チルノ⑨
新ろだ2-313
小さな、しかしとびっきり冷たい氷の破片を積み上げる。一つ、また一つと。静かに積み上げていく。
あたい特製の氷は真夏の暑さにも負けることなく一つの山を作り上げる。
「♪~♪~」
「……Zzz……っ! 冷たっ! 冷たぁっ!!」
「あっ……やっと起きた!」
氷の山も先端に差し掛かり、これ以上積み上げるにはもっと底を広くしなきゃと思っていた頃に、
氷を積み上げていた土台――肌色の土台は声をあげるとともに隆起し、あたいの自信作は虚しく散り散りになる。
「おっはよー♪ お目覚めは如何かしら!」
「うーん……おはよ……その悪戯は止めてとあれ程……目が痛い」
「へへへー、この
チルノ様とのデートの前にだらしなく居眠りしてる○○がいけないんだぞー!」
あたいが氷の山を積み上げていたのは○○の顔。あたいの大好きな恋人なのさ!
○○ったら『暑くなってきたから
チルノと湖で遊びたい』っていうもんだから今日は一緒に遊ぶ約束してたのに、
いざ待ち合わせ場所に来てみたら呑気に木陰で居眠りしてるもんだからあたいとっておきの目ざまし法を使ってやったのさ!
「よっこらせっと……うぅ、まだ視界がぼやけてる」
「真昼間から寝ぼけてるからよ……」
「いやさ、どうせこのあと果てしなく疲れるのだろうなって思ったからさ。じゃあ今の内に眠っておこうかなって思って」
「もしかしてなにか失礼な事を言ってる?」
「いんや、ただこれから
チルノとめいいっぱい一緒に遊べるぞ嬉しいなばんじゃーいっていうだけのお話」
「なんだ! それならよし!」
なんだ、本当は○○だってあたいと一緒に遊びたくてしょうがないんじゃないの。
「ほら、腰に力を入れて、シャキっとしなさいシャキっと!」
「うん、待って……んんっ……ふぁぁぁ……」
立ちあがると体を大きく伸ばし、だらしなく欠伸を掻く○○。
「もうっ! みっともないわね……欠伸をするときは口を塞ぐのよ! そんなのあたいでも知ってるんだから!」
「あぁ悪い、恥ずかしい姿を見せてしまったな……でもまぁあれだ、言っておくがこんな姿を見せるのは
チルノだけだぞ?」
「ふぇ!? あ、あたい……だけ?」
「あぁ、誓ってもいい。
チルノの目の前だから僕もこんなに脱力出来るんだ。他の人の前でなんて恥ずかしくて出来ないよ……」
「あ……うん……って、そんなんで言い逃れしようたってそうはいかないんだからね!」
「ああ悪かった! 悪かったって!」
口では謝りながらも、笑顔な○○。やっぱり○○もあたいと一緒に居る事が出来てうれしいのね!
そしてやっぱり○○が笑顔になるとあたいの胸にも嬉しさが込み上げてくる。もっと見たいな。
っと、こんなことしてる場合じゃなかった。今日は泳ぐために来たんだった。
「それじゃあさ、早速泳ごうよ!」
「うん……って
チルノ? 着替えはどうするんだ」
「へへーん……実はもう下に着替えてあるのさ! えいっ!」
と勢いよくいつものワンピースを脱ぎ捨てあたい自慢の水着姿を○○の前に曝け出す。
「うぉっ……へぇ~驚いた、凄く似合ってるよ
チルノ」
「ふふん! 別に褒めても何も出ないんだからね!」
「いや本当、淡い水色の生地が
チルノらしい清涼感を生むというか……サイズもピッタリだし、なんかいつもよりいい女に見える」
「もう! 褒めすぎだってばぁ~」
あたいの水着姿をベタ褒めする○○に、思わずあたいもベタベタしてしまう。いい女だって、えへへ。
「それで、○○は着替えないの?」
「そうだね、
チルノを生殺しにするのも悪いしちゃっちゃと着替えるか」
そういう言うと、自ら身につけているズボンに手を伸ばし……って!
「ちょ、ちょっと待ちなさい此処で着替えるつもり!?」
「え? あ、うん」
「いや、ちょっと待ちなさいって! 此処外だよ!? 皆に見られちゃうわよ!? 別にあたいだけならい……
って何言わせんのよ! とにかくそこらへんの茂みに入って着替えなさい!」
「ん? いや僕も
チルノと同じように前もって下に穿いて来たんだが」
「あ……」
あたいの心配をよそに○○は我関せずといったふうにズボンを脱ぎ去り、服を脱ぎ捨て、海水パンツ姿になる。
なぁんだ、これじゃあまるで心配したあたいが馬鹿みたい。べ、別に期待してなんか……ないんだからね……
「どうしたの? そんなに顔紅くして……もしかして興奮でもした?」
「!!! ○○のバカー!! ○○の変態ー!!」
「ちょ! 氷は危ないからマジ勘弁! 冗談! 冗談だってば!」
真夏のスノーマンで轢いてやったけどあたいはきっと悪くない。
「うぃー……痛い目に遭った」
「自業自得でしょ?」
「僕そんなに悪い事言った……ゴメンナサイその氷刀シマッテチルノサン」
「分かればいいのよ分かれば」
先程からなんだかあたいってば怒ってばかりだけれども、でもそれでもあたいは○○の事が好き!
にぶちんで、いつもバカな事言ったりするけれど、でもいつも優しくて、あたいが悪戯したり失敗したりしても
いつも笑って許してくれる。そんな○○がだ~いすき!
「それじゃあ気を取り直して泳ごっ!」
「おっと待たれい、
チルノさんや」
「ふぇ?」
「湖で泳ぐ前にはだ……準備運動をしないとな」
「ええ~……」
そう言うなり、膝小僧に手をついては膝を曲げたり伸ばしたり、脚を開いては伸ばしたり縮めたりを始める○○。
笑顔、凄く笑顔、楽しそう……いや、あんなの絶対楽しくない。○○ってば準備体操とか掃除とかそういう所に限って細かい。
あたいは早く泳ぎたいのに……。
「ほら、
チルノさんも御一緒に」
「え~やだ~めんどくさい」
「そうは言うがの、これをやっておかないと体の筋肉が固まったりして溺れやすかったりと大変なんだ」
「それは人間の話でしょ? あたいはサイキョーの妖精だもん! だから体なんて使わなくても素潜りだって出来るんだから!」
「ふうむ……そう来たか……」
「えへへ~ん、あたい最強! というわけで先に泳いでるね」
と湖に向かって飛び立とうとするとさらに後ろから声と共に肩を掴まれる。
「だが待たれい」
「うぇ~何よ~? しつこいわねっ!」
「今の
チルノは確かに最強だ。だから……だから今ここでさらなる修行として準備体操を取り入れれば、
とびっきり最強の
チルノが誕生するんじゃないか?」
とびっきり……最強?
「なにそれ? 強いの?」
「え? あ、ああ勿論強いぞ! なんたって“とびっきり”ってのは“他に並ぶ者の居ない”って事だからな!」
「それって……どういう事? あたいにも分かるようにもっと簡単に説明しなさいよ!」
「つ……つまりだ、“とびっきり”っていうのは、“最強”ってことさ」
「へぇ~……じゃああたいが準備体操をすれば最強になれるの? じゃああたいもやる!」
「よっしゃ、それじゃあとりあえず僕の動きを真似してみる事から始めようか」
「うん! まず足を曲げたり伸ばしたりだね……」
なんか○○に上手く乗せられた気がするけれどあたいはそんなこと気にしないのさ!
