪く言えば子供なのだ。ちなみに今のところ全敗中らしい。
蛙が動く前に、チルノが動いた。スケート靴を最大にいかし、蛙の周りをぐるぐると回るように氷の上を滑り出す。それでかく乱させるつもりらしい。チルノにしては頭脳的な作戦である。
その作戦は効いているようだ。蛙は氷の上では思うように動けないらしく、動こうとしない。まぁ水かきの手足では氷の上では滑るだろう。―――これは、いけるか?
チルノも自身の勝利を感じてか、口元に余裕が見える。
だが、それが崩された。
突如蛙が右の前足を振り上げたと思うと、一気にそれを足元の氷めがけて打ち据えたのだ。尋常じゃない音が響き、辺りが揺れる。チルノもさすがに動きを止め、転ばないように踏ん張っていた。
揺れが収まるのは一瞬だったが、変化は徐々に現れた。蛙が打ち据えた場所から氷に皹が入っていくのだ。それが湖全域に到達した瞬間、
氷が皹に沿って割れた。
「うわっ、ちょっ」
丁度皹の間に立っていたチルノは、両足が別々の方向に動くのを慌てて片足を上げることで回避。だがそれは間違い。危ないなら飛べばよかったのだ。
ビシッとチルノの体を支える片足に伸びる何か。それは、蛙の舌。動きの止まったチルノに狙いを定めた蛙が、自身の長い舌を伸ばし、チルノの足を絡め取ったのだ。
「やば……!」
気づいたときはもう遅い。チルノは蛙を軸に、そのまま振り回された。チェーンハンマーの先の鉄球のごとく振り回されるチルノ。あのまま地面、もしくは氷のなくなっ
た湖に叩きつけられればただではすまないだろう。チルノの力じゃあれを抜けるのは難しいと見える。なら、どうするか。
「しゃぁない……」
―――第3者が手を出すしか方法はあるまい。
「くそがえるー!」
俺の叫びに蛙が驚いたように俺のほうを向いた。あいつは俺の存在に気づいていなかった。だから、この奇襲は最も有効。一番手近に浮いていた氷の塊を素手で掴み、あいつめがけて投げる!
さっきチルノの弾が直撃したときと同等の鈍い音を立ててそいつの顔面に命中。のけぞった拍子に力が抜けたのか、チルノが舌から介抱されてポーンと吹っ飛んだ。方向は、ラッキーなことにこっちにきた。
「チルノ、飛べ!」
俺の真上を通過しようとしたチルノに叫ぶ。既に飛んでいるが、自力で飛べという意味だ。理解したのか、空中で体制をたてなおし、静止した。が、振り回されて目でも回ったか、ふらふらと落ちてきた。
「っと」
丁度チルノが落ちてくる地点に先回りし、地面に落ちる前に受け止めてやる。少女は軽く、冷たい。まるで死んでいるかのような氷精の少女だが、息をしていることが生きていることの現われだった。
「ん……ぅ……?」
まだ焦点が合ってないだろう目をチルノが開ける。それを確認してから俺は少女を地面に横たわらせる。
―――刹那、体がまるで強力な磁力に引き寄せられるかのように足から引っ張られた。
原因は、蛙。奇襲をかけた俺に矛先を変え、チルノと同じ目にあわせようという魂胆だろうよ。だが、そう簡単に思い通りにはなってやらない。
「ゲコ!?」
落ちていたツタを木に結びつけ、それを握って引っ張られないように既に細工をしていたのだ。俺が既に細工をしていたことにでも驚いたのだろう。そんな鳴き声を出し、ツタごと俺を引き寄せようとする。
俺も引き寄せられないように力を込める。正直かなり痛いが、ここは男の頑張りどころだろう。足がもげそうなほどの痛みを必死に堪える。後、少し ―――!
グッと更に力が増した。―――今!
パッと手を離し、グンと引き寄せられる。お笑い芸人がたまにやる口にゴムの端をくわえ、もう片方を引っ張り手を離すと加えてる人の顔面にヒットするあれを思い出し
てもらうと手早い。たとえが悪いが、あれが一番早い。そして俺は、今手を放された側だ。
奴自身が加えた引き寄せる力に逆らわず、奴めがけて飛んでいく。驚いたあいつは動きが固まり、逃げることはできない!
