チルノ8
うpろだ1310
「さあ、今日こそあたいが勝つからねっ 覚悟しろ大ガマガエルめ!」
「・・もうやめとけって。10敗もしてるんだからいい加減諦めなよ」
「今日はぜったい勝つからっ!あたいの最強な所よくみといてよ○○!」
「・・・やれやれ」
宿敵の大ガマガエルを倒してみせるから!といって
俺は何度も何度も
チルノに連れ出されていた。
「あたいのヒミツの特訓の成果、みせてあげるよ」
と言った後に
そのまま相手に突っ込み
「うわぁ!たべられたぁぁぁ!」
と叫んで終わる。
「お前・・そのパターン何度目だよ・・そろそろ学習しようよ」
そして「ペッ」と吐き出される
「・・うぐ、これで終わりとおもわないことね!」
お、今日はいつもより体力があるな。
ポツ・・ ポツ・・
ポツポツ・・ポツポツポツポツ
ザァーーーーーーーー
あ、雨降ってきた。
「おーいチルノー 雨降ってきたしそろそろ終わりにしよう・・・って!おいおい」
「パーフェクト・・フリー
「ちょ!ストップ!!」
「な、なに?せっかくチャンスだったのに・・」
「いや、この雨でそのスペルはやばいって。
自分にまで氷の矢が刺さったらどうすんだ(ていうか俺まで喰らう)」
「な、なにっ そ、それはまずいね。どうしよう」
「いや、もう負けを認めて帰ろう。俺もずぶ濡れだし、また明日挑めばいいじゃないか」
「このまましょうぶあずけて帰るよりやられて帰った方がマシよっ!」
そういいながら大ガマガエルに飛び掛るが、あっけなくバシっと弾かれる
ビターン!
「うにゃ~・・」
そのまま地面に叩きつけられ、気絶した。
「お、おいチルノ!」
俺がチルノに駆けつけると
大ガマガエルは満足したのか池の中へ帰っていった。
「まったく、世話がやけるなあ」
チルノを担いでどこか雨宿りする場所を探す。
「こいつ、体冷たいな。まあ当然か・・」
人が丁度2人入れるくらいの小さな洞穴を見つけ、
そこにチルノを下ろし、雨が止むまでそこに腰掛ける。
「ふう、びしょびしょだな・・このまま帰ってシャワーでも浴びたいが・・」
ちらっとチルノのほうを見る
「こいつが目が覚めるまで放っておくわけにもいかんしなあ」
……
…
「・・・きて・・起きて!」
…ん。
「○○、起きてよー」
いかんいかん、ちょっとウトウトしてしまった。
雨は・・止んでるな。
「・・そうだ!大ガマは!?」
キョロキョロと見渡すチルノ
「もういないよ、お前負けたんだよ」
「うー・・またまけちゃったかあ・・」
「また降られてもたまらんし、俺はもう帰るぞ。」
「あ、うん。またあした呼びにいくからねっ」
「へいへい。・・・まったく懲りないやつだな。」
でもそういう元気な所がいいんだけどな。
――翌朝。
うーん・・なんだ・・布団から出るのが辛い・・
そして何より体が重いしダルい・・頭がズキズキする・・
…そうか・・俺はド風邪ひいちまったのか・・
まあ無理もないか。
あんなに雨に降られて服も乾かさず一度眠りこけちまったし
バーン!
というドアが乱暴に開く音がした。
耳がキーンとする。今の俺にはかなり堪える。
あの足音はやっぱりチルノか
って・・今日も行くんだっけ・・ちょっと今日は勘弁してくれ。。
「・・・○○?ねてるの?」
パッと電気がつけられる。
「・・・ん、ごめん、チルノ。今日は駄目だ、あと電気消してくれ・・」
不思議そうな顔をしてチルノはいわれたとおり電気を切った。
「・・・?なんか・・顔が赤かったよ?」
そう言いながら小さな手で俺の額をあてがう。
「・・!」
「・・!」
俺も驚いたが、一番驚いたチルノが手をすぐ離した。
一瞬触れられた、冷たい手。何か懐かしい感じがした・・・。
「熱い・・どうなってるの?人間ってこんな体温高かったっけ・・」
こいつ風邪を知らないのか・・?
妖精はひかないのかな?