○○の動きを見様見真似でやってみる。へぇ~、準備体操って面倒くさいイメージがあったけれど意外と簡単で楽しいわね。
「ねぇねぇ、あたい……ちゃんと準備運動出来てる?」
「うんうんバッチリだよ、その調子その調子。流石
チルノ、飲み込みが早いね」
「えへへ……、それにしても○○ってばさっきからあたいに視線釘付けだね」
「んっ? ああ……水着、良く似合うなってね」
そりゃあ当然! 今日の為に大ちゃんと一緒に探したんだもの!
大ちゃんは必死に『紺色の凄くサイズが小さめで無地の、片隅に“小”とプリントされた全身一体型の水着』
をしきりに勧めてきたけれど、あたいはそれを振り切って、
この水色の胸の部分とおまたの部分が別々になった水着を選んだのさ!
だって動きやすかったし、何といっても水色! あたいのカラーね!
そして○○の視線もこの通り、う~ん視線の強さだけで火傷しそうね!
「ちょっと~○○ってば目つきがいやらしいわよ~?」
「うん、眼福、じゃなくて失敬。いや本当にいつもの
チルノよりも色っぽく見えるもんで……それに僕もまぁ若い男の子なんだよ」
「へへ~ん、少しくらいなら胸を触ってもいいのよ!」
「……まな板(ボソッ」
「っ!!! 氷塊『グレートク「待て冗談だから僕今しゃがみ状態だからガード出来ないから止めてそれだけは!」
そこまでまな板が好きなら一旦○○がまな板になればいいと思った。
「
チルノさ~ん?」
「……」
「おねがいだから沈黙しないで!
チルノさんが沈黙とかマヂ怖いですから、このとおりです、謝ります、反省してます!」
「ああもう、うるさいわね! 別に怒ってないわよ全く……ほら、もう準備運動も満足した? したらとっとと泳ぐわよ!」
「は……はひぃ……」
随分と縮こまっちゃった○○。ちょっとやりすぎたかな? いやあたいは悪くない!
よりにもレディーが一番気にしてる事を躊躇なく言ったのだ。少しは懲りてもらわなきゃ……
「はぁぁ~うぅぅ~
チルノさんがこっち振り向いてくれないぃぃ~やっぱり怒ってるぅぅ~」
……やっぱり言いすぎたみたいね。うん! 十分反省したみたいだし、そろそろ許してやるか。
○○より先に湖に入る。ジャボジャボ水の音が気持ちいい。水の冷たさがとても気持ちいい。
「○○っ!」
「は、はひぃ!」
そして振り向き、○○に強い声で呼びかける。あたいの呼びかけに緊張した様子で声を上げる○○。その顔面をめがけて一気に……
「えいっ!」
「うわっ! 冷たぁっ!」
「ほらほら! いつまでもぐずぐずしてるとそのマヌケ顔にもいつも以上に磨きがかかるわよ!」
「……やったな! お返しだ! てりゃ!」
「あっ! こんのぉ……
チルノ様に水かけで勝負とはいい度居ね! あたいはこんなこともできるぞ!」
さっきの様子は何処へ行ったのやら、すっかりいつもの調子を取り戻した○○と水を掛け合う。
何はともあれいつもの調子に戻ってくれてよかった。一悶着後の子分の気の沈みを宥めるのは親分であるあたいの役目ね!
「どうだ! まだやるのかー!」
「ははっ、降参降参、やっぱり
チルノには敵わないよ」
「へへーん、それでよし! ところで○○ってばさ、どれくらい泳げるの?」
「えっ!?」
「いや、だからさ……○○はどのくらい泳げるのさ? あたい? あたいは何処までも泳げるし湖底まで潜水だって出来ちゃう!」
「あー、うん、僕はまぁ……とりあえず息継ぎが出来るから疲れない限り何処までも泳げるってレベルかなーははは……」
「???」
なぜそっぽを向いて答えるのかしら?
ああ! 分かった、きっと本当はとても泳ぎが得意なんだけれど自慢しているみたいで恥ずかしいから言うのを憚っているのね!
○○ってばもうっ、可愛い奴め!
「それじゃあとりあえず湖の中心まで一緒に泳いでみる?」
「あ……ああ! いける、いけるぞ!
チルノと一緒なら僕は泳げる!」
「そ、そんなに声を張り上げて、体を震わせなくてもいいじゃないの。でもそんなにあたいと一緒に泳ぐのがうれしいのね」
「えっ? そりゃ当然。だって
チルノの事大好きだし」
「はははこやつめ! 嬉しいこと言ってくれるじゃない! もう残り一日中引き回しちゃうんだから!」
あらあら一層体を震わせちゃって……本当に嬉しいのね。
早速水面に顔をつけて泳ぎ始めるあたい。う~ん! 今日も冷たい水が気持ちい! 水が綺麗ね!
さて、○○は何処までも泳げるとは言っていたけれど、どうせなら長く泳いでいたいからゆっくりと泳ぐことにしよっと。
○○はついて来ているかしら? おっ! 大丈夫なようね!
ふふふ、あんなに一生懸命手を動かしちゃって……本当にあたいと一緒に泳げるのが嬉しいのね!
あらあら○○ってば潜水を始めたわ。あたい達妖精は呼吸しなくても何とかなるから潜水だってお手の物だけれど
人間の○○が不慣れな事するもんじゃないわよね。あ、でもそっか! やっぱり本当は泳ぎに自身があったんじゃんか!
どれどれ、ここは一つ○○の恋人にして親分たるあたい様が潜水の技法というものを指南してあげよう。
一気に水中へとダイブ! ふはぁ! やっぱり全身水に浸かるのはとても気持ちいいわね! 暑さを忘れさせてくれるわ!
それだけに○○と一緒に水中デートが出来るのは嬉しいな。さてさて○○はっと……
いたいた○○ったら、湖底すれすれ……というかまるっきり湖底にくっついてるわね、まるでエイみたい。
所で湖底で仰向けになって泳ぐ人間なんて初めて見たけれど、しかもなんか口を広く開けてるし。てかあれ泳いでいないよね。
なんか腕を直角に曲げてるし、しかも両手の指が不自然に曲がってるし。あんなので推進力生み出せるの?
……今さらだけれどまさか溺れたんじゃないでしょうねっ!?
そう思い始めるとなんだかそうとしか思えなくなり、あたいは大急ぎで○○の元へ泳いで駆け付けた。
「ちょっと○○っ! 大丈夫!? 生きてたら返事しなさい! ○○っ!」
「……(白目」
「ねぇ○○っ! お願いだから返事して! ねぇやっちゃいけない冗談もあるんだよ!? それくらいあたいだって知ってる!」
あわわわわ……どうしよう、やっぱり嘘うじゃない。○○ってば本当に溺れてるんだわ!
どうして!? ○○ってば泳ぎが得意なんじゃないの? いや、そんなことより早く助けなきゃ。
……うんしょ……だめ、全然動かないや。あたいの力じゃ○○を上まで運びきれない。
どうしよどうしよ○○を助けなきゃこのままじゃ○○が死んじゃうどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ
どうしよどうしよどうしよどうしよあーもうっ!!! 「フロストコラムス」っ!!!
はっ! あたいったらまたやっちゃった。あたいったら何やってるのよこんなとき…に……?