「必殺! バイクには乗ってないけどライダーキイイィィィック!!」
向こうの世界で好きだった特撮ヒーローの技名を叫びながら奴の顔面に炸裂する飛び蹴り。その威力は十二分に発揮され、奴は俺を捕らえる力を失い、そのまま3メートルほど飛んで湖の水に落ちた。
「ふ……決まった……」
ツル
「ぜ?」
何が起こったか説明しよう。かえるを蹴り飛ばし、今まで蛙がいた氷の上に着地しようとしたのだが、その氷が蛙の粘液も合わさってかなり滑りやすくなっていたのだ。よって俺の足は思いっきり滑り、
ドボン。
俺は泳ぎは下手ではない。むしろ得意と自負もできる。だが泳ぎというのは水の中で行うもので、主に夏行うものだ。今は冬。湖の水が凍るくらい。当然水温は無茶苦茶
低い。いきなりの温度変化に体が麻痺してしまったようで、体がうまく動かない。―――まぁつまり、溺れてるわけなんです。
「あぼがぶべぼばばばばば!」
慌ててしまったが最後、必要な酸素が全て泡となって消えていく。変わりに水を吸い込み、胃だけではなく肺にまで入ってくる感覚。吐き出そうとむせれば余計に入ってくる悪循環。
必要な酸素が足りずに、意識が薄れていく。悪あがきをする気力もなくなり、全てを水の流れにまかすしかなくなってきた。体が湖の底へと沈んでいく。
最後に聞いた音は、ドボンという水音だった気がする。
目を開けたら、そこには見慣れた天井。木造のぼろっちぃ我が家だ。どうやら俺は、いつの間にやら自分の布団で眠っていたらしい。
体を起こそうとすると、頭の奥で地鳴りがするような鈍痛。おとなしく寝たままになっておく。
そういえば、俺はいつ寝たんだったか・・・その答えはすぐ思い出した。
「……なんで生きてるんだ?」
そこが疑問だった。あれから俺は自力で湖から出た記憶はない。ならどうやって……
「ん……?」
足元になにやら重圧を感じて上半身を起こして見る。また鈍痛が響いたが今度は無視だ。
「ぅ~~……あつー………」
何やらうめいている物体発見。暖炉の熱のせいか、汗をかいているようにみえる。というか、これで熱いらしい。さすが氷精。
……そろそろ素直に現実を受け止めよう。どうやらチルノが俺を助けてくれたようだ。助けようとして助けられる。うわ、かっこわりー。
「ぅ~~…………ぅぅ?」
自分のへたれ具合に悶えていると、チルノがおきた様だ。無意識だろうか、自分の手を団扇代わりにして顔をあおぎながら辺りを見渡す。どうやら寝ぼけて現状を理解していないらしい。
視線がいくらか部屋の中を彷徨った挙句、最後に俺の視線とぶつかった。
「……よ、よぉ」
しばらく沈黙が続き、耐えれずにそう声をかけてみた。
「……生きてる?」
「多分」
なにこのやり取り。反射的に答えておきながら、なんとも頼りない返事をしたもんだと思う。
「……この、バカーーーーーーーーーー!!!」
「うおぉ!? 冷たい!寒い!離れろ!そしてお前にバカと言われる筋合いはない!」
いきなりタックルをかましてきたチルノに俺が悲鳴を上げる。今気づいたが、どうやら俺は服を着ていないらしく、チルノの冷気が直接肌に触れるのだ。これはマジで寒い。
だがチルノは一向に離れる気配がない。おまけに……
「ぅっ、ぐす……ひぐ、ずずっ、ふぐ、ぐす……」
マジ泣きしてる。チルノの冷たい涙が、凍らずに俺の胸に落ちて流れる。それがまた冷たくてやばい。こらそこ、酷いとか言うな。こっちは死活問題なんだぞ。
「バカ! 死んだかと思ったじゃんか!」
「うん、俺も。というかお前にだけはバカとは言われたくないんだが」
「あんたのほうがバカだー!」
「にゃ、にゃにをー!?」
こ、こいつよりバカだと!?ありえん。いや、あってはならない! そこ! 軽蔑の眼差しで見るんじゃねぇ!