あるいは・・
「・・風邪をひいたみたいなんだ」
「風邪・・?なんか・・○○、苦しそうな顔してる・・これがそうなの?」
相当酷い顔してるんだろうな・・俺
それとも風邪を知らない目から見ると、かなりヤバそうに見えてるのかもしれない。
こんな深刻そうなチルノは初めて見た。
こいつもこんな顔するんだな・・。
「もう1回さわっていい?」
「・・ああ」
チルノはもう1度俺の額に手をあてがう。
その、紅葉のように小さな冷たい手で。
ひんやりとして気持ちいい。なんだろう、
ビニールに詰めた氷を当てた感じというより、もう少しぬくもりがあって
…そう、表面のひんやりした手の奥から暖かさが伝わってくる・・
「・・もしかして、こうしてるとマシになる?」
「ああ、不思議な感じだ、、でもお前熱いのダメだろ?無理しなくていいよ」
「ううん、これくらいなら大丈夫だよ。あたいの冷気の方が勝ってるから」
なんか懐かしい感じがしたと思ったら、これは俺が外の世界に居た時によく使ってた
冷え冷えなんとかシートと似ている。たぶんそれと同じような効果になってるんだろう。
時折、顎の下や首筋に手をまわしてくれる。
ひんやりとして吸い込まれそうになる。
~チルノ~
こんなにしんどそうな○○を初めて見た。。今日は、連れて行くの無理そうだね・・
それにしても、どうして○○はこの風邪と呼ばれる状態になっているんだろう。
昨日はピンピンしてたのに。・・今はすごく辛そう・・。
でも、こうやって顔に手を当ててやると、辛そうだった顔が少しマシになってる気がする。
こうすると治りやすくなるのかな?
ちょっと首筋にも手をまわしてみよう。
あたいはそっと○○の顎や首筋に手をまわした。
…何・・?なんでこんなに熱いの・・?
どうしてこんな事になってるの・・?わからない。
でも、どうしてだろう。。熱いのが苦手なのに、ずっと触れていたくなる・・。
「ねえ、○○。人間って、たまにこういう事になったりするもんなの?」
「そうだな、人によるが・・まあ体が弱ってる時になりやすいからね、風邪は」
「じゃあ、○○は体が弱ってたんだね・・どういう時に弱るんだろう・・」
「ん、ああ、まあ色々あるんじゃないかなー・・」
なぜか口ごもったように○○が言った。
~○○~
「じゃあ、○○は体が弱ってたんだね・・どういう時に弱るんだろう・・」
長く雨に打たれたからじゃないかな~ハッハッハと言えるわけがない。
「ん、ああ、まあ色々あるんじゃないかなー・・」
ちょっと誤魔化した。
「あたいのせい・・じゃないよね?昨日と関係してる・・?」
「・・!」
そう聞かれると思わなくて俺は驚いてしまった。
「違うよ、チルノのせいじゃない。俺の体調管理が悪かっただけだよ」
「そう・・」
……しかし、いつもと違って鋭いな。
「でもやっぱりあたいのせいだよ、○○の顔、ウソついてそうな顔だもん」
「嘘ついてそうな顔って・・」
「あたい分かるよ、ウソついてる時の顔くらい。だっていつも一緒にいるから」
思わず俺は顔を逸らす。
が、その瞬間。無理矢理こっちに向けさせられた。
「・・・やっぱり、ウソついてる。」
ぷくーっとふくれっ面のチルノ。
俺は観念した。
なんなんだ・・?今日のチルノは・・
「・・雨に打たれたせいだと・・・思う。」
~チルノ~
雨・・?じゃあやっぱり昨日の・・
「雨に打たれると風邪ってやつになるの?」
「いや、必ずしもそうなるとは限らないが、
体が濡れたまま放置しとくとそうなる確率はあがるね。中には全くならない人もいるが。」
そうなんだ・・そうと知らずあたいは・・・
「ご・・ごめん・・」
「いや、チルノが謝る事じゃない。俺がすぐ帰ってシャワーでも浴びとけばよかったんだ」
「でも、そうしなかったよね?どうして?」
「・・・それは。」
また口ごもってる。これは嘘を言う前フリ
「・・・気絶してるお前を放っておけなかったんだよ。」
あれ・・・? なんかウソの顔・・じゃない?
あたいのために・・?