お? おおおっ? なんだが地面が浮かび上がってきた! やったわ! これで一先ず水中からは助けだせるっ!
あとは……早く! 早く湖畔まで運ばなきゃ! あーもう遠いわね! 面倒だから○○と水面を凍らせて滑らせる事にする。
ちょっと冷たいけれど我慢してよっ! ○○っ!
○○を湖畔まで運び出したあたい。とりあえず息はしてるみたいだけれど、どうしよう……
えっとまず大量に水を飲んじゃったはずだからそれを吐き出させることからだよね。
「……えいっ!」
「ぶごぉっ!」
おーすごいすごい、口から大量の水が……って面白がってる場合じゃないわね。
もう一回押してみよう、まだ出る。さらにもう一回、まだ出る。もう一回、あ、出なくなった。
口元に耳をつけてみる……うん、まだ息はある! もしかして、気絶してるだけ? それならあたいとっておきの方法っ!
先程の悪戯みたいに、○○の瞼の上に小さな氷の破片を一つずつ乗せてゆく。でも今度は悪戯じゃない、あたいの本気。
きっと本当はもっといい方法があるのかもしれないけれど、あたいには分からないから。だから精一杯氷を積み上げる。
一段、二段と○○の瞼の上に山を形成する。それは次第に大きく高くなり、その重みが氷に伝わり、○○に伝わってゆく。
「……冷たっ、冷たぁっ!!!」
「あっ! 起きたっ!!」
「ん、おう……
チルノか。その起こし方は勘弁……あれ、なんで僕は此処で寝てたんだ?
確かさっきも
チルノにこうやって起こされて、そして
チルノと一緒に一緒に泳ぎに行って……そこまでは覚えてる。うん。
そのあとが……うっ、思い出せない……思い出せないって言う事は……なんだ夢かっ! よし
チルノ泳ぎに行くz」
「夢じゃないわよばかぁっ!!!」
○○の頭を思いっきりグーで殴った。もちろんあたいが言うグーとは氷でグーの事よ!
「痛ぁっ! いててて、いきなり殴るなんてひどいぜ……」
「あんた水に溺れてもう少しで死ぬ所だったのよ!?」
「え……水に溺れ…て……? あ゛っ!! 思い出した……俺は水に溺れて沈んだんだったっ!
も……もしかして、
チルノが……
チルノが助けてくれたのか?」
○○の問いかけに静かに頷いたあたい。
「そ、そのありがとうな……そしてごめんっ!
チルノにマヂで迷惑かけた! あと夢だなんて無責任な事言った! 本当にごめん!」
「……して……」
「えっ?」
「どうして溺れたりなんかしたのよ! 本当に心配したんだからっ!」
「それはその……じつは僕……カナヅチなんだ……」
「……!!?」
「いやその……、息継ぎぐらいなら出来るけれど、泳げるのは水深の低いプールでの話で、こんな湖は初めてで……」
バツの悪そうに○○は小声で本当の事を言い始める。
「……なんで本当の事言わなかったの」
「そのせいで
チルノにめい一杯遊ばせてやれなくなるのが嫌だった」
「……なんであたいに泳ぎの手助けをしてもらおうって気にならなかったの」
「そのせいで
チルノに自由に遊ばせてやれなくなるのが嫌だった」
「……なんで少しでも溺れそうになったときに大声であたいに助けを呼ばなかったの」
「そのせいで
チルノに少しでも迷惑かけるのが嫌だった……なぁ、やっぱり怒ってるよなぁ、本当にごめん、いや、ごめんなさい」
「……」
白々しくあたいに許しを乞う○○。だがあたいの怒りは収まる所を知らない。
「ねぇ○○? どうしてあたいが怒っていると思う?」
「……僕が溺れたせいで
チルノに迷惑かけたから?」
「違う」
「……僕が溺れたせいで折角の一緒に遊ぶ時間を無駄にしたから?」
「違う」
「……
チルノと泳いで溺れた事を夢だなんて言ったから?」
「違うっ」
「……泳げるだなんて法螺吹いたから?」
「違うっ!」
「……僕がカナヅチだから?」
「……ぜんぜんちがーうっ!!! あんたなんっにもあたいの気持ち分かってないわねっ!」
「うっ……うぅ……ごめんなさい」
遂に項垂れてしまう○○。無理もない。だってこんなに○○に対して怒鳴ったのは今日が初めてだもの。
だからこんな○○を見るのも今日が初めて。すっかりと顔を俯いて、ああ、ひょっとして泣いてる?
本当は、こんな○○見たくないな……○○の悲しそうな顔、見たくない。でもあたいの本当の気持ち、○○に伝えたいから。
「あんたねっ! どれだけ人に心配かけたと思ってるのっ!? あたい本当に心配したんだよ!?
○○がこのまま死んじゃったらどうしようって、あたいもうそんな事考えたくもないのに、考えただけで怖かったのに!」
大声で、今まで出したことのない位大声であたいは○○に詰め寄る。
○○の服を掴み、皺くちゃになるとか、破けるとか、○○が痛い思いをするとか、
今のあたいにそんなこと考える余裕なんてなかった。
だってそれくらいあたいは怒っているから、怖かったから、そして……○○の事が大好きだから。
「○○と出会ってから楽しかった日常が最強に楽しい日常になって、○○のおかげで他の皆とももっともっと仲良くなれて、
もうあたいは○○無しの生活なんて考えられないのに、考えたくないのにっ!
あたいに迷惑かけたからってなにさっ! そんなのあたいの方が⑨倍はあんたに迷惑かけてるわよっ!
○○に死なれることの方が……傷つかれることの方が……あたいは……嫌だよ……」
○○の服をぎゅっと握りしめて、あたいはそのまま○○の元へと泣き崩れる。その胸に顔を埋める。深く、深く埋める。
此処に来てあんな風に怒鳴り散らしてまで○○を怒ったことを少し後悔。あたいの事を……嫌いになっちゃうかな……?
あたいの目元を、頬を伝う温かい何かが、○○の服に染み込んでゆく。ごめんね○○、お洋服、汚しちゃって。
きっと今の私はとても恐い表情をしていて、それでいて悲しさのあまり情けない表情をしてるんだ。
でもそんなの気にしないと言った風に、○○はあたいの背中に腕を伸ばし、そして優しく擦り、叩いてくれた。
ねぇどうして? こんなにも○○の事を怒って、悲しませて、溺れたことだってあたいが悪い部分もあったのに?
ねぇどうして○○はこんなにもあたいに優しくしてくれるの? こんなあたいでも受け入れてくれるの?