「てめ、人が助けてやったのにその態度は何だ!」
「誰が助けてなんて言ったー!?」
「そういうか! お前あのままだったら食われてたね。蛙に食われてたね」
「へんっ、あんな奴あれから返り討ちにしてやったよ!」
「そうはみえんかったがねー」
ギャーギャー騒ぐチルノと俺。これが「外」だったらきっと近所迷惑で苦情もきただろうが、ここだとその心配はない。夏だと妖怪が寄ってくるから、気をつけろ(長井秀和風)
「てか、別に俺が死んでもお前は困らんだろ」
「困るよ! すっごく困る!」
「俺が好きだからか?」
「そうだよ! あんたが好きだから…………………」
正しく氷のごとくピシっと固まるチルノにニヤリと笑う俺。誘導尋問大成功。
自分の失態に気づいて瞬時に顔を真っ赤にするチルノ。よく見ると湯気も上がってる。いや、水蒸気か。恐らく自分の体温で解けてるんだろ。……不憫な。
「な、な、なななな………」
「何で知ってるか?」
一瞬何かを堪えた風を見せたチルノだが、観念してかコクリと首肯した。
「ふ、ならば教えてやろう。お前の今までの態度。実は外の世界では名称がついているのだ」
「名将?」
「……名称。名前のことだよ」
なんでそっちを知っててこっちを知らんのだ。てかよく違いに分かったな俺、読みは同じはずだ。
「お前の態度はツンデレと呼ばれていてな、他人と一緒のときはツンケンな態度をとり、二人きりのときはデレッとした態度になることだ」
「い、いつあたいがそんな態度―――」
「たーだーし。大抵そういうやつは素直じゃないのだよ。互いの気持ちが通じ合って初めてそいつはデレっとなるのだ」
こいつはほぼその典型的な例だ。俺が寝てる間に布団にもぐりこんだのは、実は1回や2回ではない。たまに結構入ってきてるのだ。まぁそのたんびに凍死しかけてるん
ですがね俺は。気分は雪女にたぶらかされた男。……訂正、雪小娘。雪女はどちらかというとレティだな。あれ冬の妖怪だし。
俺はギャルゲーの主人公のような鈍感ではない……はずだ。幼馴染とか、昔からそういうことをしてきたー、とか、そういうやつならまだ気づかないかもしれないがね。
「……ていうか、知ってたなら言えー!!」
「うおっ、気づかれた!?」
ちぃ、バカの癖に頭がそこまで回りやがったか。確かに、チルノの想いに気づいてたなら俺から言い出してやればよかったのだが……
「いやまぁ滅多な機会じゃないし、チルノの初々しさっぷりを堪能しようとな」
「~~~~~~~っ!!?」
「うおっ、まてっ、家の中で弾幕はやめろ!」
飛んでくる弾を必死でよける。壁の木に当たった氷は砕け落ちるが、木にダメージが行っている。穴が開きませんように……!
「バカ! もう知んないからね!!」
さすがに今の俺の答えには怒ったらしく、一通り弾幕で俺を痛めつけると出て行こうとした。
だが、それは困る。だって、
「まだ俺は答えてないぞ」
「え……?」
俺はあいつの想いにまだ答えを口にしていない。でもまぁ、迷うことはない。もう決まってるし。
「俺も好きだから。……感謝しろよ? お前みたいなバカを好きになる物好きなんてそういないからな」
「誰がするかー!」
がー! っと飛び掛ってくるチルノを避けずに受け止める。俺が避けなかったことに驚きでもしたか、そのままポフっとチルノは俺の胸にぶつかった。そのまま腕で、チルノが離れられないようにする。
「……ほんとに?」
「あぁ」
「嘘じゃないよね?」
「冗談は言うが嘘は突かない主義だ」
時と場合によるけどな。……俺も素直じゃないなぁ……
上目に聞いてくるチルノの問いに答えながら、自分に苦笑をしていた。やはり俺はへたれらしい。……自分で認めてしまった……
「……なにやってんの?」
どうやら表情に出ていたようだ。苦笑したと思えばいきなり顔だけ悶える俺は、きっと見るに耐えない変質者っぷりだったのだろう。
「いや、ちょっと自分の中の葛藤と戦っていたのさ」
「かっとう?」
「まぁ気にするな。……で、だ。お前は俺が好き。俺もお前が好き。Do you understand?」
「でぅ、でぅーゆー………?」
しまった、バカに英語は分からないか。名前が横文字の癖に。
「つまり……」
「んむっ!?」
チルノの驚き声が未完成に上がる。そりゃそうだ。声が出るべき口を俺がふさいでるんだから、俺の口で。マウストゥーマウス。つまりは、キスってやつだ。
「こういうことしてもいいわけ。オーケー?」
「……はふ」
いきなりのキスにチルノの頭が茹で上がった。妙な吐息を吐いてボーっとしている。溶けるぞ?