「まあ、大丈夫だとは思ってたけど。」
「じゃあ、やっぱりあたいのせい・・」
「違う。本当に俺がそうしたかっただけだから、お前が気負うことじゃない」
なんでそんな事を。。すぐ帰ってしまえば良かったのに・・
でも顔が嘘じゃない・・
だから余計にわけが分からない。
「お前、そういう事普段気にしないほうだろ?なんかいつもと違うから調子狂うって・・」
そう、いつものあたいなら細かい事気にしないはずなのに、
○○がこういう状態になったの見て、あたいはすごく慌てている。
責任を感じてるから・・?
「それに、たんなる風邪くらいで取り乱しすぎだよ、こんなの明日にゃ治るって」
「だめだよ、今あたいにできる事だけでもさせて」
「・・・・」
早くいつもの調子の○○に戻ってほしい。
こんな○○を見るの、いやだよ・・。
もっと他にいい方法ないかな・・
そうだ、もっと密着してみたらどうかな・・?
あたいは○○の上に乗っかる。苦しいかな・・?
軽いから大丈夫だと思うけど・・
「お、おい、何して・・」
「・・・じっとしてて。・・・重い?」
「いや・・」
そしてゆっくりと○○の額に自分の額をあてる。
○○の額から熱が伝わる。
ああ。。こうしてるとすごく落ち着く。
って、あたいが落ち着いてどうするんだ・・?
~○○~
チルノが乗っかってきたかと思うと
こつん。と自分の額に何かが当たる
チルノの額だった・・
…またこれも、手とは違うひんやり感だった。
そして何より、
チルノの小さな顔が目の前にあり、
彼女の冷たい鼻息と吐息が顔にかかり、とろけそうになる。
「な、何してるんだ。。?」
「こっちの方がいいかなと思って・・。」
…すんげー恥ずかしいんだが・・。
「治らないかな・・こんなことしても・・ってあれ?また体温あがった?」
「いや、き、気のせいだ。」
「そう。。」
チルノがしゃべるたびに冷たい吐息が顔にかかる。
もう我慢できない。
「チルノ、すまん」
「え?」
俺は顎をあげ、チルノの唇に自分の唇をあてがった。
「んっ・・んんーーっ!?」
ぷはっと驚いたチルノの顔が離れる。
…やーっちゃった。
嫌われたかな?ていうか、うつらないよな・・
まあ、これは俺は悪くないな。。うん、俺は悪くない。
そう言い聞かせながらチルノの方を、恐る恐る見た。
~チルノ~
ぷはっ
な、何?今の・・・何されたの?
○○が今にも「ごめん」って言いたげな、申し訳なさそうな顔をしていた。
「何・・したの?今」
「いや・・そう顔を近づけられるとだな・・つい。」
不思議な感じがした。
そう、さっきずっと額を当てている時に、まだ何か足りない感じがしたのを
今ので一瞬満たされたような感じ。
よく分からないけど、
…もう1度今のを味わいたいと思った。
どうしてそんな気分になったんだろう・・
「ねえ、○○、今のもう1回・・」
「おいで。チルノ」
そしてまた唇と唇が重なる。
ちゅ・・・
「んっ・・く・・ふぅ・・」
口の中にすごく暖かいものが入り込んできた。
これは・・○○の舌?
あたいも同じようにすればいいの?
ちょっとマネをして試してみる。
…ちゅ・・ちゅ
「・・!」
○○が驚いたみたい。
…面白い。
~○○~
こちらから舌を入れてやったら、返してきやがった・・
しかも、すげー冷たい舌が・・なんだこの感じ・・
よく漫画とかでみる、雪女のキスってこんな感じなのかな・・
なんだろ、頭がぼーっとしてきたぞ?
頭痛のぼーっとしたやつじゃなく。気分のいいぼーっとした感じ
チルノは夢中で舌を入れてくる。
俺はそれに応えるように返してやる。
しばらくして、口を離す。
ぷはー
「はあ・・はあ・・」
「ふぅ・・ふぅ・・」
お互い息を荒げる。
「ごめん、苦しかった?」
「ううん、、へーき・・」
「ねえ、これって何なの?」
「キスだ。」
恥ずかしさを紛らわすようにして即答してやった。
しかしあまり意味がなかった。
「キスって言うのか。。不思議なかんじだね・・」
まあ、そうだろうな。きっと初めて経験しただろうし。
とはいえ・・俺もそうなんだが・・。
~チルノ~
キス・・か、おぼえとこう。
「まあ、こういうのは好きな人とするもんだから、何ていうかそのー
すまんな、いきなりやっちまって。」
…え?