「
チルノ……本当にごめん。心配かけて……
チルノの愛に答えてやれなくて……」
「も……もういいよ、あたい怒ってない」
「そしてありがとう……こんなにも僕を愛してくれて。こんなにも僕の事を想ってくれて」
「!!? か、感謝もしなくていいっ!! あたいが好きで……好きで○○の事を……」
「本当にありがとう……」
ゆっくりと、○○の大きくて温かい手のひらで頭をナデナデされる。
これは子供扱いされているみたいであたいあんまし好きじゃない……といつもは言ってるけれど、
今日に限っては頭を撫でられるの、嫌いじゃないよ。だって、あたいが○○の事が大好きだって、きちんと伝わってくれたから。
そして○○もまたあたいの事が大好きなんだって、伝わったから。
「しかし……うぅっ、なんだろうこの寒さ……さっきまでの暑さが嘘みたいだ。溺れたからかな……体がゾクゾクするんだ」
「あぁ、さっき○○を湖沖から此処に運ぶために一回凍らせたからかも……その、ごめん。
あのときあたいはパニックで、ひょっとしたらもっといい方法もあったかもしれないのに」
「いやいや気にしないの。その
チルノの判断のおかげで今僕はこうして無事なんだから……」
「そう言われるとあたい照れちゃうっ! ……ってごめんっ! あたいが近くにいると余計寒いよね? 離れるよ」
といって○○から体を離し、距離を置こうとするあたい。
でも立ちあがって離れようとした瞬間、○○に手首を掴まれ、引き寄せられてしまう。
そしてまたさっきみたいにあたいは背中に両腕を回され、優しく……○○に包まれる。
「どうしたの? あたいといると寒いよ?」
「いや……寒くないな」
「えっ?」
いきなりこいつは何を言い出すのかしら? あたいと一緒に居て寒くないわけないのに……
「
チルノって……本当はこんなにも温かかったんだね」
「あたいが温かい? うっそだぁ~! あたいは氷の妖精
チルノよ! あたいなんかと一緒に居て寒くないわけないじゃない!」
「ううん、誇張でもない。抽象的な……そう『心が温かい』とかでもない。
いつもは冷気を身にまとってるからみんなに気付いてもらえないだけで、
チルノ自身はこんなにも温かかったんだ。
でもきっと、冷気を放出してる
チルノ自身が温かいのは、
チルノの『心が温かい』からなんだろうな」
「っ~! そ、そんなことっ! た、ただ○○の為にあまり冷気を漏らさないようにしてるだけで……」
「そっか。
チルノがそう言うならきっとそうなんだろうな……あ、でもこのままだと
チルノが暑苦しいか? ごめんな引きとめて」
そういってあたいを解放して、そっとあたいから離れようとする○○を今度はあたいの方から引きとめる。
「チル……ノ?」
「ううん、あたいも○○の温かさが好きだよ……だからあたいももっとこうして……いたいよ……」
ぎゅっと、○○の体を抱きしめる。強く強く、あたいが出せる精一杯の力で。温かくて気持ちいい○○の体をぎゅぎゅっと。
「○○の体、とても温かいよ。溶けちゃいそう……溶けちゃいたい。○○と溶けあいたいな……」
「うん……僕も溶けちゃいそう。いつも凍らされてる
チルノに……今度は溶かされちゃうんだ……」
「えへへ……一緒に溶け合おう? 溶けあって、蕩けあって、混ざり合って、一つになって、そしたらあたいが再び凍らせるの」
あたいの目の前には、文字通り溶けちゃった目であたいの事を見つめる○○。
その……ちょっと情けない、でもすごく可愛い顔にゆっくり近づく。溶けあうために、蕩けあうために。
目を瞑る○○。あたいも一緒に目を瞑る。目を瞑っても○○の顔の位置があたいには全てわかっちゃう。
暗闇の中、薄らと、淡い桃色の光を放つ、○○の顔の中でも一番温かいトコロに、○○の温かさの源に、
あたいの顔の中で……ううん、体の中で一番温かくて蕩けたモノを少しずつ近付ける。少しずつ……少しずつ……
熱い……唇がとても熱いよ……まだ触れ合ってすらいないのに……どうしてかな?
これは○○の唇が熱を放っている所為? それとも……あたいの唇が勝手に熱くなってるの?
熱い……でも嫌な熱さじゃないよ……とても心地よい熱さ。この心地よい熱さを○○と一緒に分け合いたい。
この熱さで……○○を溶かしてしまいたい……
――ちゅ、
触れちゃった。溶けちゃった。溶かしちゃった。弾けちゃった。
○○の柔らかく蕩けた唇に、あたいのアツアツに溶けた唇でちゅってキスしちゃった。
一瞬だけちゅって触れ合っただけなのになんだろう、全身が焼かれるように熱くて、涼しい風に晒される様に涼しい!
もっと、いっぱいキスしたい! あたいの唇で、キスで、○○ともっともっと溶けあって、そして一つになりたい!
こういうのは一回だけの方がムードがでるって皆は言うけどあたいはそんな小さな事気にしないよ!
――ちゅ…、ん…、くちゅ…、ちゅ…、
我慢する気なんてないよ! 何度でも何回でも、啄むように、いやもう食べる様にキスしちゃうんだから!
○○の唇とても美味しい。あたいは舌で舐めてみなくても判るもんね~。
なんたって唇で触れてみるだけであたいのお口の中一杯に甘い味が香りが拡がるんだから。
キスを繰り返せば繰り返すほど、あたいの唇はもっともっと熱くなって、もっともっと○○の唇が欲しくなっちゃう。
ううん、唇だけじゃない、体中、体中が熱いよ……あたい、○○に溶かされて……ううん、○○と溶けあえたんだ……
「体が熱い……もっとキス……欲しいよ……○○ぅ……」
「うん……僕も……
チルノが欲しい……」
○○の言葉を塞ぐようにあたいは唇をちゅうと密着させて、しっかりと密着させて、
そして閉じたその隙間に、少し乱暴にあたいは舌を差し込み……
少女接吻中……
「体がふわふわするぅ……ね、○○ぅ……いい……でしょ?」
「いや、ここ外……」
「ふんだっ! あたいがもう止まれないのは○○の所為なんだからっ! ○○があたいに心配かけたのがいけないんだからっ!」
「や、やっぱりさっきの事まだ根に持っていらっしゃrんむっ!」
なんか○○が言いかけたけれど、なんか聞きたくなかったから唇で塞いでやった。
そしてそのままあたいの全体重を○○にかけて地面に押し倒す。
そして○○の唯一身につけている海水パンツを焦らす様にずらし……
少女総合格闘技中……
「○○、唇に涎がついてるわよ? だらしないわねっ! ほらっ!」
人差し指を取りだし一拭い。そして唇でパクっと一口。甘い味。○○の甘い味。舌を使ってしっかりとお口の中で味わう。
そんなあたいを惚けた視線でただ凝視する○○。ははーん、さては最強のあたいの最強のぷろれす技に見惚れたのね!
「ほら、いつまでもぼーっとしないの! 日も落ちてきたしいつまでもそんな姿してると風邪ひくわよ!」
「ああそうだな……そろそろ……今日はお別れか?」
「その事だけれど……その……」
ちょっと言い淀んで、そして素直に気持ちを打ち明ける。
「今日は○○と一緒に居たいなって」
「えっ?」
「いや、もう怒ってないけれどやっぱり心配したんだから! だから……今日は○○をずっと傍に感じていたいの」
「そっか、じゃあ僕の家、狭いけれど泊っていく?」
「うんっ!」
「よっしゃ! 泊っていけ。よいしょ……あたたたた……腰が抜けて立てないや、
チルノ、ヘルプミー」
「もうっ! 最後の最後まで世話が焼けるわね!」
○○の手を取り引き上げて起こす。起き上ると今度はあたいに手を差し伸べる○○。
手を繋いで帰ろうってことかしら。でもあたいは……
「よいしょー! へへーん! 特 等 席!」
○○の肩へ一直線。そのまま肩車させる。この普段飛ぶよりは低いけど歩くよりは高い目線が堪らない。
「ちょ、病み上がりにはしんどいです!
チルノさん」
「ふんっ! あたいに散々心配かけた罰よ! 我慢しなさい!」
「やっぱり根に持ってるんだね」
本当に心配したんだから。今日の事はそりゃあもう一生モノね! 一生……一緒、一緒に居てもらうんだから!