「うおーい、チルノー。水になるぞー」
「嫌よ!」
おお起きた。カッと目を開いて反応し、すぐさま俺を睨みつける。顔が真っ赤なので威力はなしだ。
「な、なにすんのよ!」
「嫌だったか?」
俺の真剣な目にチルノは言葉を詰まらせる。そのまま軽く目を逸らして言葉を捜すように口ごもる。
「嫌、じゃ……ないけど……」
「ふむ、よかった。あれで嫌がられたら死んでたね俺」
「えっ!?」
死ぬとまではいかずとも、まぁショックで2,3日寝込んだかもな。俺の冗談にチルノは過剰に反応していたが。
「い、嫌じゃないよ! ていうかその……嬉しかった」
俺の冗談を真に受けたせいか、いきなりそんなことを言ってくるチルノ。……いかん、なんかいきなりそんなしおらしくされると、いつもとギャップが激しくて滅茶苦茶
かわいく見える。おまけにそんな嬉しい台詞を言われたは俺の中の妖怪(本能)が暴れだしそうだ。
「チルノ……もっかいしていいか?」
「………うん」
よくよく考えたら、我慢する必要もないか。俺はチルノの許可を得てから、その口にもう一度口付けた。
それから……
「それでそれで? 今はもう完全ラブラブなんです? あ、これもう死語でしたね」
なんか自称天狗に付き纏われるようになった。メモ帳片手ペン片手に何度追い払ってもやってくる。なんでも新聞を作るネタがほしいとのことだが、なんで俺たちを題材
にしたいのかがわからん。全く、俺とチルノの愛の巣に殴り込みとは不届き千万な。
「そりゃもう。実はな、チルノはごにょごにょ……」
「ふむふむ……」
「ってこらー! なんかモノローグとやってることがちがーう!!」
聞こえていたのか、怒りながら文字通りすっ飛んでくるチルノ。というかなぜ俺の心の声を。
「だってな、即効返すならネタ提供してお帰り願ったほうが安全かつ平和的かつなにより俺とチルノの熱愛度を世間に広げることが出来るだろうが」
「広げるな!」
「おまかせを。幻想郷の誰もが私の文文。新聞を眼にすれば、あなたの願いは叶えられます!」
「おぉそうか! で、チルノの弱点はごにょごにょ」
「おぉ、そんなところが」
「聞けー! てかあたいのことばっかじゃん! しかも何恥ずかしいこと教えようとしてるんだー!」
ガー! と怒り狂うチルノが面白くて可愛くてやってるのは内緒だ。
10スレ目>>320
「よう蝦蟇の爺さん、久しぶりだな」
「おお、山椒魚の、元気にしていましたか?」
「まぁなんとか、大陸の連中が入ってきてからは漢方薬にされちまってるよ」
「ははは、それは笑えない」
「いや笑ってるじゃん」
俺は山椒魚の妖怪で300歳ぐらい
むこうのでかいカエルは蝦蟇の爺さんで年齢不詳たぶん俺の3倍ぐらい生きてるんだろうなぁ
「ん?何だその凍りかけ?解けかけ?のカエルは」
「ああ、妖精に凍らされた子を溶かしているのです」
「ほぉ、悪戯好きの妖精だな」
「懲らしめても効かないというか・・・学習しないというか」
「ほうほう、お困りのようで」
「ええ、お困りです」
「同じ両生類としてほって置けませんな、何とかしてみましょう」
蝦蟇の爺さんは言った
見れば解る、頭悪そうな小さな女の子で氷の羽がはえてる
と言ってたが・・・
湖周辺をうろついてみる、特に何かいるわけでもなし・・・
そう思っていると前方から何かが飛んできた
「おいおっさん!あたいとしょうb「誰がおっさんだゴルァ」
まて、人型の俺は20代前半位の容姿なはずだ、それを捕まえておっさん呼ばわりとはどういうことだ
ん・・・妖精、氷の羽、ちっさい女・・・
「いかにも馬鹿そうだな、お前がチルノだろ」
「バカっていうな!」
「まぁいいや、とりあえずお前、カエル凍らせるの止めろ」
「いやだ」
即答しやがった、こんガキャ痛い目見て・・・そういえば懲りない奴らしいからな
「よし幼女、俺と決闘して負けたらカエルを凍らせないと約束しろ」
「えー、何でそんな」
「最強なんだろ?勝ちゃいいんだからよ、簡単だろ?」
~決闘 開始!~
「幻符!霞山椒魚」
辺りいったいを霞が包む
視界だけでなく妖力、魔力の流れを乱す霞