「チルノ、お前はどう思ってるか知らないが、俺はお前が好きだからそうした。」
「○○が、あたいの事を好き・・?」
「ああ、だけどもし、お前がそう思って無かったとしたら、もうすまねぇとしか言えないが・・」
好き・・?
ずっと引っかかってた。
そう、この気持ち。
もしかして、あたいが○○の傍に居たいって思うのは・・・
ずっと触れていたいって思うのは・・・
○○が好きだから?
少し頭が混乱してきた。こんなに色々考えたのは初めて。
だとしたら、いつからそう思うようになったんだろう。
ずっと一緒に遊んだりしてたけど、あまりそういう風に見た事がなかった。
あたいが無理矢理○○を引っ張って無茶な遊びに連れ出したりしても
○○は文句を言いつつも1度も本当に迷惑な顔をしなかった。
あたいが勝手にそう見えてるだけかもしれないけど・・
そして、いつしかあたいは、○○を毎日遊びに誘うようになった。
○○だけあたいの遊びにずっと付き合ってくれるから?
あたいが○○の傍に居たいから?
…○○が好き・・だから?
…じゃあ、あたいはずっと前から○○が好きだったって事・・?。
…今頃気づいて・・本当にバカだったって事・・?
「チルノ」
「・・!」
不意に声を掛けられてあたいは驚く
「お前・・泣いてるのか?」
目に手をあてると、確かに涙をこぼしていた。
「あ・・あれ・・?どうし・・て?あたい泣いてるの・・」
「なんか。。謝ったほうがいいのかね・・この空気は・・」
あたいは思わずぶんぶん!と首を横に振った。
そして言った。
「あやまる事なんてないよ・・だって、あたいも好きだから・・」
ごく自然に。
「そ、そうか、じゃあ何で泣いて・・」
そう、なんで泣いているんだ?あたいは・・
○○に好きって言われたから?
それが嬉しいから?
きっとそうなんだろう。
あたいは今すごく嬉しいんだ。
すごく幸せな気持ちなんだ。
これが好きな人に好きって言われる気持ちなんだ・・。
~○○~
チルノが泣いている。
嬉し泣きだと嬉しいんだが・・
その泣いている姿が、またいとおしく見えた。
そのままぎゅっと抱き寄せてやった。
そしてまた軽くキスしてやる
「○○・・早く良くなってね・・」
「ああ。お前のおかげですぐ治りそうな気がする。」
「ほんとう?」
「何だろう、お前が傍にいると気持ちが安らぐせいかもしれない。」
「じゃあ、今日はずっと一緒にこうしてあげるね」
チルノは「恋」という感情を全く知らないものと思っていた俺は、
告白なんてしても伝わらないと思ってた。
流れで言っちまったけど、驚いた事にどうやら伝わったようだ・・。
まあ良かった。。
ちょっと見くびっていたようだ。
うpろだ1375
チルノ(○○のほっぺたにキスするだけだから…大丈夫だよね…)
そ~…
○○が振り返る
ちゅっ
○○「ん…どうした?」
チルノ「にゃは…にゃはははは…」
チルノ(ど、どうしよう…唇にしちゃった…///)
新ろだ314
「○○ー!!」
突然、がばっと背中に重みがかかる。
「うおっと、チルノか、おはよう」
「おはよう○○!」
元気一杯に応えるチルノ。やはり寒い方が得意なのか元気がいい。
……いや、チルノが元気なのは年中か。
「どこいくの?」
「人里さ、そろそろ食料がなくなってきたんでな」
背中に張り付いていたチルノがよじ登り、肩車の体勢になる。
「よし、てっぺん制圧!」
「……俺は山か何かか」
へへへ……、と何故かうれしそうなチルノ。
「まったく、お前はほんとに肩車好きだなぁ」
「うん! こうして、足を巻きつけると、合体してるみたいで強そうじゃん!」
言うや否や、足を首に巻きつけ、腕で俺の顔を抱きこむ。
「ああ、俺は体部分ですか。がこーんがこーん」
「あはは、そうそう! 最強チルノス⑨!」
「……まて、俺の名前がはいってないぞ」
「リーダーに意見するなー!!」
「……へいへい。がこーんがこーん」
しばらく歩いていると、ふと首に違和感を感じた。
「……ん? チルノ、お前、ドロワはどうした!?」
「なんかメイド長が、下着が見えるのは恥ずかしいから履かないんだって!