「それじゃあ早速○○のお家ヘれっつごー!」
「お、おー?」
今日は色々と大変な一日だったけれど何はともあれ楽しかったし、こうして○○のお家に泊まることが出来るし、
そして○○との距離がまた一歩近くなることが出来てとてもいい一日だったわ!
明日も、ううん、これからもずっとずっとよろしくね! ○○っ!
Megalith 2012/07/13
ジーワジーワジーワミーンミーンシャワワワワワ…
バン! ポーン バン!ポーン バン!…
「やりました、あたい!ノーアウト満塁、この局面を守りきれば
チルノ選手の最強勝利は確定。
これでえーとえーと…とにかく勝ち投手!第一球!」
バン! ポーン…
「バッターの、えーと、イチョウって書いてある。
うん、バッターのイチョウ打者、手も足も出ません。
根っこは出ても何も出ない。第二球!」
バン! ポーン…
「やはり打てない、思ったとおり!
この大リーガー妖精ギプスできたえたあたいの敵じゃない!
けっさく!大リーガー妖精ギプス…あはは!」
ミーンミーン…
「…この一球が決まればワンアウト!あと二人の打者が、あとに…。」
…やめ。つまんない。」
パシン、コロコロ…
「…おおっと、
チルノ投手、どこへいくのでしょう。『フフフあたいの出るまでもないわ。
後始末はたのんだぞ!ゆけい!』えーと、『ゆけい、○○!』
暑いから日陰はいろ。滑り台。」
ミーンミーン…
「短い針が、2。長いのが8と9の途中。まだお昼。まだ遊べる。遊びたい。
誰もいない。つまんない。ああ~あ。」
シャワシャワシャワ…
ブロロロロ…
ターケヤー、サオダケー、アミドノ、ハリカエ…
ブロロロロ…
「しまった、リグルに頼むんだった。
○○は野球へたくそだったんだ。いつも変なボール投げて、魔球っていう。嘘つけ。」
チリンチリーン
ガッシャ、ガッシャ、ガッシャ、シャァァァァ
キュ
「ああああ、ひまひまひまひまひま。最強のあたいもひま。ひまひまひま~。」
チリンチリーン
「ひま、ひま♪ひっまひまひまひまっひま~、ひまなあーたいがかわいそうー♪」
チリンチリンチリーン
「ひまにまかせて遊びにこーい。あたいのところに遊びにこーい。
嫌ならあたいを遊ばせろー♪」
『
チルノ!』
「わ、○○じゃん!」
『何やってんだよ。ベル鳴らしても気づかないし。』
「よく来たな!」
『はあ?』
「自転車乗ってないで。降りろ!降りて遊べ!」
『わけわかんねーし。引っ張んな!』
「今日誰もいない!さみしい!あたいと遊べ!ドッジボールがいい!缶けりも!」
『えり引くな!延びんだろ!この前ちぎったボタン、母さんに怒られたんだよ!』
「知らん!」
『知れよ!ちょ、倒れる倒れる!やめろよ!』
「いいだろう…そのかわり、」
『?』
「遊べ!」
『無理』
「え~~~。」
『俺、プールの帰りだし。』
「え、プール!?行こう!」
『もう閉まってるよ。帰りだって言ったろ。』
「なーんだ。がっくり。」
『それで汗かいてドロドロになんの嫌だから、今日は遊べない。わかった?』
「わかった。」
『ああ、じゃあな。そうそう、俺さ…おい。』
「う~。」
『手、放せよ。』
「行っちゃ、やだ。」
『さっき、わかったって言ったろ。』
「頭はわかった。心がわかんなくなった。」
『何だそれ。』
「今日、誰もいない。あたい、さみしい。」
『リグルとか大ちゃんいんだろ。』
「今日二人で人形劇見に行くって。児童館の。」
『お前も行きゃいいじゃん。』
「あたい、むずかしい話わかんない。行かないって言った。」
『じゃあ、プール帰りのやつ来たらそいつと遊べよ。まだいっぱいいたぞ。
△△とか□□とか。』
「絶対来るか?」
『ん、来るかもな、痛ぇっ!何お前つかみすぎだろっ、肉はさんでる!放せ!』
「来ないかもしんない、やだ。」
『いいじゃん、今日一日くらい遊ばなくっても。』
「それもっとやだ!!やだ!!!」
『叫ぶなよ。』
「う~~~~~。」
『放せよ、お前何真っ赤んなってんの。いい加減にしろよ、俺はムリ。』
「放してほしかったら!」
『あん?』
「五時まで遊べ!遊べえ!」
『だから』
「あそべあそべえ!あたいが頼んでんだぞ!ずるいぞ、一人だけバシャバシャ遊んで!」
『おい、泣くな。』
「あたい、8時からいんだぞ!ここ8時!10時のおやつも
お昼ご飯もみんな食べに行っててうらやましくて!
でも、あたいはなんにもなくてえ!」
『これだから女子はよー、ちょっとマジやめろ。人に見られるだろ。』
「早く来い早く来いって、リグルとか○○早く来いって早く早くって、
ひっく、でも誰も来なくて。誰も。
せっかく○○来たのに、嬉しかったのに。もう帰るって。
ひどい!バカ!○○のバカ!バカー!オタンコナスー!うえええん」
『…仕方ねーな。ちょっとだけだぞ』
「ふぇ?」
『ちょっとなら!遊んでやんの!』
「……」
『おい?』
「……ゃ、やったあ!やったやった!やっぱり○○だ!
信じてた、あたい信じてた!あ、でも、ちょっとってどれくらいだ?
日が暮れるまでか?」
『それ、ちょっとじゃねーじゃん。そうだな、一時間。』
「え~。」
『嫌なら、今帰る。』
「それは、困る。」
『どうする?』
「う~ん、迷う。困った。」
『だいたい何すんの?』
「それだ!そっちの方が大事!えっと、缶けり!」
『二人で?』
「楽しい!あたいさっき一人でやってた!」
『つまんないだろ。他の。』
「缶けりやろう!今日あたいずっと缶けりやりたかった!
二人なら一人より、えっと、もう一人分楽しい。」
『わかったよ。じゃあ、鬼どっちやる?』
「ジャンケンで決めろ!」
『オッケ、ぁ、さいしょっはグッ』
「ジャンケンホイ!」
『お前の勝ち。どっち?』
「○○が見つけろ!」
『お前隠れる方な。じゃ、隠れる場所この公園なかでいいよな?
二十かぞえるぞー。いーち、にー』
「へっへっへ。○○め、あたいの頭脳に勝てるかなぁ?