「おりゃー!」
適当に打ち出す氷柱ではよほど運がなければ当たるわけもない
「はっ!何処を狙って撃っているのやら、いいか?弾幕ってのは数うtyぐはっ!」
運悪く、凄く運悪く氷柱が当たった
「やっぱりアタイったら最強ね!」
「・・・このガキ」
切れた、皆さん、今から大人気ないことしますけどユルシテクダサイ
「流符!TOKYO山椒魚!」
「おお!?はいからなかんじだっ!?」
「はっはっは!コイツはホーミング山椒魚だぁぁ!」
山椒魚の形をした弾が標的めがけて飛んでいく
「くっ!凍符 パーフェクトフリーズ!」
ずどーん、がらがら
爆風により霞が晴れた、しかしそこに○○の姿はない
「えっ!?いない・・・アタイったら「ここだバカ」
いつの間にか両足首を握られて、湖に引きずり込まれた
「ごぼごぼ」
「山椒魚は水陸両用の生物だっ!ごぼごぼ」
あれ?なんか水が冷たくなって?
「ぷはっ!はっ、はっ・・・はぁ」
○○を凍らせて水中から脱出に成功したチルノ
浮き上がってこないところを見ると恐らく凍ったままなのか、悲しいかな変温動物
「あ、あたいったら・・・さいきょう・・・え?」
ざばー、バッシャーン
湖から現れたのはちょっと動きの鈍い○○
「・・・しつこいやつねっ!」
「おい、幼女・・・喰らえ、炎符 サラマンダー」
口から怪しげな霧を吐き出すと腰に下げていた石を打ち合わせ、引火させた
自分は水中に非難する
湖面にも炎が燃え盛りまさに火の海だった
「・・・もう消えたな」
火が消える頃合を見計らって顔を出す
ぷかぷかと浮かぶ漂流物が一つ
「まぁ火加減したし、死んじゃいないだろ」
意識を失ったチルノを岸まで運び、ある程度の治療を施した
後はコイツがおきるのを待つだけである
「・・・うーん、うーん」
うなされている、まぁ全身に山椒魚の粘膜を塗ったくられてりゃ気分も悪くなるわな
「う~ん・・・はっ!?」
「お?起きたか?」
「うわぁ、ねちゃねちゃするー」
「火傷治ってるだろ?大丈夫そうなら洗い流してこい」
「はーい・・・・・・そうだ!勝負!!」
俺はチルノの頭に拳骨をいれた
「だっ!?」
「お前の負けだ阿呆、約束通りカエル凍らすなよ」
「え、あ、アタイ負けてないもん!まだ勝負は終わってないもん!」
「だからお前は負けたんだって!」
「まけてないもん・・・ぐすっ・・・うえええええええええええん!」
「うをっ!?ちょ、泣くな、泣くな、泣かないで!ああ、どうすればいいの!??」
「ぐすぐす、ひっく」
「わかった、今日のは引き分けだから!また今度戦おう!決着は次にしような?」
泣きながら微妙にうなずくチルノ、何だこの罪悪感は
その後泣き疲れて眠ってしまったチルノを放っておけず湖畔で一夜を明かすのだった
~一月後~
「雪符ダイアモンドブリザード!」
「なんの!崩符アホロートル!」
「アホって言うなー!」
「お前じゃねー!!」
湖畔での決闘はあれから一ヶ月、二日に一度のペースで続いていた
恐らく決着はつかないのだろうが・・・
○○と遊ぶのに夢中で最近はカエルを凍らせなくなった、と蝦蟇爺は喜んでいた
そして俺もこのバカと遊ぶのを楽しみにしている節があった
「おいチルノ、おやつをやろう」
「わーい・・・なにこれ」
「イモリの干物」
「うわぁ共食い」
文句を言いつつ口にしている、しかし苦かったようだ
「尻尾はおいしい!しっぽだけちょうーだい!」
ああ、なんか孫が出来た気分だな
そんな風に考えていた
そのとき胡坐をかいて座っている俺の、上?膝の中、にすっぽりと、座り込んできた
何だか知らんが凄くご機嫌なチルノ
「~♪」
ちょ、落ち着け俺、孫にこんな気持ちを抱くおじいちゃんはいない!落ち着け落ち着け・・・落ち着いた
「ねー○○、アタイねー○○のこと大好きだよ?」
ピシッ・・・バイバイおじいちゃん
「ああ、俺もチルノの事大好きだよ」
「えへへー、ちゅ」
「!?ちちちちチルノ!?」
「好きな人にはね、こうするんだって、
大妖精が言ってた」
いまだ姿見ぬ大妖精とやら・・・ありがとう、本当にありがとう