だからあたいも履かない! これが女のたしなみってやつね!」
……な、なんだってー!!?……
いやいや、俺はロリコンではないからこの程度で慌てたりしない。
それより問題なのは、チルノの服装だ。チルノはワンピースであり、体勢は肩車。
つまり、ちょっとでも風が吹こうものなら、お尻丸出しである。
そんなチルノを肩車してる俺。見られたりしたら二度と人里は歩けないであろう。
「チ、チルノ! 俺のコートを首に巻くんだ!」
「えー、暑いからやだ」
「あー、ほら! そうすると俺の姿が隠されて、もっとロボっぽいぞ!」
「お! やるやる! 脱いで脱いで!」
よし、これでなんとか(パシャパシャ)なる……って今の音はま、まさか……
ギギギと演技じゃないロボっぽい動きで、振り返るとそこには……
「どーも! 毎度おなじみ、清く正しい射命丸です。まさか○○さんがそういう趣味とは……いやはや……」
「ま、待ってくれ! これには訳が!」
「明日の一面は決まりですね! では!」
言うだけ言って、あっという間にいなくなる鴉天狗。はは……、終わった、な。
「? 天狗、何の用だったの?」
「あ、あはは……はぁ…………。チルノ、これからも仲良くしような……」
「よくわからないけど、もちろんよ! あたい、○○大好きだもん!」
「ははは……ありがとう……」
チルノを乗せ重くなった足取りは、これから始まるであろう地獄の日々を憂い、
さらに重くなるのであった。
「……もう、俺、ロリコンでいいかなぁ?」
「ロリコンってなに!?」
「……はぁぁ……」
新ろだ706
◆悪戯計画書◆
「で、だ。今回の作戦はな」
「うん」
「紅魔館の門番。わかるか?」
「ちゅーごくだよね、あたい知ってるよ!」
「そう、あいつだ。いつも寝てるよな」
「スヤスヤだね」
「きっちり仕事をさせてやるべく」
「うんうん」
「奴の背中にお前が作った氷の塊を突っ込む」
「それは……!」
「出来るか?」
「さいきょーなあたいに不可能はないわ!」
「俺は他の見張りがこないか周囲を見ているから、頑張れよ、チルノ」
「任せといて!」
◆実行数分前◆
「……こちら観測班。周囲に異常なし、どうぞ」
「こちら実行班。ターゲットは順調に居眠り中、どうぞ」
「館の方も動きはないようだ。やるなら今だぜ」
「合点だよ○○。それじゃ、行って来るね」
「おう。健闘を祈る」
「スネークGO」
「ダンボールはやめとけ」
◆Mission accomplished◆
「にゃあああああああああっ!?」
「よくやったチルノ、こっちへ退くんだ!」
「OKだよ○○!」
「セーフハウスへようこそ」
「ふふ、見張りがいっぱい出てきたね」
「おや、メイド長も出てきて……おお、叱られてる、叱られてる」
「ふふん、あたいの手にかかればこのくらいらくしょーよ」
「よしよし、ご褒美に何か一ついう事を聞いてやろう」
「んーっとね……それじゃあ」
「うん?」
「あたいを、およめさんにして!」
新ろだ870
――――霧の湖
妖怪の山の麓、普段は人が寄りつかない場所に大きな湖がある。この湖の辺りは昼間になると霧で包まれており、視界は悪い。
湖には妖精や妖怪が集まりやすく、特に夏は水場を求めて多くの妖怪が集まる。
そんな所に外来人の若い男が小屋を建ててそこに住んでいた。名を○○という。
これはその男のある一日の出来事である。
少し早めの昼食を済ませ、午後をどうやって過ごそうかと考えていた○○だったが、けたたましくドアを叩く音と彼を呼ぶ声でそれは中断された。
「○○ーーーーーー!! 居るのーーーーーー?居ないのーーーーーー?」
彼が足早に玄関に向かい、ドアを開けるとそこには……
「あ、○○!居るんならもっと早く出てきなよ!」
青いリボンに青い服装、背には氷の羽が生えた小さな女の子がいた。
氷の妖精のチルノだ。
彼女と○○が出会ったのは1年ほど前の事。彼が湖の近くに小屋を建てているときに出会った。
世間話を交えながら此処に住むことを話すとチルノに「あたいが○○の事守ってあげるから、あたいの遊び相手になれ!」という要求をされた。
○○も遊び相手になってあげるだけで安全が確保されるのなら安い物だと考え、その要求を呑んだ。
……それ以来、○○はチルノに振り回される日々を送ることとなり軽く後悔した。