どこに隠れようかな、えーとあそこの木はダメだ、あ、あっちなら」
『おい!聞こえてるぞ!じゅーさん、じゅーし、』
「……」
『じゅーく、にじゅっ!…おい。』
「……」
『何やってんだよ、そんなとこ突っ立って。隠れろよ。』
「○○。」
『ん?』
「隠れるのさ、あたいしかいない。」
『うん。』
「○○、あたいをまっすぐ探しに来る。」
『うん。』
「つまんない。」
『だから言っただろ。』
「ドッジボールやろう!」
『えー。』
「嫌なんて言うな。あたいと付き合うって言ったのは○○だ!」
『付き合うって、バカ、何言ってんだお前、』
「バカって言うな!あたい変なこと言ってない!あたいと付き合え付き合えぇ!」
『ちょ…ドッジでいいのかよ。』
「ドッジ。ドッジボール。ドッジやろう。」
『でも二人でやるもんじゃねって。』
「男のくせにやるまえからあきらめてんじゃねー!つべこべいうな!」
『ふー。わかったよ。じゃ、陣地ひくからちょっと待ってろ。木の棒探してくる。』
「あたいはー?」
『あぁ?』
「あたいはその間何してるー?」
『…練習でもしてろ。』
「敗れたり○○、あたいに練習のチャンス与えるとは!バカめ、敵に塩を送ったなー?」
『…ふー。』
「てりゃ!おりゃ!見たか!死ねぇっ!終わりだっ!必殺のウルトラスーパーデラックスファイヤーサンダー…」
『できたぞ。』
「できたか!待たせたな!」
『おし、じゃボールどっちが持つか決めるぞ。』
「『せんこっこ』」
『俺の勝ち。いくぞ。』
「来い!」
『おりゃ!』
「なんの!反撃だ!死ね、○○!」
『お前女子なのに力あるな。おりゃ!』
「負けるか!」
『くっ!この!』
「おおっ!○○はやっぱ強いな。」
『当たり前だ。おら、もらった!』
「やばっ!」
『…おぉい。飛んでよけるなよー。』
「ごめーん。」
『空飛ぶの反則。無し無し。』
「○○だって飛べばいいじゃん。」
『できねえから反則なの。今度やったらデコピンな。ボール拾ってくる。』
「急げよー。」
『誰のせいだよ…ったく。』
「あったー?」
『ちょっと待てよー。あれ?無いな、落ちたかな?ちょっと見つかんないや。』
「あたいもさがすー。」
『どこだ?俺があっちから投げたから…』
「このへん?あ!」
『あったか!?』
「あったあった!そこのドブ!ほら、もうちょっとで」
『待てよ!』
「え?」
『汚れんだろ、服が。』
「あたい気にしない。」
『いいから待ってろよ。こういうの男がやんの。』
「そしたら○○が汚れんじゃん。」
『だから、男は汚れてもいいの。こういうの男の役目だって、
今日慧音先生言ってたんだぞ』
「何で?」
『知らねえ。とにかく俺がとるわ。おし、あともうちょっと。』
「なんか棒持ってくる。」
『いいよ、すぐそこだし。よし、届いた。これで…やった!』
「とれた!やったやった!流石は○○だな!」
『はーっ。やっととれた。洗ってくる。』
「あはっ、○○の腕もドロドロじゃん。くっさー。○○くっさー!」
『はあ、何言ってんのお前!くさくねーし!』
「くさいくさいー!○○が泥まみれ怪人のウンコタレー!あっはっは!」
『このやろ!洗ってきたらマジぶちのめす!
この前みたいにボール凍らして止めてもデコピンだからな!』
「くさい奴がなんか言ってるー!悔しかったら当ててみろー!」
『ちっきしょー、水でびしょびしょのボール顔に当ててやる。
…こんなもんかな。おーい!』
「○○ー!今気づいたんだけどさ。」
『あー?』
「外野いないじゃん。つまんない。やめよ。」
『気づけよ!』
「それにあたいらどっちか一発くらったら、終わりだし。つまんない。」
『だから二人でやるもんじゃないだろ。言ったじゃん。』
「別の遊びしよう」
『いいけど…』
「鬼ごっこ!」
『二人で?』
「じゃあ、花いちもんめ」
『二人で?』
「じゃ、○○の好きなサッカーしよう!」
『だから、二人。』
「何よ、さっきからダメ出しばっかり。ちょっとは自分の頭で考えて!」
『お前が言うか。』
「かくれんぼ!」
『さっきの缶けり忘れたのかよ』
「ゴレンジャーごっこ!」
『ふ・た・り。』
「スペルカード勝負!」
『無理』
「むきー!」
『日陰で考えようぜ。』
「はー、すずしい。あ!」
『なんだよ。』
「時計!」
『時計?』
「ほら!○○、一時間しか遊べないって言った。えっと、今短いのが4で」
『4時過ぎだな。』
「えっと、時計の短いのがいっこ動くと一時間。ていうことは、あ…」
『……』
「…行っちゃうのか。いや、あたいに二言はない。バイバイ、○○。」
『いいよ。』
「え?」
『もうちょっとここいる。』
「ほんと!!!!?」
『うん。』
「じゃあ遊ぼう!何する!?」
『疲れたよ。ちょっと休む。』
「わかった!○○のとなりもーらいっ!帰りにさ!」
『うん』
「アイス買いにいこう!ソーダ味。」
『うーん』
「何よ。あたいのアイスが食えないってのか」
『30円しかない。』
「あたいは…あれ、30円しかない。」
『これじゃ買えないな。あーあ、
チルノがアイス作れればなー。』
「いや、できる、できるのだ!二人で一個買えばいいじゃん!」
『えっ…』
「いい考えでしょ!あたいったら○○よりえらい。決まり!」
『……』
「何、顔真っ赤にして。」
『……ハズい。』
「ビンボくさいって言いたいのね。この前リグルもやってたんだ。
あたいらだってやっても変じゃないよ。」
『そういうことじゃねーよ。』
「今度はそっぽ向いた。どうしたのよ、○○。」
『さっきさ、言いかけたことだけど!』
「ああ、そういえば何だっけ。」
『俺さ、来週から寺子屋行く時間増えるんだ。そのこと言おうと思っただけ。』
「ふーん。」
『意味わかってるか?』
「寺子屋ってあれでしょ。人間がえらくなりたくて本読むとこ。あたいみたいに。
わかってるわ。」
『だから、火曜と木曜は一日遊べなくなるわ。そんだけ。』
「えええええええ!!」
『そこまで驚くなよ。』
「二日も!?二日も遊べなくなるの!?一週間で!?」
『そう。』
「バカ!」
『いきなりなんだよ!』
「バカみたいじゃん、そんなの!遊べないんでしょ!楽しくない!その間何すんの?」
『勉強だろ、たぶん。』
「いらない!」
『俺もしたくねー。』
「じゃ、あたいらと一緒に遊ぼ!決まり!」
『できないんだって。』
「何で。」
『人間は嫌なことでもやんなきゃ、大人になれないんだって。父さんが言ってた。』
「いいじゃん、今のまんまでも。」
『図体だけでかくて中身がガキなのが最悪だってさ。これも父さんが言ってた。』
「何それ。」
『俺も何それって言いたいよ。勉強したくねー。』
「ひらめいた!あたいが○○の代わりに寺子屋行ってやる!」
『何言ってんのお前。』
「そうすれば○○嫌なことしなくてすむ。リグルとも大ちゃんとも遊べる。
あたいももっと偉くなる。いいことばっかり!」
『お前いないじゃん。』
「え?」
『それだったら、結局
チルノと俺遊べない時あるじゃん。』
「あ、そっか。気づかなかった。」
『気づけよなあ。おっ。』
「蚊か?」
『ああ、もう夕方だし。』
「あたいは刺されないぞ。」
『そりゃな。』
「○○も妖精だったらいいのにな。」
『
チルノが人間だったらいいのにな。』
「面白そうだな。そしたらあたいも寺子屋行く。」
『
チルノよりかしこい子いっぱいいるよ?』
「む、あたいの天才っぷり見くびってるわね?」
『9×8×5=?』
「んむ、んぎゅぐぐぐる、ん、ちょっと待った、
9が8の次の数で10より一個少ない数。9×8は…
えーとえーと……んん、74?いや2。5をかけると」
『
チルノは天才なんだろ』
「5をかける?何に5をかけるんだっけ?さっきのななじゅう…いくつだっけ?あれ?あれ?」
『どうしたんだよ、天才。』
「…あ、見てほら、でっかい夕焼け。」
『ほんとだ、きれいだなー。』
「もう5時だ!帰ろ帰ろ!!」
『答え、わかったのかよ。』
「あたいが解くほどでもなかったわ!」
『わかったのかよー。』
「ほら○○、アイス!一緒に食べよ!あ、そうだ!どうせならお店までかけっこしよう!」
『もう好きにしろよ。だけど、俺自転車押していくんだぞ?』
「足もタイヤも多ければ速い!大丈夫!」
『本気かよ。いいよ、かけっこな。』
「よーし、それでこそ○○。あたいの見こんだ男だ。位置についてヨーイ、」
「『ドン!』」
おわり
国語の教科書の恋愛モノ、児童文学の恋愛シーン。
なんであんなにワクワクするんだろ。
そんな昔を思いつつ、
チルノちゃんにご協力いただいた。
たまにはこんな淡い話どうでしょか。
緑髪の妖精は語る(うpろだ 2019/12/14)
ひえっ……! か、勘弁してください!