「じゃあもう一回しようか?」
「うん!」
先ほどの唇を触れさせるだけのキスではない、お互いに深く繋がろうとする
「んっちゅ、んぁ・・・んっぷぁっ はっはぁはぁ・・・ふぅ」
「ぷはっ・・・チルノ?」
「んっ・・・」
とろんとした焦点の定まらない視線、紅潮した頬、荒い息
何もかもが艶っぽく、少し前とは別人のようだった
「○、○?」
「お、おう、なんだ?」
「お腹すいた」
「へ?」
拍子抜けした、変に甘ったるい空気が一瞬で何処かに行ってしまった、チルノのお腹の蟲が食べたのか
「みぞおち食べたい!」
「おまえ・・・中落ちだって何度言えばわかるんだよ、それに外に行かないと食べれないって」
「じゃあ明日食べたい」
「はいはい、じゃあ明日は朝から外に行ってくるから、大人しく待ってろよ?」
喜ぶかと思ったチルノの表情が少し険しくなった
何事かと思い、声をかけようとした、しかし珍しく悩んでいるようなので少し待ってみた
「・・・」
「明日は○○と一緒にいたいからみぞおち我慢する!」
「お、おう・・・そうかそうか」
思わず顔がにやにや、やばい、ニヤニヤが止まらない
「?」
「いやな、俺はチルノの事すごく好きなんだなぁって思ってな」
「アタイのほうが!○○のこと好きだもん!」
「いやいや、俺の方が・・・」
夕日に照らされて帰路に着く、カラスが鳴いている、カイツブリが鳴いている
さぁ帰ろう、お家に帰ろう
今ほどの幸せはこの先無いと毎日のように思いながら、そう思えることを喜びながら
とりあえず今夜の目標は、紳士でいること、獣にならない事
「がんばろう」
「ん?なに?」
「なんでもないさ」
~終~
8スレ目 >>195
その一
「○○、勉強できる?」
「まあ……、人並みには」
「じゃあじゃあ、あたいに勉強教えてよ!」
「どうして? 勉強できないなら出来ないでいいと思うよ」
「とにかく勉強したいの! もうバカって言われたくないの!」
「ふぅ……。そこまで言うなら……」
「何でもどんと来いよ!」
「じゃあ、
『3 以上の自然数 n について、(xのn乗)+(yのn乗)=(zのn乗)となるnを求めよ。
但し、nは3以上とする』
これを頑張れ」
「……………………………………………」
「パーフェクトフリーズしたね」
その2
「チルノ? 数学は止めて別のにしようか」
「そそ、そうね! あたいったら、あんな問題簡単すぎるからね!」
「何がいいかな。理科なんてどう?」
「どんと来いよ!」
「じゃあ問題。
『チルノが塩を被ったらどうなるでしょう』
さあ、頑張れ。実際にやってみたらわかるよ」
「わかった。やってくる!」
~氷精実験中~
「……帰って来ないね。やっぱり溶けたか」
その3
「死ぬかと思ったわ。さすがあたいね!」
「理科は止めて別のにしようか。社会科なんてどう?」
「いいわね! あたい得意よ!」
「じゃあ問題」
「どんと来いよ!」
「『幻想郷で、スペルカードルールを考案したのは?』
さあ頑張れ。わからなかったら人に訊いてもいいよ」
「むむむ、わかってるのよ。わかってるけど、確認してくる。
言っとくけど、あたいには答えがわかってるんだからね!」
「いってらっしゃい」
~氷精質問中~
「うわ~ん、頭突きされたぁ~~」
その4
「社会科はやめやめ! 簡単すぎてやってられないわ!」
「う~ん、じゃあ国語とかどうかな」
「こくご! あたい得意よ!」
「じゃあ問題。
『馬と鹿を見分けられない人の事をなんというでしょう』」
「うま? しか? …………うましか?」
「チルノみたいな人のことだよ」
「最強ってことね!!」
「ある意味ね」
その⑨
「もう、やめやめ! やっぱり数学にしよう!」
「ん~、じゃあ問題。
『11-2=?』
さあ、頑張れ」
「……………………」
「わかんない? じゃあわかりやすく言うよ。
『カエルが11匹います。その内2匹凍らせたら残りは何匹でしょう』」
「……………………」
「実際にやってみたらいいんじゃないかな」
「そうね! あたいは最初から気付いてたのよ!