○○はチルノをなだめながら、用件を聞いてみた。
チルノ「あっそうだった。ねえ○○、これ何?」
そう言ってチルノは○○に何かを見せた。
チルノは遊びに来る以外にもこうして○○に拾ってきた物のがどういった物なのかを聞きにくることがあった。
チルノのが見せた物を手に取り、よく観察する。それは銀色に輝く小さな輪にさらに小さなダイヤモンドが付いていた。
○○の中でこの特徴で当てはまる物が1つあった。それは……
――――ウェディングリングだった。
ウェディングリングとは婚約指輪と結婚指輪を兼ねた指輪の事である。変わらぬ愛の象徴として贈られるダイアモンドをいつも身に着けられるように、大抵の既婚女性
が毎日身に着ける結婚指輪にセットしたのが始まりだとされている。
○○はこの品物の事を丁寧に説明したが、チルノの方はあまり理解できなかったらしく頭に?を浮かべていた。
とりあえず○○は、「これは指にはめる物で、好きな人と結婚したい時に送る物」と説明し、チルノにウェディングリングを返した。
チルノ「……ケッコン?ケッコンて何?○○」
○○は結婚についても簡潔に「好きな人とずっと一緒になる事」と説明をした。
するとチルノは顔を少し赤くして、
チルノ「じゃぁ……はい!○○、これあげる!」
そういって、チルノは○○にウェディングリングを差し出した。
チルノ「あたい○○のこと大好きだよ!これを好きな人にあげるとずっと一緒になれるんでしょ?だからあげる!」
満面の笑みを浮かべ、そう言った。
少し呆気にとられた○○だったがすぐにいつもの調子を取り戻すと、
チルノからウェディングリングを受け取りそれを薬指にはめ、チルノに見せた。
チルノ「やった~~!!」
嬉しさのあまりチルノが飛びついてきた。
人とは違うひんやりとした感触を感じ、少し身が縮こまった。
チルノ「えへ~。これであたいと○○はずっと一緒だね!」
○○は飛びついてきたチルノの頭をやさしく撫でてあげた。
これからまた一段と騒がしい日々になりそうだなと考えた○○だったが、純真無垢なチルノの幸せそうな顔を見てるとそれも悪くないなと思った。
新ろだ2-295
ここは紅魔館近くの霧の湖。そこにはいつも元気な氷精がいるがどうやら今日は何か様子が違う。
凍らせたカエルを小脇に抱えてはいるがその目はどこか遠くを見つめているようだ。
そんな普段と違うチルノの様子に
大妖精は心配になって声をかけた。
「チルノちゃん、どうしたの? ボーッとしちゃって」
「ん、ああ、大ちゃんか。ちょっと考え事してた」
「考えごと?」
「うん、あたいは○○にとってどういう風に思われているのかなって」
「○○さん? うーん、普通に友達として考えてくれているんじゃないかなぁ」
「そうだよね。あたいと○○は友達。でもね……」
――なぜだろう、それだけじゃ嫌なあたいがいる……
暑い日差しの中、○○が趣味の庭いじりに精を出していると急に背中に誰かが抱きついてきた。
その途端、ひんやりとした空気が体にまとわりつく。ああ、また彼女が遊びに来たんだな、と後ろを振り返る。
「○○ーっ」
「やぁ、チルノ。今日も元気だね」
「あたいはいつだって元気だよ!」
「ははは、そうだね。で、何か用かい? また遊びにきたの?」
「んー、それもあるけどね。今日は○○にご飯作りに来てあげたの」
「えっ?」
突然のチルノの申し出に目を丸くする○○。
「最近暑くてメシがうまくないぜって魔理沙や霊夢が言ってるから、元気がでるもの作りに来てあげたのよ! 感謝しなさい!」
「え、いや、気持ちはうれしいけど、チルノ料理できるの?」
「あ、○○あたいのことばかにしてるでしょ? ふーんだ、ちゃんと大ちゃんに作り方教えてもらったんだから任せなさいよ! じゃ台所借りるねー」
「あ、ちょっと、チルノー!?」
慌てふためく○○を余所に勝手に家の中に入り込むチルノ。
不安は残るが、無理に止めさせてチルノをガッカリさせたくない○○は何が出来上がるかドキドキしながら待つことにした。
チルノ料理中――
「はい、どうぞ。暑い日にはこれだって」
「あー、まぁそうだね。これは」
出された料理は良く冷えたひやむぎ。
茹でるだけで後は冷やすだけと、まず失敗することはない料理で、ちゃんと大妖精はそこのところ分かっていたのだろう。