今日はアイテム何も持ってません!
すみません、ちょっとびっくりしちゃって……。
こんなところに博麗の巫女さんが来てるから、てっきり何か異変解決の途中なのかと。
お散歩兼見回り、おつかれさまです。
え、私? この先に住んでる友達を訪ねるところなんですよ。
――そうですね、こんなところに、って疑問に思うのも無理はないです。
いつも寒くて、普通の生き物だけでなく妖怪や妖精もほとんどいないところですから。
私も普段は、紅いお屋敷の傍にある霧の湖で暮らしてるんですよ。
この辺りは初めてですか? よければ私、どんなところなのか教えてあげられますよ。
忙しくなければ……はい、じゃあそこの木陰に行きましょうか。座るのにいい石がありますし、寒さもしのげますから。
とは言っても、順を追って話すとなると、まず友達のことをお話ししないと。
ええ、私と同じ妖精で、友達は氷の妖精なんです。昔は私と同じように、湖の傍に住んでいました。
いつもすごく元気で、一緒に遊んでいても次に何するかがわからないぐらい。
かくれんぼしてたのにいつの間にか別のことを始めてて、いつまで探しても見つからなかったこともあったっけ。
まあともかく、私も友達も妖精らしく、毎日遊んだり飛び回ったりして過ごしてたんです。
そんな中、ある時湖に一人の男の人が来ました。
外の世界から来たその人――○○さんっていうんですけど、巫女さんと同じぐらいの歳だったかな?
見慣れない人が来てはしゃいだ友達が声をかけて、それから時折やって来て、私たちと一緒に遊んでくれるようになったんです。
突然ですけど、巫女さんは、恋をしたことってありますか? ないですか。いえ、まあ私もまだないですけど。
――でも、恋に落ちるところを見たことはあります。
しばらく経って、○○さんに会うたびに、いつも元気すぎるぐらい元気な友達が妙に大人しくなってきて。
日が傾いてきて、○○さんが帰るときになると、切なそうな顔をするようになって。
人間と恋に落ちる妖精の話を聞いたことがないわけじゃなかったですよ?
紅いお屋敷の図書館でそういう本を借りて読んだこともありました。
でも実際こんなに身近で、しかも自分の友達にそれが起こるとは思ってませんでしたから――
どうなるのかただただ心配で、私には何も言えなかったんですよね。
それで結局、友達は直接○○さんに訊きに行ったんですね。
ある日、今日は湖にいないなと思ったら友達は○○さんと一緒に歩いてきて。
「一緒にいたくて、離れたくなくて、胸がきゅんってするようになったの、
○○にこれ何だろうって訊いたら、○○も一緒だって!
○○はあたいにコイしてるっていうから、あたいも○○にコイしてるんだ! ようやくわかった!」
って。すごく晴れ晴れして、ちょっと照れくさそうに言うんです。
○○さんもちょっと赤くなりながら、友達の手を優しく握っていて。
二人ともすごく幸せそうなんですよ。
ああ、心配することなんてなかったな、って。
友達が「あたいたちったらカープね!」と言ってたのは別の意味で心配になりましたけど。
へ? 私、そんなに嬉しそうですか?
……やっぱり、そのう、妖精として人間との恋物語に憧れる、というか、
一人の女の子として恋物語に憧れる、というか。そういう気持ちはあるんですよね。
それが他ならぬ大事な友達のことで、最初は心配だったけど、すごく幸せそうで。
思い出しててもなんだか嬉しくなっちゃうんですよね。
――ただ、ほんとに大変だったのはこの後だったんですよね。
さっきも言ったように友達は氷の妖精なんですが、その頃は力のコントロールがあんまり上手じゃなくて。
特に意識しなくても、というかよっぽど意識しないと、周りに冷気が出っぱなしになってました。
えーと、そうですねえ、閉め切ってて日が当たらないところなら、しばらくいるだけで夏でも即席の氷室ができるくらいかな。
……直接本人にさわればあったかいんですけどね。
○○さんも普通の人間でしたから、寒い季節なんかはかなり辛そうでした。
それでも、暖かくなるまで離れていようとかは全然考えもしなかったようです。
友達が熱いの苦手だから、あまり火を焚いたりせずに厚着したりとか、いっしょに過ごすためにがんばってました。
普段あまり悩んだりしない友達も、自分のせいで大事な人に負担をかけてるのが辛かったみたいです。
仲のいい冬妖怪さんや魔法使いさんのところを駆けまわって(そうですね、妖精にしては付き合いが広い方だったと思います)、
なんとか冷気をちゃんと操れるように、ってがんばって。
少しずつ、少しずつ練習を繰り返した友達は、人間が道具を上手く扱えるようになるみたいに、
ついに望んだとおりのコントロールができるようになりました。
どれだけ傍に近づいても○○さんは寒い思いをしないし、
苦手な熱気や火は周りに冷気をまき散らすことなく影響だけを防いじゃうんです。
本当に、私も○○さんもびっくりするぐらい成長してて。
友達は○○さんにいっぱいほめられて、すごく誇らしげでした。
――――でも、妖精の力って、人間で言うなら魔法や道具じゃなくて身体そのものです。
動かし方がわかると、今まで動かしてなかったところが鍛えられて、より強くなるんです。
○○さんも私も、友達自身も気づかないうちに、友達の力はどんどん強くなっていきました。
ある日、幻想郷を大寒波が襲いました。本当なら、夏真っ盛りの時期だったはずなのに。
後から付いた呼び名ですけど『
チルノ異変』って聞いたことありますか? ええ、その異変です。
チルノっていうのは氷の妖精の名前なんですよ。
……そうです、今まで巫女さんに話してきた、友達の名前です。
人間の恋人の為を思って力を付けていく内に、知らずに異変を起こしてしまった、私の友達。
今思えば異変が起こったあの日は、友達――
チルノちゃんの力が一線を超えた日だったんだと思います。
強くなりすぎた力が、幻想郷に大寒波を起こしてしまったんです。
チルノちゃんをそのままにしておいては人間や妖怪の命にかかわる、ということで、
スキマ妖怪さんが早々にやって来ました。ええ、巫女さんじゃなくてスキマ妖怪さんです。
だって考えてもみてください。
巫女さんが出てきて
チルノちゃんを退治したとしても――例え「一回休み」になったとしても、
○○さんへの気持ちが消えるわけじゃありません。
力が元に戻ったとしても、
チルノちゃんはまた○○さんのために、同じことを繰り返すでしょう。
幻想郷のあちこちにいる友達を氷漬けにしたいわけではもちろんないけれど、
○○さんが寒そうにしているのを見たら、きっとまた同じようにがんばって、力を取り戻してしまうでしょう。
チルノちゃんはそういう妖精でしたし、皆それを知っていました。