でも○○に言わせるチャンスをあげたんだから!」
「ありがとう。で、やってみたらどうかな」
「そうね! 雪符「ダイアモンドブリザード」!!」
「……………………」
「これで2匹凍ったんだから……あと凍らせなきゃいけないのは……」
「……………………」
「9匹! 出来たわよ、○○!! やっぱりあたいったら天才ね!!」
「……………………」
「……○○?」
「……………………」
「凍ってる…………」
8スレ目 >>293
「○○!」
森の中を歩いていると突然声をかけられた、振り向かなくとも元気のいい聞きなれた声ですぐわかる
「ようチルノ、今日は上に行こうと思うんだが一緒にいくか?」
「うん!いくいくー」
湖の少し上流、源流とまでは行かないが渓流といっていいだろう
俺はチルノを肩車する、いつものパターンだ
「ねぇねぇ、今日は釣れるかな!」
「さぁ、どうだろうなー一昨日雨が降ったから晩飯分ぐらいは釣れるんじゃないかなぁ」
何をしにいくかというと釣りにいくだけなんだが、他意はないぞ、いやほんと
数十分歩いて川についた、チルノがいると魚の保存が利いていいんだがあんまりはしゃぎすぎて魚が逃げるのだ
「あんまり騒ぐんじゃねーぞー」
「うん!」
返事はいいのだが声がでかいって
釣りを始めるとチルノは俺の膝の上に座ったり後ろから抱き着いてきたり
とにかく落ち着きがない、俺が魚を釣るたびに喜ぶ、とても楽しそうに
釣った魚はチルノに凍らせてもらいリュックに詰めるのだ
「ふぅ・・・もう十分釣ったから帰るかな、チルノー?帰るぞー」
大声で呼ぼうと思い振り返るとリュックを枕にチルノが寝ている
安らかな寝顔、定期的に聞こえる寝息、起こす事が躊躇われた
「しょうがないな」
リュックに魚をいれてそのままチルノを抱きかかえて帰ることにした
「あれ・・・あたい・・・?」
「やっと起きたか」
「あたい・・・寝ちゃってたんだ」
「湖に置いてくわけにもいかないからな」
既に時は戌の刻、周りも暗くなってしまった
「んん~」
チルノは大きく伸びをするとベットから降りた
「じゃああたいは帰るねっ!今日はごめんね」
「まぁまて、夜も遅いし泊まってけ」
「でもベット一つ・・・」
「一緒に寝るか?(にやにや」
チルノは顔を真っ赤にしてうつむいた
「あ、あたいは・・・い、いいよ」
「じょ、冗談だって!その・・・さ今日はあんまり話が出来なかったからさ」
「?」
「お前と話したりないっていうか・・・そのだな・・・」
「うん・・・うん!今夜は○○の話し相手になったげる!」
「おう!今夜は寝ずに話すぞ!」
そうして徹夜で話した、眠れなかったのではなくチルノと話すのが楽しくて寝たくなかったのだ
昼過ぎて少し寝た、チルノと一緒に
夕日がまぶしくて起きたらチルノはいなかった、テーブルの上に書置きがある
「あいつ・・・字書けたんだな」
思わず笑みがこぼれた「きのうはたのしかったよ。○○だいすき!」
紙いっぱいにそう書かれていた、ニヤケがとまらない
「さて・・・明日はあいつの所に行くかな」
そういってあいつが喜びそうな菓子を買いに出かけた
~終わり~
8スレ目 >>900
「お前見てるとすごく顔が熱くなるから冷やしてくれ。」>チルノ
11スレ目>>102
「ん!」
はて? 目の前にいるこいつはいったい何がしたいんだろうか。
今、チルノはつま先立ちで俺の方へ顔を持ってこようとしている。
目をつぶり必死になっている顔は少し赤く、どちらかというと滑稽に見える。
「どうした? 風邪か?」
彼女の額へ手を触れる。
「ひゃん!」
「熱は……特にないみたいだな」
いつも通りのひんやりとした冷たさが伝わってくる。