元気が出るかは別として。
二人は風通しがいい縁側に座り、そうめんをすする。風に揺れる風鈴の音が耳に心地よい。
しばらくそうめんをすする音が続くがチルノが口を開いた。
「ねぇ、○○」
「ん? なに」
「○○好きな人っているの?」
「ぐぼっ!?」
チルノの意外な一言におもわずむせる○○。
「げほっげほっ! な、なんだ、いきなりそんなこと聞くなんて」
「んー、なんとなくかな?」
「えーとそれはLikeの方? Loveの方?」
「……○○何言ってるかわかんない」
「あー、友達として好きか、恋人として好きかってこと」
「恋人としての好きをあたいは知りたいな」
ずいぶんとませた質問に○○は困った顔をする。
「あー、友達としては霊夢や魔理沙、慧音にもお世話になってるけど、恋人としてはまだ意識したことがないなー」
「……そう。じゃあね、あ、あたいが○○の、お、お嫁さんになってあげようか? あっ、○○が嫌ならあたいも諦めるけど……」
「へっ?」
「なによ『へっ』って。あたいが相手じゃ不満なわけ!?」
「いや、そんなことはないけどさ」
「なら素直に喜んでおきなさいよ。バカ○○」
ぷいっと顔を横に背けるチルノだが、頬が赤くなっているのが分かるので、○○は苦笑しながらチルノの頭を撫でた。
ぷー、と頬を膨らませるチルノ。でもまんざらではないらしく決してその手を払いのけようとはせず、ただ○○に任せ素直に頭を撫でさせていた。
そのあとも手伝いと評してチルノは遊んでいたが、時折○○の顔色を窺う様子を見せながら、それに気付かれると慌てて目をそらしたりしていた。
どうにも歯切れが悪くチルノらしくない仕草に○○は少しチルノのことが心配になっていた。
その夜、○○はなかなか寝付けずにいた。どうも昼間のチルノの言葉が頭に残ってしまう。
普段から元気いっぱいなのはチルノの良いところではあるがどうにもあの言葉は彼女には似つかわしくなかった。
そして態度もどこかひっかかるところがあるのも感じた。
ごろごろと布団の中で寝返りを打つがやはり眠気はやってこない。仕方がないのでちょっと夜風にでも当たろうかと思うと、静かに玄関の戸を叩く音がした。
いきなり戸を開けて頭からぱっくりとはやられたくないので博麗製の退魔札を手に外の何某に声をかける。
「どちらさまですか?」
「○○、あたいだよ。チルノ」
「チルノ? どうしたんだこんな夜中に珍しい」
つっかえ棒を外して戸を開けるとはたしてチルノはそこにいた。
昼間とはうってかわって若干表情に影が見える。
「あのさ、あたいなんか眠れなくて、○○がまだ起きてたらちょっと散歩に付き合ってもらおうかと思ってたんだけど、ダメ?」
「いや、俺もなんか眠れなくてさ。いいよ、付き合うよ。着替えてくるからちょっと待ってて」
軽装に着替えた○○はチルノと一緒に夜の散歩を楽しむ。
昼間のうだる様な暑さは無くなり、涼しい風が吹き抜け時折虫の声が草むらから聞こえてくる。
少し歩いたところで木陰に腰を降ろして夜風を受ける。
「ねぇ、○○。○○の特別な人になるにはどうしたらいいのかな」
「……やっぱりそのこと気にしてたんだ」
「うん……。前まではあたいは○○と一緒に遊んでいるだけで楽しかった。でも、最近はそれだけじゃ嫌だって気持ちが湧いてくるようになっちゃったんだ。
あたいは○○の特別になりたい。あたいだけが○○の大切なものになりたいって。○○が大ちゃんとか
三月精のあいつらと仲良くしているのを見るとすごく苦しい。
○○の側にずっといられないのはすごく苦しいよ。
ねぇ……どうすればあたいは○○の特別になれるの? バカなあたいにも分かるように教えて……?」
チルノの真剣な悩みに○○はうかつなことは言えないと思った。本当に純粋な、チルノの気持ちを軽はずみな答えで返すわけにはいかない――
しばらく瞑想するかのごとく目をつむっていた○○はゆっくりと瞼を開くと真剣な表情でチルノに向き合う。
「……ごめん。今の俺にはチルノの問いには答えられない」
「えっ……」
「今の俺にはチルノはいつも側にいてくれることが普通になってしまってる。だからチルノが俺にとっての特別なのかは分からないんだ。ごめん」
「…………」
「……でも、いつか、必ず答えを出すよ。その時まで待ってくれないか?