だから巫女さんにはできないこと……二人の記憶を消して、○○さんを外の世界に送り返すこと。
そのためにスキマ妖怪さんが来たんです。その時私は、湖のほとりで二人の傍にいましたけれど、
笑いも怒りもしない、石のお面みたいな顔をしていて、とても怖かったのを今でも覚えてます。
三人とも遠くの空に浮かんだ季節外れの雪雲や、微かに吹いてくる冷たい風には気付いていて、
まだ何もわかっていない内からなんとなく不安でした。
だから、スキマ妖怪さんから
チルノちゃんの力が異変の元になってること、
それを解決するためにしようとしてることを聞いたときは、本当に驚いて。
特に
チルノちゃん本人はショックだったんでしょうね。
大切な人のためにがんばったことでその人とお別れしないといけなくなる――
――なんて、きっと納得しようとしてもできなかったでしょう。
パニックになって泣き叫ぶ
チルノちゃんは、○○さんと会う前よりもっと力のコントロールが利かなくなって。
全身から冷気を噴き出して、自分の周りの気温をぐんぐん下げていきました。
私も、突然の出来事に泣き出しそうなのと、冬でも感じたことのないような寒さとで、どうすることもできなくて……
でも、○○さんは、凍りつくほど冷たくなってるはずの
チルノちゃんをかばうように抱きしめて。
『
チルノのことは助けてあげてほしい、でも全部忘れて離れ離れになるぐらいなら、自分はここで氷になる方がましだ』って。
○○さんがそう言い終わった瞬間、辺りに溢れていたすごい冷気が突然止まりました。
大好きな人の心からの言葉を聞いて、
チルノちゃんは我に返ったんだと思います。
『○○のことを忘れたくないし、どうしても離れたくない』って、わんわん泣きながら何度も繰り返して。
二人ともそのまま、お互いをしっかり抱きしめ合っていました。
スキマ妖怪さんは、二人を引き離しませんでした。
少し前までとは違う、優しげな笑いを口元に浮かべて、
「そんな無粋な真似はしないけれど、今や貴女の力は危険すぎる。
ティル・ナ・ノグ
だから異国の「妖精の丘」のように、幻想郷から仕切られた貴方達二人の世界を作りましょう」って。
……それから
チルノちゃんと○○さんは、今もまだそこで暮らしています。
結界に閉じ込められた力は、二人しかいない住人――
――
チルノちゃん自身と、彼女の最愛の人を傷つけることはありません。二人だけの小さな世界です。
力を完全に抑えられるようになって、そこにいるだけで幻想郷を雪と氷に包むようなことがなくなったら、
外に出てくることもできるらしいんですけど、まだしばらくかかるみたいです。
ちょうどこの辺りが結界で仕切られた中と外の境い目になっているんですよ。
ずいぶん長くなりましたけど、ここがどんなところか、なぜ寒いのか、なぜこんなに寒いのに私の友達がここにいるか、というお話でした。
……いえいえ、どういたしまして。
招待してもらえばお客さんとして中に入ることはできるんですよ、二人と一緒なら寒いこともないですし。
ええ、実際寒くないのもありますけど、なんだか二人の仲好しな感じに当てられてあったかくなるのもあります。
さっきもおんなじようなこと言いましたけど、一妖精としては人間と妖精のカップルって憧れちゃうなあ。
私がこっち側に残って、別れ別れになるからって、その時はお互いけっこう泣いたりもしたんですけど、
けっきょく前と変わらないくらい会いに行ってるかも。
え? 「本当に人間なの?」というと……
ああ、そういう意味ですね。
確かに、『
チルノ異変』はもうずっと前のことです。
博麗の巫女さんが貴女じゃなくて、霊夢さんだった頃だから……
人間の暦で言ったら、三百年ぐらい前ですね。
そうですね、普通の人間はそんなに長く生きられないみたいですし、まだ生きてるということは人間じゃなくて、
妖精とか妖怪とかになってるんじゃないか、って思うのも無理はないです。
でも、○○さんは氷の妖精である
チルノちゃんの隣で、ずっと暮らしています。
チルノちゃんの力は、決して傷つける形で○○さんに働きはしないけれど、そうでない形でなら強く働きます。
○○さんにとって、歳を取ることや病気になること、死んでしまうことは、凍りついてしまっているんでしょうね。
この先外に出られるようになっても、○○さんは一人の人間として
チルノちゃんの傍にい続けるんだと思います。
あ、ほら、あの辺りが入口です。中に入れるお客さんにだけ看板が――巫女さんも見えますか。さすがですね。
…………笑わないであげてください。
ティル・ナ・ノグ
スキマ妖怪さんが帰った後に「妖精の丘」ってなにかを
チルノちゃんに聞かれたんですよ。
外国の幻想郷みたいな、妖精の王国だって教えてあげたら、
「それじゃあ、あたい達の国の名前も決まり! ○○とあたいが王様と女王様ね!」って言って……。
……ええ、それじゃあもう行きますね。今日はお話できて楽しかったです。
神社までの帰り道、気をつけてくださいね!
――緑色の髪をサイドテールに結った妖精は、何度も振り返って手を振っていたが、
その姿は看板の前でふっと消えた。
看板にはあまり上手とは言えない字で
「あたいと○○のおうち こおりのおうこく ちるの・のぐ」と書いてある。
その内一度、自分も会いに言ってみようか、などと考えながら、
冷える腋を締めつつ巫女は神社へ向けて飛び立った。
避難所>>24
チルノ「○○~!遊びに来てやったぞー!」
○○「や、やぁ
チルノ…」
チルノ「どうした?具合悪いのか?」
○○「夏バテ…」
チルノ「確かにあっついもんな…よし、あたいに任せて!」
少女準備中…
チルノ「じゃーん!あたい特製のかき氷だ!これ食べて元気出せ!」
○○「いただきま~す…」パク
「ん~美味い!サンキュー
チルノ!」
チルノ「へへん!氷精の氷をゆっくり味わいな」
○○「うっ頭が…!」キーン
チルノ「ほらだからゆっくり味わえって言ったのに~」
避難所>>48-49
48:2022/08/31(水) 19:30:43 ID:lzOZ1Af.
チルノ「10年後の8月も、また出会えるのを信じて」
49:2022/09/01(木) 07:27:32 ID:gRd4XmHQ
>>48
○○「将来の夢、叶えに来たよ」
チルノ「……○○は大きくなったね。あたいは妖精だから、10年前と変わらないまま、これからも――
あたいのことは、思い出にしてくれればいい――」
○○「あのとき心の中で叫んでた『ありがとう』はまだ消えてない」
チルノ「…………○○」
○○「最高の思い出は、これから二人で作っていこう。人間と妖精の違いだって乗り越えてみせる。
だから……一緒に帰ろう。これからもずっと、一緒に」
最終更新:2024年07月24日 23:17