ただ、相変わらず顔は赤いままだ。
「まぁ、何かあったら大変だからな。大事をとって今日は休め。じゃあな」
一人納得した俺は彼女に手を振り、自分の家へ帰ろうとする。
しかし返ってきた言葉は俺の予想しないものだった。
「……っ! ○○のバカーー!」
「おいおい、いきなり何を……ってどうした?」
彼女は俺に飛びつき、ポカポカと殴り始めた。
ただその姿は弱々しく、体は小刻みに震えていた。
そして顔は真赤に染まり、涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになっていた。
「お……おい! 大丈夫か!? どこか痛いのか!?」
「バカ! バカ! ○○のばかぁ……」
その言葉とともに彼女は殴るのをやめ、残ったのは彼女のもらす嗚咽だけだ。
今の彼女からはいつもの元気さを感じることができない。
それどころかこの瞬間にも消えてしまいそうなくらい弱々しい。
そんな彼女の姿は見ていられなかった。
だって、俺は彼女の元気な姿が好きだから。
俺に元気をくれる、太陽みたいな笑顔が好きだから。
晴れの日も、雨の日も、楽しい時も、悲しい時も、いつだって彼女は前を向いてた。
晴れの日は、今日こそあたいはあの巫女に勝つんだ、って。
雨の日は、あたいが雨なんか吹き飛ばしてやる、って。
楽しい時は、何だかあたいも楽しくなってきた、って。
悲しい時は、あたいはこんな気分は嫌いだ、って。
今思えば、ここ幻想郷で一番絆の深いのはこいつだ。
俺が幻想郷に来た時、襲ってきた妖怪から助けてくれた。
暇なときにはよく一緒に遊んだ。
そして遊び疲れたら、外の世界の話をたくさん聞かせてやった。
彼女はどんな話でも真剣に聞いてくれた。
ときにはいろんなやつにイタズラもした。
まぁ、たいてい仲良く一緒にぶっとばされるんだが。
彼女と共にすごした時間はとても楽しくて満ち足りたものだった。
今さら彼女のいない生活は考えられない。
ああ、そうだ……。やっとわかった……。
俺はチルノのことが好きなんだ。
そう……、きっとずっと前から……。
自分の気持ちがわかった今ならわかる。
彼女がさっき、どうしてあんなことをしたのか。
そして俺がどうすればいいのかも……。
「チルノ、さっきはごめんな」
彼女の体が一瞬ビクリと動く。
そんな彼女が愛おしくて、俺はその小さな体を抱きしめていた。
「俺、やっとわかったんだ。自分の気持ちに……。そして、チルノの気持ちに……」
「……え、それってどういう……」
俺は彼女の背中から手を外し、彼女の肩に置いた。
そしてその身長に合わせて少ししゃがみ、彼女の唇にやさしく口づける。
「……!」
最初は彼女もびっくりしていたようだ。
だがすぐにこちらに身をまかせてきた。
しばらくそうした後、俺は名残惜しむように口を離した。
「これが俺の気持ち。俺、チルノのことが好きだ」
「う…うん! あたいも! あたいも○○のことが大好き!」
そう言い、満面の笑顔を浮かべた彼女は俺の胸に飛び込んできた。
そして俺達は再び互いの唇を合わせる。
彼らの物語はまだ始まったばかり。
けれど、その結末はきっとハッピーエンドだろう。
なぜなら彼らには彼らのことを案じてくれる、多くの友人たちがいるから。
少し離れた茂みではこの光景を見ていた彼らの友人たちが祝福してくれていた。
巫女も魔法使いも吸血鬼も妖怪も……。そこには人妖限らず大勢の者がいた。
そしてその中で氷精に秘策を与えた彼女の親友もまた、うれし涙を浮かべていた。
だからきっと大丈夫。
恋娘はずっと笑顔で居続けられる。
彼ら二人がそれを望み続ける限り。
最終更新:2010年06月01日 23:05