チルノが真剣に悩んでいることは分かった。だから俺もいい加減な気持ちで答えたくはないんだ」
「……ほんとう? このままずっと苦しい気持ちのままなのは、あたい嫌だよ?」
「うん、きっと。約束する」
「……分かった。約束だよ。でも、できるだけ早く答えが欲しいな。このまま待っているのも……辛いから」
そういって笑うチルノ。無理していることは表情から窺える。その頭をそっと胸に抱きかかえる。
○○のシャツをぎゅっと掴み胸に顔を埋めるチルノ。
しばらく二人は月明かりの中虫の声に耳を傾けていた……
「――。――ってば。○○起きてってば」
「……んあ? どうしたチルノ?」
「どうしたって、あまりにも気持ち良さそうに眠ってるもんだから、からかうついでに起こしただけだよ」
「……こんにゃろ。用もないのに起こすんじゃねー」
「あははー、○○が怒ったー」
しばらく二人でじゃれ付き合い、チルノが○○の上に覆いかぶさったまま彼は話しを続けた。
「さっき懐かしい夢を見たよ。チルノがさ、俺に相談しに来た時の夜の」
「あー、あの頃のことか。懐かしいねー」
今のチルノの姿はあの頃より成長した。短かった髪は腰まで伸びて背も○○の肩位まで大きくなった。
性格もおてんばなのは変わらないが少し大人らしく振舞えるようにはなった。
「あの時は、本当に真剣に悩んでたな。それでずいぶん時間かかっちゃって。ずいぶん季節がめぐってたね。
そしたらチルノもゆっくりだけど成長していったね。うん、その時分かったんだ。チルノは俺にとってどういう存在か……」
そして彼は苦笑する。
あの夜の約束からずいぶんと時間が経った気がする。そして○○は分かったのだ。
チルノの言う特別とは、大切な人からの告白の言葉なのだということ――
「実を言うとさ、チルノはもうあの約束の事覚えていないんじゃないかって不安だったんだ」
「ふふっ、あたいはずっと覚えていたよ。きっと○○は約束を守ってくれるって。だから苦しくても辛くても待ち続けられたんだ」
――ああ、この笑顔だ。この笑顔をずっと見ていたくて俺は。
「チルノ、俺にとってチルノはずっと側に居てほしい大切な人だ。俺もチルノの特別になりたい。だから――」
「――うん、ずっとその言葉を待ってた。ありがとう○○。あたい、もう苦しくないよ。すごく胸の中が暖かい」
温かみのある女性としての笑みを浮かべるチルノ。彼女の背に手をまわして抱き寄せると二人はぴったりと重なった。
――いろいろな、本当にいろいろなことがあったね。初めて会った時は何このニンゲンは? あたいのことバカにしないし、一緒に遊んでくれるし
面白い奴だからあたいの子分にしてやろう。そんなこと考えていたんだよ。
それがこんな特別な人になるとはあたいも思わなかった。身体は大きくなっても、いろいろなことを分かることになっても結局あたいはあたい。
一番大事なところは何も変わってはいない。そういうことなんだろうね。ただずっと○○の側に居られる。今はそれだけですごい幸せなんだ。
これから先、いろんなことが起きるんだろうね。でもあたい達の関係は変わらない。変わってほしくない。
だから、ずっと、ずっと、閻魔さまのとこに行ってもずっと一緒に居ようね! ○○!
最終更新:2010年10月15日 02:12